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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113923
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】車両用ドア支持部材
(51)【国際特許分類】
   E05F 3/16 20060101AFI20240816BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20240816BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20240816BHJP
   E05F 15/622 20150101ALI20240816BHJP
   E05F 1/10 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
E05F3/16
B60J5/10 B
B60J5/10 K
F16H25/20 H
E05F15/622
E05F1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019205
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】山形 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】住井 貴博
【テーマコード(参考)】
2E050
2E052
3J062
【Fターム(参考)】
2E050AA03
2E050BA07
2E050CA04
2E050DA02
2E050DB03
2E052AA09
2E052DA02
2E052EA09
3J062AA01
3J062AA48
3J062AB24
3J062AC07
3J062BA12
3J062BA40
3J062CD22
3J062CD44
3J062CD79
(57)【要約】
【課題】
ブレーキを備える車両用ドア支持部材の構成の自由度を向上する。
【解決手段】
車両用ドア支持部材1Aは、スピンドル12に回転抵抗を付与するブレーキ11を備える。ブレーキ11は第1収容空間27に配置され、スピンドル12の接続軸部12aに同軸に固定された回転部材31と、回転部材31の外周に配置されて回転部材31の外周面31bが摺動することによって回転部材31に回転負荷を付与する負荷部材32とを備える。収容部7の内部には、第1収容空間27よりも第1端部7b側に第2収容空間28が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体と前記車両のドアのうちの一方に接続される第1端部と、前記第1端部とは反対側の第2端部とを有する筒状の収容部と、
前記収容部の前記第2端部に同軸に連なる筒状のカバー部と、
前記車体と前記ドアのうちの他方に接続される第3端部を有し、前記第3端部とは反対側が前記カバー部内に収容され、前記カバー部に対して軸方向に相対的に移動可能な筒状の可動部材と、
前記カバー部に配置され、前記収容部の前記第2端部内に延設された接続軸部を有するスピンドルと、
前記スピンドルに螺合し、前記可動部材に連結されたスピンドルナットと、
前記可動部材を前記カバー部から進出する向きに付勢するコイルスプリングと、
前記収容部の前記第2端部内に設けられた第1収容空間に配置され、前記スピンドルに回転抵抗を付与するブレーキと
を備え
前記ブレーキは、
前記第1収容空間に配置され、前記スピンドルの前記接続軸部に同軸に固定された回転部材と、
前記回転部材の外周に配置されて前記回転部材の外周面が摺動することによって回転部材に回転負荷を付与する負荷部材と
を備え、
前記収容部の内部には、前記第1収容空間よりも前記第1端部側に第2収容空間が設けられている、車両用ドア支持部材。
【請求項2】
前記収容部の前記第2端部内に配置された筒状のブレーキケースと、
前記ブレーキケースの前記第1端部側に同軸に連なるように前記収容部内に配置された筒状の補助ケースと
を備え、
前記ブレーキケースと前記補助ケースとによって、前記第1収容空間が画定され、
前記補助ケースの前記第1端部側に前記第2収容空間が設けられ、
前記ブレーキケースは、
前記接続軸部を前記第1収容空間へ貫通させるための貫通孔と、
前記第1収容空間内で前記回転部材を回転自在に保持する回転部材保持部と、
前記負荷部材を保持する負荷部材保持部と
