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特開2024-113918流動層運転制御装置、流動層運転方法及び流動層運転制御プログラム
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  • 特開-流動層運転制御装置、流動層運転方法及び流動層運転制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113918
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】流動層運転制御装置、流動層運転方法及び流動層運転制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   F23C 10/28 20060101AFI20240816BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F23C10/28
F23N5/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019196
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土山 佳彦
【テーマコード(参考)】
3K003
3K064
【Fターム(参考)】
3K003EA07
3K003FA02
3K003FA10
3K003FB05
3K064AA10
3K064AB01
3K064AD05
3K064BA07
3K064BA14
3K064BA17
3K064BB05
(57)【要約】
【課題】流動材の付着を抑制しつつ、燃料を加熱する流動層運転制御装置、流動層運転方法及び流動層運転制御プログラムを提供する。
【解決手段】バイオマスを含む燃料を流動材で流動させつつ加熱する流動層装置を制御する流動層運転制御装置であって、バイオマスを含む燃料のアルカリ金属の含有量と塩素の含有量を取得する計測部と、前記流動層装置の前記流動材と前記燃料が流動する流動層の温度を取得する温度取得部と、前記アルカリ金属の含有量と、前記流動層の温度に基づいて、付着物の量を算出し、算出した付着物の量に基づいて、前記流動層装置の運転条件を制御する制御部と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを含む燃料を流動材で流動させつつ加熱する流動層装置を制御する流動層運転制御装置であって、
バイオマスを含む燃料のアルカリ金属の含有量と塩素の含有量を取得する計測部と、
前記流動層装置の前記流動材と前記燃料が流動する流動層の温度を取得する温度取得部と、
前記アルカリ金属の含有量と、前記流動層の温度に基づいて、付着物の量を算出し、算出した付着物の量に基づいて、前記流動層装置の運転条件を制御する制御部と、を含む流動層運転制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、予め算出した、前記流動層内のアルカリ金属と塩素の反応物の濃度及び前記流動層の温度と、付着物の付着速度との関係を有し、
前記関係と、前記アルカリ金属の含有量と、前記流動層の温度に基づいて、付着物の量を算出する請求項1に記載の流動層運転制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記運転条件として、前記燃料の投入量を制御する請求項1に記載の流動層運転制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記運転条件として、前記流動層の塩素濃度を300mg/kg未満またはアルカリ金属濃度を750mg/kg未満とする請求項3に記載の流動層運転制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記運転条件として、前記流動層装置の運転期間を算出する請求項1に記載の流動層運転制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記運転条件として、前記流動層内の前記流動材の入れ替え量を制御する請求項1に記載の流動層運転制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記運転条件として、前記流動層の温度を制御する請求項1に記載の流動層運転制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記運転条件として、前記流動層の温度を580℃以下とする請求項1に記載の流動層運転制御装置。
