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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114024
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】はんだ接合装置及びはんだ接合方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20240816BHJP
   B23K 1/002 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H05K3/34 507D
B23K1/002
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019381
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513141913
【氏名又は名称】株式会社ワンダーフューチャーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松波 明
(72)【発明者】
【氏名】永井 健太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】福田 光樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和弘
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 年春
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AA07
5E319BB05
5E319CC44
5E319CC53
5E319CD29
5E319GG03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】配線と金属部材との接続信頼性の低下を抑制できるはんだ接合装置及びはんだ接合方法を提供する。
【解決手段】はんだ接合装置10は、電圧が印加されることにより金属部材101を誘導加熱するコイル20と、配線102をはんだペーストPが塗布された金属部材101に向けて押圧する押圧部材80と、を備える。基板100上に配置された金属部材101に対してはんだを介して配線を接合するはんだ接合方法は、配線102をはんだが塗布された金属部材101に向けて押圧する押圧工程と、配線102が押圧された状態で、コイル20に電圧を印加することにより、金属部材101を誘導加熱する加熱工程と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された金属部材に対してはんだを介して配線を接合するはんだ接合装置であって、
電圧が印加されることにより前記金属部材を誘導加熱するコイルと、
前記配線を前記はんだが塗布された前記金属部材に向けて押圧する押圧部材と、を備える、
はんだ接合装置。
【請求項2】
前記押圧部材は、金属材料により形成されている、
請求項1に記載のはんだ接合装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、チタンを含む金属材料により形成されている、
請求項2に記載のはんだ接合装置。
【請求項4】
前記押圧部材における前記配線を押圧する押圧面には、凹部が設けられている、
請求項1に記載のはんだ接合装置。
【請求項5】
前記押圧部材を保持する樹脂製のホルダを備える、
請求項2~請求項4のいずれか一項に記載のはんだ接合装置。
【請求項6】
基板上に配置された金属部材に対してはんだを介して配線を接合するはんだ接合方法であって、
前記配線を前記はんだが塗布された前記金属部材に向けて押圧する押圧工程と、
前記配線が押圧された状態で、コイルに電圧を印加することにより、前記金属部材を誘導加熱する加熱工程と、を備える、
はんだ接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ接合装置及びはんだ接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に配置された金属部材にはんだを介して電子部品を接合するリフローはんだ付けが知られている。リフローはんだ付けでは、まず、金属部材に塗布されたはんだペースト上に電子部品が載置される。その後、リフロー炉にて基板が加熱されることにより、はんだが溶融する。これにより、電子部品がはんだの内部に沈み込むことで金属部材に接触する。そして、はんだが固化することにより、電子部品と金属部材とが接合される。
