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特開2024-113970電機子の製造方法および電機子の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113970
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】電機子の製造方法および電機子の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/085 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
H02K15/085
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019286
(22)【出願日】2023-02-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 遼介
(72)【発明者】
【氏名】廣田 雄史
(72)【発明者】
【氏名】島田 悟
(72)【発明者】
【氏名】小俣 大将
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP13
5H615QQ03
5H615QQ06
5H615SS04
5H615SS09
5H615SS10
5H615TT14
(57)【要約】
【課題】電機子の製造効率を向上させる。
【解決手段】本製造方法では、複数のスロットが形成されたステータコア12と、各スロットに両脚部が挿入され、ステータコア12の径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイル20とを備えたステータ10が製造される。この製造方法では、集合工程では、ステータコア12に形成された複数のスロットよりも幅及び長さの少なくとも一方が大きく設定された複数の集合スロットが形成された集合治具40を用い、複数のセグメントコイル20を複数の層状に重ねる。挿入工程では、複数の層状に重ねられた複数のセグメントコイル20を、ステータコア12の複数のスロットに挿入する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子の製造方法であって、
前記コアに形成された複数のスロットよりも幅及び長さの少なくとも一方が大きく設定された複数の集合スロットが形成された集合治具を用いて、前記複数のセグメントコイルを前記複数の層状に重ねる集合工程と、
前記複数の層状に重ねられた複数のセグメントコイルを、前記コアに形成された前記複数のスロットに挿入する挿入工程と、
を有する電機子の製造方法。
【請求項2】
各々に複数の整列スロットが形成された複数の整列治具を用いて、前記複数の層毎に個別に複数のセグメントコイルを円環状に整列する整列工程を有することを特徴とする請求項1に記載の電機子の製造方法。
【請求項3】
前記複数のセグメントコイルはチャックにより把持され、
前記チャックは上下に分割可能な構造となっており、分割された前記チャックによって前記複数のセグメントコイルのコイルエンド側とコイル先端側とを把持する把持工程を有することを特徴とする請求項1に記載の電機子の製造方法。
【請求項4】
前記複数のセグメントコイルはチャックにより把持され、
前記チャックによって前記複数のセグメントコイルのコイルエンド側を把持して抜き取った後に、前記複数のセグメントコイルの先端側を把持し直すコイル掴み直し工程を有することを特徴とする請求項1に記載の電機子の製造方法。
【請求項5】
複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子の製造方法であって、
治具を用いて円環状に整列された複数のセグメントコイルを把持チャックで把持して前記治具から抜き取った後、当該複数のセグメントコイルの脚先を土台に突き当てて、前記複数のセグメントコイルに対して前記把持チャックを脚先側へ相対移動させ、前記複数のセグメントコイルを前記把持チャックで把持し直す掴み直し工程を有する電機子の製造方法。
【請求項6】
複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子を製造する製造装置であって、
前記コアに形成された複数のスロットよりも幅及び長さの少なくとも一方が大きく設定された複数の集合スロットを有する集合治具を備え、前記複数のセグメントコイルを前記複数の層状に重ねる集合装置と、
前記複数の層状に重ねられた複数のセグメントコイルを、前記コアに形成された前記複数のスロットに挿入する挿入装置と、
を有する電機子の製造装置。
【請求項7】
各々に複数の整列スロットが形成された複数の整列治具を用いて、前記複数の層毎に個別に複数のセグメントコイルを円環状に整列する整列装置を有することを特徴とする請求項6に記載の電機子の製造装置。
【請求項8】
