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特開2024-113989厚さ測定装置、厚さ測定方法及び厚さ測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113989
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】厚さ測定装置、厚さ測定方法及び厚さ測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/02 20060101AFI20240816BHJP
   G01N 23/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G01B15/02 H
G01N23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019320
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】相浦 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】白石 有司
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 知将
【テーマコード(参考)】
2F067
2G001
【Fターム(参考)】
2F067AA27
2F067BB16
2F067EE04
2F067FF07
2F067HH04
2F067JJ03
2F067KK06
2F067LL16
2F067RR12
2F067RR31
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001GA01
2G001KA11
(57)【要約】
【課題】物体の厚さを測定する厚さ測定装置、厚さ測定方法及び厚さ測定プログラムを提供する。
【解決手段】厚さ測定装置は、複数の部材の厚さとX線の透過に伴う輝度吸収係数との関係に関する関係情報を記憶する記憶部と、X線源から出射されるX線の強度に関する情報を取得する第1取得部と、X線源から出射されたX線が複数の部材を積層させた積層体を透過した際の透過X線を検出部で検出した場合の透過X線の強度に関する情報を取得する第2取得部と、積層体を構成する複数の部材のうちの一部の厚さを、検出部における透過X線の複数の検出領域に対応付ける対応付け部と、第1取得部で取得したX線の強度と、第2取得部で取得した透過X線の強度と、記憶部に記憶した関係情報とに基づいて、複数の検出領域それぞれにおいて、複数の部材のうちの一部を除く他の部材の厚さを算出する算出部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材の厚さとX線の透過に伴う輝度吸収係数との関係に関する関係情報を記憶する記憶部と、
X線源から出射されるX線の強度に関する情報を取得する第1取得部と、
前記X線源から出射されたX線が複数の部材を積層させた積層体を透過した際の透過X線を検出部で検出した場合の透過X線の強度に関する情報を取得する第2取得部と、
前記積層体を構成する前記複数の部材のうちの一部の厚さを、前記検出部における透過X線の複数の検出領域に対応付ける対応付け部と、
前記第1取得部で取得したX線の強度と、前記第2取得部で取得した透過X線の強度と、前記記憶部に記憶した関係情報とに基づいて、前記複数の検出領域それぞれにおいて、前記複数の部材のうちの前記一部を除く他の部材の厚さを算出する算出部と、
を備える厚さ測定装置。
【請求項2】
X線の強度は輝度に置き換えが可能であり、
前記記憶部は、関係情報として、前記複数の部材としての第1部材及び第2部材それぞれの輝度吸収係数の厚さ依存性に関する情報を記憶し、
前記対応付け部は、第1部材の厚さを複数の検出領域それぞれに対応付け、
前記算出部は、前記第1取得部で取得したX線の強度に対応する輝度をC、前記第2取得部で取得する検出領域毎の透過X線の強度に対応する輝度をC、前記記憶部に記憶した関係情報として第1部材についての輝度吸収係数の厚さの依存性を1次式で求めた際の関係式を以下の式(1)とし、
【数1】
μA1:第1部材の輝度吸収係数
:第1部材の厚さ
前記記憶部に記憶した関係情報として第2部材についての輝度吸収係数の厚さの依存性を1次式で求めた際の関係式を以下の式(2)とすると、
【数2】
μA2:第2部材の輝度吸収係数
:第2部材の厚さ
第2部材の厚さtを以下の式(3)を用いて算出する
【数3】
請求項1に記載の厚さ測定装置。
【請求項3】
前記記憶部は、関係情報として、前記複数の部材としての第1部材、第2部材及び第3部材の輝度吸収係数の厚さ依存性に関する情報を記憶し、
前記対応付け部は、第1部材及び第3部材それぞれの厚さを複数の検出領域それぞれに対応付け、
前記算出部は、前記記憶部に記憶した関係情報として第3部材についての輝度吸収係数の厚さの依存性を1次式で求めた際の関係式を以下の式(4)とすると、
【数4】
μA3:第1部材の輝度吸収係数
:第1部材の厚さ
第2部材の厚さtを以下の式(5)を用いて算出する
【数5】
請求項2に記載の厚さ測定装置。
【請求項4】
前記積層体は、第1部材、第2部材及び第3部材がこの順に積層されており、
第2部材は、第1部材と第3部材とを接着させる接着剤である
請求項3に記載の厚さ測定装置。
【請求項5】
前記積層体の形状及び前記一部の厚さに関する積層体情報を取得する第3取得部を備え、
前記対応付け部は、前記第3取得部で取得した積層体情報に基づいて、前記積層体の一部の厚さを検出領域に対応付ける
請求項1~4のいずれか1項に記載の厚さ測定装置。
【請求項6】
光源から出射される光の強度に関する情報を取得する第1取得部と、
前記光源から出射された光が複数の部材を積層させた積層体を透過した際の透過光を検出部で検出した場合の透過光の強度に関する情報を取得する第2取得部と、
前記積層体を構成する前記複数の部材のうちの一部の厚さを、前記検出部における透過光の複数の検出領域に対応付ける対応付け部と、
前記第1取得部で取得した光の強度と、前記第2取得部で取得した透過光の強度と、前記複数の部材それぞれの輝度吸収係数の厚さ依存性に関する情報とに基づいて、前記複数の検出領域それぞれにおいて、前記複数の部材のうちの前記一部を除く他の部材の厚さを算出する算出部と、
を備える厚さ測定装置。
【請求項7】
複数の部材の厚さとX線の透過に伴う輝度吸収係数との関係に関する関係情報を記憶する記憶部を有するコンピュータが、
