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特開2024-114016非水電解質二次電池用セパレータ及び非水電解質二次電池
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  • 特開-非水電解質二次電池用セパレータ及び非水電解質二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114016
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用セパレータ及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/417 20210101AFI20240816BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240816BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20240816BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240816BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240816BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M10/0568
H01M50/411
H01M50/489
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019365
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】507317502
【氏名又は名称】エリーパワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】藤村 駿
(72)【発明者】
【氏名】古谷 亮太
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
【Fターム(参考)】
5H021EE01
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE17
5H021EE20
5H021EE34
5H021HH03
5H021HH07
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM09
5H029DJ04
5H029EJ11
5H029EJ12
(57)【要約】
【課題】本発明は、イオン液体電解液の濡れ性が良好な非水電解質二次電池用セパレータを提供する。
【解決手段】本発明の非水電解質二次電池用セパレータは、ポリオレフィンを含む多孔質膜を備える。前記多孔質膜は、細孔壁面又は細孔壁中に非イオン界面活性剤を有し、前記非イオン界面活性剤は、ポリエチレングリコールの繰り返し単位数が20以下であるポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン誘導体、グリセロール誘導体、又はポリオキシエチレングリセロール誘導体であり、前記非イオン界面活性剤の疎水基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、飽和又は不飽和のアシル基、アルキルスルホニル基又はアルケニルスルホニル基若しくはこれらの官能基の組み合わせから構成される官能基であり、前記疎水基の炭素数は、4以上20以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを含む多孔質膜を備え、
前記多孔質膜は、細孔壁面又は細孔壁中に非イオン界面活性剤を有し、
前記非イオン界面活性剤は、ポリエチレングリコールの繰り返し単位数が20以下であるポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン誘導体、グリセロール誘導体、又はポリオキシエチレングリセロール誘導体であり、
前記非イオン界面活性剤の疎水基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、飽和又は不飽和のアシル基、アルキルスルホニル基又はアルケニルスルホニル基若しくはこれらの官能基の組み合わせから構成される官能基であり、
前記疎水基の炭素数は、4以上20以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記非イオン界面活性剤は、ポリエチレングリコール誘導体であり、下記化学式(1)で表される化合物である請求項1に記載のセパレータ。
【化1】
[式中、R1及びR2のうち一方が水素原子を表し他方が前記疎水基を表し、nは1以上20以下である。]
【請求項3】
前記非イオン界面活性剤は、ソルビタン誘導体であり、下記化学式(2)で表される化合物である請求項1に記載のセパレータ。
【化2】
[式中、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つが水素原子を表し少なくとも1つが前記疎水基を表す。]
【請求項4】
前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン誘導体であり、下記化学式(3)で表される化合物である請求項1に記載のセパレータ。
【化3】
[式中、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つが水素原子を表し少なくとも1つが前記疎水基を表し、n、m、p、qのそれぞれは1以上20以下である。]
【請求項5】
前記非イオン界面活性剤は、グリセロール誘導体であり、下記化学式(4)で表される化合物である請求項1に記載のセパレータ。
【化4】
[式中、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つが水素原子を表し少なくとも1つが前記疎水基を表す。]
【請求項6】
前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレングリセロール誘導体であり、下記化学式(5)で表される化合物である請求項1に記載のセパレータ。