上下に分割可能な構造となっており、前記複数のセグメントコイルのコイルエンド側とコイル先端側とを把持するチャックを有することを特徴とする請求項6に記載の電機子の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電機子の製造方法および電機子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、複数のセグメントコイルを各層毎に円環状に整列させて整列コイルを形成する整列装置が開示されている。各層の整列コイルは、チャック治具に把持されて整列装置から取り出され、他の層の整列コイルと組み合わされ、ステータコアのスロットに挿入される。
【0003】
下記特許文献2には、多数のセグメントコイルが格納されたセグメントコイル挿入部によってセグメントコイルを挿入される治具が内径側から順次せり出すことで、複数のセグメントコイルを複数の層状に一度に整列させるセグメントコイルの円環整列装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-182339号公報
【特許文献2】特許第3975891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、各層の整列コイルを組み合わせる(集合させる)ための具体的な方法については開示されていない。
【0006】
特許文献2に開示された先行技術では、円環整列装置そのものが複雑で巨大化してしまうだけでなく、モータ一台分のセグメントコイルを整列させるために大幅に時間が掛かるため、製造効率を向上させる観点で改善の余地がある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、製造効率を向上させることができる電機子の製造方法および電機子の製造装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電機子の製造方法は、複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子の製造方法であって、前記コアに形成された複数のスロットよりも幅及び長さの少なくとも一方が大きく設定された複数の集合スロットが形成された集合治具を用いて、複数のセグメントコイルを前記複数の層状に重ねる集合工程と、前記複数の層状に重ねられた複数のセグメントコイルを、前記コアに形成された前記複数のスロットに挿入する挿入工程と、を有する。
【0009】
また、本発明に係る電機子の製造方法は、各々に複数の整列スロットが形成された複数の整列治具を用いて、前記複数の層毎に個別に複数のセグメントコイルを円環状に整列する整列工程、を有する。
【0010】
また、本発明に係る電機子の製造方法は、前記複数のセグメントコイルはチャックにより把持され、前記チャックは上下に分割可能な構造となっており、分割された前記チャックによって前記複数のセグメントコイルのコイルエンド側とコイル先端側とを把持する把持工程を有する。
【0011】
また、本発明に係る電機子の製造方法は、前記複数のセグメントコイルはチャックにより把持され、前記チャックによって前記複数のセグメントコイルのコイルエンド側を把持して抜き取った後に、前記複数のセグメントコイルの先端側を把持し直すコイル掴み直し工程を有する。
【0012】
また、本発明に係る電機子の製造方法は、複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子の製造方法であって、治具を用いて円環状に整列された複数のセグメントコイルを把持チャックで把持して前記治具から抜き取った後、当該複数のセグメントコイルの脚先を土台に突き当てて、前記複数のセグメントコイルに対して前記把持チャックを脚先側へ相対移動させ、前記複数のセグメントコイルを前記把持チャックで把持し直す掴み直し工程を有する。
【0013】
本発明に係る電機子の製造装置は、複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子を製造する製造装置であって、前記コアに形成された複数のスロットよりも幅及び長さの少なくとも一方が大きく設定された複数の集合スロットを有する集合治具を備え、複数のセグメントコイルを前記複数の層状に重ねる集合装置と、前記複数の層状に重ねられた複数のセグメントコイルを、前記コアに形成された前記複数のスロットに挿入する挿入装置と、を有する。
【0014】
また、本発明に係る電機子の製造装置は、各々に複数の整列スロットが形成された複数の整列治具を用いて、前記複数の層毎に個別に複数のセグメントコイルを円環状に整列する整列装置、を有する。
【0015】
また、本発明に係る電機子の製造装置は、上下に分割可能な構造となっており、前記複数のセグメントコイルのコイルエンド側とコイル先端側とを把持するチャックを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電機子の製造方法によれば、集合工程と挿入工程とを並行して実施することが可能となるため、製造時間を短縮することができ、製造効率が向上する。
