(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113941
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】診断装置、診断システム、診断方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
B61D 19/02 20060101AFI20240816BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240816BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240816BHJP
B61L 25/04 20060101ALI20240816BHJP
E05F 15/00 20150101ALI20240816BHJP
E05B 83/36 20140101ALI20240816BHJP
E05B 81/72 20140101ALI20240816BHJP
【FI】
B61D19/02 A
B60L3/00 N
B60L1/00 A
B61L25/04
E05F15/00
E05B83/36 A
E05B81/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019233
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】湯川 真次
【テーマコード(参考)】
2E052
2E250
5H125
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052EA15
2E052EB01
2E052EC03
2E052GA02
2E052GA05
2E052GB11
2E250AA21
2E250BB01
2E250HH08
2E250JJ45
2E250JJ46
2E250JJ48
2E250KK02
2E250LL01
2E250MM01
2E250RR01
2E250RR11
2E250VV01
5H125AA05
5H125BA09
5H125EE51
5H125EE70
(57)【要約】
【課題】鉄道車両のドアを開閉方向へ若干移動可能なように施錠状態に保持するための施錠機構部に関する異常の診断を行うことが可能な技術を提供する。
【解決手段】一実施形態に係るドア制御装置100は、鉄道車両1のドア80が施錠状態で開動作及び閉動作の少なくとも一方を行ったときの
ドア80の位置のデータを取得し、取得したデータに基づき、開閉方向に移動可能な状態でドア80の施錠状態を保持する施錠機構部LCMに関する異常の診断を行う。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施錠状態にある鉄道車両のドアが駆動された際の前記ドアの駆動に関するデータを取得し、
取得した前記データに基づき、前記ドアの施錠機構部に関する異常の診断を行う、
診断装置。
【請求項2】
前記施錠機構部は、第1の施錠部材と、正常状態で第1の施錠部材に対して隙間をもって嵌合することで前記ドアを施錠する第2の施錠部材と、を有し、
取得した前記データに基づき、前記第1の施錠部材と前記第2の施錠部材との間の前記隙間に関する異常の診断を行う、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記施錠機構部は、施錠状態で前記ドアに開方向の力が働いたときに伸縮する弾性部材を有するプッシュバック機構部を含み、
取得した前記データに基づき、前記ドアの施錠状態での前記プッシュバック機構部に関する異常の診断を行う、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項4】
前記施錠機構部は、第1の施錠部材と、正常状態で第1の施錠部材に対して隙間をもって嵌合することで前記ドアを施錠する第2の施錠部材と、を有し、
前記弾性部材は、前記ドアを駆動させる駆動機構部と前記第1の施錠部材との間に当接するように設けられる、
請求項3に記載の診断装置。
【請求項5】
前記ドアの施錠状態において、全閉位置から開方向に推力が付加されても移動しない状態の位置まで前記ドアが開動作を行ったときの前記ドアの位置に関する前記データを取得し、
取得した前記データに基づき、前記ドアの施錠状態における、前記弾性部材の作用による前記ドアの開方向への移動量に関する異常の診断を行う、
請求項3又は4に記載の診断装置。
【請求項6】
前記ドアの施錠状態において、開動作を行い開方向に推力が付加されても移動しない状態の前記ドアの位置を起点として全閉位置まで閉動作を行ったときの前記ドアの位置に関する前記データを取得し、
取得した前記データに基づき、前記ドアの施錠状態における、前記弾性部材の作用による前記ドアの開方向への移動量に関する異常の診断を行う、
請求項3又は4に記載の診断装置。
【請求項7】
施錠状態で前記ドアが開動作及び閉動作の少なくも一方を行ったときの前記ドアの位置に関する前記データ、及び前記ドアに対する推力に関する前記データを取得し、
取得した前記データに基づき、前記弾性部材の反力に関する異常の診断を行う、
請求項3又は4に記載の診断装置。
【請求項8】
前記ドアの施錠状態において、前記ドアに対する開方向への推力により前記ドアが前記弾性部材の反力に抗して開動作を行ったときの前記ドアの位置に関する前記データ、及び前記ドアに対する推力に関する前記データを取得し、
取得した前記データに基づき、前記弾性部材の反力に関する異常の診断を行う、
請求項7に記載の診断装置。
【請求項9】
前記ドアの施錠状態において、前記ドアが静止状態から開動作を開始したときの前記ドアに対する推力に関する前記データに基づき、前記弾性部材の反力に関する異常の診断を行う、
請求項8に記載の診断装置。
【請求項10】
前記ドアの施錠状態において、前記ドアに対する開方向の推力を付加されながら、前記弾性部材の付勢により前記ドアが閉動作を行ったときの前記ドアの位置に関する前記データ、及び前記ドアに対する推力に関する前記データを取得し、
取得した前記データに基づき、前記弾性部材の反力に関する異常の診断を行う、
請求項7に記載の診断装置。
【請求項11】
前記ドアに対する開方向の推力により前記弾性部材の反力に抗して前記ドアが静止した状態を起点として、前記ドアに対する開方向への推力が減少することにより前記ドアが閉動作を開始したときの前記ドアに対する推力に関する前記データに基づき、前記弾性部材の反力に関する異常の診断を行う、
請求項10に記載の診断装置。
【請求項12】
前記ドアの施錠状態において、前記ドアに対する開方向への推力によって、前記ドアが前記弾性部材の反力に抗して開動作を行ったときの前記ドアの位置に関する前記データ、及び前記ドアに対する推力に関する前記データと、前記ドアの施錠状態において、前記ドアに対する開方向への推力に抗して前記ドアが前記弾性部材の付勢により閉動作を行ったときの前記ドアの位置に関する前記データ、及び前記ドアに対する推力に関する前記データを取得し、
取得した前記データに基づき、前記弾性部材の反力に関する異常の診断を行う、
請求項7に記載の診断装置。
【請求項13】
前記ドアが開動作を行ったときの前記ドアの位置に関する前記データ、及び前記ドアに対する推力に関する前記データに基づき、前記ドアの位置に対する前記弾性部材の第1の弾性力を演算すると共に、前記ドアが閉動作を行ったときの前記ドアの位置に関する前記データ、及び前記ドアに対する推力に関する前記データに基づき、前記ドアの位置に対する前記弾性部材の第2の弾性力を演算し、前記第1の弾性力及び前記第2の弾性力に基づき、前記ドアの位置に対する前記弾性部材の弾性力を推定する、
請求項12に記載の診断装置。
【請求項14】
鉄道車両のドアを施錠状態で駆動させ、
施錠状態にある前記ドアが駆動された際の前記ドアの駆動に関するデータを取得し、
取得した前記データに基づき、前記ドアの施錠機構部に関する異常の診断を行う、
診断システム。
【請求項15】
診断装置が、
施錠状態にある鉄道車両のドアが駆動された際の前記ドアの駆動に関するデータを取得し、
取得した前記データに基づき、前記ドアの施錠機構部に関する異常の診断を行う、
診断方法。
【請求項16】
情報処理装置に、
施錠状態にある鉄道車両のドアが駆動された際の前記ドアの駆動に関するデータを取得させ、
取得させた前記データに基づき、前記ドアの施錠機構部に関する異常の診断を行わせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、診断装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両のドアに関する異常の診断を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉄道車両のドアには、全閉位置において、ドアの施錠を行う施錠機構部が設けられる。そして、施錠機構部は、施錠状態での自身の部品同士の当接の抑制のための隙間を確保したり、施錠状態でのドアに挟まれた人や異物の除去を可能としたりするため、開閉方向へ若干移動可能なようにドアを施錠状態に保持する。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、診断(検出)対象の異常として、施錠機構部の異常は含まれない。そのため、開閉方向へ若干移動可能なようにドアを施錠状態に保持する機能等の施錠機構部に関する異常の診断を行うことができない。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、鉄道車両のドアを開閉方向へ若干移動可能なように施錠状態に保持するための施錠機構部に関する異常の診断を行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
施錠状態にある鉄道車両のドアが駆動された際の前記ドアの駆動に関するデータを取得し、
取得した前記データに基づき、前記ドアの施錠機構部に関する異常の診断を行う、
診断装置が提供される。
【0008】
また、本開示の他の実施形態では、
鉄道車両のドアを施錠状態で駆動させ、
施錠状態にある前記ドアが駆動された際の前記ドアの駆動に関するデータを取得し、
取得した前記データに基づき、前記ドアの施錠機構部に関する異常の診断を行う、
診断システムが提供される。
【0009】
また、本開示の更に他の実施形態では、
診断装置が、
施錠状態にある鉄道車両のドアが駆動された際の前記ドアの駆動に関するデータを取得し、
取得した前記データに基づき、前記ドアの施錠機構部に関する異常の診断を行う、
診断方法が提供される。
【0010】
また、本開示の更に他の実施形態では、
情報処理装置に、
施錠状態にある鉄道車両のドアが駆動された際の前記ドアの駆動に関するデータを取得させ、
取得させた前記データに基づき、前記ドアの施錠機構部に関する異常の診断を行わせる、
プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
上述の実施形態によれば、鉄道車両のドアを開閉方向へ若干移動可能なように施錠状態に保持するための施錠機構部に関する異常の診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】鉄道車両のドアの開閉動作に関連する構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】鉄道車両のドア及びドア駆動機構の配置構造の第1例を示す概略図である。
【
図3】鉄道車両のドア及びドア駆動機構の配置構造の第1例を示す概略図である。
【
図4】鉄道車両のドア及びドア駆動機構の配置構造の第1例を示す概略図である。
【
図5】鉄道車両のドア及びドア駆動機構の配置構造の第1例を示す概略図である。
【
図6】鉄道車両のドア及びドア駆動機構の配置構造の第1例を示す概略図である。
【
図7】鉄道車両のドア及びドア駆動機構の配置構造の第2例を示す概略図である。
【
図9】診断モードの第1例でのドアの閉動作を説明する図である。
【
図10】診断モードの第1例でのドアの閉動作を説明する図である。
【
図11】診断モードの第1例でのドアの閉動作を説明する図である。
【
図12】診断モードの第1例でのドアの閉動作を説明する図である。
【
図13】診断モードの第3例におけるドアの開閉動作に対応するドアの位置及びモータの電流の時間変化を示す図である。
【
図14】診断モードの第4例におけるドアの開閉動作に対応するドアの位置及びモータの電流の時間変化を示す図である。
【
図15】圧縮時及び伸長時のばね部材の応力の推定値の一例を示す図である。
【
図16】プッシュバック力の推定値と実際値(仕様値)との比較図である。
【
図17】ドアに関する異常診断の処理の第1例を示すシーケンス図である。
【
図18】ドアに関する異常診断の処理の第2例を示すシーケンス図である。
【
図20】ドアに関する異常診断の処理の第3例を示すシーケンス図である。
【
図21】診断システムの更に他の例を示す図である。
【
図22】ドアに関する異常診断の処理の第4例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0014】
[ドアの開閉動作に関する構成]
図1~
図8を参照して、鉄道車両1のドア80の開閉動作に関する構成の一例について説明する。
【0015】
図1は、鉄道車両1のドア80の開閉動作に関する構成の一例を示すブロック図である。
図2~
図6は、鉄道車両1のドア80及びドア駆動機構200の配置構造の第1例を示す概略図である。具体的には、
図2は、ドア80の全閉且つ施錠状態におけるドア80及びドア駆動機構200の第1例を示す概略図である。
図3は、全閉且つ解錠状態におけるドア80及びドア駆動機構200の第1例を示す概略図である。
図4は、開動作中(開動作開始直後)或いは閉動作中(閉動作完了直前)におけるドア80及びドア駆動機構200の第1例を示す概略図である。
図5は、開動作中(開動作完了直前)或いは閉動作中(閉動作開始直後)におけるドア80及びドア駆動機構200の第1例を示す概略図である。
図6は、全開状態におけるドア80及びドア駆動機構200の第1例を示す概略図である。
図7は、鉄道車両1のドア80及びドア駆動機構200の配置構造の第2例を示す概略図である。具体的には、
図7は、ドア80の全閉且つ施錠状態におけるドア80及びドア駆動機構200の第2例を示す概略図である。
図8は、プッシュバック機構PBMの一例を示す図である。
【0016】
鉄道車両1は、1つの車両で構成される1両編成であってもよいし、複数の車両が数珠つなぎで連結される複数両編成であってもよい。
【0017】
図1~
図7に示すように、鉄道車両1は、上位装置10と、モータ30と、エンコーダ31と、電流センサ32と、施錠装置50と、DCS(Door Close Switch)60と、DLS(Door Lock Switch)70と、ドア80と、を含む。また、鉄道車両1は、ドア制御装置100と、電源150と、入力コンタクタ151と、ドア駆動機構200とを含む。
【0018】
上位装置10は、車両制御装置12と、ドア開閉操作装置14と、伝送装置16とを含む。
【0019】
車両制御装置12は、鉄道車両1の運行に関する制御を行う。例えば、鉄道車両1が複数両編成の場合、車両制御装置12は、先頭の車両の運転室と最後尾の車両の車掌室とに1つずつ設けられる。また、例えば、鉄道車両が1両編成の場合、車両制御装置12は、鉄道車両1(車両)の前端及び後端の運転室と車掌室とに1つずつ設けられる。
【0020】
車両制御装置12の機能は、任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現される。車両制御装置12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ装置、補助記憶装置、及び外部との入出力用のインタフェース装置を含むコンピュータを中心に構成される。メモリ装置は、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)である。補助記憶装置は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリである。インタフェース装置は、例えば、鉄道車両1の内部の通信回線や鉄道車両1の外部の通信回線に接続するための通信インタフェースを含む。また、インタフェース装置は、外部の記録媒体に接続するための外部インタフェースを含んでもよい。これにより、例えば、製造工程において、作業者は、鉄道車両1の運行の制御に関する処理に利用するプログラムや各種のデータを外部の記録媒体から車両制御装置12の補助記憶装置等にインストールすることができる。また、鉄道車両1の運行の制御に関する処理に利用するプログラムや各種のデータは、通信インタフェースを通じて、鉄道車両1の外部からダウンロードされてもよい。また、インタフェース装置は、接続する通信回線の種類に合わせて、複数の異なる種類のインタフェース装置を含んでよい。
