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特開2024-114036排熱回収ボイラ及びブレースの追設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114036
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】排熱回収ボイラ及びブレースの追設方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/24 20060101AFI20240816BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F22B37/24 C
F22B37/24 Z
F23J15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019396
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大石 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 圭一郎
【テーマコード(参考)】
3K070
【Fターム(参考)】
3K070DA02
3K070DA14
3K070DA22
(57)【要約】
【課題】地震揺れを抑制することができる排熱回収ボイラ及びブレースの追設方法を提供する。
【解決手段】前後方向に延びた流路を内部に画定しているケーシングと、ケーシングと接続され、ケーシングを補強しているフレームと、ケーシングの下部に設置されるとともにフレームと接続され、基礎171上に自立している複数の柱脚130と、地震揺れを抑制するブレース140と、を備え、柱脚130は、前後方向に沿った移動が規制されケーシングの前後方向に沿った熱伸びの起点Oになっている起点柱脚131、及び、前後方向において起点柱脚131の前方及び後方に配置され前後方向に沿って移動可能な移動柱脚132を含み、ブレース140は、第1端部141が起点柱脚131と接続され、第2端部142が前後方向において起点柱脚131と隣り合う移動柱脚132と接続されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンから排出された排ガスが流通し排ガスの流れ方向に沿った前後方向に延びた空間を内部に画定しているケーシングと、
前記ケーシングと接続され、前記ケーシングを補強しているフレームと、
前記ケーシングの下部に設置されるとともに前記フレームと接続され、基礎上に自立している複数の柱脚と、
地震揺れを抑制するブレースと、
を備え、
前記柱脚は、前記前後方向に沿った移動が規制され前記ケーシングの前記前後方向に沿った熱伸びの起点になっている起点柱脚、及び、前記前後方向において前記起点柱脚の前方及び後方に配置され前記前後方向に沿って移動可能な移動柱脚を含み、
前記ブレースは、一方の端部が前記起点柱脚と接続され、他方の端部が前記前後方向において前記起点柱脚と隣り合う前記移動柱脚と接続されている
排熱回収ボイラ。
【請求項2】
前記ケーシングの内部に配置された脱硝触媒と、
前記ケーシングの内部、かつ、前記前後方向において前記脱硝触媒の前方に配置された排ガス混合器と、
を備え、
前記ブレースは、前記排ガス混合器の下方領域に位置している
請求項1に記載の排熱回収ボイラ。
【請求項3】
前記起点柱脚は、主起点柱脚及び副起点柱脚を含み、
前記移動柱脚は、主移動柱脚及び副移動柱脚を含み、
前記副起点柱脚は、前記前後方向と略直交する幅方向において前記主起点柱脚の間に位置して、
前記副移動柱脚は、前記幅方向において前記主移動柱脚の間に位置して、
前記副起点柱脚が前記フレームから受ける鉛直方向の荷重は、前記主起点柱脚が受ける鉛直方向の荷重よりも小さく、
前記副移動柱脚が前記フレームから受ける鉛直方向の荷重は、前記主移動柱脚が受ける鉛直方向の荷重よりも小さい
請求項1に記載の排熱回収ボイラ。
【請求項4】
前記ブレースは、耐震機能を有している
請求項1から3のいずれかに記載の排熱回収ボイラ。
【請求項5】
タービンから排出された排ガスが流通し排ガスの流れ方向に沿った前後方向に延びた空間を内部に画定しているケーシングと、
前記ケーシングと接続され、前記ケーシングを補強しているフレームと、
