(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113940
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法、人工芝ヤーンの製造方法、および、人工芝
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20240816BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20240816BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C08J3/22 CEP
C08J3/22 CES
C08L23/04
C08L1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019231
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】坂口 和晃
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AB11
4F070AB24
4F070AD02
4F070FA17
4F070FB03
4F070FB06
4F070FC03
4J002AB01Y
4J002BB03W
4J002BB03X
4J002BB04W
4J002BB04X
4J002FD01Y
4J002GK01
(57)【要約】
【課題】強度が向上しつつ伸びの低減が抑えられる人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法は、第1ポリエチレンと、第2ポリエチレンおよびセルロースファイバーを含むマスターバッチとを第2ポリエチレンのメルトフローレート(MFR2)(190℃、荷重2.16kgf)と第1ポリエチレンのメルトフローレート(MFR1)(190℃、荷重2.16kgf)との差(MFR2-MFR1)が5.0g/10min以下になり、セルロースファイバーの含有率が3質量%以上、10質量%以下となるように混合することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法であって、
第1ポリエチレンと、
第2ポリエチレンおよびセルロースファイバーを含むマスターバッチとを
前記第2ポリエチレンのメルトフローレート(MFR2)(190℃、荷重2.16kgf)と前記第1ポリエチレンのメルトフローレート(MFR1)(190℃、荷重2.16kgf)との差(MFR2-MFR1)が5.0g/10min以下になり、
前記セルロースファイバーの含有率が3質量%以上、10質量%以下となるように混合することを特徴とする人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第1ポリエチレンのメルトフローレート(MFR1)(190℃、荷重2.16kgf)が、0.5g/10min以上、3.0g/10min以下である請求項1に記載の人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記第2ポリエチレンのメルトフローレート(MFR2)(190℃、荷重2.16kgf)が、0.5g/10min以上、8.0g/10min以下である請求項1に記載の人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記差(MFR2-MFR1)が、0g/10min以上である請求項1に記載の人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記セルロースファイバーは、平均繊維径が0.5nm~1000nmのセルロースナノファイバーである請求項1に記載の人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法
【請求項6】
請求項1に記載の製造方法により製造した人工芝ヤーン用樹脂組成物をモノフィラメント化することを特徴とする人工芝ヤーンの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により得られた人工芝ヤーンを用いた人工芝。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースファイバーを配合した人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境調和型のバイオマス材料として、セルロースナノファイバー(CNF)が注目を浴びている。セルロースナノファイバーは主に植物由来の繊維で、軽量かつ高強度であることに加え、森林資源に恵まれた我が国で豊富に採取出来る材料である。セルロースナノファイバーを種々の熱可塑性樹脂、ゴム、熱硬化性樹脂に添加することで、高強度化を図る研究が多くなされている。
【0003】
一方、セルロースナノファイバーは微小サイズ、かつ表面が親水性のため、疎水性の樹脂中で凝集しやすく分散性が悪い。その結果、高強度を発現するものの、樹脂の伸びや曲げなどが大きく減少する傾向にあった。また、セルロースナノファイバーの凝集により外観不良になるという問題があった。
【0004】
