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特開2024-113911切断部劣化判定装置、発券機及び切断部劣化判定方法
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  • 特開-切断部劣化判定装置、発券機及び切断部劣化判定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113911
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】切断部劣化判定装置、発券機及び切断部劣化判定方法
(51)【国際特許分類】
   G07B 5/02 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G07B5/02
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019185
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】592048741
【氏名又は名称】鉄道情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】松澤 幸治
【テーマコード(参考)】
3E026
【Fターム(参考)】
3E026GA01
(57)【要約】
【課題】切断部の劣化を、切断部毎に判定することができる切断部劣化判定装置、発券機及び切断部劣化判定方法を提供する。
【解決手段】切断部劣化判定装置3は、送り出されたロール紙8を切断する切断部9と、この切断部9を稼働させる駆動部12と、切断部9よりも上流側でロール紙8を支持する上流ローラー13と、切断部9よりも下流側でロール紙8の先端を支持する下流ローラー14と、ロール紙8が切断される際に駆動部12に印加された電流値を測定する電流測定部と、駆動部12のトルク定数と電流値とから測定トルク値を算出するトルク算出部と、切断部9の周囲の湿度を測定する湿度測定部と、測定トルク値と湿度とを含む入力値に基づいて切断部9の劣化を判定する判定部と、切断時におけるロール紙8の姿勢を制御する姿勢制御部とを有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送り出されたロール紙を、前記ロール紙の表裏方向に切断する切断部と、
前記切断部を稼働させる駆動部と、
前記ロール紙が切断される際に前記駆動部に印加された電流値を測定する電流測定部と、
前記駆動部が予め有する固有のトルク定数と前記電流値とから、測定トルク値を算出するトルク算出部と、
前記測定トルク値を含む入力値に基づいて、前記切断部の劣化を判定する判定部と、を有する、
ことを特徴とする切断部劣化判定装置。
【請求項2】
前記切断部の周囲の湿度を測定する湿度測定部を有し、
前記入力値に前記湿度が含まれた、
ことを特徴とする請求項1に記載された切断部劣化判定装置。
【請求項3】
前記切断部よりも上流側で前記ロール紙を支持する上流ローラーと、
前記切断部よりも下流側で前記ロール紙の先端を支持する下流ローラーと、
前記ロール紙が所定の長さ分送り出された後、前記駆動部が稼働する前に、前記上流ローラー及び前記下流ローラーを停止させて前記ロール紙を前記上流ローラーと前記下流ローラーとの間で張った状態とする姿勢制御部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された切断部劣化判定装置。
【請求項4】
裏面に磁性体が塗布された前記ロール紙が装填されるロール紙装填部と、
前記ロール紙装填部の下流側に配置された請求項3に記載された切断部劣化判定装置と、
切断された前記ロール紙の被切断側である乗車券に所定の情報を印刷する印刷部と、を有する、
ことを特徴とする発券機。
【請求項5】
ロール紙を表裏方向に切断する切断部よりも上流側で前記ロール紙を支持した上流ローラーと、前記切断部よりも下流側で前記ロール紙の先端を支持した下流ローラーとを停止させることで、前記ロール紙を前記上流ローラーと前記下流ローラーとの間で張った状態とする姿勢制御手順と、
張った状態の前記ロール紙を前記切断部で切断する際、前記切断部を稼働させる駆動部に印加された電流値を測定する電流測定手順と、
前記駆動部が予め有する固有のトルク定数と前記電流値とから、測定トルク値を算出するトルク算出手順と、