【0017】
また、本発明に係る電機子の製造方法によれば、整列工程を、集合工程および挿入工程と並行して実施することが可能となるため、製造時間を短縮することができ、製造効率が向上する。
【0018】
また、本発明に係る電機子の製造方法によれば、上下に分割可能なチャックにより、複数のセグメントコイツのコイルエンド側とコイル先端側とを把持する把持工程を有することで、複数のセグメントコイルの脚先の位置が安定するため、複数のセグメントコイルを他の治具やコアのスロットに挿入する際に、スロットに対して脚先の狙いが付けやすくなり、製造効率が向上する。
【0019】
また、本発明に係る電機子の製造方法によれば、掴み直し工程により、複数のセグメントコイルの脚先の位置が安定するため、複数のセグメントコイルを他の治具やコアのスロットに挿入する際に、スロットに対して脚先の狙いが付けやすくなり、製造効率が向上する。
【0020】
本発明に係る電機子の製造方法によれば、掴み直し工程により、複数のセグメントコイルの脚先の位置が安定するため、複数のセグメントコイルを他の治具やコアのスロットに挿入する際に、スロットに対して脚先の狙いが付けやすくなり、製造効率が向上する。
【0021】
本発明に係る電機子の製造装置によれば、集合装置と挿入装置とを並行して稼働することが可能となるため、製造時間を短縮することができ、製造効率が向上する。
【0022】
また、本発明に係る電機子の製造装置によれば、整列装置を集合装置および挿入装置と並行稼働することが可能となるため、製造時間を短縮することができ、製造効率が向上する。
【0023】
また、本発明に係る電機子の製造装置によれば、上下に分割可能な構造で、複数のセグメントコイツのコイルエンド側とコイル先端側とを把持するチャックを有することで、複数のセグメントコイルの脚先の位置が安定するため、複数のセグメントコイルを他の治具やコアのスロットに挿入する際に、スロットに対して脚先の狙いが付けやすくなり、製造効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係る電機子の製造方法によって製造されるステータを示す斜視図である。
図2】ステータが備えるセグメントコイルの正面図である。
図3】実施形態に係る電機子の製造方法について説明するための説明図である。
図4】実施形態に係るセグメントコイル用治具である集合治具を示す断面図である。
図5】集合治具の上部を示す平面図である。
図6図5のF6-F6線に対応した断面図である。
図7A】実施形態に係るセグメントコイル用チャックである把持チャックによって整列治具からセグメントコイルを抜き取る際の状況を説明するための第1の断面図である。
図7B】把持チャックによって整列治具からセグメントコイルを抜き取る際の状況を説明するための第2の断面図である。
図7C】把持チャックによって整列治具からセグメントコイルを抜き取る際の状況を説明するための第3の断面図である。
図8】第1の比較例を示す断面図である。
図9A】実施形態に係る電機子の製造方法における掴み直し工程について説明するための第1の断面図である。
図9B】掴み直し工程について説明するための第2の断面図である。
図9C】掴み直し工程について説明するための第3の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1図9を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお各図においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。図1には、本実施形態に係る電機子の製造方法によって製造されるステータ10が斜視図にて示されている。このステータ10は、ステータコア12と、多数のセグメントコイル20とを備えている。このステータ10は、例えば図示しない回転子と共に三相交流の回転電機を構成する。
【0026】
ステータコア12は、多数枚の電磁鋼板が積層されて円筒状に形成されている。ステータコア12は、ヨーク14と、多数のティース16と、多数のスロット18とを有している。多数のティース16と多数のスロット18とは、ステータコア12の内周側において周方向に交互に並んで形成されている。多数のスロット18は、軸方向の両側及び径方向の内側が開放されている。
【0027】
図2に示されるように、セグメントコイル20は、一例として銅等からなる断面矩形状の平角線が略U字状に成形されている。このセグメントコイル20は、互いに平行に延びる一対の脚部22(図示省略)と、一対の脚部22の一端部同士を接続したコイルエンド部24とを有している。このセグメントコイル20は、一対の脚部22の先端部(脚先)以外が絶縁被膜で覆われている。
【0028】
