(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113976
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】光受信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/66 20130101AFI20240816BHJP
H04B 10/112 20130101ALI20240816BHJP
H04J 14/06 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H04B10/66
H04B10/112
H04J14/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019298
(22)【出願日】2023-02-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「空間並列チャネル伝送に向けた垂直入射型ナノハイブリッド光変調器・受信器の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石村 昇太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英憲
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA52
5K102AD15
5K102AH02
5K102AL23
5K102PH22
5K102PH24
5K102PH25
5K102PH31
5K102PH49
(57)【要約】
【課題】光受信装置の方向を信号光の方向に調整することなく、2つのストークスパラメータの値により情報を復調できる様にする。
【解決手段】光受信装置は、第1円偏波の変調光と前記第1円偏波とは直交する第2円偏波の連続光とを偏波多重した信号光を少なくとも第1信号光と第2信号光とに分岐する分岐手段と、前記第1信号光のストークスパラメータS
1の値と、前記第2信号光のストークスパラメータS
2の値と、に基づき前記変調光を復調する復調手段と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1円偏波の変調光と前記第1円偏波とは直交する第2円偏波の連続光とを偏波多重した信号光を少なくとも第1信号光と第2信号光とに分岐する分岐手段と、
前記第1信号光のストークスパラメータS1の値と、前記第2信号光のストークスパラメータS2の値と、に基づき前記変調光を復調する復調手段と、
を備えている、光受信装置。
【請求項2】
前記復調手段は、
前記第1信号光が入力される第1検出手段と、
半波長板を介して前記第2信号光が入力される第2検出手段と、
を備え、
前記第1検出手段及び前記第2検出手段は、それぞれ、
入力される光を第1直線偏波の第1光と前記第1直線偏波とは直交する第2直線偏波の第2光に分離する分離手段と、
前記第1光を光電変換した信号と前記第2光を光電変換した信号との差分を出力する出力手段と、
を備え、
前記半波長板の遅軸と前記第1直線偏波の偏波面との角度は、22.5度、112.5度、202.5度、又は、292.5度である、請求項1に記載の光受信装置。
【請求項3】
第1円偏波の変調光と前記第1円偏波とは直交する第2円偏波の連続光とを偏波多重した第1信号光を、第1直線偏波の前記変調光と前記第1直線偏波とは直交する第2直線偏波の前記連続光とを偏波多重した第2信号光に変換する変換手段と、
前記第2信号光を、少なくとも第3信号光と第4信号光とに分岐する分岐手段と、
前記第3信号光のストークスパラメータS2の値と、前記第4信号光のストークスパラメータS3の値と、に基づき、前記変調光を復調する復調手段と、
を備えている、光受信装置。
【請求項4】
前記復調手段は、
半波長板を介して前記第3信号光が入力される第1検出手段と、
1/4波長板を介して前記第4信号光が入力される第2検出手段と、
を備え、
前記第1検出手段及び前記第2検出手段は、それぞれ、
入力される光を前記第1直線偏波の第1光と前記第2直線偏波の第2光に分離する分離手段と、
前記第1光を光電変換した信号と前記第2光を光電変換した信号との差分を出力する出力手段と、
を備え、
前記半波長板の遅軸と前記第1直線偏波の偏波面との角度は、22.5度、112.5度、202.5度、又は、292.5度であり、