【0021】
車両制御装置12は、鉄道車両1が駅等に停車しているときに、停車中であることを表す停車信号をドア制御装置100に出力する。また、車両制御装置12は、ドア開閉操作装置14から入力される、ドア80の開動作を指示する開指令或いはドア80の閉動作を指示する閉指令をドア制御装置100に向けて出力する。
【0022】
車両制御装置12は、インタロック信号を伝送する配線13が接続される。配線13は、その両端部が車両制御装置12に接続されると共に、配線13には、DCS60及びDLS70が設けられる。DCS60及びDLS70の少なくとも一方がオフ状態の場合、配線13が非導通状態であり、この場合、車両制御装置12に入力されるインタロック信号は、L(Low)レベルとなる。一方、DCS60及びDLS70が共にオン状態の場合、配線13が導通状態であり、この場合、車両制御装置12に入力されるインタロック信号は、H(High)レベルになる。車両制御装置12は、インタロック信号がHレベルの場合に、鉄道車両1を走行可能状態と判断する。そのため、インタロック信号がLレベルからHレベルに移行すると、鉄道車両1は、走行可能になる。
【0023】
ドア開閉操作装置14は、鉄道車両1の乗務員(例えば、車掌)がドア80の開閉操作を行うために用いられる。ドア開閉操作装置14は、開スイッチ14Aと、閉スイッチ14Bとを含む。例えば、鉄道車両1の停車中に開スイッチ14Aが操作されると、ドア開閉操作装置14は、LレベルからHレベルに立ち上がる開指令を車両制御装置12に出力する。また、例えば、鉄道車両1の停車中に閉スイッチ14Bが操作されると、ドア開閉操作装置14は、HレベルからLレベルに立ち下がる閉指令を車両制御装置12に出力する。
【0024】
伝送装置16は、鉄道車両1の複数のドア80ごとのドア制御装置100と車両制御装置12との間で信号の中継を行う。
【0025】
具体的には、伝送装置16は、車両制御装置12からドア制御装置100に向けて送信される各種信号を受信し、対象の一部或いは全部のドア制御装置100に伝送してよい(入力信号SDR)。また、伝送装置16は、それぞれのドア制御装置100から車両制御装置12に向けて送信される各種信号(出力信号SD)を受信し、車両制御装置12に伝送してよい。
【0026】
モータ30は、ドア80を開閉駆動する。モータ30は、例えば、三相交流の駆動電力で駆動される回転機である。モータ30は、三相交流の駆動電力で駆動されるリニアモータであってもよい。また、モータ30は、直流で駆動される直流モータであってもよい。
【0027】
エンコーダ31は、モータ30の回転位置や変位位置を検出する。例えば、モータ30が回転機の場合、エンコーダ31は、モータ30の回転軸の回転位置(回転角度)を検出する。エンコーダ31は、例えば、モータ30の回転軸の一回転中の回転位置(回転角度)、及び回転数を検出する。エンコーダ31は、モータ30の回転軸の回転位置に関する情報を含む検出信号を出力し、検出信号は、ドア制御装置100に取り込まれる。これにより、ドア制御装置100は、エンコーダ31の信号に基づき、ドア80の開閉方向での位置情報を取得することができる。つまり、エンコーダ31の信号に含まれる情報は、ドア80の位置情報に相当する。
【0028】
尚、ドア制御装置100は、エンコーダ31に代えて、或いは、加えて、他の情報からドア80の位置情報を取得してもよい。例えば、モータ30のセンサレス制御が行われる場合、ドア制御装置100は、モータ30の制御の過程で生成される、モータ30の回転位置の推定値に基づき、ドア80の位置情報を取得する。また、ドア制御装置100は、ドア80の位置を直接測定可能な距離センサの出力等に基づき、ドア80の位置情報を取得してもよい。これらの場合、エンコーダ31は省略されてもよい。
【0029】
電流センサ32は、ドア制御装置100からモータ30に供給される三相交流の駆動電力の電流を検出する。電流センサ32は、ドア制御装置100とモータ30との間を接続するU相、V相、及びW相の3本の電力線のうちの2本の電力線の電流を検出する電流センサ32A,32Bを含む。例えば、電流センサ32Aは、U相の電力線の電流を検出し、電流センサ32Bは、W相の電力線の電流を検出する。また、電流センサ32は、残り1本の電力線の電流を検出する電流センサを含んでもよい。例えば、
図1に示すように、電流センサ32は、ドア制御装置100に内蔵されてもよいし、ドア制御装置100の外部に設けられてもよい。電流センサ32(電流センサ32A,32B)の検出信号は、後述の常用系制御部110及び待機系制御部120に取り込まれる。
【0030】
施錠装置50は、ドア80の施錠及び解錠を行う。施錠装置50は、例えば、ピン51と、コイル52,53とを含み、双方向自己保持型ソレノイドによって実現される。コイル52,53は、それぞれ、ドア制御装置100と接続される。
【0031】
施錠装置50は、ドア制御装置100によってコイル52が通電されると、ピン51が施錠装置50の筐体から突出する。これにより、後述のロックピン230が解錠方向に移動し、ドア80が解錠される。また、施錠装置50は、自己保持型であることから、コイル52の通電が解除された後もその筐体から突出した状態を維持する。これにより、ドア80の解錠状態を維持することができる。
【0032】
施錠装置50は、ドア制御装置100によってコイル53が通電されると、ピン51が施錠装置50の筐体に引き込まれる。これにより、後述のロックピン230が施錠方向に移動し、ドア80が施錠される。また、施錠装置50は、自己保持型であることから、コイル53の通電が解除された後もその筐体に引き込まれた状態を維持する。これにより、ドア80の施錠状態を維持することができる。
【0033】
DCS60は、鉄道車両1のドア80の開閉状態に関する検知を行う。具体的には、DCS60は、鉄道車両1のドア80の完全に閉じられた全閉状態を検知する。DCS60は、例えば、ドア80が全閉位置まで移動すると、ドア80の作用によって押圧されるリミットスイッチによって実現される。
【0034】
DCS60は、固定接点61A1,61A2と、固定接点61B1,61B2と、可動接点62とを含む。
【0035】
固定接点61A1,61A2は、配線13を分断する態様で、配線13に直列に配置される。以下、固定接点61A1,61A2を便宜的にDCS60の「A接点」と称する場合がある。
【0036】
固定接点61B1,61B2は、両端がドア制御装置100に接続される配線101を分断する態様で、配線101に直列に配置される。これにより、ドア制御装置100は、固定接点61B1,61B2の導通状態及び非導通状態のそれぞれを示すHレベルの信号及びLレベルの信号によって、DCS60のオン・オフの状態を把握することができる。以下、固定接点61B1,61B2を便宜的にDCS60の「B接点」と称する場合がある。
【0037】
可動接点62は、軸方向(
図1中の上下方向)に沿って移動することによって、DCS60のA接点(固定接点61A1,61A2)及びB接点(固定接点61B1,61B2)の何れか一方を導通させる。DCS60は、外力が作用しない状態では、可動接点62がB接点を導通させる状態、即ち、B接点がオン、及びA接点がオフの状態にある。一方、DCS60は、後述の如く、可動接点62がドア80の作用によって押圧されると、A接点が可動接点62によって導通された状態でA接点がオンされ、B接点がオフされる。そして、DCS60は、可動接点62がドア80の作用によって押圧されない状態に戻ると、B接点が可動接点62によって導通された状態でB接点がオンされ、A接点がオフされる状態に戻る。
【0038】
例えば、ドア制御装置100は、配線101を通じて入力される信号に基づき、DCS60のB接点のオン・オフ状態を把握することができる。また、例えば、ドア制御装置100は、配線101を通じて入力される信号を反転させることにより、DCS60のA接点のオン・オフ状態を把握することができる。
【0039】
DLS70は、ドア80の施錠の有無の検知を行う。具体的には、ドア80の施錠されている状態を検知する。DLS70は、例えば、ドア80のロックピン230が施錠位置に移動すると、ロックピン230の作用によって押圧されるリミットスイッチによって実現される。
【0040】
DLS70は、固定接点71A1,71A2と、固定接点71B1,71B2と、可動接点72とを含む。
【0041】
固定接点71A1,71A2は、配線13を分断する態様で、配線13に直列に配置される。以下、固定接点71A1,71A2を便宜的にDLS70の「A接点」と称する場合がある。
【0042】
固定接点71B1,71B2は、両端がドア制御装置100に接続される配線102を分断する態様で、配線102に直列に配置される。これにより、ドア制御装置100は、固定接点71B1,71B2の導通状態及び非導通状態のそれぞれを示すHレベルの信号及びLレベルの信号によって、DLS70のオン・オフの状態を把握することができる。以下、固定接点71B1,71B2を便宜的にDLS70の「B接点」と称する場合がある。
【0043】
可動接点72は、軸方向(
図1中の上下方向)に沿って移動することによって、DLS70のA接点(固定接点71A1,71A2)及びB接点(固定接点71B1,71B2)の何れか一方を導通させる。DLS70は、外力が作用しない状態では、可動接点72がB接点を導通する状態、即ち、B接点がオンされ、A接点がオフされる状態にある。一方、DLS70は、可動接点72がロックピン230の作用によって押圧されると、A接点がオンされB接点がオフされる。そして、DLS70は、可動接点72がロックピン230の作用によって押圧されない状態に戻ると、B接点がオンされA接点がオフされる状態に戻る。
【0044】
例えば、ドア制御装置100は、配線102を通じて入力される信号に基づき、DLS70のB接点のオン・オフ状態を把握することができる。また、例えば、ドア制御装置100は、配線102を通じて入力される信号を反転させることにより、DLS70のA接点のオン・オフ状態を把握することができる。
【0045】
配線13は、ドア80が全閉し且つ施錠されることにより、DCS60のA接点及びDLS70のA接点が共にオンされると、導通状態となり、インタロック信号がHレベルになる。
【0046】
ドア80は、鉄道車両1の車体の左右の側面の開口部(以下、「ドア開口」)に設けられる両開き式の引戸である。ドア80は、ドアパネル80A,80Bを含む。
【0047】
ドアパネル80A,80Bは、モータ30の動力によって、ドア駆動機構200を介してドア80(車体のドア開口)の開閉動作を行う。具体的には、ドアパネル80A,80Bは、車体のドア開口の前後方向の中央を中心として前後方向で対称の動作を行うことにより、車体のドア開口を閉じたり開いたりすることができる。
【0048】
ドア80の全閉状態において、ドアパネル80A,80Bの互いに当接する部分には、それぞれ、戸先ゴム81A,81Bが設けられる。戸先ゴム81A,81Bは、それぞれ、ドアパネル80A,80Bの合わせ目の部分において、上端から下端に亘る範囲に設けられる。
【0049】
ドア制御装置100は、ドア80の開閉動作に関する制御を行う。ドア制御装置100は、鉄道車両1に設けられる複数のドア80ごとに設けられる。
【0050】
ドア制御装置100の機能は、任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現される。ドア制御装置100は、例えば、CPU、メモリ装置、補助記憶装置、及び外部との入出力用のインタフェース装置を含むコンピュータを中心に構成される。メモリ装置は、例えば、SRAMである。補助記憶装置は、例えば、EEPROMやフラッシュメモリである。インタフェース装置は、例えば、鉄道車両1の内部の通信回線に接続するための通信インタフェースを含む。また、インタフェース装置は、外部の記録媒体に接続するための外部インタフェースを含んでもよい。これにより、例えば、製造工程において、作業者は、ドア80の制御に関する処理に利用するプログラムや各種のデータを外部の記録媒体からドア制御装置100の補助記憶装置等にインストールすることができる。また、ドア80の制御に関する処理に利用するプログラムや各種のデータは、通信インタフェースを通じて、上位装置10からダウンロードされてもよい。また、インタフェース装置は、接続する通信回線の種類に合わせて、複数の異なる種類のインタフェース装置を含んでよい。
【0051】
ドア制御装置100は、常用系制御部110と、待機系制御部120と、切換回路部130と、切換回路部140と、を含む。
【0052】
常用系制御部110は、ドア80の開閉動作に関する制御を行う。常用系制御部110は、電源回路111と、通信部112と、入力信号検出部113と、シーケンス部114と、モータ制御部115と、モータ駆動部116と、施錠・解錠駆動部117とを含む。
【0053】
電源回路111は、常用系制御部110の各種機器の駆動電源として機能する。電源回路111は、電源150からドア制御装置100に供給される、相対的に高い電圧(例えば、100V)の電力を用いて、常用系制御部110の機器を駆動するための相対的に低い電圧(例えば、5V以下)の電力を生成する。
【0054】
通信部112は、ドア制御装置100の外部の伝送装置16と双方向の通信を行う。
【0055】
入力信号検出部113は、ドア制御装置100の外部から入力される各種信号を検出する。
【0056】
また、入力信号検出部113は、検出した信号に基づき、各種処理を行ってもよい。
【0057】
例えば、入力信号検出部113は、入力された信号の中から所定の信号を検出すると、所定の信号をシーケンス部114やモータ制御部115に送る。即ち、入力信号検出部113は、入力される複数の種類の信号の中からシーケンス部114やモータ制御部115の制御で必要な信号を抽出(選択)し、シーケンス部114やモータ制御部115に送る。これにより、シーケンス部114及びモータ制御部115は、入力信号検出部113から入力される信号に基づき、後述のシーケンス制御やモータ30の駆動制御を適切に実行することができる。
【0058】
シーケンス部114は、入力信号検出部113から入力される信号に基づき、ドア80の開閉動作に関するシーケンス制御を行う。具体的には、シーケンス部114は、車両制御装置12からの停車信号、開指令、及び閉指令等に応じて、ドア80の開閉動作に関するシーケンス制御を行う。また、シーケンス部114は、エンコーダ31、DCS60、及びDLS70等の信号を用いて、ドア80の開閉状態、ドア80の開閉方向の位置、ドア80の施錠の有無等を把握しながら、ドア80の開閉動作に関するシーケンス制御を行う。
【0059】
モータ制御部115は、シーケンス部114からのドア80の開閉動作に関する制御指令に応じて、制御指令に対応するドア80の開閉動作を実現するように、モータ30の駆動制御を行う。モータ制御部115は、例えば、シーケンス部114から入力されるモータ30の速度指令及び推力指令に基づき、モータ30を駆動するPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成し、モータ駆動部116に出力する。具体的には、モータ制御部115は、入力信号検出部113から入力される、エンコーダ31及び電流センサ32等の検出信号を用いて、モータ30の電流及び回転軸の回転位置等を把握しながら、速度指令及び推力指令に適合するPWM信号を生成してよい。
【0060】
モータ駆動部116は、電源150から入力される直流電源を用いて、モータ30を駆動する三相交流電力を生成し出力する。モータ駆動部116は、例えば、直流を所定の電圧及び所定の周波数の三相交流に変換するインバータ回路を含む。モータ駆動部116は、その入力側の2本の直流電力線が入力コンタクタ151を通じて電源150に接続され、その出力側の3本の電力線が切換回路部130を通じてモータ30に接続される。
