(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113964
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/00 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
F28F9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019275
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金田 吉博
(72)【発明者】
【氏名】宇野 貴昭
(57)【要約】
【課題】熱交換器の強度を向上させる。
【解決手段】熱交換器は、第1板状部と、第2板状部と、熱交換部材と、少なくとも一つの補強部と、を備える。第1板状部は、板状の部位である。第2板状部は、第1板状部に対面するように配置され、第1板状部との間に熱交換媒体が通過する流路を形成する、板状の部位である。熱交換部材は、熱交換媒体が通過可能な空隙を有する部材は、流路に配置され、第1板状部及び第2板状部の少なくとも一つに当接する。補強部は、周囲の熱交換部材の部分よりも密度が高い熱交換部材の部分を含み、熱交換部材に設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器であって、
板状の部位である第1板状部と、
前記第1板状部に対面するように配置され、前記第1板状部との間に熱交換媒体が通過する流路を形成する、板状の部位である第2板状部と、
前記熱交換媒体が通過可能な空隙を有する部材であって、前記流路に配置され、前記第1板状部及び前記第2板状部の少なくとも一つに当接する熱交換部材と、
周囲の前記熱交換部材の部分よりも密度が高い前記熱交換部材の部分を含み、前記熱交換部材に設けられる少なくとも一つの補強部と、
を備える、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記少なくとも一つの補強部は、前記第1板状部及び前記第2板状部の少なくとも一つと当接する、熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の熱交換器であって、
前記少なくとも一つの補強部は、前記第1板状部から前記第2板状部へ向かう方向へ延びる柱状形状である、熱交換器。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の熱交換器であって、
前記少なくとも一つの補強部は、前記第1板状部及び前記第2板状部のいずれにも接合しない、熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器等を冷却する冷却部材が知られている。例えば、特許文献1には、収容体の中に金属繊維シートを収容するとともに、金属繊維シートを冷却する冷却機構を有し、収容体に当接した冷却対象物を冷却する冷却部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている冷却部材において、収容体が冷却対象物に当接する板状の部位である場合、冷却対象物の荷重によって収容体及び金属繊維シートが変形する可能性がある。その結果、流路抵抗が変化して、冷却性能が変化するという問題があった。
【0005】
本開示の一局面は、熱交換器の強度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、熱交換器であって、第1板状部と、第2板状部と、熱交換部材と、少なくとも一つの補強部と、を備える。第1板状部は、板状の部位である。第2板状部は、第1板状部に対面するように配置され、第1板状部との間に熱交換媒体が通過する流路を形成する、板状の部位である。熱交換部材は、熱交換媒体が通過可能な空隙を有する部材であって、流路に配置され、第1板状部及び第2板状部の少なくとも一つに当接する。補強部は、周囲の熱交換部材の部分よりも密度が高い熱交換部材の部分を含み、熱交換部材に設けられる。
【0007】
このような構成によれば、補強部によって熱交換部材の変形を抑制できる。そのため、熱交換器の強度を向上させることができる。
【0008】