前記1/4波長板の遅軸と前記第1直線偏波の偏波面との角度は、45度、135度、225度、又は、315度である、請求項3に記載の光受信装置。
【請求項5】
第1円偏波の変調光と前記第1円偏波とは直交する第2円偏波の連続光とを偏波多重した第1信号光を、第1直線偏波の前記変調光と前記第1直線偏波とは直交する第2直線偏波の前記連続光とを偏波多重した第2信号光に変換する変換手段と、
前記第2信号光を、少なくとも第3信号光と第4信号光とに分岐する分岐手段と、
前記第3信号光のストークスパラメータS1の値と、前記第4信号光のストークスパラメータS3の値と、に基づき、前記変調光を復調する復調手段と、
を備えている、光受信装置。
【請求項6】
前記復調手段は、
前記第3信号光が入力される第1検出手段と、
1/4波長板を介して前記第4信号光が入力される第2検出手段と、
を備え、
前記第1検出手段は、
入力される光を第3直線偏波の第1光と前記第3直線偏波とは直交する第4直線偏波の第2光に分離する第1分離手段と、
前記第1光を光電変換した信号と前記第2光を光電変換した信号との差分を出力する第1出力手段と、
を備え、
前記第2検出手段は、
入力される光を前記第1直線偏波の第3光と前記第2直線偏波の第4光に分離する分離手段と、
前記第3光を光電変換した信号と前記第4光を光電変換した信号との差分を出力する第2出力手段と、
を備え、
前記第1直線偏波の偏波面と前記第3直線偏波の偏波面との角度は、45度、135度、225度、又は、315度であり、
前記1/4波長板の遅軸と前記第1直線偏波の偏波面との角度は、45度、135度、225度、又は、315度である、請求項5に記載の光受信装置。
【請求項7】
第1円偏波の第1変調光と前記第1円偏波とは直交する第2円偏波の第2変調光とを偏波多重した第1信号光を、第1直線偏波の前記第1変調光と前記第1直線偏波とは直交する第2直線偏波の前記第2変調光とを偏波多重した第2信号光に変換する変換手段と、
連続光を生成する光源と、
前記第2信号光と前記連続光とに基づき、前記第1直線偏波の前記第1変調光と前記第2直線偏波の前記連続光とを偏波多重した第3信号光と、前記第1直線偏波の前記連続光と前記第2直線偏波の前記第2変調光とを偏波多重した第4信号光と、を生成する生成手段と、
前記第3信号光を、少なくとも第5信号光と第6信号光とに分岐する第1分岐手段と、
前記第5信号光のストークスパラメータS1又はS2の値と、前記第6信号光のストークスパラメータS3の値と、に基づき、前記第1変調光を復調する第1復調手段と、
前記第4信号光を、少なくとも第7信号光と第8信号光とに分岐する第2分岐手段と、
前記第7信号光のストークスパラメータS1又はS2の値と、前記第8信号光のストークスパラメータS3の値と、に基づき、前記第2変調光を復調する第2復調手段と、
を備えている、光受信装置。
【請求項8】
前記生成手段は、偏波ビームスプリッタである、請求項7に記載の光受信装置。
【請求項9】
前記第1復調手段は、
半波長板を介して前記第5信号光が入力される第1検出手段と、
1/4波長板を介して前記第6信号光が入力される第2検出手段と、
を備え、
前記第1検出手段及び前記第2検出手段は、それぞれ、
入力される光を前記第1直線偏波の第1光と前記第2直線偏波の第2光に分離する第1分離手段と、
前記第1分離手段が分離した前記第1光を光電変換した信号と前記第1分離手段が分離した前記第2光を光電変換した信号との差分を出力する第1出力手段と、
を備え、
前記第1検出手段の前記半波長板の遅軸と前記第1直線偏波の偏波面との角度は、22.5度、112.5度、202.5度、又は、292.5度であり、
前記第2検出手段の前記1/4波長板の遅軸と前記第1直線偏波の偏波面との角度は、45度、135度、225度、又は、315度である、請求項7に記載の光受信装置。
【請求項10】
前記第1復調手段は、
前記第5信号光が入力される第1検出手段と、
1/4波長板を介して前記第6信号光が入力される第2検出手段と、
を備え、
前記第1検出手段は、
入力される光を第3直線偏波の第3光と前記第3直線偏波とは直交する第4直線偏波の第4光に分離する第1分離手段と、
前記第1分離手段が分離した前記第3光を光電変換した信号と前記第1分離手段が分離した前記第4光を光電変換した信号との差分を出力する第1出力手段と、
を備え、
前記第2検出手段は、
入力される光を前記第1直線偏波の第1光と前記第2直線偏波の第2光に分離する第2分離手段と、