X線源から出射されるX線の強度に関する情報を取得する第1取得ステップと、
前記X線源から出射されたX線が複数の部材を積層させた積層体を透過した際の透過X線を検出部で検出した場合の透過X線の強度に関する情報を取得する第2取得ステップと、
前記積層体を構成する前記複数の部材のうちの一部の厚さを、前記検出部における透過X線の複数の検出領域に対応付ける対応付けステップと、
前記第1取得ステップで取得したX線の強度と、前記第2取得ステップで取得した透過X線の強度と、前記記憶部に記憶した関係情報とに基づいて、前記複数の検出領域それぞれにおいて、前記複数の部材のうちの前記一部を除く他の部材の厚さを算出する算出ステップと、
を実行する厚さ測定方法。
【請求項8】
コンピュータに、
複数の部材の厚さとX線の透過に伴う輝度吸収係数との関係に関する関係情報を記憶する記憶機能と、
X線源から出射されるX線の強度に関する情報を取得する第1取得機能と、
前記X線源から出射されたX線が複数の部材を積層させた積層体を透過した際の透過X線を検出部で検出した場合の透過X線の強度に関する情報を取得する第2取得機能と、
前記積層体を構成する前記複数の部材のうちの一部の厚さを、前記検出部における透過X線の複数の検出領域に対応付ける対応付け機能と、
前記第1取得機能で取得したX線の強度と、前記第2取得機能で取得した透過X線の強度と、前記記憶機能に記憶した関係情報とに基づいて、前記複数の検出領域それぞれにおいて、前記複数の部材のうちの前記一部を除く他の部材の厚さを算出する算出機能と、
を実現させる厚さ測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、厚さ測定装置、厚さ測定方法及び厚さ測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体にX線を照射してX線透過像を取得する装置がある。例えば、特許文献1に記載の装置は、X線透過像中の各画素の輝度低下量に応じて、予め定められた大きさ以上の異物が物体に含まれるかを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-135125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の装置は、物体への異物の混入を検出する装置である。
ところで、X線を用いた測定には、種々のものがあるが、物体の厚さを測定する装置の登場が望まれていた。
【0005】
本開示は、物体の厚さを測定する厚さ測定装置、厚さ測定方法及び厚さ測定プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様の厚さ測定装置は、複数の部材の厚さとX線の透過に伴う輝度吸収係数との関係に関する関係情報を記憶する記憶部と、X線源から出射されるX線の強度に関する情報を取得する第1取得部と、X線源から出射されたX線が複数の部材を積層させた積層体を透過した際の透過X線を検出部で検出した場合の透過X線の強度に関する情報を取得する第2取得部と、積層体を構成する複数の部材のうちの一部の厚さを、検出部における透過X線の複数の検出領域に対応付ける対応付け部と、第1取得部で取得したX線の強度と、第2取得部で取得した透過X線の強度と、記憶部に記憶した関係情報とに基づいて、複数の検出領域それぞれにおいて、複数の部材のうちの一部を除く他の部材の厚さを算出する算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、物体の厚さを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る厚さ測定装置について説明するための図である。
図2】積層体の第1例について説明するための図である。
図3】積層体の第2例について説明するための図である。
図4】一実施形態に係る厚さ測定装置(処理部)について説明するためのブロック図である。
図5】厚さ算出の誤差を説明する模式図である。
図6】相関式を説明する模式図である。
図7】X線強度及び輝度吸収係数について説明するための図である。(A)はX線強度と輝度吸収係数との関係を示す第1模式図、(B)はX線強度と輝度吸収係数との関係を示す第2模式図である。
図8】一実施形態に係る厚さ測定方法について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について説明する。
【0010】
[厚さ測定装置1の概要]
まず、一実施形態に係る厚さ測定装置1の概要について説明する。
図1は、一実施形態に係る厚さ測定装置1について説明するための図である。
図2は、積層体20の第1例について説明するための図である。
図3は、積層体20の第2例について説明するための図である。
【0011】
図1に例示するように、厚さ測定装置1は、例えば、X線を利用して部材の厚さを測定する。部材は、例えば、複数の部材が積層された積層体20等であってもよい。積層体20を構成する少なくとも1つの部材は、例えば、金属等であってもよい。
【0012】
厚さ測定装置1は、例えば、X線源2、X線検出部(検出部)3及び処理部10を備える。
【0013】
X線源2は、積層体20に対して照射するX線を発生させるX線発生装置である。X線源2は、例えば、固定陽極X線管を備える。X線管の陽極には、例えば、ターゲットとして、タングステン、モリブデン等の金属が使用される。X線源2は、例えば、後述する処理部10の制御に基づいて、X線を透過させる積層体20の厚さ及び材質等に応じて、発生させるX線量(エネルギ量)を設定する。X線源2には、例えば、公知のX線用の照射装置が使用されてもよい。
【0014】
検出部3は、例えば、X線源2から照射された後、積層体20を透過したX線を検出する。検出部3は、例えば、積層体20を透過した透過X線の強度(一例として、線量及び照射線量等)を検出する。検出部3は、X線を検出する複数の領域(例えば、ピクセル等の検出領域)を備える。検出部3は、検出領域毎にX線を検出することが可能である。検出部3には、例えば、公知のX線用の検出装置が使用されてもよい。
【0015】
処理部10は、例えば、X線源2及びX線検出部3それぞれとの間で情報の送受信を行ってもよい。処理部10は、例えば、サーバ、デスクトップ及びラップトップ等のコンピュータ(情報処理装置)等であってもよい。
【0016】
処理部10は、複数の部材の厚さとX線の透過に伴う輝度吸収係数との関係(輝度吸収係数の厚さ依存性)に関する関係情報を記憶する。
