(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113978
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】胃瘻カテーテル、及び、胃瘻カテーテルキット
(51)【国際特許分類】
A61J 15/00 20060101AFI20240816BHJP
A61M 39/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A61J15/00 Z
A61M39/02 112
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019302
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】有川 清貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
(72)【発明者】
【氏名】小城 康雅
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】福島 寛満
【テーマコード(参考)】
4C047
4C066
【Fターム(参考)】
4C047NN16
4C066AA05
4C066BB01
4C066DD01
4C066FF01
(57)【要約】
【課題】カプセルカバーが、意図しないタイミングでカテーテル本体から脱落してしまうことを抑制可能な胃瘻カテーテルを提供する。
【解決手段】胃瘻カテーテル100は、ルーメン11が設けられたシャフト10と体表当接部20とを有するカテーテル本体1と、シャフト10の下端部に設けられていて胃内で拡張するバンパ50と、バンパ50を収縮状態に維持させるカプセルカバー70と、を備え、胃瘻カテーテル100は、留置の際にカプセルカバー70がカテーテル本体1から離脱しバンパ50が拡張する胃瘻カテーテルであって、留置前においてカテーテル本体1からのカプセルカバー70の脱落を規制する脱落規制部90を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーメンが設けられたシャフトと体表当接部とを有するカテーテル本体と、前記シャフトの下端部に設けられていて胃内で拡張するバンパと、前記バンパを収縮状態に維持させるカプセルカバーと、を備え、留置の際に前記カプセルカバーが前記カテーテル本体から離脱し前記バンパが拡張する胃瘻カテーテルであって、
留置前において前記カテーテル本体からの前記カプセルカバーの脱落を規制する脱落規制部を有する胃瘻カテーテル。
【請求項2】
前記シャフトにおいて前記カプセルカバーの上端部が嵌合する部位である上端嵌合部位は、当該シャフトにおける他部よりも径方向外側に突出した外方突出部を有し、前記脱落規制部を構成している請求項1に記載の胃瘻カテーテル。
【請求項3】
前記外方突出部は、前記シャフトの軸周りに周回状に形成されている請求項2に記載の胃瘻カテーテル。
【請求項4】
前記上端嵌合部位の外面の表面粗さは、前記バンパの外面の表面粗さよりも小さい請求項2又は3に記載の胃瘻カテーテル。
【請求項5】
前記上端嵌合部位の外面の表面粗さは、前記シャフトにおける他部の表面粗さよりも小さい請求項2又は3に記載の胃瘻カテーテル。
【請求項6】
前記上端嵌合部位の外面には鏡面加工が施されている請求項4に記載の胃瘻カテーテル。
【請求項7】
前記脱落規制部は、前記カプセルカバーを前記カテーテル本体に対して拘束している糸部材を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の胃瘻カテーテル。
【請求項8】
前記脱落規制部は、前記カプセルカバーの上端部を前記シャフトに対して接着している接着部を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の胃瘻カテーテル。
【請求項9】
前記カプセルカバーの外面は、径方向外方に向けて突出したカバー外方突出部を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の胃瘻カテーテル。
【請求項10】
前記カプセルカバーの外形の横断面形状が多角形状である請求項9に記載の胃瘻カテーテル。
【請求項11】
前記カプセルカバーの内腔の横断面形状が円形である請求項10に記載の胃瘻カテーテル。
【請求項12】
請求項9に記載の胃瘻カテーテルと、
前記胃瘻カテーテルを瘻孔に挿入するのに先だって前記瘻孔に設置される胃瘻シースと、
を備え、
前記胃瘻シースは、当該胃瘻シースの軸方向に延在する破断部を有し、
前記胃瘻シースに前記カプセルカバーが押し込まれることにより当該胃瘻シースが前記破断部に沿って裂ける胃瘻カテーテルキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃瘻カテーテル、及び、胃瘻カテーテルキットに関する。
【背景技術】
【0002】
胃瘻カテーテルとしては、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1の胃瘻カテーテルは、ルーメンが設けられたシャフトと体表当接部とを有するカテーテル本体と、シャフトの下端部に設けられていて胃内で拡張するバンパと、バンパを収縮状態に維持させるカプセルカバーと、を備え、留置の際にカプセルカバーがカテーテル本体から離脱しバンパが拡張する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の検討によれば、特許文献1の胃瘻カテーテルは、カプセルカバーが、意図しないタイミングでカテーテル本体から脱落してしまうことを抑制する観点で、なお改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、カプセルカバーが、意図しないタイミングでカテーテル本体から脱落してしまうことをより確実に抑制可能な胃瘻カテーテル、及び、胃瘻カテーテルキットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ルーメンが設けられたシャフトと体表当接部とを有するカテーテル本体と、前記シャフトの下端部に設けられていて胃内で拡張するバンパと、前記バンパを収縮状態に維持させるカプセルカバーと、を備え、留置の際に前記カプセルカバーが前記カテーテル本体から離脱し前記バンパが拡張する胃瘻カテーテルであって、