【0003】
特許文献1には、基板上の金属部材を誘導加熱するコイルを備えるはんだ接合装置が開示されている。特許文献1に記載のはんだ接合装置では、コイルへの交流電圧の印加に伴ってコイルの周りに生じる磁束の変化によって、金属部材が局所的に加熱される。そして、金属部材の熱がはんだに伝達することによりはんだが溶融する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/51475号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、電子機器においては、基板上の金属部材に対してはんだを介して配線が接合されることがある。しかしながら、配線のはんだに対する濡れ性が低い場合には、配線がはんだをはじくため、配線がはんだの内部に沈み込みにくくなる。その結果、配線と金属部材とが接触しにくくなることで、配線と金属部材との接続信頼性が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのはんだ接合装置及びはんだ接合方法の各態様を記載する。
[態様1]基板上に配置された金属部材に対してはんだを介して配線を接合するはんだ接合装置であって、電圧が印加されることにより前記金属部材を誘導加熱するコイルと、前記配線を前記はんだが塗布された前記金属部材に向けて押圧する押圧部材と、を備える、はんだ接合装置。
【0007】
上記構成によれば、金属部材がコイルによって誘導加熱されるため、金属部材の熱がはんだに伝達することによりはんだが溶融する。ここで、溶融したはんだの内部において、配線が押圧部材によって金属部材に向けて押圧されることにより、配線と金属部材とが接触した状態が維持される。この状態で押圧部材がはんだの内部から引き抜かれるとともにはんだが固化することにより、金属部材に対して配線が接合される。したがって、配線と金属部材との接続信頼性の低下を抑制できる。
【0008】
[態様2]前記押圧部材は、金属材料により形成されている、[態様1]に記載のはんだ接合装置。
上記構成によれば、コイルによって金属部材と共に押圧部材が誘導加熱される。このため、金属部材及び押圧部材の双方の熱がはんだに伝達する。これにより、はんだが溶融するために要する時間を短くできる。したがって、はんだ接合作業の効率を高めることができる。
【0009】
[態様3]前記押圧部材は、チタンを含む金属材料により形成されている、[態様2]に記載のはんだ接合装置。
チタンを含む金属材料は、はんだに対する濡れ性が低いため、はんだをはじきやすい。このため、上記構成によれば、溶融したはんだの内部から押圧部材が引き抜かれる際に、はんだが押圧部材に付着して持ち去られることを抑制できる。したがって、配線と金属部材との接合部においてはんだが不足することを抑制でき、ひいては、配線と金属部材との接続信頼性の低下を抑制できる。
【0010】
[態様4]前記押圧部材における前記配線を押圧する押圧面には、凹部が設けられている、[態様1]~[態様3]のいずれか一つに記載のはんだ接合装置。
上記構成によれば、押圧部材がはんだの内部に進入した際に、はんだが凹部に入り込むことにより表面張力によって凹部に保持される。このため、押圧部材が溶融したはんだの内部から引き抜かれてはんだから離れる直前まで、はんだが凹部に残留する。これにより、押圧部材がはんだから離れる際に、はんだが外部に流れることを抑制できる。したがって、配線と金属部材との接合部においてはんだが不足することを一層抑制でき、ひいては、配線と金属部材との接続信頼性の低下を一層抑制できる。
【0011】
[態様5]前記押圧部材を保持する樹脂製のホルダを備える、[態様2]~[態様4]のいずれか一つに記載のはんだ接合装置。
上記構成によれば、ホルダが樹脂製であるため、ホルダが金属製である場合と比較して、コイルによる誘導加熱によって押圧部材に生じた熱がホルダを介して外部に逃げにくくなる。これにより、押圧部材の熱がはんだに伝達しやすくなる。したがって、はんだ接合作業の効率を一層高めることができる。
【0012】
[態様6]基板上に配置された金属部材に対してはんだを介して配線を接合するはんだ接合方法であって、前記配線を前記はんだが塗布された前記金属部材に向けて押圧する押圧工程と、前記配線が押圧された状態で、コイルに電圧を印加することにより、前記金属部材を誘導加熱する加熱工程と、を備える、はんだ接合方法。
【0013】