【請求項9】
前記アルカリ金属は、カリウムである請求項1に記載の流動層運転制御装置。
【請求項10】
バイオマスを含む燃料を流動材で流動させつつ加熱する流動層装置を制御する流動層運転制御方法であって、
バイオマスを含む燃料のアルカリ金属の含有量と塩素の含有量を取得するステップと、
前記流動層装置の前記流動材と前記燃料が流動する流動層の温度を取得するステップと、
前記アルカリ金属の含有量と、前記流動層の温度に基づいて、付着物の量を算出し、算出した付着物の量に基づいて、前記流動層装置の運転条件を制御するステップと、を含む流動層運転方法。
【請求項11】
バイオマスを含む燃料を流動材で流動させつつ加熱する流動層装置を制御する流動層運転制御プログラムであって、
バイオマスを含む燃料のアルカリ金属の含有量と塩素の含有量を取得するステップと、
前記流動層装置の前記流動材と前記燃料が流動する流動層の温度を取得するステップと、
前記アルカリ金属の含有量と、前記流動層の温度に基づいて、付着物の量を算出し、算出した付着物の量に基づいて、前記流動層装置の運転条件を制御するステップと、を含む処理をコンピュータに実行させる流動層運転制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流動層運転制御装置、流動層運転方法及び流動層運転制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料を燃焼させる装置としては、例えば特許文献1のように、燃料と流動材とを燃焼室内で流動混合させながらガス化させる流動層ボイラがある。流動材を用いて流動させる装置は、流動層で燃焼させる燃焼装置もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-107226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、流動材で流動混合させる燃料としてバイオマスを用いる場合がある。バイオマスを加熱した場合、流動材が流動層内で付着し、伝熱管の伝熱効率を低下させ、または、流動性を低下させる場合がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、流動材の付着を抑制しつつ、燃料を加熱する流動層運転制御装置、流動層運転方法及び流動層運転制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために流動層運転制御装置は、バイオマスを含む燃料を流動材で流動させつつ加熱する流動層装置を制御する流動層運転制御装置であって、バイオマスを含む燃料のアルカリ金属の含有量と塩素の含有量を取得する計測部と、前記流動層装置の前記流動材と前記燃料が流動する流動層の温度を取得する温度取得部と、前記アルカリ金属の含有量と、前記流動層の温度に基づいて、付着物の量を算出し、算出した付着物の量に基づいて、前記流動層装置の運転条件を制御する制御部と、を含む。
【0007】
上記の目的を達成するために流動層運転方法は、バイオマスを含む燃料を流動材で流動させつつ加熱する流動層装置を制御する流動層運転制御方法であって、バイオマスを含む燃料のアルカリ金属の含有量と塩素の含有量を取得するステップと、前記流動層装置の前記流動材と前記燃料が流動する流動層の温度を取得するステップと、前記アルカリ金属の含有量と、前記流動層の温度に基づいて、付着物の量を算出し、算出した付着物の量に基づいて、前記流動層装置の運転条件を制御するステップと、を含む。
【0008】
上記の目的を達成するために流動層運転制御プログラムは、バイオマスを含む燃料を流動材で流動させつつ加熱する流動層装置を制御する流動層運転制御プログラムであって、バイオマスを含む燃料のアルカリ金属の含有量と塩素の含有量を取得するステップと、前記流動層装置の前記流動材と前記燃料が流動する流動層の温度を取得するステップと、前記アルカリ金属の含有量と、前記流動層の温度に基づいて、付着物の量を算出し、算出した付着物の量に基づいて、前記流動層装置の運転条件を制御するステップと、を含む処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、流動材が伝熱管等に付着すること及び、流動材同士が付着することを抑制しつつ、燃料を加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態の流動層ボイラを表す概略構成図である。