本開示の一態様では、少なくとも一つの補強部は、第1板状部及び第2板状部の少なくとも一つと当接してもよい。
このような構成によれば、熱交換部材の変形を抑制できる。
【0009】
本開示の一態様では、少なくとも一つの補強部は、第1板状部から第2板状部へ向かう方向へ延びる柱状形状であってもよい。
このような構成によれば、補強部によって熱交換部材の変形をより一層抑制できる。
【0010】
本開示の一態様では、少なくとも一つの補強部は、第1板状部及び第2板状部のいずれにも接合しなくてもよい。
【0011】
このような構成によれば、補強部と第1板状部又は第2板状部とを接合した場合に接合箇所に生じる熱交換性能の低下が発生しなくなる。このため、熱交換性能を維持しつつ、熱交換部材の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】第1実施形態の熱交換器における、補強部を形成する際に熱交換部材に荷重をかける前の、熱交換部材の第2方向に垂直な断面の説明図である。
【
図4】第1実施形態の熱交換器における、補強部を形成する際に高密度部と凹み部とが形成された状態の、熱交換部材の第2方向に垂直な断面の説明図である。
【
図5】第1実施形態の熱交換器における、補強部を形成する際にシート部材を積層した状態の、シート部材の第2方向に垂直な断面の説明図である。
【
図6】第2実施形態の熱交換器における、熱交換流路内に直線状に形成された流路の上面図である。
【
図7】第2実施形態の熱交換器における、熱交換流路内に波線状に形成された流路の上面図である。
【
図8】他の実施形態の熱交換器における、補強部を形成する際に補強部材の代わりに剛体が配置される熱交換部材の第2方向に垂直な断面の断面図である。
【
図9】他の実施形態の熱交換器における、補強部を形成する際に補強部材の代わりに弾性体が配置される熱交換部材の第2方向に垂直な断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
[1-1-1.全体構成]
図1及び
図2に示す熱交換器1は、当接する冷却対象物8を冷却する冷却器である。一例として、熱交換器1は車両に搭載される。冷却対象物8の一例として、車載電池がある。一例として、複数の熱交換器1は、複数の冷却対象物8と交互に積層することで、各々の冷却対象物8を両面から冷却する積層型冷却器を構成する。
【0014】
熱交換器1は、第1板部材10と、第2板部材20と、熱交換部材30と、入口部40と、出口部50と、を備える。
第1板部材10及び第2板部材20は、板状の部材である。第1板部材10及び第2板部材20を形成する方法の一例として、プレス成形がある。
【0015】
第1板部材10及び第2板部材20の材質は、例えば、銅、アルミ、ステンレスといった金属や、樹脂等がある。第1板部材10及び第2板部材20は、後述する熱交換部材30と同じ材質であることが望ましい。第1板部材10及び第2板部材20と熱交換部材30との材質が異なる場合、電位差腐食が発生する可能性があるため、電位差の小さい金属の組合せが望ましい。
【0016】
第1板部材10及び第2板部材20の板厚は、0.4~2.0[mm]である。第1板部材10及び第2板部材20の板厚は、第1板部材10及び第2板部材20のそれぞれの熱抵抗に基づいて定められる。第1板部材10及び第2板部材20の熱抵抗は、第1板部材10及び第2板部材20の材料によって異なる。第1板部材10及び第2板部材20の板厚は、第1板部材10及び第2板部材20の熱抵抗が6.E-06[(m2・K)/W]以下になるように定められるのが望ましい。
【0017】
第1板部材10は、第1板状部11と、第1壁部12a、12bと、第1接合部13a、13bと、を有する。
第2板部材20は、第2板状部21と、第2壁部22a、22bと、第2接合部23a、23bと、を有する。
【0018】
第1板状部11及び第2板状部21は、いずれも略矩形の板状の部位である。第1板状部11及び第2板状部21は、互いに対面するように配置される。第1板状部11と第2板状部21との間には、熱交換媒体が通過する流路である熱交換流路60が形成される。熱交換媒体の一例として、冷却用の液体や気体等の冷却媒体がある。冷却対象物8が熱交換器1と当接する面は、第1板状部11及び第2板状部21における、熱交換流路60を形成する面の反対側の面である。
【0019】