前記ケーシングの下部に設置されるとともに前記フレームと接続され、基礎上に自立している複数の柱脚と、
地震揺れを抑制するブレースと、
を備え、
前記柱脚は、前記前後方向に沿った移動が規制され前記ケーシングの前記前後方向に沿った熱伸びの起点になっている起点柱脚、及び、前記前後方向において前記起点柱脚の前方及び後方に配置され前記前後方向に沿って移動可能な移動柱脚を含み、
前記ブレースは、前記起点柱脚と前記前後方向において前記起点柱脚と隣り合う前記移動柱脚とを接続している排熱回収ボイラに新たなブレースを追設するブレースの追設方法であって、
前記前後方向と略直交する幅方向における前記起点柱脚の間に新たな起点柱脚を設置して、
前記幅方向における前記移動柱脚の間に新たな移動柱脚を設置して、
前記新たな起点柱脚と前記新たな移動柱脚とを接続する新たなブレースを設置する
ブレースの追設方法。
【請求項6】
前記新たな起点柱脚が前記フレームから受ける鉛直方向の荷重は、前記起点柱脚が受ける鉛直方向の荷重よりも小さく、
前記新たな移動柱脚が前記フレームから受ける鉛直方向の荷重は、前記移動柱脚が受ける鉛直方向の荷重よりも小さい
請求項5に記載のブレースの追設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排熱回収ボイラ及びブレースの追設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排熱回収ボイラは、ガスタ-ビンから排出された排ガスの持つ熱エネルギを熱交換器で回収して蒸気を発生させ、例えば複合発電プラントが備えている蒸気タービンにその蒸気を供給する設備である。
【0003】
排熱回収ボイラとしては、特許文献1に記載されているHRSG(排熱回収ボイラ)が例示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5000249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排ガスが横向きに流れる横型の排熱回収ボイラは、排ガスが流通する流路を内部に画定しているケーシングと、梁や柱から構成されケーシングを補強しているフレーム(鉄骨)と、を備えており、フレームと接続された柱脚でケーシング及びフレームの鉛直方向及び水平方向の荷重を受けている。
【0006】
このような排熱回収ボイラでは、地震揺れを抑制し耐震性を向上させるために、荷重を受けている柱脚の間にブレース(筋交い)を設けることがある。
しかしながら、ケーシングは高温の排ガスの流通によって、排ガスの流れ方向に沿った前後方向に熱伸びすることがあるので、その熱伸びを考慮したうえで適切な箇所にブレースを設置する必要がある。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、地震揺れを抑制することができる排熱回収ボイラ及びブレースの追設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の排熱回収ボイラ及びブレースの追設方法は、以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る排熱回収ボイラは、タービンから排出された排ガスが流通し排ガスの流れ方向に沿った前後方向に延びた空間を内部に画定しているケーシングと、前記ケーシングと接続され、前記ケーシングを補強しているフレームと、前記ケーシングの下部に設置されるとともに前記フレームと接続され、基礎上に自立している複数の柱脚と、地震揺れを抑制するブレースと、を備え、前記柱脚は、前記前後方向に沿った移動が規制され前記ケーシングの前記前後方向に沿った熱伸びの起点になっている起点柱脚、及び、前記前後方向において前記起点柱脚の前方及び後方に配置され前記前後方向に沿って移動可能な移動柱脚を含み、前記ブレースは、一方の端部が前記起点柱脚と接続され、他方の端部が前記前後方向において前記起点柱脚と隣り合う前記移動柱脚と接続されている。
【0009】