留置前において前記カテーテル本体からの前記カプセルカバーの脱落を規制する脱落規制部を有する胃瘻カテーテルが提供される。
【0007】
また、本発明によれば、上記の胃瘻カテーテルと、
前記胃瘻カテーテルを瘻孔に挿入するのに先だって前記瘻孔に設置される胃瘻シースと、
を備え、
前記胃瘻シースは、当該胃瘻シースの軸方向に延在する破断部を有し、
前記胃瘻シースに前記カプセルカバーが押し込まれることにより当該胃瘻シースが前記破断部に沿って裂ける胃瘻カテーテルキットが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カプセルカバーが、意図しないタイミングでカテーテル本体から脱離してしまうことをより確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る胃瘻カテーテルの斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る胃瘻カテーテルの縦断面図である。
【
図4】
図4(a)は第1実施形態における胃瘻シースの斜視図であり、
図4(b)は第1実施形態における胃瘻シースの縦断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る胃瘻カテーテルキットを示す図であり、胃瘻カテーテルを正面図、胃瘻シースを斜視図で示す。
【
図6】第1実施形態に係る胃瘻カテーテルキットを示す図であり、カプセルカバーが胃瘻シースに押し込まれた状態を示す。
【
図7】第1実施形態に係る胃瘻カテーテルキットの動作を説明するための図であり、瘻孔530に設置された胃瘻シースに胃瘻カテーテルが挿入される前の状態を示す。
【
図8】第1実施形態に係る胃瘻カテーテルキットの動作を説明するための図であり、オブチュレータが装着された胃瘻カテーテルが瘻孔に挿入された状態を示す。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は第1実施形態に係る胃瘻カテーテルキットの動作を説明するための図であり、このうち
図9(a)は内管部が外管部に対して相対的に下方に押し込まれた状態を示し、
図9(b)はオブチュレータが胃瘻カテーテルから抜去された状態を示す。
【
図10】第2実施形態に係る胃瘻カテーテルの斜視図である。
【
図12】第2実施形態の変形例に係る胃瘻カテーテルの斜視図である。
【
図14】第3実施形態に係る胃瘻カテーテルの上端嵌合部位の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0011】
〔第1実施形態〕
先ず、
図1から
図9(b)を用いて第1実施形態を説明する。なお、
図2、
図7~
図9(b)は、シャフト10の軸方向に沿った断面図である。また、
図4(b)は、胃瘻シース300の軸方向に沿った断面図である。
また、本発明の胃瘻カテーテル100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
また、以下の説明では、
図2における下方向が下方、上方向が上方であるものとする。また、シャフト10の軸方向を単に軸方向と称し、シャフト10の径方向を単に径方向と称する場合がある。更に、シャフト10の周方向を単に周方向と称する場合がある。
【0012】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る胃瘻カテーテル100は、ルーメン11が設けられたシャフト10と体表当接部20とを有するカテーテル本体1と、シャフト10の下端部に設けられていて胃内で拡張するバンパ50と、バンパ50を収縮状態に維持させるカプセルカバー70と、を備えている。
更に、胃瘻カテーテル100は、留置の際にカプセルカバー70がカテーテル本体1から離脱しバンパ50が拡張する胃瘻カテーテルであって、留置前においてカテーテル本体1からのカプセルカバー70の脱落を規制する脱落規制部90を有する。
【0013】
胃瘻カテーテル100が留置される前の状態において、バンパ50は径方向に収縮した収縮状態(折り畳まれた状態)でカプセルカバー70の内部に収容されている。
胃瘻カテーテル100を留置する際には、先ず、腹壁510及び胃壁520を貫通して形成される瘻孔530の内腔にシャフト10の下端部を挿入し、胃内にバンパ50を配置する。バンパ50が胃内における所望に位置に配置された状態で、挿入治具(例えば、
図5等に示すオブチュレータ200)によってカプセルカバー70をバンパ50から脱離させることにより、バンパ50は、その弾性復元力によって径方向に拡張し胃壁520に対して係止される。これにより、胃瘻カテーテル100が留置される。
【0014】
本実施形態によれば、胃瘻カテーテル100は、留置前においてカテーテル本体1からのカプセルカバー70の脱落を規制する脱落規制部90を有する。
それぞれ詳細は後述するが、脱落規制部90としては、例えば、外方突出部18、鏡面加工、糸部材95及び接着部96が挙げられる。
このため、例えば、瘻孔530にシャフト10の下端部を挿入する際や、留置前の位置調整のために瘻孔530からシャフト10の下端部を一旦抜去する際などに、カプセルカバー70がカテーテル本体1から意図しないタイミングで脱離してしまうことをより確実に抑制できる。このため、胃瘻カテーテル100を胃内における所望の部位により確実に留置することができる。
【0015】
また、
図4(a)、
図4(b)及び
図5に示すように、本実施形態に係る胃瘻カテーテルキット400は、胃瘻カテーテル100と、胃瘻カテーテル100を瘻孔530に挿入するのに先だって瘻孔530に設置される胃瘻シース300と、を備え、胃瘻シース300は、当該胃瘻シース300の軸方向に延在する破断部350を有し、胃瘻シース300にカプセルカバー70が押し込まれることにより当該胃瘻シース300が破断部350に沿って裂ける(
図6参照)。