【化5】
[式中、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つが水素原子を表し少なくとも1つが前記疎水基を表し、n、m、pのそれぞれは1以上20以下である。]
【請求項7】
前記多孔質膜の細孔は、0.01μm以上0.5μm以下の平均細孔径を有する請求項1~6のいずれか1つに記載のセパレータ。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1つに記載のセパレータと、正極と、負極と、電解液とを備え、
前記電解液は、イオン液体を含む非水電解質二次電池。
【請求項9】
前記イオン液体は、カチオン成分とアニオン成分とを含み、
前記カチオン成分は、第四級アンモニウムイオンであり、
前記第四級アンモニウムイオンは、少なくとも一部に鎖状構造又は環状構造を有し、
前記アニオン成分は、ビス(フルオロスルホニル)アミドイオンである請求項8に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用セパレータ及び非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非水電解質二次電池の普及が急速に拡大している。特にエネルギー密度が高いリチウムイオン電池は、スマートフォンやノートパソコンなどの小型電子機器のみならず、電気自動車や非常用電源などの大型装置にも搭載されている。
一般的なリチウムイオン電池では、セパレータとしてポリオレフィン多孔質膜が用いられる。この理由の1つとして、ポリオレフィン多孔質膜が優れたシャットダウン機能を備えることが挙げられる。シャットダウン機能とは、リチウムイオン電池が異常発熱した際にセパレータが軟化し、セパレータの空孔が閉塞することで正極-負極間のリチウムイオンの移動が遮断される機能である。ポリオレフィンは低温で軟化するため、ポリオレフィン多孔質膜は優れたシャットダウン機能を備えることができ、リチウムイオン電池の安全性を向上させることができる。
【0003】
一般的なリチウムイオン電池の電解質には、可燃性の有機液体にリチウム塩を溶解させた有機電解液が用いられている。また、リチウムイオン電池は過充電や正極-負極間の短絡などに起因して異常発熱する場合がある。このため、リチウムイオン電池には発火や燃焼の危険性がある。
リチウムイオン電池の発火や燃焼を防止するために、リチウムイオン電池の電解質として、イオン液体にリチウム塩を溶解させたイオン液体電解液を用いることが提案されている(例えば、特許文献1、2)。イオン液体はアニオン成分とカチオン成分とから構成される液体であり、一般的に不燃性又は難燃性である。このため、イオン液体電解液を用いることにより、リチウムイオン電池の安全性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-195129号公報
【特許文献2】特開2018-116840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、イオン液体は有機液体よりも粘度及び表面張力が高いため、イオン液体電解液は一般的なポリオレフィン多孔質膜に含浸することができない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、イオン液体電解液の濡れ性が良好な非水電解質二次電池用セパレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリオレフィンを含む多孔質膜を備え、前記多孔質膜は、細孔壁面又は細孔壁中に非イオン界面活性剤を有し、前記非イオン界面活性剤は、ポリエチレングリコールの繰り返し単位数が20以下であるポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン誘導体、グリセロール誘導体、又はポリオキシエチレングリセロール誘導体であり、前記非イオン界面活性剤の疎水基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、飽和又は不飽和のアシル基、アルキルスルホニル基又はアルケニルスルホニル基若しくはこれらの官能基の組み合わせから構成される官能基であり、前記疎水基の炭素数は、4以上20以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用セパレータを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の非水電解質二次電池用セパレータは、上記の特徴を有することにより、イオン液体電解液に対して良好な濡れ性を有する。このことは、本願発明者等が行った実験により明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の非水電解質二次電池用セパレータの部分断面図である。
図2】本発明の一実施形態の非水電解質二次電池の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の非水電解質二次電池用セパレータは、ポリオレフィンを含む多孔質膜を備え、前記多孔質膜は、細孔壁面又は細孔壁中に非イオン界面活性剤を有し、前記非イオン界面活性剤は、ポリエチレングリコールの繰り返し単位数が20以下であるポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン誘導体、グリセロール誘導体、又はポリオキシエチレングリセロール誘導体であり、前記非イオン界面活性剤の疎水基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、飽和又は不飽和のアシル基、アルキルスルホニル基又はアルケニルスルホニル基若しくはこれらの官能基の組み合わせから構成される官能基であり、前記疎水基の炭素数は、4以上20以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明は、本発明の非水電解質二次電池用セパレータと、正極と、負極と、イオン液体を含む電解液とを備える非水電解質二次電池も提供する。
好ましくは、前記イオン液体は、カチオン成分とアニオン成分とを含み、前記カチオン成分は、第四級アンモニウムイオンであり、前記第四級アンモニウムイオンは、少なくとも一部に鎖状構造又は環状構造を有し、前記アニオン成分は、ビス(フルオロスルホニル)アミドイオンである。
