(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114049
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ハンドルバーおよび移動体の制御方法
(51)【国際特許分類】
B62K 21/26 20060101AFI20240816BHJP
B62K 21/12 20060101ALI20240816BHJP
B62J 50/21 20200101ALI20240816BHJP
【FI】
B62K21/26
B62K21/12
B62J50/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019421
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 智祐
(72)【発明者】
【氏名】大滝 啓介
(72)【発明者】
【氏名】吉村 貴克
(72)【発明者】
【氏名】堺 浩之
【テーマコード(参考)】
3D013
【Fターム(参考)】
3D013CF11
3D013CF12
3D013CG00
(57)【要約】
【課題】振動刺激をユーザに提示することが可能なハンドルバーを提供する。
【解決手段】移動体の進行方向を制御するためのハンドルバーは、ユーザの両手によって保持される一対の第1保持領域および第2保持領域を備える。ハンドルバーは、第1保持領域および第2保持領域内に配置されており、ハンドルバーの長手方向に往復移動可能な振動子を備える。ハンドルバーは、振動子の振動状態を広帯域の振動波形により制御可能な制御部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の進行方向を制御するためのハンドルバーであって、
ユーザの両手によって保持される一対の第1保持領域および第2保持領域と、
前記第1保持領域および前記第2保持領域内に配置されており、ハンドルバーの長手方向に往復移動可能な振動子と、
前記振動子の振動状態を広帯域の振動波形により制御可能な制御部と、
を備えるハンドルバー。
【請求項2】
前記ハンドルバーは、内部が空洞である管形状を備えており、
前記振動子は、前記空洞内に配置されている、請求項1に記載のハンドルバー。
【請求項3】
前記第1保持領域に配置されている第1グリップと、
前記第2保持領域に配置されている第2グリップと、
を備え、
前記第1グリップは、ユーザの一方の手の指先が位置するように構成されている第1特定領域を備えており、
前記第2グリップは、ユーザの他方の手の指先が位置するように構成されている第2特定領域を備えており、
前記振動子は、前記第1特定領域および前記第2特定領域に配置されている、請求項1に記載のハンドルバー。
【請求項4】
前記第1特定領域および前記第2特定領域には、複数の前記振動子が前記ハンドルバーの長手方向に沿って配置されており、
前記制御部は、前記長手方向の外側の振動子の方が内側の振動子よりも遅く振動を開始するように、複数の前記振動子を制御する、請求項3に記載のハンドルバー。
【請求項5】
前記制御部は、前記移動体が向いている現在方位と前記移動体が進むべき方向を示す進行方位との差分が縮まる方向である所定方向を算出し、
前記第1保持領域および前記第2保持領域のうち、前記所定方向に対応する領域の前記振動子を振動させる、請求項1に記載のハンドルバー。
【請求項6】
前記振動子が発生する振動の前記ハンドルバーへの伝搬を抑制可能な振動緩衝部をさらに備える、請求項1に記載のハンドルバー。
【請求項7】
ハンドルバーと、
前記ハンドルバーの第1端部近傍に配置されており、ユーザの一方の手によって保持される第1保持領域と、
前記ハンドルバーの前記第1端部と反対側の第2端部近傍に配置されており、ユーザの他方の手によって保持される第2保持領域と、
前記第1保持領域に配置されており、前記第1端部側の位置である第1位置と、前記第2端部側の位置である第2位置と、の間を往復可能に構成されている第1振動子と、
前記第2保持領域に配置されており、前記第1位置と前記第2位置との間を往復可能に構成されている第2振動子と、
を備える移動体の制御方法であって、
前記第1振動子および前記第2振動子の少なくとも一方を振動させるときに、前記第1位置に存在する時間と前記第2位置に存在する時間とを異ならせる、制御方法。
【請求項8】
前記移動体が向いている現在方位を取得するステップと、
前記移動体が進むべき方向を示す進行方位を取得するステップと、
前記現在方位と前記進行方位との差分が縮まる方向である所定方向を算出するステップと、
前記第1端部側の方向と前記第2端部側の方向のうちの何れの方向が前記所定方向に対応するかを判断するステップと、
前記第1端部側の方向が前記所定方向に対応すると判断された場合に、前記第1位置に存在する時間が前記第2位置に存在する時間よりも長くなるように、前記第1振動子および前記第2振動子の少なくとも一方を振動させるステップと、
前記第2端部側の方向が前記所定方向に対応すると判断された場合に、前記第2位置に存在する時間が前記第1位置に存在する時間よりも長くなるように、前記第1振動子および前記第2振動子の少なくとも一方を振動させるステップと、
を備える、請求項7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記第1保持領域には、複数の前記第1振動子が前記ハンドルバーの長手方向に沿って配置されており、
前記第2保持領域には、複数の前記第2振動子が前記ハンドルバーの長手方向に沿って配置されており、
前記移動体が向いている現在方位を取得するステップと、
前記移動体が進むべき方向を示す進行方位を取得するステップと、
前記現在方位と前記進行方位との差分が縮まる方向である所定方向を算出するステップと、
前記第1端部側の方向と前記第2端部側の方向のうちの何れの方向が前記所定方向に対応するかを判断するステップと、
前記第1端部側の方向が前記所定方向に対応すると判断された場合に、前記第1端部側に位置する振動子の方が前記第2端部側に位置する振動子よりも遅く振動を開始するように、複数の前記第1振動子および複数の前記第2振動子の少なくとも一方を振動させるステップと、