より詳細には、本実施形態の場合、先だって瘻孔530に設置される胃瘻シース300の内腔を介して、カプセルカバー70及びシャフト10の下端部が瘻孔530に挿入される。この際、胃瘻カテーテル100のカプセルカバー70及びシャフト10の下端部は、胃瘻シース300を破断部350に沿って裂きながら、当該胃瘻シース300ひいては瘻孔530を貫通し胃内に到達する。
このような構成によれば、瘻孔530に対する胃瘻カテーテル100の挿入抵抗を低減することができる。更には、上述のように、胃瘻カテーテル100は、留置前においてカテーテル本体1からのカプセルカバー70の脱落を規制する脱落規制部90を有する。このため、胃瘻シース300の内腔にシャフト10の下端部を挿入する際や、留置前の位置調整のために胃瘻シース300からシャフト10の下端部を一旦抜去する際などに、カプセルカバー70の外周面と胃瘻シース300の内周面との間に生じる摩擦抵抗によって、カプセルカバー70がカテーテル本体1から意図しないタイミングで脱離してしまうことをより確実に抑制できる。
【0016】
以下、胃瘻カテーテル100についてより詳細に説明する。
本実施形態の場合、シャフト10の内腔がルーメン11を構成している。
図1及び
図2に示すように、シャフト10は、上下方向を軸方向とする円筒状に形成されている。シャフト10の上端部の外径は、シャフト10におけるその他の部分よりも相対的に大径となっている。シャフト10の上端部には、後述する被連結部30が装着されている。
ルーメン11の上端部の内径(シャフト10の上端部の内径)は、例えば、当該ルーメン11におけるその他の部分よりも相対的に大径となっており、後述する逆流防止弁40がその内部に収容される収容部を構成している。
また、シャフト10の管壁の内部にはワイヤルーメン12が形成されている。ワイヤルーメン12の長手方向における一端部は、シャフト10の下端において開口しており、バンパ50の内部と連通している。ワイヤルーメン12は、ルーメン11に対して径方向外側にオフセットした位置に配置されている。ワイヤルーメン12には、バンパ50の展開用のワイヤ(不図示)が挿通されている。
【0017】
ここで、
図2に示すように、本実施形態の場合、シャフト10においてカプセルカバー70の上端部(後述する装着部72の上端部)が嵌合する部位である上端嵌合部位15は、当該シャフト10における他部よりも径方向外側に突出した外方突出部18を有し、脱落規制部90を構成している。
これにより、カプセルカバー70がシャフト10に対して良好に係止されるため、カプセルカバー70が、意図しないタイミングでシャフト10に対して軸方向に相対的に変位してしまうことを抑制できる。
より詳細には、例えば、シャフト10の下端部の一部分が上端嵌合部位15であり、当該下端部(上端嵌合部位15)に外方突出部18が形成されている。
なお、シャフト10における外方突出部18よりも下側の部位の外径は、例えば、下方に向けて2段階に縮径している。後述するように、バンパ50は、例えば、シャフト10における外方突出部18よりも下側の部位に対して接合されている。
【0018】
図2及び
図3に示すように、外方突出部18は、例えば、シャフト10の軸周りに周回状に形成されている。なお、
図3においては、シャフト10の下端部における外方突出部18よりも上側の部位の外形線を二点鎖線で図示している。
これにより、カプセルカバー70が、シャフト10に対して周回状に係止されるようにできるため、カプセルカバー70が、意図しないタイミングでシャフト10に対して軸方向に相対的に変位してしまうことをより確実に抑制できる。
より詳細には、外方突出部18は、例えば、シャフト10の下端部における他部よりも径方向外側に突出している。外方突出部18は、例えば、軸方向における同じ高さ位置で周回して形成されている(水平に周回して形成されている)。
外方突出部18の突出量は、例えば、当該外方突出部18の軸方向における中央に向けて徐々に増加している。より詳細には、外方突出部18の突出量は、その上端から中央(軸方向における上端及び中央)に向けて徐々に増加し、更に当該中央からその下端(軸方向における下端)に向けて徐々に減少している。
図2等に示すように、軸方向に沿った外方突出部18の断面形状は、例えば、径方向外側に向けて凸の円弧状に形成されている。
これにより、オブチュレータ200によってカプセルカバー70を押圧した際には、カプセルカバー70の上端部がバンパ50からスムーズに脱離するようにできる。
【0019】
なお、本発明において、外方突出部18の形状は上記の例に限定されず、例えば、外方突出部18は、軸方向において螺進しつつ周回して形成されていてもよい。また、外方突出部18は、例えば、周方向における複数箇所に間欠的に形成されていてもよいし、周方向における一箇所に局所的に形成されていてもよい。
【0020】
ここで、本実施形態の場合、上端嵌合部位15の外面の表面粗さは、バンパ50の外面の表面粗さよりも小さい。
このような構成によれば、上端嵌合部位15の外面が、カプセルカバー70の内周面に対して良好に密着するようにできるので、当該外面と内周面との間の摩擦抵抗を適度に確保することができる。すなわち、脱落規制部90は、外方突出部18に加えて、上端嵌合部位15の外面も含む構成となる。よって、カプセルカバー70が、意図しないタイミングでカテーテル本体1から脱落してしまうことを更に確実に抑制できる。
なお、本発明において、例えば、上端嵌合部位15を含むシャフト10の全体の外面の表面粗さが、バンパ50の外面の表面粗さよりも小さくてもよいし、上端嵌合部位15の外面が局所的にバンパ50の外面の表面粗さよりも小さくてもよい。
【0021】
更に、上端嵌合部位の外面の表面粗さは、例えば、シャフト10における他部の表面粗さよりも小さい。
これにより、上端嵌合部位15の外面が、カプセルカバー70の内周面に対してより良好に密着するようにできる。
【0022】
本実施形態の場合、一例として、上端嵌合部位15の外面には鏡面加工が施されている。
これにより、上端嵌合部位15の外面が、カプセルカバー70の内周面に対して更に良好に密着するようにできる。
【0023】