そのため、セルロースナノファイバーの分散性を向上させる技術が検討されている。例えば、特許文献1には、セルロースナノファイバーの表面を化学処理により疎水化することや、相溶化剤として酸変性樹脂を用いることで、樹脂中のセルロースナノファイバーの分散性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、引張強さや弾性率といった樹脂組成物の強度の向上のみが検討され、伸びがどれだけ保持できるかについて全く検討されなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、強度が高められ、伸びの低減が抑えられた人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法は、
第1ポリエチレンと、
第2ポリエチレンおよびセルロースファイバーを含むマスターバッチとを
前記第2ポリエチレンのメルトフローレート(MFR2)(190℃、荷重2.16kgf)と前記第1ポリエチレンのメルトフローレート(MFR1)(190℃、荷重2.16kgf)との差(MFR2-MFR1)が5.0g/10min以下になり、
前記セルロースファイバーの含有率が3質量%以上、10質量%以下となるように混合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、強度が高められ、伸びの低減が抑えられた人工芝ヤーン用樹脂組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法は、第1ポリエチレンと、
第2ポリエチレンおよびセルロースファイバーを含むマスターバッチとを
前記第2ポリエチレンのメルトフローレート(MFR2)(190℃、荷重2.16kgf)と前記第1ポリエチレンのメルトフローレート(MFR1)(190℃、荷重2.16kgf)との差(MFR2-MFR1)が5.0g/10min以下になり、
前記セルロースファイバーの含有率が3質量%以上、10質量%以下となるように混合することを特徴とする。
【0012】
本発明の人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法は、第1ポリエチレンと、セルロースファイバーを予め第2ポリエチレンに配合したマスターバッチとを混合する。そして、
前記第2ポリエチレンのメルトフローレート(MFR2)(190℃、荷重2.16kgf)と前記第1ポリエチレンのメルトフローレート(MFR1)(190℃、荷重2.16kgf)との差(MFR2-MFR1)が5.0g/10min以下になり、セルロースファイバーの含有率が3質量%以上、10質量%以下となるように混合することにより、セルロースファイバーがポリエチレン中に均一に分散する。その結果、得られる人工芝ヤーンの強度(貯蔵弾性率)が向上して、伸びの低減を抑えることができる。また、得られる樹脂組成物の外観が良好となる。
【0013】
なお、本発明において、第2ポリエチレンおよびセルロースファイバーを含むマスターバッチを単に「マスターバッチ」と称し、第1ポリエチレンとマスターバッチとを混合する工程を単に「ポリエチレン混合工程」と称する場合がある。
【0014】
本発明のポリエチレン混合工程では、例えば、第1ポリエチレンと、マスターバッチと、必要に応じて添加する添加剤とを混合する。各原料の混合手順は、特に限定されず、例えば、第1ポリエチレンと、マスターバッチと、必要に応じて添加する添加剤とを一括で配合して混合する態様;第1ポリエチレンとマスターバッチとを混合してから、必要に応じて添加する添加剤を混合する態様;第1ポリエチレンと必要に応じて添加する添加剤とを混合してから、マスターバッチを混合する態様;マスターバッチと必要に応じて添加する添加剤とを混合してから、第1ポリエチレンを混合する態様;などが挙げられる。なお、前記添加剤は必要に応じて添加されるものであり、添加されない場合は、第1ポリエチレンとマスターバッチとを混合して人工芝ヤーン用樹脂組成物を作製すればよい。
【0015】
マスターバッチの配合量は、マスターバッチ中のセルロースファイバーの含有率および最終的な人工芝ヤーン用樹脂組成物におけるセルロースファイバーの含有率に基づいて適宜決定することができる。マスターバッチの配合量は、第1ポリエチレン100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、35質量部以下がさらに好ましい。マスターバッチの配合量が5質量部以上であれば、最終的な人工芝ヤーン用樹脂組成物におけるセルロースファイバーの含有率を所定範囲に調整しやすくなり、50質量部以下であれば、第1ポリエチレンの性状を発現しやすくなるからである。
【0016】
前記ポリエチレン混合工程は、公知の混練機を用いて溶融混練することで行うことができる。混練機としては、特に限定されず、例えば、ラボプラストミル、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機(一軸押出機、二軸押出機、二軸一軸押出機など)などが挙げられる。
【0017】
前記ポリエチレン混合工程を行う際の材料温度は、特に限定されないが、130℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上であり、さらに好ましくは170℃以上であり、240℃以下が好ましく、より好ましくは220℃以下であり、さらに好ましくは200℃以下である。材料温度が130℃以上であれば、ポリエチレン混合工程をより容易に行うことができ、240℃以下であれば、セルロースファイバーの熱劣化を抑制できるからである。また、前記ポリエチレン混合工程を行う時間は、特に限定されないが、混合均一性と生産性とのバランスから、5分間~20分間が好ましい。
