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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011392
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】容量式静電センサ
(51)【国際特許分類】
   H01H 36/00 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
H01H36/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113335
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000242633
【氏名又は名称】北陸電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】加地 義治
【テーマコード(参考)】
5G046
【Fターム(参考)】
5G046AA02
5G046AB01
5G046AC24
5G046AD15
(57)【要約】
【課題】シールド電極と検出電極との間の電気力線の量を大幅に減少させることなく、検出電極と被測定対象との間の距離を延ばすことができる容量式静電センサを提供する。
【解決手段】絶縁性基板2A乃至2Cを積層して形成された多層絶縁性基板2の最上層の絶縁性基板2Aの表面上に検出電極3を形成する。最上層の絶縁性基板2Aの裏面には、検出電極3と多層絶縁性基板2の積層方向に対向する非接地のシールド電極4を設ける。さらに、多層絶縁性基板2の最上層の絶縁性基板2Aの表面上に、接着層5を介して誘電性を有する操作パネル14を接合する。操作パネル14に、接着層5に向かって開口し、且つ検出電極3の外周縁及びシールド電極4の外周縁に沿うように、シールド電極4の外周縁と積層方向に対向する環状の溝部7を設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁性基板が重合して形成された多層絶縁性基板の最上層の絶縁性基板の表面上に形成された検出電極と、
前記多層絶縁性基板の前記最上層の絶縁性基板の前記表面以外の前記絶縁性基板の面上に形成され、前記検出電極と前記多層絶縁性基板の積層方向に対向する非接地のシールド電極と、
前記最上層の絶縁性基板の前記表面上に接着層を介して接合された誘電性を有する操作パネルと、
前記接着層に向かって開口し且つ前記検出電極の外周縁及び前記シールド電極の外周縁に沿うように前記操作パネルに形成されて、前記シールド電極の前記外周縁と前記積層方向に対向する環状の溝部とを備えていることを特徴とする容量式静電センサ。
【請求項2】
前記検出電極と前記シールド電極とが前記積層方向に完全に対向している請求項1に記載の容量式静電センサ。
【請求項3】
前記シールド電極の前記外周縁は、前記検出電極の外周縁の外側に位置している請求項1に記載の容量式静電センサ。
【請求項4】
前記シールド電極の前記外周縁は、前記検出電極の外周縁の外側に0.5mm~1mm外側に位置している請求項3に記載の容量式静電センサ。
【請求項5】
前記環状の溝部は、前記検出電極とは前記積層方向に対向しない請求項1に記載の容量式静電センサ。
【請求項6】
前記環状の溝部は、記検出電極と前記積層方向に完全に対向しないが、一部が前記検出電極と前記積層方向に対向する請求項2に記載の容量式静電センサ。
【請求項7】
前記環状の溝部は、前記検出電極とは前記積層方向に対向しない請求項2に記載の容量式静電センサ。
【請求項8】
前記環状の溝部は、記検出電極と前記積層方向に完全に対向しないが、一部が前記検出電極と前記積層方向に対向する請求項2に記載の容量式静電センサ。
【請求項9】
前記環状の溝部の深さが0.5mm以上である請求項1に記載の容量式静電センサ。
【請求項10】
前記環状の溝部は完全な閉ループを呈している請求項1に記載の容量式静電センサ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の容量式静電センサの複数個が、被検出対象に沿って列を成すように配置されてなる容量式静電センサ装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の容量式静電センサの前記検出電極及び前記シールド電極が、被検出対象と対向し且つ前記被検出対象の全長に沿って延びる形状を有している容量式静電センサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量式静電センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第6606175号公報(特許文献1)には、相互容量式静電センサまたは自己静電容量式静電センサとして使用可能な容量式静電センサが開示されている。この公報の図7cには、検出電極150の周囲を囲むように接地された遮蔽電極(シールド電極)270を配置した静電センサが開示されている。特許文献1の図7cに示された静電センサでは、接地された遮蔽電極270と検出電極150との間の相互静電容量の変化を検出している。