前記第2分離手段が分離した前記第1光を光電変換した信号と前記第2分離手段が分離した前記第2光を光電変換した信号との差分を出力する第2出力手段と、
を備え、
前記第1直線偏波の偏波面と前記第3直線偏波の偏波面との角度は、45度、135度、225度、又は、315度であり、
前記第2検出手段の前記1/4波長板の遅軸と前記第1直線偏波の偏波面との角度は、45度、135度、225度、又は、315度である、請求項7に記載の光受信装置。
【請求項11】
前記第2復調手段は、
半波長板を介して前記第7信号光が入力される第3検出手段と、
1/4波長板を介して前記第8信号光が入力される第4検出手段と、
を備え、
前記第3検出手段及び前記第4検出手段は、それぞれ、
入力される光を前記第1直線偏波の第1光と前記第2直線偏波の第2光に分離する第3分離手段と、
前記第3分離手段が分離した前記第1光を光電変換した信号と前記第3分離手段が分離した前記第2光を光電変換した信号との差分を出力する第3出力手段と、
を備え、
前記第3検出手段の前記半波長板の遅軸と前記第1直線偏波の偏波面との角度は、22.5度、112.5度、202.5度、又は、292.5度であり、
前記第4検出手段の前記1/4波長板の遅軸と前記第1直線偏波の偏波面との角度は、45度、135度、225度、又は、315度である、請求項9又は10に記載の光受信装置。
【請求項12】
前記第2復調手段は、
前記第7信号光が入力される第3検出手段と、
1/4波長板を介して前記第8信号光が入力される第4検出手段と、
を備え、
前記第3検出手段は、
入力される光を第3直線偏波の第3光と前記第3直線偏波とは直交する第4直線偏波の第4光に分離する第3分離手段と、
前記第3分離手段が分離した前記第3光を光電変換した信号と前記第3分離手段が分離した前記第4光を光電変換した信号との差分を出力する第3出力手段と、
を備え、
前記第2検出手段は、
入力される光を前記第1直線偏波の第1光と前記第2直線偏波の第2光に分離する第4分離手段と、
前記第4分離手段が分離した前記第1光を光電変換した信号と前記第4分離手段が分離した前記第2光を光電変換した信号との差分を出力する第4出力手段と、
を備え、
前記第1直線偏波の偏波面と前記第3直線偏波の偏波面との角度は、45度、135度、225度、又は、315度であり、
前記第2検出手段の前記1/4波長板の遅軸と前記第1直線偏波の偏波面との角度は、45度、135度、225度、又は、315度である、請求項9又は10に記載の光受信装置。
【請求項13】
前記変換手段は、1/4波長板である、請求項3から8のいずれか1項に記載の光受信装置。
【請求項14】
第1円偏波の変調光と前記第1円偏波とは直交する第2円偏波の連続光とを偏波多重した第1信号光を、第1直線偏波の前記変調光と前記第1直線偏波とは直交する第2直線偏波の前記連続光とを偏波多重した第2信号光に変換する変換手段と、
前記第2信号光を、少なくとも第3信号光と第4信号光とに分岐する分岐手段と、
前記変調光を復調する復調手段と、
を備え、
前記復調手段は、
前記第3信号光が入力される第1検出手段と、
1/4波長板を介して前記第4信号光が入力される第2検出手段と、
を備え、
前記第1検出手段は、
入力される光を第3直線偏波の第1光と前記第3直線偏波とは直交する第4直線偏波の第2光に分離する第1分離手段と、
前記第1光を光電変換した信号と前記第2光を光電変換した信号との差分を出力する第1出力手段と、
を備え、
前記第2検出手段は、
入力される光を前記第1直線偏波の第3光と前記第2直線偏波の第4光に分離する分離手段と、
前記第3光を光電変換した信号と前記第4光を光電変換した信号との差分を出力する第2出力手段と、
を備え、
前記第1直線偏波の偏波面と前記第3直線偏波の偏波面との角度は、45度、135度、225度、又は、315度であり、
前記1/4波長板の遅軸と前記第1直線偏波の偏波面との角度は、45度、135度、225度、又は、315度であり、
前記復調手段は、前記第1出力手段の出力と、前記第2出力手段の出力と、に基づき前記変調光を復調する、光受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、ストークスベクトル検波方式の光受信装置を用いた光通信システムを開示している。この光通信システムにおいて、光送信装置は、互いに直交する2つの直線偏波のうちの一方のX偏波の連続光(無変調光)と、他方のY偏波の変調光と、を合波することで信号光を生成する。そして、光送信装置は、光ファイバを介して、生成した信号光を光受信装置に送信する。光受信装置は、受信した信号光のストークスパラメータS2及びS3を求め、S2及びS3の値から光送信装置が送信した情報を復調する。
