(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114023
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】伸縮装置
(51)【国際特許分類】
B25J 18/02 20060101AFI20240816BHJP
B25J 18/06 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B25J18/02
B25J18/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019380
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】306024148
【氏名又は名称】公立大学法人秋田県立大学
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敬
(72)【発明者】
【氏名】関野 晃聖
(72)【発明者】
【氏名】大村 俊介
(72)【発明者】
【氏名】落合 颯太
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】荒川 拓也
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707CU02
3C707CU07
3C707HS27
3C707HT02
3C707HT04
3C707HT07
3C707HT12
3C707HT21
3C707HT23
3C707HT33
(57)【要約】
【課題】安定してテープの巻き取りと繰り出しができる伸縮装置を提供すること。
【解決手段】伸縮装置100は、テープ1がロール状に巻き付けられるリール6と、リール6へのテープ1の巻き取りとリール6からのテープ1の繰り出しを行うためのモータ11と、リール6とモータ11とを含むユニット化されたテープ駆動装置10と、リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じて、テープ駆動装置10を移動可能とする移動機構90と、を備え、移動機構90は、テープ駆動装置10を支持するリンク機構91を有し、リンク機構91は、テープ駆動装置10に回転自在に連結され互いに平行を維持して揺動する一対の揺動リンク92a,92bを有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープの巻き取りと繰り出しをする伸縮装置であって、
前記テープがロール状に巻き付けられるリールと、
前記リールへの前記テープの巻き取りと前記リールからの前記テープの繰り出しを行うための動力源と、
前記リールと前記動力源とを含むユニット化されたテープ駆動装置と、
前記リールによる前記テープの巻き取り量又は繰り出し量に応じて、前記テープ駆動装置を移動可能とする移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記テープ駆動装置を支持するリンク機構を有し、
前記リンク機構は、前記テープ駆動装置に回転自在に連結され互いに平行を維持して揺動する一対の揺動リンクを有することを特徴とする伸縮装置。
【請求項2】
請求項1に記載の伸縮装置であって、
前記移動機構は、前記テープ駆動装置を前記テープの走行方向に移動させるリニアガイドをさらに有し、
前記リンク機構は、前記一対の揺動リンクを回転自在に連結する連結リンクをさらに有し、
前記リニアガイドは、前記テープ駆動装置に設けられ前記走行方向に直線状に延び前記連結リンクを案内するレールを有することを特徴とする伸縮装置。
【請求項3】
テープの巻き取りと繰り出しをする伸縮装置であって、
前記テープがロール状に巻き付けられるリールと、
前記リールへの前記テープの巻き取りと前記リールからの前記テープの繰り出しを行うための動力源と、
前記リールと前記動力源とを含むユニット化されたテープ駆動装置と、
前記リールによる前記テープの巻き取り量又は繰り出し量に応じて、前記テープ駆動装置を移動可能とする移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記リールの回転軸に垂直な方向に設けられ互いに交差して連結される第1リニアガイド及び第2リニアガイドを有することを特徴とする伸縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、弾性を有するテープと、テープの巻き取りと繰り出しを行うテープ駆動装置と、を備える伸縮装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の伸縮装置では、リールによるテープの巻き取り量に応じてリールに巻き付けられたロール状のテープの直径が変化し、その変化に伴ってリール等を含むテープ駆動装置はハウジングに対して移動する。具体的には、テープ駆動装置は、ハウジングに設けられた2つのガイド部の間でガイド部に沿って移動する。
【0005】
リールによるテープの巻き取り及び繰り出しに応じて、テープ駆動装置には回転方向の力が作用するため、テープ駆動装置はその回転方向の力によりガイド部に押し付けられてスムーズに移動できないおそれがある。その場合には、テープの巻き取りと繰り出しが安定しない。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、安定してテープの巻き取りと繰り出しができる伸縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、テープの巻き取りと繰り出しをする伸縮装置であって、テープがロール状に巻き付けられるリールと、リールへのテープの巻き取りとリールからの前記テープの繰り出しを行うための動力源と、リールと動力源とを含むユニット化されたテープ駆動装置と、リールによるテープの巻き取り量又は繰り出し量に応じて、テープ駆動装置を移動可能とする移動機構と、を備え、移動機構は、テープ駆動装置を支持するリンク機構を有し、リンク機構は、テープ駆動装置に回転自在に連結され互いに平行を維持して揺動する一対の揺動リンクを有することを特徴とする。
【0008】
この発明では、リールによるテープの巻き取り量又は繰り出し量に応じてテープ駆動装置に回転方向の力が作用しても、一対の揺動リンクが揺動することによりテープ駆動装置が移動するため、テープ駆動装置はスムーズに移動することができる。よって、安定してテープの巻き取りと繰り出しができる。
【0009】
また、本発明は、移動機構は、テープ駆動装置をテープの走行方向に移動させるリニアガイドをさらに有し、リンク機構は、一対の揺動リンクを回転自在に連結する連結リンクをさらに有し、リニアガイドは、テープ駆動装置に設けられ走行方向に直線状に延び連結リンクを案内するレールを有することを特徴とする。
【0010】