一対の脚部22は、ステータコア12の周方向に離れた異なるスロット18に対して軸方向一方側から挿入されている。各脚部22とステータコア12との間には、図示しない絶縁部材(ここでは絶縁紙)が介在している。コイルエンド部24は、ステータコア12の軸方向一方側でスロット18の外部に配置されており、一対の脚部22の基端部同士を周方向に接続している。多数のセグメントコイル20は、ステータコア12の径方向に複数層(ここでは3層)に重ねられて円環状に整列されている。各セグメントコイル20の脚部22の先端部は、ステータコア12の軸方向他方側の端面から突出しており、ツイスト加工を施され、他のセグメントコイル20の脚部22の先端部と接合されている。
【0029】
多数のセグメントコイル20は、後述する製造方法および製造装置によって、複数の層が集合された状態で、ステータコアのスロットに一括で挿入される。本実施形態では、セグメントコイル20の3つの層が形成されている。
【0030】
なお、本実施形態では、セグメントコイル20は、断面矩形状の金属線からなる平角線によって構成されているが、これに限らず、セグメントコイルは、複数の素線からなる断面矩形状の平角線によって構成されるものでもよい。また、本実施形態では、セグメントコイル20の脚部22の先端部が、他のセグメントコイル20の脚部22の先端部と接合されているが、これに限らず、セグメントコイル20は、ステータコア12のスロット18内で他のセグメントコイル20と電気的に接合されるものでもよい。また、本実施形態では、ステータコア12が積層鋼板によって構成されているが、これに限らず、ステータコア12は、少なくとも一部が圧粉磁心で構成されるものでもよい。
【0031】
図3には、本実施形態に係る電機子の製造方法について説明するための説明図が示されている。この電機子の製造方法は、整列工程と、集合工程と、挿入工程とを有している。整列工程では、各々に複数の整列スロット(図示省略)が形成された複数(ここでは3)の整列治具30を用いて、複数(ここでは3つ)の層毎に個別に複数のセグメントコイル20を円環状に整列する。この整列工程においては、複数のセグメントコイル20は、各脚部22が整列治具30の整列スロットを周方向に一つずつずらして各整列スロットに順次挿入されて一周することにより一つの層を形成する。
【0032】
集合工程では、複数の集合スロット44が形成されたセグメントコイル用治具である集合治具40(図4図6参照)を用いて、上記のように複数の層毎に整列された複数のセグメントコイル20を複数の層状に重ねる。この集合工程では、例えば各層のセグメントコイル20は、外側の層から順に集合治具40の集合スロット44に挿入されて層状に重ねられる。これにより、複数のセグメントコイル20を一ヶ所に集合させ、ステータコア12に一括で挿入できる状態にする。
【0033】
挿入工程では、上記のように複数の層状に重ねられた複数のセグメントコイル20を、ステータコア12に形成された複数のスロット18に一括で挿入する。この際には、例えばステータコア12の上面にセグメントコイル20の脚部22の脚先を案内する治具を設ける。これにより、安定してステータコア12にセグメントコイル20を挿入可能となる。なお図3では、セグメントコイル20、整列治具30、集合治具40及びステータコア12を概略的に図示している。
【0034】
上記のように、整列工程と、集合工程と、挿入工程とに工程を分けることで、並列稼働が可能となり、1つのワークあたりの総合的なマシンタイムを短くすることができる。特に、整列工程では、各層のセグメントコイル20の整列を、順次実施するよりも、並行して実施することにより、製造時間の大幅な短縮が可能となる。さらに製造時間の効率化を図るのであれば例えば、整列工程から集合工程に移行する際に複数のセグメントコイル20を把持する把持チャックと、集合工程から挿入工程に移行する際に複数のセグメントコイル20を把持する把持チャックとを分けることで、並列稼働が可能となり、各工程でのセグメントコイル20の円環形状に把持チャックの形状を合わせやすくなる。
【0035】
図4に示されるように、集合工程で用いられる集合治具40は、リング状に形成された上部42と、円板状に形成された下部48とを有している。上部42と下部48とは、同軸上に配置されており、複数の支柱56(図7A図7C参照;図4では図示省略)によって互いに連結されている。
【0036】
図5及び図6に示されるように、上部42には、複数のセグメントコイル20の脚部22が挿入される複数のスロットである集合スロット44が形成されており、下部48には、複数の集合スロット44に挿入された複数のセグメントコイル20の脚部22の下端部が突き当てられる。なお、図5及び図6において46は、支柱56を締結固定するための締結孔である。
【0037】
集合スロット44は、ステータコア12に形成されたスロット18よりも幅及び長さの少なくとも一方(ここでは両方)が大きく設定されている。具体的には、集合スロット44は、絶縁部材である絶縁紙が挿入された状態のスロット18よりも間口が広くなっており、集合治具40にセグメントコイル20の脚部22を挿入する際の脚先精度を緩和している。