前記多孔質膜の細孔は、0.01μm以上0.5μm以下の平均細孔径を有することが好ましい。
【0011】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態を説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0012】
非水電解質二次電池用セパレータ
図1は、本実施形態の非水電解質二次電池用セパレータの部分断面図である。
本実施形態の非水電解質二次電池用セパレータ4は、ポリオレフィンを含む多孔質膜8を備える。多孔質膜8は、細孔壁面又は細孔壁中に非イオン界面活性剤9を有し、非イオン界面活性剤9は、ポリエチレングリコールの繰り返し単位数が20以下であるポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン誘導体、グリセロール誘導体、又はポリオキシエチレングリセロール誘導体であり、前記非イオン界面活性剤の疎水基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、飽和又は不飽和のアシル基、アルキルスルホニル基又はアルケニルスルホニル基若しくはこれらの官能基の組み合わせから構成される官能基であり、前記疎水基の炭素数は、4以上20以下である。
【0013】
非水電解質二次電池用セパレータ4は、非水電解質二次電池の作製に用いられるセパレータ又は非水電解質二次電池に組み込まれたセパレータである。
セパレータ4の膜厚は、特に限定されるものではないが、5μm以上30μm以下であることが好ましい。セパレータ4の膜厚を5μm以上とすることにより、セパレータ4の電気絶縁性を向上させることができ、非水電解質二次電池の安全性を向上させることができる。また、セパレータ4の膜厚を30μm以下とすることにより、正極-負極間のイオンの移動距離(拡散距離)を短くすることができ、非水電解質二次電池の内部抵抗を低減することができる。
【0014】
セパレータ4の空隙率は、特に限定されるものではないが、20体積%以上80体積%以下であることが好ましい。セパレータ4の空隙率を20体積%以上とすることにより、電解液の保液量を増やすことができ、非水電解質二次電池の充放電サイクル特性を向上させることができる。また、セパレータ4の空隙率を80体積%以下とすることにより、セパレータ4の電気絶縁性を向上させることができ、非水電解質二次電池の安全性を向上させることができる。
【0015】
セパレータ4の透気度(ガーレー試験機法による透気度)は、特に限定されるものではないが、50~500sec/100ccであることが好ましい。セパレータ4の透気度を50sec/100cc以上とすることにより、セパレータ4の電気絶縁性を向上させることができ、非水電解質二次電池の安全性を向上させることができる。また、セパレータ4の透気度を500sec/100cc以下とすることにより、イオン液体電解液がセパレータ4に速やかに含浸することができる。
【0016】
セパレータ4は、ポリオレフィンを含む多孔質膜8を備える。このことにより、セパレータ4が優れたシャットダウン機能を備えることができ、優れた安全性を有するセパレータを提供できる。多孔質膜8の材料であるポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどである。多孔質膜8は、これらのポリオレフィンを1種単独で又は複数種混合で含むことができる。また、多孔質膜8は、ポリオレフィン以外の成分を含むことができる。ポリオレフィン以外の成分は、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイドなどである。多孔質膜8に含まれるポリオレフィンの割合は、特に限定されるものではないが、多孔質膜全体の50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。このことにより、セパレータ4のシャットダウン機能を向上させることができ、非水電解質二次電池の安全性を向上させることができる。
多孔質膜8は、ポリオレフィンからなるポリオレフィン多孔質膜であってもよい。
また、多孔質膜8は、ポリエチレン層とポリプロピレン層とが積層された積層構造を有してもよい。
【0017】
多孔質膜8は、0.5μm以下の微孔を有する微多孔膜であってもよい。多孔質膜8の細孔は、例えば、0.01μm以上0.5μm以下の平均細孔径を有することができる。平均細孔径が小さくなりすぎると電池の内部抵抗が大きくなり、平均細孔径が大きすぎると正負極間が短絡しやすくなる。平均細孔径は、水銀圧入法による細孔径分布測定の結果に基づき算出することができる。
多孔質膜8は、例えば、乾式1成分系微多孔膜、湿式2成分系多孔膜、湿式3成分系微多孔膜などである。
乾式1成分系微多孔膜は、例えば溶融ポリマーを冷却・延伸してフィルム化することにより作製され冷却過程における延伸により微細孔が形成される。湿式2成分系多孔膜は、例えば可塑剤を予め混練した溶融ポリマーを冷却・延伸してフィルム化し、可塑剤を抽出することにより作製される。湿式3成分系微多孔膜は、例えば可塑剤及びフィラー微粒子を予め混練した溶融ポリマーを冷却・延伸してフィルム化し、可塑剤及びフィラー粒子を抽出することにより作製される。
【0018】
多孔質膜8は、ポリオレフィンに混合されている無機微粒子を含んでもよい。無機微粒子は、例えば、アルミナ粒子、シリカ粒子、チタニア粒子などである。
多孔質膜8は、ポリオレフィンに混合されている界面活性剤を含んでもよい。
【0019】
セパレータ4は、多孔質膜8と多孔質樹脂層とが積層された積層セパレータであってもよい。多孔質樹脂層は、例えば、液晶ポリエステル樹脂層、ポリフェニレンエーテル樹脂層、芳香族ポリアミド樹脂層、ポリイミド樹脂層、ポリアミドイミド樹脂層、耐熱性アクリル樹脂層、架橋性ポリマー層などである。
【0020】
セパレータ4は、多孔質膜8上に設けられた多孔質耐熱層を有することができる。耐熱層(多孔質耐熱層)は、多孔質膜8の一方の主要面(表又は裏)上にのみ設けられてもよく、多孔質膜8の両方の主要面(表及び裏)上にそれぞれ設けられてもよい。耐熱層は、例えば、複数の無機粒子がバインダによって接着された多孔質層である。セパレータ4が耐熱層を有することにより、セパレータ4の耐熱性を向上させることができ、非水電解質二次電池の安全性を向上させることができる。