以下、熱交換流路60の幅方向を、第1方向という。また、第1方向と直交し、熱交換媒体が熱交換流路60を流れる方向と平行な方向を、第2方向という。
第1壁部12a、12bは、第1板状部11の第1方向の両端に位置する2つの端部からそれぞれ板厚方向に突出し、第1板状部11の第2方向に延びる壁状の部位である。第1接合部13a、13bは、それぞれ第1壁部12a、12bにおける第1板状部11の反対側の端部から第1方向に沿って熱交換流路60の反対側に突出し、第1板状部11の第2方向に延びる部位である。
【0020】
第2板部材20は、第1板部材10と同様に構成されている。すなわち、第2壁部22a、22bは、第2板状部21の第1方向の両端に位置する2つの端部からそれぞれ板厚方向に突出し、第2板状部21の第2方向に延びる壁状の部位である。また、第2接合部23a、23bは、それぞれ第2壁部22a、22bにおける第2板状部21の反対側の端部から第1方向に沿って熱交換流路60の反対側に突出し、第2板状部21の第2方向に延びる部位である。
【0021】
第1板部材10及び第2板部材20は、第1接合部13aと第2接合部23aとが接合され、かつ、第1接合部13bと第2接合部23bとが接合されている。第1接合部13a、13bと第2接合部23a、23bとの接合は、溶接や接着等によって、接合部分の隙間から熱交換媒体が漏出しないように行われる。つまり、熱交換流路60は、第1板状部11、第1壁部12a、12b、第2板状部21、及び第2壁部22a、22bに囲われた空間である。
【0022】
熱交換流路60は、略矩形の扁平な空間である。熱交換流路60の厚さは、できるだけ薄い方が望ましい。熱交換流路60の厚さは、例えば10[mm]以下である。熱交換媒体が熱交換流路60を流れる方向は、熱交換流路60の厚さ方向に垂直な方向である。
【0023】
熱交換部材30は、熱交換媒体が通過可能な空隙を有する部材である。熱交換部材30は、第1板状部11と第2板状部21との間を充填するように配置され、第1板状部11及び第2板状部21に当接する。熱交換部材30の形態の一例として、繊維状や多孔質状等のものがある。熱交換部材30を構成する材料は、金属材料であってもよく、非金属材料であってもよい。金属材料の一例として、銅、アルミ、ステンレス等がある。非金属材料の一例として、カーボン、樹脂等がある。熱交換部材30の形態及び材料の一例として、金属繊維や発泡金属等がある。熱交換部材30は、複数の材料を複合して構成してもよい。例えば、熱伝導率が高い金属繊維と、荷重をかけられたときに変形し難い金属繊維と、を複合して熱交換部材30を構成してもよい。本実施形態では、熱交換部材30はシート状の金属繊維である。金属繊維の繊維径は、1~30[μm]である。金属繊維の繊維長は、1~10[mm]である。金属繊維は、繊維同士が結着されて一体となっている。
【0024】
入口部40は、第1板部材10及び第2板部材20の第2方向の第1端に設けられ、熱交換媒体が熱交換器1の内部に流入できるように構成された部位である。入口部40の厚さは、熱交換流路60を構成する第1板部材10及び第2板部材20の厚さと同程度である。
【0025】
入口部40は、流入口41と、入口流路42と、を有する。流入口41は、入口部40の外面に設けられ、熱交換媒体を熱交換器1の外部から取り入れる部位である。入口流路42は、入口部40の内部に設けられ、流入口41から入口部40の内部に流入した熱交換媒体が通過し、熱交換流路60へと流出するように形成された空間である。
【0026】
出口部50は、第1板部材10及び第2板部材20の第2方向の第2端に設けられ、熱交換媒体が熱交換器1の外部へと流出できるように構成された部位である。出口部50の厚さは、熱交換流路60を構成する第1板部材10及び第2板部材20の厚さと同程度である。
【0027】
出口部50は、流出口51と、出口流路52と、を有する。流出口51は、出口部50の外面に設けられ、熱交換媒体を外部へと排出する部位である。出口流路52は、出口部50の内部に設けられ、熱交換流路60から出口部50の内部に流入した熱交換媒体が通過し、流出口51から熱交換器1の外部へと流出するように形成された空間である。
【0028】