また、本開示の一態様に係るブレースの追設方法は、タービンから排出された排ガスが流通し排ガスの流れ方向に沿った前後方向に延びた空間を内部に画定しているケーシングと、前記ケーシングと接続され、前記ケーシングを補強しているフレームと、前記ケーシングの下部に設置されるとともに前記フレームと接続され、基礎上に自立している複数の柱脚と、地震揺れを抑制するブレースと、を備え、前記柱脚は、前記前後方向に沿った移動が規制され前記ケーシングの前記前後方向に沿った熱伸びの起点になっている起点柱脚、及び、前記前後方向において前記起点柱脚の前方及び後方に配置され前記前後方向に沿って移動可能な移動柱脚を含み、前記ブレースは、前記起点柱脚と前記前後方向において前記起点柱脚と隣り合う前記移動柱脚とを接続している排熱回収ボイラに新たなブレースを追設するブレースの追設方法であって、前記前後方向と略直交する幅方向における前記起点柱脚の間に新たな起点柱脚を設置して、前記幅方向における前記移動柱脚の間に新たな移動柱脚を設置して、前記新たな起点柱脚と前記新たな移動柱脚とを接続する新たなブレースを設置する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、地震揺れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る排熱回収ボイラを側面から見たときの断面図である。
図2図1に示す切断線II-IIにおける横断面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る排熱回収ボイラのフレームの斜視図である。
図4図1に示すA部の部分拡大図である。
図5】本開示の一実施形態に係る排熱回収ボイラの柱脚の平面図である(ブレース追設前)。
図6】本開示の一実施形態に係る排熱回収ボイラの柱脚の上方斜視図である。
図7】本開示の一実施形態に係る排熱回収ボイラの柱脚の下方斜視図である。
図8】本開示の一実施形態に係る排熱回収ボイラの柱脚の平面図である(ブレース追設後)。
図9】本開示の変形例に係る排熱回収ボイラの柱脚の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[排熱回収ボイラの構成について]
排熱回収ボイラ100は、例えばガスタービン複合発電設備(GTCC)等の発電プラントを構成する設備のひとつであり、ガスタービンから排出された排ガスの持つ熱エネルギを熱交換器で回収して蒸気を発生させる設備である。
【0013】
図1及び図2に示すように、排熱回収ボイラ100は、例えば、排ガスが横向きに流れる横型の排熱回収ボイラであり、ケーシング110と、補強部材としてのフレーム120と、柱脚130と、を備えている。
【0014】
ケーシング110は、各壁面を構成する板材(例えば鋼板)からなっており、入口111から出口112に向かって排ガスが流れる空間(流路113)を内部に画定している。
入口111は、排熱回収ボイラ100にガスタ-ビンから排出された排ガスを導くダクトと接続されている。出口112は、外部に熱交換後の排ガスを導くダクトと接続されている。
【0015】
流路113は、排ガスの流れに沿った方向、すなわちケーシング110の前後方向に沿って延びた空間である。
流路113は、入口111を含むとともに流路断面積が拡大した拡大流路部と、流路断面積が略一定とされた一定流路部と、出口112を含むとともに流離断面積が縮小した縮小流路部と、を有している。
【0016】
このように構成されたケーシング110は、フレーム120によって支持・補強されている。
図1から図3に示すように、フレーム120は、例えば鉄骨構造であり、複数の梁121、複数の柱122及び複数の梁123を含んでいる。
【0017】
梁121は、ケーシング110の前後方向と略直交する幅方向に延びた部材であり、ケーシング110の下部(下面)に配置され、ケーシング110を構成する板材と接続されている。
梁121は、前後方向に間隔を空けて複数並べられている。本実施形態の場合、梁121は、前後方向に間隔を空けて6本並べられている。ただし、梁121の本数はこれに限定されない。
【0018】
柱122は、下端が梁121の幅方向における端部と接続されるとともに上方に向かって延びた部材であり、ケーシング110の側面に配置され、ケーシング110を構成する板材と接続されている。
柱122は、梁121と対応付けられているので、梁121と同様に、前後方向に間隔を空けて複数並べられている。
【0019】
梁123は、ケーシング110の前後方向と略直交する幅方向に延びるとともに幅方向における端部が柱122の上端と接続された部材であり、ケーシング110の上部(上面)に配置され、ケーシング110を構成する板材と接続されている。