【0018】
前記マスターバッチは、第2ポリエチレンとセルロースファイバーとを混合して作製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0019】
マスターバッチ中のセルロースファイバーの含有率は、特に限定されないが、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。マスターバッチ中のセルロースファイバーの含有率が10質量%以上であれば、第1ポリエチレンに対するマスターバッチの配合量を調整しやすくなり、60質量%以下であれば、セルロースファイバーのマスターバッチ化がより容易になるからである。
【0020】
前記第2ポリエチレンとセルロースファイバーとの混合は、公知の混練機を用いて溶融混練することで行うことができる。混練機としては、特に限定されず、例えば、ラボプラストミル、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機(一軸押出機、二軸押出機、二軸一軸押出機など)などが挙げられる。
【0021】
以下、本発明で使用する各原料について説明する。
<第1ポリエチレンおよび第2ポリエチレン>
前記第1ポリエチレンおよび第2ポリエチレンは、人工芝ヤーンの素材として使用できるものであれば特に限定されない。
【0022】
前記ポリエチレンは、エチレンを主原料として合成される熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、エチレンのみからなるポリエチレン単独重合体、および、エチレンと炭素数が3~20のα-オレフィンとのポリエチレン共重合体などが挙げられる。前記α-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。
【0023】
前記ポリエチレンは、その密度により、低密度ポリエチレン(LDPE)(一般的に密度が0.94g/cm3未満のポリエチレンを指す。)と高密度ポリエチレン(HDPE)(一般的に密度が0.94g/cm3以上のポリエチレンを指す。)があるが、何れも使用することができる。これらの中でも、延伸性に優れ、強度が高く、裂けにくいという点から、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が特に好ましい。
【0024】
前記ポリエチレン混合工程において、前記第2ポリエチレンのメルトフローレート(MFR2)(190℃、荷重2.16kgf)と前記第1ポリエチレンのメルトフローレート(MFR1)(190℃、荷重2.16kgf)との差(MFR2-MFR1)は、5.0g/10min以下にすることが好ましく、4.0g/10min以下にすることがより好ましく、3.0g/10min以下にすることがさらに好ましい。前記差(MFR2-MFR1)が5.0g/10min以下であれば、得られる人工芝ヤーン用樹脂組成物においてセルロースファイバーの分散性が向上する。その結果、強度の向上と伸びの低減抑制を両立した人工芝ヤーンを得ることができる。また、前記差(MFR2-MFR1)は、特に限定されないが、0g/10min以上が好ましく、0g/10min超がより好ましく、0.5g/10min以上がさらに好ましい。
【0025】
前記第1ポリエチレンのメルトフローレート(MFR1)(190℃、荷重2.16kgf)は、特に限定されないが、0.5g/10min以上が好ましく、0.6g/10min以上がより好ましく、0.7g/10min以上がさらに好ましく、3.0g/10min以下が好ましく、2.8g/10min以下がより好ましく、2.5g/10min以下がさらに好ましい。第1ポリエチレンのメルトフローレート(MFR1)が0.5g/10min以上であれば、人工芝ヤーンの成形性がより良好となり、3.0g/10min以下であれば、得られる人工芝ヤーンの強度がより高くなる。
【0026】
前記第2ポリエチレンのメルトフローレート(MFR2)(190℃、荷重2.16kgf)は、特に限定されないが、0.5g/10min以上が好ましく、1.0g/10min以上がより好ましく、2.0g/10min以上がさらに好ましく、8.0g/10min以下が好ましく、6.0g/10min以下がより好ましく、5.0g/10min以下がさらに好ましい。第2ポリエチレンのメルトフローレート(MFR2)が0.5g/10min以上であれば、成形性が良好であり、セルロースナノファイバーを高充填することができ、8.0g/10min以下であれば、差(MFR2-MFR1)を5.0g/10min以下にしやすい。
【0027】
前記第1ポリエチレンと第2ポリエチレンとの質量比(第1ポリエチレン/第2ポリエチレン)は、特に限定されないが、1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましく、25以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。質量比(第1ポリエチレン/第2ポリエチレン)が1.5以上であれば、ベース樹脂となる第1ポリエチレンの機械的物性は、第2ポリエチレンによる影響が少なくなり、25以下であれば、最終的な人工芝ヤーン用樹脂組成物におけるセルロースナノファイバーの含有率を所定範囲に調整しやすくなる。
【0028】
<セルロースファイバー(CF)>