なお、本発明において、「上端嵌合部位15の外面の表面粗さは、バンパ50の外面の表面粗さよりも小さい」とは、上端嵌合部位15の外面の少なくとも一部分の表面粗さが、バンパ50の外面の表面粗さよりも小さいことを意味している。したがって、上端嵌合部位15の外面の全体の表面粗さが、バンパ50の外面の表面粗さよりも小さくてもよいし、上端嵌合部位15の外面の一部分の表面粗さが、局所的にバンパ50の外面の表面粗さよりも小さくてもよい。
同様に、上端嵌合部位15の外面の全体の表面粗さが、シャフト10における他部の外面の表面粗さよりも小さくてもよいし、上端嵌合部位15の外面の一部分の表面粗さが、局所的にシャフト10における他部の外面の表面粗さよりも小さくてもよい。
また、上端嵌合部位15の外面の全体に鏡面加工が施されていてもよいし、上端嵌合部位15の外面の一部分に鏡面加工が施されていてもよい。
本実施形態の場合、一例として、上端嵌合部位15が有する外方突出部18の外面の全体に、鏡面加工が施されている。
【0024】
外方突出部18の最大外径R1(
図2参照)は、自然状態(カプセルカバー70が上端嵌合部位15に嵌合していない状態)におけるカプセルカバー70の内径よりも大きい。これにより、カプセルカバー70が、シャフト10に対して周回状に良好に係止されるようにできる。
本実施形態の場合、カテーテル本体1からの脱落に対するカプセルカバー70の抵抗力は、例えば、5N以上60N以下であることが好ましく、15N以上50N以下であることがより好ましい。カプセルカバー70の抵抗力が15N以上であることによって、胃瘻カテーテル100を胃瘻シース300に挿入する際に、カプセルカバー70の外周面と胃瘻シース300の内周面との間に生じる摩擦抵抗によりカプセルカバー70がカテーテル本体1から意図しないタイミングで脱離してしまうことをより確実に抑制できる。一方、カプセルカバー70の抵抗力が、50N以下であることによって、オブチュレータ200によってカプセルカバー70を押圧する際には、当該カプセルカバー70がバンパ50から容易に脱離されるようにできる。
また、軸方向における外方突出部18の長さ寸法は、一例として、0.5mm以上15mm以下であることが好ましく、より好ましくは2mm以上10mm以下である。
外方突出部18の最大突出量T(突出方向における最大寸法)(
図3参照)は、一例として、0.1mm以上2mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2mm以上1mm以下である。
軸方向における外方突出部18の長さ寸法が0.5mm以上であり、外方突出部18の最大突出量Tが0.1mm以上であることによって、胃瘻カテーテル100を胃瘻シース300に挿入する際に、カプセルカバー70の外周面と胃瘻シース300の内周面との間に生じる摩擦抵抗によりカプセルカバー70がカテーテル本体1から意図しないタイミングで脱離してしまうことを一層確実に抑制できる。
一方、軸方向における外方突出部18の長さ寸法が15mm以下であり、外方突出部18の最大突出量Tが2mm以下であることによって、瘻孔530に対する胃瘻カテーテル100の挿入抵抗を低減することができる。
【0025】
図9(b)に示すように、体表当接部20は、胃瘻カテーテル100が留置された状態において、生体の体表に露出する部位であり、体表当接部20の下面は、腹壁510の外表面と対向している。体表当接部20の下面は、平坦に形成されている。
体表当接部20には、例えば、栓部材80(
図1参照)が形成されている。栓部材80は、以下に説明する被連結部30の上端側の開口31を閉塞することが可能となっている。
【0026】
シャフト10及び体表当接部20は、例えば、樹脂材料によって一体成形されている。樹脂材料は、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はシリコンゴムその他のゴム材料等であることが挙げられる。
【0027】
また、本実施形態の場合、
図1及び
図2に示すように、胃瘻カテーテル100は、体表当接部20の上端部に形成されている被連結部30を更に備えている。
被連結部30には、上述のオブチュレータ200が着脱可能に掛止される。これにより、胃瘻カテーテル100に対してオブチュレータ200を装着することができる。
被連結部30は、例えば、軸方向の寸法が径方向の寸法よりも小さい扁平な筒状に形成されている。被連結部30は、円筒状の本体部30bと、本体部30bの上端から径方向内側に張り出している内フランジ部30aと、を含む。内フランジ部30aの内周縁が、被連結部30の上端側の開口31を画定している。
本体部30bの外周面には、一対の凹部32が形成されている。各凹部32に対してそれぞれオブチュレータ200の爪部が係合することによって、胃瘻カテーテル100に対してオブチュレータ200が装着される。
【0028】
図2等に示すように、胃瘻カテーテル100は、ルーメン11の上端部に設けられている逆流防止弁40を更に備えている。
逆流防止弁40は、例えば、ルーメン11の上端部の内腔に対して嵌入している。
逆流防止弁40は、開状態と閉状態とに開閉する弁口を有する。本実施形態の場合、逆流防止弁40は、一例として、ダックビル弁である。
逆流防止弁40は、通常状態においては、弁口は閉状態となっており、ルーメン11の上端側の開口を閉塞している。これにより、逆流防止弁40は、胃の内容物が胃内から体外へ逆流してしまうことを規制する。
一方、胃瘻カテーテル100を介して胃内に栄養剤等を注入する際には、弁口は開状態となっており、ルーメン11と体外とを相互に連通させる。これにより、逆流防止弁40は体外から胃内に栄養剤が通ることを許容する。
【0029】
図2に示すように、カプセルカバー70は、例えば、上下方向を軸方向とする有底の筒状に形成されている。カプセルカバー70は、例えば、バンパ50に装着される筒状の装着部72と、装着部72の下端を閉塞している先端閉塞部73と、を有し、先端閉塞部73は、下方に向けて凸に膨出した形状に形成されている。
カプセルカバー70の先端閉塞部73には、ガイドワイヤ500を上下に挿通させる挿通孔74が形成されている。
図9(a)に示すように、バンパ50に装着されていない状態において、装着部72の内径及び外径の各々は、例えば、軸方向における位置にかかわらず略一定となっている。上述のように、装着部72の上端部は、シャフト10の上端嵌合部位15に対して嵌合する。より詳細には、
