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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113946
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】押出成形用エチレン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/02 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
B65D65/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019241
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 健二朗
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕司
【テーマコード(参考)】
3E086
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AD01
3E086AD04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB05
3E086BB51
3E086BB61
3E086BB85
3E086CA01
3E086CA40
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】再生材を含みながら、再生材による物性低下が有効に抑制された押出成形品を得ることが可能な押出成形用エチレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】再生ポリエチレンを含む少なくとも2種のポリエチレンを含み、MFR(190℃)が0.1~1.0g/10分の範囲にあり、衝撃強度が75kJ/m以上であり、溶融張力が33~125mNであることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生ポリエチレンを含む少なくとも2種のポリエチレンを含み、MFR(190℃)が0.1~1.0g/10分の範囲にあり、衝撃強度が75kJ/m以上であり、溶融張力が33~125mNであることを特徴とする押出成形用エチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記少なくとも2種のポリエチレンとして、再生ポリエチレン(A)とバージンポリエチレン(B)とを含み、再生ポリエチレン(A)を、バージンポリエチレン(B)100質量部当り、30~93質量部の量で含んでいる請求項1に記載の押出成形用エチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記少なくとも2種のポリエチレンとして、相対的にMFRの大きい再生ポリエチレン(A1)と相対的にMFRの小さい再生ポリエチレン(A2)とを含み、再生ポリエチレン(A1)と再生ポリエチレン(A2)とを、30/70~93/7の質量比(A1/A2)で含んでいる請求項1に記載の押出成形用エチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
再生ポリエチレン(A)とバージンポリエチレン(B)とを、下記物性が得られるように、ブレンドすることを特徴とする押出成形用エチレン系樹脂組成物の製造方法。
MFR(190℃):0.1~1.0g/10分
衝撃強度:75kJ/m以上
溶融張力:33~125mN
【請求項5】
前記再生ポリエチレン(A)を、バージンポリエチレン(B)100質量部当り、30~93質量部の量で使用する請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記再生ポリエチレン(A)とバージンポリエチレン(B)とを、MFR比(A/B)が0.008~500の範囲となるように組み合わせて使用する請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
相対的にMFRの大きい再生ポリエチレン(A1)と相対的にMFRの小さい再生ポリエチレン(A2)とを、下記物性が得られるように、ブレンドすることを特徴とする押出成形用エチレン系樹脂組成物の製造方法。
MFR(190℃):0.1~1.0g/10分
衝撃強度:75kJ/m以上
溶融張力:33~125mN
【請求項8】