を備える、請求項1に記載の車両用ドア支持部材。
【請求項3】
前記補助ケースは、前記第1端部側が開口した筒状部を備える、請求項2に記載の車両用ドア支持部材。
【請求項4】
前記負荷部材はコイルスプリングである、請求項3に記載の車両用ドア支持部材。
【請求項5】
前記第2収容空間に配置されたスペーサを備え、
前記スペーサは、
前記第2収容空間内に延設されたスペーサ本体と、
前記補助ケースの前記筒状部に嵌め込まれて保持された第1被保持部と、
前記収容部の前記第1端部に保持された第2被保持部と
を備える、請求項2から4のいずれか1項に記載の車両用ドア支持部材。
【請求項6】
前記補助ケースの前記筒状部に嵌め込まれて保持され、前記第1端部側に入力部を備え、前記第2端部側に出力部を備え、前記入力部の回転速度よりも前記出力部の回転速度を遅くするギア機構と、
前記第2収容空間に配置されたモータと
を備え、
前記モータの出力軸が前記ギア機構の前記入力部に接続され、
前記接続軸部が前記補助ケースを貫通して前記ギア機構の前記出力部に接続されている、請求項2から4のいずれか1項に記載の車両用ドア支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の車体とバックドアとの間に介在され、車体に対して開閉可能にドアを支持する車両用ドア支持部材(以下、単に「支持部材」という場合がある)が開示されている。支持部材は、スピンドルとスピンドルナットを備え、スピンドルの回転に伴うスピンドルナットの進退により伸縮が実現されている。支持部材には、能動型と受動型がある。能動型の支持部材は、スピンドルを回転させるモータを備え、能動的に伸縮可能である。受動型の支持部材は、モータを備えておらず、ドアの開閉に伴うスピンドルの回転により伸縮する。特許文献1に開示された受動型の支持部材は、磁力によって伸縮に対する抵抗を発生させるマグネットブレーキを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-193643号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マグネットブレーキは発生できるブレーキトルクが小さい。そのため、例えばマグネットブレーキを採用した受動型の支持部材では、減速のためのギア機構の入力側にマグネットブレーキを連結する必要がある。言い換えれば、支持部材においてマグネットブレーキを採用するには、マグネットブレーキとギア機構の組み合わせが必須である。少なくともこの点において、マグネットブレーキを採用する場合、支持部材の構成の自由度には制約がある。
【0005】
本発明は、ブレーキを備える車両用ドア支持部材の構成の自由度を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車両の車体と前記車両のドアのうちの一方に接続される第1端部と、前記第1端部とは反対側の第2端部とを有する筒状の収容部と、前記収容部の前記第2端部に同軸に連なる筒状のカバー部と、前記車体と前記ドアのうちの他方に接続される第3端部を有し、前記第3端部とは反対側が前記カバー部内に収容され、前記カバー部に対して軸方向に相対的に移動可能な筒状の可動部材と、前記カバー部に配置され、前記収容部の前記第2端部内に延設された接続軸部を有するスピンドルと、前記スピンドルに螺合し、前記可動部材に連結されたスピンドルナットと、前記可動部材を前記カバー部から進出する向きに付勢するコイルスプリングと、前記収容部の前記第2端部内に設けられた第1収容空間に配置され、前記スピンドルに回転抵抗を付与するブレーキとを備え、前記ブレーキは、前記第1収容空間に配置され、前記スピンドルの前記接続軸部に同軸に固定された回転部材と、前記回転部材の外周に配置されて前記回転部材の外周面が摺動することによって回転部材に回転負荷を付与する負荷部材とを備え、前記収容部の内部には、前記第1収容空間よりも前記第1端部側に第2収容空間が設けられている、車両用ドア支持部材を提供する。
【0007】
ブレーキからスピンドルに付与される回転抵抗は、スピンドルの接続軸部に同軸に固定された回転部材の外周面が負荷部材に対して摺動することによって生じる。従って、ブレーキを採用するためにギア機構を併せて採用する必要はない。言い換えれば、ブレーキとギア機構の組み合わせは必須ではない。また、第2収容空間にスペーサを配置すれば受動型として構成でき、第2収容空間にギア機構とモータを配置すれば能動型として構成できる。少なくとも以上の点で、車両用ドア支持部材の構成の自由度を向上できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブレーキを備える車両用ドア支持部材における構成の自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る車両用ドア支持部材を備える車両の斜視図。