【0003】
また特開2000-48694号公報(特許文献2)には、第1層の絶縁性基板の表面に検出電極が形成され、第2層の絶縁性基板の表面にシールド電極が形成され、第2層の絶縁性基板の裏面に接地電極が形成された静電容量形近接センサが開示されている。
【0004】
特開2013-105444号公報(特許文献3)には、検出電極を形成する基板の表面に誘電材料からなる操作パネルを接合し、基板の表面に形成された二つの検出電極の間または配線電極に対向する操舵パネルの部分に、基板に向かって開口する溝部を備えた静電容量型タッチセンサが開示されている。この溝部は、基板と操作パネルとの間を真空接着するための空気溝であり、この空気溝を検出電極の間または配線電極が設けられている領域に形成して、静電ノイズの影響により回路が破壊されることを防止している。
【0005】
さらに特開2013-257807号公報(特許文献4)に示されたタッチセンサでは、基板の裏面に検出電極と配線を設け、基板の表面に操作パネルを配置し、さらに操作パネルに配線と対応する位置に溝部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6606175号公報
【特許文献2】特開2000-48694号公報
【特許文献3】特開2013-105444号公報
【特許文献4】特開2013-257807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示された容量式の静電センサでは、遮蔽電極が接地されているため、接地された遮蔽電極270と検出電極150との間の静電容量の変化が、検出結果に影響を与えることになり、検出電極と非測定対象との間の距離を延ばすことの障害になっていた。
【0008】
また特許文献2に示された静電センサのように、遮蔽電極が検出電極と積層方向に対向している場合には、検出電極と遮蔽電極との間の電気力線の量を有効に活用することができず、これも検出電極と非測定対象との間の距離を延ばすことの障害になっていた。
【0009】
さらに引用文献3及び4に示された静電容量センサに示された操作パネルに形成する溝部は、ノイズ対策や誤動作を防止対策で形成されているものである。しかしながら引用文献3及び4に示された静電容量センサでは、感度を高めるために非接地のシールド電極を用いるときに、隣合う検出電極間でノイズが発生することを防止する必要性がある場合や、検出電極と被測定対象との間の検出距離を延ばすために、シールド電極に対して溝部をどのように形成するかについては、開示も示唆もない。
【0010】
本発明の目的は、非接地のシールド電極と検出電極との間の電気力線の量を大幅に減少させることなく、検出電極と被測定対象との間の距離を延ばすことができる静電センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明が改良の対象とする容量式静電センサは、複数の絶縁性基板が重合して形成された多層絶縁性基板の最上層の絶縁性基板の表面上に形成された検出電極と、多層絶縁性基板の最上層の絶縁性基板の表面以外の絶縁性基板の面上に形成され、検出電極と多層絶縁性基板の積層方向に対向する非接地のシールド電極と、最上層の絶縁性基板の表面上に接着層を介して接合された誘電性を有する操作パネルとを有している。本発明においては、検出電極が多層絶縁性基板の最上層の絶縁性基板の表面に形成され、シールド電極が多層絶縁性基板の最上層の絶縁性基板以外の絶縁性基板の面に形成されているので、検出電極と非接地のシールド電極との間を通る電気力線を遮蔽して感度を高めることが可能となり、外来ノイズの影響を受け難いという効果が得られる。その上、接着層に向かって開口し且つ検出電極の外周縁及びシールド電極の外周縁に沿うように操作パネルに形成されて、シールド電極の外周縁と積層方向に対向する環状の溝部を設ける。このように操作パネルに環状の溝部を設けると、シールド電極を設けることにより高めた感度を低下させることなく、ノイズの進入を防止することができる。また隣接する検出電極間の距離が短い場合において、このような環状の溝部を設けると、隣り合う検出電極間に対応する操作パネル部分に操作者の指先が位置しても、2つの検出電極が同時に検出動作をすることを防止できる。