上記方法によれば、はんだが塗布された金属部材に向けて配線が押圧された状態で、金属部材がコイルによって誘導加熱される。このため、金属部材の熱がはんだに伝達することによりはんだが溶融する。ここで、溶融したはんだの内部において、配線が金属部材に向けて押圧されることにより、配線と金属部材とが接触した状態が維持される。この状態で押圧部材がはんだの内部から引き抜かれるとともにはんだが固化することにより、金属部材に対して配線が接合される。したがって、配線と金属部材との接続信頼性の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配線と金属部材との接続信頼性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態のはんだ接合装置と基板とを示す斜視図である。
図2図2は、図1のはんだ接合装置を示す斜視図である。
図3図3は、図1のはんだ接合装置を示す断面図である。
図4図4は、はんだペーストが塗布された基板を示す断面図である。
図5図5は、押圧部材によって配線が押圧されている状態の基板を示す断面図である。
図6図6は、はんだが固化した状態の基板を示す断面図である。
図7図7は、比較例を説明するための基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、はんだ接合装置及びはんだ接合方法の一実施形態について説明する。
図1に示すように、はんだ接合装置10は、基板100上に配置された金属部材101に対してはんだSを介して配線102を接合する装置である。
【0017】
基板100は、例えば、PC樹脂、ABS樹脂、PP樹脂などの樹脂材料により形成されている。基板100には、例えば、2つの金属部材101が配置されている。
金属部材101は、例えば、図示しない電源に電気的に接続される金属端子である。金属部材101の下部は、基板100に埋設されている。金属部材101の上部は、基板100から露出している。
【0018】
配線102は、例えば、通電により発熱するヒータ線である。配線102は、例えば、銅線がポリウレタン製の絶縁被覆で覆われたポリウレタン銅線(UEW線)である。
配線102は、基板100に対して、所定の配線102パターンで描画されている。配線102の下部は、基板100に埋設されている。配線102の上部は、基板100から露出している。配線102の両端末は、基板100に埋設されておらず、はんだSを介して金属端子に接合される。
【0019】
はんだSは、例えば、融点が220°~230°程度である高温はんだとして知られるSnAgCu系はんだである。
(はんだ接合装置10)
はんだ接合装置10は、コイル20と、磁性体30と、保持機構40と、押圧部材80とを備えている。コイル20は、金属部材101を誘導加熱する。磁性体30は、コイル20の周りに生じる磁束を集束させる。保持機構40は、磁性体30を保持する。押圧部材80は、配線102を金属部材101に向けて押圧する。
【0020】
(コイル20)
コイル20は、交流電圧を印加する交流電源Vに接続されている。コイル20への交流電圧の印加に伴って、コイル20の周りには基板100に向かう磁束が発生する。コイル20の周りに生じた磁束が金属部材101を貫くことにより、金属部材101には渦電流が流れる。この渦電流によって金属部材101にジュール熱が生じるため、金属部材101が加熱される。
【0021】
コイル20は、中空状をなしている。コイル20は、環状部21と、一対の接続部22とを有している。
環状部21は、後述するホルダ70の外周を取り囲むようにU字状に湾曲している。環状部21における巻き数は、例えば、1である。
【0022】
一対の接続部22は、環状部21の周方向における両端から延びている。一対の接続部22は、互いに離間するとともに平行をなして直線状に延びている。各接続部22は、交流電源Vに接続されている。
【0023】
以降において、環状部21の軸線方向を単に軸線方向と称する。
(磁性体30)
磁性体30は、強磁性体であるフェライトにより形成されている。磁性体30によって、コイル20の周りに生じる磁束が集束するため、金属部材101が局所的に誘導加熱される。
【0024】
磁性体30は、コイル20の環状部21の内側に配置されている。
図2に示すように、磁性体30は、軸線方向に延びる角柱状をなしている。磁性体30は、錐台状をなす先端部31を有している。
【0025】
(保持機構40)
