(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011393
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】インフレータ接続用の接続具
(51)【国際特許分類】
A62B 99/00 20090101AFI20240118BHJP
A62B 35/04 20060101ALI20240118BHJP
B62J 27/20 20200101ALI20240118BHJP
A41D 13/018 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A62B99/00 E
A62B35/04
B62J27/20
A41D13/018
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113337
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】591199741
【氏名又は名称】株式会社プロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】陳 航
【テーマコード(参考)】
2E184
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
2E184JA03
2E184LB05
3B011AB01
3B011AC04
3B211AB01
3B211AC04
(57)【要約】
【課題】エアバッグ装置の組み立て工程数を削減することができるインフレータ接続用の接続具を提供する。
【解決手段】接続具1は、装着時にエアバッグの内側に配置される接続具本体100及びフランジ200と、外側に配置されるフランジナット300とを備える。接続具本体100は、長板状のフランジ110と、当該フランジ110の中央部から上面側に向けて突出形成された円柱部120とを一体に形成してなる。円柱部120には貫通孔121が形成されており、貫通孔121の外周面には螺子溝122が形成されている。フランジ200の中央部には、円柱部120を着脱自在に挿通自在な貫通孔210が形成されている。装着時にはエアバッグの吸入口から接続具本体100及びフランジ200をそれぞれ個別にエアバッグ内に挿入し、エアバッグ内で両者を連結する。その後、エアバッグの外側からフランジナット300を締結する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグに形成された吸入口に装着されるインフレータ接続用の接続具であって、
長板状の第1フランジと当該第1フランジの中央部から上面側に突出形成された円柱部とを一体に形成してなり、前記円柱部には軸方向に第1貫通孔が形成され、前記円柱部の外周面には螺子溝が形成された接続具本体と、
中央部に第2貫通孔が形成され当該第2貫通孔に前記接続具本体の円柱部が着脱自在に挿通された長板状の第2フランジと、
前記第1フランジ及び第2フランジと対向する側に第3フランジが形成され前記接続具本体の円柱部の外周面と螺合するフランジナットとを備え、
少なくとも前記第1フランジの上面には、前記第1フランジの上面と前記第2フランジの上面とが面一となり、且つ、第1フランジの長手方向と第2フランジの長手方向が所定の角度で交差した状態で第2フランジが嵌合する第1嵌合部が形成されている
ことを特徴とするインフレータ接続用の接続具。
【請求項2】
前記第1フランジ及び前記第2フランジの幅は、前記エアバッグに形成された吸入口を通過可能なサイズである
ことを特徴とする請求項1記載のインフレータ接続用の接続具。
【請求項3】
前記第2フランジの底面には前記第1フランジの第1嵌合部と係合する第2嵌合部が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のインフレータ接続用の接続具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグに形成された吸入口に装着されるインフレータ接続用の接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設業・運送業・林業などの作業現場における作業者の高所からの転落や作業の転倒、高齢者・病人・障害者等の歩行中の転倒、自動二輪車からの乗員の転倒などの際に、衝撃から人体を保護するための人体用エアバッグ装置が普及してきている(特許文献1参照)。
【0003】
この人体用エアバッグ装置は、人体に着用されるベスト状の着用体と、人体の所定部位に対応するように着用体に設けられたエアバッグと、エアバッグ(空気袋)に気体を供給して膨張させるインフレータと、人体の落下や転倒を検出するためのセンサと、センサの検出結果に基づきエアバッグを膨張させるようインフレータを制御する制御装置とを備えている。
【0004】
エアバッグは、気密性及び耐久性の高い生地(例えば、全芳香族ポリエステル)からなり、外形が同形状の生地を2枚重ね合わせたのちに縁部を熱融着することによって袋状に形成されている。エアバッグの一方の生地には吸入口が形成されており、この吸入口にはインフレータ接続用の接続具が装着されている。
【0005】
図8に従来のインフレータ接続用の接続具を示す。この接続具900は、接続具本体910と、フランジナット920とからなる。接続具本体910は、円板状のフランジ911と、フランジ911の中央部から突出形成された円柱部912とを一体に形成したものである。円柱部912の中央には軸方向に貫通孔913が形成されている。したがって、円柱部912はインフレータから供給される気体が流通する管路として機能する。円柱部912の外周面には螺子溝913が形成されている。また、円柱部912の内周面にはインフレータ又はインフレータと接続する管と螺合する螺子溝914が形成されている。フランジナット920は、ナット本体921と、ナット本体921の底面側すなわち接続具本体910のフランジ911と対向する側に外形円板状の形成されたフランジ922とからなる。