前記再生ポリエチレン(A1)と再生ポリエチレン(A2)とを、30/70~93/7の質量比(A1/A2)で使用する請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記再生ポリエチレン(A1)と再生ポリエチレン(A2)とを、MFR比(A1/A2)が1~500の範囲となるように組み合わせて使用する請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~3の何れかに記載の押出成形用エチレン系樹脂組成物を用いての溶融押出により容器用プリフォームを成形し、この容器用プリフォームを用いてブロー成形することにより容器の形態に賦形することを特徴とするダイレクトブロー成形容器の製造方法。
【請求項11】
請求項1~3の何れかに記載の押出成形用エチレン系樹脂組成物を、容器製造工程で生じるスクラップ樹脂と混合し、多層押出ブロー成形容器中のリサイクル材層として使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形用エチレン系樹脂組成物に関するものであり、より詳細には、再生ポリエチレンを含む押出成形用エチレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における環境保護の重要性から、使用済みプラスチック成形体や成形体製造時に発生するプラスチック廃材などからプラスチックを再生し、再利用するリサイクル技術が種々検討されている。プラスチックの再生手段としては、使用済み成形品や廃材などからの回収品を、分別、粉砕、洗浄、比重による分離など、化学処理を行わないメカニカルリサイクルが広く知られており、特にローコストで再生品を提供できるため、実用されている。例えば、特許文献1には、オレフィン系のリサイクル材料(例えばポリエチレンのリサイクル品)からなる再生材層を有する多層構造の押出ブローボトルが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-192998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、再生樹脂(リサイクル品)は、大きく分けて、所謂ポストコンシューマ材(一旦、製品として消費者に渡った材料)から得られるもの、プレコンシューマ材(消費者に渡る前の製造工程で発生した材料)から得られるものなどがある。即ち、再生樹脂は、様々な発生源から得られるため、その強度特性のみならず、溶融特性、ブロー特性など、成形性に関わる物性も様々であり、使用したい成形法及びその成形法によって提供したい製品があっても、成形が困難であり、リサイクル材の適用は限定的で大きな制約があった。
【0005】
例えば、オレフィン樹脂の中でもポリエチレンは、よく押出ブローボトルに使われるが、リサイクル材によって溶融特性が大きく異なるため、本発明者の研究によると、ドローダウン性の低下や、大吐出高速成形時の樹脂圧などが、ブロー適性や生産性に影響を及ぼす結果として、再生ポリエチレンの押出ブロー成形への適用が困難であることが判っている。このように、再生ポリエチレンを用いて押出ブローボトルを成形する場合には、該ポリエチレンの由来が押出ブローボトルなどの成形に適した物性であるとは限らないため、成形性向上が求められている。
【0006】
従って、本発明の目的は、再生材を含みながら、再生材による成形性の低下が有効に抑制された押出成形用のエチレン系樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の押出成形用エチレン系樹脂組成物の製造方法及び使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、再生ポリエチレンを含む少なくとも2種のポリエチレンを含み、MFR(190℃)が0.1~1.0g/10分の範囲にあり、衝撃強度が75kJ/m以上であり、溶融張力が33~125mNであることを特徴とする押出成形用エチレン系樹脂組成物が提供される。
【0008】
本発明の押出成形用エチレン系樹脂組成物においては、
(1)前記少なくとも2種のポリエチレンとして、再生ポリエチレン(A)とバージンポリエチレン(B)とを含み、再生ポリエチレン(A)を、バージンポリエチレン(B)100質量部当り、30~93質量部の量で含んでいること、
(2)前記少なくとも2種のポリエチレンとして、相対的にMFRの大きい再生ポリエチレン(A1)と相対的にMFRの小さい再生ポリエチレン(A2)とを含み、再生ポリエチレン(A1)と再生ポリエチレン(A2)とを、30/70~93/7の質量比(A1/A2)で含んでいること、
という態様が好適に採用される。
【0009】
