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  • 特開-バイオディーゼル燃料製造プラント 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113919
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】バイオディーゼル燃料製造プラント
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/64 20220101AFI20240816BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20240816BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240816BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20240816BHJP
【FI】
C12P7/64
C12N1/12 A
C12M1/00 E
A01G31/00 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019197
(22)【出願日】2023-02-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年6月4日掲載、掲載アドレス https://www.revo-e.JP/、他(証明書の別紙1参照)
(71)【出願人】
【識別番号】523048804
【氏名又は名称】株式会社Revo Energy
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 敏也
【テーマコード(参考)】
2B314
4B029
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
2B314PD59
2B314PD62
2B314PD70
4B029AA02
4B029BB04
4B029CC01
4B064AD85
4B064AH19
4B064CA08
4B064CC22
4B064DA16
4B065AA83X
(57)【要約】
【課題】バイオディーゼル燃料の製造と、ユーグレナの従属栄養培養に必要な栄養源の生産とを同一施設内で行うことができ、バイオディーゼル燃料の自給自足を可能とするバイオディーゼル燃料製造プラントを提供する。
【解決手段】本発明に係るバイオディーゼル燃料製造プラントは、太陽光をエネルギー源として稲の水耕栽培を行う水耕栽培ユニットと、水耕栽培ユニットで収穫された米を分解した糖を用いて、培養槽内でユーグレナの従属栄養培養を行うユーグレナ培養ユニットと、ユーグレナ培養ユニットで培養したユーグレナからバイオディーゼル燃料を生成する燃料生成ユニットとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光をエネルギー源として稲の水耕栽培を行う水耕栽培ユニットと、
前記水耕栽培ユニットで収穫された米を分解した糖を用いて、培養槽内でユーグレナの従属栄養培養を行うユーグレナ培養ユニットと、
前記ユーグレナ培養ユニットで培養したユーグレナからバイオディーゼル燃料を生成する燃料生成ユニットとを備える、バイオディーゼル燃料製造プラント。
【請求項2】
前記水耕栽培ユニット内に太陽光を採光する太陽光照明と、
前記水耕栽培ユニット内に設けられた照明装置に電力を供給可能な太陽光パネルと、
前記太陽光パネルで発電した電力を蓄電可能な蓄電池とを更に備える、請求項1に記載のバイオディーゼル燃料製造プラント。
【請求項3】
前記ユーグレナ培養ユニットは、複数の前記培養槽を備える、請求項1または2に記載のバイオディーゼル燃料製造プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーグレナを利用してバイオディーゼル燃料を製造するバイオディーゼル燃料製造プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題の原因の1つと考えられているCOを削減するため、石油燃料の代替燃料として、バイオ燃料の利用拡大が期待されている。例えば、トラックやバス、船舶等で用いられる軽油の一部を、バイオディーゼル燃料と呼ばれるバイオ燃料に置き換える試みがなされている。バイオディーゼル燃料の製造方法としては、動植物油を原料とし、エステル交換反応によりグリセリンを除去する方法が一般的であるが、動植物油の代わりに、ユーグレナの培養により得られるワックスエステルを利用する手法も種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1及び2には、ユーグレナの培養によりワックスエステルを生成する方法が記載されている。特許文献1には、ユーグレナを好気条件で培養した後、嫌気条件下で保持すると、貯蔵多糖であるパラミロンを分解して、脂肪酸と脂肪アルコールからなるワックスエステルを生成することが記載されている。また、特許文献2には、ユーグレナを好気的に培養した後、嫌気条件に保持する前に、培養液にグルコースやフルクトース等の炭素源を添加して従属栄養条件で培養を行うことにより、ワックスエステル高含有ユーグレナを生産できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-023977号公報