ここで、輝度吸収係数μは、部材の厚さtに応じて変化し、下式(1)に一例を示すような相関が有ることが発明者の実験等によって判明した。なお、aは係数、bは定数である。
処理部10は、部材毎の厚さtと輝度吸収係数μとの関係、すなわち積層体を構成する複数の部材それぞれの輝度吸収係数の厚さ依存性に関する情報(関係情報)を記憶する。
【0017】
【数1】
【0018】
処理部10は、厚さ測定装置1によって積層体20を構成する複数の部材のうちの一部の厚さを測定する場合、その積層物の一部の部材を除く他の部材の厚さを、検出部3の複数の検出領域それぞれに対応付ける。
積層体20は、例えば、平板に限定されることはなく、種々の形状であってもよい。このため、検出部3の検出面(平面)に向けて見た場合(平面視した場合)、検出領域毎に積層体20の厚さが異なる場合がある。処理部10は、厚さの測定対象となる部材(一部の部材)を除いた他の部材それぞれの既知の厚さを、積層体20の形状(平面形状)に応じて複数の検出領域に対応付ける。
【0019】
次に、処理部10は、積層体20(一部の部材)の厚さを測定する場合、照射X線の強度I、及び、積層体20を透過したX線(透過X線)の強度Iを取得する。
すなわち、処理部10は、X線源2から出射されるX線の強度Iに関する情報を取得する。
また、処理部10は、検出部3で検出されるX線の強度Iに関する情報を取得する。すなわち、処理部10は、X線源2から出射されたX線が複数の部材を積層させた積層体20を透過した際の透過X線を検出部3で検出した場合の透過X線の強度Iに関する情報を取得する。
【0020】
処理部10は、照射X線の強度I、透過X線の強度I、及び、関係情報に基づいて、複数の検出領域それぞれにおいて、複数の部材のうちの一部の部材の厚さtを算出する。
【0021】
ここで一般的に、吸収係数μは、電磁波の照射強度I、部材を透過した電磁波の透過強度I、及び、部材の厚さtとの関係によって求まり、下式(2)のような関係がある。
【0022】
【数2】
【0023】
電磁波の一例としてのX線を部材に照射する場合、吸収係数μによって減衰されるX線の強度Iと、輝度吸収係数μによって減弱される輝度Cは等価であると考えられる。すなわち、X線の強度は輝度に置き換えが可能である。
【0024】
このため、一例として、3つの部材が積層された積層体20(図1,2参照)では、第1部材21の厚さをt、第1部材21の輝度吸収係数をμA1、第2部材22の厚さをt、第2部材22の輝度吸収係数をμA2、第3部材23の厚さをt、第3部材23の輝度吸収係数をμA3とすると、下式(3)のような関係式が得られる。
【0025】
【数3】
【0026】
第1部材21の厚さt及び第3部材23の厚さtを既知とすると、第2部材22の厚さtを求める場合、上式(3)に基づいて、下式(4)により得られる。
【0027】
【数4】
【0028】
ここで、輝度吸収係数μA1,μA2,μA3は式(1)に示すように厚さに相関するため、式(5)~(7)に記載するような第1部材21、第2部材22及び第3部材23に応じた相関式(関係情報)を式(4)に代入すると、式(8)が得られる。
【0029】
【数5】
【0030】
【数6】
【0031】
【数7】
【0032】
【数8】
【0033】
すなわち、処理部10は、照射X線の輝度C、透過X線の輝度C、及び、上式(5)~(7)に記載の相関式に関する情報(関係情報)に基づいて、上式(8)から、複数の検出領域それぞれにおいて、積層体20を構成する第1部材21、第2部材22及び第3部材23のうち第2部材22の厚さtを算出する。
【0034】
処理部10は、積層体20を構成する部材の数が2つ及び4つ以上の場合であっても、積層体20を構成する一部の部材(例えば、1つの部材等)の厚さtを算出することが可能である。
【0035】
なお、第1部材21、第2部材22及び第3部材23を積層させた積層体20のうち、第2部材22の厚さを測定する場合、第1部材21、第2部材22及び第3部材23は、この順に積層されてもよく、任意の順に積層されてもよい。この場合、第1部材21と第2部材22と第3部材23とは接してもよく、第1部材21と第2部材22と第3部材23との少なくとも一部が接していなくともよい。
【0036】
具体的な一例として、積層体20は、第1部材21、第2部材22及び第3部材23がこの順に積層されてもよい。この場合、第2部材22は、例えば、第1部材21と第3部材23とを接着させる接着剤等であってもよい。また、第1部材21及び第3部材23は、例えば、金属部材等であってもよい。
ここで、第1部材21、第2部材22及び第3部材23のうち少なくとも1つは、平面方向(図3のX方向)に応じて厚さtが異なっていてもよい。図3に例示する場合、第1部材21の厚さtは、W1及びW2で示すように異なっていてもよい。同様に、第2部材22の厚さtは、Z1及びZ2で示すように異なっていてもよい。
【0037】
また、第1部材及び第2部材を積層させた積層体のうち、第2部材の厚さを測定する場合、第1部材と第2部材とは接してもよく、第1部材と第2部材との少なくとも一部が接していなくともよい。
【0038】
[厚さ測定装置1の詳細]
次に、一実施形態に係る厚さ測定装置1について詳細に説明する。ここでは特に、処理部10について詳細に説明する。
図4は、一実施形態に係る厚さ測定装置1(処理部10)について説明するためのブロック図である。
【0039】
厚さ測定装置1(処理部10)は、例えば、通信部121、記憶部122、表示部123及び制御部111等を備える。通信部121、記憶部122及び表示部123は、出力部の一実施形態であってもよい。制御部111は、例えば、第1取得部112、第2取得部113、第3取得部114、対応付け部115、算出部116及び出力制御部117等を備える。制御部111は、例えば、厚さ測定装置1(処理部10)の演算処理装置等によって構成されてもよい。制御部111(例えば、演算処理装置等)は、例えば、記憶部122等に記憶される各種プログラム等を適宜読み出して実行することにより、各部(例えば、第1取得部112、第2取得部113、第3取得部114、対応付け部115、算出部116及び出力制御部117等)の機能を実現してもよい。
【0040】
通信部121は、例えば、処理部10の外部にある装置(外部装置)等との間で種々の情報の送受信が可能な通信インターフェースである。通信部121は、例えば、X線源2及び検出部3と通信を行ってもよい。また、通信部121は、例えば、サーバ及びユーザ端末(図示せず)等と通信を行ってもよい。ユーザ端末は、例えば、厚さ測定装置1のユーザが使用する端末であってもよく、デスクトップ、ラップトップ、タブレット及びスマートフォン等であってもよい。