図2図2は、本実施形態に係る流動層火炉を示す概略構成図である。
図3図3は、試験装置の一例を示す模式図である。
図4図4は、燃焼温度と生成ガスとの関係を示すグラフである。
図5図5は、KCl濃度と付着物との関係の測定結果を示すグラフである。
図6図6は、温度と流動材の付着物のCl量との関係の測定結果を示すグラフである。
図7図7は、温度と流動材の付着物のK量との関係の測定結果を示すグラフである。
図8図8は、制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。以下、本実施形態では、流動層で燃料を燃焼させる流動層ボイラの場合で説明するが、これに限定されない。本開示は、燃料と流動材とを流動層で流動させつつ、燃料をガス化させるガス化炉にも用いることができる。つまり、本実施形態は、流動層で燃料を加熱する種々の装置に用いることができる。ここで、燃料は、バイオマスを含む。具体的には、燃料は、アルカリ金属と塩素の含有量が多く、硫黄の含有量が少ない燃料、例えば草や木を原料とするバイオマスである。なお、燃料は、バイオマスを含めばよく、バイオマス以外の燃料を含んでもよい。ここで、本開示の燃料は、アルカリ金属の含有量が、0.01wt%以上、塩素の含有量が0.05wt%以上、硫黄の含有量は、0.01wt%以下である。
【0012】
図1は、本発明の本実施形態にかかる流動層火炉20を備えた流動層ボイラ10を示す概略図であり、図2は、流動層火炉20を示す概略構成図である。流動層ボイラ10は、流動材(例えば、砂)と燃料(例えば、バイオマス)を流動混合させながら燃焼室21内で燃焼させる流動層火炉20に加えて、流動層火炉20から排出される燃焼ガスと流動材とを分離するサイクロン11と、サイクロン11に接続された排気通路12と、排気通路12の下流に配置された内部熱交換器13と、空気予熱器14と、集塵機15と、煙突16と、空気予熱器14からの空気を流動層火炉20へと導入する空気供給管17と、空気供給管17へと空気を供給する空気ファン18と、を備える。
【0013】
流動層火炉20は、図1および図2に示すように、燃焼室21と、散気管30と、流動材供給部32と、燃料供給部34と、加熱装置36と、流動材循環部40と、を含む。
【0014】
燃焼室21は、散気管30と、流動材供給部32と、燃料供給部34と、加熱装置36と、流動材循環部40と、の一部が配置される。なお、燃焼室21には、燃焼を開始させるための起動バーナや燃焼室21内へと二次空気、三次空気および四次空気を供給する複数の空気供給部等が設けられている。燃焼室21は、容器212の内部に底面22が配置される。底面22は、空気が通過でき、燃料と流動材が通過しない多数の穴が形成される。燃焼室21は、底面22の上面の流動層23に流動材と燃料が供給される。燃焼室21は、底面22の下に配置された散気管30から一次空気が供給され、底面22の孔を通じて、流動層23内に一次空気が流入し、流動層23の燃料と流動材が流動方向23aに流動する。これにより、流動材と燃料は、流動層23内で流動する。
【0015】
散気管30は、燃料および流動材を流動混合させると共に燃焼用空気としても用いられる一次空気を燃焼室21内に供給する。散気管30は、燃焼室21を貫通して燃焼室21の外側に配置された吸気マニホールド24に接続されている。当該吸気マニホールド24には、空気供給管17が接続されており、空気予熱器14で加熱された高温の空気が空気供給管17を介して供給される。散気管30は、図2に示すように、燃焼室21内へと一次空気を吹き込み可能な複数の空気供給孔30oが軸方向に沿って互いに間隔を空けて形成されている。なお、本実施形態では、散気管30を用いることで、流動層23に平均的に一次空気を供給したが、燃焼室21の底面22の下の空間をマニホールドとして、均圧できれば、散気管30を用いずに、吸気マニホールド24から燃焼室21の側面に空気を供給してもよい。
【0016】
流動材供給部32は、供給配管32aで燃焼室21と接続し、燃焼室21に流動材を供給する。燃料供給部34は、燃焼室21と接続し、燃焼室21に燃料を供給する。
【0017】