前記測定トルク値と前記切断部の周囲の湿度とを含む入力値に基づいて、前記切断部の劣化を判定する判定手順と、を経る、
ことを特徴とする切断部劣化判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙を切断する切断部の劣化を判定するための切断部劣化判定装置、発券機及び切断部劣化判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道の駅等に設置されている自動券売機や、駅の窓口等に設置されている駅係員用発券端末として、例えば、下記特許文献1に記載された装置(以下、「文献公知1発明」と記す。)がある。この文献公知1発明には、セットされたロール紙が、必要に応じてローラーによって送り出され、切断装置によって切断され、券面に所定の情報が印刷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-130907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロール紙は、ロータリーカッター等によって切断されるところ、カッターの刃は劣化するため、定期的に交換される。刃の劣化は、使用頻度や経年によって生じるため、切断装置毎に異なる。したがって、切断装置毎に刃の劣化の状況を判断したうえで、刃を交換することが理想的である。しかし、刃の劣化は、外観上に現れないため、目視によって判断することが困難である。また、劣化した刃で切断された乗車券は、切断面が適切ではないため、自動券売機や駅係員用発券端末が詰まる等の不具合が起こる可能性がある。したがって、一定の期間が経過した切断装置は、使用頻度や経年にかかわらず、一律に刃が交換されている。定期的に刃が交換されているため、不具合は予防されるが、交換される刃の中には、切れ具合が損なわれていないものも含まれるため、経済的ではない。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。切断部の劣化を、切断部毎に判定することができる切断部劣化判定装置、発券機及び切断部劣化判定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明に係る切断部劣化判定装置は、送り出されたロール紙を、前記ロール紙の表裏方向に切断する切断部と、前記切断部を稼働させる駆動部と、前記ロール紙が切断される際に前記駆動部に印加された電流値を測定する電流測定部と、前記駆動部が予め有する固有のトルク定数と前記電流値とから、測定トルク値を算出するトルク算出部と、前記測定トルク値を含む入力値に基づいて、前記切断部の劣化を判定する判定部と、を有する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る切断部劣化判定装置は、前記切断部の周囲の湿度を測定する湿度測定部を有し、前記入力値に前記湿度が含まれた、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る切断部劣化判定装置は、前記切断部よりも上流側で前記ロール紙を支持する上流ローラーと、前記切断部よりも下流側で前記ロール紙の先端を支持する下流ローラーと、前記ロール紙が所定の長さ分送り出された後、前記駆動部が稼働する前に、前記上流ローラー及び前記下流ローラーを停止させて前記ロール紙を前記上流ローラーと前記下流ローラーとの間で張った状態とする姿勢制御部と、を有する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る発券機は、裏面に磁性体が塗布された前記ロール紙が装填されるロール紙装填部と、前記ロール紙装填部の下流側に配置された請求項3に記載された切断部劣化判定装置と、切断された前記ロール紙の被切断側である乗車券に所定の情報を印刷する印刷部と、を有する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る切断部劣化判定方法は、ロール紙を表裏方向に切断する切断部よりも上流側で前記ロール紙を支持した上流ローラーと、前記切断部よりも下流側で前記ロール紙の先端を支持した下流ローラーとを停止させることで、前記ロール紙を前記上流ローラーと前記下流ローラーとの間で張った状態とする姿勢制御手順と、張った状態の前記ロール紙を前記切