図2等に示すように、装着部72の上端は、例えば、上端嵌合部位15における外方突出部18の形成領域よりも上側の部位に対して嵌合する(装着部72の上端部は、外方突出部18の外面の全体を覆っている)。装着部72が上端嵌合部位15に対して嵌合している状態において、当該装着部72における外方突出部18と対応する部位は、当該外方突出部18によって押圧されて径方向外側に膨出した形状に弾性変形している。カプセルカバー70において径方向外側に膨出した部分の最大外径は、シース本体310の最小内径よりも大きい。
これにより、カプセルカバー70を押し込むことによってシース本体310を破断部350に沿って容易に裂くことができる。
先端閉塞部73は、例えば、下方に向けて凸の丸め形状に形成されている。先端閉塞部73の内径及び外径の各々は、例えば、下方に向けて徐々に縮径している。
挿通孔74は、例えば、先端閉塞部73を上下に貫通している。挿通孔74の軸中心は、例えば、装着部72の軸中心と一致している。挿通孔74の外径は、例えば、軸方向における位置にかかわらず、略一定となっている。
カプセルカバー70を構成している材料は、特に限定されないが、例えば、セルロース系若しくはゼラチン系の食用の材料や、ポリ乳酸等の体内で分解される材料等であることが挙げられる。
【0030】
なお、本発明において、カプセルカバー70の内周面にも、径方向内側に向けて凸のリブや、径方向外側に向けて窪んだ溝部等が形成されていてもよい。カプセルカバー70の内周面にリブが形成されている場合、例えば、上端嵌合部位15には、当該リブが嵌合する溝部が形成されていてもよい。また、カプセルカバー70の内周面に溝部が形成されている場合、例えば、外方突出部18は、当該溝部に対して嵌合するように構成されていてもよい。
【0031】
バンパ50は、例えば、平面視略円環状の袋状に形成されており、例えば、上方に向けて開口している。
バンパ50は、可撓性のものであり、径方向に拡張可能となっている。バンパ50の内部にはワイヤ(不図示)の一部分がとぐろを巻くように配設されている。ワイヤは、その一端側の部分は、シャフト10に形成されている上述のワイヤルーメン12(
図2等参照)を介してバンパ50の内部に導入されている。
上述のように、胃瘻カテーテル100が留置される前の状態において、バンパ50は折り畳まれた状態でカプセルカバー70の内部に収容されている。そして、オブチュレータ200によってカプセルカバー70がバンパ50から脱離されると、バンパ50は、ワイヤの弾性復元力によって径方向に拡張し、胃壁520に対して係止される。そして、この状態から、バンパ50の内部のワイヤが当該バンパ50から抜去されることによって、バンパ50は径方向に収縮し、胃壁520に対するバンパ50の係止が解除される。
なお、バンパ50の外面には、例えば、シボ加工が施されている。これにより、折り畳まれてカプセルカバー70に収容されている状態において、バンパ50の外面どうしが貼り付いてしまうことをより確実に抑制できる。
【0032】
次に、胃瘻シース300についてより詳細に説明する。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、胃瘻シース300は、例えば、カプセルカバー70及びシャフト10の下端部が挿入されるシース本体310と、シース本体310の上端側に設けられている把持部320と、を備えている。
シース本体310は、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されている。シース本体310の上端部は、当該シース本体310におけるその他の部分よりも相対的に大径となっている拡径部315となっている。より詳細には、拡径部315は、その周方向における一部分が径方向外側に拡張している。拡径部315の最大内径は、シース本体310のその他の部位の内径よりも大きく、拡径部315の最大外径は、シース本体310のその他の部位の外径よりも大きい。
シース本体310の上端側の開口(拡径部315の開口)は、例えば、下り傾斜した斜めの切り口となっている。
把持部320は、胃瘻カテーテル100を挿入する際に、施術者によって把持される部位である。把持部320は、シース本体310の上端側の開口から延出した舌片状に形成されている。
把持部320は、それぞれ板状に形成されている第1部材321及び第2部材322を含む。第1部材321の下端部と第2部材322の下端部とによってシース本体310の上端を挟み込むようにして、把持部320は当該シース本体310に固定されている。
【0033】
図4(a)に示すように、破断部350は、シース本体310に形成されている。破断部350は、シース本体310の長手方向(軸方向)に沿って延在している。破断部350は、シース本体310の長手方向に沿って延在している切り込み溝によって当該シース本体310の肉厚を局所的に薄くした部分であってもよいし、シース本体310の肉厚方向に貫通するスリットであってもよい。
破断部350は、例えば、レーザ加工又は機械加工等によって形成することができる。
【0034】
シース本体310の最小内径は、上端嵌合部位15に嵌合した状態におけるカプセルカバー70の最大外径よりも小さい。
これにより、カプセルカバー70(すなわちシース本体310の最小内径よりも外径が大きい部位)がシース本体310内を通過しようとしたときに、シース本体310は当該部位によって径方向外側に押し広げられて破断部350を切断線として縦裂きされる。
【0035】
シース本体310を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)などが好ましい。このうち、摩擦抵抗が低いフッ素樹脂より構成されることがより好ましく、胃瘻カテーテル100を挿入する際に、シース本体310の内腔を通過する際の摩擦抵抗を低減させ、胃瘻カテーテル100の挿入抵抗を低減させることができる。
【0036】
次に、オブチュレータ200についてより詳細に説明する。
図5に示すように、オブチュレータ200は、上下に延在する管状本体210と、管状本体210に設けられており、体表当接部20の上端部に形成されている被連結部30に対して着脱可能に掛止される連結部240と、を備えている。連結部240が被連結部30に対して掛止されることによって、オブチュレータ200は胃瘻カテーテル100に対して装着される。