【0003】
また、非特許文献2は、光ファイバを用いることなく、信号光を空間伝送する空間光通信システムを開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Qian Hu,et al.,"Advanced modulation formats for high performance short reach optical interconnects",OPTICS EXPRESS,Vol.23,No.3,pp.3245-3259,2015年
【非特許文献2】K.Matsuda,et al.,"Demonstration of a Real-Time 14Tb/s Multi-Aperture Transmit Single-Aperture Receive FSO System With Class 1 Eye-Safe Transmit Intensity",in Journal of Lightwave Technology,vol.40,no.5,pp.1494-1501,2022年3月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7(A)は、非特許文献1が開示する光受信装置の説明図である。信号光は、カップラ1で第1信号光、第2信号光及び第3信号光に3分岐される。第1信号光、第2信号光及び第3信号光は、それぞれ、第1パス、第2パス及び第3パスに出力される。第1パスに出力された第1信号光は、直接、検出器5に入力される。第2パスに出力された第2信号光は、半波長板(HWP)2を介して検出器5に入力される。第3パスに出力された第3信号光は、1/4波長板(QWP)3を介して検出器5に入力される。
【0006】
図7(B)は、検出器5の構成図である。偏波ビームスプリッタ(PBS)51は、入力される光を、第1直線偏波の第1光と、第1直線偏波とは直交する第2直線偏波の第2光とに偏波分離する。第1光は、フォトダイオード(PD)52に入力され、第2光は、PD53に入力される。PD52及びPD53は、入力される光の光電変換を行って電気信号を出力する。減算部54は、PD52からの電気信号とPD53からの電気信号との差分を出力する。PD52、PD53及び減算部54は、所謂、バランスドPDを構成している。
【0007】
以下の説明においては、検出器5のPBS51が出力する第1直線偏波の電界方向(偏波面の方向)を"光受信装置の第1方向"と表記する。光受信装置のHWP2の遅軸は、光受信装置の第1方向に対して22.5度の角度となる様に配置される。HWP2の遅軸に対する角度がXである直線偏波の光を入力すると、HWP2は、その偏波面を角度2Xだけ回転させた直線偏波を出力する。光受信装置のQWP3の遅軸は、光受信装置の第1方向に対して45度の角度となる様に配置される。QWP3の遅軸に対する角度が45度の直線偏波をQWP3に入力すると、QWP3は、入力される直線偏波を円偏波に変換して出力する。なお、HWP2及びQWP3の遅軸の角度は、上述した値に対して90の整数倍を加えた値であっても良い。つまり、HWP2の遅軸は、第1方向に対して、22.5度、112.5度、202.5度、又は、292.5度にし得る。同様に、QWP3の遅軸は、第1方向に対して、45度、135度、225度、又は、315度にし得る。
【0008】
図7(A)に示す様に、第1パスの検出器5の出力は、ストークスパラメータS
1を示す。また、上記の様にHWP2の遅軸を設定することで、第2パスの検出器5の出力は、ストークスパラメータS
2を示す。さらに、上記の様にQWP3の遅軸を設定することで、第3パスの検出器5の出力は、ストークスパラメータS
3を示す。
【0009】
例えば、信号光に含まれる連続光の偏波方向を、光受信装置の第1方向に対して90度の整数倍に一致させる。つまり、連続光の偏波方向(電界方向)と、光受信装置の第1方向との角度を0、90、180、270のいずれかにする。以下、この状態を"信号光の方向と光受信装置の方向が一致している"と表記する。以下では、基本的には、信号光に含まれる連続光の偏波方向を、光受信装置の第1方向に一致させたものとして説明する。この場合、連続光の電界成分をExとして、変調光の電界成分をEyとすると、ストークスパラメータS1、S2及びS3は、それぞれ、以下の式で示す値になる。