断部で切断する際、前記切断部を稼働させる駆動部に印加された電流値を測定する電流測定手順と、前記駆動部が予め有する固有のトルク定数と前記電流値とから、測定トルク値を算出するトルク算出手順と、前記測定トルク値と前記切断部の周囲の湿度とを含む入力値に基づいて、前記切断部の劣化を判定する判定手順と、を経る、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る切断部劣化判定装置は、送り出されたロール紙を、ロール紙の表裏方向に切断する切断部と、切断部を稼働させる駆動部と、ロール紙が切断される際に駆動部に印加された電流値を測定する電流測定部と、駆動部が予め有する固有のトルク定数と電流値とから、測定トルク値を算出するトルク算出部と、測定トルク値を含む入力値に基づいて、切断部の劣化を判定する判定部とを有している。切断部がロール紙を切断する際、ロール紙が抵抗となるため、駆動部によるトルクに影響がある。したがって、劣化した切断部(以下、「劣化切断部」と記す。)がロール紙を切断する場合、切断し辛く、切断するうえで大きな力を要するため、劣化していない切断部(以下、「非劣化切断部」と記す。)がロール紙を切断する場合と比較して、トルク値が高くなる。したがって、トルク値は、切断部の劣化を判定するための指標となる。トルク値は、駆動部が有する固有のトルク定数と、駆動部に印可された電流値とから求められることから、算出部が測定トルク値を求め、判定部が、測定トルク値を入力値として、切断部の劣化を判定することで、切断部の劣化を、切断部毎に判定することができる。
【0012】
本発明に係る切断部劣化判定装置は、切断部の周囲の湿度を測定する湿度測定部を有し、入力値に湿度が含まれている。湿気を帯びると、切断部の動き、ロール紙の水分等に影響することから、切断部による切れ具合が変化し、非劣化切断部であっても、測定トルク値が高くなる場合がある。したがって、判定部は、湿度を加味した入力値に基づいて、切断部の劣化を判定する。よって、より正確に切断部の劣化を判定することができる。
【0013】
本発明に係る切断部劣化判定装置は、切断部よりも上流側でロール紙を支持する上流ローラーと、切断部よりも下流側でロール紙の先端を支持する下流ローラーと、ロール紙が所定の長さ分送り出された後、駆動部が稼働する前に、上流ローラー及び下流ローラーを停止させてロール紙を上流ローラーと下流ローラーとの間で張った状態とする姿勢制御部とを有している。ロール紙が切断される際、ロール紙は、上流側及び下流側のローラーが停止することによって、切断部の前後において支持され、撓むことなく張った姿勢となる。切断部がロール紙を切断する際、ロール紙が張った姿勢であれば、算出部は、ロール紙が撓む度合いに影響を受けることなく、測定トルク値を算出することができる。すなわち、切断部がロール紙を切断する際、ロール紙が切断部に押されて撓むと、撓んでいる間の測定トルク値を考慮する必要があり、切断部が有する本来の切れ具合を判定し辛い。ロール紙が湿気を帯びた場合は尚更であり、湿気によってロール紙が撓む度合いも異なってくることから、切断部の切れ具合が更に判定し辛くなる。本発明では、姿勢制御部が各ローラーを制御することで、ロール紙が撓まずに張った姿勢となり、切断部がロール紙に接触した瞬間と、ロール紙を切断する瞬間とが、ほぼ同時であるため、切断部が有する本来の切れ具合を正確に判定することができる。
【0014】
本発明に係る発券機は、裏面に磁性体が塗布されたロール紙が装填されるロール紙装填部と、ロール紙装填部の下流側に配置された切断部劣化判定装置と、切断されたロール紙の被切断側である乗車券に所定の情報を印刷する印刷部とを有している。したがって、上記した切断部劣化判定装置と同じ効果を奏する。特に、磁性体が塗布されたロール紙は、厚みがあり、コシが強いうえ、切断される際のロール紙は、購入者が携行するうえで嵩張らない程度に小さな乗車券相当のサイズであるため、切断される際に張った姿勢を維持することができる。
【0015】