【特許文献2】特開2013-153730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーグレナを利用したバイオディーゼル燃料の生産コストを低減するためには、ユーグレナの培養によるワックスエステルの生産効率を可能な限り高くする必要がある。そこで、ユーグレナの培養方法として、特許文献2に記載されるような従属栄養培養を採用することが考えられる。従属栄養培養を行う場合、グルコース等の糖源を培地に添加することが必要となるが、ある程度の規模でバイオディーゼル燃料を製造しようとすると、使用する糖源の量も多くなり、糖源の調達に手間やコストを要する。
【0006】
それ故に、本発明は、バイオディーゼル燃料の製造と、ユーグレナの従属栄養培養に必要な栄養源の生産とを同一施設内で行うことができ、バイオディーゼル燃料の自給自足を可能とするバイオディーゼル燃料製造プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るバイオディーゼル燃料製造プラントは、太陽光をエネルギー源として稲の水耕栽培を行う水耕栽培ユニットと、水耕栽培ユニットで収穫された米を分解した糖を用いて、培養槽内でユーグレナの従属栄養培養を行うユーグレナ培養ユニットと、ユーグレナ培養ユニットで培養したユーグレナからバイオディーゼル燃料を生成する燃料生成ユニットとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バイオディーゼル燃料の製造と、ユーグレナの従属栄養培養に必要な栄養源の生産とを同一施設内で行うことができ、バイオディーゼル燃料の自給自足を可能とするバイオディーゼル燃料製造プラントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るバイオディーゼル燃料製造プラントの概略構成を示すブロック図
図2】変形例に係るバイオディーゼル燃料製造プラントの概略構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るバイオディーゼル燃料製造プラントの概略構成を示すブロック図である。
【0011】
バイオディーゼル燃料製造プラント100は、ユーグレナ(ミドリムシ)の培養で得られるワックスエステルからバイオディーゼル燃料を製造する施設であり、水耕栽培ユニット1と、ユーグレナ培養ユニット2と、燃料製造ユニット3と、太陽光照明4と、太陽光パネル5と、蓄電池6とを備える。
【0012】
<水耕栽培ユニット1>
水耕栽培ユニット1は、ユーグレナの従属栄養培養に必要となる栄養源(糖の原料)となる米を生産するユニットであり、太陽光をエネルギー源として利用し、稲の水耕栽培を行う。水耕栽培ユニット1は、複数の栽培棚11と、複数のLED照明12と、溶液タンク13と、ポンプ14と、空調装置15とを有する。水耕栽培ユニット1は、閉鎖可能な部屋やチャンバーとして構成され、内部に栽培棚11、LED照明12、溶液タンク13、ポンプ14及び空調装置15が収容されている。
【0013】
栽培棚11は、稲を栽培するための部分であり、稲を保持するための保持材を有する。保持材は、例えば、ウレタンフォーム等の吸水性の材料で構成される。保持材にはスリットや孔等が予め設けられており、播種時には予め発根及び発芽させた籾をスリットや孔に挿入する。保持材は、稲を育成するための栄養素や微量成分を含む栽培溶液に浸漬されており、稲に保持材を通して栽培溶液を吸収させることができる。面積あたりの収穫量を増加させるため、複数の栽培棚11を、所定間隔を空けて上下に多段に重ねて配置することが好ましい。
【0014】
LED照明12は、栽培棚11のそれぞれに対応して栽培棚11の上方に設けられており、栽培棚11に光を照射する。
【0015】
溶液タンク13は、稲を水耕栽培するために必要な各種栄養素及び微量成分を含有する水溶液(栽培溶液)を貯留する。溶液タンク13には、肥料濃度やpH、温度等を調整するための調整装置や、貯留する栽培溶液を攪拌するための攪拌装置等が適宜設けられる。
【0016】