保持機構40は、本体50と、カバー60と、ホルダ70とを備えている。保持機構40は、コイル20の環状部21の内側に配置されている。保持機構40は、基板100に対して移動可能に構成された移動機構90に固定されている。保持機構40は、移動機構90によって、基板100に対して昇降可能に構成されている。移動機構90は、コイル20と保持機構40とを共に昇降させる。移動機構90としては、例えば、ロボットアームが挙げられる。
【0026】
本体50は、ベース部51と、第1固定部52とを有している。ベース部51は、軸線方向に延びる略直方体状をなしている。第1固定部52は、本体50の軸線方向における一端部から、軸線方向に直交する方向において互いに反対側に突出している。ベース部51と第1固定部52とは一体に形成されている。
【0027】
ベース部51は、軸線方向に延びるとともに磁性体30の一部を収容する第1収容溝51aを有している。第1収容溝51aは、ベース部51の下面及び側面に開口している。磁性体30は、ベース部51の下面から突出している。
【0028】
第1固定部52は、樹脂ボルトB1によって、移動機構90に固定されている。
本体50の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレンなどの耐熱性を有する樹脂材料が挙げられる。
【0029】
カバー60は、板状をなしている。カバー60は、複数の樹脂ボルトB2によってベース部51に固定されている。カバー60は、ベース部51の第1収容溝51aを覆っている。すなわち、カバー60は、磁性体30の一端面を覆っている。カバー60によって磁性体30が覆われることにより、磁性体30の第1収容溝51aからの脱離が規制されている。
【0030】
カバー60の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレンなどの耐熱性を有する樹脂材料が挙げられる。
ホルダ70は、保持部71と、第2固定部72とを有している。保持部71は、軸線方向に延びる直方体状をなしている。第2固定部72は、保持部71の軸線方向における一端部から、軸線方向に直交する方向において互いに反対側に突出している。保持部71と第2固定部72とは一体に形成されている。
【0031】
保持部71は、軸線方向に延びるとともに先端部31を含む磁性体30の一部を収容する第2収容溝71aを有している。第2収容溝71aは、保持部71の上面及び側面に開口している。第2収容溝71aは、第1収容溝51aに連通している。第2収容溝71aは、磁性体30のうち第1収容溝51aに収容されていない部分を収容する。第2収容溝71aは、カバー60によって覆われていない。すなわち、磁性体30の一端面は、第2収容溝71aから露出している。
【0032】
保持部71の下端部には、押圧部材80を保持する錐台状の座部73が設けられている。
第2固定部72は、樹脂ボルトB3によってベース部51の下面に固定されている。
【0033】
ホルダ70の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレンなどの耐熱性を有する樹脂材料が挙げられる。
(押圧部材80)
押圧部材80は、例えば、軸線方向に延びる円柱状をなしている。押圧部材80の長さは、例えば、5mm以下である。押圧部材80の直径は、例えば、0.5mm~2.0mmである。
【0034】
図3に示すように、押圧部材80は、一端部が座部73に埋設されるとともに、座部73から基板100に向かって突出している。押圧部材80と磁性体30との間には、座部73が介在している。押圧部材80は、磁性体30と同一軸線上に配置されている。このため、磁性体30の先端部31において集束された磁束が押圧部材80を貫くこととなる。
【0035】
上述したように、保持機構40は、基板100に対して昇降可能に構成されているため、押圧部材80は、基板100に対して昇降可能である。
押圧部材80は、例えば、チタンを含む金属材料により形成されている。チタンを含む金属材料は、はんだSに対する濡れ性が低いため、はんだSをはじく性質を有する。チタンを含む金属材料としては、純チタンやチタン合金などが挙げられる。
【0036】
押圧部材80は、配線102を押圧する押圧面81を有している。押圧面81には、半球状の内部空間を有する凹部82が設けられている。凹部82の直径は、押圧部材80の直径よりも小さい。
【0037】
(はんだ接合方法)
はんだ接合方法は、塗布工程と、押圧工程と、加熱工程と、固化工程とを備えている。塗布工程、押圧工程、加熱工程、及び固化工程はこの順で行われる。
【0038】