【0041】
記憶部122は、例えば、種々の情報及びプログラムを記憶してもよい。記憶部122の一例は、メモリ、ソリッドステートドライブ及びハードディスクドライブ等であってもよい。なお、記憶部122は、例えば、クラウド上にある記憶領域及びサーバ等であってもよい。
【0042】
記憶部122は、複数の部材の厚さtとX線の透過に伴う輝度吸収係数μとの関係に関する関係情報を記憶する。
輝度吸収係数μは、部材の厚さtによって変化し、下式(9)に一例を示すような相関が有ることが発明者の実験等によって判明した。なお、aは係数、bは定数である。記憶部122は、下式(9)に例示するような、部材毎の厚さtと輝度吸収係数μとの関係を示す関係情報を記憶する。
【0043】
【数9】
【0044】
一例として、第1部材と第2部材とを備える積層体において、第2部材の厚さを測定する場合、記憶部122は、関係情報として、複数の部材としての第1部材及び第2部材それぞれの輝度吸収係数の厚さ依存性に関する情報(関係情報)を記憶してもよい。
第1部材の輝度吸収係数μA1と厚さtとの関係、すなわち輝度吸収係数μA1の厚さtの依存性は、上述した式(5)のように表される。換言すると、記憶部122に記憶した関係情報として第1部材についての輝度吸収係数μA1の厚さtの依存性を1次式で求めた際の関係式を上述した式(5)とする。
第2部材の輝度吸収係数μA2と厚さtとの関係、すなわち輝度吸収係数μA2の厚さtの依存性は、上述した式(6)のように表される。換言すると、記憶部122に記憶した関係情報として第2部材についての輝度吸収係数μA2の厚さtの依存性を1次式で求めた際の関係式を上述した式(6)とする。
【0045】
同様に一例として、第1部材21と第2部材22と第3部材23を備える積層体20において、第2部材22の厚さを測定する場合、記憶部122は、関係情報として、複数の部材としての第1部材21、第2部材22及び第3部材23それぞれの輝度吸収係数の厚さ依存性に関する情報を記憶してもよい。
第1部材21及び第2部材22それぞれの関係式(関係情報)は、上述したように式(5)及び式(6)のように表される。
第3部材23の輝度吸収係数μA3と厚さtとの関係、すなわち輝度吸収係数μA3の厚さtの依存性は、下式(7)のように表される。換言すると、記憶部122に記憶した関係情報として第3部材23についての輝度吸収係数μA3の厚さtの依存性を1次式で求めた際の関係式を上述した式(7)とする。
【0046】
表示部123は、例えば、種々の文字、記号及び画像等を表示することが可能なディスプレイである。
【0047】
第1取得部112は、X線源2から出射されるX線の輝度Cに関する情報を取得する。
第1取得部112は、例えば、通信部121を介して、X線の輝度Cに関する情報を、X線源2から取得してもよい。
又は、制御部111は、例えば、X線源2を制御可能であり、X線源2の管電流及び管電圧等の種々のパラメータが設定される場合に、そのパラメータと、X線源2から出射されるX線の輝度Cとが対応付けられている際には、その対応付けを参照し、設定されたパラメータに応じたX線の輝度Cを取得してもよい。
又は、第1取得部112は、X線源2から出射されるX線の輝度Cが一定の場合には、予め設定されるその一定のX線の輝度Cを取得してもよい。
なお、第1取得部112は、上述した一例に限らず、種々の方法によりX線源2から出射されるX線の輝度Cを取得してもよい。
【0048】
第2取得部113は、X線源2から出射されたX線が複数の部材を積層させた積層体20を透過した際の透過X線を検出部3で検出した場合の透過X線の輝度Cに関する情報を取得する。第2取得部113は、例えば、通信部121を介して、検出部3から透過X線の輝度Cを取得してもよい。なお、第2取得部113は、例えば、検出部3に配される複数の検出領域毎に検出された透過X線の輝度Cをそれぞれ取得してもよい。
【0049】
第3取得部114は、積層体20の形状及び一部の厚さに関する積層体情報を取得する。第3取得部114は、例えば、通信部121を介して、サーバ及びユーザ端末(図示せず)等から積層体情報を取得してもよい。積層体情報は、例えば、積層体20の形状(立体的形状)の情報であってもよい。一例として、積層体情報は、積層体20を構成する複数の部材(例えば、後述する第1部材21、第2部材22及び第3部材23等)のうち、厚さ測定の対象となる部材(例えば、第2部材22等)を除く一部の部材(例えば、第1部材21、第3部材23等)の形状(平面形状)及び厚さ(例えば、厚さt、t等)、すなわち一部の部材の立体的形状の情報等であってもよい。具体的な一例として、積層体情報は、CAD情報及びCAE情報等を始めとする種々の情報であってもよい。
【0050】
対応付け部115は、積層体20を構成する複数の部材のうちの一部の厚さを、検出部3における透過X線の複数の検出領域に対応付ける。すなわち、対応付け部115は、例えば、厚さ測定の対象となる部材とは異なる(厚さ測定の対象ではない)一部の部材(例えば、第1部材21及び第3部材23等)の厚さ(例えば、厚さt、t等)を検出部3(複数の検出領域それぞれ)に対応付ける。
積層体20は、例えば、平板に限定されることはなく、種々の形状であってもよい。このため、検出部3の検出面(平面)に向けて見た場合(平面視した場合)、検出領域毎に積層体20の厚さが異なる場合がある。
対応付け部115は、一部の部材それぞれの既知の厚さを、積層体20の形状(平面形状)に応じて複数の検出領域それぞれに対応付ける。
この場合、対応付け部115は、第3取得部114で取得した積層体情報に基づいて、積層体20の一部の部材(例えば、第1部材21及び第3部材23等)の厚さ(例えば、厚さt、t等)を検出領域に対応付けてもよい。
【0051】
ここで一例として、第1部材21及びと第2部材を積層させた積層体の場合、対応付け部115は、第1部材の厚さtを複数の検出領域それぞれに対応付けてもよい。すなわち、対応付け部115は、第1部材の平面形状に応じて、その第1部材の厚さtを、検出部3を構成する複数の検出領域に対応付ける。これにより、第1部材の厚さtが一定でない場合でも、検出領域毎に第1部材の厚さtが設定される。
この場合、対応付け部115は、第3取得部114で取得した積層体情報に基づいて、積層体の一部の部材(例えば、第1部材)の厚さ(例えば、厚さt)を検出領域に対応付けてもよい。積層体情報は、例えば、積層体を構成する複数の部材のうち、厚さ測定の対象となる部材(例えば、第2部材)とは異なる一部の部材(例えば、第1部材)の形状及び厚さ(例えば、厚さt)の情報を含んでもよい。