S1=|Ex|2-|Ey|2 (1)
S2=2Re(Ex×Ey*) (2)
S3=2Im(Ex×Ey*) (3)
なお、式(2)の"Re(A)"は、複素数Aの実数部分を取り出す関数であり、式(3)の"Im(A)"は、複素数Aの虚数部分を取り出す関数である。また、Ey*は、Eyの複素共役である。
【0010】
ストークスパラメータS
2及びS
3は、それぞれ、変調光と連続光のビート成分であり、光受信装置は、S
2+jS
3の値を求めることで、光送信装置が送信した情報を復調することができる。信号光の方向と光受信装置の方向が一致している場合、ストークスパラメータS
1は情報の復調に必要ではないため、
図7の第1パスを省略できる。一方、信号光の方向と光受信装置の方向を一致させることが難しい場合、値の補正のためにストークスパラメータS
1が必要となり、
図7の第1パスを省略することはできない。
【0011】
例えば、空間光通信システム等、信号光の方向と光受信装置の方向を一致させることが難しい場合がある。この様な場合、光受信装置には、3つのストークスパラメータS1、S2及びS3を出力する3つのパスが必要となる。
【0012】
本開示は、光受信装置の方向を信号光の方向に調整することなく、2つのストークスパラメータの値により情報を復調できる様にする技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様によると、光受信装置は、第1円偏波の変調光と前記第1円偏波とは直交する第2円偏波の連続光とを偏波多重した信号光を少なくとも第1信号光と第2信号光とに分岐する分岐手段と、前記第1信号光のストークスパラメータS1の値と、前記第2信号光のストークスパラメータS2の値と、に基づき前記変調光を復調する復調手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本開示によると、光受信装置の方向を信号光の方向に調整することなく、2つのストークスパラメータの値により情報を復調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】幾つかの実施形態による、光送信装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0017】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による光送信装置の構成図である。光源11は直線偏波の連続光を生成する。光源11が生成した連続光は、偏波分離器12で、X偏波の第1連続光と、X偏波とは直交するY偏波の第2連続光と、に分離される。なお、第1連続光と第2連続光の振幅が等しくなる様に、偏波分離器12は、入力される連続光を分離する構成とし得る。偏波分離器12が出力する第1連続光は、偏波多重器14に入力される。一方、偏波分離器12が出力する第2連続光は、変調器13に入力される。変調器13は、送信するデータで第2連続光を変調し、変調光を偏波多重器14に出力する。偏波多重器14は、X偏波の第1連続光と、Y偏波の変調光と、を偏波多重した多重信号光を変換器15に出力する。
【0018】
変換器15は、X偏波及びY偏波の光を、それぞれ、互いに直交する円偏波の光に変換する。一例として、変換器15は、X偏波の光を右旋回偏波に変換し、Y偏波の光を左旋回偏波に変換する。変換器15は、例えば、QWPであり得る。変換器15は、互いに直交する円偏波の連続光と変調光とを偏波多重した信号光を、例えば、空間を介して光受信装置に送信する。
【0019】
図2は、本実施形態による光受信装置の構成図である。光受信装置は、カップラ21と、復調部200と、を有する。カップラ21は、光送信装置から受信する信号光を、少なくとも、第1信号光と第2信号光の2つの信号光に分岐して復調部200に出力する分岐部である。復調部200において、第1信号光は、直接、検出器5に入力される。一方、第2信号光は、HWP2を介して検出器5に入力される。検出器5は、
図7(B)と同様である。
図2の光受信装置についても、検出器5のPBS51が出力する偏波の方向に基づき第1方向が定義される。HWP2の遅軸は、第1方向に対して22.5度に設定される。つまり、
図2の光受信装置は、
図7に示す第1パスと第2パスを有するが第3パスを有さない。光受信装置は、第1パスの検出器5が出力するストークスパラメータS
1の値と、第2パスの検出器5が出力するストークスパラメータS