加熱装置36は、流動層23の燃料と流動材を加熱する熱源である。第1加熱部36aと、第2加熱部36bとを有する。第1加熱部36aと、第2加熱部36bとは、流動層23の内部に伝熱管が配置され、伝熱管に加熱された熱媒を流通させることで、流動層23内で流動する燃料と流動材を加熱する。第2加熱部36bは、第1加熱部36aの鉛直方向上側の領域に配置される。加熱装置36は、第1加熱部36aを流れる熱媒と、第2加熱部36bを流れる熱媒を異なる温度としてもよい。例えば、加熱装置36は、第1加熱部36aを流れる熱媒よりも第2加熱部36bを流れる熱媒を高い温度としてもよい。これにより、流動層の鉛直方向上側の領域をより高温にすることができる。また、加熱装置36は、熱媒の温度を調整して、流動層23の温度を調整することもできる。
【0018】
流動材循環部40は、燃焼室21の流動材を回収し、再生し、流動材供給部32に供給させる。流動材循環部40は、循環経路42と、分離部44と、洗浄部46と、を有する。循環経路42は、燃焼室21の底面22と、流動材供給部32とを接続する。循環経路42は、燃焼室21の底面22から流動材を回収し、処理した後、流動材供給部32に供給する。分離部44は、循環経路42に配置される。分離部44は、燃焼室21から排出された流動材に含まれる不純物や、再生不可能な流動材を分離する。不純物には、燃料も含まれる。洗浄部46は、循環経路42の分離部44の下流に配置される。洗浄部46は、分離部44を通過した流動材を洗浄し、流動材への付着物を除去する。洗浄部46は、水や洗浄液を用いて洗浄する。
【0019】
また、流動層ボイラ10は、運転を制御する制御機能として、温度測定部50と、燃料測定部52と、流動材測定部54と、制御装置70と、を備える。流動層ボイラ10は、温度測定部50と、燃料測定部52と、流動材測定部54とで取得した情報に基づいて、制御装置70で、流動層ボイラ10の動作を制御する。
【0020】
温度測定部50は、流動層23の温度を測定する。燃料測定部52は、燃焼室21に供給する燃料の成分の情報を取得する。燃料測定部52は、燃料を分析して成分情報を取得しても、燃料の情報から成分を推定してもよい。流動材測定部54は、流動材の付着物の成分と量を検出する。流動材測定部54は、流動材をサンプリングしてもよい。
【0021】
制御装置70は、流動層運転制御装置であり、制御部72と、記憶部74と、を有する。制御部72は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。制御部72は、記憶部74に記憶されたプログラムを処理することで、各種制御機能を実行する。制御部72は、記憶部74に記憶された情報と、温度測定部50、燃料測定部52、流動材測定部54で取得した情報に基づいて、流動層ボイラ10の運転を制御する。制御部72は、運転条件として、運転期間(メンテナンスを行うまでの期間)、運転温度、燃料投入量、流動材の投入量等を制御する。
【0022】
記憶部74は、制御部72の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部74が保存する制御部72用のプログラムは、制御装置70が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。
【0023】
流動層ボイラ10は、流動層火炉20の燃焼炉21に、流動材供給部32から流動材が供給され、燃料供給部34から燃料が供給される。流動層ボイラ10は、流動層火炉20に対して、空気予熱器14により加熱された高温の空気が空気供給管17および吸気マニホールド24を介して複数の散気管30に導入され、各散気管30に形成された複数の空気供給孔30oから燃焼室21内に一次空気が供給されると、流動材と燃料とが流動混合され、流動層23で流動する。また、流動層23は、加熱装置36で加熱される。これにより、燃焼室21の流動層23の燃料の燃焼が行われる。流動層ボイラ10は、燃焼により発生した燃焼ガスは、流動材と共にサイクロン12に導かれ、サイクロン12により燃焼ガスと流動材とに分離される。サイクロン12で分離された燃焼ガスは、排気通路12に導かれて内部熱交換器13及び空気予熱器14を通過し、流動層火炉20に導入する空気と熱交換を行なった後、集塵機15を通して飛灰等を除去した後、煙突16により大気に放出される。一方、サイクロン21で分離された高温の流動材は、流動層火炉20の燃焼室21内へと還流される。
【0024】
制御装置70は、本開示のアルカリ金属の含有量が、0.01wt%以上、塩素の含有量が0.05wt%以上、硫黄の含有量は、0.01wt%以下である燃料を流動層で燃焼させる場合、予め算出した流動層内のアルカリ金属と塩素の反応物の濃度及び前記流動層の温度と、付着物の付着速度との関係を取得し、取得した関係と、流動層ボイラ10の燃料の成分、流動層の温度とに基づいて、運転条件を制御する。