管状本体210は、例えば、シャフト10の上端部に対して着脱可能に連結される連結部240を有する外管部220と、外管部220に対して上下に摺動可能に挿通されている内管部230と、を備えている。
オブチュレータ200によってカプセルカバー70を押圧する際には、内管部230を外管部220に対して相対的に下方に押し込こむ。これにより、内管部230の下端部がカプセルカバー70を下方に押圧し、カプセルカバー70がバンパ50から脱離され、当該バンパ50が拡張される。
【0037】
図8等に示すように、オブチュレータ200が胃瘻カテーテル100に装着されている状態において、内管部230はルーメン11に挿通されている。これにより、ルーメン11における外方突出部18と対応する部位は、内管部230によって径方向内側への変形が規制されている。このため、外方突出部18の外周面とカプセルカバー70の内周面との間の摩擦抵抗を好適に確保することができる。
【0038】
以下、
図6から
図9(b)を用いて胃瘻カテーテル100の使用方法の一例について説明する。なお、胃瘻カテーテル100が挿入される瘻孔530が、腹壁510及び胃壁520を貫通して形成されており、当該瘻孔530に胃瘻シース300が予め挿入されている状態から説明する。
【0039】
先ず、オブチュレータ200を被連結部30に対して連結することによって、オブチュレータ200を胃瘻カテーテル100に対して装着する。
次に、
図7に示すように、瘻孔530に設置されている胃瘻シース300の内腔を介して、カプセルカバー70及びシャフト10の下端部を瘻孔530に挿入する(下方に向けて押し込む)。この際、胃瘻シース300は、カプセルカバー70によって径方向外側に押し広げられてそのシース本体310が破断部350を切断線として縦裂きされる。
これにより、胃瘻カテーテル100のシャフト10の下端部は、シース本体310を貫通して胃内に到達し、胃内にバンパ50が配置される。この状態において、胃瘻カテーテル100における体表当接部20及び当該体表当接部20よりも上側の部分は、体表面に沿って配置されている。そして、破断部350に沿って裂けた胃瘻シース300を体外に抜去する。
ここで、上述のように胃瘻カテーテル100は、留置前においてカテーテル本体1からのカプセルカバー70の脱落を規制する脱落規制部90を有する。このため、胃瘻シース300の内腔にシャフト10の下端部を挿入する際や、留置前の位置調整のために胃瘻シース300からシャフト10の下端部を一旦抜去する際などに、カプセルカバー70と胃瘻シース300の内周面との間に生じる摩擦抵抗によって、カプセルカバー70がカテーテル本体1から意図しないタイミングで脱離してしまうことをより確実に抑制できる。このため、胃瘻カテーテル100を胃内における所望の部位により確実に留置することができる。
【0040】
次に、
図9(a)に示すように、オブチュレータ200の内管部230を外管部220に対して相対的に下方に押し込こむ。これにより、内管部230の下端部がカプセルカバー70を下方に押圧し、当該カプセルカバー70がバンパ50から脱離され、当該バンパ50が拡張される。これにより、バンパ50が胃壁520に対して係止され、胃瘻カテーテル100が留置される。胃瘻カテーテル100を留置したら、被連結部30に対するオブチュレータ200の連結を解除し、当該オブチュレータ200を胃瘻カテーテル100から抜去する(
図9(b)参照)。
また、胃瘻カテーテル100を瘻孔530から抜去する際には、ワイヤルーメン12ひいてはバンパ50からワイヤを引き抜く。これにより、バンパ50は径方向に収縮し、胃壁520に対するバンパ50の係止が解除される。これにより、胃瘻カテーテル100は胃内から抜去可能となる。
【0041】
〔第2実施形態〕
次に、
図10から
図11(b)を用いて、第2実施形態を説明する。第2実施形態における胃瘻カテーテル100は、以下に説明する点において上記の第1実施形態における胃瘻カテーテル100と相違しており、その他の点においては上記の第1実施形態と同様に構成されている。
【0042】
ここで、本願発明者の検討によれば、上記の特許文献1の胃瘻カテーテルは、カプセルカバーが押し込まれることにより胃瘻シースが破断部に沿ってスムーズに裂ける構成を実現する観点で、なお改善の余地がある。
【0043】
そこで、
図10から
図11(b)に示すように、本実施形態に係る胃瘻カテーテル100は、ルーメン11が設けられたシャフト10と体表当接部20とを有するカテーテル本体1と、シャフト10の下端部に設けられていて胃内で拡張するバンパ50と、バンパ50を収縮状態に維持させるカプセルカバー70と、を備え、留置の際にカプセルカバー70がカテーテル本体1から離脱しバンパ50が拡張する胃瘻カテーテルであって、カプセルカバー70の外面は、径方向外方に向けて突出したカバー外方突出部75を有する。
これにより、カプセルカバー70を押し込む際に、カバー外方突出部75によって胃瘻シース300を破断部350に沿ってスムーズに裂くことができる。
【0044】
より詳細には、本実施形態の場合、
図11(b)に示すように、例えば、カプセルカバー70の外形の横断面形状が多角形状(例えば、六角形状)である。そして、カプセルカバー70が有する各角部が、それぞれカバー外方突出部75を構成している。
これにより、カバー外方突出部75がカプセルカバー70の周方向における複数箇所に形成された構成となるので、カプセルカバー70を押し込む際に、これらのカバー外方突出部75によって胃瘻シース300を径方向外側に押し広げることができる。よって、胃瘻シース300の内腔においてカプセルカバー70をよりスムーズに押し進めることができる。
【0045】
更に、本実施形態の場合、上述のようにカプセルカバー70の外形の横断面形状が多角形状である一方で、カプセルカバー70の内腔の横断面形状は円形である。
これにより、上述のようにカプセルカバー70の周方向における複数箇所において、当該カプセルカバー70の他の部位よりも肉厚な部位(カバー外方突出部75)を局所的に有する構成とすることができる。そして、カプセルカバー70におけるその他の部位よりも肉厚な部位(カバー外方突出部75)によって剛性を十分に確保し、これらのカバー外方突出部75によって胃瘻シース300をスムーズに裂くことができる。
