(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113939
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】エアゾール型泡状皮膚洗浄料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20240816BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240816BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240816BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20240816BHJP
C11D 1/94 20060101ALI20240816BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20240816BHJP
C11D 3/22 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/34
A61Q19/10
C11D17/04
C11D1/94
C11D3/20
C11D3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019230
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】下瀬川 紘
(72)【発明者】
【氏名】三田地 喜樹
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
【Fターム(参考)】
4C083AB332
4C083AB342
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC522
4C083AC612
4C083AC662
4C083AC712
4C083AC782
4C083AD042
4C083AD211
4C083AD352
4C083BB05
4C083BB07
4C083BB49
4C083CC23
4C083DD08
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE05
4H003AB10
4H003AB23
4H003AB31
4H003AD04
4H003BA20
4H003DA02
4H003EA19
4H003EB02
4H003EB04
4H003EB05
4H003EB06
4H003EB08
4H003EB41
4H003EB46
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA20
4H003FA23
4H003FA30
4H003FA36
(57)【要約】
【課題】泡量、泡安定性、泡弾力性に優れつつ、乾いた肌に塗り広げる際も角が立ち千切れない滑らかさを有し、すすぎ性に優れるエアゾール型泡状皮膚洗浄料を提供する。
【解決手段】 エアゾールバルブ及びノズルを備えた耐圧容器内に封入してなるエアゾール型泡状皮膚洗浄料であって、以下の(a)成分を0.1~5.0質量%、(b)成分を15.0~35.0質量%、(c)成分を1.0~25.0質量%、さらに(d)成分を含有することを特徴とするエアゾール型泡状皮膚洗浄料。
(a)アニオン性界面活性剤または両性界面活性剤
(b)2~6価の多価アルコール
(c)分子量300以下で、金属種がNaまたはKであり、前記金属種の含有率が11.0~60.0質量%であるアルカリ金属塩
(d)噴射剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾールバルブ及びノズルを備えた耐圧容器内に封入してなるエアゾール型泡状皮膚洗浄料であって、以下の(a)成分を0.1~5.0質量%、(b)成分を15.0~35.0質量%、(c)成分を1.0~25.0質量%、さらに(d)成分を含有することを特徴とするエアゾール型泡状皮膚洗浄料。
(a)アニオン性界面活性剤または両性界面活性剤
(b)2~6価の多価アルコール
(c)分子量300以下で、金属種がNaまたはKであり、前記金属種の含有率が11.0~60.0質量%である、アルカリ金属塩
(d)噴射剤
【請求項2】
(e)増粘性多糖類を0.05~1.0質量%含有することを特徴とする、請求項1に記載のエアゾール型泡状皮膚洗浄料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡量と泡安定性、泡弾力と泡の滑らかさを両立し、すすぎ性にも優れるエアゾール型泡状皮膚洗浄料に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール型の皮膚洗浄料は速やかに泡の吐出が可能であり、界面活性剤の含量が少ない場合も多くの泡量を得ることができ、また多価アルコールの併用により泡安定性、泡弾力などといった泡特性の向上が可能となることが知られている。