2の値と、に基づき光送信装置が送信した情報を復調する。
【0020】
以下、第1パスの検出器5及び第2パスの検出器5の出力に基づき光送信装置が送信した情報を復調できる理由について説明する。連続光の電界成分をExとし、変調光の電界成分をEyとすると、連続光と変調光は互いに回転方向の異なる円偏波であるため、信号光は、以下のジョーンズベクトルで表される。
【0021】
【0022】
したがって、
図2の光受信装置の第1パスの検出器5の出力Aは、式(1)におけるExを(1/√2)(Ex+Ey)とし、Eyをj(1/√2)(Ex-Ey)としたものになる。したがって、第1パスの検出器5の出力Aは、以下の式(4)の通りとなる。
【0023】
【0024】
同様に、
図2の光受信装置の第2パスの検出器5の出力Bは、式(2)におけるExを(1/√2)(Ex+Ey)とし、Eyをj(1/√2)(Ex-Ey)としたものになる。したがって、第2パスの検出器5の出力Bは、以下の式(5)の通りとなる。
【0025】
【0026】
式(5)及び式(6)に示す様に、第1パスの検出器5の出力Aは、式(2)の値に対応し、第2パスの検出器5の出力Bは、式(3)の値に対応する。したがって、光受信装置2は、2つのストークスパラメータの値により情報を復調することができる。
【0027】
以上、本実施形態では、光受信装置の方向を信号光に対して調整することなく、2つのストークスパラメータの値により情報を復調することができる。
【0028】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態の光送信装置の構成は第一実施形態と同様である。
図3は、本実施形態による光受信装置の構成図である。
【0029】
本実施形態による光受信装置は、QWP22と、カップラ21と、復調部201と、を有する。復調部201は、
図7(A)に示す、ストークスパラメータS
2の値を検出するための第2パスと、ストークスパラメータS
3の値を検出するための第3パスと、を有する。第2パス及び第3パスに設けられるHWB2及びQWP3の遅軸の方向は、
図7(A)で説明した通りである。本実施形態の光受信装置も、検出器5のPBS51が出力する偏波の方向に基づき第1方向が定義される。なお、光受信装置の第1方向は、復調部201の第1方向としても参照され得る。
【0030】
QWP22は、受信する円偏波の信号光を直線偏波に変換する。直線偏波の信号光は、互いに直交する直線偏波の連続光と変調光とを含む。QWP22は、その遅軸が第1方向に対して90度の整数倍となる様に設けられる。言い換えると、QWP22は、円偏波の光が入力された場合、その旋回方向に応じて、第1直線偏波又は第2直線偏波の光をカップラ21に出力する様に設けられる。よって、カップラ21に入力される連続光の偏波の方向は、第1方向に対して90度の整数倍となる。したがって、
図7(A)で説明した様に、第2パスの検出器5は、式(2)対応する値を出力し、第3パスの検出器5は、式(3)に対応する値を出力する。したがって、光受信装置2は、光受信装置の方向を信号光に対して調整することなく、2つのストークスパラメータの値により情報を復調することができる。
【0031】
<第三実施形態>
続いて、第三実施形態について第一実施形態及び第二実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態の光送信装置の構成は第一実施形態と同様である。
図4は、本実施形態による光受信装置の構成図である。
【0032】
本実施形態による光受信装置は、QWP22と、カップラ21と、復調部202と、を有する。復調部202は、
図7(A)に示す、ストークスパラメータS
1の値を検出するための第1パスと、ストークスパラメータS
3の値を検出するための第3パスと、を有する。本実施形態の光受信装置では、第3パスの検出器5のPBS51が出力する偏波の方向に基づき第1方向が定義される。なお、光受信装置の第1方向は、復調部202の第1方向としても参照され得る。また、本実施形態では、第1パスを第3パスに対して45度だけ回転させる。つまり、第1パスの検出器5のPBS51が出力する第3直線偏波と、第3直線偏波とは直交する第4直線偏波の偏波面は、第3パスの検出器5のPBS51が出力する第1直線偏波及び第2直線偏波の偏波面と45度の角度を有する。
【0033】