【0021】
耐熱層は、無機粒子を含むことができる。無機粒子は、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどである。
耐熱層は、バインダを含むことができる。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリルゴム、ポリアクリル酸などである。耐熱層は、増粘剤を含むことができる。増粘剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースなどである。
耐熱層は、主要面及び細孔壁面に界面活性剤を有してもよい。
【0022】
耐熱層の層厚は、特に限定されるものではないが、1μm以上10μm以下であることが好ましい。耐熱層の層厚を1μm以上であることにより、セパレータ4の耐熱性を向上させることができ、非水電解質二次電池の安全性を向上させることができる。また、耐熱層の層厚を10μm以下にすることにより、正極-負極間のイオンの移動距離(拡散距離)を短くすることができ、非水電解質二次電池の内部抵抗を低減することができる。
【0023】
ポリオレフィンを含む多孔質膜8は、細孔壁面又は細孔壁中に非イオン界面活性剤9(ノニオン界面活性剤9)を有する。非イオン界面活性剤は、水などに溶けたときにイオンにならない界面活性剤である。非イオン界面活性剤は、親水基と疎水基とを有すれば、水に溶解しない物質又は水に溶けにくい物質であってもよい。非イオン界面活性剤は、電解液中でイオンにならないため、界面活性剤が非水電解質二次電池の正極反応又は負極反応に影響を与えることを抑制することができる。
多孔質膜8の細孔壁面又は細孔壁中に非イオン界面活性剤9が存在することにより、多孔質膜8の細孔壁面とイオン液体電解液との表面張力の差を低減することができ、イオン液体電解液の濡れ性が良好なセパレータを提供できる。
例えば、図1のように、非イオン界面活性剤9は、多孔質膜8の細孔1の壁面に界面活性剤層を形成していてもよい。
【0024】
非イオン界面活性剤9は、ポリエチレングリコールの繰り返し単位数が20以下であるポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン誘導体、グリセロール誘導体、又はポリオキシエチレングリセロール誘導体である。非イオン界面活性剤9の疎水基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、飽和又は不飽和のアシル基、アルキルスルホニル基又はアルケニルスルホニル基若しくはこれらの官能基の組み合わせから構成される官能基である。非イオン界面活性剤9の疎水基の炭素数は、4以上20以下である。
多孔質膜8が細孔壁面又は細孔壁中にこのような非イオン界面活性剤9を有することにより、セパレータ4がイオン液体電解液に対して良好な濡れ性を有する。このことは、本願発明者等が行った実験により明らかになった。
【0025】
非イオン界面活性剤9がポリエチレングリコールの繰り返し単位数が20以下であるポリエチレングリコール誘導体である場合、非イオン界面活性剤9は、下記化学式(1)で表される化合物であってもよい。このことにより、界面活性剤9が適度な親水性を有することができ、イオン液体電解液の濡れ性が良好なセパレータ4を提供できる。非イオン界面活性剤9は、例えば、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールエステルなどである。
【0026】
【化1】
[式中、R1及びR2のうち一方が水素原子を表し他方が前記疎水基を表し、nは1以上20以下である。]
【0027】
非イオン界面活性剤9がソルビタン誘導体である場合、非イオン界面活性剤9は、下記化学式(2)で表される化合物であってもよい。このことにより、界面活性剤9が適度な親水性を有することができ、イオン液体電解液の濡れ性が良好なセパレータ4を提供できる。非イオン界面活性剤9は、例えば、ソルビタンエステルなどである。
【0028】
【化2】
[式中、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つが水素原子を表し少なくとも1つが前記疎水基を表す。]
【0029】
非イオン界面活性剤9がポリオキシエチレンソルビタン誘導体である場合、非イオン界面活性剤9は、下記化学式(3)で表される化合物であってもよい。このことにより、界面活性剤9が適度な親水性を有することができ、イオン液体電解液の濡れ性が良好なセパレータ4を提供できる。界面活性剤9は、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステルなどである。
【0030】
【化3】
[式中、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つが水素原子を表し少なくとも1つが前記疎水基を表し、n、m、p、qのそれぞれは1以上20以下である。]
【0031】
非イオン界面活性剤9がグリセロール誘導体である場合、非イオン界面活性剤9は下記化学式(4)で表される化合物であってもよい。このことにより、界面活性剤9が適度な親水性を有することができ、イオン液体電解液の濡れ性が良好なセパレータ4を提供できる。界面活性剤9は、例えば、グリセロールエステルなどである。
【0032】
【化4】
[式中、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つが水素原子を表し少なくとも1つが前記疎水基を表す。]
【0033】
非イオン界面活性剤9がポリオキシエチレングリセロール誘導体である場合、非イオン界面活性剤9は、下記化学式(5)で表される化合物であってもよい。このことにより、非イオン界面活性剤9が適度な親水性を有することができ、イオン液体電解液の濡れ性が良好なセパレータ4を提供できる。界面活性剤9は、例えば、ポリオキシエチレングリセロールエステルなどである。
【0034】
【化5】
[式中、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つが水素原子を表し少なくとも1つが前記疎水基を表し、n、m、pのそれぞれは1以上20以下である。]