【0061】
施錠・解錠駆動部117は、シーケンス部114から入力される施錠指令や解錠指令に応じて、施錠装置50のコイル52,53を通電させ、ドア80の施錠方向或いは解錠方向に施錠装置50(ピン51)を駆動する。施錠・解錠駆動部117は、その入力側の正ライン及び負ラインの直流電力線が入力コンタクタ151を通じて電源150に接続される。そして、施錠・解錠駆動部117は、その出力側の正ライン及び負ラインの直流電力線の二組のうちの一方の組が切換回路部140を通じてコイル52に接続され、他方の組が切換回路部140を通じてコイル53に接続される。例えば、施錠・解錠駆動部117は、入力側の直流電力線と、出力側の一方の組の直流電力線、及び他方の組の直流電力線のそれぞれとの間の導通・非導通を切り換え可能な半導体スイッチを有し、半導体スイッチのオン・オフを切り換える。具体的には、施錠・解錠駆動部117は、シーケンス部114から解錠指令が入力されると、入力側の直流電力線と、出力側の一方の組の直流電力線との間を導通状態に移行させ、切換回路部140を通じて施錠装置50のコイル52を通電させてよい。また、施錠・解錠駆動部117は、シーケンス部114から施錠指令が入力されると、入力側の直流電力線と、他方の一組の直流電力線との間を導通状態に移行させ、切換回路部140を通じて施錠装置50のコイル53を通電させてよい。
【0062】
待機系制御部120は、ドア80の開閉動作に関する制御を実行可能に構成され、常用系制御部110のバックアップ機能を果たす。これにより、ドア制御装置100は、常用系制御部110に加えて、待機系制御部120が設けられることで、ドア80の開閉動作に関する制御系の冗長化を図ることができる。具体的には、待機系制御部120は、常用系制御部110に異常が発生した場合に、常用系制御部110に代わり、ドア80の開閉動作に関する制御を行う。
【0063】
待機系制御部120は、常用系制御部110と同様の構成要素を含む。具体的には、待機系制御部120は、電源回路121と、通信部122と、入力信号検出部123と、シーケンス部124と、モータ制御部125と、モータ駆動部126と、施錠・解錠駆動部127とを含む。
【0064】
電源回路121は、常用系制御部110の電源回路111と同様のハードウェア構成及び機能を有する。また、通信部122は、常用系制御部110の通信部112と同様のハードウェア構成及び機能を有する。また、入力信号検出部123は、常用系制御部110の入力信号検出部113と同様のハードウェア構成及び機能を有する。また、シーケンス部124は、常用系制御部110のシーケンス部114と同様のハードウェア構成及び機能を有する。また、モータ制御部125は、常用系制御部110のモータ制御部115と同様のハードウェア構成及び機能を有する。また、モータ駆動部126は、常用系制御部110のモータ駆動部116と同様のハードウェア構成及び機能を有する。また、施錠・解錠駆動部127は、常用系制御部110の施錠・解錠駆動部117と同様のハードウェア構成及び機能を有する。そのため、詳細な説明を省略する。
【0065】
切換回路部130は、モータ駆動部116とモータ30とを電気的に接続する状態と、モータ駆動部126とモータ30とを電気的に接続する状態とを切り換える。具体的には、切換回路部130は、その入力側に、モータ駆動部116及びモータ駆動部126のそれぞれの三相交流の出力電力線が接続され、その出力側に、モータ30から延びる三相交流の入力電力線が接続される。そして、切換回路部130は、モータ駆動部116の出力電力線とモータ30の入力電力線とを導通させる状態と、モータ駆動部126の出力電力線とモータ30の入力電力線とを導通させる状態とを切り換える。
【0066】
切換回路部130は、常用系制御部110によりドア80の開閉動作に関する制御が行われる場合、モータ駆動部116とモータ30とを電気的に接続する状態を維持する。一方、切換回路部130は、常用系制御部110に異常が生じ、待機系制御部120によりドア80の開閉動作に関する制御が行われる状態に移行する場合、モータ駆動部126とモータ30とを電気的に接続する状態に切り換える。
【0067】
切換回路部140は、施錠・解錠駆動部117と施錠装置50(コイル52,53)とを接続する状態と、施錠・解錠駆動部127と施錠装置50(コイル52,53)とを接続する状態とを切り換える。具体的には、切換回路部140は、その入力側に施錠・解錠駆動部117及び施錠・解錠駆動部127のそれぞれの二組の出力電力線が接続され、その出力側に、施錠装置50(コイル52,53)から延びる二組の入力電力線が接続される。そして、切換回路部140は、施錠・解錠駆動部117の二組の出力電力線と、施錠装置50の二組の入力電力線との間を接続する状態と、施錠・解錠駆動部127の二組の出力電力線と、施錠装置50の二組の入力電力線との間を接続する状態とを切り換える。
【0068】
切換回路部140は、常用系制御部110によりドア80の開閉動作に関する制御が行われる場合、施錠・解錠駆動部117と施錠装置50(コイル52,53)とを電気的に接続する状態を維持する。一方、切換回路部140は、常用系制御部110に異常が生じ、待機系制御部120によりドア80の開閉動作に関する制御が行われる状態に移行する場合、施錠・解錠駆動部127と施錠装置50(コイル52,53)とを電気的に接続する状態に切り換える。
【0069】
電源150は、モータ30、施錠装置50、及びドア制御装置100を含む、鉄道車両1の各種機器に所定の電圧(例えば、100ボルト)の直流電力を供給する。電源150は、例えば、バッテリや補助電源装置を含む。バッテリは、鉄道車両1のパンタグラフが架線に接続されていない状態で、鉄道車両1の各種機器に直流電力を供給する。補助電源装置は、鉄道車両1のパンタグラフが架線に接続されている状態で、パンタグラフを通じて架線から供給される電力に基づき、直流電力を生成し、鉄道車両1の各種機器に直流電力を供給する。
【0070】
入力コンタクタ151は、電源150とドア制御装置100を含む各種機器との間の電力回路に設けられ、電力回路の開閉を行うことにより、鉄道車両1の各種機器への電力供給のオン・オフを切り換える。入力コンタクタ151は、例えば、鉄道車両1の運転室における電源オンに相当する所定の操作に応じて、閉じられる。これにより、ドア制御装置100を含む鉄道車両1の各種機器への電力供給が開始され、鉄道車両1が起動する。また、入力コンタクタ151は、例えば、鉄道車両1の運転室における電源オフに相当する所定の操作に応じて、開かれる。これにより、ドア制御装置100を含む鉄道車両1の各種機器への電力供給が停止(遮断)され、鉄道車両1が停止する。
【0071】
ドア駆動機構200は、モータ30の動力をドア80に伝達し、ドア80の開閉動作を行わせる。また、ドア駆動機構200は、施錠装置50(ピン51)の動作に合わせて、ドア80の施錠状態及び解錠状態を実現する。
【0072】
ドア駆動機構200は、ラック210,220と、ロックピン230とを含む。
【0073】
ラック210は、ドアパネル80Aの上端部に取り付けられる。ラック210は、ラック部211と、連結部212とを含む。
【0074】
ラック部211は、鉄道車両1の前後方向に延びる部材である。ラック部211の下面には、ラックギヤ211Aが設けられる。ラック部211は、鉄道車両1(車体)のドア開口の上方において、回転軸が鉄道車両1の幅方向(左右方向)に沿うように配置されるモータ30の回転軸よりも若干上方に配置される。これにより、モータ30の回転軸と同軸で配置されるピニオンギヤとラック部211の下面のラックギヤ211Aとを係合させることができる。そのため、モータ30の回転に合わせて、ラック部211を鉄道車両1の前後方向に移動させることができる。
【0075】
連結部212は、ドアパネル80Aとラック部211とを連結する。連結部212は、ドアパネル80Aの上端部から上向きに延び出すように設けられ、その上端部にラック部211が連結される。これにより、ドアパネル80Aは、モータ30の回転に合わせたラック部211の移動に連動して、鉄道車両1の前後方向に移動し、ドア80の開閉動作を実現することができる。この際、ドアパネル80Aは、スライドレール(以下、「ドアレール」)によって前後方向への移動が案内される。
【0076】
連結部212には、DCS当接部213が設けられる。
【0077】
図2、
図3に示すように、DCS当接部213は、ドアパネル80A,80Bが完全に閉じた全閉状態に移行すると、DCS60の可動接点62に当接し、可動接点62が押圧される。これにより、可動接点が押し込まれて、DCS60がオンされる。一方、
図4~
図6に示すように、DCS当接部213は、ドアパネル80Aが完全に閉じた全閉状態以外の状態に移行すると、DCS60の可動接点62と当接しない状態に移行し、DCS60がオフされる。
【0078】
ラック220は、ドアパネル80Bの上端部に取り付けられる。
図2~
図6に示すように、ラック220は、ラック部221と、連結部222と、ロックピン当接部223とを含む。また、
図7に示すように、ラック220は、ばね部材224と、支持棒225とを含んでもよい。以下、
図8に示すように、ばね部材224及び支持棒225を含む機構部を包括的にプッシュバック機構PBMと称する。
【0079】
ラック部221は、鉄道車両1の前後方向に延びる部材である。ラック部221の上面には、ラックギヤ221Aが設けられる。ラック部221は、鉄道車両1のドア開口の上方において、モータ30の回転軸よりも若干下方に配置される。これにより、モータ30の回転軸と同軸で配置されるピニオンギヤとラック部221の上面のラックギヤ211Aとを係合させることができる。そのため、モータ30の回転に合わせて、ラック部221を鉄道車両1の前後方向に移動させることができる。
【0080】
連結部222は、ドアパネル80Bとラック部221とを連結する。連結部222は、ドアパネル80Bの上端部から上向きに延び出すように設けられ、その上端部にラック部221が連結される。これにより、ドアパネル80Bは、モータ30の回転に合わせたラック部221の移動に連動して、鉄道車両1の前後方向に移動し、ドア80の開閉動作を実現することができる。この際、ドアパネル80Bは、スライドレール(ドアレール)によって前後方向への移動が案内される。
【0081】
ここで、モータ30と同軸のピニオンギヤに対して、ラックギヤ211Aが上から係合し、ラックギヤ221Aが下から係合することにより、モータ30の回転に応じて、ラック210,220を反対向きに移動させることができる。そのため、1つのモータ30で2枚のドアパネル80A,80Bの開動作及び閉動作を実現することができる。
【0082】
連結部222の上端部には、鉄道車両1の前後方向におけるドア開口の中央側に向かって下り傾斜する傾斜部222Aが設けられる。
【0083】
ロックピン当接部223は、ドア80の施錠状態において、ロックピン230が当接する。ロックピン当接部223は、連結部222に対して、ラック部221の延び出す方向とは反対側に突出するように設けられる。具体的には、ロックピン当接部223は、連結部から見て、ドアパネル80Bの開方向に突出するように設けられる。ロックピン当接部223には、ロックホール223Aが設けられる。
【0084】
図7、
図8に示すように、プッシュバック機構PBMが設けられる場合、ロックピン当接部223は、ラック部221及び連結部222と別体に設けられる。この場合、ロックピン当接部223は、ラック部221及び連結部222から見て、ドアパネル80Bの開方向に隣り合うように設けられ、プッシュバック機構PBMを介してラック部221及び連結部222と接続される。
【0085】
ロックホール223Aは、ロックピン当接部223の上面に設けられる凹部である。ロックホール223Aには、ドア80が施錠される際に、ロックピン230(後述のピン部231)の下端が上方から挿入される。
【0086】
ばね部材224は、連結部222の上部とロックピン当接部223との間で双方に当接するように配置される。具体的には、ばね部材224は、連結部222の上部における、ドアパネル80Bの開方向に隣接し且つロックピン当接部223における、ドアパネル80Bの閉方向に隣接する。ばね部材224は、前後方向(ドアパネル80Bの開閉方向)に伸縮可能な弾性体であり、例えば、コイルばねである。ばね部材224は、コイルばね状の中心軸部分に支持棒225が挿通された状態になっている。これにより、ばね部材224は、支持棒225に沿って伸縮するように位置が規制される。支持棒225の作用により、連結部222とロックピン当接部223との間の距離は、ゼロから所定値Dmaxの間で可変され、連結部222とロックピン当接部223との間の距離が所定値Dmaxの状態で、ばね部材224は、自然長よりも縮んだ状態にある。これにより、ばね部材224の弾性力(反力)によって、連結部222とロックピン当接部223との間の距離は、所定値Dmaxになるように維持される。
【0087】
尚、ばね部材224は、施錠状態でドア80に開方向の外力が作用する場合に伸縮可能な他の種類の弾性部材に置換されてもよい。
【0088】
ばね部材224の弾性力は、ドア80が閉じる際に、戸先ゴム81A,81Bの間に異物が挟まったまま、ロックホール223Aにピン部231の下端が挿入されても、乗降客が異物を比較的容易に引き抜くことができる程度の弾性力に設定されている。これにより、ドア80(戸先ゴム81A,81Bの間)に異物が挟まれた場合でも、乗降客は、ドアパネル80Bをばね部材224の反力に抗して開方向に移動させるようにして、異物を引き抜くことができる。この際、ドア80の施錠状態において、乗降客は、上述の連結部222とロックピン当接部223との間の距離が略ゼロになる状態までドアパネル80Bを開方向に移動させることができる。
【0089】
支持棒225は、連結部222の上部とロックピン当接部223との間を前後方向(ドア80の開閉方向)で連結する。支持棒225は、棒部225Aと、拡径部225Bとを有する。
【0090】
棒部225Aは、前後方向の基端が連結部222に固定され、先端が拡径部225Bと連結される。棒部225Aは、円形の断面を有し、ばね部材224の中心軸、及びロックピン当接部223を前後方向に貫通する貫通孔に挿通されている。
【0091】
拡径部225Bは、棒部225Aの先端に設けられ、ロックピン当接部223の貫通孔よりも外側に露出している。拡径部225Bは、棒部225Aの外径、及びロックピン当接部223の貫通孔の内径よりも大きい外径の略円板形状を有する。これにより、拡径部225Bがストッパの機能を果たし、連結部222と連結されるドアパネル80Bは、連結部222とロックピン当接部223との間の距離が所定値Dmaxと略ゼロとの間の範囲で前後方向に移動することができる。そのため、乗降客は、上述の如く、ばね部材224の反力に抗して、ドアパネル80Bを開方向に移動させて、異物を引き抜くことができる。
【0092】
尚、プッシュバック機構PBMは、ドア80の施錠状態において、弾性部材がドア駆動機構200からドア80に作用する推力に応じて伸縮可能な構成である限り、上記とは異なる構成や構造を有していてもよい。
【0093】
ロックピン230は、ラック220のロックピン当接部223の上方に設けられる。ロックピン230は、ピン部231と、施錠装置当接部232とを含む。
【0094】
ピン部231は、上下方向に延びるように設けられる。
【0095】
施錠装置当接部232は、ピン部231の上端部に取り付けられ、ピン部231との連結部から水平方向、具体的には、鉄道車両1の前後方向におけるドア開口とは反対向きに延び出すように設けられる。施錠装置当接部232の下方には、施錠装置50が固定して配置され、施錠装置50のピン51の上端部と施錠装置当接部232の下面とが当接している。これにより、施錠装置50のピン51が上方向に突出すると、施錠装置当接部232が上方向に持ち上げられ、施錠装置50のピン51が下方向に引き込まれると、ロックピン230の自重で、施錠装置当接部232が下方向に下がる。
【0096】
図3~
図6に示すように、施錠装置50のピン51が突出した状態では、施錠装置当接部232と連結されるピン部231の下端は、ラック220の傾斜部222Aよりも上方に位置し、ピン部231は、ロックホール223Aに係合しない。そのため、ロックピン230の配置による影響を受けることなく、ラック220が移行可能なことから、ドア80(ドアパネル80A,80B)は、開閉方向に移動可能な状態にある。