本発明によれば、また、押出成形用エチレン系樹脂組成物の製造法として、
再生ポリエチレン(A)とバージンポリエチレン(B)とを、下記物性が得られるように、ブレンドすることを特徴とする製造方法が提供される。
MFR(190℃):0.1~1.0g/10分
衝撃強度:75kJ/m以上
溶融張力:33~125mN
【0010】
上記の製造方法としては、
(a)前記再生ポリエチレン(A)を、バージンポリエチレン(B)100質量部当り、30~93質量部の量で使用すること、
(b)前記再生ポリエチレン(A)とバージンポリエチレン(B)とを、MFR比(A/B)が0.008~500の範囲となるように組み合わせて使用すること、
が好適である。
【0011】
上記の製造方法は、再生ポリエチレン(A)とバージンポリエチレン(B)とを使用したものであるが、本発明においては、相対的にMFRの大きい再生ポリエチレン(A1)と相対的にMFRの小さい再生ポリエチレン(A2)とを使用して同様の押出成形用エチレン系樹脂組成物を製造することもできる。
即ち、このような押出成形用エチレン系樹脂組成物の製造方法として、
相対的にMFRの大きい再生ポリエチレン(A1)と相対的にMFRの小さい再生ポリエチレン(A2)とを、下記物性が得られるように、ブレンドすることを特徴とする押出成形用エチレン系樹脂組成物の製造方法が提供される。
MFR(190℃):0.1~1.0g/10分
衝撃強度:75kJ/m以上
溶融張力:33~125mN
【0012】
上記の製造方法においても、
(c)前記再生ポリエチレン(A1)と再生ポリエチレン(A2)とを、30/70~93/7の質量比(A1/A2)で使用すること、
(d)前記再生ポリエチレン(A1)と再生ポリエチレン(A2)とを、MFR比(A1/A2)が1~500の範囲となるように組み合わせて使用すること、
が好適である。
【0013】
本発明によれば、さらに、前記押出成形用エチレン系樹脂組成物を用いての溶融押出により容器用プリフォームを成形し、この容器用プリフォームを用いてブロー成形することにより容器の形態に賦形することを特徴とするダイレクトブロー成形容器の製造方法が提供される。
【0014】
本発明によれば、さらにまた、前記押出成形用エチレン系樹脂組成物を、容器製造工程で生じるスクラップ樹脂と混合し、多層押出ブロー成形容器中のリサイクル材層として使用する方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の押出成形用エチレン系樹脂組成物は、リサイクル材である再生ポリエチレン(A)とバージンポリエチレン(B)とを含んでいる場合、或いは2種の再生ポリエチレン(相対的にMFRの大きい再生ポリエチレン(A1)と相対的にMFRが小さい再生ポリエチレンとを含んでいる場合があるが、何れの場合も、MFR(190℃)が0.1~1.0g/10分の範囲に設定されていると同時に溶融張力が33~125mNの範囲に設定され、さらには、衝撃強度が75kJ/m以上に設定されている。このため、再生ポリエチレンを使用していながら押出成形性やブロー成形性の低下が有効に抑制されており、これによりリサイクル材である再生ポリエチレンの使用効率を向上させ、環境保護を図ることができる。
【0016】
例えば、上記の樹脂組成物を用いて得られる押出成形体は、再生ポリエチレン(A)を含みながらドローダウンや偏肉が防止されているため、再生ポリエチレン(A)を全く含んでいない押出成形体と同等程度の実用に支障のない強度を示す。
特に押出ブローボトルでは、再生ポリエチレン(A)を含む上記の樹脂組成物から形成された多層構造のボトル或いは該樹脂組成物を用いてリグラインド層等の中間層を有する多層構造のボトルであっても、再生ポリエチレン(A)を全く含んでいないボトルと同等程度の実用に支障のない落下衝撃強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<エチレン系樹脂組成物>
本発明のエチレン系樹脂組成物は、押出成形に使用されるものであるが、樹脂成分として、再生ポリエチレンが使用されることを条件として、少なくとも2種のポリエチレンが使用される。
本発明において、一般的には、再生ポリエチレンがバージンポリエチレンと組み合わせて使用されるが、再生ポリエチレン同士を組み合わせて使用することもできる。例えば、押出グレード由来のMFRの小さな再生ポリエチレンと、射出グレード由来のMFRの大きな再生ポリエチレンとを組み合わせて使用することができる。
【0018】