【0025】
図3は、試験装置の一例を示す模式図である。図3に示す試験装置100は、流動層23の環境を再現し、流動層内の加熱装置の伝熱管への付着物と、流動材への付着物を評価する。試験装置100は、筐体102と、試験配管106と、冷却部107と、ガス供給部108と、を含む。筐体102は、内部に流動材104が配置される。筐体102は、流動材104が配置される部分に試験配管106が挿入される。試験配管106は、ガス供給部108側の端部となる。鉛直方向下側の端部で折り返す形状である。試験配管106は、折り返し部110が付着物の評価対象領域となる。冷却部107は、試験配管106に冷却媒体を供給する。冷却媒体は、液体例えばシリコーンオイルや、気体である。冷却部107は、試験配管106を、伝熱管を模擬する所定の温度、例えば350℃から4550℃の範囲で所定の温度に保持する。ガス供給部108は、筐体102の鉛直方向下側の端部に接続され、KClを含み、所定温度、例えば、700℃、750℃のガスを供給する。
【0026】
試験装置100は、ガス供給部108から700℃、750℃で、KClを含むガスを筐体102に供給しつつ、折り返し部110を350℃から550℃に冷却することで、流動層ボイラ10の燃焼炉の流動層の環境を再現する。具体的には、KClを含むガスを、加熱された状態の流動材104、折り返し部110に供給することで、流動材104で流動層の加熱された流動材を模擬し、折り返し部110で伝熱管や炉壁の環境を模擬する。試験装置100は、ガス供給部108の温度、折り返し部の温度、供給するKClの濃度を変更して、複数の組み合わせで、所定時間試験を行い、所定時間経過後の折り返し部110の付着と、流動材104の付着を評価した。
【0027】
図4は、燃焼温度と生成ガスとの関係を示すグラフである。試験装置100は、ガスの温度(燃焼温度)に応じて、排出されるガスに含まれる全塩素に対する、アルカリ金属と塩素との化合物、本実施形態ではKClの割合が変化する。同様に流動層ボイラ10の燃焼室21の燃焼温度に応じて変化する。図4は、縦軸をアルカリ金属と塩素との化合物、本実施形態ではKClの割合(KCl/全Cl)[mol/mol]とし、横軸はガスの温度とした。図4に示すように、ガス温度が約580℃でKClの生成が開始し、温度の上昇に比例して、KClの割合が増える。
【0028】
図5は、KCl濃度と付着物との関係の測定結果を示すグラフである。図5は、縦軸が伝面付着物中含有量[mg/cm]、つまり、折り返し部110に付着した付着物のカリウム、塩素の付着物の測定結果であり、横軸は、ガス中のKClの濃度[ppm]である。図5は、ガス供給部108から供給するガスの温度、つまり、流動層に相当する部分の温度を750℃とし、折り返し部110の温度を500℃とした。図5に示す基準線150は、1年換算で付着物が、5.8mmとなる付着物の含有量である。
【0029】
次に、図6は、温度と流動材の付着物のCl量との関係の測定結果を示すグラフである。図6は、縦軸が流動砂(流動材)の付着物中の塩素の含有量[mg/cm]の測定結果であり、横軸は、折り返し部110の温度である。図7は、温度と流動材の付着物のK量との関係の測定結果を示すグラフである。図7は、縦軸が流動砂(流動材)の付着物中のカリウムの含有量[mg/cm]の測定結果であり、横軸は、折り返し部110の温度である。図6及び図7に示す試験結果のアグロメ粒子は、流動材に付着物が付着して、流動材自体が付着して、所定の大きさ以上になった粒子である。アグロメ粒子ありは、流動材の中にアグロメ粒子が生成された試験である。また、Tb温度は、流動層の温度である。図6及び図7に示すように、付着物中のカリウム、塩素の量が所定以上となると、アグロメ粒子が発生することがわかる。
【0030】
図8は、制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。制御装置70は、図5から図8に示す関係と、燃料の成分、流動層の温度、運転時の計測結果等に基づいて、運転条件を制御する。制御装置70は、例えば、KCl濃度と付着速度との関係の情報を取得する(ステップS20)。
【0031】
制御装置70は、燃料の成分の情報を取得する(ステップS22)。制御装置70は、燃料測定部52から燃料の成分、アルカリ金属の割合と、塩素の割合の情報を取得する。