【0097】
一方、
図2に示すように、施錠装置50のピン51が引き込まれた状態では、ピン部231の下端がラック220の傾斜部222Aよりも下方に位置する。また、ドア80の全閉状態では、ピン部231は、鉄道車両1の前後方向において、傾斜部222Aよりもロックピン当接部223側に位置する。そのため、ドア80の全閉状態で、施錠装置50のピン51が引き込まれると、施錠装置当接部232が下向きに移動し、ピン部231がラック220のロックホール223A(凹部)に係合する。これにより、ラック220の移動が規制されると共に、ラック220のラックギヤに係合するピニオンギヤの回転が規制され、その結果、ピニオンギヤに係合するラックギヤ211Aを有するラック210の移動が規制される。そのため、ラック210,220と連結されるドアパネル80A,80Bの移動が規制され、ドアパネル80A,80Bの施錠状態が実現される。
【0098】
以下、
図2に示すように、ロックピン当接部223及びロックピン230を含むドア80の施錠状態を実現する機構部を包括的に施錠機構部LCMと称する。また、
図7に示すように、プッシュバック機構PBMが設けられる場合、施錠機構部LCMには、プッシュバック機構PBM(ばね部材224及び支持棒225)が含まれる。
【0099】
[ドアに関する異常診断]
次に、
図9~
図16を参照して、ドア80に関する異常の診断(以下、単に「異常診断」)について説明する。以下、本項目では、ドア80に関する異常診断を行う主体を便宜的に診断システムSYSとして説明を行う。
【0100】
診断システムSYSは、ドア80の開閉動作の際の測定データを取得し、取得したデータに基づき、ドア80の異常診断を行う。
【0101】
異常診断には、例えば、異常の有無の診断や異常の程度の診断等が含まれる。また、異常診断には、異常の兆候の有無の診断が含まれてもよい。
【0102】
ドア80に関する異常診断には、例えば、ドア80の施錠機構部LCMに関する異常診断が含まれる。
【0103】
ドア80の施錠機構部LCMに関する異常診断には、例えば、ドア80の全閉状態におけるロックピン230(ピン部231)とロックホール223Aとの間の位置関係に関する異常診断が含まれる。ドア80の全閉状態におけるピン部231とロックホール223Aとの間の位置関係に関する異常は、例えば、ドア80の全閉状態において、ドア80の開閉方向でのピン部231とロックホール223Aとの間の隙間が正常な状態を代表する基準値よりも小さい状態を意味する。ドア80の開閉方向でのピン部231とロックホール223Aとの間の隙間が基準値よりも小さい状態には、ピン部231とロックホール223Aとの間に隙間がない状態が含まれる。また、ドア80の開閉方向でのピン部231とロックホール223Aとの間の隙間が基準値よりも小さい状態には、そもそも、全閉状態において、ピン部231が連結部222に当接し、結果として、ロックホール223Aに落下できない状態が含まれる。
【0104】
尚、ドア80の施錠状態におけるピン部231とロックホール223Aとの間のドア80の開閉方向での位置関係に関する異常には、様々な要因が想定される。例えば、戸先ゴム81A,81Bの反発力の変化、ドアレールの予め設定されている傾斜、鉄道車両1の車体の歪み等によって、ドア80の施錠状態におけるピン部231とロックホール223Aとの間のドア80の開閉方向での位置関係に関する異常が生じうる。
【0105】
また、ドア80の施錠機構部LCMに関する異常診断には、プッシュバック機構PBMに関する異常が含まれてもよい。
【0106】
プッシュバック機構PBMに関する異常には、例えば、プッシュバック機構PBMのストローク量に関する異常診断が含まれる。プッシュバック機構PBMのストローク量は、ドア80の施錠状態でばね部材224の反力に抗してドア80を開方向に移動させることが可能な移動量を意味する。プッシュバック機構PBMのストローク量に関する異常は、例えば、ドア80の施錠状態において、プッシュバック機構PBMのストローク量が所定範囲を逸脱することを意味する。この際、所定範囲を規定する上限値及び下限値は、それぞれ、所定範囲内に含まれてもよいし含まれなくてもよい。つまり、所定範囲は、上限値以下の範囲で規定されてもよいし、上限値より小さい範囲で規定されてもよい。同様に、所定範囲は、下限値以上の範囲で規定されてもよいし、下限値より大きい範囲で規定されてもよい。所定範囲の上限値及び下限値は、例えば、連結部222とロックピン当接部223との間の通常状態での距離、即ち、所定値Dmaxに基づき規定される。プッシュバック機構PBMのストローク量が正常な場合、ドア80の施錠状態において、連結部222とロックピン当接部223との間の距離が所定値Dmaxの状態から略ゼロの状態までドア80を開方向に移動させることが可能だからである。
【0107】
また、プッシュバック機構PBMに関する異常には、例えば、プッシュバック機構PBM(具体的には、ばね部材224)の反力(以下、「プッシュバック力」)に関する異常診断が含まれる。プッシュバック力は、ドア80の施錠状態でドア80をばね部材224の反力に抗して開方向に移動させる際のばね部材224の反力である。プッシュバック力は、ばね部材224の所定のストローク量の位置での反力であってもよいし、所定のストローク範囲での反力の平均値等であってもよい。プッシュバック力に関する異常は、例えば、ドア80の施錠状態において、プッシュバック機構PBMの反力が所定範囲を逸脱することを意味する。この際、所定範囲を規定する上限値及び下限値は、それぞれ、所定範囲内に含まれてもよいし含まれなくてもよい。所定範囲の上限値及び下限値は、例えば、ばね部材224の単体の弾性力の仕様に基づき規定される。
【0108】
尚、プッシュバック機構PBMに関する異常は、例えば、連結部222とロックピン当接部223との間やばね部材224の内部への異物の混入、ばね部材224の劣化等によって発生する。
【0109】
<診断方法の第1例>
図9~
図12は、診断モードの第1例でのドア80の閉動作を説明する図である。具体的には、
図9~
図12は、診断モードの第1例でのドア80の閉動作の一例を時系列で示す図である。
図9は、第1の診断モードにおいて、ドア80が閉動作の開始時点の位置、即ち、ドア80の全開位置にある状態を示す図である。
図12は、第1の診断モードにおいて、ドア80が全閉位置と全開位置との間にある状態を示す図である。
図11は、第1の診断モードにおいて、ドア80が全閉位置付近に到達し且つ施錠がされていない状態を示す図である。
図12は、診断モードにおいて、ドア80が全閉位置付近に到達し且つ施錠された状態を示す図である。
【0110】
本例では、診断システムSYSは、ドア80の施錠状態におけるピン部231とロックホール223Aとの間の位置関係に関する異常診断を行う。また、本例では、診断モードは、ドア80の施錠状態におけるピン部231とロックホール223Aとの間の位置関係に関する異常診断のためのデータを測定するための制御モードである前提で説明を進める。本例の診断方法は、上述のドア80及びドア駆動機構200の配置構造の第1例(
図2~
図6)及び第2例(
図7)の双方に適用可能である。
【0111】
ドア制御装置100(モータ制御部115或いはモータ制御部125)は、ドア80の開閉動作に関する制御モードとして、通常モードと診断モードとを有する。
【0112】
通常モードは、ドア開口から鉄道車両1の乗客が乗降する際に使用される、ドア80の開閉動作に関する制御モードである。通常モードでは、ドア制御装置100は、停止状態からの加速区間及び停止のための減速区間を除き、ドア80を一定の速度V1で動作(走行)させる。
【0113】
診断モードは、ドア80に関する異常診断を行うためのデータを測定(取得)する際に使用される、ドア80の開閉動作に関する制御モードである。例えば、ドア80の診断モードでは、ドア制御装置100は、ドア80を一定の速度V2で動作(走行)させる。また、速度V2は、速度V1よりも小さくてもよい(V2<V1)。これにより、後述のエンコーダ31の出力に基づくドア80の位置の測定精度を向上させることができる。
【0114】
尚、速度V2は、速度V1と同じであってもよいし、一定の速度でなくてもよい。
【0115】
図9~
図12に示すように、診断モードでは、ドア制御装置100は、全開位置から全閉位置までのドア80の閉動作を実施させる。
【0116】
具体的には、ドア制御装置100は、全開位置から全閉位置までの全区間において、施錠装置50のピン51が施錠位置(引き込まれた位置)にある状態で、ドア80の閉動作を実施させる。これにより、ピン51によってロックピン230の下方への移動(落下)が規制されない状態で、ドア80の全開位置から全閉位置までの閉動作が実施される。そのため、ドア80の閉動作の開始位置では、ロックピン230(ピン部231)が移動可能な下端位置まで下がった状態にあり、その際、DLS70の出力(以下、「DLS信号」)は、施錠状態を示すHレベルになっている(
図9参照)。その後、ドア80の閉動作の進展に応じて、ピン部231の下端が傾斜部222Aに案内される形で上昇し、ロックピン230がDLS70の可動接点72に当接しない状態に移行し、この過程で、DLS信号は、HレベルからLレベルに移行する(
図10参照)。その後、ドア80が全閉位置付近に到達し、ピン部231の全体が前後方向でロックホール223Aの範囲に含まれると(
図11参照)、ロックピン230が自重で下方に移動(落下)しピン部231がロックホール223Aに挿入される(
図12参照)。そして、その際、DLS信号は、LレベルからHレベルに移行する。
【0117】
尚、診断モードでは、ドア80の閉動作は、全開位置から開始されなくてもよい。具体的には、診断モードでは、ロックピン230(ピン部231)が連結部222の上端に乗り上げた状態からロックホール223Aに自重で落下する状態に移行する過程が観測可能であればよい。そのため、例えば、診断モードでは、全閉位置よりも開方向に若干移動した位置からドア80の閉動作が実施されてもよい。これにより、診断モードでのドア80の動作時間を短くすることができ、その結果、ドア80の全閉状態におけるピン部231とロックホール223Aとの間の位置関係に関する異常診断に要する時間を抑制し、効率化を図ることができる。
【0118】
診断モードでは、ドア制御装置100は、ドア80の閉動作時のドア80の位置、及びDLS信号の時系列のデータを測定(取得)する。また、診断モードにて、ドア制御装置100は、ドア80の速度の時系列のデータを測定(取得)してもよい。ドア80の位置や速度は、エンコーダ31の出力に基づき測定(取得)される。
【0119】
診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置、及びDLS信号の測定データに基づき、ドア80の全閉状態におけるピン部231とロックホール223Aとの間の位置関係に関する異常診断を行う。
【0120】
例えば、診断システムSYSは、以下の(A-1)~(A-5)の手順に沿って、ドア80の施錠状態且つ全閉状態におけるピン部231とロックホール223Aとの間の位置関係(
図12中の隙間δ)を推定(評価)する。
【0121】
(A-1)
診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置の時系列の測定データ、及びDLS信号の測定データに基づき、DLS信号がオフ(Lレベル)からオン(Hレベル)に切り換わるタイミング(時刻t1)を取得する。
【0122】
(A-2)
診断システムSYSは、取得済みの時刻t1と、ロックピン230の落下開始のタイミング(時刻t0)とロックピン230でDLS70がオンされるタイミング(時刻t1)との間に想定される時間差Δtとに基づき、時刻t0を推定する。
【0123】
具体的には、診断システムSYSは、取得済みの時刻t1から時間差Δtだけ遡る形で、時刻t0を算出してよい。時間差Δtは、例えば、実験やシミュレーションを通じて予め規定される。
【0124】
尚、時間差Δtの要因は、例えば、施錠装置当接部232(下端)の落下開始時の高さ位置とDLS70の可動接点72がオンされるときの高さ位置との物理的な差やDLS70(可動接点72)のオンタイミングとDLS信号のオンタイミングの時間差等である。後者は、DLS70に内蔵される、可動接点72のオン・オフ状態を受信する受信回路の仕様等により生じうる。また、時間差Δtを無視しても問題がないと判断される場合、時間差Δtを考慮せず、DLS信号がオフからオンに切り換わったタイミングをロックピン230の落下開始のタイミング(時刻t0)とみなしてもよい。この場合、手順(A-2)は省略される。
【0125】
(A―3)
診断システムSYSは、ドア80の位置の時系列の測定データと、時刻t0の推定結果とに基づき、ドア80の閉動作時にロックピン230の時刻t0でのドア80の位置P0を推定する。
【0126】
(A-4)
診断システムSYSは、診断モードでのドア80の閉動作時におけるドア80の位置の時系列の測定データに基づき、ドア80の全閉位置P2を取得する。
【0127】
例えば、ドア制御装置100は、ドア80が全閉位置P2に到達しても、少なくともある程度の期間で、ドア80を閉方向に駆動し続ける。そのため、ドアパネル80A,80Bは、ドア80の閉動作時の全閉位置において、少なくともある程度の期間でモータ30により互いに押し付けられる状態に維持される。よって、診断システムSYSは、ドア80の閉動作時におけるドア80の位置の時系列データにおいて、ドア80の変化がなくなったときの位置をドア80の全閉位置P2として取得することができる。
【0128】
尚、(A-1)~(A-4)の手順は、順序が適宜変更されてもよい。
【0129】
(A-5)
診断システムSYSは、ドア80の取得済みの位置P0及び全閉位置P2に基づき、ドア80の全閉状態でのピン部231とロックホール223Aとのドア80の開閉方向での隙間δを推定する。
【0130】
具体的には、診断システムSYSは、隙間δとして、ドア80の取得済みの位置P0と全閉位置P2との差を算出する(δ=|P0-P2|)。
【0131】
また、診断システムSYSは、上述の手順(A-2)~(A-5)に代えて、以下の(B-2)~(B-5)の手順を実施することにより、ドア80の全閉状態におけるピン部231とロックホール223Aとの間の位置関係(隙間δ)を推定してもよい。
【0132】
(B-2)
診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置の時系列の測定データと、手順(A-1)で取得済みの時刻t1とに基づき、DLS信号がオフからオンに切り換わるタイミング(時刻t1)でのドア80の位置P1を取得する。
【0133】
(B-3)
診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置の時系列の測定データに基づき、ドア80の全閉位置P2を取得する。
【0134】
(B-4)
診断システムSYSは、ドア80の取得済みの位置P1及び全閉位置P2に基づき、DLS信号がオフからオンに切り換わってからドア80が全閉位置に到達するまでの移動距離TL2を算出する。
【0135】
具体的には、診断システムSYSは、移動距離TL2として、ドア80の取得済みの位置P1と全閉位置P2との差を算出する(TL2=|P1-P2|)。
【0136】
(B-5)
診断システムSYSは、ロックピン230の落下開始からロックピン230でDLS70がオンされるタイミングまでのドア80の移動距離TL1と、取得済みの移動距離TL2とに基づき、隙間δを推定する。
【0137】
具体的には、診断システムSYSは、隙間δとして、ドア80の移動距離TL1,TL2の和を算出する(δ=TL1+TL2)。
【0138】
移動距離TL1は、例えば、診断モードでの速度V2の制御パターンと、上述の時間差Δtとに基づき予め規定される。また、移動距離TL1は、診断モードでの実際のドア80の速度の時系列データと、時間差Δtとに基づき、推定(算出)されてもよい。
【0139】
尚、隙間δに代えて、例えば、DLS70がオンされるタイミングでのドア80の位置とドア80の全閉位置との間の移動距離TL2をドア80の全閉状態でのピン部231とロックホール223Aとのドア80の開閉方向での位置関係の評価指標にしてもよい。この場合、手順(B-5)は省略される。