尚、対象となるポリエチレンは、これに限定されるものではないが、密度が0.910g/cm以上、0.930g/cm未満の低密度ポリエチレン(LDPE)、密度が0.910~0.925g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び密度が0.930g/cm以上の高密度ポリエチレン(HDPE)などが代表的である。
【0019】
本発明において、バージンポリエチレンとしては、上記の様な密度を有するポリエチレンの未使用品が好適に使用される。
また、再生ポリエチレンとしては、例えば、上記のポリエチレンを用いて成形されたキャップや包装容器などの使用済のポリエチレン製品であるポストコンシューマ材や、工場内での生産工程で発生する廃材などのプレコンシューマ材などから得られるものの何れも使用することができる。ポストコンシューマ材及びプレコンシューマ材は、再ペレットなどの再生処理を施したものや、粉砕したフレーク材料をそのまま使用することもできる。
【0020】
上記で述べたように、本発明のエチレン系樹脂組成物は、再生ポリエチレンとバージンポリエチレンとのブレンド或いは、由来の異なる再生ポリエチレン同士をブレンドすることにより調製されるが、何れの場合においても、MFR(メルトフローレート、190℃)、衝撃強度及び溶融張力が、下記に示す一定の範囲となるように、用いるポリエチレンの物性やブレンド量を調節しなければならない。
MFR(190℃):
0.1~1.0g/10分、特に0.17~0.73g/10分
衝撃強度:75kJ/m以上、特に97kJ/m以上
溶融張力:33~125mN、特に44~125mN
尚、これらの物性は、後述する実施例に示す方法で測定される。
【0021】
即ち、上記の様な物性を満足するように、再生ポリエチレンとバージンポリエチレン、或いは再生ポリエチレン同士を組み合わせるわけである。即ち、用いる再生ポリエチレンやバージンポリエチレンが有する物性(MFR、衝撃強度、溶融張力)に応じて、その配合比を変え、上記範囲内に上記物性を設定するわけである。
これにより、再生ポリエチレンの使用による押出成形性の低下を回避することができ、例えばドローダウンによる偏肉の発生が抑制され、押出成形による物性低下も回避できる。特に、ポストコンシューマ由来の再生ポリエチレンを用いる場合には、物性変動が大きく、取り扱い難いが、本発明では、このようなポストコンシューマ由来の再生ポリエチレンを用いた場合にも、押出成形による物性低下を安定して回避することができる。
【0022】
本発明のエチレン系樹脂組成物では、上記のような範囲に各物性を設定できる限り、
複数のポリエチレンの配合比は制限されないが、再生ポリエチレンの量が過度に少ないと、再生品を用いるメリットが損なわれてしまうし、再生ポリエチレンの量が過度に多いと、再生品に特有の異物の含量が多くなり、押出成形品の外観が損なわれたり、押出成形品の表面平滑性が損なわれるなどの問題が生じる。従って、再生ポリエチレンの使用量は、一定の範囲内であることが好ましい。
【0023】
例えば、再生ポリエチレンとバージンポリエチレンとの組み合わせを採用する場合、再生ポリエチレン(A)の使用量は、バージンポリエチレン(B)100質量部当り、30~93質量部、特に30~85質量部であることが好ましい。同様に、再生ポリエチレン同士を組み合わせて使用する場合、相対的にMFRが大きい再生ポリエチレン(A1)と、相対的にMFRが小さい再生ポリエチレン(A2)とを、30/70~93/7、特に30/70~85/15の質量比(A1/A2)で使用することが好適である。即ち、このような配合比で再生ポリエチレン(A)とバージンポリエチレン(B)、或いはMFRの大きい再生ポリエチレン(A1)とMFRの小さい再生ポリエチレン(A2)とをブレンド(溶融混錬)して、前述した各物性を有する押出成形用のエチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0024】
また、本発明では、前述した範囲のMFRを得るために、再生ポリエチレン(A)とバージンポリエチレン(B)とは、MFR比(A/B)が0.008~500、特に0.017~167の範囲となるように組み合わせることが好ましい。このようなMFR比(A/B)を満足する場合、再生ポリエチレン(A)の使用量を可及的に多くして、エチレン系樹脂組成物のMFRを所定の範囲に設定することができる。また、本発明で用いるバージンポリエチレンは、基本的には押出グレードのMFRを有するが、組み合わせて使用する再生ポリエチレン(A)のMFRによっては、押出グレードではなく、所謂射出グレードのMFRや極めて低いMFRを有するポリエチレンをバージン材として使用することもできるし、複数のバージンポリエチレンをブレンドしてMFRを調整することもできる。