一方、多価アルコールを用いた泡安定性、泡弾力改善の効果は、泡が硬くなり、泡を押した際の泡弾力が向上する一方で、泡がもろくなり、角が立つような滑らかさが損なわれ、泡が千切れたり、塗り伸ばしの際にぼそぼそとした感触を与えたりすることがある。この特性は、刺激性などの観点から界面活性剤量を低減した場合や泡パックのように乾いた肌に泡を塗布する場合に特に顕著となる。
洗浄時に泡が千切れやすくなると、タオル、泡立てネット、手のひら等に代表される泡を塗布した媒体と、肌とを引き離した際に泡が千切れ、媒体に残存する泡量が低下し、摩擦力低減の効果や使用感が低下する。このため、特に泡パックとしても併用されることのあるエアゾール型洗浄料においては、泡量、泡安定性、泡弾力に加え、乾いた肌に塗布した際も泡が千切れず、角が立つ泡質が求められている。
【0003】
例として、特許文献1ではポリグリセリンアルキルエーテル、多価アルコール、水溶性高分子、炭酸ガス、を含有することで、キメ細かく、コシがあり、適度な粘性を与えるクリーミーな泡を生じ、マッサージ中も皮膚上で泡状態が維持でき、ふき取りまたは洗い流した後にべたつき感がなく、肌にしっとり感を付与できるエアゾール型皮膚化粧料が提案されている。当文献においてはエアゾールの起泡力と多価アルコールによる泡安定性の両立により上記の特性が得られているが、使用される界面活性剤がいずれもノニオン界面活性剤であるため、洗浄料として要求される起泡量には不十分であった。
【0004】
特許文献2ではアニオン性界面活性剤、カチオン性高分子、多価アルコール、を含有することで、伸びがよく、もっちりとした泡となり、洗浄性に優れた発泡性エアゾール組成物が提案されている。しかし、すすぎ時においてアニオン性界面活性剤とカチオン性高分子により形成されるコアセルベートがぬるつきを生じるため、すすぎ性については不十分であった。
【0005】
特許文献3では、染料、カチオン性界面活性剤とノニオン界面活性剤、炭酸アンモニウム及び/又は炭酸水素アンモニウムを含む、pH調整剤、噴射剤、高級アルコールなどを含有することで、泡もちが良く、毛髪への均一な塗布が可能であり、毛髪を均一に染毛できる1剤式エアゾール染毛剤が提案されている。しかし、当該染毛剤は皮膚洗浄剤ではないほか、カチオン性界面活性剤とpH調整剤を含むことで泡質改善効果を発揮するものの、多価アルコールを含まないために、泡弾力の面では不十分であった。
【0006】
特許文献4においては、アシルアミノ酸型界面活性剤と多価アルコール、水溶性高分子、シリコーン油を含有することで、クリーミーな泡で、肌に塗布しやすく、洗い流した後も肌にしっとりとした感触を与えるエアゾール型パック化粧料が提案されている。当文献においては泡パックとして乾いた肌に使用する際の塗布しやすさを得られているが、泡質改善剤としては泡膜中の水層の増粘に寄与する多価アルコール、および電荷を持たない水溶性高分子のみが使用されているため、乾いた肌に対して広く塗り伸ばす際においては、角が立つような滑らかさが得られない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011―93878号公報
【特許文献2】特開2013―241359号公報
【特許文献3】特開2017―95434号公報
【特許文献4】特開2008―37773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み、泡量、泡安定性、泡弾力性に優れつつ、乾いた肌に塗り広げる際も角が立ち千切れない滑らかさを有し、すすぎ性に優れるエアゾール型泡状皮膚洗浄料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、アニオン性界面活性剤または両性界面活性剤、2~6価の多価アルコール、分子量300以下で、金属種がNaまたはKであり、前記金属種の含有率が11.0~60.0質量%であるアルカリ金属塩を所定の配合量で含み、さらに噴射剤を含有するエアゾール型泡状皮膚洗浄料により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記[1]~[2]に関する。
【0010】
[1]エアゾールバルブ及びノズルを備えた耐圧容器内に封入してなるエアゾール型泡状皮膚洗浄料であって、以下の(a)成分を0.1~5.0質量%、(b)成分を15.0~35.0質量%、(c)成分を1.0~25.0質量%、さらに(d)成分を含有することを特徴とするエアゾール型泡状皮膚洗浄料。