QWP22は、第二実施形態と同様であり、円偏波を第1直線偏波又は第2直線偏波に変換する。第3パスは、第二実施形態と同様であり、第3パスの検出器5は、式(3)に対応する値を出力する。一方、本実施形態では、第1パスの検出器51には、そのPBS51が出力する2つの直線偏波に対して45度だけ回転させた偏波の直線偏波の信号光が入力される。これは、第二実施形態における第2パスの検出器5に入力される信号光と同じである。よって、第1パスの検出器5は、式(2)に対応する値を出力する。したがって、光受信装置2は、光受信装置の方向を信号光に対して調整することなく、2つのストークスパラメータの値により情報を復調することができる。
【0034】
なお、本実施形態の第1パスの検出器5は、第3パスの検出器に対して45度だけ回転させて設けられる。このため、復調部202の全体として考えると、第1パスは、ストークスパラメータS1の値を検出するものではなく、ストークスパラメータS2の値を検出するものと見做すこともできる。言い換えると、本実施形態の第1パスは、第二実施形態の第2パスに設けられたHWP2を省略する代わりに、第二実施形態の第2パスの検出器5を45度だけ回転させたものと見做すことができる。しかしながら、第1パスのみを見ると、HWP2がもうけられていないため、本実施形態では、第1パスがストークスパラメータS1の値を検出するものとしている。なお、第1パスが検出するものが、ストークスパラメータS1であっても、ストークスパラメータS2であっても、2つのストークスパラメータ(S1又はS2と、S3)のみを使用して情報を復調することには変わりない。
【0035】
<第四実施形態>
続いて、第四実施形態について、第二実施形態及び第三実施形態との相違点を中心に説明する。
図5は、本実施形態による光送信装置の構成図である。なお、以下では、
図1に示す光送信装置との構成との相違点を中心に説明する。本実施形態では、偏波分離器12が出力する第1連続光も変調器13で変調する。したがって、光送信装置は、互いに直交する円偏波の変調光を偏波多重した信号光を光受信装置に送信する。
【0036】
図6は、本実施形態による光受信装置の構成図である。本実施形態の光受信装置2は、光源24と、QWP22と、PBS25と、2つのカップラ21と、2つの復調部201を有する。本実施形態では、2つの復調部201の第1方向を一致させるものとする。しかしながら、一方の復調部201の第1方向と、他方の復調部201の第1方向との角度が90度の整数倍であれば良い。
【0037】
QWP22は、第二実施形態と同様である。つまり、QWP22の遅軸は、光受信装置の第1方向に対して90度の整数倍となる様に設けられる。したがって、QWP22は、第1直線偏波の変調光と第2直線偏波の変調光とを多重した偏波多重光をPBS25に出力する。第1直線偏波の変調光と第2直線偏波の変調光の内の一方は、光送信装置におけるX偏波の変調光であり、他方は、光送信装置におけるY偏波の変調光である。光源24は、無変調の連続光である局所光を生成してPBS25に出力する。PBS25が第1直線偏波の変調光と第2直線偏波の局所光を偏波多重した信号光を生成して一方のカップラ21に出力し、第2直線偏波の変調光と第1直線偏波の局所光を偏波多重した信号光を生成して他方のカップラ21に出力する様に光源24及びPBS25は設けられる。したがって、第二実施形態で説明した様に、2つの復調部201は、それぞれ、光送信装置におけるX偏波の変調光と、Y偏波の変調光との復調を行うことができる。
【0038】
なお、第三実施形態の構成を本実施形態に適用することもできる。この場合、
図6の復調部201は、復調部202となる。また、2つの復調部の内の一方を第二実施形態の復調部201とし、他方を第三実施形態の復調部202とすることもできる。
【0039】
以上、本実施形態でも、光受信装置の方向を信号光に対して調整することなく、2つのストークスパラメータの値により情報を復調することができる。また、本実施形態では、光通信システムの伝送容量を第一実施形態から第三実施形態の光通信システムより増加させることができる。
【0040】
以上の構成により、光受信装置の方向を信号光の方向に調整することなく、2つのストークスパラメータの値により情報を復調することができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0041】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
21:カップラ、2:半波長板、5:検出器、200:復調部