この発明では、リールによるテープの巻き取り量又は繰り出し量に応じて、一対の揺動リンクを回転自在に連結する連結リンクはリニアガイドのレールに案内されるため、テープ駆動装置はよりスムーズに移動することができる。
【0011】
また、本発明は、テープの巻き取りと繰り出しをする伸縮装置であって、テープがロール状に巻き付けられるリールと、リールへのテープの巻き取りとリールからの前記テープの繰り出しを行うための動力源と、リールと動力源とを含むユニット化されたテープ駆動装置と、リールによるテープの巻き取り量又は繰り出し量に応じて、テープ駆動装置を移動可能とする移動機構と、を備え、移動機構は、リールの回転軸に垂直な方向に設けられ互いに交差して連結される第1リニアガイド及び第2リニアガイドを有することを特徴とする。
【0012】
この発明では、リールによるテープの巻き取り量又は繰り出し量に応じてテープ駆動装置に回転方向の力が作用しても、互いに交差して連結された第1リニアガイド及び第2リニアガイドに沿ってテープ駆動装置が移動するため、テープ駆動装置はスムーズに移動することができる。よって、安定してテープの巻き取りと繰り出しができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安定してテープの巻き取りと繰り出しができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る伸縮装置の模式図であり、伸縮部が最伸長した状態を示す。
【
図2】本発明の実施形態に係る伸縮装置の模式図であり、伸縮部が最収縮した状態を示す。
【
図3】テープの断面図であって、テープの長手方向に垂直な断面を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る伸縮装置のテープ駆動装置の平面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る伸縮装置のテープ駆動装置の側面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る伸縮装置のテープ駆動装置の底面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る伸縮装置のテープ駆動装置の側面図であり、
図6では図示を省略している支持板を図示した図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例1を示す模式図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例2を示す、リール周辺の模式図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例3を示す、リール周辺の模式図である。
【
図13A】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例4を示す模式図であって、伸縮部の先端部分の斜視図である。
【
図13B】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例5を示す模式図であって、伸縮部の先端部分の斜視図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例6を示す模式図であって、2つ伸縮装置を連結した形態を示す概略斜視図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例7を示す模式図であって、ベルトガイド近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る伸縮装置100について説明する。
【0016】
まず、主に
図1及び
図2を参照して、伸縮装置100の全体構成について説明する。
図1は、テープ1が伸長した状態の伸縮装置100の模式図であり、
図2は、テープ1が収縮した状態の伸縮装置100の模式図である。
【0017】
伸縮装置100は、テープ1の巻き取りと繰り出しを行い、駆動対象物101を動かしたり、テープ1で物を支持したりするものである。
【0018】
図1に示すように、伸縮装置100は、弾性を有するテープ1と、テープ1の巻き取りとテープ1の繰り出しを行うテープ駆動装置10と、を備える。テープ駆動装置10は、テープ1がロール状に巻き付けられるリール6と、リール6へのテープ1の巻き取りとリール6からのテープ1の繰り出しを行うための動力源としてのモータ11と、を有する。テープ駆動装置10は、ハウジング20内に収容される。
【0019】
モータ11はサーボモータであり、回転角度検出器と負荷検出器が内蔵されている。モータ11の回転は、伝達機構12により減速されてリール6に伝達される。伝達機構12は、モータ11に回転シャフト13を介して連結された主動歯車14と、リール6に回転軸としての回転シャフト15を介して連結され、主動歯車に噛み合う従動歯車16と、を有する。モータ11の駆動により伝達機構12を介してリール6が回転することによって、リール6へのテープ1の巻き取りとリール6からのテープ1の繰り出しが行われる。具体的には、モータ11が正転駆動することによってリール6からテープ1が繰り出され、モータ11が逆転駆動することによってリール6にテープ1が巻き取られる。ハウジング20には、テープ1の出入口であるテープガイド21が設けられる。テープガイド21には、テープ1が摺動自在に挿通し、テープ1の出入りを案内するガイドスリットが形成される。
【0020】
テープ1は、弾性を有する材料にて形成され、本実施形態では、金属製であってばね鋼にて形成される。テープ1は、ばね鋼に限らず、適度なばね性と剛性を有する材料で形成されればよく、合成樹脂や、合成樹脂に繊維(炭素繊維、ガラス繊維)や金属を組み合せた複合材料にて形成してもよい。
【0021】
テープ1は帯状であって、外力が作用していない状態では、長手方向に直線状に形成される。
図3に示すように、テープ1の幅方向の断面(長手方向に垂直な断面)は円弧状に湾曲して形成され、凸面1aと凹面1bを有する。テープ1は、断面円弧状であるため、長手方向からの外力に対しては高い剛性を示し、容易に折れ曲がることはない。一方、長手方向に垂直な方向からの外力に対しては折れ曲がり、外力が除去されると元の直線状に弾性復帰する。
【0022】
リール6にロール状に巻き付けられているテープ1は、凸面1aが外側となる方向に曲げられて巻き付けられている。これは、断面円弧状であるテープ1は、凸面1aが外側となる方向には比較的容易に曲がる一方、凹面1bが外側となる方向に曲がるには大きな力が必要になるためである。
【0023】
テープ1は弾性力を有するため、リール6にテープ1がロール状に巻き付けられた状態において、テープ1同士が接触した状態に維持されずにテープ1間に隙間ができる「巻きほぐれ」が生じ易い。この巻きほぐれを防止するため、伸縮装置100は、リール6にロール状に巻き付けられたテープ1をリール6に対して押し付けるバンド部材としてのベルト30と、ベルト30のテンションを調整するテンション調整手段としてのテンション調整機構40と、をさらに有する。ベルト30及びテンション調整機構40については、後に詳細に説明する。