その一方で、カプセルカバー70の内腔は、シャフト10の横断面形状と対応する形状である円形とすることができるので、カプセルカバー70が上端嵌合部位15に対して良好に嵌合するようにできる。
すなわち、カプセルカバー70によって胃瘻シース300をよりスムーズに裂く構成と、意図しないタイミングでのカテーテル本体1からのカプセルカバー70の脱落と抑制する構成と、をそれぞれ実現できる。
【0046】
図11(b)に示すように、本実施形態の場合、カプセルカバー70の装着部72の外形の横断面形状が六角形状となっている。同様に、カプセルカバー70の先端閉塞部73の外形の横断面形状も六角形状となっている。ただし、先端閉塞部73の六角形状の外形寸法は、下方に向けて徐々に縮小している。一方、装着部72の六角形状の外形寸法は軸方向における位置にかかわらず略一定となっている。
また、カプセルカバー70の装着部72の内腔の横断面形状が円形となっている。同様に、カプセルカバー70の先端閉塞部73の内腔の横断面形状も円形となっている。ただし、先端閉塞部73の円形の内径は、下方に向けて徐々に縮小している。一方、装着部72の円形の内径は軸方向における位置にかかわらず略一定となっている。
本実施形態の場合、各カバー外方突出部75は、カプセルカバー70の上端から挿通孔74の近傍に亘って一連に連続的に形成されている。
なお、胃瘻シース300に胃瘻カテーテル100を挿入する際には、例えば、各カバー外方突出部75のうちの1つが破断部350に沿って押し込まれるように、カプセルカバー70をシース本体310に対して配置することも好ましい。このようにすることによって、カプセルカバー70を押し込む際に、カバー外方突出部75によって胃瘻シース300を破断部350に沿ってよりスムーズに裂くことができる。
【0047】
本実施形態の場合、カプセルカバー70の最大外径R1(
図11(b)参照)は、シース本体310の最小内径よりも大きい。
これにより、カプセルカバー70によって胃瘻シース300をよりスムーズに裂く構成と、意図しないタイミングでのカテーテル本体1からのカプセルカバー70の脱落と抑制する構成と、をそれぞれ良好に実現できる。
【0048】
<第2実施形態の変形例>
次に、
図12及び
図13を用いて、第2実施形態の変形例を説明する。第2実施形態の変形例における胃瘻カテーテル100は、以下に説明する点において上記の第1、2実施形態における胃瘻カテーテル100と相違しており、その他の点においては上記の第1、2実施形態と同様に構成されている。
【0049】
図13に示すように、脱落規制部90は、カプセルカバー70の上端部をシャフト10に対して接着している接着部96を含む。なお、ここでいう「接着」とは粘着も含むものとする。
このような構成によっても、意図しないタイミングでのカテーテル本体1からのカプセルカバー70の脱落を抑制することができる。
【0050】
より詳細には、本変形例の場合、
図12に示すように、上端嵌合部位15は、例えば、外方突出部18を備えていなくともよい。このような場合であっても、接着部96によって意図しないタイミングでのカテーテル本体1からのカプセルカバー70の脱落を抑制することができる。
ただし、本発明において、脱落規制部90は、例えば、外方突出部18と接着部96との両方を含んでいてもよい。
【0051】
図13に示すように、本変形例の場合、接着部96は、一例として、周方向において、上端嵌合部位15の複数箇所に間欠的に形成されている。
ただし、本発明において、接着部96は、例えば、上端嵌合部位15の一部分に局所的に形成されていてもよいし、上端嵌合部位15の全体に亘って周回状に形成されていてもよい。
【0052】
接着部96は、例えば、物理的な力の負荷によってカプセルカバー70の上端部をシャフト10から離脱させることが可能な易剥離性を有する材料によって構成されている。なお、ここでいう「物理的な力の負荷」とは、オブチュレータ200によってカプセルカバー70を押圧した際に生じる荷重である。このような易剥離性を有する材料としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン、ゼラチン、ウレタン、シアノアクリレート及びエポキシ等を挙げることができる。
【0053】
〔第3実施形態〕
次に、
図14を用いて、第3実施形態を説明する。第3実施形態における胃瘻カテーテル100は、以下に説明する点において上記の第1、第2実施形態における胃瘻カテーテル100と相違しており、その他の点においては上記の第1、第2実施形態と同様に構成されている。
【0054】
図14に示すように、本実施形態の場合、脱落規制部90は、カプセルカバー70をカテーテル本体1に対して拘束している糸部材95を含む。なお、
図14において、糸部材95を二点鎖線で示している。
このような構成によっても、意図しないタイミングでのカテーテル本体1からのカプセルカバー70の脱落と抑制することができる。
【0055】
図14に示すように、糸部材95は、例えば、シャフト10の内外を通ってカプセルカバー70の内外をループしており、当該カプセルカバー70がカテーテル本体1に対して括り付けられるように引き回されている。より詳細には、糸部材95は、被連結部30の上端側の開口31からルーメン11に挿通されており、ルーメン11の下端側の開口及びカプセルカバー70の挿通孔74を介して当該カプセルカバー70の外部に導出されている。導出された糸部材95は、更に、カプセルカバー70の外側とシャフト10の外側とを通って再び開口31に向けてUターンしている。
そして、糸部材95の両端部は、例えば、シャフト10の内外を通ってカプセルカバーの内外をループした状態で結び目(不図示)を形成している。胃瘻カテーテル100を胃内に留置する際には、糸部材95を切断又は当該糸部材95の結び目を解くことによって、カプセルカバー70がカテーテル本体1に対して拘束された状態を解除することができる。
なお、