入口流路42、熱交換流路60、出口流路52は、熱交換媒体が通過する流路を形成する。すなわち、熱交換媒体は、流入口41から熱交換器1の内部に流入し、入口流路42、熱交換流路60(換言すれば、熱交換部材30)、出口流路52、の順に通過する。その後、熱交換媒体は、流出口51から熱交換器1の外部へと流出する。
【0029】
[1-1-2.補強部の構成]
熱交換部材30は、少なくとも一つの補強部31を有する。
図1では一例として、熱交換部材30は6つの補強部31を有する。各補強部31は、高密度部32を含み、熱交換部材30の厚さ方向に延びる柱状の部位である。高密度部32は、熱交換部材30の一部であって、周囲の熱交換部材30の部分よりも密度が高い部位である。
【0030】
各補強部31は、熱交換部材30の厚さ方向に垂直な断面の形状が円形状である。なお、断面の形状は円形状に限られず、例えば多角形状であってもよい。
各補強部31は、冷却対象物8が熱交換器1に当接する領域における第1方向の中心付近を避けて配置されている。また、各補強部31は、熱交換部材30の厚さ方向において、各補強部31の断面の少なくとも一部が冷却対象物8の一部と対面するように配置されている。
図1では一例として、熱交換器1に当接する領域が略矩形である冷却対象物8に対する6つの補強部31の位置が示されている。すなわち、6つの補強部31は、冷却対象物8が熱交換器1に当接する領域の外周のうち第2方向と平行な2辺の両端及び中心にそれぞれ配置されている。また、各補強部31は、熱交換部材30の厚さ方向において、各補強部31の断面の略半分が冷却対象物8の一部と対面するように配置されている。
【0031】
各補強部31は、第1板状部11及び第2板状部21の少なくとも一つと当接する。しかし、各補強部31は、第1板部材10及び第2板部材20のいずれにも接合(例えば、溶接)されていない。
【0032】
補強部31を形成する方法の一例を次に示す。まず、熱交換部材30の一部に対し、厚さ方向に荷重をかける(
図3)。これにより、熱交換部材30において、荷重で圧縮されて密度が高くなった部分である高密度部32と、荷重で凹んだ部分である凹み部33と、が形成される(
図4)。次に、高密度部32と同様に構成された部材である補強部材70を、凹み部33を充填するように配置する(
図4)。これにより、高密度部32及び補強部材70は、補強部31を形成する。
【0033】
なお、熱交換部材30と同様の構成を有する薄いシート状の部材であるシート部材30aに対し、上述の方法で補強部31と同様のシート補強部31aを形成してもよい。このように形成された複数のシート部材30aを、各々のシート補強部31aが重なるように積層して結着させることで、熱交換部材30及び補強部31を形成してもよい(
図5)。
【0034】
[1-2.作用、効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の作用及び効果が得られる。
【0035】
(1a)熱交換部材30は、高密度部32を含む補強部31を少なくとも一つ有する。
このような構成によれば、冷却対象物8の荷重によって熱交換部材30が変形することを、高密度部32を含む補強部31の反力により抑制できる。このため、熱交換器1の強度を向上させることができる。加えて、熱交換部材30の密度の変化を抑制できるため、熱交換性能の変化を抑制することが可能となる。
【0036】
(1b)各補強部31は、熱交換部材30に設けられ、第1板状部11及び第2板状部21のいずれにも接合しない。このため、接合による伝熱表面積の減少が生じることなく、熱交換器1の強度を向上できる。接合による伝熱表面積の減少とは、例えば、補強部31と第1板状部11及び第2板状部21とを溶接した場合、熱伝導率の低い溶接ビードが第1板状部11及び第2板状部21の外面に析出して、冷却対象物8と当接する伝熱面が減少することが挙げられる。
【0037】
(1c)各補強部31は、熱交換部材30の厚さ方向に延びる柱状形状である。
このような構成によれば、冷却対象物8の荷重による熱交換部材30の厚さ方向への変形を抑制できる。このため、熱交換器1の強度を向上させることができる。
【0038】
(1d)各補強部31は、熱交換部材30の一部である高密度部32を含む。
このような構成によれば、各補強部31は熱交換部材30と一体に形成されている部分を含むため、各補強部31と熱交換部材30とが別々の部材である場合に比べて、各補強部31と熱交換部材30との隙間についての寸法公差を厳密に定めることが不要となる。