【0140】
診断システムSYSは、推定結果の隙間δが所定基準(閾値δth)に対して相対的に小さい場合、ドア80の全閉状態でのピン部231とロックホール223Aとのドア80の開閉方向での位置関係に異常があると判定する。隙間δが閾値δthに対して相対的に小さいことは、隙間δが閾値δth以下であることであってもよいし、隙間δが閾値δthより小さいことであってもよい。
【0141】
また、診断システムSYSは、対象のドア80についての異常診断の結果(隙間δ)の履歴に基づき、ドア80の全閉状態でのピン部231とロックホール223Aとのドア80の開閉方向での位置関係に関する異常の兆候の有無を診断してもよい。
【0142】
また、診断システムSYSは、ビッグデータに相当する、多数のドア80の診断結果(隙間δ)を利用可能な場合がありうる(
図19~
図22参照)。この場合、診断システムSYSは、多数のドア80の診断結果の情報に基づき、クラスタリング等の機械学習(教師なし学習)を適用し、対象のドア80の全閉状態でのピン部231とロックホール223Aとのドア80の開閉方向での位置関係に関する異常の兆候の有無を診断してもよい。
【0143】
このように、診断システムSYSは、診断モードを用いて、全開位置から全閉位置までの全区間において、施錠装置50のピン51が施錠位置(引き込まれた位置)にある状態で、ドア80の閉動作を実施させる。これにより、診断システムSYSは、ドア80の閉動作中において、ロックピン230(ピン部231)の位置と、ドア80の位置とを関連付けることができる。そのため、診断システムSYSは、診断でのドア80の閉動作時のドア80の位置、及びDLS信号の時系列データに基づき、ドア80の全閉状態でのピン部231とロックホール223Aとのドア80の開閉方向での位置関係を評価することができる。よって、診断システムSYSは、その位置関係に関する異常の診断を行うことができる。
【0144】
<診断方法の第2例>
本例では、診断システムSYSは、上述のドア80及びドア駆動機構200の配置構造の第1例(
図2~
図6)を前提として、ドア80の施錠状態におけるピン部231とロックホール223Aとの間の位置関係に関する異常診断を行う。また、本例では、診断モードは、ドア80の施錠状態におけるピン部231とロックホール223Aとの間の位置関係に関する異常診断のためのデータを測定するための制御モードである前提で説明を進める。
【0145】
本例(診断モードの第2例)では、ドア制御装置100は、ドア80の施錠状態において、全閉状態から通常モードよりも十分に低速でドア80に開動作を行わせる。これにより、ドア80の移動によって、ロックピン230(ピン部231)とロックホール223Aとが比較的高い速度で衝突し、これらの少なくとも一方に損傷が生じるような事態を抑制することができる。
【0146】
具体的には、診断モードでは、ドア制御装置100は、モータ30からドア80に付加される推力によってドア80の位置が移動しなくなるまでドアの80に開動作を行わせる。ドア80の施錠状態では、ピン部231とロックホール223Aとの前後方向(ドア80の開閉方向)での隙間δに相当する距離しかドア80を開方向に移動できないからである。
【0147】
診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置の時系列の測定データに基づき、ドア80の全閉状態且つ施錠状態におけるピン部231とロックホール223Aとの間の位置関係(隙間δ)を推定(評価)する。
【0148】
具体的には、診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置の時系列の測定データに基づき、ドア80の全閉位置と、モータ30からの推力によりドア80が移動しなくなったときのドア80の位置とを取得する。これにより、診断システムSYSは、ドア80の全閉状態の位置と、モータ30からの推力によりドア80が移動しなくなったときのドア80の位置との差を隙間δとして推定することができる。そのため、診断システムSYSは、上述の第1例の場合と同様に、隙間δ(推定値)に基づき、異常の有無を診断したり、異常の兆候の有無を診断したりすることができる。
【0149】
<診断方法の第3例>
図13は、診断モードの第3例におけるドア80の開閉動作に対応するドア80の位置及びモータ30の電流の時間変化を示す図である。具体的には、
図13は、診断モードの第3例におけるドア80の開動作時のドア80の位置、及びモータ30のq軸電流のそれぞれの時間変化を示す
図13A,13Bを含む。
【0150】
尚、
図13Aでは、ドア80の位置は、全閉位置が原点(ゼロ)と規定され、ドア80の開方向が正と規定される。また、
図13Bでは、モータ30がドア80の開方向に推力を発生させるためのq軸電流が正と規定され、モータ30がドア80閉方向に推力を発生させるためのq軸電流が負と規定される。
【0151】
本例では、診断システムSYSは、上述のドア80及びドア駆動機構200の配置構造の第2例(
図7)を前提として、プッシュバック機構PBMに関する異常診断を行う。また、本例では、診断モードは、プッシュバック機構PBMに関する異常診断のためのデータを測定するための制御モードである前提で説明を進める。
【0152】
本例の診断モードでは、ドア制御装置100は、ドア80の施錠状態において、ドア80の全閉位置を起点として、モータ30からドア80に付加される推力を増加させながらドア80に開動作を行わせ、その際のドア80に関する測定データを取得する。
【0153】
具体的には、
図13Bに示すように、時刻t11以前の診断モードでのドア80の開動作の開始前において、ドア制御装置100は、モータ30に所定値Iq10(<0)のq軸電流を供給し、モータ30からドア80に閉方向の推力を付加している。
【0154】
図13Bに示すように、時刻t11にて、ドア制御装置100は、モータ30のq軸電流をドア80の開方向(正方向)に増加させる。これにより、
図13Aに示すように、ドア80が開動作を開始する。
【0155】
図13Bに示すように、時刻t12にて、q軸電流が所定値Iq11(>0)に到達すると、ドア制御装置100は、時刻t12から時刻t13の間で、モータ30のq軸電流を所定値Iq11に維持する。これにより、時刻t12以降で、ドア80の位置は、所定値DP11(>0)で一定に維持される。
【0156】
図13Bに示すように、ドア制御装置100は、時刻t13から時刻t17までの間で、モータ30のq軸電流を所定値Iq11から所定値Iq12(>Iq11)まで段階的に増加させる。また、モータ30のq軸電流は、所定値Iq11から所定値Iq12まで11段階以下で段階的に増加するように制御されてもよいし、13段階以上で増加するように制御されてもよい。また、モータ30のq軸電流は、所定値Iq11から所定値Iq12まで連続的に増加するように制御されてもよい。
【0157】
上述の如く、プッシュバック機構PBMの作用によって、ドア80側の連結部222には、ばね部材224からの反力が作用している。そのため、モータ30からドア80に付加される推力がばね部材224からの反力を含む抵抗力に打ち勝つ程度にならない限り、ドア80が開方向に移動しない。そのため、
図13A,13Bに示すように、ドア80は、モータ30のq軸電流が2段階目のレベルから3段階目のレベルに増加したタイミング(時刻t14)で開方向に移動し始める。そして、ドア80は、モータ30のq軸電流が7段階目のレベルに増加するまで段階的に開方向に移動した後、移動しなくなる。これにより、ドア80の位置は、7段階目のレベルに到達したタイミング(時刻t16)から時刻t17までの間で所定値DP12(>DP11)に維持される。
【0158】
図13Bに示すように、ドア制御装置100は、時刻t17から時刻t19の間で、モータ30のq軸電流を所定値Iq12から所定値Iq10まで低下させ、診断モードを終了する。これにより、
図13Aに示すように、時刻t17にて、モータ30からドア80に付加される開方向の推力の低下に伴い、プッシュバック機構(ばね部材224)の付勢によって、ドア80が閉動作を開始する。そして、時刻t17より前の時刻t16にて、ドア80は、全閉位置に到達し閉動作を終了する。
【0159】
例えば、診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置の時系列の測定データに基づき、プッシュバック機構PBMのストローク量を推定(評価)する。
【0160】
具体的には、診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置の時系列の測定データに基づき、ドア80の全閉位置と、ドア80が開方向に移動しなくなったときのドア80の位置とを取得する。
図13Aにて、ドア80の全閉位置、及びドア80が開方向に移動しなくなったときのドア80の位置は、それぞれ、ゼロ(0)、及び所定値DP12に相当する。これにより、診断システムSYSは、プッシュバック機構PBMのストローク量L11と、ピン部231とロックピン当接部223との前後方向の隙間δに対応する分のストローク量L12との合計に相当する全ストローク量L1を演算することができる。そして、診断システムSYSは、全ストローク量L1から隙間δに相当するストローク量L12を減算することで、プッシュバック機構PBMのストローク量L11を取得することができる。
【0161】
尚、プッシュバック機構PBMのストローク量L11の取得の際に利用される隙間δは、例えば、上述の第1例の方法で取得(推定)されてもよいし、正常状態の隙間δとして想定される最大値が採用されてもよい。
【0162】
診断システムSYSは、例えば、推定結果のストローク量L11が正常な状態を表す所定範囲から逸脱している場合、プッシュバック機構PBMのストローク量に関する異常があると診断する。
【0163】
また、診断システムSYSは、対象のドア80についての異常診断の結果(ストローク量L11)の履歴に基づき、プッシュバック機構PBMのストローク量に関する異常の兆候の有無を診断してもよい。
【0164】
また、診断システムSYSは、ビッグデータに相当する、多数のドア80の診断結果(ストローク量L11)を利用可能な場合がありうる(
図19~
図22参照)。この場合、診断システムSYSは、多数のドア80の診断結果の情報に基づき、クラスタリング等の機械学習(教師なし学習)を適用し、対象のドア80のプッシュバック機構PBMのストローク量に関する異常の兆候の有無を診断してもよい。
【0165】
尚、診断システムSYSは、ストローク量L11に代えて、全ストローク量L1を、プッシュバック機構PBMのストローク量に関する異常診断の評価指標として採用してもよい。
【0166】
また、診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置、及びモータ30の電流の時系列の測定データに基づき、プッシュバック力を推定(評価)してもよい。
【0167】
具体的には、
図13Aに示すように、診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置の時系列の測定データに基づき、ドア80の位置がばね部材224の初期状態からの所定のストローク量STaに対応する所定値DP12にあるタイミング(時刻t15)を取得する。ばね部材224の初期状態とは、ドア80が全閉状態にあるときのばね部材224の収縮状態である。診断システムSYSは、診断モードでの電流の測定データに基づき、時刻t15におけるq軸電流の測定値(所定値Iq13)を取得する。診断システムSYSは、時刻t15におけるq軸電流の測定値(所定値Iq13)に基づき、そのときのモータ30からドア80に付加されていた推力を演算する。これにより、診断システムSYSは、モータ30からドア80に付加されていた推力と、プッシュバック力と、他の抵抗力とのバランスに基づき、ばね部材224の所定のストローク量STaでのプッシュバック力を推定することができる。
【0168】
また、モータ30からドア80に付加される推力を増加させる過程で、ドア80があるストローク量に対応する一定の位置に保持されている状態から開動作を開始したタイミングでのq軸電流の測定値からプッシュバック力が推定されてもよい。
【0169】
例えば、
図13A,13Bに示すように、診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置、及びモータ30の電流の時系列の測定データに基づき、モータ30のq軸電流が段階的に増加する過程でドア80が開動作を開始したタイミング(時刻t14)でのモータ30のq軸電流の測定値を取得する。診断システムSYSは、時刻t14におけるq軸電流の測定値に基づき、そのときのモータ30からドア80に付加されていた推力を演算する。これにより、診断システムSYSは、モータ30からドア80に付加されていた推力と、プッシュバック力と、他の抵抗力とのバランスに基づき、所定値DP11のドア80の位置に対応するばね部材224のストローク量でのプッシュバック力を推定することができる。
【0170】
診断システムSYSは、推定結果のプッシュバック力が正常な状態を表す所定範囲から逸脱している場合、プッシュバック機構PBMのプッシュバック力に関する異常があると診断する。
【0171】
また、診断システムSYSは、対象のドア80についての異常診断の結果(プッシュバック力の推定結果)の履歴に基づき、プッシュバック機構PBMのプッシュバック力に関する異常の兆候の有無を診断してもよい。
【0172】
また、診断システムSYSは、ビッグデータに相当する、多数のドア80の診断結果(プッシュバック力の推定結果)を利用可能な場合がありうる(
図19~
図22参照)。この場合、診断システムSYSは、多数のドア80の診断結果の情報に基づき、クラスタリング等の機械学習(教師なし学習)を適用し、対象のドア80のプッシュバック機構PBMのプッシュバック力に関する異常の兆候の有無を診断してもよい。
【0173】
このように、本例では、診断システムSYSは、ドア80の全閉位置からドア80が移動しなくなるまでのドア80の開動作時のドア80の位置の測定データに基づき、プッシュバック機構PBMのストローク量に関する異常診断を行うことができる。また、本例では、診断システムSYSは、ドア80がばね部材224の反力に抗して開動作を行ったときのドア80の位置、及びモータ30の電流の測定データに基づき、プッシュバック機構PBMのプッシュバック力に関する異常診断を行うことができる。
【0174】
尚、本例では、診断システムSYSは、プッシュバック機構PBMのストローク量及びプッシュバック力の何れか一方のみに関する異常診断を行ってもよい。また、診断システムSYSは、プッシュバック機構PBMのプッシュバック力に関する異常診断を行う場合、モータ30の電流の測定データとは異なる、ドア80に対する推力に関する他のデータを利用してもよい。以下、後述の第4例や第5例についても同様であってよい。例えば、ドア80に対する推力に関する他のデータは、モータ制御部115、125により生成される、モータ30のq軸電流指令値やトルク指令値やトルク偏差等の制御データやモータ30の電流の実効値等の測定データを含む。
【0175】
<診断方法の第4例>
図14は、診断モードの第4例におけるドア80の開閉動作に対応するドア80の位置及びモータ30の電流の時間変化を示す図である。具体的には、
図14は、診断モードの第3例におけるドア80の開動作時のドア80の位置、及びモータ30のq軸電流のそれぞれの時間変化を示す
図14A,14Bを含む。
【0176】
尚、
図14Aでは、ドア80の位置は、全閉位置が原点(ゼロ)と規定され、ドア80の開方向が正と規定される。また、
図14Bでは、モータ30がドア80の開方向に推力を発生させるためのq軸電流が正と規定され、モータ30がドア80閉方向に推力を発生させるためのq軸電流が負と規定される。
【0177】
本例では、診断システムSYSは、上述のドア80及びドア駆動機構200の配置構造の第2例(
図7)を前提として、プッシュバック機構PBMに関する異常診断を行う。また、本例では、診断モードは、プッシュバック機構PBMに関する異常診断のためのデータを測定するための制御モードである前提で説明を進める。
【0178】
