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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114001
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】レーザモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02325 20210101AFI20240816BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01S5/02325
H01S5/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019338
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】300081763
【氏名又は名称】セーレンKST株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲文
(72)【発明者】
【氏名】姫野 明
(72)【発明者】
【氏名】川崎 修
(72)【発明者】
【氏名】岩端 一樹
(72)【発明者】
【氏名】矢部 勇多
(72)【発明者】
【氏名】堀井 浩一
(72)【発明者】
【氏名】亀井 洋次郎
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MC01
5F173MC02
5F173MD34
5F173ME44
5F173MF04
5F173MF26
(57)【要約】
【課題】製造コストを大きく増大させないと共に小型化を可能とする、レーザダイオードの出力が安定したレーザモジュールを提供する。
【解決手段】波長の異なる光を出力する複数個のレーザダイオードと、前記複数個のレーザダイオードの背面にモニタ用フォトダイオードが配置されたレーザモジュールであって、前記複数個のレーザダイオードにおける出力光の光軸中心間の距離が100~700μmであって、前記モニタ用フォトダイオードが1つであることを特徴とするレーザモジュール。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長の異なる光を出力する複数個のレーザダイオードと、前記複数個のレーザダイオードの背面にモニタ用フォトダイオードが配置されたレーザモジュールであって、前記複数個のレーザダイオードにおける出力光の光軸中心間の距離が100~700μmであって、前記モニタ用フォトダイオードが1つであることを特徴とするレーザモジュール。
【請求項2】
前記複数個のレーザダイオードの出力光を得るための電極間を接合する金属ワイヤが、前記複数個のレーザダイオードの背面と、前記モニタ用フォトダイオードの間の領域を避けて用いられている、請求項1に記載のレーザモジュール。
【請求項3】
前記複数個のレーザダイオードの背面のそれぞれの端面が、少なくとも平行面であって、前記モニタ用フォトダイオードの受光面が、前記少なくとも平行面に対して8度以上、90度未満の角度で傾斜している、請求項1または2に記載のレーザモジュール。
【請求項4】
前記波長の異なる光を出力する複数個のレーザダイオードが、少なくとも青色光、緑色光、及び赤色光を出力する3個のレーザダイオードである請求項1または2に記載のレーザモジュール。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザモジュールを光源とし、さらに光合波器を含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置における光合波器の光源として用いるレーザモジュールであって、波長の異なる光を出力する複数個のレーザダイオードと、前記複数個のレーザダイオードの背面にモニタ用フォトダイオードが配置されたレーザモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼鏡型端末や携帯型プロジェクタ等の画像表示装置の光源部分に用いられる合成光生成装置において、複数のレーザ光を光源として用いた光合波器が知られている(特許文献1を参照)。前記光合波器は、シリコン基板上に公知の化学気相成長法(CVD)やスパッタリング法等を用いて低屈折率および高屈折率のシリコン酸化膜を積層形成した後、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、さらに低屈折率シリコン酸化膜を積層形成しオーバークラッド層にするという工程を経て製造される。