さらに、再生ポリエチレン同士を組み合わせて使用する場合、MFRの大きい再生ポリエチレン(A1)とMFRの小さい再生ポリエチレン(A2)とは、MFR比(A1/A2)が1~500、特に1~167の範囲となるように組み合わせることが好ましい。
【0025】
本発明において、上述したエチレン系樹脂組成物は、MFR等の物性が前述した範囲にあり、且つ押出成形性が損なわれない限りの範囲で、それ自体公知の各種配合剤、例えば、滑剤、各種改質剤、紫外線吸収剤、着色剤などが配合されていてもよい。
【0026】
本発明のエチレン系樹脂組成物は、前述した複数種のポリエチレン(再生ポリエチレンとバージンポリエチレン、或いは複数種の再生ポリエチレン)及び必要により適宜配合される各種配合剤を溶融混錬することにより調製され、押出成形により種々の押出成形品が製造される。
このような押出成形品としては、フィルムや押出ブローボトルが代表的であるが、本発明では、押出ブローボトルに使用することが最適である。
【0027】
例えば、本発明のエチレン系樹脂組成物を、それ自体公知の条件で溶融押出してチューブ状のプリフォームを成形し、そのプリフォームの一端をピンチオフした後、ブロー流体を供給してブロー成形を行うことにより、ブローボトルを得ることができる。この場合、このエチレン系樹脂組成物のみを使用して単層構造のブローボトルを得ることもできるし、他の樹脂との共押出により、多層構造のブローボトルを得ることもできる。多層構造のブローボトルを製造するにあたっては、再生ポリエチレンを含む本発明のエチレン系樹脂組成物は、ボトルの内層或いは外層の形成に使用することもできるし、中間層の形成に使用することもできる。
【0028】
このようにしてブローボトルを製造する場合、本発明のエチレン系樹脂組成物は、MFRや溶融張力が一定の範囲に調整されることで溶融押出に際してのドローダウンが防止されているため、偏肉の無い均一な厚みのボトルが得られる。また、衝撃強度も一定値以上に調整されているため、実用に支障の無い落下強度を有するブローボトルが得られる。このような本発明の効果は、後述する実施例に示されている多くの実験例から明らかである。
【0029】
尚、多層構造の押出ブローボトル(所謂ダイレクトブローボトル)では、上記エチレン系樹脂組成物は、中間層として利用することが好適である。即ち、このエチレン系樹脂組成物の層は、再生品を含んでいるが、内層或いは外層のバージンポリエチレンの層に対して良好な接着性を示し、両者の間に接着剤の層を介在させる必要が無いからである。特に、このエチレン系樹脂組成物は、ボトル成形工程で得られるスクラップと混合して、中間層として存在するリグラインド層の形成に使用することが最適である。
【0030】
本発明において、上記の多層構造の押出ブローボトルの層構成の例を、以下に示す。
尚、以下の例においては、以下の略号が使用されている。
VPE:バージンポリエチレン(B)からなる層
RPE:本発明のエチレン系樹脂組成物からなる層
GBAR:ガスバリア層
AD:接着剤層
ATH:ポリエチレン以外の他の熱可塑性樹脂の層(加飾層など)
【0031】
(内)RPE(外)
(内)VPE/RPE(外)
(内)RPE/VPE(外)
(内)RPE/ATH(外)
(内)RPE/ATH/VPE(外)
(内)VPE/RPE/ATH(外)
(内)RPE/AD/ATH(外)
(内)VPE/RPE/VPE(外)
(内)RPE/ATH/ATH(外)
(内)VPE/RPE/ATH/VPE(外)
(内)VPE/RPE/AD/ATH(外)
(内)VPE/RPE/ATH/ATH(外)
(内)VPE/RPE/AD/GBAR/AD/VPE(外)
(内)VPE/RPE/AD/GBAR/AD/ATH(外)
【0032】
上記のガスバリア層は、例えば37℃-0%RHにおける酸素透過係数が5.5×10-12cc・cm/cm・sec・cmHg以下のガスバリア性樹脂による層であり、このようなガスバリア性樹脂としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体やポリアミドが代表的であり、特にエチレン-ビニルアルコール共重合体が好適である。
かかるエチレン-ビニルアルコール共重合体(エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物)としては、具体的には、エチレン含有量が20~60モル%、特に25~50モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好適に使用される。このエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下EVOHと呼ぶことがある)は、フィルムを形成し得るに足る分子量を有するべきであり、一般に、フェノール/水の重量比が85/15の混合溶媒中、30℃で測定して0.01dl/g以上、特に0.05dl/g以上の固有粘度を有している。