梁123は、柱122と対応付けられているので、梁121及び柱122と同様に、前後方向に間隔を空けて複数並べられている。
【0020】
このように構成されたフレーム120は、複数の柱脚130によって基礎171に対して支持されている。
柱脚130は、上端が幅方向に延びた各梁121の下部に接続されるとともに基礎171上に自立した部材であり、梁121を介してフレーム120及びケーシング110に作用する鉛直方向及び水平方向(前後方向と幅方向)の荷重を受けている。
柱脚130は、1本の梁121に対して幅方向に間隔を空けて複数並べられている。柱脚130の配置の詳細については後述する。
【0021】
図1に示すように、フレーム120によって支持・補強されたケーシング110の内部にある流路113(一定流路部)には、脱硝触媒161、排ガス混合器162及び複数の熱交換器163が配置されている。また、ケーシング110の内部にある流路113には、内部ブレース150が配置されている。
【0022】
脱硝触媒161は、流路113を流れる排ガス中の窒素酸化物を効率的に分解するための触媒である。
脱硝触媒161は、下部の梁121によって支持されている。そのため、脱硝触媒161の自重は、梁121を介して柱脚130に伝達される。
【0023】
排ガス混合器162は、図示しないアンモニア噴射装置から噴射されたアンモニアと排ガスとを混合させるための機器であり、脱硝触媒161の前方(入口111に近い位置)に設けられている。なお、アンモニア噴射装置は、排ガス混合器162の前方に設けられている。
排ガス混合器162は、上部の梁123によって支持(懸架)されている。そのため、排ガス混合器162の自重は、その梁123と接続された柱122及びその柱122と接続された梁121を介して柱脚130に伝達される。
【0024】
熱交換器163は、流路113を流れる排ガスの持つ熱エネルギを回収して蒸気を発生させる設備である。熱交換器163は、例えば、図示しない蒸気ドラムと接続された伝熱管群を有している。
熱交換器163は、上部の梁123によって支持(懸架)されている。そのため、熱交換器163の自重は、その梁123と接続された柱122及びその柱122と接続された梁121を介して柱脚130に伝達される。また、図示しない蒸気ドラムの自重も梁123によって支持されており、最終的には柱脚130に伝達される。
【0025】
内部ブレース150は、排熱回収ボイラ100の幅方向の地震揺れを抑制する構造物である。
図1及び図2に示すように、内部ブレース150は、下部の梁121、柱122、及び上部の梁123を互いに接続した複数のパイプ材から構成されており、略ひし形状のひし形ブレース151及び幅方向に延びた水平ブレース152を有している。
内部ブレース150は、互いに対応付けられた梁121、柱122及び梁123で囲われた領域において、当該梁121、当該柱122及び当該梁123に接続されている。本実施形態の場合、図1に示すように、内部ブレース150は、例えば前方から3つ目、4つ目及び6つ目の領域(梁121、柱122及び梁123で囲われた領域)に配置されている。
【0026】
なお、脱硝触媒161、排ガス混合器162及び各熱交換器163は、内部ブレース150との干渉を回避するために、内部ブレース150が配置された領域には配置されない。
【0027】
[柱脚及びブレースについて]
ケーシング110は、高温の排ガスの流通によって、前後方向に沿って熱伸びすることがある。仮に、フレーム120を介してケーシング110と接続された柱脚130の全てを基礎171に対して完全に固定してしまうと、ケーシング110の熱伸びを吸収することができなくなってしまう。
そこで、図4及び図5に示すように、柱脚130を起点柱脚131と移動柱脚132とに分けて前後方向の熱伸びに対応することにした。具体的には次の通りである。
【0028】
柱脚130は梁121に沿って幅方向に複数並べられて列をなし、その列が前後方向に複数列にわたって配置されている。図5の場合、幅方向に均等な間隔で並べられた3本の柱脚130から構成された列が、前後方向に6列並んでいる。この列の数は、下部の梁121の本数に対応していることは言うまでもない。
図4及び図5に示すように、複数ある列のうち、前後方向において中央に近い位置にある所定の1列に属する各柱脚130が起点柱脚131とされている。本実施形態の場合、前方から3番目の列に属する各柱脚130が起点柱脚131とされている。この起点柱脚131は、前後方向に沿った移動が規制された柱脚130であって、前後方向に沿った熱伸びの起点Oとなる。