【0032】
制御装置70は、流動層の温度の情報を取得する(ステップS24)。制御装置70は、温度測定部50から流動層の温度の情報を取得する。なお、制御装置70は、流動層ボイラの運転の企画や、運転条件から温度の情報、つまり温度の設定値を取得してもよい。
【0033】
制御装置70は、付着量を算出する(ステップS26)。制御装置70は、ステップS20で取得した関係と、ステップS22で取得した燃料の評価対象成分の割合と、ステップS24で取得した流動層の温度の情報に基づいて、流動層での付着物の量、例えば、付着速度を算出する。
【0034】
制御装置70は、付着量に基づいて、運転条件を決定する(ステップS28)。運転条件としては、上述したように、運転期間、燃料の投入量、流動層の温度、流動材の入れ替え量等がある。制御装置70は、決定した運転条件に基づいて、流動層ボイラ10を運転する。例えば、制御装置70は、決定した燃料投入量に基づいて、燃料を投入する。また、制御装置70は、燃焼室21の温度を決定した温度で維持する。また、制御装置70は、決定した運転期間まで運転を継続する。
【0035】
流動層ボイラ10は、以上のように、燃料中のアルカリ金属及び塩素の量と、運転条件と、付着速度との関係を予め算出し、算出した関係に基づいて、運転を制御することで、伝熱面での伝熱効率の低下や、流動層の流動性の低下を抑制することができる。これにより、流動層ボイラ10の燃焼室20の運転状態を安定させることができ、温度の低下による燃焼不良や、効率の低下を抑制することができる。また、本開示の流動層ボイラ10は、燃料の硫黄が低く、付着物としてアルカリ金属と塩素との化合物が生成される。このため、付着物による腐食の発生が抑制される。流動層ボイラ10は、流動層内がエロージョン環境であり、付着速度が、エロージョン速度を上回った時に付着が進行する。上記図5の関係に基づいて、付着速度を算出し、燃料の成分及び供給量と、流動層の温度に基づいて付着速度を算出し、運転条件を制御することで、流動層を適切に運転することができる。
【0036】
制御装置70は、図5の付着量の情報と取得した燃料の情報、流動層の温度に基づいて、付着速度を算出し、運転期間中に付着する付着物の量が閾値以下となるように、燃料の供給量を調整し、流動層に供給されるKCl量を抑制する。これにより、運転時に燃焼室21内で伝熱不良が生じ、流動層の温度が低下すること、また、加熱装置で消費するエネルギーが増加することを抑制できる。
【0037】
また、制御装置70は、図5の付着量の情報と、取得した燃料の情報、流動層の温度に基づいて、付着速度を算出し、付着量が許容値を超える時点を算出し、運転期間を決定する。つまりメンテナンスを行うタイミングを決定する。これにより、メンテナンスを適切なタイミングで行うことができる。
【0038】
また、制御装置70は、付着物の除去機構、例えば水洗機構を備える場合、図5の付着量の情報と、取得した燃料の情報、流動層の温度に基づいて、付着速度を算出し、付着量が、一定以上となるタイミングで、除去機構を稼働させるようにしてもよい。つまり、運転条件として、除去機構の可動タイミングを設定してもよい。また、本実施形態のように、KClが付着する場合、水溶性の付着物になるため、水洗で付着物を除去できる。また、本実施形態のように、硫黄成分(S分)が低い燃料を加熱する機構では、運転時に水を用いて洗浄しても、腐食の促進を抑制することができる。
【0039】
また、上記実施形態では、図5の関係に基づいて、運転条件を設定したが、図6図7の燃料の成分と流動材への付着に基づいて、運転条件を制御してもよい。制御装置70は、流動材測定部54で、流動材に付着した付着物の濃度を評価し、流動材中のCl濃度(Cl量/流動材の量)が300mg/kg未満、またはK濃度(K量/流動材の量)が750mg/kg未満とする。流動材の付着量の成分を、上記条件を満たすようにすることで、アグロメ粒子の発生を抑制することができる。これにより、流動層内の流動性を維持することができる。
【0040】
また、制御装置70は、図6図7の燃料の成分と流動材への付着に基づいて、例えば、流動材中のCl濃度(Cl量/流動材の量)が300mg/kg未満、またはK濃度(K量/流動材の量)が750mg/kg未満を満たすように、流動層の流動材の入れ替え量、つまり、流動層に投入する量と、排出する量を制御する。流動層に付着物がない流動材または流動材循環部40で付着物を除去した流動材を供給することで、流動層内の付着物の塩素の量、カリウムの量を低減することができ、アグロメ粒子の発生を抑制できる。