【0003】
ここで、上記レーザ光を発生させるレーザダイオードは、温度、湿度、静電気、電源ノイズ等の使用時の環境により変化又は劣化することが知られており、前記劣化の問題に対し、レーザダイオードの出射光側と反対の背面側に光検出器を設けて、前記背面側に出射する光を検出し、フィードバック制御することにより、レーザダイオードの出力を安定させる光通信モジュールが知られている(特許文献2を参照)。
【0004】
しかし、出力が安定した光合波器の光源として、複数のレーザダイオード及び検出器としてモニタ用フォトダイオードを含むレーザモジュールを製造する場合、前記光通信モジュールのようにレーザダイオードごとにモニタ用フォトダイオードを設けると、部品点数及び組立工数が増加することから製造コストが大きく増大するという問題があった。また、前記光合波器は小型である方が好ましいことから、前記レーザモジュールも小型化する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-195603号公報
【特許文献2】特開平10-253857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、このような事情に鑑みてなされたものであり、製造コストを大きく増大させないと共に小型化を可能とする、レーザダイオードの出力が安定したレーザモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、波長の異なる光を出力する複数個のレーザダイオードと、前記複数個のレーザダイオードの背面にモニタ用フォトダイオードが配置されたレーザモジュールであって、前記複数個のレーザダイオードにおける出力光の光軸中心間の距離が100~700μmであって、前記モニタ用フォトダイオードが1つであることを特徴とするレーザモジュールを提供する。
【0008】
前記複数個のレーザダイオードの出力光を得るための電極間を接合する金属ワイヤが、前記複数個のレーザダイオードの背面と、前記モニタ用フォトダイオードの間の領域を避けて用いられていることが好ましい。
【0009】
前記複数個のレーザダイオードの背面のそれぞれの端面が、少なくとも平行面であって、前記モニタ用フォトダイオードの受光面が、前記少なくとも平行面に対して8度以上、90度未満の角度で傾斜していることが好ましい。
【0010】
前記波長の異なる光を出力する複数個のレーザダイオードが、少なくとも青色光、緑色光、及び赤色光を出力する3個のレーザダイオードであることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、前記レーザモジュールを光源とし、さらに光合波器を含む画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、波長の異なる光を出力する複数個のレーザダイオードと、前記複数個のレーザダイオードの背面にモニタ用フォトダイオードが配置されたレーザモジュールであって、レーザダイオードの背面からの漏洩光をモニタ用フォトダイオードが検出してフィードバック制御することにより、光源であるそれぞれのレーザダイオードの出力を安定させることができると共に、前記複数個のレーザダイオードにおける出力光の光軸中心間の距離が100~700μmであることから小型化を可能とし、また、前記モニタ用フォトダイオードが1つであることから部品点数及び組立工数の増加は最小限であり、製造コストを大きく増大することがないレーザモジュールの提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のレーザモジュール及び光合波器を含む合成光生成装置の上面図である。
図2図1におけるレーザモジュール部分の拡大図である。
図3】本発明におけるモニタ用フォトダイオードの水平方向における傾斜を示す上面図である。
図4】本発明におけるモニタ用フォトダイオードの鉛直方向における傾斜を示す側面図である。
図5】本発明のレーザモジュール及び光合波器を含む合成光生成装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0015】
図1は、本発明のレーザモジュール及び光合波器を含む合成光生成装置100の上面図を示す。赤色レーザダイオード1、緑色レーザダイオード2、及び青色レーザダイオード3から出力された、波長の異なる3つの光が光合波器5に入力され、多重光に合波されて光合波器5の右側から出力される(多重光の出力は図示なし)。また、レーザダイオード1~3の出力面(右側)の背面(左側)にモニタ用フォトダイオード4が配置されており、レーザダイオードの背面からの漏洩光をモニタ用フォトダイオード4が検出してフィードバック制御することにより、光源であるそれぞれのレーザダイオードの出力を安定させる。前記フィードバック制御は特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0016】