図2】本発明の第1実施形態に係る車両用ドア支持部材の縦断面図。
図3】収容部及びそれに収容された部品を車両用ドア支持部材の基端側から見た分解斜視図。
図4】収容部及びそれに収容された部品を車両用ドア支持部材の末端側から見た分解斜視図。
図5】ブレーキの分解斜視図。
図6】ブレーキの正面図。
図7】本発明の第2実施形態に係る車両用ドア支持部材の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す車両3は、本発明の第1及び第2実施形態の車両用ドア支持部材1A,1B(図2,7参照)を使用し得る、車両用ドア支持装置2を備える。後述する第1及び第2実施形態の車両用ドア支持部材1A,1B(図2,7参照)はいずれも、ブレーキ11を備えている。以下の説明では、車両用ドア支持部材1A,1Bの両方を含む車両用ドア支持部材について包括的に言及するために、符号1を使用する場合がある。また、以下の説明では、車両用ドア支持部材を単に支持部材と呼び、車両用ドア支持装置を単に支持装置と呼ぶ。
【0011】
引き続き図1を参照すると、支持装置2は一対の支持部材1を備える。個々の支持部材1は、一端が車体3aに連結され、他端がバックドア(ドア)3bに連結されている。個々の支持部材1は、受動型の場合にはバックドア3bの開閉に従動して伸縮し、能動型の場合にはモータによって駆動されて伸縮する。典型的には、一対の支持部材1のうち、一方が受動型である第1実施形態の支持部材1A(図2参照)で、他方が能動型である第2実施形態の支持部材1B(図7参照)である。しかし、一対の支持部材1の両方が第1実施形態の支持部材1A(図2参照)であってもよい。また、一対の支持部材1の両方が第2実施形態の支持部材1B(図7参照)であってもよい。さらに、一対の支持部材1のうち、一方が第1及び第2実施形態の車両用支持部材1A,1B(図2,7参照)のうちのいずれかで、他方が第1及び第2実施形態の支持部材1A,1B以外の支持部材であってもよい。例えば、一対の支持部材1のうち、一方が第1実施形態の受動型の支持部材1A(図2参照)で、他方が能動型であるがブレーキを備えない支持部材であってもよい。
【0012】
以下の説明では、支持部材1の車体3aに接続されている端部に関して「基端」「基端側」という用語を使用する場合がある。また、支持部材1のバックドア3bに接続されている端部に関して「末端」や「末端側」という用語を使用する場合がある。
【0013】
(第1実施形態)
図2を参照すると、受動型である支持部材1Aは、全体して細長いロッド状である。支持部材1Aは、円筒状の固定ハウジング5と、固定ハウジング5より細い円筒状の可動ハウジング(可動部材)6とを備える。可動ハウジング6は固定ハウジング5に対して進退する。図2は、可動ハウジング6が固定ハウジング5に対して最も突出した状態を示す。
【0014】
固定ハウジング5は、円筒状の収容部7と、収容部7の末端(第2端部)7bに同軸に連なる円筒状のカバー部8とを備える。本実施形態では、固定ハウジング5の基端、より具体的には収容部7の基端(第1端部)7aが軸端部材9Aを介して車体3aに連結されている。軸端部材9Aによって収容部7の基端7aが閉じられている。収容部7の末端7bは開放している。カバー部8は末端8aと基端8bの両方が開放している。
【0015】
本実施形態では、可動ハウジング6は末端(第3端部)6aが軸端部材9Bを介してバックドア3bに連結されている。軸端部材9Bによって可動ハウジング6の末端6aが閉じられている。可動ハウジング6の基端6bは開放している。可動ハウジング6は、基端側がカバー部8内に収容されており、カバー部8に対して軸線L方向に相対的に直線移動可能である。
【0016】