【0052】
同様に一例として、第1部材21、第2部材22及び第3部材23を積層させた積層体20の場合、対応付け部115は、第1部材21及び第3部材23それぞれの厚さt,tを複数の検出領域それぞれに対応付けてもよい。
すなわち、対応付け部115は、第1部材21の平面形状に応じて、その第1部材21の厚さtを、検出部3を構成する複数の検出領域に対応付ける。これにより、第1部材21の厚さtが一定でない場合でも、検出領域毎に第1部材21の厚さtが設定される。
同様に、対応付け部115は、第3部材23の平面形状に応じて、その第3部材23の厚さtを、検出部3を構成する複数の検出領域に対応付ける。これにより、第3部材23の厚さtが一定でない場合でも、検出領域毎に第3部材23の厚さtが設定される。
この場合、対応付け部115は、第3取得部114で取得した積層体情報に基づいて、積層体20の一部の部材(例えば、第1部材21及び第3部材23)の厚さ(例えば、厚さt,t)を検出領域に対応付けてもよい。積層体情報は、例えば、積層体20を構成する複数の部材のうち、厚さ測定の対象となる部材(例えば、第2部材22)とは異なる一部の部材(例えば、第1部材21及び第3部材23)の形状及び厚さ(例えば、厚さt,t)の情報を含んでもよい。
より具体的な一例として、図3に例示する積層体20では、対応付け部は、第1部材21の厚さtとしてのW1を、検出部3を構成する複数の検出領域3aに対応付けてもよい。同様に、対応付け部は、第1部材21の厚さtとしてのW2を、検出部3の検出領域3bに対応付けてもよい。
【0053】
算出部116は、第1取得部112で取得したX線の輝度Cと、第2取得部113で取得した透過X線の輝度Cと、記憶部122に記憶した関係情報とに基づいて、複数の検出領域それぞれにおいて、複数の部材のうちの一部の部材(例えば、第1部材21、第3部材23等)を除く他の部材(例えば、第2部材22等)の厚さ(例えば、厚さt等)を算出する。
すなわち、算出部116は、X線の輝度C、積層体20を透過したX線(透過X線)の輝度C(複数の検出領域それぞれで検出される透過X線の輝度C)、及び、複数の検出領域にそれぞれに対応付けられる一部の部材(厚さ測定の対象となる部材とは異なる一部の部材)(例えば、第1部材21、第3部材23等)の厚さ(例えば、厚さt、t等)に基づいて、部材(例えば、第2部材22等)の厚さ(例えば、厚さt等)を算出する。
【0054】
ここで一例として、第1部材及び第2部材を積層させた積層体の場合、算出部116は、第1取得部112で取得したX線の輝度(照射X線輝度)をC、第2取得部113で取得する検出領域毎の透過X線の輝度(積層体20を透過した透過X線輝度)をCとすると、第2部材の厚さtを後述する式(22)を用いて算出する。
【0055】
同様に一例として、第1部材21、第2部材22及び第3部材23を積層させた積層体20の場合、算出部116は、第1取得部112で取得したX線の輝度(照射X線輝度)をC、第2取得部113で取得する検出領域毎の透過X線の輝度(積層体20を透過した透過X線輝度)をCとすると、第2部材22の厚さtを後述する式(21)を用いて算出する。
【0056】
なお、算出部116は、例えば、厚さ測定の対象とはならない一部の部材(例えば、第1部材21、第3部材23等)の輝度吸収係数(例えば、輝度吸収係数μA1,μA3等)は既知であり、設計上の情報として取得可能である。また、算出部116は、例えば、厚さ測定の対象となる部材(例えば、第2部材22等)の輝度吸収係数(例えば、輝度吸収係数μA2)については、関係情報(例えば、一次相関の式(9)等)に基づいて取得することが可能である。
各部材の情報取得に際しては、処理部10へ数値入力の他に、CAD等の設計情報から処理部10へ取り込まれるようにしてもよい。
算出に際し使用される相関式は、一次関数、二次関数等の相関性が認められる関数式であり、第2部材22の材質により適切に選択される。本実施形態では、相関式に直線回帰の一次相関の式(6)が適用されてもよい。
算出部116は、例えば、後述する式(21)又は式(22)に必要な数値を入力し、第2部材22の厚さtを算出する。
【0057】
出力制御部117は、算出部116によって算出された他の部材の厚さを出力するよう出力部を制御してもよい。出力部は、例えば、通信部121、記憶部122及び表示部123等であってもよい。
すなわち、出力制御部117は、例えば、他の部材の厚さに関する情報を外部装置に送信するよう通信部121を制御してもよい。ここで、外部装置は、サーバ及びユーザ端末(図示せず)等であってもよい。
出力制御部117は、例えば、他の部材の厚さに関する情報を記憶するよう記憶部122を制御してもよい。
出力制御部117は、例えば、他の部材の厚さを表示するよう表示部123を制御してもよい。
【0058】
(輝度吸収係数及び算出式)
次に、輝度吸収係数及び算出部116で厚さの算出に用いる算出式について説明する。
図5は、厚さ算出の誤差を説明する模式図である。
図6は、相関式を説明する模式図である。
図7は、X線強度及び輝度吸収係数について説明するための図である。図7(A)はX線強度と輝度吸収係数との関係を示す第1模式図、図7(B)はX線強度と輝度吸収係数との関係を示す第2模式図である。
【0059】
輝度吸収係数は、物質の厚さによって変化する。しかし、この輝度吸収係数は、ある物質についての特定の厚さにおける測定から導き出された数値である。従前のX線を用いた非破壊の厚さ測定装置1においては、単純に物質毎に所定の輝度吸収係数を用い、被検査物に含まれる層の厚さを算出していた。
【0060】
ところが、図5の模式図のように、厳密には、物質の厚さ(板厚)(横軸)が増減すると、物質の種類によっては、輝度吸収係数は右下がりの曲線のように変化してしまうことが判明した。なお図示とは異なり、物質の種類により、輝度吸収係数の曲線の傾き、右上がり等の変化は見られる。一般に、物質の厚さが増加(厚くなる)すると、算出される数値は実測よりも減少し、逆にある物質の厚さが減少(薄くなる)すると、算出される数値は実測よりも増加する。そのため、所定の厚さ(t:例えば厚さ2mm)の1点のみに基づく輝度吸収係数を利用すると、現実の非破壊検査の際の算出では、当然に所定の厚さ(t)以外の厚さであることから、算出と実測(正寸)との間の誤差が不可避であった。
【0061】