図4に示すように、塗布工程では、金属部材101及び配線102が予め埋設された基板100に対して、はんだペーストPが塗布される。塗布工程では、例えば、図示しないマスク部材が載置された基板100に対してはんだペーストPが塗布される。これにより、はんだペーストPが金属部材101に選択的に塗布される。
【0039】
図5に示すように、押圧工程では、基板100の上方に位置するコイル20及び保持機構40が、移動機構90によって基板100に向かって降下する。そして、押圧部材80がはんだペーストPの内部に進入するとともに、押圧面81によって、はんだペーストPが塗布された金属部材101に向けて配線102が押圧される。これにより、配線102がはんだペーストPの内部において金属部材101と接触した状態となる。なお、保持機構40の降下量、すなわち押圧部材80の降下量は、例えば、配線102の押圧時に押圧部材80に作用する負荷に基づいて、移動機構90によって制御されている。
【0040】
押圧部材80がはんだペーストPの内部に進入することによって、はんだペーストPが押圧面81の凹部82に入り込む。
加熱工程では、配線102が押圧部材80によって押圧された状態で、コイル20に交流電圧が印加されることにより、金属部材101が誘導加熱される。このとき、磁性体30、押圧部材80、及び金属部材101は、同一直線上に位置している。このため、コイル20の周りに生じた磁束は、磁性体30によって集束されることにより、押圧部材80及び金属部材101の双方を貫くこととなる。これにより、押圧部材80及び金属部材101の双方が誘導加熱される。
【0041】
押圧部材80及び金属部材101の熱がはんだペーストPに伝達されることにより、はんだペーストPが溶融する。このとき、配線102の絶縁被覆が熱によって溶融するため、銅線が露出する。その結果、銅線が押圧部材80によって金属部材101に対して押圧されることとなるため、銅線と金属部材101とが接触する。
【0042】
図6に示すように、固化工程では、コイル20への交流電圧の印加が停止されるとともに、コイル20及び保持機構40が上昇する。これにより、押圧部材80が配線102から離間するとともに、溶融したはんだSから引き抜かれる。そして、はんだSは、温度低下に伴って固化する。これにより、金属部材101と配線102とがはんだSを介して電気的に接合される。
【0043】
図7に示すように、押圧部材80を備えていない比較例のはんだ接合装置を用いて加熱工程を行う場合、配線102の絶縁被覆がはんだSをはじくおそれがある。このため、配線102が金属部材101から離れた状態となりやすい。この状態ではんだSが固化すると、配線102と金属部材101との接続信頼性が低下しやすい。
【0044】
この点、本実施形態のはんだ接合装置10によれば、配線102が押圧部材80によって押圧されるため、上述した不都合を回避できる。
本実施形態の作用について説明する。
【0045】
金属部材101がコイル20によって誘導加熱されるため、金属部材101の熱がはんだペーストPに伝達することによりはんだペーストPが溶融する。ここで、溶融したはんだSの内部において、配線102が押圧部材80によって金属部材101に向けて押圧されることにより、配線102と金属部材101とが接触した状態が維持される。この状態で押圧部材80がはんだSの内部から引き抜かれるとともにはんだSが固化することにより、金属部材101に対して配線102が接合される。
【0046】
本実施形態の効果について説明する。
(1)はんだ接合装置10は、電圧が印加されることにより金属部材101を誘導加熱するコイル20と、配線102をはんだペーストPが塗布された金属部材101に向けて押圧する押圧部材80とを備える。
【0047】
こうした構成によれば、上述した作用を奏するため、配線102と金属部材101との接続信頼性の低下を抑制できる。
(2)押圧部材80は、チタンを含む金属材料により形成されている。
【0048】
こうした構成によれば、コイル20によって金属部材101と共に押圧部材80が誘導加熱される。このため、金属部材101及び押圧部材80の双方の熱がはんだSに伝達する。これにより、はんだSが溶融するために要する時間を短くできる。したがって、はんだ接合作業の効率を高めることができる。
【0049】
また、チタンを含む金属材料は、はんだSに対する濡れ性が低いため、はんだSをはじきやすい。このため、上記構成によれば、溶融したはんだSの内部から押圧部材80が引き抜かれる際に、はんだSが押圧部材80に付着して持ち去られることを抑制できる。したがって、配線102と金属部材101との接合部においてはんだSが不足することを抑制でき、ひいては、配線102と金属部材101との接続信頼性の低下を抑制できる。