本例の診断モードでは、ドア制御装置100は、ドア80の施錠状態において、ドア80を移動しなくなる位置まで開動作させる。そして、ドア制御装置100は、その位置を起点として、モータ30からドア80に付加される推力を減少させながらドア80に閉動作を行わせ、その際のドア80に関する測定データを取得する。
【0179】
具体的には、
図14Bに示すように、時刻t21以前の診断モードでのドア80の開動作の開始前において、ドア制御装置100は、モータ30に所定値Iq20(<0)のq軸電流を供給し、モータ30からドア80に閉方向の推力を付加している。
【0180】
図14Bに示すように、時刻t21にて、ドア制御装置100は、モータ30のq軸電流をドア80の開方向(正方向)に増加させる。これにより、
図14Aに示すように、ドア80が開動作を開始する。
【0181】
図14Aに示すように、時刻t22にて、ドア80は、移動しなくなり、時刻t22以降で、ドア80の位置は、所定値DP21に略維持される。
【0182】
図14Bに示すように、ドア制御装置100は、時刻t22以降もモータ30のq軸電流を増加させる。そして、時刻t23にて、q軸電流が所定値Iq21(>0)に到達すると、ドア制御装置100は、時刻t23から時刻t26の間で、モータ30のq軸電流を段階的に減少させる。本例では、モータ30のq軸電流が所定値Iq21から所定値Iq22(>0)まで8段階で減少する。モータ30のq軸電流は、所定値Iq21から所定値Iq22まで7段階以下で段階的に減少するように制御されてもよいし、9段階以上で段階的に減少するように制御されてもよい。また、モータ30のq軸電流は、所定値Iq21から所定値Iq22まで連続的に減少するように制御されてもよい。
【0183】
上述の如く、プッシュバック機構PBMの作用によって、ドア80側の連結部222には、ばね部材224からの反力が作用している。そのため、モータ30からドア80に付加される推力がある程度まで減少すると、ばね部材224の反力がモータ30からドア80に付加される開方向の推力に打ち勝って、ドア80が閉方向に移動する。本例では、
図14A,14Bに示すように、ドア80は、モータ30のq軸電流が5段階目のレベルから6段階目のレベルに減少したタイミング(時刻t24)で閉方向に移動し始める。そして、時刻t24から時刻t26の間で、ドア80は、モータ30のq軸電流の減少に応じて、段階的に、閉動作を行う。
【0184】
図14Bに示すように、ドア制御装置100は、時刻t26から時刻t28の間で、モータ30のq軸電流を所定値Iq20まで低下させ、診断モードを終了する。これにより、
図14Aに示すように、時刻t28より前の時刻t27にて、ドア80は、全閉位置に到達し閉動作を終了する。
【0185】
例えば、診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置の時系列の測定データに基づき、プッシュバック機構PBMのストローク量を推定(評価)する。
【0186】
具体的には、診断システムSYSは、診断モードでのドア80の時系列の測定データに基づき、ドア80の全閉位置と、閉動作を開始したとき(時刻t24)のドア80の位置とを取得する。
図14Aにて、ドア80の全閉位置、及び閉動作を開始したときのドア80の位置は、それぞれ、ゼロ(0)、及び所定値DP21に相当する。これにより、診断システムSYSは、プッシュバック機構PBMのストローク量L21と、ピン部231とロックピン当接部223との前後方向の隙間δに対応する分のストローク量L22との合計に相当する全ストローク量L2を演算することができる。そして、診断システムSYSは、全ストローク量L2から隙間δに相当するストローク量L22を減算することで、プッシュバック機構PBMのストローク量L21を取得することができる。
【0187】
尚、プッシュバック機構PBMのストローク量L11の取得の際に利用される隙間δは、例えば、上述の第1例の方法で取得(推定)されてもよいし、正常状態の隙間δとして想定される最大値が採用されてもよい。
【0188】
診断システムSYSは、上述の第3例と同様の方法で、プッシュバック機構PBMのストローク量に関する異常の有無や異常の兆候の有無を診断することができる。
【0189】
尚、診断システムSYSは、上述の第3例の場合と同様、ストローク量L21に代えて、全ストローク量L2を、プッシュバック機構PBMのストローク量に関する異常診断の評価指標として採用してもよい。
【0190】
また、診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置、及びモータ30の電流の時系列の測定データに基づき、プッシュバック力を推定(評価)してもよい。
【0191】
具体的には、
図14Aに示すように、診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置の時系列の測定データに基づき、ドア80の位置がばね部材224の初期状態から所定のストローク量STaに対応する所定値DP22にあるタイミング(時刻t25)を取得する。診断システムSYSは、診断モードでの電流の測定データに基づき時刻t25におけるq軸電流の測定値(所定値Iq23)を取得する。診断システムSYSは、時刻t25におけるq軸電流の測定値(所定値Iq23)に基づき、そのときのモータ30からドア80に付加されていた推力を演算する。これにより、診断システムSYSは、モータ30からドア80に付加されていた推力と、プッシュバック力と、他の抵抗力とのバランスに基づき、ばね部材224の所定のストローク量STaでのプッシュバック力を推定することができる。
【0192】
また、モータ30からドア80に付加される推力を減少させる過程で、ドア80があるストローク量に対応する一定の位置に保持されている状態から閉動作を開始したタイミングでのq軸電流の測定値からプッシュバック力が推定されてもよい。
【0193】
例えば、
図14A,14Bに示すように、診断システムSYSは、診断モードでのドア80の位置、及びモータ30の電流の時系列の測定データに基づき、モータ30のq軸電流が段階的に減少する過程でドア80が閉動作を開始したタイミング(時刻t24)でのモータ30のq軸電流の測定値を取得する。診断システムSYSは、時刻t24におけるq軸電流の測定値に基づき、そのときのモータ30からドア80に付加されていた推力を演算する。これにより、診断システムSYSからドア80に付加されていた推力と、プッシュバック力と、他の抵抗力とのバランスに基づき、所定値DP21のドア80の位置に対応するばね部材224のストローク量でのプッシュバック力を推定することができる。
【0194】
診断システムSYSは、上述の第3例と同様の方法で、プッシュバック機構PBMのストローク量に関する異常の有無や異常の兆候の有無を診断することができる。
【0195】
このように、本例では、診断システムSYSは、ドア80の施錠状態でプッシュバック機構PBMのストロークエンドに対応するドア80の位置から、モータ30からドア80に付加される推力を減少させながら、ドア80を全閉状態まで閉動作させたときのドア80の位置の測定データに基づき、プッシュバック機構PBMのストローク量に関する異常診断を行うことができる。また、本例では、診断システムSYSは、ドア80の施錠状態で、モータ30からドア80に付加される推力を減少させながらドア80に閉動作を行わせたときのドア80の位置、及びモータ30の電流の測定データに基づき、プッシュバック機構PBMのプッシュバック力に関する異常診断を行うことができる。
【0196】
尚、本例では、診断システムSYSは、上述の第3例の場合と同様、プッシュバック機構PBMのストローク量及びプッシュバック力の何れか一方のみに関する異常診断を行ってもよい。
【0197】
<診断方法の第5例>
図15は、圧縮時及び伸長時のばね部材の応力の一例を示す図である。
図16は、プッシュバック力の推定値と実際値(仕様値)との比較図である。
【0198】
本例では、診断システムSYSは、上述のドア80及びドア駆動機構200の配置構造の第2例(
図7)を前提として、プッシュバック機構PBMに関する異常診断を行う。また、本例では、診断モードは、プッシュバック機構PBMに関する異常診断のためのデータを測定するための制御モードである前提で説明を進める。
【0199】
本例の診断モードでは、上述の第3例の診断モード、及び上述の第4例の診断モードの双方を採用し、診断システムSYSは、双方の診断モードに相当するドア80の動作時のドア80に関する測定データを取得する。
【0200】
例えば、上述の第3例の診断モードと、第4例の診断モードとを時系列で繋げた新たな診断モードが採用されてもよい。また、上記の第3例の診断モードと、上記の第4例の診断モードとが別々の診断モードとして採用され、双方の診断モードで取得された測定データがプッシュバック機構PBMに関する異常診断に使用されてもよい。
【0201】
本例では、診断システムSYSは、上述の第3例と同様の方法、及び上述の第4例と同様の方法の双方で取得(推定)される、ばね部材224の同じ所定のストローク量STaに対応するプッシュバック力に基づき、ばね部材224の所定のストローク量STaに対応するプッシュバック力を推定する。
【0202】
ドア80の施錠状態でドア80の開閉動作が行われる場合、ロックピン当接部223は、ピン部231との当接によってドア80の開閉方向への動作が規制されている。
図8に示すように、ピン部231が挿入されるロックホール223Aは、ばね部材224との配置箇所に対して上方にオフセットしている。その結果、ドア80の施錠状態では、ピン部231とロックピン当接部223との当接箇所は、ばね部材224のロックピン当接部223への固定箇所よりも上方にオフセットすることになる。つまり、ドア80の施錠状態において、ばね部材224は、ロックピン当接部223側の一端が上下方向の上部のみで固定されている状態に等しくなる。
【0203】
例えば、
図15に示すように、ドア80の施錠状態での開動作時のばね部材224の応力の推定値は、ばね部材224のロックピン当接部223側の一端の上下の双方を固定した仮想的な比較例に比して大きくなる(時刻0から時刻t31の区間)。ドア80の施錠状態でドア80が開動作を行う場合、モータ30から付加されるドア80の推力に対して、ばね部材224の弾性力だけでなく、ピン部231とロックピン当接部223との当接箇所を中心とするモーメントに起因する力が対抗方向に作用するからである。つまり、モータ30の電流の測定データから演算される、ドア80に付加される推力には、ばね部材224の弾性力に相当する分に加えて、ピン部231とロックピン当接部223との当接箇所を中心とするモーメントに起因する力に相当する余計な分が含まれる。そのため、ドア80の開閉方向の力のつり合いから演算されるばね部材224の反力(応力)は、実際値よりも大きくなる可能性がある。
【0204】
一方、
図15に示すように、ドア80の施錠状態での閉動作時のばね部材224の応力の推定値は、ばね部材224のロックピン当接部223側の一端の上下の双方を固定した仮想的な比較例に比して小さくなる(時刻t32以降の区間)。ドア80の施錠状態でドア80が閉動作を行う場合、ドア80の閉方向に働くばね部材224の弾性力に対して、モータ30からドア80に付加される推力だけでなく、ピン部231とロックピン当接部223との当接箇所を中心とするモーメントに起因する力が対向方向に作用するからである。つまり、モータ30の電流の測定データから演算される、ドア80に付加される推力は、ばね部材224の弾性力から想定される分よりも、ピン部231とロックピン当接部223との当接箇所を中心とするモーメントに起因する力の分だけ小さくなる。そのため、ドア80の開閉方向のつり合いから演算されるばね部材224の反力(応力)は、実際値よりも小さくなる可能性がある。
【0205】
これに対して、本例では、診断システムSYSは、上述の第3例の方法、及び上述の第4例の方法の双方で演算されるプッシュバック力の推定値に基づき、プッシュバック力を推定する。これにより、診断システムSYSは、ドア80の開動作時及び閉動作時のピン部231とロックピン当接部223との当接箇所を中心とするモーメントの作用を相殺するように、プッシュバック力を見積もることができる。そのため、プッシュバック力の推定精度を向上させることができ、その結果、プッシュバック力に関する異常診断の精度を向上させることができる。
【0206】
例えば、診断システムSYSは、上述の第3例の方法、及び上述の第4例の方法の双方で演算される、ばね部材224の同じ所定のストローク量STaに対応するプッシュバック力の推定値の平均をプッシュバック力の推定値として採用してよい。これにより、診断システムSYSは、ドア80の開動作時及び閉動作時のピン部231とロックピン当接部223との当接箇所を中心とするモーメントの影響を相殺することができる。そのため、例えば、
図16に示すように、診断システムSYSは、ばね部材224の仕様値(破線参照)と同等のプッシュバック力(実線参照)を推定することができる。よって、診断システムSYSは、プッシュバック力に関する異常診断の精度を向上させることができる。
【0207】
また、例えば、
図16に示すように、上述の第3例や第4例の方法で演算される、プッシュバック力は、施錠機構部LCM(プッシュバック機構PBM)の艤装状態によって、実際値からの差異がより大きくなる可能性もある(図中の丸枠内)。
【0208】
これに対して、本例では、診断システムSYSは、施錠機構部LCM(プッシュバック機構PBM)の艤装状態によって生じうる、プッシュバック力の実際値に対する推定値の差異の拡大を抑制することができる。
【0209】
このように、本例では、診断システムSYSは、ドア80の施錠状態での開動作時のドア80の位置、及びモータ30の電流の測定データと、ドア80の施錠状態での閉動作時のドア80の位置、及びモータ30の電流の測定データとの双方に基づき、プッシュバック力を推定する。これにより、診断システムSYSは、ドア80の開動作時及び閉動作時のピン部231とロックピン当接部223との当接箇所を中心とするモーメントの影響を相殺することができる。そのため、診断システムSYSは、プッシュバック力の推定値に基づき、プッシュバック力に関する異常診断をより適切に行うことができる。
【0210】
[ドアに関する異常診断の処理の第1例]
次に、
図17を参照して、ドア80に関する異常診断の処理の第1例について説明する。
【0211】
図17は、ドア80に関する異常診断の処理の第1例を示すシーケンス図である。
【0212】
本例では、診断システムSYSは、鉄道車両1に設けられ、上位装置10と、ドア制御装置100を含む。
【0213】
以下、本例では、ドア制御装置100において、常用系制御部110及び待機系制御部120のうちの常用系制御部110がドア80に関する制御を行う場合について説明する。
【0214】
図17に示すように、上位装置10の車両制御装置12は、運転室や車掌室の乗務員等のユーザからの所定の入力に応じて、ドア80に関する異常診断のアプリケーションプログラム(以下、「診断アプリ」)を起動させる(ステップS102)。
【0215】
ステップS102の処理の完了後、車両制御装置12は、ユーザからのドア80に関する異常診断の開始を要求する所定の入力に応じて、診断指令を、伝送装置16を介して、ドア制御装置100に送信する(ステップS104)。
【0216】
診断指令では、鉄道車両1の全てのドア80が異常診断の対象であってもよいし、鉄道車両1の全てのドア80のうちの一部のドア80のみが異常診断の対象であってもよい。後者の場合、鉄道車両1の全てのドア80のうちの異常診断対象のドア80は、ユーザからの入力により指定され、診断指令は、異常診断対象のドア80を制御対象とするドア制御装置100のみに送信される。
【0217】
ドア制御装置100の入力信号検出部113は、通信部112を通じて、ステップS104の処理で送信される診断指令を受信し、ドア制御装置100のモータ制御部115は、ドア80の制御モードを診断モードに移行させる(ステップS106)。
【0218】
ステップS106の処理が完了すると、常用系制御部110は、モータ制御部115及び施錠・解錠駆動部117により診断モードに対応するドア80の開閉動作を行わせ、入力信号検出部113によりドア80の開閉動作時のデータを測定する(ステップS108)。診断モードに対応するドア80の開閉動作は、ドア80の施錠状態で行われる開閉動作である(上述の診断方法の第1例~第5例参照)。測定対象のデータは、上述の如く、ドア80の位置のデータやモータ30の電流のデータ等である。