【0038】
これにより、ステータコア12に直接セグメントコイル20の脚部22を挿入するよりも、一旦集合治具40に集合させる方が挿入の作業が容易になる。また、各層のセグメントコイル20を外側の層から順に集合治具40に挿入する際に、先に挿入された層のセグメントコイル20が、後から挿入されるセグメントコイル20の邪魔にならないようにすることが容易である。
【0039】
また、図5及び図6に示されるように、集合治具40の集合スロット44は、上端の開口に向かってテーパー状に拡大するテーパー部44Aを有している。このテーパー部44Aによってセグメントコイル20の脚部22を集合スロット44内に案内することができるので、集合治具40にセグメントコイル20の脚部22を挿入する際の脚先精度をさらに緩和することができる。
【0040】
なお、本実施例の説明では、整列工程と、集合工程と、挿入工程とを有するものとして説明しているが、これに限らず、例えば整列工程を有さず、複数のセグメントコイル20を集合治具40に直接挿入することとしてもよい。その場合でも集合工程と、挿入工程とを並列稼働させることが可能となり、製造時間の短縮が可能となる。また、集合工程ではステータコア12に形成されたスロット18よりも幅及び長さの少なくとも一方が大きく形成された集合スロット44を有する集合治具40を用いているため、高精度が求められる場合に低速となってしまう従来装置の動作と比較して、装置を速く稼働させることができ、製造時間の短縮が可能となる。
【0041】
図7A図7Cには、円環状に整列された複数のセグメントコイル20を把持するためのセグメントコイル用チャックである把持チャック66が示されている。この把持チャック66は、一例として複数のセグメントコイル20を内周側及び外周側から把持する上側把持部68Uと、上側把持部68Uの下方に配置され、複数のセグメントコイル20を内周側及び外周側から把持する下側把持部68Lとに分割されると共に、上側把持部68Uと下側把持部68Lとを上下方向に相対移動させる相対移動機構70を備えている。この把持チャック66は、例えば図示しないロボットマニピュレータ等の搬送装置によって移動され、把持工程を実施する。
【0042】
上側把持部68U及び下側把持部68Lは、複数のセグメントコイル20に対して内周側から接する内周側チャック72と、複数のセグメントコイル20に対して外周側から接する外周側チャック74とを有している。外周側チャック74は、例えば複数のセグメントコイル20を内周側チャック72側へ押圧するエアシリンダ等の駆動源を含んでいる。相対移動機構70は、上側把持部68Uと下側把持部68Lとを上下方向に相対移動させるエアシリンダ等の駆動源を含んでいる。
【0043】
上記構成の把持チャック66では、例えば図7Aに示されるように、複数のセグメントコイル20を整列治具30から抜き取る際には、上側把持部68Uと下側把持部68Lとが接近した状態で上側把持部68Uにより複数のセグメントコイル20の上部(コイルエンド側)を把持する。次いで図7Bに示されるように、上側把持部68Uを下側把持部68Lに対して上昇させ、複数のセグメントコイル20の下部(コイル先端側)を下側把持部68Lの高さに配置させる。次いで、図7Cに示されるように、下側把持部68Lにより複数のセグメントコイル20の下部を把持し、その状態で把持チャック66の全体を上昇させる。これにより、整列治具30から複数のセグメントコイル20が抜き取られる。なお、集合治具40から複数のセグメントコイル20を抜き取る場合にも上記と同様に行われる。
【0044】
上記のように抜き取られた複数のセグメントコイル20は、把持チャック66の下側把持部68Lによって下部(脚先)を把持されるので、脚先の位置精度が向上する。その結果、ステータコア12にセグメントコイル20の脚部22を挿入し易くなり、ステータ10の製造効率が向上する。なお、コイルがそれ程長くない場合においては、把持チャック67の一つの把持部68によってセグメントコイル20のコイルエンド側を把持することで問題ないが、図8に示される比較例のようにセグメントコイル20の全長が特に長い場合は、セグメントコイル20が傾きやすくなる。この場合、脚先の位置を規制するものが無いため、脚先の位置が安定しなくなる。その結果、複数のセグメントコイル20の集合時や挿入時に、治具やコアのスロットに対して脚先の狙いが付けづらく、ワーク作製の難易度が高くなってしまう。この点、上記の把持チャック66では、複数のセグメントコイル20の脚先が下側把持部68Lによって把持されるため、脚先の位置が安定する。そのため上記の集合時や挿入時にスロットに対して脚先の狙いが付けやすくなり、ワーク作製が簡単になるため、不良品の発生数も減らすことができる。
【0045】