本発明に係る切断部劣化判定方法は、ロール紙を表裏方向に切断する切断部よりも上流側でロール紙を支持した上流ローラーと、切断部よりも下流側でロール紙の先端を支持した下流ローラーとを停止させることで、ロール紙を上流ローラーと下流ローラーとの間で張った状態とする姿勢制御手順と、張った状態のロール紙を切断部で切断する際、切断部を稼働させる駆動部に印加された電流値を測定する電流測定手順と、駆動部が予め有する固有のトルク定数と電流値とから、測定トルク値を算出するトルク算出手順と、測定トルク値と切断部の周囲の湿度とを含む入力値に基づいて、切断部の劣化を判定する判定手順とを経る。したがって、上記した切断部劣化判定装置と同じ効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る発券機の概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る切断部劣化判定装置の切断部が稼働する前のの拡大概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る切断部劣化判定装置の切断部が稼働した後の拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態に係る切断部劣化判定装置及び発券機を図面に基づいて説明する。図1には、本実施形態に係る発券機1の概略が示されている。なお、発券機1は、駅の窓口等に設置されている駅係員用発券端末であるが、本発明の発券機には、駅に設置されている自動券売機等も含まれる。
【0018】
図1に示されているとおり、発券機1は、ロール紙8が充填されているロール紙充填部2と、このロール紙充填部2の下流側に配置された切断部劣化判定装置3と、この切断部劣化判定装置3の下流側に配置されたサーマル印刷部4と、このサーマル印刷部4の下流側に配置された磁気エンコード部5と、乗車券が排出又は挿入される挿入排出機構部6と、ロール紙8を搬送する搬送機構部7とを少なくとも有している。
【0019】
ロール紙8は、感熱紙の裏面に磁性体が塗布されたものであり、表側に印刷面を有し、裏側に磁気面を有している。ロール紙8は、切断部劣化判定装置3の切断部9によって切断される。切断されたロール紙8の被切断側は、乗車券となる。乗車券の長さは、例えば、30ミリメートル、85ミリメートル、120ミリメートルであるが、券種や用途の規格に則って、適宜調節される。サーマル印刷部4では、乗車券の印刷面に所定の情報が印刷される。所定の情報は、例えば、出発地、到着地、有効期間、料金等である。磁気エンコード部5では、乗車券の磁気面に電子情報が書き込まれる。所定の情報及び電子情報が記録された乗車券は、挿入排出機構部6から排出される。なお、発券機1は、乗車券や定期券が挿入排出機構部6に挿入され、用途に応じて読み込みや書き込みがされる場合もある。搬送機構部7は、複数のローラーと搬送ベルト等から構成され、ロール紙充填部2から挿入排出機構部6までの間に、適宜設置されている。
【0020】
次に、本発明の実施形態に係る切断部劣化判定装置3を図面に基づいて説明する。図2及び3には、本実施形態に係る切断部劣化判定装置3の概略図が示されている。
【0021】
図2及び3に示されているとおり、切断部劣化判定装置3は、搬送機構部7によって送り出されたロール紙を切断する切断部9と、この切断部9を稼働させる駆動部12と、切断部9よりも上流側でロール紙8を支持する上流ローラー13と、切断部9よりも下流側でロール紙8の先端を支持する下流ローラー14と、各ローラー13,14を稼働させるローラー駆動部と、ロール紙8が切断される際に駆動部12に印加された電流値を測定する電流測定部と、駆動部12のトルク定数と電流値とから測定トルク値を算出するトルク算出部と、切断部9の周囲の湿度を測定する湿度測定部と、測定トルク値と湿度とを含む入力値に基づいて切断部9の劣化を判定する判定部と、切断時におけるロール紙8の姿勢を制御する姿勢制御部と、切断部9の劣化を報知する報知部とを有している(ローラー駆動部、電流測定部、トルク算出部、湿度測定部、判定部、姿勢制御部及び報知部は図示省略。)。
【0022】
切断部9は、例えばロータリーカッター等である。切断部9は、断面が円形の回転刃10と、板状の固定刃11とから構成されている。回転刃10は、直径方向にスリットが形成され、スリットの縁に刃を有している。固定刃11は、回転刃10の上流側に配置され、板バネとして作用することで回転刃10の刃に押し付けられている。ロール紙8は、回転刃10のスリットに通され、回転刃10が回転すると、回転刃10の刃と固定刃11とで、ロール紙8が表裏方向にせん断される(図3参照)。駆動部12は、例えばモーターである。駆動部12のトルク定数は、予め定まっている。
【0023】