(a)アニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤
(b)2~6価の多価アルコール
(c)分子量300以下で、金属種がNaまたはKであり、前記金属種の含有率が11.0~60.0質量%である、アルカリ金属塩
(d)噴射剤
[2](e)増粘性多糖類を0.05~1.0質量%含有することを特徴とする、上記[1]に記載のエアゾール型泡状皮膚洗浄料。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエアゾール型泡状皮膚洗浄料によれば、泡量、泡安定性、泡弾力性に優れつつ、乾いた肌に塗り広げる際も角が立ち千切れない滑らかさを示し、すすぎ性に優れる泡特性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上かつ5以下を表す。
本発明のエアゾール型泡状皮膚洗浄料は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分を含有する。以下、各成分について説明する。
【0013】
[(a)成分]
本発明のエアゾール型泡状皮膚洗浄料は、(a)アニオン性界面活性剤または両性界面活性剤((a)成分)を含有する。
【0014】
本発明に用いられるアニオン性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸系界面活性剤が挙げられる。該アミノ酸系界面活性剤としては、例えば、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸Na、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸K、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ラウロイル-L-グルタミン酸Na、N-ラウロイル-L-グルタミン酸K、N-ラウロイル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ラウロイル-L-グルタミン酸NaなどのN-アシルグルタミン酸塩、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グリシンNa、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グリシンKなどのN-アシルグリシン塩、N-ヤシ油脂肪酸アシル-メチル-β-アラニンNa、N-ラウロイル-メチル-β-アラニンNaなどのN-アシル-メチル-β-アラニン塩、N-ヤシ油脂肪酸アシル-ヒドロキシエチル-β-アラニンNa、N-ラウロイル-ヒドロキシエチル-β-アラニンNaなどのN-アシル-ヒドロキシエチル-β-アラニン塩、N-ヤシ油脂肪酸アシル-サルコシンNa、N-ヤシ油脂肪酸アシル-サルコシントリエタノールアミン、N-ラウロイル-サルコシンNaなどのN-アシルサルコシン塩、N-ヤシ油脂肪酸アシル-メチルタウリンNa、カプロイル-メチルタウリンNaなどのN-アシルメチルタウリン塩、などが挙げられる。
【0015】
また、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸Na、ラウリル硫酸トリエタノールアミンなどのアルキル硫酸塩、POEラウリルエーテル硫酸Na、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、POEラウリルエーテル酢酸Na、POEラウリルエーテル酢酸Kなどのアルキルエーテルカルボン酸などを用いてもよい。アニオン性界面活性剤の中でも、低刺激性に優れるという点からアミノ酸系界面活性剤を用いることが好ましい。なお、上記において、POEはポリオキシエチレンを示す。
【0016】
また、本発明に用いられる両性界面活性剤としては、たとえば、N-ラウリルベタインなどのN-アルキルベタイン、N-ラウラミドプロピルベタイン、N-ヤシ油脂肪酸アシルアミドプロピルベタインなどのN-アルキルアミドプロピルベタイン、N-ラウリルアミノジ酢酸NaなどのN-アシルアミノジ酢酸塩、N-ラウリルアミノジプロピオン酸Naなどのアシルアミノジプロピオン酸塩などが挙げられる。中でも、低刺激性、起泡性に優れるという点から、N-アシルアミノジ酢酸塩、N-アシルアミノジプロピオン酸塩を用いることが好ましい。
【0017】
(a)成分としては、上記アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤の少なくとも1種以上を適宜組み合わせて使用することができる。すなわち、(a)成分は、アニオン性界面活性剤のみであってもよいし、両性界面活性剤のみであってもよいし、アニオン性界面活性剤と両性界面活性剤の両方の組み合わせであってもよい。そして、本発明において(a)成分の含有量は、アニオン性界面活性剤と両性界面活性剤の合計の含有量を意味する。