【0035】
非イオン界面活性剤9は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、飽和又は不飽和のアシル基、アルキルスルホニル基又はアルケニルスルホニル基若しくはそれらの組み合わせから構成される疎水基を有する。ここで、疎水基の炭素数が4~20である。このことにより、非イオン界面活性剤9が適度な疎水性を有することができ、イオン液体電解液の濡れ性が良好なセパレータを提供できる。
【0036】
セパレータ4(X)に対する界面活性剤9(Y)の質量比(Y/X)は、例えば、(1/100)以上(20/100)以下である。質量比(Y/X)を(1/100)以上とすることにより、界面活性剤9をセパレータ4の細孔壁面の全体にわたって存在させることができる。この結果、イオン液体電解液がセパレータ4に速やかに含浸することができる。また、質量比(Y/X)を(20/100)以下とすることにより、セパレータ4の細孔が界面活性剤9によって閉塞することを防止することができ、非水電解質二次電池の内部抵抗を低減することができる。
【0037】
細孔壁に非イオン界面活性剤9を含む多孔質膜8は、例えば、非イオン界面活性剤を添加した溶融ポリマーを冷却・延伸してフィルム化することにより作製することができる。このことにより、多孔質膜8の細孔壁が非イオン界面活性剤9を含むことができる。この非イオン界面活性剤9は、細孔壁面にも存在し、多孔質膜8の細孔壁面に対するイオン液体電解液の濡れ性を向上させることができる。
【0038】
また、細孔壁面に非イオン界面活性剤を有するセパレータ4は、多孔質膜8を含むセパレータフィルムに非イオン界面活性剤9を含む溶液を含浸させ、このセパレータフィルムを乾燥させることにより作製することができる。このことにより、多孔質膜8の細孔壁面を非イオン界面活性剤でコーティングすることができる。また、セパレータフィルムが多孔質耐熱層を含む場合、多孔質耐熱層の細孔壁面も非イオン界面活性剤でコーティングされる。
セパレータ4の作製に用いる界面活性剤溶液の濃度は、0.5wt%~10wt%が好ましい。濃度が低すぎると、セパレータ4の壁面に覆われていない部分ができるおそれがあり、濃度が高すぎると、界面活性剤がセパレータ4の細孔を閉塞するおそれがある。
界面活性剤9を含む溶液の溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどである。
【0039】
非水電解質二次電池
図2は、本実施形態の非水電解質二次電池の概略断面図である。
本実施形態の非水電解質二次電池20は、上述の本実施形態のセパレータ4と、正極2と、負極3と、電解液5とを備え、電解液5は、イオン液体を含む。非水電解質二次電池20は、リチウムイオン電池であってもよい。ここでは、非水電解質二次電池20がリチウムイオン電池である場合について説明する。
非水電解質二次電池20は、コイン型電池であってもよく、パウチ型電池であってもよく、金属缶型電池であってもよい。また、正極2と、負極3と、セパレータ4とから構成される電極積層体は、スタック構造を有してもよく、巻回構造を有してもよい。
【0040】
正極2は、正極集電シート6と、正極集電シート6の一方又は両方の主要面上に設けられた多孔質の正極活物質層7とを有する。
正極集電シート6は、正極活物質層7を設けるための基材となるシートであり、正極電池端子と正極活物質層7とを電気的に接続する導電体である。また、正極集電シート6の一部が正極電池端子であってもよい。正極集電シート6は、例えば、アルミニウム箔、ステンレス箔などである。
【0041】
正極活物質層7は、正極集電シート6の片面上に設けられてもよく、正極集電シート6の両面上にそれぞれ設けられてもよい。正極活物質層7は、複数の正極活物質粒子がバインダにより接着された多孔質層である。このことにより、正極活物質層7は、正極活物質粒子間に細孔を有することができる。この細孔は電解液5で満たされ、正極活物質粒子の表面において電極反応が進行する。例えば、リチウムイオン電池を充電する際には、正極活物質粒子中のリチウム原子がリチウムイオン(Li+)として電解液中に放出され、リチウムイオン電池を放電する際には、電解液中のリチウムイオンがリチウム原子として正極活物質粒子中に挿入される。
【0042】
正極活物質は、正極における電荷移動を伴う電子の受け渡しに直接関与する物質である。正極活物質は、例えば、層状のLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNixMny2(x+y=1)、LiNixCoyMnz2(x+y+z=1)、LiNixCoyAlz2(x+y+z=1)、Li2MnO3、スピネル型のLiMnO2、LiNixMny2(x+y=1)、オリビン型のLiFePO4、LiMnxFeyPO4(x+y=1)などである。正極活物質層7は、これらの正極活物質を1種単独で又は複数種混合で含むことができる。
【0043】
正極活物質粒子は、その表面に導電皮膜を有することができる。このことにより、電極反応が進行する粒子表面の導電性を向上させることができ、正極2の内部抵抗を低減することができる。導電皮膜は、例えば、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、カーボンブラックなどの炭素皮膜である。
【0044】
正極活物質層7は、導電剤を含むことができる。このことにより、正極活物質層7の導電性を向上させることができ、正極の内部抵抗を低減することができる。導電剤は、例えば、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、カーボンブラックなどである。
【0045】
正極活物質層7は、バインダを含むことができる。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリルゴム、ポリアクリル酸などである。また、正極活物質層7は、増粘剤を含むことができる。増粘剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースなどである。
【0046】