【0024】
伸縮装置100は、テープ1を180度折り返す折返装置50をさらに備える。テープ1は、1本の連続したテープからなり、テープ駆動装置10から繰り出された後、折返装置50にて180度折り返され、末端がテープ駆動装置10のハウジング20に固定される。このように、テープ1は、折返部2と固定端3とを有する。テープ1は、折返部2では、リール6への巻き付けと同様に、テープ1の凸面1aが外側となる方向に曲げられる。したがって、折返装置50においてテープ1はスムーズに送られる。
【0025】
テープ駆動装置10からテープ1が繰り出されると、テープ1の繰り出し量に応じて、テープ1の折返部2は固定端3から離れる方向(
図1中上方向)へ移動する。一方、テープ駆動装置10がテープ1を巻き取ると、テープ1の巻き取り量に応じて、テープ1の折返部2は固定端3に近づく方向(
図1中下方向)へ移動する。このように、テープ1は、折返部2が自由端として機能し、テープ駆動装置10の駆動に伴って折返部2と固定端3の間の長さが変化する。つまり、テープ1におけるテープガイド21から折返部2を経由して固定端3にわたる部分が、テープ駆動装置10の駆動に伴って伸縮する伸縮部4として機能する。駆動対象物101は折返装置50のケース51に取り付けられるため、伸縮部4を伸縮させることによって、駆動対象物101を動かすことができる。
【0026】
伸縮部4は、先端部に形成されテープ1が180度折り返された折返部2と、テープ1の末端が固定された固定端3とを有するため、2本のテープ1が重なった二重に形成される。したがって、例えば、テープ駆動装置10からテープ1が1m繰り出されると、駆動対象物101は
図1中0.5m上方向へ移動し、テープ駆動装置10がテープ1を1m巻き取ると、駆動対象物101は
図1中0.5m下方向へ移動する。伸縮部4はテープ1が二重に形成されるため、長手方向の剛性が増し、重量のある駆動対象物101を支持して駆動することが可能となる。
【0027】
伸縮部4には、長手方向に間隔を空けて配置され、2本のテープ1を束ねる結束板8が複数設けられる。2本のテープ1は、
図4に示すように、互いの凹面1bが対向するように結束板8によって束ねられる。結束板8には、テープ1の外形形状と相似形状であってテープ1の外形形状よりも僅かに大きい円弧状の2つのガイドスリット8aが形成される。テープ1は、ガイドスリット8aを摺動自在に挿通し、伸縮部4の伸縮時にはガイドスリット8aに案内されて送られる。ガイドスリット8aに沿ってテープ1がスムーズに移動できるように、ガイドスリット8aの内周面にテープ1を案内するベアリングを設けてもよい。
【0028】
図1に示すように、隣り合う結束板8は、紐9によって互いに連結されており、隣り合う結束板8を連結する紐9の長さによって隣り合う結束板8の間隔が設定される。折返装置50に一番近い結束板8(
図1中最上方の結束板8)は、紐9によって、折返装置50のケース51に取り付けられる。また、テープ駆動装置10に一番近い結束板8(
図1中最下方の結束板8)は、紐9によって、ハウジング20に取り付けられる。このように、紐9は、折返装置50とハウジング20にわたって取り付けられ、複数の結束板8を支持する。紐9が全体にわたって張った状態が、伸縮部4の最伸長状態となる(
図1に示す状態)。紐9に代わりロープやワイヤを用いてもよい。
【0029】
伸縮部4のテープ1は、複数の結束板8によって支持されていることにより、外力に対して折れ曲がることが防止されている。テープ1の伸縮部4に過大な外力が作用して伸縮部4がある部分で折れ曲がったとしても、外力が除去されるとテープ1の弾性力によって元の直線状に復帰する。隣り合う結束板8の間隔は、伸縮部4の基端部である固定端3から先端部である折返部2に向かって徐々に大きくなるように配置される。これは、伸縮部4には、基端側ほど大きな負荷が作用するためである。結束板8の数及び隣り合う結束板8の間隔は、伸縮部4の長さ、駆動対象物101の重量、伸縮装置100の用途、及びテープ1の剛性等を考慮して設定される。また、これらを考慮した結果、結束板8が不要な場合には、結束板8を設けなくてもよい。
【0030】
折返装置50は、ケース51と、ケース51に回転自在に設けられテープ1の走行方向を180度変更する方向変更ローラ52と、方向変更ローラ52に対してテープ1を押し付ける複数のガイドローラ53と、ケース51に設けられケース51内へのテープ1の出入りを案内するテープガイド54と、を有する。
【0031】
テープガイド54には、テープ1が摺動自在に挿通し、テープ1を案内する円弧状の2つのガイドスリットが形成される。2つのガイドスリットの形状は、
図4に示す結束板8に形成された2つのガイドスリット8aと同じ形状である。
【0032】
テープガイド54からケース51内に進入したテープ1は、テープガイド54から方向変更ローラ52にかけて徐々に断面円弧状から断面矩形状に変形して略平らな状態で方向変更ローラ52の外周面に沿って送られる。そして、方向変更ローラ52からテープガイド54にかけて徐々に断面矩形状から断面円弧状に変形する。このように、テープ1は方向変更ローラ52によってスムーズに走行方向が変更される。テープ1におけるテープガイド54と方向変更ローラ52との間の部分は、断面形状が徐々に変化する形状遷移区間となる。この形状遷移区間におけるテープ1は、他の部分と比較して剛性が低いため、折れ曲がり易い。したがって、形状遷移区間におけるテープ1の折れ曲がりを防止するために、形状遷移区間にテープ1の走行を案内するガイドローラ55を設けることが好ましい。
【0033】
次に、主に
図5~
図8を参照して、テープ駆動装置10、ベルト30、及びテンション調整機構40について詳しく説明する。テープ駆動装置10、ベルト30、及びテンション調整機構40は、直方体状のハウジング20内に収容される。
図5はテープ駆動装置10の平面図であり、
図6はテープ駆動装置10の側面図であり、
図7はテープ駆動装置10の底面図であり、
図8はリール6周辺の模式図である。なお、
図5~7では、ハウジング20の内部が見えるように、ハウジング20の一部の面を開放した状態を示している。また、
図8では、実際には支持板70の紙面裏側に配置されるリール6、ベルト30、及びテンション調整機構40を、説明の便宜上、支持板70の紙面表側に図示している。
【0034】
図5に示すように、リール6と従動歯車16を連結する回転シャフト15は、互いに平行な一対の支持板70,71にわたって回転自在に支持される。また、同様に、モータ11と主動歯車14を連結する回転シャフト13は、一対の支持板70,71にわたって回転自在に支持される。なお、
図6では、一対の支持板70,71のうち支持板70の図示を省略している。
【0035】