本発明で使用するセルロースファイバーは、植物などの天然原料に由来する繊維であることが好ましい。植物由来のセルロースファイバーは、主に木材を原料とするが、木材のほかにも、竹、稲わら・麦わら・もみ殻、農業残渣(野菜くず、茶殻、みかん皮など)、草本類(ススキなど)、海藻といった原料からも得られる。
【0029】
前記セルロースファイバーは、基本となる単位である幅3nm~4nmのシングルセルロースファイバーが束となって細胞壁中での基本単位である幅10nm~20nmのセルロースナノファイバーを構成し、それがさらに太さ数10μm束となった構造を有している。
【0030】
本発明で使用するセルロースファイバーの平均繊維径は、100μm以下であることが好ましく、90μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることがさらに好ましい。なお、平均繊維径の下限としては、後述するセルロースナノファイバーの下限を採用することができる。
【0031】
本発明で使用するセルロースファイバーの平均繊維長さは、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。なお、平均繊維長の下限としては、後述するセルロースナノファイバーの下限を採用することができる。
【0032】
前記平均繊維径、平均繊維長は、セルロースファイバーを電子顕微鏡で観察し、視野内のセルロースファイバーを50本以上測定し、平均値を求める。
【0033】
本発明では、セルロースファイバーとして、繊維径がナノメータサイズのセルロースナノファイバーを使用することも好ましい。
【0034】
セルロースナノファイバー(CNF)は、植物などの天然原料に由来するセルロースファイバーをナノサイズレベルまで解繊することにより得られる。具体的には、セルロースナノファイバーは、セルロースファイバーをリファイナーやビーターを用いて機械的に開繊することで得られる。
【0035】
前記セルロースナノファイバーの平均繊維径は、特に限定されないが、0.5nm以上が好ましく、1nm以上がより好ましく、2nm以上がさらに好ましく、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。
【0036】
前記セルロースナノファイバーの平均繊維長は、特に限定されないが、10nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましく、100nm以上がさらに好ましく、100μm以下が好ましく、80μm以下が好ましく、50μm以下がさらに好ましい。
【0037】
前記平均繊維径、平均繊維長は、セルロースナノファイバーを電子顕微鏡で観察し、視野内のセルロースナノファイバーを50本以上測定し、平均値を求める。
【0038】
本発明では、前記セルロースファイバーは、第2ポリエチレンに対して、固形でマスターバッチ化出来るものであれば特に限定されず、無処理のものや、化学修飾により表面疎水化・変性されたもの(以下、「化学修飾CF」ということがある。)のいずれも使用することができる。
【0039】
前記化学修飾CFは、セルロースを構成する糖鎖における水酸基の水素原子の代わりに化学修飾基が導入されている(即ち、水酸基が化学修飾されている)ものである。
【0040】
前記化学修飾基としては、例えば、アルキル基、アシル基、カルボキシル基、シラノール基、シリル基、エポキシ基、アミノ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
【0041】
前記アルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0042】
前記アシル基としては、炭素数1~8のアシル基が好ましく、具体的には、ホルミル基、アセチル基、プロピニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0043】
前記カルボキシル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2~6のアルコキシカルボニル基や、フェノキシカルボニル基等の炭素数6~11のアリールカルボキシル基等が挙げられる。
【0044】
前記シラノール基としては、例えば、メチルシラノール基、エチルシラノール基、プロピルシラノール基、ヘキシルシラノール基、オクチルシラノール基、デシルシラノール基、ドデシルシラノール基、オクタデシルシラノール基、ベンジルシラノール基、フェニルエチルシラノール基、フェニルプロピルシラノール基、ビフェニルシラノール基等が挙げられる。
【0045】
前記シリル基としては、-SiR3(ここで、Rは、例えば、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、3つのRは同一でも異なってもよい)で表されるものが挙げられ、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等のアルキルシリル基等が挙げられる。
【0046】
前記エポキシ基としては、エポキシアルキル基、グリシドキシアルキル基、脂環式エポキシ基が好ましく、具体的には、3,4-エポキシブチル基、グリシジルオキシプロピル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等が挙げられる。
【0047】
前記アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ピペリジル基、ピペリジル基等の炭素数1~12のアルキル基が離間したジアルキルアミノ基が挙げられる。