一方で、複数の起点柱脚131で構成された列の前方及び後方にある各列に属する柱脚130が、移動柱脚132とされている。この移動柱脚132は、前後方向に沿って移動可能とされた柱脚130である。
このように、各柱脚130が起点柱脚131及び移動柱脚132を含むように構成しつつ、それらを適切に配置することで、ケーシング110が前後方向に沿って熱伸びしてフレーム120の位置が移動する際に、起点柱脚131で構成された列を熱伸びの起点Oとして、移動柱脚132で構成された各列が前方及び/又は後方に移動することによって、ケーシング110の熱伸びが吸収されることになる。
【0029】
このように構成された柱脚130とその柱脚130と前後方向に隣り合う柱脚130との間には、ブレース140が設置されている。
ブレース140は、排熱回収ボイラ100の前後方向の地震揺れを抑制する構造物である。
ブレース140は、例えばパイプ材であってもよいし、耐震機能(減衰機能)を有している制振部材であってもよい。
前後方向の地震揺れを抑制するという機能を発揮させるために、ブレース140の設置位置は所定の位置に設定される。以下、具体例を用いて説明する。
【0030】
図4及び図5に示すように、ブレース140の第1端部141は、起点柱脚131に接続されている。
一方、ブレース140の第2端部142は、起点柱脚131と前後方向に隣り合う移動柱脚132に接続されている。第2端部142が接続される移動柱脚132は、起点柱脚131の前方にあるものでも後方にあるものでも構わない。
【0031】
このように、前後方向に沿った移動が規制された起点柱脚131に対してブレース140の第1端部141を接続することで、前後方向の地震揺れを効率的に抑制している。
仮に、ブレース140の第1端部141が移動柱脚132と接続され、第2端部142がその移動柱脚132と隣り合う他の移動柱脚132と接続された場合、ブレース140の両端にある柱脚130の両方が前後方向に移動してしまい相対変位が生じ難くなるので、地震揺れを抑制することが困難になってしまう。
【0032】
なお、ブレース140の第2端部142は、柱脚130としての性能を持つ他の部材に接続することもできる。
例えば、図6及び図7に示すように、ブレース140の第2端部142を、柱脚130と梁121とが交差した部分(柱梁交差部135)に接続してもよい。柱梁交差部135は、梁121の一部でもあるが、鉛直方向において柱脚130の延長線上にあり柱脚130としても機能しているからである。
以上より、この説明における「柱脚130」には、柱梁交差部135のように、実質的に柱脚130として機能している部分(鉛直方向の荷重を基礎171に伝達する部分)も含まれることとする。
【0033】
上記の説明では、第2端部142が接続される移動柱脚132は起点柱脚131と前後方向に隣り合うものであれば前方にあるものでも後方にあるものでも構わない、としたが、第2端部142が接続される移動柱脚132は、起点柱脚131の前方で隣り合う移動柱脚132であることが好ましい。その理由は次の通りである。
【0034】
上述の通り、脱硝触媒161の前方の領域(以下、「前方領域」という。)には排ガス混合器162が配置されている。そのため、前方領域においては排ガス混合器162がスペースを占有するので、排ガス混合器162がない他の領域に比べて、熱交換器163(伝熱管群)を密に配置することができなくなる。したがって、前方領域の下方にあるケーシング110の外部スペースS22においては、熱交換器163と接続された配管群の密度も小さくなり、ブレース140を設置・メンテナンスするためのスペースに利用することができる。なお、他の領域の下方にあるケーシング110の外部スペースS21,S23,S24,S25には、熱交換器163と接続された配管群が配置されている。
また、起点柱脚131とその後方で隣り合う移動柱脚132との間隔(以下、「後方間隔」という。)は、起点柱脚131とその前方で隣り合う移動柱脚132との間隔(以下、「前方間隔」という。)よりも小さくなる。そのため、外部スペースS23が外部スペースS22よりも狭くなり、ブレース140を設置・メンテナンスするためのスペースを確保しにくい。