そこで、予め、計測対象について、厚さの異なる複数の試料が作成され、同時に各試料の輝度吸収係数が求められる。そこで、試料における厚さと輝度吸収係数の相関性に基づいて所定の相関式が設定される。具体的には、複数種類の厚さの第2部材22(接着剤等の樹脂素材等の厚さ測定の対象となる部材)と、各厚さの第2部材22の輝度吸収係数との間に成立する相関式が設定される。
【0062】
相関式については、一次関数、二次関数、べき関数、指数関数、対数関数等の相関性が認められる関数式が採用される。関数式の選択に際しては、第2部材22(接着剤等の樹脂素材)の材質、素材が考慮される。
【0063】
実施形態では、相関式は、直線回帰の一次相関の式(10)として規定される。式(10)は、図6の模式図のとおり、第2部材22の複数の厚さの試料と、第2部材22の複数の厚さの試料の輝度吸収係数から最小二乗法により算出され、設定される。一次相関の式とする場合、式中に含まれる係数、定数の個数が少なく、後述の関係式の設定は容易となる。
【0064】
式(10)において、μA2は第2部材22の輝度吸収係数、tは第2部材22の厚さ、aは一次相関の式の係数、bは一次相関の式の定数である。
【0065】
【数10】
【0066】
なお、第1部材21及び第3部材23についても、第2部材22と同様に、直線回帰の一次相関の式が規定される(式(5),(7)参照)。
【0067】
ここで、図7の模式図を用い、X線強度と輝度吸収係数との関係について説明する。図7(A)の第1模式図では、所定の部材(金属、樹脂等)について、厚さ(X透過距離)t、材質に基づくX線吸収係数μ、照射X線強度I、及び、透過X線強度Iが求められたとする。すると、下式(11)の関係式が成立する。これより、厚さtについて導くと、式(12)が成立する。式中の「ln」は自然対数である。なお、X線吸収係数μは輝度吸収係数μに変換可能である(式(13)参照)。
【0068】
【数11】
【0069】
【数12】
【0070】
【数13】
【0071】
式(13)中、照射X線強度Iは背景の輝度C、透過X線強度Iは輝度Cとして置換して、μは輝度吸収係数、tは厚さである。より詳しく説明すると、X線吸収係数によって吸収されるX線の強度と、輝度吸収係数によって減弱される輝度は等価である。そこで、X線強度のI及びIを、C及びCに置き換えることによりX線吸収係数を輝度吸収係数に読み替えることが可能である。また、撮影環境では連続したエネルギのスペクトルが生じる。このため、輝度吸収係数には板厚依存性がある。これに対し、エネルギ毎に固有の値を有するX線吸収係数は板厚依存性との関連を有さない。
【0072】
次に、図7(B)の第2模式図では、複数の部材が重なった状態が示される。模式図は、実施形態の第1部材21、第2部材22、及び第3部材23からなる積層物に対応する3層構造を想定している。図中、Cは透過X線輝度(最終透過X線輝度)、Cは透過前のX線輝度(照射X線輝度)、Cは第1部材21を透過後のX線輝度、Cは第2部材22を透過後のX線輝度、μA1は第1部材21の輝度吸収係数、μA2は第2部材22の輝度吸収係数、μA3は第3部材23の輝度吸収係数、tは第1部材21の厚さ、tは第2部材22の厚さ、tは第3部材23の厚さである。
【0073】
前出の式(11)に倣って第2模式図の3層構造の関係式を構築すると、式(14)が成立する。そして、式(15)のとおり変形することができる。式(15)の上3段の式では、式(11)から式(14)まで拡張する様子の式が示され、続いて両辺はCで除され、最終的に自然対数をとった式に変形される。こうして、式(16)のtの式として中間に存在する部材(層)の厚さを求めることができる。
【0074】
【数14】
【0075】
【数15】
【0076】
【数16】
【0077】
【数17】
【0078】
【数18】
【0079】
【数19】
【0080】
【数20】
【0081】
式(16)より第1部材21と第3部材23に挟まれた第2部材22の厚さtは算出可能である。しかしながら、前掲の図5の説明のとおり、式(16)の中の第2部材22の輝度吸収係数のμA2をそのまま使用すると、測定対象の厚さいかんによって誤差が増大して非破壊検査の精度が低下する。
【0082】
そこで、厚さと輝度吸収係数の相関式、具体的には、前出の一次相関の式(10)が取り入れられる。結果、第2部材22の輝度吸収係数のμA2は、一次相関の式(10)を通じて補正される。すなわち、式(10)を式(16)に代入して、式(17)を得ることができる。さらに、式(17)において、t(第2部材22の厚さ)を解くことができ、式(18)を得ることができる。
【0083】
【数21】
【0084】
【数22】
【0085】
式(18)に、第1部材21の輝度吸収係数μA1と厚さtとの関係(式(19)参照)と、第3部材23の輝度吸収係数μA3と厚さtとの関係(式(20)参照)を代入することにより、第2部材22の厚さtを算出するための算出式(式(21)参照)を得ることができる。
【0086】
【数23】
【0087】
【数24】
【0088】
【数25】
【0089】
上式(21)は、第1部材21、第2部材22及び第3部材23を備える積層体20のうち、第2部材22の厚さtを求める際の算出式となる。
【0090】
上記と同様にして、第1部材及び第2部材を備える積層体のうち、第2部材の厚さtを求める際の算出式(下式(22)参照)も得ることが可能である。
【0091】
【数26】
【0092】
[厚さ測定方法]
次に、一実施形態に係る厚さ測定方法について説明する。
図8は、一実施形態に係る厚さ測定方法について説明するためのフローチャートである。
【0093】
ステップST101において、第3取得部114は、積層体20の形状及び一部の厚さに関する積層体情報を取得する。
【0094】
ステップST102において、対応付け部115は、ステップST101で取得した積層体情報に基づいて、積層体20の一部の部材の厚さを検出領域に対応付けてもよい。すなわち、対応付け部115は、積層体20を構成する複数の部材のうちの一部の厚さを、検出部3における透過X線の複数の検出領域に対応付ける。
ここで一例として、第1部材及び第2部材を積層させた積層体の場合、対応付け部115は、第1部材の厚さtを複数の検出領域それぞれに対応付けてもよい。
同様に一例として、第1部材21、第2部材22及び第3部材23を積層させた積層体20の場合、対応付け部115は、第1部材21及び第3部材23それぞれの厚さt,tを複数の検出領域それぞれに対応付けてもよい。
【0095】
ステップST103において、第1取得部112は、X線源2から出射されるX線の輝度Cに関する情報を取得する。