【0048】
前記ビニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、アクリル基等が挙げられる。
【0049】
前記(メタ)アクリロイル基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基が挙げられる。
【0050】
本発明では、セルロースファイバーとして、フルオレン誘導体で修飾されたものを使用することが好ましく、フルオレン誘導体で修飾されたセルロースナノファイバーを使用することがより好ましい。フルオレン誘導体で修飾されたセルロースファイバーは、セルロースファイバーの表面の一部または全部に、フルオレン誘導体を含む被覆が設けられていることが好ましい。
【0051】
フロオレン誘導体は、複数の水酸基を有するフルオレン化合物を含むことが好ましい。
フルオレン化合物が水酸基を有するための態様としては、脂肪族構造に水酸基が結合したアルコール性水酸基構造であってもよいし、芳香族構造に水酸基が結合したフェノール製構造であってもよい。つまり、ジオールであってもよいし、ジフェノールであってもよい。
【0052】
また、フルオレン化合物の分子量は1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。
【0053】
フルオレン誘導体の構造式は、より具体的には、下記一般式(1)で表わされるものが好ましい。
【0054】
【化1】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環、R
1は任意の置換基又は水素原子、R
2はアルキレン基、R
3は任意の置換基又は水素原子、kは0~4の整数、mは0又は1の整数、nは0以上の整数を表わす。)
【0055】
また、耐熱性を有するという理由から、上記式(1)において、環Zはベンゼン環又はナフタレン環、R1は水素原子、R2はメチレン基、mは0又は1、R3はメチル基、水素又は水酸、nは0、1又は2であることが好ましい。
【0056】
より具体的には、前記式(1)で表わされるフルオレン誘導体は、ビスフェノールフルオレン(BPF)、ビスクレゾールフルオレン(BCF)、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)、ビスナフトールフルオレン(BNF)、及びビスキシレノールフルオレン(BXF)からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0057】
フルオレン誘導体の被覆量は、セルロースファイバー(固形成分換算)100質量部に対して、2質量部~100質量部であることが好ましく、5質量部~75質量部であることがより好ましい。
【0058】
フルオレン誘導体の被覆の厚みについても特に限定はなく、例えば、1nm~1000nmであることが好ましい。
【0059】
本発明のポリエチレン混合工程では、得られる人工芝ヤーン用樹脂組成物におけるセルロースファイバーの含有率を、3質量%以上にすることが好ましく、3.5質量%以上にすることがより好ましく、4質量%以上にすることがより好ましく、10質量%以下にすることが好ましく、8質量%以下にすることがより好ましく、7質量%以下にすることがさらに好ましい。セルロースファイバーの含有率が3質量%以上であれば、セルロースファイバーによる補強効果が高くなり、10質量%以下であれば、セルロースファイバーの凝集や樹脂組成物の硬化が発生することなく、人工芝ヤーンにする際の成形性やしなやかさが良好となる。
【0060】
<添加剤>
本発明の人工芝ヤーン用組成物には、必要に応じて、相溶化剤、顔料、酸化防止剤、光安定剤などの添加剤を1種以上を配合することができる。
【0061】
相溶化剤は、第1ポリエチレンまたは第2ポリエチレンとセルロースファイバーとの相溶性を高めるために配合されるものである。前記相溶化剤としては、例えば、セルロースファイバーと親和性の高い極性基と、第1ポリエチレンまたは第2ポリエチレンと親和性の高い疎水基とを有するものを用いることができる。このような相溶化剤を用いることで、第1ポリエチレンまたは第2ポリエチレンにおけるセルロースファイバーの分散性が一層高くなる。
【0062】
前記相溶化剤としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂を不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した酸変性熱可塑性樹脂や、オレフィンと極性基を有するコモノマーとを共重合してなる極性共重合樹脂などが挙げられる。前記酸変性熱可塑性樹脂の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、(メタ)アクリル酸変性ポリエチレン、(メタ)アクリル酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。前記極性共重合樹脂の具体例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)などが挙げられる。前記相溶化剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、前記相溶化剤として用いる酸変性熱可塑性樹脂および極性共重合樹脂は、本発明で使用する第1ポリエチレンまたは第2ポリエチレンとは異なるものである。
【0063】