【0039】
(1e)各補強部31は、冷却対象物8が熱交換器1に当接する領域における第1方向の中心付近を避けて配置されている。
このような構成によれば、冷却対象物8の中心に熱交換媒体の流れが集まるよう促すことができる。このため、熱交換性能を向上させることができる。
【0040】
さらに、各補強部31は、熱交換部材30の厚さ方向に垂直な断面の形状が円形状である。
このような構成によれば、冷却対象物8の中心に熱交換媒体の流れが一層集まるよう促すことができる。このため、熱交換性能を向上させることができる。
【0041】
(1f)各補強部31は、熱交換部材30の厚さ方向において、各補強部31の断面の少なくとも一部が冷却対象物8の一部と対面するように配置されている。
このような構成によれば、冷却対象物8の荷重による熱交換部材30の厚さ方向への変形を抑制できる。このため、熱交換器1の強度を向上させることができる。
【0042】
(1g)第1板部材10及び第2板部材20は、プレス成形によって形成することができる。このため、アルミ押し出しのような複雑な構造ではなく、板金等の単純な部材によって熱交換器1を形成することが可能となる。
【0043】
(1h)熱交換部材30は、繊維状や多孔質状等の、熱交換媒体が通過可能な空隙を有する部材である。
このような構成によれば、熱交換媒体が熱交換部材30に接する伝熱面の比表面積が大きくなるため、熱交換性能を向上させることができる。
【0044】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0045】
上述した第1実施形態では、各補強部31は、熱交換部材30の厚さ方向に延びる柱状の部位であった。これに対し、第2実施形態では、各補強部31は、熱交換流路60内に2つ以上の分離した流路を形成する部位である点で、第1実施形態と相違する。なお、本実施形態における流路とは、熱交換部材30の内部に形成され、熱交換部材30の密度が低くなっていて熱交換媒体が通過しやすい領域のことをいう。
【0046】
各補強部31によって形成される流路の形状は、特に限定されない。例えば、直線状であってもよく、波線状であってもよい。
各流路における熱交換媒体が流れる方向に垂直な断面の断面積(以下、単に断面積という。)は、一定であってもよく、一定でなくてもよい。また、各流路の断面積は、他の流路の断面積と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0047】
図6では一例として、各補強部31は、第2方向に沿って、熱交換流路60の第2方向の第1端から第2端まで延びる、壁状の部位である。各補強部31は、熱交換流路60内に第1流路60a、第2流路60b、及び第3流路60cの3つの直線状の流路を形成している。
【0048】
図7では一例として、各補強部31は、熱交換流路60内に第4流路60d及び第5流路60eの2つの波線状の流路を形成し、熱交換部材30において第4流路60d及び第5流路60eの2つの流路以外の部分を占める部位である。
【0049】
[2-2.作用、効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。加えて、第2実施形態によれば、以下の作用及び効果が得られる。
【0050】
(2a)各補強部31によって形成された各流路において、断面積が一定である場合、各流路を通過する熱交換媒体の圧力損失は一定になる。このため、熱交換流路60内における熱交換性能の偏りを低減できる。
【0051】
(2b)各補強部31によって形成された各流路において、断面積が一定でない場合、各流路を通過する熱交換媒体の圧力損失は一定にならない。また、各流路の断面積が、他の流路の断面積と異なっている場合、各流路を通過する熱交換媒体の圧力損失は他の流路と同じにならない。
【0052】
圧力損失が小さい部分は、圧力損失が大きい部分よりも熱交換媒体が通過しやすくなるため、熱交換性能が上がる。このため、冷却対象物8に対して熱交換性能を局所的に異なるようにすることが可能となる。つまり、冷却対象物8から熱交換器1への熱流束が大きい部分に対する流路の断面積を、熱流束が小さい部分に対する流路の断面積よりも大きくすることで、熱流束が大きい部分の熱交換性能を局所的に向上させることができる。したがって、冷却対象物8において、他の部分よりも高温になっている部分に対し、熱交換器1の熱交換性能を局所的に向上させることで、冷却対象物8の温度の偏りを低減することが可能となる。