固定ハウジング5の収容部7の末端7b内にはブレーキ11が収容されている。一方、固定ハウジング5のカバー部8にはスピンドル12が収容されている。スピンドル12は、カバー部8の基端8bに保持された軸受13によって回転自在に保持されている。スピンドル12にはスピンドルナット14が螺合している。スピンドル12は、基端に接続軸部12aを備える。接続軸部12aは、カバー部8の基端8bから収容部7の末端7b内に延設されている。後に詳述するように、スピンドル12の接続軸部12aにブレーキ11が設けられ、このブレーキ11によりスピンドル12に回転抵抗が付与される。固定ハウジング5内にはスピンドル12を取り囲むようにガイド管16が設けられている。ガイド管16は、スピンドルナット14を回転不可、かつ直進可能に案内する。そのため、スピンドルナット14が、カバー部8の末端8a又は基端8bに向けて直線すると、直進方向に応じた回転方向で、スピンドル12が回転する。後述する第2実施形態の支持部材1Bでは、モータ42によって駆動されてスピンドル12が回転すると、回転方向に応じて、スピンドルナット14がカバー部8の末端8a又は基端8bに向けて直線する。
【0017】
可動ハウジング6は、プッシュロッド17と外筒18を備える。プッシュロッド17は両端開口の円筒状で、スピンドル12とガイド管16との間に配置されている。プッシュロッド17の基端はスピンドルナット14に固定されている。外筒18は、両端開口の円筒状で、固定ハウジング5のカバー部8の内側に配置されている。プッシュロッド17の外筒18の末端に軸端部材9Bが固定されている。
【0018】
プッシュロッド17と外管18との間に、コイルスプリング19が配置されている。コイルスプリング19は、可動ハウジング6の末端側、より具体的には外筒18の末端と、固定ハウジング5のカバー部8の基端8bとの間に縮装されている。コイルスプリング18によって、可動ハウジング6はカバー部8から進出する方向に弾性的に付勢されている。
【0019】
以下、固定ハウジング5の収容部7及びその内部に収容された部品について説明する。
【0020】
図2から図4を参照すると、収容部7の末端7bには、貫通孔7cが形成された隔壁7dが設けられている。一方、収容部7の基端7aの開口に軸端部材9Aが嵌め込まれて固定されている。
【0021】
収容部7内には、末端7aから基端7bに向かって、スペーサ21、ブレーキケース22、補助ケース23、スペーサ24、リテーナ25、及びグロメット26がこの順で並んで収容されている。スペーサ21とグロメット26はエラストマのような弾性体からなる。ブレーキケース22、補助ケース23、スペーサ24、及びリテーナ25は、例えばポリアミドのような樹脂材料からなる。
【0022】
スペーサ21は概ねリング状であり、収容部7aの最末端側に配置されている。スペーサ21にはスピンドル12の接続軸部12aを貫通させるための貫通孔21aが設けられている。スペーサ21は、収容部7の隔壁7dとブレーキケース22との間に挟持されることで、軸方向に位置決めされている。隔壁7dに設けられた突起7eが、スペーサ21の外周部に設けられた凹部21bに嵌まり込むことで、スペーサ21は軸線L周りの回転方向に位置決めされている。
【0023】
ブレーキケース22は、円筒状の筒状部22aを備えている。筒状部22aの末端には端壁22bが設けられ、筒状部22aの基端側は開放している。ブレーキケース22は、末端がスペーサ21に隣接し、基端が補助ケース23に隣接するように、収容部7の末端部7b内に配置されている。端壁22bにはスピンドル12の接続軸部12aを貫通させるための貫通孔22cが設けられている。
【0024】
補助ケース23は、円筒状の筒状部23aを備えている。筒状部23aの末端には端壁23bが設けられ、筒状部23aの基端側は開放している。補助ケース23は、末端がブレーキケース22に隣接するように、収容部7の末端7a内に配置されている。端壁23bにはスピンドル12の接続軸部12aを貫通させるための貫通孔23cが設けられている。
【0025】
ブレーキケース22は、スペーサ21と補助ケース23との間に挟持されることで、軸方向に位置決めされている。ブレーキケース22の端壁22bに設けられた突起22dが、スペーサ21に設けられた凹部21cに嵌まり込むことで、スペーサ21とブレーキケース22とが、軸線L周りの回転方向に互いに位置決めされている。ブレーキケース22の筒状部22aの基端に設けられた突起22eが、補助ケース23の筒状部23aの末端に設けられた凹部23dに嵌まり込むことで、ブレーキケース22と補助ケース23とが、軸線L周りの回転方向に互いに位置決めされている。
【0026】
ブレーキケース22の端壁22b、ブレーキケース22の筒状部22a、及び補助ケース23の端壁23bとよって囲まれることで、第1収容空間27が画定されている。後述するように、この第1収容空間27にブレーキ11が収容されている。