前記相溶化剤は、第1ポリエチレンまたは第2ポリエチレンのいずれかに配合してもよく、両方に配合してもよい。前記相溶化剤の配合量は、第1ポリエチレンと第2ポリエチレンの合計100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。相溶化剤の配合量が前記範囲内であれば、得られる人工芝ヤーンの機械的物性を損なうことなく、第1ポリエチレンまたは第2ポリエチレンとセルロースファイバーとの相溶性を高めることができる。
【0064】
顔料は、人工芝ヤーンを着色するために配合されるものである。前記顔料としては、従来の人工芝ヤーン用着色顔料が使用でき、例えば、ブリリアントグリーンPTMAトーナー、ダイヤモンドグリーンPTMAトーナー、フタロシアニングリーン、フタロシアニングリーン(黄口)などの緑色顔料;ファストイエロー10G、ジスアゾイエローAAA、ジスアゾイエローAAMX、ジスアゾイエローAAOT、黄色酸化鉄、ジスアゾイエローHR、含金アゾ系エローなどの黄色顔料;ジニトロアニリンオレンジ、ジスアゾオレンジPMP、ジアニシジンオレンジなどの橙色顔料;トルイジンレッド、塩素化パラレッド、ブリリアントファストスカーレット、ピラゾロンレッドB、バリウムレッド2B、カルシウムレッド2B、バリウムリソールレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3Bレーキ、ローダミン6GPTMAトーナー、べンガラ、ナフトールレッドFGR、キナクリドンマゼンダ、キナクリドンレッドなどの赤色顔料;ローダミンBPTMAトーナー、ジオキサジンバイオレッドなどの紫色顔料;ビクトリアピュアブルーPTMAトーナー、フタロシアニンブルー(α型)、フタロシアニンブルー(β型)、アルカリブルートーナー、紺青、群青などの青色顔料;炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸亜鉛、二酸化チタン、炭酸マグネシウム、タルクなどの白色顔料;カーボンブラック等の黒色顔料が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、最終的な人工芝ヤーンは、緑、黄緑、黄などの草色に着色されることが好ましい。
【0065】
前記顔料の配合量は、第1ポリエチレンと第2ポリエチレンとの合計100質量部に対して、1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。顔料の配合量が前記範囲内であれば、得られる人工芝ヤーンの機械的物性を損なうことなく、要求される色調を発現することができる。
【0066】
酸化防止剤は、混練成形時の熱可塑性樹脂の熱劣化などを防ぐために配合されるものである。前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。前記酸化防止剤の具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(チバジャパン社製「IRGANOX 1010」)、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバジャパン社製「IRGANOX 1035」)、1,3,5-トリス[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(チバジャパン社製「IRGANOX 3114」)等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
前記酸化防止剤の配合量は、第1ポリエチレンと第2ポリエチレンとの合計100質量部に対して、0.1質量部以上、3質量部以下であることが好ましい。酸化防止剤の配合量が前記範囲内であれば、得られる人工芝ヤーンの機械的物性を損なうことなく、熱可塑性樹脂の熱劣化などを防ぐことができる。
【0068】
光安定剤は、人工芝の光劣化(主に紫外線劣化)を防ぐために配合されるものである。前記光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、フェノール系光安定剤、リン系光安定剤等が挙げられる。前記光安定剤の具体例としては、例えば、ADEKA社製のLA-52(ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル))、LA-57(1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル))、LA-63P(1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールおよび3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物)、LA-72(セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル))等が挙げられる。これらの光安定剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
前記光安定剤の配合量は、第1ポリエチレンと第2ポリエチレンとの合計100質量部に対して、0.5質量部以上、3質量部以下であることが好ましい。光安定剤の配合量が前記範囲内であれば、得られる人工芝ヤーンの機械的物性を損なうことなく、人工芝の光劣化を防ぐことができる。
【0070】
本発明には、本発明の製造方法により製造した人工芝ヤーン用樹脂組成物をモノフィラメント化することを特徴とする人工芝ヤーンの製造方法が含まれる。