(a)成分の合計含有量は、エアゾール型泡状皮膚洗浄料全量に対して0.1~5.0質量%であるが、好ましくは0.3~4.0質量%、さらに好ましくは0.5~3.0質量%である。(a)成分の含量が0.1質量%未満の場合は、起泡性と泡安定性が不十分となることがあり、(a)成分の含量が5.0質量%よりも多く含まれる場合は、すすぎ性が不十分となり、べたつきなどにより使用感が低下するほか、洗浄後のかさつきや刺激性を生じる傾向がある。
【0018】
〔(b)成分〕
本発明のエアゾール型泡状皮膚洗浄料は、(b)2~6価の多価アルコール((b)成分)を含有する。
【0019】
本発明に用いられる2~6価の多価アルコールとしては、たとえば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ペンタエリスリトールなどの他、ソルビトール、グルコースに代表される単糖類などが挙げられる。本発明においては、これら2~6価の多価アルコールについて、少なくとも1種以上の組合せで使用することができる。
(b)成分の合計含有量は、エアゾール型泡状皮膚洗浄料全量に対して15.0~35.0質量%であるが、好ましくは17.0~33.0質量%、さらに好ましくは20.0~30.0質量%である。(b)成分の含量が15.0質量%未満の場合は、泡安定性と泡弾力が不十分となることがあり、(b)成分の含量が35.0質量%よりも多く含まれる場合は、泡がもろくなり、角が立つような滑らかさが損なわれ、特に乾いた肌に塗り伸ばす際にぼそぼそとした感触を与える傾向がある。
【0020】
〔(c)成分〕
本発明のエアゾール型泡状皮膚洗浄料は、(c)分子量300以下で、金属種がNaまたはKであり、前記金属種の含有率が11.0~60.0質量%である、アルカリ金属塩((c)成分)を含有する。
ここで、上記した金属種の含有率は、以下の式により算出できる。
金属種の含有率(質量%)=100×(アルカリ金属塩中の金属種の原子量)/(アルカリ金属塩の分子量)
【0021】
本発明に用いられる分子量300以下で、金属種がNaまたはKであり、前記金属種の含有率が11.0~60.0質量%であるアルカリ金属塩は、たとえばクエン酸の各中和状態におけるNaやKの塩、グリコール酸Naやピロリドンカルボン酸ナトリウム(以下、PCA-Na)、N-メチルタウリンNaなどの有機酸の塩、グリシンNaなどのアミノ酸の塩のほか、Na、Kの塩酸塩や炭酸塩などといった無機塩である。分子量あたりのNa、Kの質量比が大きく、溶解性や電離度が高いものほど(c)成分を効率的に配合でき、この観点においては塩酸塩が好ましい。このほか、耐圧容器の安定性においては有機酸塩が好ましく、中でも高配合時にピーリング性を示さず低刺激性に優れることから、(c)成分としては、PCA-Na、アミノ酸の塩、クエン酸のナトリウム塩、乳酸塩、NaCl、KClがより好ましく、PCA-Na、クエン酸のナトリウム塩、NaCl、KClがさらに好ましく、PCA-Naが特に好ましい。
なお、(c)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。 また、(c)成分の水に対する溶解度(g/L、20℃)は、好ましくは9g/L~1500g/Lであり、より好ましくは200g/L~1,200g/Lであり、さらに好ましくは400g/L~1,000g/Lであり、特に好ましくは500g/L~800g/Lである。
また、(c)成分の金属種の含有率は、11.0~60.0質量%であり、好ましくは13~60質量%であり、さらに好ましくは15~60質量%である。
【0022】
(c)成分の合計含有量は、エアゾール型泡状皮膚洗浄料全量に対し1.0~25.0質量%であるが、好ましくは5.0~22.5質量%、さらに好ましくは10.0~20.0質量%である。(c)成分の含量が1.0質量%未満の場合は、泡安定性や、角が立つような滑らかさが損なわれてぼそぼそとする質感を生じることがあり、(c)成分の含量が25.0質量%よりも多く含まれる場合は、泡密度が高くなりすぎるために泡量が低下するほか、起泡時に大きい泡を抱えるため破泡による体積低下が大きくなり、泡安定性が低下する傾向がある。
【0023】
本発明のエアゾール型泡状皮膚洗浄料において、以下の式で算出される倍率Pは、特に限定されないが、例えば、100以上であり、通常50,000以下となる。この倍率Pは、好ましくは200以上であり、より好ましくは400以上である。また、好ましくは30、000以下であり、より好ましくは10,000以下であり、さらに好ましくは2,000以下であり、特に好ましくは1,000以下であり、最も好ましくは600以下である。