なお、後方間隔が前方間隔よりも小さい理由は、次の通りである。すなわち、後方間隔が広くなるほど排熱回収ボイラ100の体格は大きくなり不経済(コスト高)である。そのため、脱硝触媒161を設置するための最低限の間隔を確保したうえで、できるだけ間隔を狭めることとしている。
【0035】
[ブレースの追設について]
図5に示す形態の場合、1本の梁121に対して3本の柱脚130が接続されていた。つまり、ブレース140の数は3本とされていた。
この形態の排熱回収ボイラ100に対して、耐震性を向上させるために、新たなブレース140を追設してもよい。具体的には次の通りである。
【0036】
図8に示すように、既設の起点柱脚131を主起点柱脚131aとしたとき、主起点柱脚131aの間に新たな起点柱脚131(以下、新たな起点柱脚131を「副起点柱脚131b」という。)を追設する。なお、主起点柱脚131a及び副起点柱脚131bは、幅方向に均等な間隔で並べられることが好ましい。
また、既設の移動柱脚132を主移動柱脚132aとしたとき、主移動柱脚132aの間に新たな移動柱脚132(以下、新たな移動柱脚132を「副移動柱脚132b」という。)を追設する。なお、これらの主移動柱脚132a及び副移動柱脚132bは、主起点柱脚131a及び副起点柱脚131bと前後方向に隣り合っていることは言うまでもない。
そして、追設した副起点柱脚131bと追設した副移動柱脚132bと接続する新たなブレース140(以下、新たなブレース140を「ブレース140b」という。)を設ける。これによって、ブレース140bの追設が実現される。
なお、図8においては、既存の各部材と区別するために、追設した各部材を太線で描画している。
【0037】
このとき、主起点柱脚131aは、上述の通り、梁121を介してフレーム120及びケーシング110に作用する鉛直方向の荷重を受けている。これに対して、副起点柱脚131bは、ブレース140bを追設するために設けられた起点柱脚131なので、主起点柱脚131aのように鉛直方向の荷重を受ける必要はない。言い換えれば、副起点柱脚131bが受けている鉛直方向の荷重は、主起点柱脚131aが受けている鉛直方向の荷重よりも小さい。そのため、主起点柱脚131aと比較して、副起点柱脚131bのサイズを小型化してもよい。
また、主移動柱脚132aは、上述の通り、梁121を介してフレーム120及びケーシング110に作用する鉛直方向の荷重を受けている。これに対して、副移動柱脚132bは、ブレース140bを追設するために設けられた移動柱脚132なので、主移動柱脚132aのように鉛直方向の荷重を受ける必要はない。言い換えれば、副移動柱脚132bが受けている鉛直方向の荷重は、主移動柱脚132aが受けている鉛直方向の荷重よりも小さい。そのため、主移動柱脚132aと比較して、副移動柱脚132bのサイズを小型化してもよい。
【0038】
なお、上述した柱脚130の数や配置は例示であり、排熱回収ボイラ100の仕様に応じて適宜変更できる。
【0039】
<変形例>
図9に示すように、ブレース140に代えて、山型ブレース140’を採用してもよい。
山型ブレース140’は、第1ブレース140x及び第2ブレース140yを有している。
第1ブレース140xの一端は、起点柱脚131と接続されている。第2ブレース140yの一端は、移動柱脚132と接続されている。また、第1ブレース140xの他端及び第2ブレース140yの他端は、梁(図示せず)に取り付けられたプレート(図示せず)に固定され、一体化している。第1ブレース140xの他端及び第2ブレース140yの他端は、例えば、当該プレートにボルト接合される。
山型ブレース140’は、第1ブレース140x及び第2ブレース140yのペアで1つのブレースとして機能する。そのため、全体として見れば、山型ブレース140’の一端(第1ブレース140xの一端)は起点柱脚131と接続され、山型ブレース140’の他端(第2ブレース140yの一端)は移動柱脚132と接続されていることになる。
【0040】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
柱脚130は、熱伸びの起点Oになっている起点柱脚131及び前後方向に沿って移動可能な移動柱脚132を含み、ブレース140は、第1端部141が起点柱脚131と接続され、第2端部142が前後方向において起点柱脚131と隣り合う移動柱脚132と接続されているので、前後方向の荷重(例えば地震揺れによる荷重)を受ける起点柱脚131に対してブレース140の端部(第1端部141)を接続することになり、地震揺れを効率的に抑制することができる。