【0012】
検出電極とシールド電極とが積層方向に完全に対向していてもよい。このようにすると、多層絶縁性基板の背面側からのノイズの影響を阻止することができる。
【0013】
またシールド電極の外周縁が、検出電極の外周縁の外側に位置しているのが好ましい。このようにすると環状の溝部の存在により外部からのノイズの進入を防止した上で、多層絶縁性基板の裏面側からのノイズの影響を最大限阻止することができる。したがって複数の検出電極間の距離を短くしても誤検出することを防止することができる。
【0014】
なお、シールド電極の外周縁は、検出電極の外周縁の外側に0.5mm~1mm外側に位置しているのが好ましい。この範囲であれば、上述の効果を得て、しかも複数の検出電極間の距離を短くして高密度化を実現できる。
【0015】
なお環状の溝部は、検出電極と積層方向に対向してもよいが、検出電極と積層方向に完全に対向せずに、一部が検出電極と積層方向に対向しても良い。環状の溝部が検出電極と積層方向に対向する領域の広がりと、検出電極の有効検出領域の関係は逆比例の関係になる。その結果、環状の溝部を検出電極と積層方向に対向させることにより、1つの検出電極の見掛け上の大きさを変更することができる。
【0016】
なお、環状の溝部の深さは、0.5mm以上あるのが好ましい。
【0017】
環状の溝部は完全な閉ループを呈しているのが好ましい。環状の溝部に一部、欠けた部分があると、その分、上述の効果は低下するが、隣接する検出電極間の距離が十分に長ければ、実用上の問題は生じない。
【0018】
本発明の容量式静電センサを複数個、被検出対象に沿って列を成すように配置して静電容量式センサユニットを構成すれば、複数のセンサを用いて、検出範囲を広げて、液面レベルセンサ装置等を構成することができる。なお容量式静電センサの検出電極及びシールド電極を、被検出対象と対向し且つ被検出対象の全長に沿って延びる形状にすれば、一つの検出電極を用いて検出範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施の形態の容量式静電センサを用いた容量式静電センサユニットの概略断面図である。
図2】検出電極とシールド電極の配置関係を示す概略図である。
図3】(A)及び(B)は、シールド電極の外周縁と検出電極の外周縁との位置関係を説明するための図である。
図4】(A)は検出電極とシールド電極と環状の溝部の位置関係の代表例の断面図であり、(B)はこの代表例における検出電極と環状の溝部の配置関係を示す図であり、(C)は本実施の形態における環状の溝部と検出電橋との配置関係の許容範囲を示す断面図である。
図5】(A)は本実施の形態の容量式静電センサユニットを3個用いたセンサユニットの例を示す図であり、(B)は本実施の形態の容量式静電センサユニットの検出電極とシールド電極を多層絶縁性基板の長手方向全体に長く形成した例を示す図である。
図6】本実施の形態の容量式静電センサユニットを樹脂製のタンクに適用した一例を示す図である。
図7】本実施の形態の容量式静電センサユニットを樹脂製のタンクに適用した別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本発明の容量式静電センサを容量式静電センサユニットに適用した実施の形態について説明する。図1は本実施の形態の容量式静電センサを用いた容量式静電センサユニット1の概略断面図を示しており、図2は検出電極3とシールド電極4の配置関係を示す概略図である。なお図1では、断面であることを示すハッチングは省略してある。また図2では、多層絶縁性基板2は輪郭のみを示してある。図1及び図2に示した容量式静電センサを用いたセンサユニット1は、例えば、電化製品の操作パネル(スイッチ)やエレベーターのスイッチ等に用いられるものである。
【0021】
本実施の形態では、多層絶縁性基板2は、3枚の絶縁性基板2A~2Cを積層して形成されている。多層絶縁性基板2を構成する3枚の絶縁性基板のうちの最上層の絶縁性基板2Aの表面上には、3つの矩形状の検出電極3が形成されている。本実施の形態では、3つの検出電極3は銅箔によって形成されている。本実施の形態では、3つの検出電極3は共通の配線パターンP1によって相互に接続されている。配線パターンには所定の電圧が印加される。
【0022】
また、多層絶縁性基板2に含まれる最上層の絶縁性基板2Aの裏面上には、3つの検出電極3と多層絶縁性基板2の積層方向に対向する非接地の3つのシールド電極4が形成されている。3つのシールド電極4は、検出電極3を保護するためのシールドで、相互に配線パターンP2によって接続されているものの接地はされていない。