ここで、レーザダイオード1~3の出力光の光軸中心間の距離は100~700μmであり、120~650μmが好ましく、140~450μmが好ましい。100μm未満であるとレーザダイオードの出力方向に対する幅は最大で約100μmであることから、複数のレーザダイオードを並列して配設することが困難となる場合があり、700μmを超えるとレーザモジュールを小型化することが困難となる。また、モニタ用フォトダイオード4は、レーザダイオード1~3に対して1つであることから、レーザダイオードごとにモニタ用フォトダイオードを設けた場合に比較して、レーザモジュールの小型化、及び製造コストを大きく増大しないことを可能にする。
【0017】
レーザダイオード1~3及び光合波器5は基板6の上に配設されると共に、モニタ用フォトダイオード4は基板7の上に配設され、基板6、7は別々に製造された後に接着剤等を用いて接続されるか、または、別の基板上に共に配設される。
【0018】
本発明における「波長の異なる複数の光」としては、例えば、波長が430~495nmの青色光、495~570nmの緑色光及び610~770nmの赤色光を挙げることができるが、これらに限定するものではなく、他に波長の異なる光として、570~595nmの黄色光、595~610nmの橙色光、400~430nmの紫色光等を挙げることができる。ここで、少なくとも光の3原色である青色光、緑色光、及び赤色光を含むことが好ましい。
【0019】
図2は、図1におけるレーザダイオード1~3及びモニタ用フォトダイオード4を含むレーザモジュール部分の拡大図を示す。基板6上に配設されたレーザダイオード1~3及び電極、並びに基板7上に配設されたモニタ用フォトダイオード4及び電極が記載されており、レーザダイオード1~3の出力光を得るため、基板6上に配設された電極と基板7上に配設された電極間を金属ワイヤ8により接合する。ここで、前記金属ワイヤ8は、レーザダイオード1~3の背面からの漏洩光をモニタ用フォトダイオード4が検出するのを妨げないように、レーザダイオード1~3の背面から前記モニタ用フォトダイオード4までの領域(破線で示す領域)を避けて用いられる。前記領域に金属ワイヤ8が存在する場合、前記漏洩光がモニタ用フォトダイオード4に検出されることを妨害する場合がある。
【0020】
図3(a)~(d)は、レーザダイオード1~3の背面のそれぞれの端面が、少なくとも平行面であると共に、モニタ用フォトダイオード4の受光面が、前記少なくとも平行面に対して傾斜している場合の上面図を示す。ここで、前記傾斜は水平方向における傾斜のみを示し、鉛直方向には傾斜していないものとして示す。レーザダイオード1の背面に対して直角記号で示した点線に対して、再度直角記号で示すことにより、レーザダイオード1の背面に対する平行面がモニタ用フォトダイオード4の受光面に示されており、当該平行面に対してモニタ用フォトダイオード4の受光面が傾斜角θ1~θ4で傾斜していることを示す。また、レーザダイオード1~3の背面のそれぞれの端面が、少なくとも平行面であるとは、前記それぞれの端面である3つの端面について、すべて同一面の場合、2つの端面が同一面であると共に1つの端面が当該同一面の平行面である場合、すべて平行面である場合を含む。ここで、平行面とは、2つ以上の面が一定の距離を保持して離隔しており、互いに交わらない面を意味する。
【0021】
図3(a)~(d)における、レーザダイオード1~3の背面の少なくとも平行面に対するモニタ用フォトダイオード4の受光面の傾斜角θ1~θ4は、それぞれ8度、30度、45度、60度である。レーザダイオード3とモニタ用フォトダイオード4の距離を傾斜角が異なってもほとんど同じとした場合、レーザダイオード1とモニタ用フォトダイオード4の距離は傾斜角が増大するほど大きくなることから、前記傾斜角が増大するほど、レーザダイオード1~3の背面からの漏洩光に対するモニタ用フォトダイオード4の受光量に差異が生じやすくなる。そのため、水平方向の傾斜角は8度以上、90度未満であればよいが、8度以上、45度以下であることが好ましい。90度以上の場合、モニタ用フォトダイオード4の受光面が前記漏洩光を受光することができなくなる。また、8度未満の場合、レーザダイオードの背面からの漏洩光がフォトダイオードの受光面で反射され、再びレーザダイオードに戻る近端反射光が生じることにより、レーザ発振が不安定になることが知られており、45度を超えるとレーザダイオード1~3の漏洩光に対するモニタ用フォトダイオード4の受光量の差異が許容できなくなる可能性がある。ここで、前記傾斜角は絶対値を示しており逆方向の傾斜の傾斜角を含む。