【0050】
(3)押圧部材80における配線102を押圧する押圧面81には、凹部82が設けられている。
こうした構成によれば、押圧部材80がはんだSの内部に進入した際に、はんだSが凹部82に入り込むことにより表面張力によって凹部82に保持される。このため、押圧部材80が溶融したはんだSの内部から引き抜かれてはんだSから離れる直前まで、はんだSが凹部82に残留する。これにより、押圧部材80がはんだSから離れる際に、はんだSが外部に流れることを抑制できる。したがって、配線102と金属部材101との接合部においてはんだSが不足することを一層抑制でき、ひいては、配線102と金属部材101との接続信頼性の低下を一層抑制できる。
【0051】
(4)はんだ接合装置10は、押圧部材80を保持する樹脂製のホルダ70を備える。
こうした構成によれば、ホルダ70が樹脂製であるため、ホルダ70が金属製である場合と比較して、コイル20による誘導加熱によって押圧部材80に生じた熱がホルダ70を介して外部に逃げにくくなる。これにより、押圧部材80の熱がはんだSに伝達しやすくなる。したがって、はんだ接合作業の効率を一層高めることができる。
【0052】
(5)はんだ接合方法は、配線102をはんだペーストPが塗布された金属部材101に向けて押圧する押圧工程と、配線102が押圧された状態で、コイル20に電圧を印加することにより、金属部材101を誘導加熱する加熱工程とを備える。
【0053】
こうした方法によれば、はんだペーストPが塗布された金属部材101に向けて配線102が押圧された状態で、金属部材101がコイル20によって誘導加熱される。このため、金属部材101の熱がはんだペーストPに伝達することによりはんだペーストPが溶融する。ここで、溶融したはんだSの内部において、配線102が金属部材101に向けて押圧されることにより、配線102と金属部材101とが接触した状態が維持される。この状態で押圧部材80がはんだSの内部から引き抜かれるとともにはんだSが固化することにより、金属部材101に対して配線102が接合される。したがって、配線102と金属部材101との接続信頼性の低下を抑制できる。
【0054】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0055】
・移動機構90は、保持機構40のみを昇降させるものであってもよい。すなわち、保持機構40が昇降する間は、コイル20が昇降しなくてもよい。
・本体50、カバー60、及びホルダ70は、同一種類の樹脂材料により形成されていてもよい。
【0056】
・本体50、カバー60、及びホルダ70は、互いに異なる種類の樹脂材料により形成されていてもよい。この場合、押圧部材80を保持するホルダ70は、本体50及びカバー60よりも耐熱性の高い樹脂材料により形成されていることが好ましい。
【0057】
・本体50、カバー60、及びホルダ70は、樹脂製でなくてもよく、他に例えば、セラミック製であってもよい。
・押圧部材80の断面形状は、円形でなくてもよく、他に例えば、断面多角形状や断面楕円形状であってもよい。
【0058】
・凹部82の内部空間は、半球状でなくてもよく、他に例えば、多面体状であってもよい。
・押圧面81から凹部82が省略されてもよい。
【0059】
・押圧部材80は、ステンレス鋼やアルミニウム合金などの金属材料により形成されていてもよい。
・押圧部材80は、金属材料に代えて、樹脂材料やセラミックなどにより形成されていてもよい。この場合、押圧部材80は、はんだSに対する濡れ性が低い材料により形成されることが好ましい。
【0060】
・はんだSは、高温はんだに代えて、融点が140°程度である低温はんだとして知られるSnBi系はんだであってもよい。
・配線102は、金属素線が絶縁被覆で覆われた種々のエナメル線であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
B1,B2,B3…樹脂ボルト
P…はんだペースト
S…はんだ
V…交流電源
10…はんだ接合装置
20…コイル
21…環状部
22…接続部
30…磁性体
31…先端部
40…保持機構
50…本体
51…ベース部
51a…第1収容溝
52…第1固定部
60…カバー
70…ホルダ
71…保持部
71a…第2収容溝
72…第2固定部
73…座部
80…押圧部材
81…押圧面
82…凹部
90…移動機構
100…基板
101…金属部材
102…配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7