上記のガスバリア性樹脂層は、その優れた酸素バリア性が損なわれない限りにおいて、他の熱可塑性樹脂がブレンドされていてもよい。
【0033】
接着剤層は、互いに隣接する層同士が接着性に乏しい場合に設けられる層であり、それ自体公知の接着剤樹脂、例えば、エチレン-α-オレフィン共重合樹脂及びそれらの酸変性樹脂、オレフィンと酸の共重合樹脂、グリシジル基含有樹脂などが代表的である。また、これらの接着剤樹脂に、公知の粘着付与剤を添加して接着性を高めることもできる。
【0034】
共重合樹脂としては、ランダム、ブロック、グラフトなど、どのような結合様式で製造されたものでも使用できる。酸変性樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸、又はこれらの無水物でグラフト変性した樹脂が用いられる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上のブレンド樹脂として、あるいは他樹脂とのブレンド樹脂として使用できる。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂などがあげられる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0035】
また、外層として使用し得るポリエチレン以外の他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンとの共押出しが可能である限り特に制限されないが、一般的には、包装容器の分野で多用されているポリエチレン以外のポリオレフィンやポリエステルが使用される。
かかるポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)などを挙げることができる。また、非環状オレフィンと環状オレフィンとの非晶質乃至低結晶性の共重合体(COC)も使用可能である。
ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、或いはエチレンテフタレート単位に少量のコポリエステル単位が導入されている非晶性ポリエステル樹脂を挙げることができる。
【0036】
尚、前述した層構成の例では示していないが、酸素を捕捉するために、酸素吸収性樹脂層を、適宜接着剤層を介して、ガスバリア層と共に中間層として設けることもできる。
酸素吸収性樹脂層は、特開2002-240813号等に記載されているように、酸化性重合体及び遷移金属系触媒を含む層であり、遷移金属系触媒の作用により酸化性重合体が酸素による酸化を受け、これにより、酸素を吸収して酸素の透過を遮断する。このような酸化性重合体及び遷移金属系触媒は、上記の特開2002-240813号などに詳細に説明されているので、その詳細は省略するが、酸化性重合体の代表的な例は、第3級炭素原子を有するオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレンやポリブテン-1など、或いはこれらの共重合体)、熱可塑性ポリエステル若しくは脂肪族ポリアミド;キシリレン基含有ポリアミド樹脂;エチレン系不飽和基含有重合体(例えばブタジエンなどのポリエンから誘導される重合体);などである。また、遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケルなどの遷移金属の無機塩、有機酸塩或いは錯塩が代表的である。
【0037】
上述した各層は、それぞれの機能に応じて適宜の厚みを有していればよい。
【0038】
このような多層押出ブローボトルは、再生ポリエチレンが使用されていない押出ブローボトルと同等程度の実用に支障のない落下強度を有していることが示されている。
また、一般に、胴部壁が可撓性に富んでおり、スクイズなどによって内容物を容易に排出することができるため、食品類から化粧品、ヘアケア(シャンプーやリンスなど)商品など、種々の内容物を充填するプラスチック容器として広く使用される。
【0039】
尚、本発明のエチレン系樹脂組成物は、押出ブローボトルの成形のみならず、溶融押出によりフィルムの成形に使用することもできる。即ち、ドローダウンが抑制されているため、均一な厚みのフィルムを得ることができる。かかるフィルムは、上記エチレン系樹脂組成物のみから得られる単層フィルムであってもよいし、目的に応じて、適宜公知の接着剤樹脂を用い、他の樹脂との共押出により多層構造とすることもできるし、ドライラミネート接着剤を用いて他のフィルムとラミネートすることにより多層構造とすることもできる。特に、エチレン系樹脂組成物から得られるフィルム或いは層は、ヒートシール性を有しているので、製袋によりパウチとして使用することが可能である。