【0006】
接続具900をエアバッグに装着する際には、まず接続具本体910をエアバッグの内側に配置し、円柱部912をエアバッグに予め形成されている吸入口に挿通させる。そして、エアバッグの外側に突出している円柱部912にフランジナット920を締結する。これにより、エアバッグの吸入口周囲の生地が接続具本体910のフランジ911とフランジナット920のフランジ922に挟み込まれ、接続具900がエアバッグに装着された状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の人体用エアバッグ装置では、まず袋状にしたエアバッグを用意し、このエアバッグに接続具を装着するという製造工程となる。しかし、接続具本体910のフランジ911はエアバッグの吸入口より十分に大きく形成されているので、接続本体910を吸入口から挿入することができない。このため従来は、エアバッグの縁部の一部区間は熱融着を行わず、この未融着区間から接続具本体910をエアバッグの内側に入れて接続具900の装着を行う。その後、エアバッグの未融着区間の融着を行ってエアバッグを袋状に形成する。このように、上記特許文献1に記載の人体用エアバッグ装置では、接続具900の取り付け工程の前後にエアバッグの融着工程が必要となるので、作業工程が多く、製造効率が良好でないという問題がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エアバッグ装置の組み立て工程数を削減することができるインフレータ接続用の接続具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明は、エアバッグに形成された吸入口に装着されるインフレータ接続用の接続具であって、長板状の第1フランジと当該第1フランジの中央部から上面側に突出形成された円柱部とを一体に形成してなり、前記円柱部には軸方向に第1貫通孔が形成され、前記円柱部の外周面には螺子溝が形成された接続具本体と、中央部に第2貫通孔が形成され当該第2貫通孔に前記接続具本体の円柱部が着脱自在に挿通された長板状の第2フランジと、前記第1フランジ及び第2フランジと対向する側に第3フランジが形成され前記接続具本体の円柱部の外周面と螺合するフランジナットとを備え、少なくとも前記第1フランジの上面には、前記第1フランジの上面と前記第2フランジの上面とが面一となり、且つ、第1フランジの長手方向と第2フランジの長手方向が所定の角度で交差した状態で第2フランジが嵌合する第1嵌合部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接続具本体と第2フランジを、第2フランジの貫通孔に円柱部を挿通させた状態で連結することにより、第1フランジ及び第2フランジの上面と、フランジナットの第3フランジとの間にエアバッグ吸入口周囲の生地を挟持することができる。ここで、第1フランジの幅及び円柱部の高さ並びに第2フランジの幅をエアバッグに形成された吸入口を通過可能なサイズに設定することより、接続具本体と第2フランジをそれぞれ個別に吸入口からエアバッグの内側に入れ、エアバッグ内側において接続具本体と第2フランジとを連結することができる。したがって、接続具の装着工程前にエアバッグを袋状に加工しておくことができ、装着工程後にはエアバッグの加工工程は不要となる。これによりエアバッグ装置の組み立て工程数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】接続具本体とフランジとを連結した様子を示す斜視図
【
図5】エアバッグへの接続具の装着構造を説明する断面図
【
図6】エアバッグへの接続具の装着工程を説明する斜視図
【
図7】エアバッグへの接続具の装着工程を説明する斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係るインフレータ接続用の接続具について図面を参照して説明する。
図1は接続具の外観斜視図、
図2は接続具の分解斜視図、
図3はフランジを底面側からみた斜視図、
図4は接続具本体とフランジとを連結した様子を示す斜視図、
図5はエアバッグへの接続具の装着構造を説明する断面図、
図6及び
図7はエアバッグへの接続具の装着工程を説明する斜視図である。
【0014】
本発明に係るインフレータ接続用の接続具は、人体用エアバッグ装置のエアバッグに形成された吸入口に装着されて使用される。当該接続具には人体用エアバッグ装置のインフレータが接続される。このインフレータはエアバッグに気体を供給する装置であり、人体用エアバッグ装置の制御装置からの制御信号に応じてエアバッグに気体を供給する。接続具は、気密性を維持した状態でインフレータとエアバッグとを接続する。
【0015】
接続具1は、
図1及び
図2に示すように、装着時にエアバッグの内側に配置される接続具本体100及びフランジ200と、装着時にエアバッグの外側に配置されるフランジナット300とを備えている。
【0016】
接続具本体100は、
図2に示すように、略矩形で長板状のフランジ110と、当該フランジ110の中央部から上面側に向けて、すなわち装着時にエアバッグの外側に向けて突出形成された円柱部120とを一体に形成してなる。
【0017】
フランジ110の上面側であって前記円柱部120の周囲には、凹部111が形成されている。後述するように、この凹部111にはフランジ200が嵌合する。
【0018】
円柱部120には、軸方向に貫通孔121が形成されている。また、円柱部120の外周面であって軸方向の中央部には、螺子溝122が形成されている。この螺子溝122には、前記フランジナット300が螺合する。円柱部120の上部の外周面は、面取りされた正六角形状に形成されている。これにより、インフレータとの接続時に当該円柱部120の上部にスパナ等をかけることができるので、供回りを防止してインフレータとの接続を強固にできる。円柱部120の貫通孔121の内周面には螺子溝123が形成されている。この螺子溝123にはインフレータ又はインフレータと接続する管に形成された螺子部と螺合する。