【0041】
また、制御装置70は、図6図7の燃料の成分と流動材への付着に基づいて、付着物の増加を抑制する場合、例えば、付着物が閾値以上となった場合、流動層の温度を580℃以下とする。これにより、図4に示すようにKClの生成を抑制でき、付着物の増加を抑制することができる。
【0042】
また、上記実施形態では、アルカリ金属がカリウムの場合として説明したが、ナトリウム(Na)の場合も同様である。アルカリ金属は、燃料中の合計量で評価すればよい。
【0043】
本開示は、以下の発明を開示している。なお、下記に限定されない。
(1)バイオマスを含む燃料を流動材で流動させつつ加熱する流動層装置を制御する流動層運転制御装置であって、バイオマスを含む燃料のアルカリ金属の含有量と塩素の含有量を取得する計測部と、前記流動層装置の前記流動材と前記燃料が流動する流動層の温度を取得する温度取得部と、前記アルカリ金属の含有量と、前記流動層の温度に基づいて、付着物の量を算出し、算出した付着物の量に基づいて、前記流動層装置の運転条件を制御する制御部と、を含む流動層運転制御装置。
【0044】
(2)前記制御部は、予め算出した、前記流動層内のアルカリ金属と塩素の反応物の濃度及び前記流動層の温度と、付着物の付着速度との関係を有し、
前記関係と、前記アルカリ金属の含有量と、前記流動層の温度に基づいて、付着物の量を算出する(1)に記載の流動層運転制御装置。
【0045】
(3)前記制御部は、前記運転条件として、前記燃料の投入量を制御する(1)または(2)に記載の流動層運転制御装置。
【0046】
(4)前記制御部は、前記運転条件として、前記流動層の塩素濃度を300mg/kg未満またはアルカリ金属濃度を750mg/kg未満とする(3)に記載の流動層運転制御装置。
【0047】
(5)前記制御部は、前記運転条件として、前記流動層装置の運転期間を算出する(1)から(4)のいずれかに記載の流動層運転制御装置。
【0048】
(6)前記制御部は、前記運転条件として、前記流動層内の前記流動材の入れ替え量を制御する(1)から(5)のいずれかに記載の流動層運転制御装置。
【0049】
(7)前記制御部は、前記運転条件として、前記流動層の温度を制御する(1)から(6)のいずれかに記載の流動層運転制御装置。
【0050】
(8)前記制御部は、前記運転条件として、前記流動層の温度を580℃以下とする(1)から(7)のいずれかに記載の流動層運転制御装置。
【0051】
(9)前記アルカリ金属は、カリウムである(1)から(8)のいずれかに記載の流動層運転制御装置。
【0052】
(10)バイオマスを含む燃料を流動材で流動させつつ加熱する流動層装置を制御する流動層運転制御方法であって、バイオマスを含む燃料のアルカリ金属の含有量と塩素の含有量を取得するステップと、前記流動層装置の前記流動材と前記燃料が流動する流動層の温度を取得するステップと、前記アルカリ金属の含有量と、前記流動層の温度に基づいて、付着物の量を算出し、算出した付着物の量に基づいて、前記流動層装置の運転条件を制御するステップと、を含む流動層運転方法。
【0053】
(11)バイオマスを含む燃料を流動材で流動させつつ加熱する流動層装置を制御する流動層運転制御プログラムであって、バイオマスを含む燃料のアルカリ金属の含有量と塩素の含有量を取得するステップと、前記流動層装置の前記流動材と前記燃料が流動する流動層の温度を取得するステップと、前記アルカリ金属の含有量と、前記流動層の温度に基づいて、付着物の量を算出し、算出した付着物の量に基づいて、前記流動層装置の運転条件を制御するステップと、を含む処理をコンピュータに実行させる流動層運転制御プログラム。
【符号の説明】
【0054】
10 流動層ボイラ
11 サイクロン
12 排出通路
13 内部熱交換器
14 空気予熱器
15 集塵機
16 煙突
17 空気供給管
18 空気ファン
20 流動層火炉
21 燃焼室
212 側壁
22 底面
23 流動層
23a 流動方向
30 散気管
30o 空気供給孔
32 流動材供給部
34 燃料供給部
36 加熱装置
36a 第1加熱部
36b 第2加熱部
40 流動材循環部
42 循環経路
44 分離部
46 洗浄部
50 温度測定部
52 燃料測定部
54 流動材測定部
70 制御装置
72 制御部
74 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8