【0096】
ステップST104において、第2取得部113は、X線源2から出射されたX線が複数の部材を積層させた積層体20を透過した際の透過X線を検出部3で検出した場合の透過X線の輝度Cに関する情報を取得する。
【0097】
ステップST105において、算出部116は、ステップST103で取得したX線の輝度Cと、ステップST104で取得した透過X線の輝度Cと、記憶部122に記憶した関係情報とに基づいて、複数の検出領域それぞれにおいて、複数の部材のうちの一部の部材を除く他の部材の厚さ算出する。
ここで一例として、第1部材21、第2部材22及び第3部材23を積層させた積層体20の場合、算出部116は、X線の輝度(照射X線輝度)C、検出領域毎の透過X線輝度C、及び、関係情報(例えば、相関式(5)~(7)等)に基づいて、第2部材22の厚さtを式(21)を用いて算出する。
同様に一例として、第1部材及びと第2部材を積層させた積層体の場合、算出部116は、X線の輝度(照射X線輝度)C、検出領域毎の透過X線輝度C、及び、関係情報(例えば、相関式(5),(6)等)に基づいて、第2部材の厚さtを式(22)を用いて算出する。
【0098】
なお、ステップST105の処理の後、出力制御部117は、ステップST105で算出された他の部材の厚さ(例えば、第2部材22の厚さt)を出力するよう出力部を制御してもよい。
【0099】
[機能及び回路について]
次に、上述した厚さ測定装置1の機能及び回路について説明する。
厚さ測定装置1の各部は、コンピュータの演算処理装置等の機能として実現されてもよい。すなわち、厚さ測定装置1の第1取得部112、第2取得部113、第3取得部114、対応付け部115、算出部116及び出力制御部117(制御部111)は、コンピュータの演算処理装置等による第1取得機能、第2取得機能、第3取得機能、対応付け機能、算出機能及び出力制御機能(制御機能)としてそれぞれ実現されてもよい。
厚さ測定プログラムは、上述した各機能をコンピュータに実現させることができる。厚さ測定プログラムは、例えば、メモリ、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ又は光ディスク等の、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体等に記録されていてもよい。記録媒体は、例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体と言い換えてもよい。
また、上述したように、厚さ測定装置1の各部は、コンピュータの演算処理装置等で実現されてもよい。その演算処理装置等は、例えば、集積回路等によって構成される。このため、厚さ測定装置1の各部は、演算処理装置等を構成する回路として実現されてもよい。すなわち、厚さ測定装置1の第1取得部112、第2取得部113、第3取得部114、対応付け部115、算出部116及び出力制御部117(制御部111)は、コンピュータの演算処理装置等を構成する第1取得回路、第2取得回路、第3取得回路、対応付け回路、算出回路及び出力制御回路(制御回路)として実現されてもよい。
また、厚さ測定装置1の通信部121、記憶部122及び表示部123(出力部)は、例えば、演算処理装置等の機能を含む通信機能、記憶機能及び表示機能(出力機能)として実現されてもよい。また、厚さ測定装置1の通信部121、記憶部122及び表示部123(出力部)は、例えば、集積回路等によって構成されることにより通信回路、記憶回路及び表示回路(出力回路)として実現されてもよい。また、厚さ測定装置1の通信部121、記憶部122及び表示部123(出力部)は、例えば、複数のデバイスによって構成されることにより通信装置、記憶装置及び表示装置(出力装置)として構成されてもよい。
【0100】
厚さ測定装置1は、上述した複数の各部のうち1又は任意の複数を組み合わせることが可能である。
本開示では、「情報」の文言を使用しているが、「情報」の文言は「データ」と言い換えることができ、「データ」の文言は「情報」と言い換えることができる。
【0101】
[変形例]
上述した実施形態では、X線を利用した厚さ測定について説明した。しかしながら、本開示の厚さ測定装置1等では、X線を利用するばかりでなく、種々の波長(波長域)の光及び放射線(電磁波)を利用して厚さを測定してもよい。この場合、厚さ測定装置1等は、赤外光、可視光及び紫外光等を利用して、厚さを測定してもよい。種々の波長(波長域)を利用して厚さを測定する部材の一例は、半導体等を始めとする種々の材質からなる部材であってもよい。
この場合であっても、厚さ測定装置1等は、積層体を構成する複数の部材それぞれの輝度吸収係数の厚さ依存性(例えば、式(1),(5)~(7)参照)を利用して、検出部3における複数の検出領域毎の厚さ(例えば、上述した第2部材の厚さt等)を測定することができる。
【0102】
[本実施形態の態様及び効果]
次に、本実施形態の一態様及び各態様が奏する効果について説明する。なお、以下に記載する各態様は出願時の一例であり、本実施形態は以下に記載する態様に限定されることはない。すなわち、本実施形態は以下に記載する各態様に限定されることはなく、上述した各部を適宜組み合わせて実現されてもよい。また、下位の態様は、それよりも上位の態様のいずれでも引用できる場合がある。
また、以下に記載する効果は一例であり、各態様が奏する効果は以下に記載するものに限定されることはない。また、各態様は、例えば、以下に記載する少なくとも1つの効果を奏してもよい。
【0103】
(態様1)
一態様の厚さ測定装置は、複数の部材の厚さとX線の透過に伴う輝度吸収係数との関係に関する関係情報を記憶する記憶部と、X線源から出射されるX線の強度に関する情報を取得する第1取得部と、X線源から出射されたX線が複数の部材を積層させた積層体を透過した際の透過X線を検出部で検出した場合の透過X線の強度に関する情報を取得する第2取得部と、積層体を構成する複数の部材のうちの一部の厚さを、検出部における透過X線の複数の検出領域に対応付ける対応付け部と、第1取得部で取得したX線の強度と、第2取得部で取得した透過X線の強度と、記憶部に記憶した関係情報とに基づいて、複数の検出領域それぞれにおいて、複数の部材のうちの一部を除く他の部材の厚さを算出する算出部と、を備える。
これにより、厚さ測定装置は、積層物を構成する複数の部材それぞれの輝度吸収係数(複数の部材それぞれの輝度吸収係数の厚さ依存性)を考慮して、その積層物を構成する部材(他の部材)の厚さを非破壊により測定することができる。