【0022】
図4(a)~(d)は、レーザダイオード1~3の背面のそれぞれの端面が、少なくとも平行面であると共に、モニタ用フォトダイオード4の受光面が、前記少なくとも平行面に対して傾斜している場合について、図1におけるレーザモジュール部分を下側方向から観察した側面図を示す。レーザダイオード1~3の出射光は鉛直方向の高さを同一とすることから、レーザダイオード1~3もほぼ同一高さに位置するため、レーザダイオード1~2はレーザダイオード3に隠れて図示されていないが、レーザダイオード3の奥行方向に存在している。ここで、前記傾斜は鉛直方向における傾斜のみを示し、水平方向には傾斜していないものとして示す。モニタ用フォトダイオード4の受光面の傾斜角φ1~φ4の説明については、傾斜の方向が水平方向と鉛直方向で相違する以外は図3(a)~(d)の場合と同様である。また、少なくとも平行面であること及び平行面についての定義も図3(a)~(d)の場合と同様である。
【0023】
図4(a)~(d)における、レーザダイオード1~3の背面の少なくとも平行面に対するモニタ用フォトダイオード4の受光面の傾斜角φ1~φ4は、それぞれ8度、30度、45度、60度である。レーザダイオード1~3とモニタ用フォトダイオード4の距離は傾斜角が異なってもほとんど同じであることから、前記傾斜角が増大したとしても、レーザダイオード1~3の背面からの漏洩光に対するモニタ用フォトダイオード4の受光量に差異はほとんど生じない。そのため、鉛直方向の傾斜角は8度以上、90度未満であればよいが、8度以上、60度以下であることが好ましい。90度以上の場合、モニタ用フォトダイオード4の受光面が前記漏洩光を受光することができなくなる。また、8度未満の場合、レーザダイオードの背面からの漏洩光がフォトダイオードの受光面で反射され、再びレーザダイオードに戻る近端反射光が生じることにより、レーザ発振が不安定になることが知られており、60度を超えるとレーザダイオード1~3の漏洩光に対するモニタ用フォトダイオード4の受光量が不十分となる可能性がある。ここで、図3(a)~(d)と同様に、前記傾斜角は絶対値を示しており逆方向の傾斜の傾斜角を含む。
【0024】
モニタ用フォトダイオード4の受光面の傾斜については、実際には水平方向及び鉛直方向の両方向の傾斜を有する、いわゆる複合傾斜であってもよい。複合傾斜の場合は、それぞれ水平方向の傾斜角及び鉛直方向の傾斜角に分解して、それぞれの傾斜角が許容される数値範囲内であるか否かについて検討しなければならない。
【0025】
図5は、本発明のレーザモジュール及び光合波器を含む合成光生成装置100の側面図を示す。レーザダイオード1~3及び光合波器5が基板6の上に配設され、モニタ用フォトダイオード4が基板7の上に配設されている。光合波器5はシリコン基板9が上方、コアである導波路10が下方となるように構成されている。ここで、光合波器5を上下反転してシリコン基板9が下方、導波路10が上方となるように構成してもよく、その場合はレーザダイオード1~3及びモニタ用フォトダイオード4の鉛直方向の位置もそれぞれの機能を果たすように変更される。
【0026】
図5のように光合波器5はシリコン基板9が上方、導波路10が下方となるように構成されていることが好ましい。画像表示装置の光源部の周囲における環境光12が便宜的に示した窓11を通して、光源部内への侵入環境光12’となって、光合波器5の出力光方向から侵入する場合があるが、前記のように導波路10が下方となるように構成されている場合、侵入環境光12’がモニタ用フォトダイオード4へ入射しにくくなることから、本発明が環境光12による影響を受けにくいものとなるためである。ここで、前記窓11は説明を容易にするため、光源部の周囲から合成光生成装置100に対して侵入してくる環境光12の侵入部分の概念を便宜的に示したものであり、特別に窓を設けたものではない。
【符号の説明】
【0027】
1 赤色レーザダイオード
2 緑色レーザダイオード
3 青色レーザダイオード
4 モニタ用フォトダイオード
5 光合波器
6 基板(符号1~3及び5を配設する)
7 基板(符号4を配設する)
8 金属ワイヤ
9 シリコン基板
10 導波路
11 窓
12 環境光
12’ 侵入環境光
100 合成光生成装置
図1
図2
図3
図4
図5