【0041】
また、ブレース140が排ガス混合器162の下方領域に位置しているので、比較的スペースに余裕がある領域にブレース140を設置することができる。
そのため、ブレース140の設置容易性やメンテナンス容易性を向上させることができる。
【0042】
また、起点柱脚131は、主起点柱脚131a及び副起点柱脚131bを含み、移動柱脚132は、主移動柱脚132a及び副移動柱脚132bを含んでいるので、副起点柱脚131b及び副移動柱脚132bを追加的な柱脚130として設置して、それらの追加的な柱脚130を用いて追加的なブレース140bを設置することができる。
【0043】
以上の通り説明した本開示の一実施形態に係る排熱回収ボイラ及びブレースの追設方法は、例えば、以下のように把握される。
【0044】
本開示の第1態様に係る排熱回収ボイラは、タービンから排出された排ガスが流通し排ガスの流れ方向に沿った前後方向に延びた空間(113)を内部に画定しているケーシング(110)と、前記ケーシング(110)と接続され、前記ケーシング(110)を補強しているフレーム(120)と、前記ケーシング(110)の下部に設置されるとともに前記フレーム(120)と接続され、基礎(171)上に自立している複数の柱脚(130)と、地震揺れを抑制するブレース(140)と、を備え、前記柱脚(130)は、前記前後方向に沿った移動が規制され前記ケーシング(110)の前記前後方向に沿った熱伸びの起点(O)になっている起点柱脚(131)、及び、前記前後方向において前記起点柱脚(131)の前方及び後方に配置され前記前後方向に沿って移動可能な移動柱脚(132)を含み、前記ブレース(140)は、一方の端部(141)が前記起点柱脚(131)と接続され、他方の端部(142)が前記前後方向において前記起点柱脚(131)と隣り合う前記移動柱脚(132)と接続されている。
【0045】
本態様に係る排熱回収ボイラによれば、柱脚(130)は、基礎(171)上において前後方向に沿った移動が規制されケーシング(110)の前後方向に沿った熱伸びの起点(O)になっている起点柱脚(131)、及び、前後方向において起点柱脚(131)の前方及び後方に配置され前後方向に沿って移動可能な移動柱脚(132)を含み、ブレース(140)は、一方の端部(141)が起点柱脚(131)と接続され、他方の端部(142)が前後方向において起点柱脚(131)と隣り合う移動柱脚(132)と接続されているので、例えば、前後方向の荷重(例えば地震揺れによる荷重)を受ける起点柱脚(130)に対してブレース(140)の端部を接続することになり、地震揺れを効率的に抑制することができる。
仮に、ブレース(140)の一方の端部(141)が移動柱脚(132)と接続され、他方の端部(142)がその移動柱脚(132)と隣り合う他の移動柱脚(132)と接続された場合、ブレース(140)の両端にある柱脚(130)の両方が移動してしまい相対変位が生じ難くなるので、地震揺れを抑制することが困難になってしまう。
【0046】
本開示の第2態様に係る排熱回収ボイラは、第1態様において、前記ケーシング(110)の内部に配置された脱硝触媒(161)と、前記ケーシング(110)の内部、かつ、前記前後方向において前記脱硝触媒(161)の前方に配置された排ガス混合器(162)と、を備え、前記ブレース(140)は、前記排ガス混合器(162)の下方領域に位置している。
【0047】
排ガス混合器(162)がスペースを占有するので、排ガス混合器(162)が配置された脱硝触媒(161)の前方には熱交換器を設置することができない。そのため、排ガス混合器(162)の下方領域では、熱交換器と対応付けられた配管群の密度が小さくなり、スペースができることになる。本態様に係る排熱回収ボイラによれば、ブレース(140)が排ガス混合器(162)の下方領域に位置しているので、比較的スペースに余裕がある領域にブレース(140)を設置することができる。そのため、ブレース(140)の設置容易性やメンテナンス容易性を向上させることができる。
【0048】