【0023】
図3(A)及び(B)は、理解を容易にするために、シールド電極4の外周縁と検出電極3の外周縁との位置関係を説明するための図である。これらの図に示すように、シールド電極4の寸法は、シールド電極4と検出電極3の中心を一致させた状態で、シールド電極4の外周縁が検出電極3の外周縁の外側に1mm(設計値)張り出すように定められている。なお本実施の形態では、シールド電極4は非接地としているが、一般的な容量式センサの場合にはシールド電極4は接地されている。
【0024】
本実施の形態では、さらに、多層絶縁性基板2の最上層の絶縁性基板2Aの表面上には、オーバコートとしてのレジスト層6を形成している。なお図1においては、作図の都合上、レジスト層6は平板状に描いているが、実際上は最上層の絶縁性基板2Aの表面を完全に覆っている。
【0025】
多層絶縁性基板2の最上層の絶縁性基板2Aの上のレジスト層6の上には、接着層5を介してアクリル板8に切削加工を施して環状の溝部7を形成した操作パネル14が接合されている。アクリル製の操作パネル14は、透明または不透明のいずれでもよい。また本実施の形態では、接着層5をスリーエムジャパン株式会社がY4180-12の製品番号で販売する両面接着テープによって形成してある。
【0026】
操作パネル14には、接着層5である両面接着テープに向かって開口し、且つ検出電極3の外周縁及びシールド電極4の外周縁に沿うように環状の溝部7が、各検出電極3及びシールド電極4に対応して設けられている。環状の溝部7は、アクリル板8を削る(ザグル)ことにより、アクリル板8に空気層が形成された部分である。環状の溝部7の深さは、アクリル板8の厚みの半分程度あればよい。環状の溝部7が検出電極3と積層方向に対向する領域の広がりと、検出電極3の有効検出領域の関係は逆比例の関係になる。その結果、環状の溝部7を検出電極3と積層方向に対向させることにより、1つの検出電極の見掛け上の大きさを変更することができる。言い換えると、環状の溝部7によって、検出電極3の検出幅が定まることになる。すなわち環状の溝部7によって囲まれた検出電極3の上方領域が、1つの検出電極3の検出領域となる。検出電極3から出る理論上の電気力線が非直線的に延びて広がっても、環状の溝部7の設け方によって検出領域を制限することができる。したがって検出電極3が複数個並設される場合でも、各検出電極3間に操作者の指が入っても、2個の検出電極3が同時に検知する誤検知を防止することができる。
【0027】
なお環状の溝部7は完全な閉ループを呈しているのが好ましいが、環状の溝部7に一部、欠けた部分があるときでも、その分、上述の効果は低下するが、隣接する検出電極間の距離が十分に長ければ、実用上の問題は生じない。
【0028】
図4(A)は検出電極3とシールド電極4と環状の溝部7の位置関係の代表例の断面図を示しており、図4(B)はこの代表例における検出電極3と環状の溝部の配置関係を示している。図4(A)及び(B)に示す代表例では、矩形状の検出電極3と輪郭が矩形をなす環状の溝部7が、多層絶縁性基板2の積層方向には重なっていないが、環状の溝部7の内周縁はシールド電極4の外周縁と、積層方向において、ほぼ一致している。
【0029】
図4(A)に示す例では、シールド電極4の断面の幅が30mmであり、検出電極3の断面の幅が29mmである。そしてシールド電極4の外周縁に一致するように、多層絶縁性基板2の積層方向に対向する溝部7の内周縁の位置が定められている。図4(A)に示す例では、設計上、シールド電極4の外周縁が検出電極3の外周縁の0.5mm外側に位置しており、シールド電極4の外周縁と環状の溝部7の内周縁が一致するように環状の溝部7が形成されている。シールド電極4の外周縁が検出電極3の外周縁よりも1mmまで外側に位置している場合でも、本発明の効果が得られることが確認されている。
【0030】
図4(C)は、本実施の形態における環状の溝部7と検出電橋3との配置関係の許容範囲を示す断面図である。図4(C)の例では、図4(A)の例とは異なり、環状の溝部7の内周縁は、検出電極3の上方において、検出電極3のかなり内側の位置まで入り込んでいる。すなわち環状の溝部7の内周縁間の間隔が5mm(設計値)になるまで、検出電極3と環状の溝部7の重なり割合を大きくしている。その結果、面積的には、検出電極3の95%以上が溝部7と積層方向と対向している。同様に、環状の溝7とシールド電極4の配置関係においても、環状の溝部7の内周縁が、シールド電極4の上方において、シールド電極4のかなり内側の位置まで入り込んでおり、面積的には、シールド電極4の95%以上が溝部7と積層方向に対向している。図4(C)の例のように、環状の溝部7と検出電橋3及びシールド電極4の積層方向の重なり割合を大きくすると、実質的な検出電極3の幅が狭くなったのと同様の効果が得られる。すなわち、検出幅が狭くなる分、より誤検出が発生しにくく隣り合う検出電極3の間に対応する操作パネル14の部分に操作者の指先が位置したとしても、2つの検出電極3が同時に検出動作をすることを防止する効果を大きくできる。なお本実施の形態では、検出電極3上の環状の溝部7の内縁部間の距離を5mmまで短くすることができる。これよりも距離を短くすると、検出距離が短くなって好ましくない。