回転シャフト13は、モータ11の回転軸であって支持板70に回転自在に支持されるモータシャフト13aと、主動歯車14の回転軸であって支持板71に回転自在に支持される歯車シャフト13bと、に分割されている。モータシャフト13aと歯車シャフト13bは、磁気タイプの非接触カップリングによって連結される。本実施形態では、非接触カップリングは、高い伝達トルクを有するネオジム磁石17a,17bである。モータシャフト13aの端部に取り付けられたネオジム磁石17aと、歯車シャフト13bの端部に取り付けられたネオジム磁石17bとの間には隙間が存在する。その隙間にテフロン(登録商標)シート等の隔壁材を配置することにより、モータ11が配置される空間を水密構造にすることが可能となる。このような構成にすれば、伸縮装置100を水没させた状態で使用することが可能となる。
【0036】
ハウジング20にはテープガイド21が設けられ、テープ1はテープガイド21を通じてハウジング20に対して出入りする。テープ1の端部は、リール6の外周面に取り付けられ、モータ11の駆動によるリール6の回転に伴い、リール6へのテープ1の巻き取りとリール6からのテープ1の繰り出しが行われる。なお、
図6では、テープ1がリール6に取り付けられていない状態を示している。
【0037】
上述したように、テープ1は大きな弾性力を有するため、リール6にロール状に巻き付けられたテープ1には、径方向に拡がって元の形状である直線状に戻ろうとする力が発生する。そのため、テープ1がリール6にロール状に巻き付けられた状態において、テープ1同士が接触した状態に維持されずにテープ1間に隙間ができる巻きほぐれが生じ易い。この巻きほぐれの対策として、伸縮装置100は、リール6にロール状に巻き付けられたテープ1をリール6に対して押し付けるベルト30と、ベルト30のテンションを調整するテンション調整機構40と、を有する。
【0038】
図6及び
図8に示すように、ベルト30は、ローラ31と、ローラ31を回転自在に支持するローラ支持部32とからなるピースを複数有し、複数のピースが互いに回転自在に連結されることによって構成された湾曲可能なローラ付きベルトである。ベルト30は、リール6にロール状に巻き付けられたテープ1の外周面に沿って設けられた湾曲部30Aと、リール6から直線状に延びるテープ1を案内する直線部30Bと、を有する。ベルト30の湾曲部30Aは、リール6にロール状に巻き付けられたテープ1の外周面に沿って折れ曲がるように設けられ、テープ1の外周面を囲む。ベルト30のテンションは湾曲部30Aのローラ31を通じてテープ1に付与される。したがって、リール6にロール状に巻き付けられたテープ1の外周面にベルト30によってテンションが付与された状態であっても、テープ1は回転自在な複数のローラ31に案内されるため、リール6へのテープ1の巻き取りとリール6からのテープ1の繰り出しがスムーズに行われる。
【0039】
ハウジング20には、ベルト30の直線部30Bに沿うベルトガイド22が設けられる。ベルト30の一端側である湾曲部30Aの端部は、ベルトガイド22に固定されて拘束される。また、ベルト30の他端側である直線部30Bの端部は、移動自由な自由端34である。ベルト30の端部はベルトガイド22に拘束されているため、テンション調整機構40によってベルト30の自由端34の位置を調節することにより、ベルト30のテンションを調整することができる。
【0040】
ここで、リール6がテープ1を巻き取ると、リール6に巻き付けられたロール状のテープ1の直径d(
図8参照)は増加する。以下では、リール6に巻き付けられたロール状のテープ1を、「ロール状テープ1」と称する。テープ1の厚さをTとすると、リール6が1回転してテープ1を1巻分巻き取ると、ロール状テープ1の直径dは2Tだけ増加する。一方、リール6がテープ1を繰り出すと、ロール状テープ1の直径dは減少する。リール6が1回転してテープ1を1巻分繰り出すと、ロール状テープ1の直径は2Tだけ減少する。リール6がテープ1を巻き取りロール状テープ1の直径dが増加する過程で、ベルト30の湾曲部30Aの内径が変わらなければ、ベルト30のテンションが過度に大きくなってしまう。一方、リール6がテープ1を繰り出しロール状テープ1の直径dが減少する過程で、ベルト30の湾曲部30Aの内径が変わらなければ、ベルト30のテンションが過度に小さくなってしまい、巻きほぐれが生じてしまう。このように、リール6によるテープ1の巻き取りと繰り出しに伴って、リール6によるテープ1の巻き取り量が変化し、ロール状テープ1の直径dが変化するため、それに応じてベルト30の湾曲部30Aの内径を変化させてベルト30のテンションを調整する必要がある。テンション調整機構40は、リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じて、ベルト30の自由端34の位置を調節することにより、湾曲部30Aの内径を変化させてベルト30のテンションを調整するものである。具体的には、テンション調整機構40は、リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じてベルト30のテンションが略一定となるように調整する。
【0041】
図6~
図8に示すように、テンション調整機構40は、ベルト30の自由端34側に設けられる受け部としてのカムフォロワ41に接触してベルト30の自由端34の位置を決めるカム42と、リール6の回転に同期してカム42を回転させ、カム42とカムフォロワ41の接触を維持させるカム駆動機構80と、を有する。
【0042】
カムフォロワ41は、治具44を介してベルト30の直線部30Bの端部に取り付けられる。カムフォロワ41は、円柱状のローラであり、回転軸45を中心に回転自在に設けられる。
【0043】
カム42は、回転軸46を中心に回転自在に設けられる。回転軸46は、支持板70に固定されたカム支持板72(
図6参照)に支持される。カムフォロワ41に接触するカム42のカム形状は、リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じてベルト30のテンションが略一定となるように設定されている。なお、
図7では、カム支持板72の図示を省略している。
【0044】
カム駆動機構80は、カム42と一体に形成されたウォームホイール81と、ウォームホイール81に噛み合うウォームギア82と、ウォームギア82の回転シャフト83に取り付けられた歯車84と、リール6の回転シャフト15に取り付けられ、歯車84と噛み合う歯車85(
図5参照)と、を有する。リール6の回転は、歯車85、歯車84、ウォームギア82、ウォームホイール81を通じてカム42に伝達される。このように、カム駆動機構80の作用により、カム42はリール6の回転に同期して回転する。
【0045】
リール6が回転してテープ1を巻き取り、ロール状テープ1の直径dが増加すると、ベルト30の自由端34がリール6に近づく方向(
図8中左方向)に移動するように、リール6の回転に同期してカム42も回転し(