【0027】
収容部5の内部には、第1収容空間27よりも基端側、より具体的には補助ケース23よりも基端側に、第2収容空間28が設けられている。
【0028】
スペーサ24は、第2収容空間28内に延設されたスペーサ本体24aと、補助ケース23の筒状部23aの開口に嵌め込まれて保持された先端側の第1被保持部24bと、収容部5の基端5bに保持された第2被保持部24cを備えている。スペーサ24の第2被保持部24cには、両端開口の筒状であるリテーナ25が装着されている。リテーナ25に内周面に設けられた段部25aと第2被保持部24cの外周面に設けられた段部24dとが係合している。また、リテーナ25の最基端には、軸端部材9Aの末端がグロメット26のフランジ26aを介して押し付けられている。これらにより、リテーナ25と共にスペーサ24の軸方向の位置が位置決めされている。
【0029】
以下、図5及び図6も参照して、ブレーキ11について説明する。
【0030】
ブレーキ11は、短円柱状の回転部材31と、コイルスプリング(負荷部材)32とを備える。回転部材31とコイルスプリング32は、第1収容空間27内に配置されている。
【0031】
回転部材31には軸方向に貫通する貫通孔31aが形成されている。隔壁7dの貫通孔7c、スペーサ21の貫通孔21a、及びブレーキケース22の貫通孔22cを介して第1収容空間27に新入しているスピンドル12の接続軸部12aが、貫通孔31aに圧入によって固定されている。接続軸部12aと貫通孔31aの断面形状は概ね長方形であり、それによって回転部材31は接続軸部12aに対して軸線L周りに相対回転不可に連結されている。
【0032】
ブレーキケース22の内部には、端壁22bの第1収容空間27に臨む面と、筒状部22aの端壁22bに接続する部分との内面によって画定された、浅い円筒状の窪みである回転保持部22fが設けられている。この回転保持部22fによって、回転部材31の末端側が軸線L周りに回転自在に保持されている。
【0033】
ブレーキケース22の内部には、回転部材保持部22fに対して末端側に隣接し、回転部材保持部22fよりも大径のスプリング保持部(負荷保持部)22gが設けられている。コイルスプリング32は複数の巻き線部32aと、一対の端部32bとを備える。スプリング保持部22gに、コイルスプリング32の巻き線部32aが保持されている。また、ブレーキケース22の筒状部22aの内面にはコイルスプリング32の一対の端部32bを係止させる係止部22hが設けられている。
【0034】
コイルスプリング32の巻き線部32aは、回転部材31が備える円筒面(外周面)31bを弾性的に締め付けている。そのため、スピンドル12と共に回転部材31が軸線L周りに回転すると、回転部材31の円筒面31bはコイルスプリング19の巻き線部32aに対して摺動する。弾性的に締め付けるコイルスプリング19の巻き線部32aに対する摺動時の摩擦抵抗が、回転部材31、従ってスピンドル12に対する回転抵抗となる。
【0035】
図1に示すように開状態のバックドア3bが閉方向に移動すると、支持部材1Aが縮み、より具体的には可動ハウジング6が固定ハウジング5のカバー部8へ格納される方向に軸線L方向に直動する。この可動ハウジング6の直動に伴いスピンドルナット14も軸線L方向に直動するので、スピンドル12が回転する。スピンドル12には前述のようにブレーキ11から回転抵抗を受ける。従って、ブレーキ11はバックドア3bの閉動作に対して制動力を付与する。
【0036】
本実施形態に係る支持部材1Aが備えるブレーキ11は、磁気的な抵抗ではなく、回転部材31に対する摺動抵抗によって制動力を得ている。そのため、コイルスプリング32の巻き線部32aの締め付け力や巻き線部32aの数の設定により、マグネットブレーキよりも大きなブレーキトルクが得られる。この理由で、本実施形態の支持部材1Aはブレーキ11を備えているが、ブレーキ11に作用するトルクを低減するためのギア機構と組み合わせを採用する必要がない。
【0037】
ブレーキ11はスピンドル12の接続軸部12aに直接的に連結されている。この構造は連結箇所が1箇所であり、マグネットブレーキがギア機構を介してスピンドルに連結された構造、つまり連結箇所が2箇所の構造と比較して、構造が簡素であり、連結部にガタがあったとしてもブレーキ性能に及ぼす影響が小さい。
【0038】