【実施例0040】
本発明のエチレン系樹脂組成物を、次の実験例により説明する。
尚、以下の実験例での各種測定或いは評価は、以下の方法により行った。
【0041】
MFR;
JIS K7210-1(A法)に準じ、東洋精機製メルトインデクサにて測定温度190℃にて測定。3回測定した平均値を測定値とした。
ドローダウン;
成形時の肉厚分布をマイクロメータにて確認し、所定の肉厚に調整不可の場合を×とし、製造上の制約が生じた場合を△とし、全く問題が無い場合を〇とした。
樹脂圧;
押出機の樹脂圧が45MPa以上を×とし、成形速度の変更を要するものを△とした。
溶融ムラ;
目視にてボトル内面を観察し、明らかな凹凸や肌荒れが見られたものを×とし、凹凸や肌荒れが見られなかったものを〇とした。
引張衝撃強度;
東洋精機製ホットプレス機にて、厚み1mm、縦横100mmのシートを、加熱5分(190℃)、プレス5分(190℃、20MPa)、冷却5分(20℃、10MPa)の条件にて作製JIS K7160(A法)に準じた試験器及びASTM D-1822-Sに準じたダンベルにて、測定温度23℃で測定。
14回測定した内の最大値から2つと最小値から2つを排除した10回分の平均値を測定値とした。
溶融張力;
東洋精機製キャピログラフにて、径Φ2.095mm、長さ8mmのキャピラリを用い、190℃、押出速度15mm/分、引取速度6.5mmにて測定。
落下強度;
ボトル10本に水400mlを充填し、5℃に24時間保管後、1.2mの高さから、1本につき落下姿勢正立5回、水平(同一面)5回落下させ、破損が生じたものを×とし、容器仕様に制約が生じたものを△とした。
総合評価;
各種測定値、成形性評価、落下試験評価、溶融ムラ評価を総合的に勘案し、総合評価とした。
〇:問題なく容器製造ができ、市場流通に適した容器性能を有する
△:容器製造において何らかの制約が生じる(成形速度が落ちるなど)、もしくはサイズやデザインなど容器仕様に制約が生じる
×:容器製造が困難、もしくは容器性能が市場流通に適さない
【0042】
<実施例1>
エチレン系樹脂組成物を使用するために使用した再生ポリエチレン及びバージンポリエチレン、及び内外層用のポリエチレンとしては、以下のものを使用した。
再生ポリエチレン;
市場から回収したエチレン系樹脂からなるMFR:1.25g/10分(190℃、2.16kg荷重)の破砕品。
バージンポリエチレン;
MFR:0.05g/10分(190℃、2.16kg荷重)のHDPE。
内層用のポリエチレン;
MFR:0.36g/10分(190℃、2.16kg荷重)、密度:0.955g/cmの高密度ポリエチレン。
【0043】
2つの押出機を用い、内外層とエチレン系樹脂組成物の各材料を該押出機に投入し、外層/エチレン系樹脂組成物/内層の3層からなる多層パリソンを押出した。外層及び内層の材料としては、上記の内外層用ポリエチレンを用いた。
エチレン系樹脂組成物の組成は、再生ポリエチレン65質量部、バージンポリエチレン35質量部とした。ここで、この組成物については、予め、MFR、引張衝撃強度及び溶融張力を測定しておいた。
【0044】
上記で得られた多層パリソンを用いて公知のダイレクトブロー成形により成形し、容量:445ml、ボトル重量:25g、ボトルハイト:195mmのシリンダー形状のプラスチックボトルを得た。
【0045】
成形性評価として、樹脂圧とドローダウンの評価、落下試験の評価、溶融ムラの評価と総合評価を、エチレン系樹脂組成物の物性と共に、表1に示した。
【0046】
<実施例2~24,比較例1~4>
表1に示すように、MFRの異なる再生ポリエチレン及びバージンポリエチレンを使用し、表1に示す配合比で溶融混錬してエチレン系樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして多層パリソンを成形し、さらにブロー成形を行ってボトルを成形し、実施例1と同様に、各種の評価を行い、表1に示した。
尚、実施例24~26では、バージンポリエチレンを使用せず、代わりに市場から回収したエチレン系樹脂からなるポリエチレンの破砕品を使用することでMFRの異なる2種の再生ポリエチレンを使用してエチレン系樹脂組成物を調製した。
また、表1中、A、A1、A2は再生ポリエチレンを示し、Bは、バージンポリエチレンを示す。
【0047】
【表1】