図7において反時計方向に回転)、カム42とカムフォロワ41の接触が維持される。カム42のカム形状は、リール6によるテープ1の巻き取り量に応じてベルト30のテンションが略一定となるように設定されているため、ベルト30のテンションが過度に大きくなることはない。
【0046】
一方、リール6が回転してテープ1を繰り出し、ロール状テープ1の直径dが減少すると、ベルト30の自由端34がリール6から遠ざかる方向(
図8中右方向)に移動するように、リール6の回転に同期してカム42も回転し(
図7において時計方向に回転)、カム42とカムフォロワ41の接触が維持される。カム42のカム形状は、リール6によるテープ1の繰り出し量に応じてベルト30のテンションが略一定となるように設定されているため、ベルト30のテンションが過度に小さくなることはない。
【0047】
このように、カム42の作用により、ベルト30には常に略一定のテンションが付与されるため、リール6に巻き付けられたテープ1の巻きほぐれが防止される。
【0048】
図7は、リール6からテープ1が繰り出され、伸縮部4が最も伸長した最伸長状態(
図1に示す状態)に対応し、ベルト30の自由端34がリール6から最大限まで遠ざかり、カム42が時計方向に最大限まで回転した状態を示している。
図7の状態から、リール6がテープ1を巻き取ると、ベルト30の自由端34は
図7中左方向へ移動すると共にカム42は反時計方向に回転する。伸縮部4が最収縮状態(
図2に示す状態)になると、カム42は
図7に示す状態から約180度回転する。
【0049】
ベルト30は、以上で説明したようにリール6に巻き付けられたテープ1の巻きほぐれを防止する機能の他に、リール6に巻き付けられるテープ1を断面円弧状から断面矩形状に変形させてリール6に巻き付ける機能も有する。リール6に巻き取られるテープ1は、ベルト30のテンションにより断面矩形状の略平らな状態でリール6に巻き取られるため、リール6に安定してロール状に巻き付けられる。このように、ベルト30のテンションは、テープ1の巻きほぐれを防止すると共に、テープ1を断面矩形状に変形させるように作用し、ベルト30は2つの機能を有するため、部品点数が削減され構造の簡素化が図られる。
【0050】
伸縮装置100は、リール6によるテープ1の巻き取り量に応じたロール状テープ1の直径dの変化に伴って、リール6を含むテープ駆動装置10を移動可能とする移動機構90をさらに備える。以下では、主に
図8及び
図9を参照して、移動機構90について詳しく説明する。
図9は
図6と同じ向きのテープ駆動装置10の側面図であるが、
図6では図示を省略している支持板70を図示している点で異なる。
【0051】
上述したように、ベルト30の一端側である湾曲部30Aの端部は、ベルトガイド22に固定されて拘束される。具体的には、
図6及び
図8に示すように、ベルト30の複数のローラ31のうち端部に設けられるローラ31aが、ベルトガイド22の先端部に設けられる回転軸23に回転自在に取り付けられる。つまり、ベルト30の端部のローラ31aは、ベルトガイド22に拘束され移動不能となっている。
【0052】
図6に示すように、リール6にテープ1が巻き付けられていない状態では、リール6の外周面とベルト30のローラ31aとは接触している。ベルト30のローラ31aはベルトガイド22に拘束されているため、リール6はテープ1を巻き取るのに伴い移動可能な構成となっている。具体的には、リール6は、テープ1を巻き取るのに伴い、ベルトガイド22に拘束されたベルト30のローラ31aから反力を受けて、ローラ31aから離れる方向へと移動する。また、リール6は、テープ1を繰り出すのに伴い、ローラ31aに近づく方向へと移動する。以下に詳しく説明する。
【0053】
上述したように、リール6と従動歯車16の回転シャフト15は、一対の支持板70,71にわたって支持されており、モータ11と主動歯車14の回転シャフト13も、一対の支持板70,71にわたって支持されている。また、カム駆動機構80におけるウォームギア82と歯車84の回転シャフト83(
図7参照)も、一対の支持板70,71にわたって支持されている。また、カム42及びウォームホイール81は、回転軸46を介して支持板70に固定されたカム支持板72(
図6参照)に支持されている。
【0054】
図5及び
図7に示すように、一対の支持板70,71は、双方の間に設けられる一対の連結板73,74によって連結される。一対の支持板70,71と一対の連結板73,74とは、テープ駆動装置10のフレーム75を構成する。リール6、モータ11、伝達機構12、及びテンション調整機構40を含むテープ駆動装置10は、フレーム75を介してユニット化されている。ここで、ユニット化とは、複数の部材をまとめて一体化することをいう。ユニット化されたテープ駆動装置10は、リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じて移動機構90により移動する。つまり、テープ駆動装置10は、移動機構90によりハウジング20に対して相対移動可能である。一方、ベルト30は、その端部に設けられるローラ31aがハウジング20に設けられたベルトガイド22に拘束されている。
【0055】
図8及び
図9に示すように、移動機構90は、ハウジング20に対してテープ駆動装置10を支持するリンク機構91と、テープ駆動装置10をテープ1の走行方向に移動させるリニアガイド96と、を有する。移動機構90を構成するリンク機構91とリニアガイド96は、テープ駆動装置10の両側それぞれに設けられる(
図5及び
図7参照)。テープ駆動装置10の両側それぞれに設けられる移動機構90の構成は同一である。
図8及び
図9では、一方側(支持板70側)に設けられる移動機構90のみを図示しており、以下では支持板70側に設けられる移動機構90についてのみ説明する。
【0056】
リンク機構91は、ハウジング20とテープ駆動装置10との間にわたって回転自在に連結され互いに平行を維持して揺動する一対の揺動リンク92a,92bと、一対の揺動リンク92a,92bを回転自在に連結する連結リンク93と、を有する。一対の揺動リンク92a,92bは、一端側がハウジング20に設けられたベース26に回転自在に連結され、他端側が連結リンク93の両端側それぞれに回転自在に連結される。一対の揺動リンク92a,92bは、同じ長さである。リンク機構91は、ベース26を固定リンクとする平行四節リンクを構成する。
【0057】
支持板70側に設けられるリンク機構91の揺動リンク92aと支持板71側に設けられるリンク機構91の揺動リンク92aとは、連結板92c(
図7参照)によって互い連結されているため、一緒に揺動する。同様に、支持板70側に設けられるリンク機構91の揺動リンク92bと支持板71側に設けられるリンク機構91の揺動リンク92bとは、連結板92c(
図7参照)によって互い連結されているため、一緒に揺動する。よって、支持板70側に設けられるリンク機構91と、支持板71側に設けられるリンク機構91とは、同期して動作する。
【0058】