ポンプ14は、所定の配管を介して溶液タンク13及び栽培棚11に接続されており、溶液タンク13内の栽培溶液を栽培棚11に供給する。配管の途中には開閉弁や逆止弁が適宜設けられており、図示しない制御装置で開閉弁の開閉を制御することにより、栽培棚11の保持部材が一定量の栽培溶液を吸収している状態を維持している。
【0017】
空調装置15は、水耕栽培ユニット1内の温度及び湿度を稲の栽培に適した条件となるように調整する。
【0018】
本実施形態に係るバイオディーゼル燃料製造プラント100には、太陽光照明4が設けられている。水耕栽培ユニット1の栽培棚11の上方には、太陽光照明4の導光部の一端が配置されており、日照時間帯には、太陽光照明4によって採光された太陽光を栽培棚11に照射することができる。尚、導光部としては、導光管や光ファイバーを使用できる。バイオディーゼル燃料製造プラント100が太陽光照明4を備える場合、日照時間帯の間は採光した太陽光を利用して稲を栽培することができるので、LED照明12に要するコストを低減することができる。日照のない夜間や、光量が不足する曇天時等には、LED照明12を用いることにより、栽培中の稲に24時間光を照射することが可能である。
【0019】
水耕栽培ユニット1で栽培する稲の品種は特に限定されないが、省スペースでの大量栽培が可能となるよう、草丈の短い品種を使用することが好ましい。例えば、登録品種である「みずのゆめ」は、草丈が20cm以下であるため、栽培棚11を上下に多段に重ねて配置する栽培方法に特に適している。LED照明12の波長と栽培溶液の組成を最適化し、LED照明12を24時間照射することにより、約2ヶ月で米を収穫することが可能となる。栽培条件の最適化により6期作が可能となることで、ユーグレナの培養に必要な糖の原料となる米を省スペースかつ高効率で生産することができる。
【0020】
水耕栽培ユニット1で収穫された米は、バイオディーゼル燃料製造プラント100とは別拠点に設けられる糖化施設8に輸送され、糖化施設8内の糖化装置9を用いて糖(グルコース)に変換される。糖化の方法は特に限定されないが、酵素処理や発酵法など公知の方法を利用できる。更に、稲わらや籾殻のセルロースを酵素処理や発酵法等で分解してグルコースに変換しても良い。糖化施設8での糖化により得られた糖は、ユーグレナ培養ユニット2に搬入され、ユーグレナの栄養分として利用する。
【0021】
尚、水耕栽培ユニット1での水耕栽培には、特開2021-185873号公報、特開2021-185874号公報及び特開2021-187719号公報に開示される技術を適用することができる。
【0022】
<ユーグレナ培養ユニット2>
ユーグレナ培養ユニット2は、水耕栽培ユニット1で収穫された米を糖化施設8で分解した糖を用いてユーグレナの従属栄養培養を行うユニットである。ユーグレナ培養ユニット2は、培養槽21と、培養液供給装置22と、濃縮液回収装置23とを備える。
【0023】
培養槽21は、培養液を攪拌するための攪拌装置または水中ポンプ、糖度計、pHメータ、溶存酸素計、溶存炭酸ガス計、水温計、培養液の温度を調節するためのヒーターやチラー等を適宜備えていても良い。ユーグレナ培養ユニット2には、複数の培養槽21が設けられることが好ましい。1つの培養槽21のみで培養を行った場合、培養に失敗すると、セットした培養液の全部が無駄になってしまう。これに対して、複数の培養槽21に分けてユーグレナの培養を行った場合、いずれかの培養槽21の培養に失敗しても、セットした培養液の全量が無駄になるリスクを低減できる。ユーグレナ培養ユニット2に複数の培養槽21を設ける場合、培養開始日をずらすことが好ましい。例えば、培養期間が6日間の場合、6基の培養槽21を設け、培養開始を一日ずつずらしてサイクル培養を行うことにより、複数の培養槽21での培養に失敗する可能性をより低減することができる。
【0024】
培養液供給装置22は、水耕栽培ユニット1で収穫された米由来の糖と、ユーグレナの培養に必要な各種栄養素とを含む培養液を培養槽21に供給する。
【0025】
濃縮液回収装置23は、培養が完了した培養液を濾過し、ユーグレナを高濃度で含む濃縮液を回収する。濃縮液回収装置23は、回収した濃縮液を図示しない配管を通じて、燃料製造ユニット3に送出する。より具体的には、培養の最終段階において、培養槽21の攪拌装置や水中ポンプを停止させ、所定時間(例えば24時間)静置状態で培養を行うことにより、ユーグレナを培養槽21の底部に沈殿させる。濃縮液回収装置23は、沈殿したユーグレナを含む培養液を濾過しながら抜き取ることにより濃縮液を回収する。濃縮液回収装置23は、濾過した培養液を培養槽21や図示しない培養液タンクに循環させても良い。濾過後の培養液を再利用することにより、水の使用量を削減することができる。
【0026】
<燃料製造ユニット3>
燃料製造ユニット3は、ユーグレナ培養ユニット2で培養したユーグレナからバイオディーゼル燃料を生成する。燃料製造ユニット3は、遠心分離機31と、燃料化装置32と、貯蔵タンク33とを備える。