【0019】
フランジ200は、略矩形で長板状の部材からなる。フランジ200の中央部には、貫通孔210が形成されている。貫通孔210の径は、前記接続具本体100の円柱部120の外形よりもやや大きく、当該貫通孔210に円柱部120を着脱自在に挿通させることができる。
図3に示すように、フランジ200の底面側であって前記貫通孔210の周囲には凹部220が形成されている。
【0020】
図4に示すように、前記フランジ110の凹部111と前記フランジ200の凹部220は互いに嵌合して接続具本体100とフランジ200の長手方向が所定の角度(本実施の形態では90度)で交差した状態で保持されるよう形成されている。また、フランジ110の凹部111と前記フランジ200の凹部220は互いに嵌合した際に、フランジ110の上面とフランジ200の上面が面一となる深さに形成されている。また、接続具本体100のフランジ110の短辺及びフランジ200の短辺は、両者を嵌合した際に円柱部120及び貫通孔121の軸を中心とした円弧となるように形成されている。
【0021】
また、フランジ110の幅及び円柱部120の高さ並びにフランジ200幅はそれぞれ、装着先であるエアバッグに形成された吸入口を通過可能なサイズとなっている。
【0022】
フランジナット300は、
図2に示すように、六角のナット本体310と、ナット本体310の底面側すなわち接続具本体100のフランジ110及びフランジ200の上面と対向する側に形成された外形円板状のフランジ320とからなる。ナット本体310は接続具本体100の円柱部120に螺合する。フランジ320の外径は、前記接続具本体100のフランジ110の短辺及びフランジ200の短辺の径と同一である。
【0023】
次に、本実施の形態に係る接続具1のエアバッグへの装着方法について
図5乃至
図7を参照して説明する。装着先であるエアバッグは、気密性及び耐久性の高い生地(例えば、全芳香族ポリエステル)からなり、外形が同形状の表生地510と裏生地520を2枚重ね合わせたのちに縁部を熱融着することによって袋状に形成されている。また、エアバッグの表生地510には吸入口511が形成されている。また、エアバッグの表生地510の吸入口511の周囲には補強用の環状生地12が熱融着されている。
【0024】
接続具1をエアバッグに装着するには、まず、接続具本体100を表生地510の吸入口511から挿入してエアバッグの内側に配置する(
図6のステップS1)。次いで、同様に、フランジ200を表生地510の吸入口511から挿入してエアバッグの内側に配置する(
図6のステップS2)。なお、接続具本体100とフランジ200の挿入順番は逆であってもよい。次いで、エアバッグの内側において、接続具本体100とフランジ200を、フランジの貫通孔210に接続具本体100の円柱部120を挿通させた状態で連結する(
図7のステップS3)。この連結作業は、表生地510又は裏生地520越しに接続具本体100やフランジ200を手で操作したり、あるいは適当な治具を吸入口511から挿入して操作したりすることにより実施することができる。次に、連結された接続具本体100とフランジ200の連結体をエアバッグ内で移動させ、接続具本体100の円柱部120を吸入口511に挿通させる(
図7のステップS4、
図5)。これにより、エアバッグの内側において、接続具本体100のフランジ110の上面とフランジ200の上面は面一となり、吸入口511の周囲の領域と対向とする。また接続具本体100の円柱部120は吸入口511からエアバッグの外側に突出した状態となる。
【0025】
最後に、接続具本体100の円柱部120にフランジナット300を螺合させることにより(
図7のステップS5)、接続具本体100のフランジ110の上面及びフランジ200の上面と、フランジナット300のフランジ320の底面との間に、吸入口511の周囲の表生地510を挟持することができる。
【0026】
このように、本実施の形態に係る接続具1によれば、接続具本体100とフランジ200とをそれぞれ個別に吸入口511からエアバッグの内側に入れ、エアバッグの内側において接続具本体100とフランジ200とを連結することができる。したがって、接続具1の装着工程前にエアバッグを袋状に加工しておくことができ、装着工程後にはエアバッグの加工工程は不要となる。これによりエアバッグ装置の組み立て工程数を削減することができる。
【0027】
以上、本発明の一実施の形態について詳述したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよい。
【0028】
例えば、上記実施の形態では、接続具本体100のフランジ110の短辺、フランジ200の短辺、フランジナット300のフランジ320の外周が同一径の円弧又は円周となるように形成したが、外周が矩形など他の形状となるようにしてもよい。
【0029】
また、上記実施の形態では、接続具本体100の円柱部120の内周にはインフレータ接続用の螺子溝123を形成したが、当該内周にはインフレータとの接続構造に応じた他の機構を設けてもよい。例えばラッチ構造を設けてワンタッチでインフレータと接続可能にするようにしてもよい。
【0030】
また、気密性を向上させるために、さらに、接続具1の各部とエアバッグの表生地510との隙間や、接続具本体100の円柱部120とフランジナット300の締結部などにシール剤を配置してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…接続具
100…接続具本体
110…フランジ
111…凹部
120…円柱部
121…貫通孔
122…螺子溝
200…フランジ
210…貫通孔
220…凹部
300…フランジナット
310…ナット本体
320…フランジ