また、厚さ測定装置は、複数の検出領域毎に他の部材の厚さを算出するので、複数の検出領域で算出された厚さをまとめることにより、「面」として他の部材の厚さを求めることができる。
なお、従来では、輝度吸収係数ではなく、厚さに依存しない吸収係数を用いられる場合があった。従来の吸収係数を用いて厚さを求める場合、測定対象となる部材の厚さが測定毎に変動すると、厚さを正確に求められないことがあった。
そこで、本実施形態の厚さ測定装置では、厚さ依存性のある輝度吸収係数を利用するので、測定対象となる部材の厚さが測定毎に変動する場合でも、従来に比べてより正確に厚さを求めることができる。
【0104】
(態様2)
一態様の厚さ測定装置では、X線の強度は輝度に置き換えが可能であり、記憶部は、関係情報として、複数の部材としての第1部材及び第2部材それぞれの輝度吸収係数の厚さ依存性に関する情報を記憶し、対応付け部は、第1部材の厚さを複数の検出領域それぞれに対応付け、算出部は、第1取得部で取得したX線の強度に対応する輝度をC、第2取得部で取得する検出領域毎の透過X線の強度に対応する輝度をC、記憶部に記憶した関係情報として第1部材についての輝度吸収係数の厚さの依存性を1次式で求めた際の関係式を上記の式(5)とし、記憶部に記憶した関係情報として第2部材についての輝度吸収係数の厚さの依存性を1次式で求めた際の関係式を上記の式(6)とすると、第2部材の厚さtを上記の式(22)を用いて算出することとしてもよい。
これにより、厚さ測定装置は、第1部材及び第2部材を積層させた積層物のうち第2部材(他の部材)の厚さtを算出することができる。
【0105】
(態様3)
一態様の厚さ測定装置では、記憶部は、関係情報として、複数の部材としての第1部材、第2部材及び第3部材の輝度吸収係数の厚さ依存性に関する情報を記憶し、対応付け部は、第1部材及び第3部材それぞれの厚さを複数の検出領域それぞれに対応付け、算出部は、記憶部に記憶した関係情報として第3部材についての輝度吸収係数の厚さの依存性を1次式で求めた際の関係式を上記の式(7)とすると、第2部材の厚さtを上記の式(8)を用いて算出することとしてもよい。
これにより、厚さ測定装置は、第1部材、第2部材及び第3部材を積層させた積層物のうち第2部材(他の部材)の厚さtを算出することができる。
【0106】
(態様4)
一態様の厚さ測定装置では、積層体は、第1部材、第2部材及び第3部材がこの順に積層されており、第2部材は、第1部材と第3部材とを接着させる接着剤であることとしてもよい。
これにより、厚さ測定装置は、第2部材としての接着剤の厚さを測定することができる。
【0107】
(態様5)
一態様の厚さ測定装置では、積層体の形状及び一部の厚さに関する積層体情報を取得する第3取得部を備え、対応付け部は、第3取得部で取得した積層体情報に基づいて、積層体の一部の厚さを検出領域に対応付けることとしてもよい。
これにより、厚さ測定装置は、積層物が平面方向(複数の検出領域で形成される検出面に平行な方向(図3に例示するX方向))に幅を持っていても、その平面方向に応じた(複数の検出領域毎に)第2部材の厚さを測定することができる。すなわち、厚さ測定装置は、「面」での第2部材の厚さを測定することができる。
【0108】
(態様6)
一態様の厚さ測定装置は、光源から出射される光の強度に関する情報を取得する第1取得部と、光源から出射された光が複数の部材を積層させた積層体を透過した際の透過光を検出部で検出した場合の透過光の強度に関する情報を取得する第2取得部と、積層体を構成する複数の部材のうちの一部の厚さを、検出部における透過光の複数の検出領域に対応付ける対応付け部と、第1取得部で取得した光の強度と、第2取得部で取得した透過光の強度と、複数の部材それぞれの輝度吸収係数の厚さ依存性に関する情報とに基づいて、複数の検出領域それぞれにおいて、複数の部材のうちの一部を除く他の部材の厚さを算出する算出部と、を備える。
これにより、厚さ測定装置は、上述した態様と同様の効果を奏することができる。
【0109】
(態様7)
一態様の厚さ測定方法では、複数の部材の厚さとX線の透過に伴う輝度吸収係数との関係に関する関係情報を記憶する記憶部を有するコンピュータが、X線源から出射されるX線の強度に関する情報を取得する第1取得ステップと、X線源から出射されたX線が複数の部材を積層させた積層体を透過した際の透過X線を検出部で検出した場合の透過X線の強度に関する情報を取得する第2取得ステップと、積層体を構成する複数の部材のうちの一部の厚さを、検出部における透過X線の複数の検出領域に対応付ける対応付けステップと、第1取得ステップで取得したX線の強度と、第2取得ステップで取得した透過X線の強度と、記憶部に記憶した関係情報とに基づいて、複数の検出領域それぞれにおいて、複数の部材のうちの一部を除く他の部材の厚さを算出する算出ステップと、を実行する。
これにより、厚さ測定方法は、上述した一態様の厚さ測定装置と同様の効果を奏することができる。
【0110】
(態様8)
一態様の厚さ測定プログラムは、コンピュータに、複数の部材の厚さとX線の透過に伴う輝度吸収係数との関係に関する関係情報を記憶する記憶機能と、X線源から出射されるX線の強度に関する情報を取得する第1取得機能と、X線源から出射されたX線が複数の部材を積層させた積層体を透過した際の透過X線を検出部で検出した場合の透過X線の強度に関する情報を取得する第2取得機能と、積層体を構成する複数の部材のうちの一部の厚さを、検出部における透過X線の複数の検出領域に対応付ける対応付け機能と、第1取得機能で取得したX線の強度と、第2取得機能で取得した透過X線の強度と、記憶機能に記憶した関係情報とに基づいて、複数の検出領域それぞれにおいて、複数の部材のうちの一部を除く他の部材の厚さを算出する算出機能と、を実現させる。
これにより、厚さ測定プログラムは、上述した一態様の厚さ測定装置と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 厚さ測定装置
2 X線源
3 検出部
10 処理部
111 制御部
112 第1取得部
113 第2取得部
114 第3取得部
115 対応付け部
116 算出部
117 出力制御部
121 通信部
122 記憶部
123 表示部
20 積層体
図1
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図3
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図8