図14においては、糸部材95を示す二点鎖線を見やすくするため、便宜的にシャフト10やカプセルカバー70から離間した状態で図示しているが、実際の胃瘻カテーテル100においては、糸部材95は、シャフト10の外周面や内周面、カプセルカバーの外周面や内周面等に沿って配置されることが好ましい。
【0056】
なお、本発明において、糸部材95が引き回される経路は特に限定されず、例えば、上述の例では、糸部材95がシャフト10の内外を通ってカプセルカバー70の内外をループしている例を説明したが、糸部材95は、例えば、胃瘻カテーテル100の外部を通ってカプセルカバー70の内外をループしていてもよい。この場合、例えば、糸部材95は、例えば、シャフト10の外側を通ってカプセルカバー70の上端側の開口から当該カプセルカバー70の内部に導入される。導入された糸部材95は、上端嵌合部位15の外面とカプセルカバー70の内周面との間を通って、挿通孔74を介してカプセルカバー70の外部に導出されている。導出された糸部材95は、更に、カプセルカバー70の外側とシャフト10の外側とを通って再び開口31に向けてUターンするようにして引き回される。
もしくは、例えば、カプセルカバー70の上端部は糸部材95を係止可能に構成されており、糸部材95が、カプセルカバー70の上端部及び体表当接部20に対してそれぞれ係止されることによって体表当接部20とカプセルカバー70の上端部とを連結していてもよい。
【0057】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0058】
例えば、上記の第1~第3実施形態においては、胃瘻カテーテル100が、脱落規制部90として、外方突出部18、鏡面加工が施された上端嵌合部位の15、糸部材95及び接着部96のうちのいずれか2つ以上を備える例を説明したが、本発明において、第2実施形態の変形例のように、胃瘻カテーテル100は、外方突出部18、鏡面加工、糸部材95及び接着部96のいずれか1つを選択的に備えていてもよい。
【0059】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)ルーメンが設けられたシャフトと体表当接部とを有するカテーテル本体と、前記シャフトの下端部に設けられていて胃内で拡張するバンパと、前記バンパを収縮状態に維持させるカプセルカバーと、を備え、留置の際に前記カプセルカバーが前記カテーテル本体から離脱し前記バンパが拡張する胃瘻カテーテルであって、
留置前において前記カテーテル本体からの前記カプセルカバーの脱落を規制する脱落規制部を有する胃瘻カテーテル。
(2)前記シャフトにおいて前記カプセルカバーの上端部が嵌合する部位である上端嵌合部位は、当該シャフトにおける他部よりも径方向外側に突出した外方突出部を有し、前記脱落規制部を構成している(1)に記載の胃瘻カテーテル。
(3)前記外方突出部は、前記シャフトの軸周りに周回状に形成されている(2)に記載の胃瘻カテーテル。
(4)前記上端嵌合部位の外面の表面粗さは、前記バンパの外面の表面粗さよりも小さい(2)又は(3)に記載の胃瘻カテーテル。
(5)前記上端嵌合部位の外面の表面粗さは、前記シャフトにおける他部の表面粗さよりも小さい(2)又は(3)に記載の胃瘻カテーテル。
(6)前記上端嵌合部位の外面には鏡面加工が施されている(4)に記載の胃瘻カテーテル。
(7)前記脱落規制部は、前記カプセルカバーを前記カテーテル本体に対して拘束している糸部材を含む(1)から(3)のいずれか一項に記載の胃瘻カテーテル。
(8)前記脱落規制部は、前記カプセルカバーの上端部を前記シャフトに対して接着している接着部を含む(1)から(3)のいずれか一項に記載の胃瘻カテーテル。
(9)前記カプセルカバーの外面は、径方向外方に向けて突出したカバー外方突出部を有する(1)から(3)のいずれか一項に記載の胃瘻カテーテル。
(10)前記カプセルカバーの外形の横断面形状が多角形状である(9)に記載の胃瘻カテーテル。
(11)前記カプセルカバーの内腔の横断面形状が円形である(10)に記載の胃瘻カテーテル。
(12)(9)に記載の胃瘻カテーテルと、
前記胃瘻カテーテルを瘻孔に挿入するのに先だって前記瘻孔に設置される胃瘻シースと、
を備え、
前記胃瘻シースは、当該胃瘻シースの軸方向に延在する破断部を有し、
前記胃瘻シースに前記カプセルカバーが押し込まれることにより当該胃瘻シースが前記破断部に沿って裂ける胃瘻カテーテルキット。
【0060】
更に、本実施形態は以下の技術思想を包含する。
<1>ルーメンが設けられたシャフトと体表当接部とを有するカテーテル本体と、前記シャフトの下端部に設けられていて胃内で拡張するバンパと、前記バンパを収縮状態に維持させるカプセルカバーと、を備え、留置の際に前記カプセルカバーが前記カテーテル本体から離脱し前記バンパが拡張する胃瘻カテーテルであって、
前記カプセルカバーの外面は、径方向外方に向けて突出したカバー外方突出部を有する胃瘻カテーテル。
<2>前記カプセルカバーの外形の横断面形状が多角形状である<1>に記載の胃瘻カテーテル。
<3>前記カプセルカバーの内腔の横断面形状が円形である<1>又は<2>に記載の胃瘻カテーテル。
<4><1>から<3>のいずれか一項に記載の胃瘻カテーテルと、
前記胃瘻カテーテルを瘻孔に挿入するのに先だって前記瘻孔に設置される胃瘻シースと、
を備え、
前記胃瘻シースは、当該胃瘻シースの軸方向に延在する破断部を有し、
前記胃瘻シースに前記カプセルカバーが押し込まれることにより当該胃瘻シースが前記破断部に沿って裂ける胃瘻カテーテルキット。
【符号の説明】
【0061】
1 カテーテル本体
10 シャフト
11 ルーメン
12 ワイヤルーメン
15 上端嵌合部位
18 外方突出部
20 体表当接部
30 被連結部
30a 内フランジ部
30b 本体部
31 開口
32 凹部
40 逆流防止弁
50 バンパ
70 カプセルカバー
72 装着部
73 先端閉塞部
74 挿通孔
75 カバー外方突出部
80 栓部材
90 脱落規制部
95 糸部材
96 接着部
100 胃瘻カテーテル
200 オブチュレータ
210 管状本体
220 外管部
230 内管部
240 連結部
300 胃瘻シース
310 シース本体
315 拡径部
320 把持部
321 第1部材
322 第2部材
350 破断部
400 胃瘻カテーテルキット
510 腹壁
520 胃壁
530 瘻孔