正極活物質層7の厚さは、特に限定されるものではないが、10~100μmであることが好ましい。正極活物質層7の厚さを10μm以上とすることにより、正極に含まれる正極活物質の量を多くすることができ、非水電解質二次電池の容量を大きくすることができる。また、正極活物質層7を塗工により容易に形成することが可能になる。正極活物質層7の厚さを100μm以下とすることにより、正極活物質層7と正極集電シート6との界面付近と、正極活物質層7の表面付近との間のリチウムイオンの移動距離(拡散距離)を短くすることができ、放電時に前記界面付近の細孔の電解液5においてリチウムイオンが不足すること及び充電時に前記界面付近の細孔の電解液5においてリチウムイオンが過剰になることを抑制することができる。
【0047】
正極2の作製方法は、例えば、正極活物質粒子と、導電剤と、バインダとを混合した正極合剤を分散媒に分散させて正極スラリーを調製する。この正極スラリーを正極集電シート6上に塗布し、分散媒を揮発させ、プレス処理することにより正極2を作製することができる。スラリーの調製に用いる分散媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどである。
【0048】
負極3は、負極集電シート11と、負極集電シート11の一方又は両方の主要面に設けられた多孔質の負極活物質層12とを有する。
【0049】
負極集電シート11は、負極活物質層12を設けるための基材となるシートであり、負極電池端子と負極活物質層12とを電気的に接続する導電体である。また、負極集電シート11の一部が負極電池端子であってもよい。負極集電シート11は、例えば、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔などである。
【0050】
負極活物質層12は、負極集電シート11の片面上に設けられてもよく、負極集電シート11の両面上にそれぞれ設けられてもよい。負極活物質層12は、複数の負極活物質粒子がバインダにより接着された多孔質層である。このことにより、負極活物質層12は、負極活物質粒子間に細孔を有することができる。この細孔は電解液5で満たされ、負極活物質粒子の表面において電極反応が進行する。例えば、リチウムイオン電池を充電する際には、電解液中のリチウムイオン(Li+)がリチウム原子として負極活物質粒子中に挿入され、リチウムイオン電池を放電する際には、負極活物質粒子中のリチウム原子がリチウムイオンとして電解液5中に放出される。
【0051】
負極活物質は、負極3における電荷移動を伴う電子の受け渡しに直接関与する物質である。負極活物質は、例えば、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、カーボンブラック、チタン酸リチウム、ケイ素合金などである。負極活物質層12は、これらの負極活物質を1種単独で又は複数種混合で含むことができる。
【0052】
負極活物質層12は、バインダを含むことができる。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリルゴム、ポリアクリル酸などである。また、負極活物質層12は、増粘剤を含むことができる。増粘剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースなどである。
【0053】
負極活物質層12の厚さは、特に限定されるものではないが、10~100μmであることが好ましい。負極活物質層12の厚さを10μm以上とすることにより、負極3に含まれる負極活物質の量を多くすることができ、リチウムイオン電池の容量を大きくすることができる。また、負極活物質層12を塗工により容易に形成することが可能になる。負極活物質層12の厚さを100μm以下とすることにより、負極活物質層12と負極集電シート11との界面付近と、負極活物質層12の表面付近との間のリチウムイオンの移動距離(拡散距離)を短くすることができ、充電時に前記界面付近の細孔の電解液においてリチウムイオンが不足すること及び放電時に前記界面付近の細孔の電解液においてリチウムイオンが過剰になることを抑制することができる。
【0054】
負極3の作製方法は、例えば、負極活物質粒子と、導電剤と、バインダとを混合した負極合剤を分散媒に分散させて負極スラリーを調製する。この負極スラリーを負極集電シート11上に塗布し、分散媒を揮発させ、プレス処理することにより負極3を作製することができる。スラリーの調製に用いる分散媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどである。
【0055】
セパレータ4は、上述の非水電解質二次電池用セパレータであり、正極2と負極3との間に配置される。セパレータ4を設けることにより、正極2と負極3との間に短絡電流が流れることを防止することができる。また、セパレータ4は、多数の細孔を有し、この細孔が電解液5で満たされる。このことにより、正極2と負極3との間の電解液5を伝導するリチウムイオンがセパレータ4を透過することができ、リチウムイオン電池の内部抵抗を低減することができる。
【0056】
セパレータ4に含まれる非イオン界面活性剤は、電解液5に溶出していてもよい。非イオン界面活性剤は、電解液5に溶出してもイオンにならないため、非イオン界面活性剤が非水電解質二次電池20の電池性能に影響を与えることを抑制することができる。また、セパレータ4が非イオン界面活性剤を含むことにより、電解液5における界面活性剤濃度が高くなることを抑制することができ、界面活性剤がリチウムイオン電池の電池性能に影響を与えることを抑制することができる。
【0057】
電解液5は、正極-負極間のリチウムイオン伝導媒体であり、リチウムイオンを含む。電解液5が正極2の細孔、負極3の細孔及びセパレータ4の細孔を満たすことにより、正極2と負極3との間をリチウムイオンが伝導することができる。
【0058】
電解液5は、イオン液体を含む。イオン液体は一般的に不燃性又は難燃性であるため、電解液5がイオン液体を含むことにより、リチウムイオン電池の安全性を向上させることができる。
【0059】
電解液5に含まれるイオン液体は、カチオン成分とアニオン成分とを含む。