【0071】
本発明の人工芝ヤーンは、従来の人工芝ヤーンの製糸方法を用いて製造することができる。例えば、人工芝ヤーン用樹脂組成物を押出機に投入し、所定の温度条件下で溶融混錬し、押出を行う。これにより、押出機の開口から、糸状の樹脂材料が押し出される。このときの温度条件は、人工芝ヤーン用樹脂組成物の融点よりも高い温度、例えば、180℃とすることができる。続いて、押出機から押し出された糸状の樹脂材料を水槽内で冷却固化し、この糸を一軸延伸加工する。さらにその後、熱水槽内で弛緩熱処理を行うことで、ヤーンが製造される。このとき、例えば、冷却固化を行う水槽の温度は、30℃とすることができる。また、一軸延伸の態様としては、ロール延伸により、90℃~100℃の温水槽内で一軸延伸を行うことができる。弛緩熱処理を行う熱水槽の温度は、90℃~100℃とすることができる。弛緩熱処理後、ヤーンはボビンに巻き取られる。
【0072】
本発明により製造される人工芝ヤーンの断面形状は特に限定されず、丸、扁平、中空等いずれであってもよい。
【0073】
本発明には、本発明の人工芝ヤーンの製造方法により得られた人工芝ヤーンを用いた人工芝が含まれる。本発明の人工芝は、従来の人工芝の製造方法を用いて製造することができる。例えば、上記で製糸した人工芝ヤーンに撚り加工、クリンプ加工を施し、パイル(芝材)として基布にタフト(打ち込み)し、次いで、パイルと基布を固着するためにバッキング(裏張り)する。この際、基布としては織布、編物、不織布等が用いられる。また、バッキング基材としては、スチレン-ブタジエン系ラテックス(SBR)やニトリル-ブタジエン系ラテックス(NBR)等の合成ゴム、ポリアクリル酸エステルやポリ塩化ビニル等の合成樹脂が用いられる。
【0074】
図1は、本発明に係る人工芝の一実施形態の説明図である。本発明に係る人工芝1は、基材2と、基材2上に起立する芝葉を模した多数のパイル3とを有する。基材2は、シート状に形成されており、パイル3は、基材2上に所定の間隔をあけて植設されている。また、基材2の裏面側には、パイル3が抜け落ちるのを防止するためバッキング剤が塗布され、バッキング層4が形成されている。
【0075】
基材2の材質及び形態は、特に限定されないが、例えば、基材2は、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂からなる平織布として形成することができる。
【0076】
パイル3は、本発明の製造方法により得られた人工芝用ヤーンから形成される。パイル3は、タフティングマシンを用いて、パイル3となる人工芝ヤーンを基材2に縫い込むことにより、基材2に対して固定することができる。基材2の表面からパイル3の先端までの長さW1も、特に限定されないが、20mm≦W1<50mm程度と比較的短くすることもできるし(一般にショートパイルと呼ばれる)、50mm≦W1≦70mm程度と比較的長くすることもできる(一般にロングパイルと呼ばれる)。パイル3の長手方向の断面形状は、三角形、矩形、円形、星形等とすることができる。
【0077】
バッキング層4の材質も、特に限定されないが、例えば、バッキング層4は、ポリエチレンとSBRラテラックスの混合体から構成することができる。なお、バッキング層4は、省略することもできる。
【0078】
また、基材2の表面上においてパイル3間には、充填材5が充填される。この充填材5は、例えば、クッション材としての役割を果たす他、芝葉を保護することもできる。充填材5は、省略することも可能であるが、パイル3がロングパイルと呼ばれる比較的高さのあるパイルである場合に、特に好ましく使用される。
【0079】
充填材5としては、例えば、弾性充填材5a及び硬質充填材5bの少なくとも一方を用いることができる。弾性充填材としては、例えば、廃タイヤの破砕品などからなるゴムチップを用いることができる。硬質充填材としては、例えば、砂を用いることができる。
図1の例では、パイル3間に、硬質充填材5b及び弾性充填材5aの両方が充填されている。
【実施例0080】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0081】
[評価方法]
(1)MFR
第1ポリエチレンおよび第2ポリエチレンについて、日本産業規格JIS K 7210:2014「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方」に基づき、試験を実施した。試験温度は190℃、荷重は2.16kgfとした。
【0082】
(2)引張試験
表1、2に示す配合の樹脂組成物を150℃、10分間プレス成型することにより得られた厚み2mmのシートについて、日本産業規格JIS K 6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に規定されたダンベル状3号形試験片を打ち抜きにより作製した。そして作製した試験片について、チャック間距離50mm、引張速度200mm/minにて引張試験を実施し、切断時の引張伸び(%)を求めた。試験温度は標準試験温度(23℃)とした。なお、引張伸びについて、セルロースファイバーを添加していないサンプルに対しての低下率で評価した。具体的に、樹脂組成物No.1~3、7、9~13から成型したシートの引張伸びは、樹脂組成物No.7から成型したシートに対しての低下率を計算し、樹脂組成物No.4~6、8、14~16から成型したシートの引張伸びは、樹脂組成物No.8から成型したシートに対しての低下率を計算した。引張伸び低下率が50%以上のものを「×」、25%以上50%未満のものを「○」、25%未満のものを「◎」と評価した。