上流ローラー13及び下流ローラー14は、それぞれ一対であり、それぞれの片方が駆動側、もう片方が従動側である。上流ローラー13の間、切断部9の回転刃10のスリット、及び、下流ローラー14の間に通されたロール紙8は、一直線上に真っすぐに伸びた(又は概ね一直線上ほぼ真っすぐに伸びた)姿勢である。
【0024】
姿勢制御部は、ロール紙8が所定の長さ分送り出された後、駆動部12が稼働する前に、上流ローラー13及び下流ローラー14を停止させる。具体的には、各ローラー13,14の駆動側が回転しないように停止させ、各ローラー13,14がロール紙8を表裏から挟んで支持する。ロール紙8は、上流ローラー13と下流ローラー14との間で、撓まずに張った状態となる。
【0025】
トルク算出部には、駆動部12のトルク定数が予め記録されており、トルク算出部は、トルク定数と電流値との積を算出して測定トルク値とする。
T=Ka×Ia
T:測定トルク値
Ka:トルク定数
Ia:電流値
【0026】
判定部には、例えば、切断部9の正常トルク値、所定の判定条件、湿度に応じた補正条件等が記憶されている。切断部9の正常トルク値は、非劣化切断部がロール紙を切断する際のトルク値である。正常トルク値は、一般的な値であってもよいし、新品の切断部9が稼働する際に測定された値であってもよい。
【0027】
所定の判定条件は、様々であり、複数の判定条件から選択できる。第一判定条件は、測定トルク値が所定の閾値を超えたか否かを、切断部9の劣化の判断基準とすることである。したがって、例えば、判定部は、測定トルク値が、所定の閾値を超えた場合に、切断部9が劣化したと判定する。第二判定条件では、正常トルク値と測定トルク値とを比較して、測定トルク値が正常トルク値を上回った量を、切断部9の劣化の判断基準とすることである。したがって、例えば、判定部は、測定トルク値と正常トルク値との差が、所定量を上回った場合に、切断部9が劣化したと判定する。第三判定条件は、第三判定条件は、測定トルク値が所定の閾値を超える頻度が所定水準を超えたか否かを、切断部9の劣化の判断基準とすることである。したがって、例えば、判定部は、測定トルク値が、一日の間に何度も閾値を超えた場合に、切断部9が劣化したと判定する。
【0028】
湿度に応じた補正条件は、湿度に応じて、所定の判定条件の判断基準を補正するものである。したがって、例えば、湿度の高低に応じて、第一判定条件における閾値や第二判定条件における所定量を変化させる。
【0029】
報知部は、例えば、ブザー音を発するスピーカー、発光するランプ、メッセージが表示されるディスプレイ、信号をネットワーク上の上位装置に送信し、又は、メール等を外部端末へ送信する通信部等である。
【0030】
以上のとおり、切断部劣化判定装置3が構成されている。
【0031】
次に、本実施形態の作用及び効果を図面に基づいて説明する。
【0032】
図2に示されているとおり、ロール紙8は、上流ローラー13の間、切断部9の回転刃10のスリット、及び、下流ローラー14の間に通されている。発券指示があると、送り出し手順では、下流ローラー14の駆動側が稼働し、ロール紙8は、券種に応じた所定の長さ分送り出される。
【0033】
姿勢制御手順では、姿勢制御部は、駆動部12が稼働する前に上流ローラー13及び下流ローラー14を停止させる。ロール紙8は、上流ローラー13と下流ローラー14との間で、撓まずに張った状態となる。特に、裏面に磁性体が塗布されて磁気面を有するロール紙8は、厚みがあり、コシが強いため、張った姿勢を維持することができる。
【0034】
図3に示されているとおり、切断手順では、切断部9が、回転刃10を回転させ、回転刃10の刃と固定刃11とで、張った状態のロール紙8を表裏方向にせん断する。特に、姿勢制御部によって、ロール紙が撓まずに張った姿勢であるため、切断部9がロール紙8に接触した瞬間と、ロール紙8を切断する瞬間とが、ほぼ同時であり、切断部9が有する本来の切れ具合を正確に判定することができる。
【0035】
切断部9がロール紙8を切断する際、電流測定手順では、電流測定部が、切断部9を稼働させる駆動部12に印加された電流値を測定する。
【0036】
算出手順では、算出部が、駆動部12のトルク定数と電流値とから測定トルク値を算出する。切断部9がロール紙8を切断する際、ロール紙8が張った姿勢であるため、算出部は、ロール紙8が撓む度合いに影響を受けることなく、測定トルク値を算出することができる。
【0037】