なお、図9A図9Cに示されるように、セグメントコイル20の全長が特に長い場合であって把持チャック67が一つの把持部68しか有していない場合でも、掴み直し工程を実施することで、把持チャック66を用いる場合と同程度の脚先精度を向上することができる。この掴み直し工程では、把持チャック67によって複数のセグメントコイル20を治具から抜き取った後、図9Aに示されるように、複数のセグメントコイル20の下端(脚先)を何らかの土台76に突き当てる。次いで、図9Bに示されるように、把持部68を少し緩め、複数のセグメントコイル20の脚先側へ把持部68をズラす。その後、図9Cに示されるように、把持部68によって複数のセグメントコイル20を再度把持し直す。これにより、複数のセグメントコイル20の脚先の位置が安定するため、集合時や挿入時にスロットに対して脚先の狙いが付けやすくなり、ワーク作製が容易になる。
【0046】
また、上記実施形態では、固定子であるステータが製造される場合について説明したが、回転子であるロータの製造に対しても本発明を適用可能である。
【0047】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
10 ステータ(電機子)
12 ステータコア(コア)
18 スロット
20 セグメントコイル
22 脚部
30 整列治具(整列装置)
40 集合治具(集合装置)
42 上部
44 集合スロット
44A テーパー部
48 下部
66 把持チャック
67 把持チャック
68L 下側把持部
68U 上側把持部
70 相対移動機構
76 土台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
【手続補正書】
【提出日】2023-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子の製造方法であって、
各々に複数の整列スロットが形成された複数の整列治具を用いて、前記複数の層毎に個別に複数のセグメントコイルを円環状に整列する整列工程と、
前記コアに形成された複数のスロットよりも幅及び長さの少なくとも一方が大きく設定された複数の集合スロットが形成された集合治具を用いて、前記複数のセグメントコイルを前記複数の層状に重ねる集合工程と、
前記複数の層状に重ねられた複数のセグメントコイルを、前記コアに形成された前記複数のスロットに挿入する挿入工程と、
を有し、
前記整列工程と前記集合工程と前記挿入工程とを並列稼働する電機子の製造方法。
【請求項2】
前記整列治具又は前記集合治具から前記複数のセグメントコイルを抜き取る際に前記複数のセグメントコイルをチャックにより把持する把持工程を有し、
前記チャックは上下に分割可能な構造となっており、
前記把持工程では、分割された前記チャックによって前記複数のセグメントコイルのコイルエンド側とコイル先端側とを把持することを特徴とする請求項1に記載の電機子の製造方法。
【請求項3】
前記整列治具又は前記集合治具から前記複数のセグメントコイルを抜き取る際に前記複数のセグメントコイルチャックにより把持すると共に
前記チャックによって前記複数のセグメントコイルのコイルエンド側を把持して抜き取った後に、前記複数のセグメントコイルの先端側を把持し直すコイル掴み直し工程を有することを特徴とする請求項1に記載の電機子の製造方法。
【請求項4】
複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子の製造方法であって、
治具を用いて円環状に整列された複数のセグメントコイルを把持チャックで把持して前記治具から抜き取った後、当該複数のセグメントコイルの脚先を土台に突き当てて、前記複数のセグメントコイルに対して前記把持チャックを脚先側へ相対移動させ、前記複数のセグメントコイルを前記把持チャックで把持し直す掴み直し工程を有する電機子の製造方法。
【請求項5】
複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子を製造する製造装置であって、
各々に複数の整列スロットが形成された複数の整列治具を用いて、前記複数の層毎に個別に複数のセグメントコイルを円環状に整列する整列装置と、
前記コアに形成された複数のスロットよりも幅及び長さの少なくとも一方が大きく設定された複数の集合スロットを有する集合治具を備え、前記複数のセグメントコイルを前記複数の層状に重ねる集合装置と、
前記複数の層状に重ねられた複数のセグメントコイルを、前記コアに形成された前記複数のスロットに挿入する挿入装置と、
を有し、
前記整列装置と前記集合装置と前記挿入装置とが並列稼働する電機子の製造装置
【請求項6】
上下に分割可能な構造となっており、前記複数のセグメントコイルのコイルエンド側と
コイル先端側とを把持するチャックを有し、
前記整列治具又は前記集合治具から前記複数のセグメントコイルが抜き取られる際に前記複数のセグメントコイルが前記チャックにより把持されることを特徴とする請求項5に記載の電機子の製造装置。