【0027】
遠心分離機31は、濃縮液回収装置23によって回収されたユーグレナの濃縮液を遠心分離する。
【0028】
燃料化装置32は、遠心分離したユーグレナからワックスエステルを抽出し、抽出したワックスエステルとアルコールとのエステル交換反応によりバイオディーゼル燃料を生成する。エステル交換反応に用いるアルコールとしては、メタノールやエタノールを使用できる。燃料化装置32は、エステル交換反応の反応液からバイオディーゼル燃料を蒸留等により精製し、精製後のバイオディーゼル燃料を貯蔵タンク33に貯蔵する。
【0029】
本実施形態に係るバイオディーゼル燃料製造プラント100は、太陽光パネル5と、蓄電池6と、発電機7とを更に備える。
【0030】
太陽光パネル5は、バイオディーゼル燃料製造プラント100の建屋外部に配置されており、発電した電力をバイオディーゼル燃料製造プラント100内の電気機器に供給する。バイオディーゼル燃料製造プラント100で消費する電力をまかなうことができるよう、可能な限り変換効率の高い太陽光パネル5を使用することが好ましい。また、太陽光パネル5は、バイオディーゼル燃料製造プラント100の屋根上のスペースなどを利用して可能な限り広い面積に設置することが好ましい。太陽光パネル5を備えることにより、水耕栽培ユニット1において、省エネルギーでの稲の栽培が可能となる。
【0031】
太陽光パネル5で発電した余剰な電力は蓄電池6に蓄電される。本実施形態のように太陽光パネル5と共に太陽光照明4を設けた場合、日照量が十分な時間帯には、太陽光照明4で採光した光を栽培棚11に照射しつつ、太陽光パネル5の余剰な発電電力を蓄電池6に蓄電することができる。夜間や曇天時等の日照量が不足する時間帯には、蓄電池6に蓄えた電力をLED照明12に供給することで、稲に対して24時間の光照射が可能となる。
【0032】
バイオディーゼル燃料製造プラント100の可動に必要な電力を太陽光パネル5及び蓄電池6が供給できない場合は、発電機7を稼働することにより電力を供給することができる。発電機7で発電した電力で蓄電池6を充電しても良い。発電機7は、ディーゼル発電機であることが好ましく、この場合、貯蔵タンク33に貯蔵されているバイオディーゼル燃料を用いて発電を行うことができる。
【0033】
尚、太陽光パネル5の発電量は季節や天気に左右されるので、電力の安定供給ができるように、バイオディーゼル燃料製造プラント100を商用電源にも接続することが好ましい。
【0034】
バイオディーゼル燃料製造プラント100は更に、CO排出装置24及びO供給装置25の一方または両方を備えても良い。
【0035】
CO排出装置24は、培養槽21内で発生した、CO濃度が相対的に高い空気を排出し、水耕栽培ユニット1内に供給することができる。CO排出装置24を設けることにより、培養槽21で発生したCOを稲の水耕栽培に利用することができ、COの排出量を低減することができる。
【0036】
供給装置25は、水耕栽培ユニット1内で光合成により発生した、酸素濃度が相対的に高い空気を排出し、培養槽21に供給することができる。O供給装置25を設けることにより、ユーグレナの従属栄養培養のいずれかの段階で酸素を必要とする場合に、水耕栽培ユニット1で発生した酸素を有効利用することができる。
【0037】
以下、バイオディーゼル燃料製造プラント100を用いたバイオディーゼル燃料の製造方法を説明する。
【0038】
水耕栽培ユニット1において、栽培棚11に籾の播種を行う。上述したように、播種は、予め消毒及び水に浸漬させて発根及び発芽させた籾を、栽培棚11の保持材の孔やスリットに挿入することによって行う。その後、コンピュータを用いて、水耕栽培ユニット1に設けられる温度計、湿度計、pHメータ等の各種センサを用いて各種パラメータをモニタし、所定の栽培条件となるように、気温、湿度、栽培養液の温度、栽培棚11への栽培養液の供給速度等を制御し、所定期間(例えば60日間)栽培を行う。栽培期間が経過して稲穂が実ると、稲を収穫する。尚、栽培棚11への籾のセットと稲の収穫は人手で行うが、機械を用いて自動化しても良い。収穫した稲は、糖化施設8に輸送し、糖化装置9を用いて米を糖(グルコース)に変換する。得られた糖は、ユーグレナ培養ユニット2にも受けられる貯蔵タンク(図示せず)に貯蔵しても良い。尚、糖化装置9で得られた糖は、固体で貯蔵しても良いし、液体で貯蔵しても良い。
【0039】