【0031】
本実施の形態では、検出電極3が多層絶縁性基板2の最上層の絶縁性基板2Aの表面に形成され、非接地のシールド電極4が多層絶縁性基板2の最上層の絶縁性基板2Aの裏面に形成されているので、検出電極3とシールド電極4との間を通る電気力線を遮蔽して感度を高めることが可能となる。また操作パネル14に、検出電極3の外周縁及びシールド電極4の外周縁と対向する環状の溝部7を設けると、シールド電極4を設けることにより高めた感度を低下させることなく、操作パネル14側からのノイズの進入を抑制することができる。また本実施の形態のように、シールド電極4の外周縁が、検出電極3の外周縁の外側に位置していると、シールド電極4の背面側から検出電極3に侵入するノイズの影響を低減することができる。
【0032】
図1及び図2に示した実施の形態は、容量式静電センサを用いたセンサユニット1に本発明を適用する場合に用いる基板2を示したものであるが、シールド電極を接地するタイプの容量式静電センサを3個用いたセンサユニットにも本発明を適用することができる。図5(A)及び図5(B)に示したセンサユニットの多層絶縁性基板2では、多層絶縁性基板2は輪郭だけを示してあり、図示しないシールド電極は、検出電極3と同じ大きさを有しているものである。図5(A)の実施の形態では、図示しないシールド電極を接地するための配線パターンP2と検出用電極に電圧を印加する配線パターンP1とが、3つの検出電極3の両側にそれぞれ配置されているので、図1に示したセンサユニット1と比べて幅寸法が大きくなる。
【0033】
また図5(B)は、1つの容量式静電センサの検出電極3及びシールド電極を多層絶縁性基板の長手方向全体に長く形成した例である。このようにすると1つの容量式静電センサで、液面の変位を検出ことが可能になる。
【0034】
図1のセンサユニット1を用いて例えば、樹脂製のタンク11内の水量を測定する場合には、図6に示すように、樹脂製のタンク11に沿ってセンサユニット1を配置する。このように構成することによって、例えば、FULL、MID、EMPTYの3段階のように、段階的にタンク等の水量の残量を検知することができる。
【0035】
樹脂製のタンク11の壁をそのまま操作パネル14の代用として利用することができる。図7は、例えばアクリル樹脂製のタンク11の外面に両面接着テープからなる接着層5を用いて多層絶縁性基板2を貼り付ける場合の例を示している。この場合には、タンク11の該側面には検出電極3に対応して環状の溝部を形成しておけばよい。
【0036】
なお、上記実施の形態では、検出電極3及びシールド電極4をそれぞれ矩形状にしているが、各電極の形状は矩形に限定されるものではなく、丸形、楕円形等種々の形状を使用することができる。電極の形状に合わせて、環状の溝部7の形状も変えるのは勿論である。
【0037】
上記実施の形態は、3つの検出電極を備えた容量式静電センサユニットの複数の容量式静電センサに本発明を適用したものであるが、1つの検出電極を備えた単体としての容量式静電センサに本発明を適用できるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、接着層に向かって開口し且つ検出電極の外周縁及びシールド電極の外周縁に沿うように操作パネルに形成されて、シールド電極の外周縁と積層方向に対向する環状の溝部を設けるため、シールド電極を設けることにより高めた感度を低下させることなく、ノイズの進入を防止することができる。また隣接する検出電極間の距離が短い場合において、このような環状の溝部を設けると、隣り合う検出電極間に対応する操作パネル部分に操作者の指先が位置しても、2つの検出電極が同時に検出動作をすることを防止できる。
【符号の説明】
【0039】
1 容量式静電センサユニット
2 多層絶縁性基板
2A乃至2C 絶縁性基板
3 検出電極
4 シールド電極
5 接着層
6 レジスト層
7 環状の溝部
8 アクリル板
11 タンク
14 操作パネル
P1 検出電極用配線パターン
P2 シールド電極用配線パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7