イオン液体のカチオン成分は、鎖式又は環式の第四級アンモニウムイオンが好ましい。イオン液体のカチオン成分を鎖式又は環式の第四級アンモニウムイオンとすることにより、イオン液体の粘度が高くなることが抑制され、電解液5が正極2、負極3、セパレータ4に速やかに含浸することができる。環式第四級アンモニウムイオンは、例えば、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピペリジニウムイオンなどである。
【0060】
イオン液体のアニオン成分は、ビス(フルオロスルホニル)アミドイオンが好ましい。イオン液体のアニオン成分をビス(フルオロスルホニル)アミドイオンとすることにより、イオン液体の粘度が高くなることが抑制され、電解液5が正極2、負極3、セパレータ4に速やかに含浸することができる。
【0061】
電解液5に含まれるイオン液体の割合は、特に限定されるものではないが、電解液全体の30~90質量%であることが好ましい。イオン液体の割合を30質量%以上とすることにより、電解液5の耐熱性を向上させることができ、リチウムイオン電池の安全性を向上させることができる。また、イオン液体の割合を90質量%以下とすることにより、電解液5が電荷のキャリアであるリチウムイオンを十分に含有することができ、リチウムイオン電池の内部抵抗を低減することができる。
【0062】
電解液5は、リチウムイオン源としてリチウム塩を含む。リチウム塩は、例えば、六フッ化りん酸リチウム、四フッ化ほう酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミドなどである。
【0063】
電解液5は、被膜形成剤や希釈剤などのイオン液体及びリチウム塩以外の成分を含むことができる。イオン液体及びリチウム塩以外の成分は、例えば、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、炭酸フルオロエチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、γ-ブチロラクトン、亜硫酸エチレン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどである。
【0064】
非水電解質二次電池用セパレータ及びリチウムイオン電池の作製
実施例1~9及び比較例1~3の非水電解質二次電池用セパレータを作製した。また、実施例1~9のリチウムイオン電池を作製した。
【0065】
[実施例1]
2質量%のポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(ポリエチレングリコールの繰り返し単位数n=約2、ポリエチレングリコール誘導体、界面活性剤)を98質量%のエタノール(溶媒)に溶解させて界面活性剤溶液を調製した。そして、膜厚が15μm、透気度が100sec/cc、空隙率が47%のポリエチレン多孔質膜(東レ株式会社製「セティーラ」(登録商標))をこの界面活性剤溶液に浸漬させ、取り出して溶媒を揮発させることにより、非水電解質二次電池用セパレータを作製した。
【0066】
94質量%のLiNi0.8Co0.15Al0.052(正極活物質)と、3質量%のアセチレンブラック(導電剤)と、3質量%のポリフッ化ビニリデン(バインダ)とを混合した正極合剤をN-メチル-2-ピロリドン(分散媒)に分散させて正極スラリーを調製した。そして、この正極スラリーをアルミニウム箔(正極集電シート)の片面上に塗布し、分散媒を揮発させ、プレス処理することにより正極を作製した。
【0067】
94質量%の黒鉛(負極活物質)と、5質量%のスチレン・ブタジエンゴム(バインダ)と、1質量%のカルボキシメチルセルロース(増粘剤)とを混合した負極合剤を水(分散媒)に分散させて負極スラリーを調製した。そして、この負極スラリーを銅箔(負極集電シート)の片面上に塗布し、分散媒を揮発させ、プレス処理することにより負極を作製した。
【0068】
25.4質量%のリチウムビス(フルオロスルホニル)アミド(リチウム塩)を73.3質量%の1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)アミド(イオン液体)に溶解させ、1.3質量%の炭酸フルオロエチレン(被膜形成剤)を添加することによりイオン液体電解液を調製した。
【0069】
上記の正極、負極、セパレータ、電解液を用い、CR2032型リチウムイオン電池(コイン型電池)を作製した。
【0070】
[実施例2]
2質量%のポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(ポリエチレングリコールの繰り返し単位数n=約7、ポリエチレングリコール誘導体、界面活性剤)を98質量%のエタノール(溶媒)に溶解させて界面活性剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様に、非水電解質二次電池用セパレータとCR2032型リチウムイオン電池(コイン型電池)を作製した。
【0071】
[実施例3]
2質量%のポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(ポリエチレングリコールの繰り返し単位数n=約10、ポリエチレングリコール誘導体、界面活性剤)を98質量%のエタノール(溶媒)に溶解させて界面活性剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様に、非水電解質二次電池用セパレータとCR2032型リチウムイオン電池(コイン型電池)を作製した。
【0072】
[実施例4]
2質量%のポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(ポリエチレングリコールの繰り返し単位数n=約20、ポリエチレングリコール誘導体、界面活性剤)を98質量%のエタノール(溶媒)に溶解させて界面活性剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様に、非水電解質二次電池用セパレータとCR2032型リチウムイオン電池(コイン型電池)を作製した。
【0073】
[実施例5]
2質量%のポリエチレングリコールモノ―4―オクチルフェニルエーテル(ポリエチレングリコールの繰り返し単位数=約10、界面活性剤、ポリエチレングリコール誘導体)を98質量%の水(溶媒)に溶解させて界面活性剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様に、非水電解質二次電池用セパレータとCR2032型リチウムイオン電池(コイン型電池)を作製した。