リニアガイド96は、テープ駆動装置10に設けられテープ1の走行方向に直線状に延びるレール97を有する。レール97は、テープ駆動装置10のフレーム75を構成する支持板70に固定される。レール97に沿って、リンク機構91の連結リンク93が案内される。レール97と連結リンク93の間には複数のボール98が介在されているため、連結リンク93はレール97に沿ってスムーズに移動する。本実施形態では、連結リンク93自体がレールに案内されるスライダとして機能する。しかし、レール97に沿って案内されるスライダを別途設け、スライダと連結リンク93を連結してもよい。
【0059】
このように、リンク機構91の連結リンク93は、リニアガイド96を介してテープ駆動装置10に設けられており、また、リンク機構91の一対の揺動リンク92a,92bは、連結リンク93を介してテープ駆動装置10に回転自在に連結されているといえる。
【0060】
リール6がテープ1を巻き取りロール状テープ1の直径dが増加すると、リール6はベルトガイド22に拘束されたベルト30のローラ31aから反力を受けるため、リール6を含むテープ駆動装置10はリニアガイド96の作用により、ローラ31aから離れる方向へと移動しようとする(
図8中矢印A方向)。このとき、テープ1におけるテープガイド21からリール6までの直線部1cは、ベルトガイド22とベルト30の直線部30Bとの間に支持されていると共にテープガイド21によりハウジング20に支持されているため、直線部1cがロール状テープ1の接線方向であるテープ1の走行方向に常に延びるように、一対の揺動リンク92a,92bは
図8中矢印C方向へと揺動する。このように、リニアガイド96及びリンク機構91の作用により、リール6を含むテープ駆動装置10は、テープ1の走行方向に対する角度を維持した状態で、ローラ31aから離れる方向(
図8中矢印A方向)へと平行移動する。
【0061】
一方、リール6がテープ1を繰り出しロール状テープ1の直径dが減少すると、テンション調整機構40から付与されるベルト30のテンションにより、リール6を含むテープ駆動装置10はリニアガイド96の作用により、ローラ31aに近づく方向へと移動しようとする(
図8中矢印B方向)。このとき、テープ1の直線部1cがロール状テープ1の接線方向であるテープ1の走行方向に常に延びるように、一対の揺動リンク92a,92bは
図8中矢印D方向へと揺動する。このように、リニアガイド96及びリンク機構91の作用により、リール6を含むテープ駆動装置10は、テープ1の走行方向に対する角度を維持した状態で、ローラ31aに近づく方向(
図8中矢印B方向)へと平行移動する。
【0062】
以上のように、ユニット化されたテープ駆動装置10は、リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じて移動機構90の作用により、テープ1の走行方向に対する角度を維持した状態で、平行移動する。つまり、テープ駆動装置10は、リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じて、テープ1の走行方向に対する角度を維持した状態で、テープ1の走行方向とその走行方向に垂直な方向とを含む面内(
図8及び
図9の紙面内)で自由に移動することができる。よって、リール6の回転に伴ってロール状テープ1の直径dが増減したとしても、リール6によるテープ1の巻き取りと繰り出しが安定して行われるため、伸縮装置100は安定して伸縮する。
【0063】
以上のように構成される伸縮装置100の動作について、主に
図1及び
図2を参照して説明する。
【0064】
モータ11が正転駆動してリール6が回転すると、リール6からテープ1が繰り出される。これにより、伸縮部4が伸長し(
図1中上方向へ伸長)、折返装置50に取り付けられた駆動対象物101は
図1中上方向へ移動する。伸縮部4の最大伸長状態(
図1に示す状態)では、紐9が全体にわたって張った状態となる。
【0065】
一方、モータ11が逆転駆動してリール6が回転すると、リール6にテープ1が巻き取られる。これにより、伸縮部4が収縮し(
図1中下方向へ収縮)、折返装置50に取り付けられた駆動対象物101は
図1中下方向へ移動する。伸縮部4は、折返装置50のケース51とテープ駆動装置10のハウジング20との間で隣り合う結束板8が互いに接触する最収縮状態(
図2に示す状態)まで収縮する。伸縮部4の最収縮状態では、紐9は緩んだ状態となる(
図2では紐9の図示を省略)。なお、
図1及び
図2では、テープ駆動装置10が折返装置50の下方に位置する向きに伸縮装置100を配置する場合について示したが、伸縮装置100の向きに制限はなく、テープ駆動装置10が折返装置50の上方に位置する向きに伸縮装置100を配置してもよい。
【0066】
リール6からテープ1が繰り出される途中又はリール6にテープ1が巻き取られる途中で、モータ11が停止すると、リール6は停止した状態に維持され、駆動対象物101は伸縮部4によって保持される。モータ11に内蔵された回転角度検出器の検出結果に基づいて、伸縮部4の伸縮量(ストローク)が制御される。また、モータ11に内蔵された負荷検出器によってテープ1に作用する負荷が検出され、その検出結果に基づいてテープ1に作用する過負荷やテープ1の折れ曲がりが判定される。
【0067】
リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じて、テンション調整機構40はベルト30のテンションが略一定となるように調整する。これにより、リール6に巻き付けられたテープ1の巻きほぐれが防止される。また、リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じて、テープ駆動装置10は移動機構90の作用により自由に移動する。これにより、リール6によるテープ1の巻き取りと繰り出しが安定して行われる。
【0068】
伸縮装置100の用途としては、天窓の開閉装置、ドアの開閉装置、車両のリアハッチを開閉するステーとして用いることができる。また、
図10に示すように、駆動対象物101に代えて、開閉動作が可能なハンド102等のアタッチメントを折返装置50に取り付け、伸縮装置100をマニピュレータとして用いることができる。
【0069】
また、ベルト等を介してテープ駆動装置10を身体に取り付け、折返装置50を床面や椅子の座面に当てて使用することにより、伸縮装置100を立ち上がり支援や立ち姿勢保持のための電動松葉杖として用いることができる。さらに、ベルト等を介して複数のテープ駆動装置10を身体に取り付けると共に、折返装置50にモータで駆動可能な車輪を取り付けることにより、伸縮装置100を歩行支援用として用いることができる。このように、伸縮装置100は、生活支援用としても用いることができる。
【0070】
伸縮装置100は、伸縮部4の最収縮状態(
図2に示す状態)ではコンパクトでありながら伸縮部4のストロークが長く、高い伸縮比を有すると共に、テープ1で構成される伸縮部4の剛性が高いため、種々の用途に利用することができる。
【0071】