【0053】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0054】
(3a)上記実施形態では、各補強部31を形成する際に、凹み部33を充填するように、高密度部32(換言すれば、熱交換部材30の密度が高い部分)と同様に構成された部材である補強部材70を配置していた。しかし、補強部材70は、高密度部32と同様の構成の部材に限定されるものではなく、高密度部32とは異なる様々な部材であってもよい。
【0055】
例えば、熱交換部材30が金属繊維である場合、補強部材70として発泡金属を配置してもよい。
【0056】
また、例えば、補強部材70として剛体71を配置してもよい(
図8)。剛体71の一例として、金属板がある。
【0057】
また、例えば、補強部材70として弾性体72を配置してもよい(
図9)。弾性体72の一例として、圧縮コイルばねがある。
【0058】
(3b)上記実施形態では、各補強部31を形成する方法は、熱交換部材30の一部に高密度部32及び凹み部33を形成し、凹み部33に補強部材70を充填するように配置することであったが、これに限定されるものではない。例えば、熱交換部材30が金属繊維で構成されている場合、熱交換部材30の製造工程で、熱交換部材30の一部を高密度とすることで、各補強部31を形成してもよい。
【0059】
(3c)上記実施形態では、各補強部31は、冷却対象物8が熱交換器1に当接する領域における第1方向の中心付近を避けて配置されているが、当該中心付近に配置されてもよい。
【0060】
(3d)上記実施形態では、冷却対象物8の温度の偏りを低減するために、各流路を形成する補強部31によって各流路の断面積を変化させていた。しかし、冷却対象物8の温度の偏りの低減は、補強部31以外によって実現してもよい。例えば、各流路の入口から出口にかけて熱交換部材30の内部に密度差を設けてもよい。熱交換部材30の内部に密度差があると、各流路の断面積及び熱交換媒体が各流路を通過する流速が変化するため、圧力損失が変化する。圧力損失が変化すると熱交換性能も変化するため、熱交換部材30の内部に密度差を設けると、冷却対象物8の温度の偏りに対して熱交換性能を局所的に異なるようにすることが可能となり、冷却対象物8の温度の偏りを低減することができる。
【0061】
(3e)上記実施形態では、熱交換器1は、当接する冷却対象物8を冷却する冷却器であるが、これに限定されるものではない。例えば、熱交換器1は、熱交換媒体として加熱媒体を用いることで、当接する物体を加熱する加熱器として構成されていてもよい。
【0062】
(3f)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0063】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
熱交換器であって、
板状の部位である第1板状部と、
前記第1板状部に対面するように配置され、前記第1板状部との間に熱交換媒体が通過する流路を形成する、板状の部位である第2板状部と、
前記熱交換媒体が通過可能な空隙を有する部材であって、前記流路に配置され、前記第1板状部及び前記第2板状部の少なくとも一つに当接する熱交換部材と、
周囲の前記熱交換部材の部分よりも密度が高い前記熱交換部材の部分を含み、前記熱交換部材に設けられる少なくとも一つの補強部と、
を備える、熱交換器。
【0064】
[項目2]
項目1に記載の熱交換器であって、
前記少なくとも一つの補強部は、前記第1板状部及び前記第2板状部の少なくとも一つと当接する、熱交換器。
【0065】
[項目3]
項目1又は項目2に記載の熱交換器であって、
前記少なくとも一つの補強部は、前記第1板状部から前記第2板状部へ向かう方向へ延びる柱状形状である、熱交換器。
【0066】
[項目4]
項目1から項目3までのいずれか一項に記載の熱交換器であって、
前記少なくとも一つの補強部は、前記第1板状部及び前記第2板状部のいずれにも接合しない、熱交換器。
【符号の説明】
【0067】
1…熱交換器、11…第1板状部、21…第2板状部、30…熱交換部材、31…補強部、32…高密度部、60…熱交換流路。