【0219】
ステップS108の処理が完了すると、入力信号検出部113は、ステップS108で取得した測定データに基づき、ドア80に関する異常診断を行う(ステップS110)。
【0220】
ステップS110の処理が完了すると、入力信号検出部113は、通信部112を通じて、ステップS110のドア80に関する異常診断の結果のデータを上位装置10に送信する(ステップS112)。
【0221】
上位装置10の車両制御装置12は、伝送装置16を通じて、ステップS112の処理で送信される、ドア80に関する異常診断の結果のデータを受信する。(ステップS114)。
【0222】
ステップS114の処理が完了すると、車両制御装置12は、例えば、運転室や車掌室の表示装置に、ドア80に関する異常診断の結果を表示させる(ステップS116)。
【0223】
これにより、運転室や車掌室の乗務員等のユーザは、ドア80に関する異常診断の結果を確認することができる。
【0224】
このように、本例では、診断システムSYSは、上位装置10を通じて入力されるユーザからの要求に応じて、ドア制御装置100にて、診断モードでのドア80の閉動作時のデータを取得し、ドア80に関する異常診断を行う。そして、診断システムSYSは、ドア80に関する異常診断の結果のデータをドア制御装置100から上位装置10に送信させて、上位装置10を通じて、ドア80に関する異常診断の結果をユーザに提供する。
【0225】
これにより、運転室や車掌室において、ユーザは、鉄道車両1の全てのドア80に関する異常診断の結果を確認することができる。また、上位装置10とドア制御装置100との間でやり取りされるデータは、診断指令のデータや異常診断の結果のデータ等、ドア80の閉動作時の測定データに比して相対的にデータ量が小さい。そのため、上位装置10とドア制御装置100との間でのデータの通信量を相対的に小さく抑制することができる。
【0226】
尚、鉄道車両1における異常診断の対象のドア80付近で、ユーザからの異常診断の要求の入力が行われ、且つ、異常診断の結果のユーザへの提供が行われてもよい。例えば、ドア80の上方の空間の車体に設置されるドア制御装置100には、ユーザからの異常診断の要求の入力を受け付ける入力装置とユーザに異常診断の結果を通知する通知装置(例えば、インジケータ等)が設けられてもよい。これにより、例えば、点検作業者等のユーザは、ドア80ごとに、異常診断を実施させて、ドア80が設置されるその場所でドア80に関する異常診断の結果を確認することができる。また、上位装置10とドア制御装置100との間でのドア80に関する異常診断のデータのやり取りを行う必要性がないことから、上位装置10とドア制御装置100との間でのデータの通信量をより小さく抑制することができる。
【0227】
[ドアに関する異常診断の処理の第2例]
次に、
図18を参照して、ドア80に関する異常診断の処理の第2例について説明する。
【0228】
図18は、ドア80に関する異常診断の処理の第2例を示すシーケンス図である。
【0229】
本例では、上述の第1例と同様、診断システムSYSは、鉄道車両1に設けられ、上位装置10と、ドア制御装置100を含む。
【0230】
図18に示すように、ステップS202,S204,S206,S208は、上述の
図17のステップS102,S104,S106,S108と同じであるため、説明を省略する。
【0231】
ステップS208の処理を完了すると、入力信号検出部113は、ステップS208で取得した測定データを、通信部112を通じて、上位装置10に送信する(ステップS210)。
【0232】
ステップS210にて、上位装置10の車両制御装置12は、伝送装置16を通じて、ステップS210でドア制御装置100から送信される測定データを受信する(ステップS212)。
【0233】
ステップS212の処理が完了すると、車両制御装置12は、ステップS212で受信した測定データに基づき、ドア80に関する異常診断を行う(ステップS214)。
【0234】
ステップS214の処理が完了すると、車両制御装置12は、上述の
図17のステップS116と同様、例えば、運転室や車掌室の表示装置に、ドア80に関する異常診断の結果を表示させる(ステップS216)。
【0235】
このように、本例では、診断システムSYSは、ドア制御装置100にて、診断モードでのドア80の閉動作時のデータを取得し、取得したデータを上位装置10に送信する。そして、診断システムSYSは、上位装置10にて、ドア制御装置100から受信したデータに基づき、ドア80に関する異常診断を行う。
【0236】
これにより、本例では、診断システムSYSは、上位装置10にて、鉄道車両1の全てのドア80の測定データや異常診断の結果を履歴的に蓄積することができる。上位装置10の記憶リソースは、ドア制御装置100の記憶リソースよりも十分に大きく確保することが可能だからである。そのため、車両制御装置12は、上位装置10に蓄積される、鉄道車両1の全てのドア80の診断モードでの開閉動作時の測定データや異常診断の結果に基づき、ドア80の異常に関する解析を行うことができる。例えば、車両制御装置12は、特定のドア80について、異常診断の結果(例えば、隙間δやプッシュバック機構PBMのストローク量やプッシュバック力の推定値)の履歴を解析してもよい。これにより、診断システムSYSは、車両制御装置12での解析結果に基づき、ドア80の劣化状況(異常の兆候)を予測し、ドア80の異常の有無だけでなく、ドア80の異常の兆候の有無を診断することができる。よって、診断システムSYSは、ドア80に関する異常診断をより適切に行うことができる。
【0237】
[診断システムの他の例]
次に、
図19を参照して、診断システムSYSの他の例について説明する。
【0238】
図19は、診断システムSYSの他の例を示す図である。
【0239】
図19に示すように、診断システムSYSは、鉄道車両1(上位装置10及びドア制御装置100)と、診断装置2とを含む。
【0240】
本例では、診断システムSYSに含まれる鉄道車両1は、1編成であってもよいし、複数編成であってもよい。以下、後述の更に他の例(
図21)についても同様であってよい。
【0241】
診断装置2は、鉄道車両1のドア80に関する異常診断を行う。
【0242】
診断装置2は、鉄道車両1の外部に設けられる。診断装置2は、鉄道車両1と所定の通信回線を通じて通信可能に接続される。
【0243】
所定の通信回線は、例えば、基地局を末端とする移動体通信網や通信衛星を利用する衛星通信網等の広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)を含む。また、所定の通信回線は、例えば、駅や車両基地等に整備されるローカルネットワークを含んでもよい。また、所定の通信回線は、例えば、ブルートゥース(登録商標)やWiFi等の所定の通信規格に基づく近距離通信回線を含んでもよい。
【0244】
診断装置2は、相対的に処理能力が高いサーバ装置である。サーバ装置は、オンプレミスサーバやクラウドサーバであってもよいし、エッジサーバであってもよい。また、診断装置2は、サーバ装置よりも相対的に処理能力低い端末装置であってもよい。端末装置は、例えば、デスクトップ型のPC(Personal Computer)等の定置型の端末装置であってもよいし、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のコンピュータ等の可搬型の端末装置(携帯端末)であってもよい。
【0245】
診断装置2の機能は、任意のハードウェアや任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現されてよい。例えば、診断装置2は、CPU、メモリ装置、補助記憶装置、及びインタフェース装置を含むコンピュータを中心に構成される。メモリ装置は、例えば、SRAMやDRAM(Dynamic Random Access Memory)である。補助記憶装置は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)やEEPROMやフラッシュメモリ等である。インタフェース装置は、例えば、鉄道車両1(上位装置10)を含む外部装置と通信を行うための通信インタフェースを含む。また、インタフェース装置は、外部の記録媒体に接続するための外部インタフェースを含む。これにより、記録媒体から診断装置2の補助記憶装置等にドア80に関する異常診断の処理を行うためのプログラムや各種のデータをインストールすることができる。また、ドア80に関する異常診断の処理を行うためのプログラムや各種のデータは、通信インタフェースを通じて、診断装置2の外部からダウンロードされてもよい。また、インタフェース装置は、接続する通信回線の種類に合わせて、複数の異なる種類のインタフェース装置を含んでよい。また、診断装置2は、更に、ユーザからの各種の入力を受け付けるための入力装置やユーザに向けて情報を出力するための出力装置を含んでもよい。入力装置は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル等のユーザからの機械的な入力を受け付ける機械操作入力装置を含む。また、入力装置は、例えば、カメラやマイクロフォン等によって、ユーザからジェスチャや音声による入力を受け付け可能なジェスチャ入力装置や音声入力装置を含んでもよい。出力装置は、例えば、視覚的に情報を出力する表示装置や聴覚的に情報を出力する音出力装置を含む。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)である。音出力装置は、例えば、スピーカである。
【0246】
[ドアに関する異常診断の処理の第3例]
次に、
図20を参照して、ドア80に関する異常診断の処理の第3例について説明する。
【0247】
図20は、ドア80に関する異常診断の処理の第3例を示すシーケンス図である。
【0248】
本例では、上述の
図19の診断システムSYSを前提とする。
【0249】
図20に示すように、ステップS302,S304,S306,S308,S310,S312は、上述の
図18のステップS202,S204,S206,S208,S210,S212の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0250】
上位装置10の車両制御装置12は、ステップS312で受信した測定データを鉄道車両1の外部の診断装置2に送信する(ステップS314)。
【0251】
診断装置2は、ステップS314で鉄道車両1の上位装置10から送信される測定データを受信する(ステップS316)。
【0252】
診断装置2は、ステップS316で受信した測定データに基づき、ドア80に関する異常診断を行う(ステップS318)。
【0253】
ステップS318の処理が完了すると、診断装置2は、ドア80に関する異常診断の結果を鉄道車両1の上位装置10に送信する(ステップS320)。
【0254】
上位装置10の車両制御装置12は、ステップS320の処理で診断装置2から送信される、ドア80に関する異常診断の結果を受信する(ステップS322)。
【0255】
ステップS322の処理が完了すると、車両制御装置12は、上述の
図17、
図18のステップS116,S216と同様、例えば、運転室や車掌室の表示装置に、ドア80に関する異常診断の結果を表示させる(ステップS324)。
【0256】
このように、本例では、診断システムSYSは、鉄道車両1の外部の診断装置2にて、ドア80に関する異常診断を行うことができる。そのため、通常、処理リソースが比較的小さい鉄道車両1(上位装置10及びドア制御装置100)での処理負荷を軽減することができる。
【0257】
また、本例では、診断システムSYSは、複数編成の鉄道車両1のドア80の測定データや異常診断の結果を履歴的に蓄積することができる。これにより、診断装置2は、自身に蓄積される、複数編成に亘る鉄道車両1の全てのドア80の診断モードでの測定データや異常診断の結果に基づき、ドア80の異常に関する解析を行うことができる。そのため、診断装置2は、自身に蓄積される、対象の鉄道車両1の全てのドア80の診断モードでの測定データや異常診断の結果に基づき、ドア80の異常に関する解析を行うことができる。例えば、診断装置2は、特定のドア80について、異常診断の結果(例えば、隙間δやプッシュバック機構PBMのストローク量やプッシュバック力の推定値)の履歴を解析する。これにより、診断システムSYSは、診断装置2での解析結果に基づき、ドア80の劣化状況(異常の兆候)を予測し、ドア80の異常の有無だけでなく、ドア80の異常の兆候の有無を診断することができる。また、診断装置2は、全ての編成の鉄道車両1のドア80に関する異常診断の結果(隙間δの推定値)の履歴に基づき、クラスタリング等の機械学習を適用し、全ての編成の鉄道車両1のドア80の中から異常或いは異常の兆候のあるドア80を抽出してもよい。これにより、診断システムSYSは、上述の方法に代えて、或いは、加えて、機械学習を適用し、ドア80に関する異常診断を行うことができる。よって、診断システムSYSは、ドア80に関する異常診断を更に適切に行うことができる。
【0258】
尚、診断アプリは、診断装置2にインストールされていてもよく、診断装置2でのユーザからの所定の入力に応じて、診断装置2から鉄道車両1(上位装置10)に診断指令が送信されてもよい。また、診断システムSYSに複数編成の鉄道車両1が含まれる場合、診断指令は、ユーザからの所定の入力によって指定される特定の鉄道車両1に向けて送信される。
【0259】
[診断システムの更に他の例]
次に、
図21を参照して、診断システムSYSの更に他の例について説明する。
【0260】
図21は、診断システムSYSの更に他の例を示す図である。
【0261】
図21に示すように、診断システムSYSは、上述の他の例(
図19)と同様、鉄道車両1(上位装置10及びドア制御装置100)と、診断装置2とを含む。また、診断システムSYSは、上述の他の例(
図19)と異なり、ユーザ端末3を含む。
【0262】
ユーザ端末3は、診断システムSYSのユーザが利用する端末装置である。
【0263】
ユーザ端末3は、例えば、ドア80の点検を行う点検者や鉄道車両1の保守・点検の責任者等が利用する端末装置である。また、ユーザ端末3は、例えば、診断装置2のユーザが利用する端末装置であってもよい。
【0264】
ユーザ端末3は、例えば、デスクトップ型のPC等の定置型の端末装置であってもよいし、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のPC等の可搬型の端末装置(携帯端末)であってもよい。
【0265】
ユーザ端末3の機能は、任意のハードウェアや任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現されてよい。例えば、ユーザ端末3は、CPU、メモリ装置、補助記憶装置、インタフェース装置、入力装置、及び出力装置を含むコンピュータを中心に構成される。メモリ装置は、例えば、SRAMやDRAM(Dynamic Random Access Memory)である。補助記憶装置は、例えば、HDDやSSDやEEPROMやフラッシュメモリ等である。インタフェース装置は、例えば、診断装置2を含む外部装置と通信を行うための通信インタフェースを含む。また、インタフェース装置は、外部の記録媒体に接続するための外部インタフェースを含む。これにより、記録媒体からユーザ端末3の補助記憶装置等にドア80に関する異常診断の処理を行うためのプログラムや各種のデータをインストールすることができる。また、ドア80に関する異常診断の処理を行うためのプログラムや各種のデータは、通信インタフェースを通じて、ユーザ端末3の外部からダウンロードされてもよい。また、インタフェース装置は、接続する通信回線の種類に合わせて、複数の異なる種類のインタフェース装置を含んでよい。入力装置は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル等のユーザからの機械的な入力を受け付ける機械操作入力装置を含む。また、入力装置は、例えば、カメラやマイクロフォン等によって、ユーザからジェスチャや音声による入力を受け付け可能なジェスチャ入力装置や音声入力装置を含んでもよい。出力装置は、例えば、視覚的に情報を出力する表示装置や聴覚的に情報を出力する音出力装置を含む。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)である。音出力装置は、例えば、スピーカである。