ブレーキ11の制動力を高めるにコイルスプリング32の巻き線部32aの数を増やすと、回転部材31の軸線L方向の長さを延ばし、ブレーキケース22の軸線L方向の長さも延ばす必要が生じる場合がある。しかし、この場合には、ブレーキケース22の軸線L方向の長さを延ばした量だけ、スペーサ21の厚みを薄く設定すれば、固定ケーシング5の収容部7を軸線L方向の長さが長いものに交換する必要は生じない。
【0039】
本実施形態における固定ハウジング5の基端をバックドア3bに連結し、可動ハウジング6の先端を車体3aに連結してもよい。
【0040】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係る能動型の支持部材1Bを示す。これらの図面では、第1実施形態と同一ないしは同様の要素には同一の符号を付している。本実施形態に関し、以下の説明において特に言及しない構成及び作用は第1実施形態と同様である。
【0041】
第1実施形態の支持部材1Aにおいて収容部7の第2収容空間28内に収容されているスペーサ21に代えて、本実施形態の支持部材1Bでは、ギア機構41と電動のモータ42が収容部7の第2収容空間28内に収容されている。より具体的には、ブレーキ11から固定部7の基端7aに向かって、ギア機構41とモータ42が順に配置されている。
【0042】
本実施形態のギア機構41は、2段の遊星歯車ユニット43,44を備えている。モータ42を基準とすると、入力側が遊星歯車ユニット43で、出力側が遊星歯車ユニット44である。遊星歯車ユニット43,44はそれぞれ、固定のケーシング43a,44a(内歯車が設けられている)、太陽歯車43b,44b、複数の遊星歯車43c,44c、遊星キャリア43d,44dを備えている。
【0043】
入力側の遊星歯車ユニット43の太陽歯車43bにモータ42の出力軸42aが連結されている。つまり、太陽歯車43bはギア機構41の入力部を構成している。また、入力側の遊星歯車ユニット43の遊星キャリア43dが出力側の遊星歯車ユニット44の太陽歯車44bに連結されている。さらに、出力側の遊星歯車ユニット44の遊星キャリア44dにスピンドル12の接続軸部12aが連結されている。つまり、遊星キャリア43dはギア機構42の出力部を構成している。モータ42の出力軸42aの回転はギア機構41で減速されてスピンドル12に伝達される。
【0044】
ギア機構41の遊星歯車ユニット43,44のケーシング43a,44aは、補助ケース23の筒状部23aに嵌め込まれて保持されている。ケーシング43a,44aの外径寸法は、第1実施形態の支持部材1Aにおけるスペーサ24の第1被保持部24bの外径寸法と同じに設定されている。
【0045】
以上のように、収容部7の第2収容空間28にスペーサ24を配置すれば受動型の支持部材1A(第1実施形態)として構成でき、第2収容空間28にギア機構41とモータ42を配置すれば能動型の支持部材1Bとして構成できる。この点と、前述のように受動型の支持部材1Aにおいてギア機構が不要である点で、支持部材1の構成の自由度を向上できる。
【符号の説明】
【0046】
1,1A,1B 車両用ドア支持部材
2 車両用ドア支持装置
3 車両
3a 車体
3b バックドア
5 固定ハウジング
6 可動ハウジング
6a 末端(第3端部)
6b 基端
7 収容部
7a 基端(第1端部)
7b 末端(第2端部)
7c 貫通孔
7d 隔壁
7e 突起
8 カバー部
8a 末端
8b 基端
9A,9B 軸端部材
11 ブレーキ
12 スピンドル
12a 接続軸部
13 軸受
14 スピンドルナット
16 ガイド管
17 プッシュロッド
18 外筒
19 コイルスプリング
21 スペーサ
21a 貫通孔
21b 凹部
21c 凹部
22 ブレーキケース
22a 筒状部
22b 端壁
22c 貫通孔
22d 突起
22e 突起
22f 回転部材保持部
22g スプリング保持部
22h 係止部
23 補助ケース
23a 筒状部
23b 端壁
23c 貫通孔
23d 凹部
24 スペーサ
24a スペーサ本体
24b 第1被保持部
24c 第2被保持部
24d 段部
25 リテーナ
25a 段部
26 グロメット
26a フランジ
27 第1収容空間
28 第2収容空間
31 回転部材
31a 貫通孔
31b 円筒面
32 コイルスプリング(負荷部材)
32a 巻き線部
32b 端部
41 ギア機構
42 モータ
42a 出力軸
43,44 遊星歯車ユニット
43a,44a ケーシング
43b,44b 太陽歯車
43c,44c 遊星歯車
43d,44d 遊星キャリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7