P=
((a)成分由来のアルカリ金属(mg)+(c)成分由来のアルカリ金属(mg))/
(a)成分のモル数(mmol)
【0024】
〔(d)噴射剤〕
本発明のエアゾール型泡状皮膚洗浄料に(d)成分として含有される噴射剤は、化粧料のエアゾールに使用できうる噴射剤であれば特に制約されない。例えば、プロパン、n-ブタン、i-ブタン等を主成分とする液化石油ガス(LPG)等の炭化水素類、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス等の圧縮ガスが挙げられる。これらの噴射剤はそれぞれ単独で、または2種以上を併用してもよい。中でも好ましくは液化石油ガス(LPG)等の炭化水素類、圧縮ガスであり、より好ましくは液化石油ガス(LPG)である。
(d)成分の含有量が多いと破泡しやすくなることがあるので、(d)成分の含有量をエアゾール型泡状皮膚洗浄料全量に対して、15.0質量%以下とするが、好ましくは10.0質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下である。(d)成分が少ないと泡質が低下するだけでなく泡持ちも低下することがあるので、(d)成分の含有量をエアゾール型泡状皮膚洗浄料全量に対して、3.0質量%以上とするが、好ましくは4.0質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上である。
【0025】
〔(e)増粘性多糖類〕
本発明のエアゾール型泡状皮膚洗浄料は、(e)増粘性多糖類を含有してもよい。(e)増粘性多糖類としては、特に限定されないが、例えば、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、寒天、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。これらの中でも(e)増粘性多糖類としては、キサンタンガムが好ましい。(e)成分の含有量は、エアゾール型泡状皮膚洗浄料全量に対して、好ましくは0.05~1質量%であり、より好ましく0.1~1質量%である。(e)成分の含有量が0.05質量%未満であると高粘度に由来する起泡性の低下を生じることがあり、1質量%超であると低粘度に由来する起泡性の低下を生じることがある。
【0026】
[その他の成分]
本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、前述の成分に加え、化粧料、医薬部外品、医薬品等に使用される添加剤を含有してもよい。例えば、嗜好性を高める目的で天然香料、合成香料を加えることができる。
天然香料は、植物の花、幹、葉、果物、果皮、根から水蒸気蒸留法などで得られる精油であり、分離された水も芳香水として使用することができる。合成香料は、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、芳香族アルコール、炭化水素など特に制限はない。また添加剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性高分子;セラミド、コレステロール、カチオン化セルロース等のカチオン性高分子;pH調製剤としての酸、アルカリ;パラベン類;防腐剤;動植物由来のエキス;ビタミン類;アミノ酸類;色素;顔料等が挙げられる。
【0027】
[水]
本発明のエアゾール型泡状皮膚洗浄料において、上記した(a)~(d)成分及び必要に応じて配合される他の添加剤以外の残部は水であることが好ましい。エアゾール型泡状皮膚洗浄料における水の含有量は、特に限定されないが、例えば10~95質量%であり、好ましくは15~90質量%であり、より好ましくは25~85質量%である。水としては、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水などを使用することができる。
【0028】
[エアゾール容器]
本発明のエアゾール型泡状皮膚洗浄料は、エアゾール容器に封入され、前記エアゾール容器から噴射されて泡状物を形成する。
エアゾール容器は、エアゾールバルブ、及びノズルを少なくとも備える耐圧容器である。
【0029】
耐圧容器としては、例えば、アルミニウムやブリキなどの金属製、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂製、またはガラス製であって、上端に開口部を有する有底筒状に成形したものを用いることができる。
【0030】