ユーグレナ培養ユニット2において、ユーグレナの従属栄養培養を行う。培養槽21に、培養液(培地)を入れた後、ユーグレナを摂取する。培養液は、糖、窒素源、リン源、ミネラル等を含有する。その後、培養液を撹拌装置または水中ポンプを用いて攪拌する。その後、コンピュータを用いて、培養槽21に設けられる糖度計、pHメータ、溶存酸素計、溶存炭酸ガス計、水温計等の各種センサを用いて各種パラメータをモニタし、所定の培養条件となるように、糖度、pH、水温、残存O濃度、残存CO濃度等を制御し、所定期間培養を行う。ユーグレナの従属栄養培養は、嫌気条件下で行っても良いし、好気条件下で行っても良いし、好気条件での培養と嫌気条件での培養とを組み合わせて行っても良い。また、従属栄養培養中に、必要に応じて、培養槽に酸素または二酸化炭素を供給しても良い。培養期間の経過後、培養液の攪拌を停止し、培養したユーグレナを沈殿させる。上述したように、ユーグレナ培養ユニット2に複数の培養槽21が設けられる場合は、培養開始を一日ずつずらして行うことが好ましい。ユーグレナの従属栄養培養方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0040】
上記の水耕栽培ユニット1における米の栽培と、ユーグレナ培養ユニット2におけるユーグレナの培養とは、並列して行うことができる。
【0041】
燃料製造ユニット3においては、ユーグレナ培養ユニット2においてユーグレナの培養が完了する度に、バイオディーゼル燃料の製造を行う。燃料製造ユニット3において、培養槽21から回収したユーグレナの濃縮液からユーグレナを遠心分離し、分離したユーグレナからワックスエステルを抽出し、ワックスエステルとアルコールのエステル交換反応を行った後、バイオディーゼル燃料を精製し、貯蔵タンク33に貯蔵する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係るバイオディーゼル燃料製造プラント100は、ユーグレナの従属栄養培養を行うユーグレナ培養ユニット2及び燃料製造ユニット3と同一施設内に、稲を栽培する水耕栽培ユニット1を備える。したがって、ユーグレナの従属栄養培養に必要な栄養源を別途購入することなく、水耕栽培ユニット1で収穫した米を分解して得た糖を用いてグルコースの培養が可能となる。したがって、本実施形態に係るバイオディーゼル燃料製造プラント100によれば、ユーグレナを利用してバイオディーゼル燃料の自給自足を行うことが可能となる。
【0043】
また、水耕栽培ユニット1では、栽培棚11を多段に配置し、LED照明12を用いて24時間光照射を行うことにより、極めて高効率に稲を栽培することができる。すなわち、水耕栽培ユニット1においては、水田で栽培する場合と比べて、単位期間(例えば1年)あたりの米の収穫量を飛躍的に高めることができるため、収穫した米から得られる糖の収量も多くなる。糖の収量が多くなることにより、ユーグレナの培養量を増やすことができるため、バイオディーゼル燃料の製造量を向上させることができる。
【0044】
更に、水耕栽培ユニット1による極めて高効率な稲栽培と、従属栄養培養によるワックスエステルの高効率な生成とを組み合わせることにより、バイオディーゼル燃料の製造に要するコストを低減することが可能となる。本実施形態のように、太陽光パネル5を設けた場合、バイオディーゼル燃料製造プラント100の稼働に必要な電力の少なくとも一部をまかなうことができるため、バイオディーゼル燃料の製造コストを更に低減できる。
【0045】
(変形例)
図2は、変形例に係るバイオディーゼル燃料製造プラントの概略構成を示すブロック図である。
【0046】
変形例に係るバイオディーゼル燃料製造プラント101は、収穫した米を糖に変換する糖化装置9を同一施設内に備えている点で、図1に示したバイオディーゼル燃料製造プラント100と異なる。変形例のようにプラント内に糖化装置9を設けた場合、糖化装置9の設置にコストを要するが、収穫した米を輸送することなくプラント内で糖の製造を行うことができるので、バイオディーゼル燃料の自給自足という観点ではより有利である。
【0047】
本発明に係るバイオディーゼル燃料製造プラント100及び101は、例えば、運送会社やバス会社、タクシー会社、建設会社等の車両を使用する企業の敷地内や、船舶を使用する企業の敷地内や港湾部に設置することが好ましい。この場合、バイオディーゼル燃料製造プラント100及び101で製造したバイオディーゼル燃料を需要者に容易に提供することができる。本発明に係るバイオディーゼル燃料製造プラント100及び101は、ユーグレナ培養ユニット2及び燃料製造ユニット3に加え、ユーグレナの従属栄養培養に必要な栄養源を作り出す水耕栽培ユニット1を備えているので、ユーグレナを利用したバイオディーゼル燃料の製造に必要なコンポーネントがほぼ揃っており、バイオディーゼル燃料の需要者の近くに構築した後の運用が容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、バイオディーゼル燃料を製造するためのプラントとして利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 水耕栽培ユニット
2 ユーグレナ培養ユニット
3 燃料製造ユニット
4 太陽光照明
5 太陽光パネル
6 蓄電池
12 LED照明
21 培養槽
図1
図2