以下に、上記実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0072】
(1)上記実施形態では、ベルト30の一端側である湾曲部30Aの端部は、ベルトガイド22に固定されて拘束され、ベルト30の他端側である直線部30Bの端部は、移動自由な自由端である構成である。これに代えて、
図11に示すように、ベルト30の一端側である湾曲部30Aの端部を移動自由な自由端とし、ベルト30の他端側である直線部30Bの端部を移動不能に拘束するように構成してもよい。この場合、ベルト30の湾曲部30Aの端部が固定されるベルトガイド22を移動可能に構成し、ベルト30のテンションを調整すればよい。ベルト30のテンションを調整するテンション調整機構40としては、上記実施形態と同様にカムを利用した構成でもよいし、
図11に示すようにラックピニオン機構を利用してもよい。
図11に示すラックピニオン機構は、ピニオン47を回転させることによりラック48をスライドさせて、ラック48に回転自在に設けられるカムフォロワ48aを経由して、カム曲面を有するステー49を介してベルトガイド22をスライドさせる構成である。また、
図11に示すように、テープ駆動装置10は、リンク機構91によりハウジング20に吊り下げられて支持される構成であってもよい。
【0073】
(2)上記実施形態では、移動機構90がリンク機構91とリニアガイド96とを有する形態について説明した。しかし、リニアガイド96は必須の構成ではなく、移動機構90がリンク機構91のみを有する形態であってもよい。この形態では、リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じて、平行四節リンクのリンク機構91の動作によりテープ駆動装置10が自由に移動できるように、ベルトガイド22によりベルト30を拘束しないようにする必要がある。また、この形態では、連結リンク93を省略し、一対の揺動リンク92a,92bを支持板70に回転自在に連結すればよい。ベース26、一対の揺動リンク92a,92b、及び支持板70によって平行四節リンクが構成される。
【0074】
(3)上記実施形態では、移動機構90として、リンク機構91とリニアガイド96とを有する形態について説明した。これに代わり、
図12に示すように、移動機構90が、テープ駆動装置10をテープ1の走行方向に沿って設けられる第1リニアガイド96Aと、第1リニアガイド96Aに連結され、テープ駆動装置10をテープ1の走行方向に垂直でかつリール6の回転シャフト15に垂直な方向に沿って設けられる第2リニアガイド96Bと、を有する構成としてもよい。ここで、「テープ1の走行方向に垂直でかつリール6の回転シャフト15に垂直な方向」とは、
図12において、紙面上下方向である。このように、第1リニアガイド96A及び第2リニアガイド96Bは、双方ともリールの回転シャフト15に垂直に設けられる。第1リニアガイド96Aは、上記実施形態のリニアガイド96と同様の構成であり、連結リンク93に代えてレール97に沿って案内されるスライダ99を有する。第2リニアガイド96Bは、ハウジング20に固定して設けられテープ1の走行方向に垂直な方向に直線状に延びるレール(図示省略)と、そのレールに沿って案内されるスライダ(図示省略)と、を有する。第1リニアガイド96Aのスライダ99と第2リニアガイド96Bのスライダとは互いに連結される。
図12では、第2リニアガイド96Bは2つ設けられるが、1つのみでもよい。
【0075】
リール6がテープ1を巻き取りロール状テープ1の直径dが増加すると、リール6は、ベルトガイド22に拘束されたベルト30のローラ31aから反力を受ける。これにより、リール6を含むテープ駆動装置10は、第1リニアガイド96A及び第2リニアガイド96Bに案内されて、リール6がローラ31aから離れる方向(矢印A方向)へ移動する。一方、リール6がテープ1を繰り出しロール状テープ1の直径dが減少すると、テンション調整機構40から付与されるベルト30のテンションにより、リール6を含むテープ駆動装置10は、第1リニアガイド96A及び第2リニアガイド96Bに案内されて、リール6がローラ31aに近づく方向(矢印B方向)へ移動する。
図12に示す形態においても、テープ駆動装置10は、リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じて、テープ1の走行方向に対する角度を維持した状態で、テープ1の走行方向とその走行方向に垂直な方向とを含む面内(
図12の紙面内)で自由に移動することができる。よって、リール6によるテープ1の巻き取りと繰り出しが安定して行われる。
【0076】
図12に示す変形例では、第1リニアガイド96Aがテープ1の走行方向に沿って設けられ、第2リニアガイド96Bが第1リニアガイド96Aに垂直に交差して設けられる形態である。しかし、第1リニアガイド96Aはテープ1の走行方向に対して傾いて設けられてもよく、また、第1リニアガイド96A及び第2リニアガイド96Bの交差角度は90°以外であってもよい。つまり、第1リニアガイド96A及び第2リニアガイド96Bは、リールの回転シャフト15に垂直に設けられてかつ互いに交差して連結される構成であれば、どのように設けられてもよい。
【0077】
(4)上記実施形態では、テープ1の幅方向の断面形状が円弧状である形態について説明した。しかし、テープ1の断面形状は円弧状に限定されず、矩形等であってもよい。
【0078】
(5)上記実施形態では、テープ1が折返部2と固定端3を有する形態について説明した。これに代わり、テープ1を折り返さずに、テープ1の先端部に駆動対象物101を取り付けるようにしてもよい。この形態では、伸縮部4を複数本のテープ1で構成してもよい。具体的には、1つのテープ駆動装置10から重ね合わされた複数本のテープ1を同時に繰り出すようにしてもよい。また、複数のテープ駆動装置10からそれぞれ繰り出されたテープ1を束ねるようにしてもよい。
【0079】
(6)上記実施形態では、伸縮部4を180度折り返された1本のテープ1で構成する形態について説明した。
図13A及び
図13Bに示すように、180度折り返された2本のテープ1Aとテープ1Bを90度ずらして配置し、伸縮部4の断面が略円筒状となるようにしてもよい。これにより、伸縮部4の剛性をさらに高めることができる。
図13Aは、伸縮部4の先端部分の斜視図であって、折返装置50を用いずにテープ1A,1Bを折り返す形態を示し、
図13Bは、伸縮部4の先端部分の斜視図であって、折返装置50を用いてテープ1A,1Bを折り返す形態を示している。
図13Bに示す形態は、
図1及び
図2に示す形態と同様に、折返装置50の内部に、テープ1A及びテープ1Bのそれぞれに対して、方向変更ローラ52A,52B、ガイドローラ53A,53B、及びガイドローラ55A,55Bが設けられる。なお、
図13Bでは、折返装置50の内部構成が見えるように、折返装置50の一部の面を省略している。
【0080】