エアゾールバルブとしては、一般的にエアゾール容器に使用されるエアゾールバルブを使用することができ、例えば、弁機構と、弁機構を収容するハウジングと、ハウジングを耐圧容器の所定の位置に保持すると共に耐圧容器の開口部に固着するためのマウント部材とを備えたもの等を用いることができる。弁機構は、例えば、ステムと、ステム孔を塞ぐステムガスケットと、ステムを上方向に付勢するためのスプリングとを備え、スプリングに抗してステムが下方向に移動するとステム孔が開口され、耐圧容器内と外部とが開通される。ハウジングには、耐圧容器内のエアゾール型泡状皮膚洗浄料を取り込むためのハウジング孔が形成され、ハウジング孔には、耐圧容器の底部まで延びるディップチューブが接続されている。これにより、耐圧容器内のエアゾール型泡状皮膚洗浄料がディップチューブを通過してハウジングとステムとの間隙に供給可能となる。
【0031】
ノズルは、エアゾールバルブを介して耐圧容器に取り付けられる部材である。ノズルには、エアゾールバルブのステム孔を介して耐圧容器内から取り込まれるエアゾール型泡状皮膚洗浄料が通過する通路と、エアゾール型泡状皮膚洗浄料が外部に噴射される噴射口とが形成されている。
使用者がスプリングに抗してノズルを下方向に押すと、ステムも下方向に移動してステム孔が開口され、耐圧容器内と外部とが開通される。この開通により、耐圧容器内のガス状噴射剤の圧力によって、エアゾール型泡状皮膚洗浄料がディップチューブ、ハウジング孔、ステム孔を通過して、ノズルの噴射口から外部に噴射される。外部に噴射されたエアゾール型泡状皮膚洗浄料は、減圧による噴射剤の急激な膨張によって泡状物を形成する。
【0032】
本発明のエアゾール型泡状皮膚洗浄料は常法に従って製造することができる。例えば、(d)成分以外の配合成分を適宜加熱して撹拌混合し、室温まで冷却した後、耐圧容器に充填する。更に(d)成分を耐圧容器に充填した後、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブのマウント部材を固着することによって、エアゾール容器に封入されたエアゾール型泡状皮膚洗浄料を製造することができる。
【実施例0033】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0034】
各実施例及び比較例で使用した各成分は以下のとおりである。
<(a)成分>
(アニオン性界面活性剤)
・N-ヤシ油脂肪酸アシル-メチルタウリンNa(日油(株)製「ダイヤポンK-SF」)
・N-ラウロイル-メチル-β-アラニンNa(日油(株)製「ソフティルトAS-L」)
・POEラウリルエーテル硫酸Na(日油(株)製「パーソフトEF」)
【0035】
(両性界面活性剤)
・N-ヤシ油脂肪酸アシルアミドプロピルベタイン(日油(株)製「ニッサンアノンBDF-SF」)
・N-ラウリルアミノジ酢酸Na(日油(株)製「ニッサンアノンLA」)
【0036】
<(a’)成分>
(ノニオン性界面活性剤)
・ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル(日油(株)製「ユニグリMK-207」)
・ラウリン酸PEG-80ソルビタン(日油(株)製「ノニオンLT-280」)
・ポリソルベート80(日油(株)製「NOFABLE ESO-8520」)
【0037】
<(b)成分>
・グリセリン(日油(株)製「RG-S」)
・ジプロピレングリコール((株)ADEKA製「DPG-RF」)
・ソルビトール(三菱商事ライフサイエンス(株)製「ソルビットD-70」)
【0038】
<(c)成分>
・PCA-Na(味の素ヘルシーサプライ(株)製「Ajidew NL-50」、溶解度:613g/L、アルカリ金属含有率:15.2%)
・クエン酸3Na(昭和加工(株)製「クエン酸ナトリウム」、溶解度:720g/L、アルカリ金属含有率:26.7%)
・NaCl(日本食塩製造(株)製「精製塩」、溶解度:359g/L、アルカリ金属含有率:39.3%)
・KCl(富士フィルム和光純薬(株)製「塩化カリウム」、溶解度:342g/L、アルカリ金属含有率:52.4%)
【0039】
<(c’)成分>
・MgCl2(富士フィルム和光純薬(株)製「塩化マグネシウム」、溶解度:400g/L、アルカリ金属含有率:0%)
【0040】
<(d)成分>
・LPG(液化石油ガス)
【0041】
<(e)成分>
・キサンタンガム(住友ファーマフード&ケミカル(株)製「ケルトロールT」)
<その他成分>
・フェノキシエタノール(クラリアントジャパン(株)製「フェノキシトール」)
・エチルヘキシルグリセリン(日油(株)製「グリモイストEH」)
【0042】
[実施例1~9、比較例1~7]
表1~2に示す配合比率で、以下の方法によりエアゾール型泡状皮膚洗浄料を調製した。