【0266】
[ドアに関する異常診断の処理の第4例]
次に、
図22を参照して、ドア80に関する異常診断の処理の第4例について説明する。
【0267】
図22は、ドア80に関する異常診断の処理の第4例を示すシーケンス図である。
【0268】
本例では、上述の
図21の診断システムSYSを前提とする。
【0269】
図22に示すように、ユーザ端末3は、ユーザからの所定の入力に応じて、診断アプリを起動させる(ステップS402)。
【0270】
ステップS402の完了後、ユーザ端末3は、ユーザからのドア80に関する異常診断の開始を要求する所定の入力に応じて、診断指令を診断装置2に送信する(ステップS404)。
【0271】
複数編成の鉄道車両1のユーザ端末3から送信される診断指令には、ドア80に関する異常診断が実施される対象の鉄道車両1が指定される。対象の鉄道車両1は、ユーザからの所定の入力によって指定される。
【0272】
診断装置2は、ステップS404の処理でユーザ端末3から送信される診断指令を受信する(ステップS406)。
【0273】
ステップS406の処理が完了すると、診断装置2は、ユーザ端末3からの診断指令を中継する形で、対象の鉄道車両1(上位装置10)に診断指令を送信する(ステップS408)。
【0274】
対象の鉄道車両1の上位装置10(車両制御装置12)は、ステップS408で送信される診断指令を受信する(ステップS410)。
【0275】
車両制御装置12は、ステップS408で受信した診断指令を中継する形で、伝送装置16を介して、ドア制御装置100に送信する(ステップS412)。
【0276】
ステップS414,S416,S418,S420,S422,S424,S426は、上述の第3例(
図20)のステップS306,S308,S310,S312,S314,S316,S318の処理と同じであるための説明を省略する。
【0277】
ステップS426の処理が完了すると、診断装置2は、ステップS426でのドア80に関する異常診断の結果をユーザ端末3に送信する(ステップS428)。
【0278】
ユーザ端末3は、ステップS428で診断装置2から送信される異常診断の結果を受信する(ステップS430)。
【0279】
ステップS430の処理が完了すると、ユーザ端末3は、自身の出力装置(表示装置)にドア80に関する異常診断の結果を表示させる(ステップS432)。
【0280】
これにより、ユーザは、ユーザ端末3を用いて、ドア80に関する異常診断の結果を確認することができる。
【0281】
このように、本例では、診断システムSYSは、ユーザ端末3からドア80に関する異常診断の要求(診断指令)を、診断装置2を通じて鉄道車両1に送信し、ユーザ端末3にて、ドア80に関する異常診断の結果をユーザに通知する。
【0282】
これにより、診断システムSYSのユーザは、ユーザ端末3を用いて、ドア80に関する異常診断の異常診断を要求し、ドア80に関する異常診断の結果を確認することができる。そのため、例えば、鉄道車両1や診断装置2を直接利用可能なユーザ以外のユーザがユーザ端末3を用いて、異常診断の結果を確認することができる。例えば、ドア80の保守部品を取り扱うメーカの担当者は、鉄道車両1の編成ごとのドア80の異常の発生状況を把握し、保守部品の管理等の最適化を図ることができる。また、例えば、鉄道車両1の保守や点検の担当者は、ユーザ端末3を所持し、ドア80ごとの異常診断の結果を確認しながら、実際の鉄道車両1のドア80の保守・点検作業を行うことができる。よって、診断システムSYSのユーザの利便性を向上させることができる。
【0283】
[作用]
次に、本実施形態に係る診断装置、診断システム、診断方法、及びプログラムの作用について説明する。
【0284】
本実施形態では、診断装置は、施錠状態にある鉄道車両のドアが駆動された際のドアの駆動に関するデータを取得する。そして、診断装置は、取得したデータに基づき、ドアの施錠機構部に関する異常の診断を行う。診断装置は、例えば、上述の診断装置2や上位装置10やドア制御装置100である。鉄道車両は、例えば、上述の鉄道車両1である。ドアは、例えば、上述のドア80である。ドアの駆動に関するデータは、例えば、上述のエンコーダ31の出力データや電流センサ32の出力データ等である。施錠機構部は、例えば、上述の施錠機構部LCMである。
【0285】
また、本実施形態では、診断システムは、鉄道車両のドアを施錠状態で駆動させる。また、診断システムは、施錠状態にあるドアが駆動された際のドアの駆動に関するデータを取得する。そして、診断システムは、取得したデータに基づき、ドアの施錠機構部に関する異常の診断を行う。診断システムは、例えば、上述の診断システムSYSである。
【0286】
また、診断装置は、診断方法を実行してもよい。具体的には、診断方法では、診断装置が、施錠状態にある鉄道車両のドアが駆動された際のドアの駆動に関するデータを取得する。そして、診断方法では、診断装置が、取得したデータに基づき、ドアの施錠機構部に関する異常の診断を行う。
【0287】
また、情報処理装置にプログラムを実行させてもよい。具体的には、プログラムは、情報処理装置に、施錠状態にある鉄道車両のドアが駆動された際のドアの駆動に関するデータを取得させる。そして、プログラムは、情報処理装置に、取得させたデータに基づき、ドアの施錠機構部に関する異常の診断を行わせる。情報処理装置は、例えば、上述の診断装置2や上位装置10やドア制御装置100である。
【0288】
これにより、診断装置等は、例えば、ドアが施錠状態で駆動された際のドアの駆動に関するデータに基づき、施錠状態でのドアの開閉方向の移動可能な状態を把握することができる。そのため、診断装置等は、ドアの施錠機構部に関する異常の診断を行うことができる。
【0289】
また、本実施形態では、施錠機構部は、第1の施錠部材と、正常状態で第1の施錠部材に対して隙間をもって嵌合することでドアを施錠する第2の施錠部材と、を有してもよい。第1の施錠部材は、例えば、ロックホール223Aである。第2の施錠部材は、例えば、上述のピン部231である。そして診断装置等は、取得したデータに基づき、第1の施錠部材と第2の施錠部材との間の隙間に関する異常の診断を行ってもよい。
【0290】
これにより、診断装置等は、第1の施錠部材と第2の施錠部材との間の隙間に関する異常の診断を行うことができる。
【0291】
また、本実施形態では、施錠機構部は、施錠状態でドアに開方向の力が働いたときに伸縮する弾性部材を有するプッシュバック機構部を含んでもよい。そして、診断装置等は、取得したデータに基づき、ドアの施錠状態でのプッシュバック機構部に関する異常の診断を行ってもよい。プッシュバック機構部は、例えば、上述のプッシュバック機構PBMである。弾性部材は、例えば、上述のばね部材224である。
【0292】
これにより、診断装置は、プッシュバック機構部に関する異常の診断を行うことができる。
【0293】
本実施形態では、施錠機構部は、第1の施錠部材と、正常状態で第1の施錠部材に対して隙間をもって嵌合することでドアを施錠する第2の施錠部材と、を有してもよい。そして、弾性部材は、ドアを駆動させる駆動機構部と第1の施錠部材との間に当接するように設けられてもよい。駆動機構部は、例えば、上述のドア駆動機構200である。
【0294】
これにより、診断装置等は、弾性部材の作用によって、ドアの施錠状態で駆動機構に対してドアを開方向へ弾性部材を弾性変形させた分だけ移動させることが可能なプッシュバック機構部に関する異常の診断を行うことができる。
【0295】
また、本実施形態では、診断装置等は、ドアの施錠状態において、全閉位置から開方向に推力が付加されても移動しない状態の位置までドアが開動作を行ったときのドアの位置に関するデータを取得してもよい。ドアの位置に関するデータは、例えば、上述のエンコーダ31の出力データである。そして、診断装置等は、取得したデータに基づき、ドアの施錠状態における、弾性部材の作用によるドアの閉方向への移動量に関する異常の診断を行ってもよい。
【0296】
これにより、診断装置等は、ドアの全閉位置と、ドアの施錠状態で開方向に推力が付加されても移動しないドアの位置とに基づき、ドアの施錠状態における、弾性部材の作用によるドアの開方向への移動量を推定することができる。そのため、診断装置等は、ドアの施錠状態における、弾性部材の作用によるドアの開方向への移動量に関する異常の診断を行うことができる。
【0297】
また、本実施形態では、診断装置等は、ドアの施錠状態において、開動作を行い開方向に推力が付加されても移動しない状態のドアの位置を起点として全閉位置まで閉動作を行ったときのドアの位置に関するデータを取得してもよい。そして、診断装置等は、取得したデータに基づき、ドアの施錠状態における、弾性部材の作用によるドアの開方向への移動量に関する異常の診断を行ってもよい。
【0298】
これにより、診断装置等は、ドアの施錠状態で開方向に推力が付加されても移動しないドアの位置と、ドアの全閉位置とに基づき、ドアの施錠状態における、弾性部材の作用によるドアの開方向への移動量を推定することができる。そのため、診断装置は、ドアの施錠状態における、弾性部材の作用によるドアの開方向への移動量に関する異常の診断を行うことができる。
【0299】
また、本実施形態では、診断装置等は、施錠状態でドアが開動作及び閉動作の少なくも一方を行ったときのドアの位置に関するデータ、及びドアに対する推力に関するデータを取得してもよい。ドアに対する推力に関するデータは、例えば、電流センサ32の出力データである。そして、診断装置等は、取得したデータに基づき、弾性部材の反力に関する異常の診断を行ってもよい。
【0300】
これにより、診断装置等は、施錠状態でのドアの開動作時や閉動作時における、ドアに作用する推力と、弾性部材の反力と、ドアに対する他の抵抗力との間の力のつり合いから、所定のドアの位置での弾性部材の反力を推定することができる。よって、診断装置等は、弾性部材の反力に関する異常の診断を行うことができる。
【0301】
また、本実施形態では、診断装置等は、ドアの施錠状態において、ドアに対する開方向への推力によりドアが弾性部材の反力に抗して開動作を行ったときのドアの位置に関するデータ、及びドアに対する推力に関するデータを取得してもよい。そして、診断装置等は、取得したデータに基づき、弾性部材の反力に関する異常の診断を行ってもよい。
【0302】
これにより、診断装置等は、施錠状態でのドアの開動作時のドアの推力と弾性部材の反力と他の抵抗力との間の力のつり合いから、所定のドアの位置での弾性部材の反力を推定し、弾性部材の反力に関する異常の診断を行うことができる。
【0303】
また、本実施形態では、診断装置等は、ドアの施錠状態において、ドアが静止状態から開動作を開始したときのドアに対する推力に関するデータに基づき、弾性部材の反力に関する異常の診断を行ってもよい。
【0304】
これにより、診断装置等は、施錠状態でのドアの開動作の開始時のドアの推力と弾性部材の反力と他の抵抗力との間の力のつり合いから、ドアが静止状態にあった位置での弾性部材の反力を推定し、弾性部材の反力に関する異常の診断を行うことができる。
【0305】
また、本実施形態では、診断装置等は、ドアの施錠状態において、ドアに対する開方向の推力を付加されながら、弾性部材の付勢によりドアが閉動作を行ったときのドアの位置に関するデータ、及びドアに対する推力に関するデータを取得してもよい。そして、診断装置等は、取得したデータに基づき、弾性部材の反力に関する異常の診断を行ってもよい。
【0306】
これにより、診断装置等は、施錠状態でのドアの閉動作時のドアの推力と弾性部材の反力と他の抵抗力との間の力のつり合いから、所定のドアの位置での弾性部材の反力を推定し、弾性部材の反力に関する異常の診断を行うことができる。
【0307】
また、本実施形態では、ドアに対する開方向の推力により弾性部材の反力に抗してドアが静止した状態を起点として、ドアに対する開方向への推力が減少することによりドアが閉動作を開始したときのドアに対する推力に関するデータに基づき、弾性部材の反力に関する異常の診断を行ってもよい。
【0308】
これにより、診断装置等は、施錠状態でのドアの閉動作の開始時のドアの推力と弾性部材の反力と他の抵抗力との間の力のつり合いから、ドアが静止状態にあった位置での弾性部材の反力を推定し、弾性部材の反力に関する異常の診断を行うことができる。
【0309】
また、本実施形態では、診断装置等は、ドアの施錠状態において、ドアに対する開方向への推力によって、ドアが弾性部材の反力に抗して開動作を行ったときのドアの位置に関するデータ、及びドアに対する推力に関するデータと、ドアの施錠状態において、ドアに対する開方向への推力に抗してドアが弾性部材の付勢により閉動作を行ったときのドアの位置、及びドアに対する推力に関するデータを取得してもよい。そして、診断装置等は、取得したデータに基づき、弾性部材の反力に関する異常の診断を行ってもよい。
【0310】
これにより、診断装置等は、ドアの施錠状態でのドアの開動作時のデータに基づき、弾性部材の反力を推定することができると共に、ドアの施錠状態でのドアの閉動作時のデータに基づき、弾性部材の反力を推定することができる。そのため、診断装置等は、双方の弾性部材の反力の推定値に基づき、第1の施錠部材と第2の施錠部材との当接箇所を中心とするモーメントに起因する力の影響を相殺するように、所定のストローク量での弾性部材の反力を推定することができる。よって、診断装置等は、より正確に弾性部材の反力を推定することができ、その結果、弾性部材の反力に関する異常診断をより適切に行うことができる。
【0311】
また、本実施形態では、診断装置等は、ドアが開動作を行ったときのドアの位置に関するデータ、及びドアに対する推力に関するデータに基づき、ドアの位置に対する弾性部材の第1の弾性力を演算してもよい。また、診断装置等は、ドアが閉動作を行ったときのドアの位置に関するデータ、及びドアに対する推力に関するデータに基づき、ドアの位置に対する弾性部材の第2の弾性力を演算してもよい。そして、診断装置等は、第1の弾性力及び第2の弾性力に基づき、ドアの位置に対する弾性部材の弾性力を推定してもよい。
【0312】
これにより、診断装置等は、弾性部材の弾性力をより正確に推定することができ、その結果、弾性部材の反力に関する異常診断をより適切に行うことができる。
【0313】
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0314】
1 鉄道車両
2 診断装置
3 ユーザ端末
10 上位装置
12 車両制御装置
13 配線
14 ドア開閉操作装置
14A 開スイッチ
14B 閉スイッチ
16 伝送装置
30 モータ
31 エンコーダ
32 電流センサ
32A 電流センサ
32B 電流センサ
50 施錠装置
51 ピン
52 コイル
53 コイル
60 DCS
61A1 固定接点
61A2 固定接点
61B1 固定接点
61B2 固定接点
62 可動接点
70 DLS
71A1 固定接点
71A2 固定接点
71B1 固定接点
71B2 固定接点
72 可動接点
80 ドア
80A ドアパネル
80B ドアパネル
81A 戸先ゴム
81B 戸先ゴム
100 ドア制御装置
101 配線
102 配線
110 常用系制御部
111 電源回路
112 通信部
113 入力信号検出部
114 シーケンス部
115 モータ制御部
116 モータ駆動部
117 施錠・解錠駆動部
120 待機系制御部
121 電源回路
122 通信部
123 入力信号検出部
124 シーケンス部
125 モータ制御部
126 モータ駆動部
127 施錠・解錠駆動部
130 切換回路部
140 切換回路部
150 電源
151 入力コンタクタ
200 ドア駆動機構
210 ラック
211 ラック部
211A ラックギヤ
212 連結部
213 DCS当接部
220 ラック
221 ラック部
221A ラックギヤ
222 連結部
222A 傾斜部
223 ロックピン当接部
223A ロックホール
224 ばね部材
225 支持棒
225A 棒部
225B 拡径部
230 ロックピン
231 ピン部
232 施錠装置当接部
LCM 施錠機構部
PBM プッシュバック機構
SYS 診断システム