本開示の第3態様に係る排熱回収ボイラは、第1態様又は第2態様において、前記起点柱脚(131)は、主起点柱脚(131a)及び副起点柱脚(131b)を含み、前記移動柱脚(132)は、主移動柱脚(132a)及び副移動柱脚(132b)を含み、前記副起点柱脚(131b)は、前記前後方向と略直交する幅方向において前記主起点柱脚(131a)の間に位置して、前記副移動柱脚(132b)は、前記幅方向において前記主移動柱脚(132a)の間に位置して、前記副起点柱脚(131b)が前記フレーム(120)から受ける鉛直方向の荷重は、前記主起点柱脚(131a)が受ける鉛直方向の荷重よりも小さく、前記副移動柱脚(132b)が前記フレーム(120)から受ける鉛直方向の荷重は、前記主移動柱脚(132a)が受ける鉛直方向の荷重よりも小さい。
【0049】
本態様に係る排熱回収ボイラ(100)によれば、起点柱脚(131)は、主起点柱脚(131a)及び副起点柱脚(131b)を含み、移動柱脚(132)は、主移動柱脚(132a)及び副移動柱脚(132b)を含んでいるので、副起点柱脚(131b)及び副移動柱脚(132b)を追加的な柱脚(130)として設置して、それらの追加的な柱脚(130)を用いて追加的なブレース(140b)を設置することができる。
【0050】
本開示の第4態様に係る排熱回収ボイラは、第1態様から第3態様のいずれかにおいて、前記ブレース(140)は、耐震機能を有している。
【0051】
本態様に係る排熱回収ボイラによれば、ブレース(140)は耐震機能を有しているので、地震揺れを更に効率的に抑制することができる。
【0052】
本開示の第5態様に係るブレースの追設方法は、タービンから排出された排ガスが流通し排ガスの流れ方向に沿った前後方向に延びた空間(113)を内部に画定しているケーシング(110)と、前記ケーシング(110)と接続され、前記ケーシング(110)を補強しているフレーム(120)と、前記ケーシング(110)の下部に設置されるとともに前記フレーム(120)と接続され、基礎(171)上に自立している複数の柱脚(130)と、地震揺れを抑制するブレース(140)と、を備え、前記柱脚(130)は、前記前後方向に沿った移動が規制され前記ケーシング(110)の前記前後方向に沿った熱伸びの起点(O)になっている起点柱脚(131)、及び、前記前後方向において前記起点柱脚(131)の前方及び後方に配置され前記前後方向に沿って移動可能な移動柱脚(132)を含み、前記ブレース(140)は、前記起点柱脚(131)と前記前後方向において前記起点柱脚(131)と隣り合う前記移動柱脚(132)とを接続している排熱回収ボイラ(100)に新たなブレース(140b)を追設するブレース(140b)の追設方法であって、前記前後方向と略直交する幅方向における前記起点柱脚(131a)の間に新たな起点柱脚(131b)を設置して、前記幅方向における前記移動柱脚(132a)の間に新たな移動柱脚(132b)を設置して、前記新たな起点柱脚(131b)と前記新たな移動柱脚(132b)とを接続する新たなブレース(140b)を設置する。
【0053】
本開示の第6態様に係るブレースの追設方法は、第5態様において、前記新たな起点柱脚(131b)が前記フレーム(120)から受ける鉛直方向の荷重は、前記起点柱脚(131a)が受ける鉛直方向の荷重よりも小さく、前記新たな移動柱脚(132b)が前記フレーム(120)から受ける鉛直方向の荷重は、前記移動柱脚(132a)が受ける鉛直方向の荷重よりも小さい。
【符号の説明】
【0054】
100 排熱回収ボイラ
110 ケーシング
111 入口
112 出口
113 流路
120 フレーム
121 梁(下部)
122 柱
123 梁(上部)
130 柱脚
131 起点柱脚
131a 主起点柱脚
131b 副起点柱脚(新たな起点柱脚)
132 移動柱脚
132a 主移動柱脚
132b 副移動柱脚(新たな移動柱脚)
135 柱梁交差部
140 ブレース
140b ブレース(新たなブレース)
140’ 山型ブレース
140x 第1ブレース
140y 第2ブレース
141 第1端部
142 第2端部
150 内部ブレース
151 ひし形ブレース
152 水平ブレース
161 脱硝触媒
162 排ガス混合器
163 熱交換器
171 基礎
O 熱伸びの起点
S21 外部スペース
S22 外部スペース
S23 外部スペース
S24 外部スペース
S25 外部スペース
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9