すなわち、精製水に(b)成分に予備分散した(e)成分を混合し、75~80℃に加熱後20分撹拌し溶解した。その後(a)成分、(c)成分をそれぞれ添加し、その後冷却した。耐圧性を有するエアゾール試験瓶(東京高分子(株)、容量100ml)に(d)成分の噴射剤以外の組成物を充填し、エアゾールバルブにて当該試験瓶を密閉し、エアゾールバルブを介して噴射剤を10%充填し、ノズルを取りつけてエアゾール容器に封入されたエアゾール型泡状皮膚洗浄料を調製した。
得られたエアゾール型泡状皮膚洗浄料を用いて、5項目について下記の評価基準により評価を行った。評価結果を表1に示す。
各表における各成分の数値は、エアゾール型泡状皮膚洗浄料全量に対する含有量(質量%)を意味する。
【0043】
(1)泡量
エアゾール型泡状皮膚洗浄料を容器から3秒間吐出し、吐出直後の泡量について下記のように判定した。
◎:非常に多い。
〇:多い。
△:乏しい。
×:非常に乏しい。
【0044】
(2)泡弾力
20名のパネリストにより、3秒間吐出したエアゾール型泡状皮膚洗浄料の泡を両手で挟みこみ、押しこんだ際の弾力性を下記の基準にて判定した。
5点:挟み込む手を泡が強く押し返す。
4点:挟み込む手を泡が押し返す。
3点:挟み込む手を泡がやや押し返す。
2点:挟んだ泡が、両手の隙間からやや容易に溢れる。
1点:挟んだ泡が、両手の隙間から容易に溢れる。
得られた点数について平均値を取得し、下記のように判定した。
◎:4点超5点以下
〇:3点超4点以下
△:2点超3点以下
×:2点以下
【0045】
(3)泡の千切れなさ、角の立ち
20名のパネリストにより、5秒間吐出したエアゾール型泡状皮膚洗浄料の泡を乾いた顔面に乾いた手で塗り広げ、その後頬を覆う泡を手のひらで包み込み、押し込んだ後に引き離した際の泡がどのような挙動を示すか、下記の基準にて判定した。
5点:塗り広げる際に泡が千切れずよく伸び、頬と手のひらに分かれた泡でピンと角が立つ。
4点:塗り広げる際に泡が千切れず、頬と手のひらに分かれた泡で角が立つが、角の伸びが弱い。
3点:頬と手のひらに分かれた泡が伸びきる途中で千切れ、角の先端が欠ける。
2点:頬と手のひらを引き離した際に早い段階で千切れ、大きい断面を生じる。
1点:泡が伸びず、頬、または手のひらに偏って多く残る。
得られた点数について平均値を取得し、下記のように判定した。
◎:4点超5点以下
〇:3点超4点以下
△:2点超3点以下
×:2点以下
【0046】
(4)泡安定性
エアゾール型泡状皮膚洗浄料を容器から3秒間吐出し、吐出直後から10分経過時の泡量を確認し、泡安定性を下記のように判定した。
◎:泡量が損なわれない。
〇:泡量がやや損なわれるが、残存量が7割以上である。
△:残存量が4割超7割未満である。
×:残存量が4割以下である。
【0047】
(5)すすぎ性
20名のパネリストにより、3秒間吐出したエアゾール型泡状皮膚洗浄料の泡を肌へ伸ばし、洗い流す際のすすぎやすさ(すすぎ性)について下記のように判定した。
5点:速やかに泡が流れ、べたつきやぬるつきがない。
4点:泡のすすぎがやや遅いが、すすぎ後にべたつきやぬるつきがない。
3点:すすぎ後にべたつきやぬるつきがほぼ感じられない。
2点:すすぎ後にややべたつきやぬるつきがやや残る。
1点:すすぎ後にべたつきやぬるつきが残る。
得られた点数について平均値を取得し、下記のように判定した。
◎:4点超5点以下
〇:3点超4点以下
△:2点超3点以下
×:2点以下
【0048】
【0049】
【0050】
表1に示すように、(a)~(d)成分を所定の含有量で含み、本発明の要件を満足する各実施例のエアゾール型泡状皮膚洗浄料は、泡量、泡安定性、泡弾力性に優れつつ、乾いた肌に塗り広げる際も角が立ち千切れない滑らかさを有し、すすぎ性に優れることが分かった。
これに対して、本発明の要件を満足しない各比較例のエアゾール型泡状皮膚洗浄料は、評価結果が実施例と比較して劣る結果となった。
比較例1においては、(a)成分の不足により泡量が、(b)成分の不足により泡弾力が不十分であったほか、これら2成分の不足により泡安定性が不十分であった。
比較例2においては、(c)成分の不足により泡の千切れなさ、角の立ちが不十分であった。
比較例3においては、(a)~(c)成分のいずれも過多であったため、泡量とすすぎ性が不十分となった。
比較例4においては、(b)成分の過多、(c)成分の不足により泡の千切れなさ、角の立ちに加え、すすぎ性が不十分となった。
比較例5においては、(c)成分が過多であったため、泡量とすすぎ性が不十分となった。
比較例6においては、(a)成分が含まれず(a’)成分のみが含まれるために泡量とすすぎ性が不十分となり、さらに泡の千切れなさ、角の立ちも不十分であった。
比較例7においては、(c)成分が含まれず(c’)成分のみが含まれるために泡の千切れなさ、角の立ちが不十分となったほか、泡量、すすぎ性が不十分となった。