【0074】
[実施例6]
2質量%のポリエチレングリコールモノラウラート(ポリエチレングリコールの繰り返し単位数=約10、ポリエチレングリコール誘導体、界面活性剤)を98質量%の水(溶媒)に溶解させて界面活性剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様に、非水電解質二次電池用セパレータとCR2032型リチウムイオン電池(コイン型電池)を作製した。
【0075】
[実施例7]
2質量%のソルビタンモノラウラート(ソルビタン誘導体、界面活性剤)を98質量%のエタノール(溶媒)に溶解させて界面活性剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様に、非水電解質二次電池用セパレータとCR2032型リチウムイオン電池(コイン型電池)を作製した。
【0076】
[実施例8]
2質量%のポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(ポリオキシエチレンソルビタン誘導体、界面活性剤)を98質量%の水(溶媒)に溶解させて界面活性剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様に、非水電解質二次電池用セパレータとCR2032型リチウムイオン電池(コイン型電池)を作製した。
【0077】
[実施例9]
2質量%のグリセロールモノラウラート(グリセロール誘導体、界面活性剤)を98質量%のエタノール(溶媒)に溶解させて界面活性剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様に、非水電解質二次電池用セパレータとCR2032型リチウムイオン電池(コイン型電池)を作製した。
【0078】
[比較例1]
膜厚が15μm、透気度が100sec/cc、空隙率が47%のポリエチレン多孔質膜(東レ株式会社製「セティーラ」(登録商標))をそのまま非水電解質二次電池用セパレータとして用いた。
【0079】
[比較例2]
2質量%のオレイルアルコール(界面活性剤)を98質量%のエタノール(溶媒)に溶解させて界面活性剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様に、非水電解質二次電池用セパレータを作製した。
【0080】
[比較例3]
2質量%のポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(ポリエチレングリコールの繰り返し単位数=約50、ポリエチレングリコール誘導体、界面活性剤)を98質量%のエタノール(溶媒)に溶解させて界面活性剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様に、非水電解質二次電池用セパレータを作製した。
【0081】
イオン液体電解液含浸可否調査
実施例1~9及び比較例1~3の非水電解質二次電池用セパレータに上記のイオン液体電解液を滴下し、各セパレータにイオン液体電解液が含浸するか否かを観察した。
調査結果を表1に示す。表1には、界面活性剤溶液の調製に用いた界面活性剤、界面活性剤の疎水基の炭素数も示している。
【0082】
初回充放電試験
実施例1~9のリチウムイオン電池を用いて初回充放電試験を行った。具体的には、0.2Cの電流値で電圧が4.2Vになるまでリチウムイオン電池を定電流充電し、続けて4.2Vの電圧で電流値が0.05Cになるまで定電圧充電を行った。5分間の休止後、1Cの電流値で電圧が2.5Vになるまで定電流放電を行った。ここで、電流値の単位Cは、電池容量を1時間で完全に充電又は放電するときの電流値である。このときの充電容量を初回充電容量とし、このときの放電容量を初回放電容量として、以下の式(6)から初回充放電効率を算出した。
初回充放電効率(%)=初回放電容量÷初回充電容量×100・・・・(6)
実施例1~9のリチウムイオン電池の初回充放電効率を表1に示す。
【0083】
充放電サイクル試験
実施例1~9のリチウムイオン電池を用いて充放電サイクル試験を行った。具体的には、1Cの電流値で電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、続けて4.2Vの電圧で電流値が0.05Cになるまで定電圧充電を行った。5分間の休止後、1Cの電流値で電圧が2.5Vになるまで定電流放電を行った。この充放電を50サイクル繰り返し、以下の式(7)から50サイクル間容量維持率(以下、容量維持率ともいう)を算出した。
容量維持率(%)=1サイクル目放電容量÷50サイクル目放電容量×100・・・・(7)
実施例1~9のリチウムイオン電池の容量維持率を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
実施例1~9のセパレータは、イオン液体電解液が含浸可能であった。また、実施例1~9のリチウムイオン電池は、優れた初回充放電効率及び50サイクル間容量維持率を示した。
これに対し、比較例1~3のセパレータには、イオン液体電解液が含浸しなかった。
比較例1のセパレータは、界面活性剤を備えていない。このため、多孔質膜の細孔壁面とイオン液体電解液との表面張力の差が極端に大きく、イオン液体電解液が含浸できなかったことが示唆される。
比較例2のセパレータの作製には、界面活性剤としてアルコールを用いている。このため、界面活性剤の親水性が極端に低く、界面活性剤とイオン液体電解液との親和性が低下したため、イオン液体電解液が含浸できなかったことが示唆される。
比較例3のセパレータの作製には、界面活性剤としてポリエチレングリコールの繰り返し単位数が約50のポリエチレングリコール誘導体を用いている。このため、界面活性剤の親水性が極端に高く、界面活性剤とポリオレフィン多孔質との親和性が低下したため、イオン液体電解液が含浸できなかったことが示唆される。
【符号の説明】
【0086】
1:細孔 2:正極 3:負極 4:セパレータ 5:電解液 6:正極集電シート 7:正極活物質層 8:多孔質膜 9:非イオン界面活性剤 11:負極集電シート 12:負極活物質層 16:正極缶 17:負極缶 18:ガスケット 20:非水電解質二次電池
図1
図2