判定手順では、判定部が、入力値に基づき、所定の判定条件に従って、切断部9の劣化を判定する。入力値には、測定トルク値と湿度とが含まれており、所定の判定条件には、湿度に応じた補正条件が加味されるため、より正確に切断部9の劣化を判定することができる。
【0038】
判定部が、劣化切断部であると判定した場合、報知手順において報知部が切断部9の劣化を報知する。
【0039】
以上のとおり、切断部9毎に劣化を判定することができる。
【0040】
なお、本発明の他の実施形態では、判定部に入力される入力値には、測定トルク値のみが含まれ、湿度が含まれていない。この実施形態は、湿度測定部を有していない。
他の実施形態は、姿勢制御部を有していない。
他の実施形態では、ロール紙は、感熱紙や磁気面を有するものに限られない。
他の実施形態は、報知部を有していない。
他の実施形態では、切断部劣化判定装置は、例えば、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、娯楽施設、役所、コインパーキング等に設置された自動精算機等におけるチケットや領収書の発券機に用いられる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 発券機
2 ロール紙充填部
3 切断部劣化判定装置
4 サーマル印刷部
5 磁気エンコード部
6 挿入排出機構部
7 搬送機構部
8 ロール紙
9 切断部
10 回転刃
11 固定刃
12 駆動部
13 上流ローラー
14 下流ローラー
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送り出されたロール紙を、前記ロール紙の表裏方向に切断する切断部と、
前記切断部を稼働させる駆動部と、
前記ロール紙が切断される際に前記駆動部に印加された電流値を測定する電流測定部と、
前記駆動部が予め有する固有のトルク定数と前記電流値とから、測定トルク値を算出するトルク算出部と、
前記切断部の周囲の湿度を測定する湿度測定部と、
前記測定トルク値及び前記湿度を入力値とし前記湿度に応じて所定の判定条件を補正したうえで、前記測定トルク値と補正後の所定の判定条件とに従って前記切断部の劣化を判定する判定部と、を有する、
ことを特徴とする切断部劣化判定装置。
【請求項2】
前記所定の判定条件が、
前記測定トルク値が所定の閾値を超えることに基づいた第一判定条件、
劣化していない前記切断部が前記ロール紙を切断する際のトルク値と、前記測定トルク値とを比較することに基づいた第二判定条件、又は、
前記測定トルク値が所定の閾値を超える頻度に基づいた第三判定条件である
ことを特徴とする請求項1に記載された切断部劣化判定装置。
【請求項3】
前記切断部よりも上流側で前記ロール紙を支持する上流ローラーと、
前記切断部よりも下流側で前記ロール紙の先端を支持する下流ローラーと、
前記ロール紙が所定の長さ分送り出された後、前記駆動部が稼働する前に、前記上流ローラー及び前記下流ローラーを停止させて前記ロール紙を前記上流ローラーと前記下流ローラーとの間で張った状態とする姿勢制御部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された切断部劣化判定装置。
【請求項4】
裏面に磁性体が塗布された前記ロール紙が装填されるロール紙装填部と、
前記ロール紙装填部の下流側に配置された請求項3に記載された切断部劣化判定装置と、
切断された前記ロール紙の被切断側である乗車券に所定の情報を印刷する印刷部と、を有する、
ことを特徴とする発券機。
【請求項5】
ロール紙を表裏方向に切断する切断部よりも上流側で前記ロール紙を支持した上流ローラーと、前記切断部よりも下流側で前記ロール紙の先端を支持した下流ローラーとを停止させることで、前記ロール紙を前記上流ローラーと前記下流ローラーとの間で張った状態とする姿勢制御手順と、
張った状態の前記ロール紙を前記切断部で切断する際、前記切断部を稼働させる駆動部に印加された電流値を測定する電流測定手順と、
前記駆動部が予め有する固有のトルク定数と前記電流値とから、測定トルク値を算出するトルク算出手順と、
前記測定トルク値及び前記切断部の周囲の湿度を入力値とし前記湿度に応じて所定の判定条件を補正したうえで、前記測定トルク値と補正後の所定の判定条件とに従って前記切断部の劣化を判定する判定手順と、を経る、
ことを特徴とする切断部劣化判定方法。