【0083】
(3)粘弾性測定(強度試験)
表1、2に示す配合の樹脂組成物を150℃、10分間プレス成型することにより得られた厚み2mmのシートについて、日本産業規格JIS K 6394:2007「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-動的性質の求め方」に基づき、試験片サイズ 幅4mm×長さ40mm、つかみ具間隔10mm、平均ひずみ10%、ひずみ振幅±1%、周波数50Hz、試験温度20℃の条件で、貯蔵弾性率を測定した。なお、貯蔵弾性率について、セルロースファイバーを添加していないサンプルに対しての向上率で評価した。具体的に、樹脂組成物No.1~3、7、9~13から成型したシートの貯蔵弾性率は、樹脂組成物No.7から成型したシートに対しての向上率を計算し、樹脂組成物No.4~6、8、14~16から成型したシートの貯蔵弾性率は、樹脂組成物No.8から成型したシートに対しての向上率を計算した。貯蔵弾性率向上率が10%未満のものを「×」、10%以上20%未満のものを「○」、20%以上のものを「◎」と評価した。
【0084】
表1、2に示す配合の原料を50ccのラボプラストミルにより150℃、10分間混練し、150℃、10分間プレス成型することにより厚み2mmのシートを得た。得られたシートについての評価結果を表1、2に示した。
【0085】
【0086】
【0087】
PE-A:プライムポリマー社製、エボリュー(登録商標)SP3010(直鎖状低密度ポリエチレン、MFR:0.8g/10min)
PE-B:Braskem America Inc.製、SLH218(直鎖状低密度ポリエチレン、MFR:2.3g/10min)
CF MB1:大阪ガスケミカル社製、FLCF-LLDPE MB(セルロースファイバー(CF)とポリエチレンとを含むマスターバッチ、CFの種類:フルオレン誘導体にて修飾したセルロースファイバー、CFの濃度:30質量%、樹脂の種類:直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレンのMFR:3g/10min)
CF MB2:大阪ガスケミカル社製、FLCF-HDPE MB(セルロースファイバー(CF)とポリエチレンとを含むマスターバッチ、CFの種類:フルオレン誘導体にて修飾したセルロースファイバー、CFの濃度:30質量%、樹脂の種類:高密度ポリエチレン、ポリエチレンのMFR:20g/10min)
【0088】
表1、2の結果から、第1ポリエチレンと、第2ポリエチレンおよびセルロースファイバーを含むマスターバッチとを前記第2ポリエチレンのメルトフローレート(MFR2)(190℃、荷重2.16kgf)と前記第1ポリエチレンのメルトフローレート(MFR1)(190℃、荷重2.16kgf)との差(MFR2-MFR1)が5.0g/10min以下になり、前記セルロースファイバーの含有率が3質量%以上、10質量%以下となるように混合する本発明人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法により製造した人工芝ヤーン用樹脂組成物は、強度が向上しつつ伸びの低減が抑えられるものである。本発明の人工芝ヤーン用樹脂組成物を用いて成形した人工芝ヤーンは、ヤーンとしてのしなやかさを有しながら、強度が向上しているためにちぎれにくく、人工芝で大きな問題となっているマイクロプラスチックの発生を抑制できると期待される。
【0089】
なお、表1の人工芝ヤーン用樹脂組成物No.1~6をそれぞれ150℃、10分間プレス成型することにより得られた厚み2mmのシートについて、その外観を目視観察したところ、シート中に白い斑点(セルロースファイバーの凝集塊)が生じていないと確認できた。本発明人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法により製造した人工芝ヤーン用樹脂組成物は、外観が良好なものであることが分かる。
本発明の好ましい第2態様は、前記第1ポリエチレンのメルトフローレート(MFR1)(190℃、荷重2.16kgf)が、0.5g/10min以上、3.0g/10min以下である態様(1)に記載の人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法である。
本発明の好ましい第3態様は、前記第2ポリエチレンのメルトフローレート(MFR2)(190℃、荷重2.16kgf)が、0.5g/10min以上、8.0g/10min以下である態様(1)または(2)に記載の人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法である。
本発明の好ましい第4態様は、前記差(MFR2-MFR1)が、0g/10min以上である態様(1)~(3)のいずれか一つに記載の人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法である。
本発明の好ましい第5態様は、前記セルロースファイバーは、平均繊維径が0.5nm~1000nmのセルロースナノファイバーである態様(1)~(4)のいずれか一つに記載の人工芝ヤーン用樹脂組成物の製造方法である。
本発明の好ましい第6態様は、態様(1)~(5)のいずれか一つに記載の製造方法により製造した人工芝ヤーン用樹脂組成物をモノフィラメント化することを特徴とする人工芝ヤーンの製造方法である。