180度折り返された2本のテープ1Aとテープ1Bを90度ずらして配置するには、例えば、
図14に示すように、2つの伸縮装置100(100A,100B)を90度ずらして連結する。具体的には、伸縮装置100A,100Bのテープ駆動装置10A,10Bのハウジング20A,20Bを90度ずらして結合する。伸縮装置100Aのテープ駆動装置10Aから繰り出されるテープ1Aは、折返装置50で折り返され、末端3Aがテープ駆動装置10Aのハウジング20Aに固定される。一方、伸縮装置100Bのテープ駆動装置10Bから繰り出されるテープ1Bは、テープ駆動装置10Aのハウジング20Aの内部を通過し、折返装置50で折り返され、末端3Bがハウジング20Aに固定される。テープ駆動装置10Bから繰り出されるテープ1Bは、ハウジング20A内においては
図5に示す支持板70に沿って延在し、ハウジング20Aの内部を通過する。
【0081】
図13A,
図13B,及び
図14に示すように、2本のテープ1A,1Bを用いる場合には、2本のテープ1A,1Bの伸縮速度を異なるように制御すれば、伸縮部4の先端部において2本のテープ1A,1Bの間で張力を発生させることができる。この張力は、例えば、ハンド102(
図10参照)の握力に利用したり、折返装置50に取り付けられる車輪のブレーキ力に利用したりすることができる。
【0082】
(7)上記実施形態では、リール6にロール状に巻き付けられたテープ1をリール6に対して押し付けるバンド部材がベルト30である形態について説明した。しかし、バンド部材としては、テープ1をリール6に対して押し付けることができればよく、ベルト30に代えて、例えばチェーンでもよい。
【0083】
(8)上記実施形態では、テンション調整機構40は、カムフォロワ41とカム42を有する形態について説明した。しかし、テンション調整機構40は、この形態に限定されず、ベルト30の自由端34の位置を調節することにより、ベルト30のテンションを調整できる構成であればよく、例えば、リール6の回転に同期して、モータによりベルト30の自由端34の位置を調節する形態でもよい。
【0084】
(9)上記実施形態では、モータ11がサーボモータであって、回転角度検出器と負荷検出器が内蔵される形態について説明した。これに代わり、ハウジング20のテープガイド21や折返装置50のテープガイド54に、テープ1の繰り出し量と巻き取り量を検出して伸縮部4の伸縮量(ストローク)を検出するストロークセンサを設けるようにしてもよい。また、テープ1の固定端3とハウジング20との間に、テープ1に作用する負荷を検出する負荷検出器を設けるようにしてもよい。
【0085】
(10)
図15に示すように、ベルトガイド22の両側部に、テープ1の直線部とベルト30の直線部30Bを収納するための壁部22aを設けてもよい。これにより、テープ1の直線部とベルト30の直線部30Bがベルトガイド22に沿って安定して移動することができる。また、ベルトガイド22に、テープ1の直線部の移動を案内する回転自在なローラ22bを設けてもよい。ローラ22bは、テープ1の凹面1bを案内するローラ22baと、テープ1の両側面を案内するローラ22bbと、を有する。
【0086】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0087】
テープ1の巻き取りと繰り出しをする伸縮装置100は、テープ1がロール状に巻き付けられるリール6と、リール6へのテープ1の巻き取りとリール6からのテープ1の繰り出しを行うためのモータ11(動力源)と、リール6とモータ11とを含むユニット化されたテープ駆動装置10と、リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じて、テープ駆動装置10を移動可能とする移動機構90と、を備え、移動機構90は、テープ駆動装置10を支持するリンク機構91を有し、リンク機構91は、テープ駆動装置10に回転自在に連結され互いに平行を維持して揺動する一対の揺動リンク92a,92bを有する。
【0088】
この構成では、リール6によるテープの1巻き取り量又は繰り出し量に応じてテープ駆動装置10に回転方向の力が作用しても、一対の揺動リンク92a,92bが揺動することによりテープ駆動装置10が移動するため、テープ駆動装置10はスムーズに移動することができる。よって、安定してテープ1の巻き取りと繰り出しができる。
【0089】
また、移動機構90は、テープ駆動装置10をテープ1の走行方向に移動させるリニアガイド96をさらに有し、リンク機構91は、一対の揺動リンク92a,92bを回転自在に連結する連結リンク93をさらに有し、リニアガイド96は、テープ駆動装置10に設けられテープ1の走行方向に直線状に延び連結リンク93を案内するレール97を有する。
【0090】
この発明では、リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じて、一対の揺動リンク92a,92bを回転自在に連結する連結リンク93はリニアガイド96のレール97に案内されるため、テープ駆動装置10はよりスムーズに移動することができる。
【0091】
テープ1の巻き取りと繰り出しをする伸縮装置100は、テープ1がロール状に巻き付けられるリール6と、リール6へのテープ1の巻き取りとリール6からのテープ1の繰り出しを行うためのモータ11(動力源)と、リール6とモータ11とを含むユニット化されたテープ駆動装置10と、リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じて、テープ駆動装置10を移動可能とする移動機構90と、を備え、移動機構90は、リール6の回転シャフト15(回転軸)に垂直な方向に設けられ互いに交差して連結される第1リニアガイド96A及び第2リニアガイド96Bを有する。
【0092】
この構成では、リール6によるテープ1の巻き取り量又は繰り出し量に応じてテープ駆動装置10に回転方向の力が作用しても、互いに交差して連結された第1リニアガイド96A及び第2リニアガイド96Bに沿ってテープ駆動装置10が移動するため、テープ駆動装置10はスムーズに移動することができる。よって、安定してテープ1の巻き取りと繰り出しができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0094】
100・・・伸縮装置、1・・・テープ、2・・・折返部、3・・・固定端、4・・・伸縮部、6・・・リール、10・・・テープ駆動装置、11・・・モータ(動力源)、15・・・回転シャフト(リールの回転軸)、20・・・ハウジング、22・・・ベルトガイド、30・・・ベルト(バンド部材)、34・・・ベルトの自由端、40・・・テンション調整機構(テンション調整手段)、70,71・・・支持板、75・・・フレーム、90・・・移動機構、91・・・リンク機構、92a,92b・・・揺動リンク、93・・・連結リンク、96・・・リニアガイド、96A・・・第1リニアガイド、96B・・・第2リニアガイド、97・・・レール、101・・・駆動対象物