前記第2端部側の方向が前記所定方向に対応すると判断された場合に、前記第2端部側に位置する振動子の方が前記第1端部側に位置する振動子よりも遅く振動を開始するように、複数の前記第1振動子および複数の前記第2振動子の少なくとも一方を振動させるステップと、
を備える、請求項7に記載の制御方法。
【請求項10】
移動体の進行方向を制御するためのハンドルバーであって、
ユーザの両手によって保持される一対の第1保持領域および第2保持領域と、
前記第1保持領域および前記第2保持領域内に配置されており、加熱または冷却が可能な温度調整素子と、
前記温度調整素子の温度状態を制御可能な制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記移動体が向いている現在方位と前記移動体が進むべき方向を示す進行方位との差分が縮まる方向である所定方向を算出し、
前記第1保持領域および前記第2保持領域のうち、前記所定方向に対応する領域の前記温度調整素子の温度を変化させる、
ハンドルバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、ハンドルバーおよび移動体の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、複数のリニアアクチュエータが搭載されているステアリングホイールが開示されている。この技術では、経路案内の方向に応じて、振動刺激をユーザに提示することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Sungjae Hwang and Jung-hee Ryu, "The Haptic steering Wheel: Vibro-tactile based navigation for the driving environment," *2010 8th IEEE International Conference on Pervasive Computing and Communications Workshops (PERCOM Workshops)*, 2010, pp. 660-665, doi: 10.1109/PERCOMW.2010.5470517.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1の技術では、単一の触覚振動あるいはパターンしかユーザに提示することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示するハンドルバーは、移動体の進行方向を制御するためのハンドルバーである。ハンドルバーは、ユーザの両手によって保持される一対の第1保持領域および第2保持領域を備える。ハンドルバーは、第1保持領域および第2保持領域内に配置されており、ハンドルバーの長手方向に往復移動可能な振動子を備える。ハンドルバーは、振動子の振動状態を広帯域の振動波形により制御可能な制御部を備える。
【0006】
振動子をハンドルバーの長手方向に広帯域で振動させることで、ハンドルバーに適した振動刺激をユーザに与えることができる。よって、単一の触覚振動を与える場合に比して、よりユーザを適切に誘導することが可能となる。また例えば、振動波形に非対称振動波形を用いれば、長手方向に皮膚が引っ張られるような錯覚(牽引力錯覚)をユーザに与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】移動体1の概略構成を示すブロック図である。
【
図5】経路案内を行うナビゲーションにハンドルバー3を適用する場合の例を説明するフロー図である。
【
図6】移動体1が十字路に到達した状態を示す説明図である。
【
図7】実施例2のハンドルバー203を説明する上面図である。
【
図8】実施例3のハンドルバー303を説明する上面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0008】
(ハンドルバー3の構成)
図1に、ハンドルバー3の概略斜視図を示す。ハンドルバー3は、移動体の進行方向を制御するための部位である。移動体は様々であってよく、例えばキックボード、自転車、オートバイなどが挙げられる。本実施例では、移動体は、電動キックボードである。
図1では、ハンドルバー3の長手方向を+x方向としている。ハンドルバー3と直交するとともに、地面に平行な方向を+y方向としている。地面に対して垂直上方を+z方向としている。また進行方位TDを矢印で示している。
【0009】
ハンドルバー3は、制御部10、ハンドル本体5、第1振動子21、第2振動子22、を主に備えている。ハンドルバー3の上面には、制御部10が配置されている。制御部10は、第1振動子21および第2振動子22の振動を制御可能な部位である。制御部10の具体的な内容は後述する。ハンドルバー3の長手方向の中心CPは、ハンドルポスト20に固定されている。ハンドルバー3は、ハンドルポスト20を中心に回転可能である。ハンドルポスト20の下部は、不図示の本体部2に固定されているとともに、不図示の前輪に接続されている。
【0010】
ハンドルバー3は、左側端部LEと、左側端部LEと反対側の右側端部REと、を備えている。左側端部LEの近傍には、第1保持領域A1が配置されている。第1保持領域A1は、ユーザの左手によって保持される領域である。右側端部REの近傍には、第2保持領域A2が配置されている。第2保持領域A2は、ユーザの右手によって保持される領域である。
【0011】
第1保持領域A1には、第1振動子21が配置されている。同様にして、第2保持領域A2には、第2振動子22が配置されている。具体的には、ハンドル本体5は、内部が空洞である管形状を備えている。空洞内に、第1振動子21および第2振動子22が配置されている、第1振動子21および第2振動子22は、様々な形式のアクチュエータであってよい。本実施例では、第1振動子21および第2振動子22は、ボイスコイル型アクチュエータである。
【0012】
第1振動子21および第2振動子22は、左側の位置である第1位置P1と、右側の位置である第2位置P2と、の間を往復可能に構成されている。すなわち第1振動子21および第2振動子22は、ハンドルバー3の長手方向(x方向)に往復移動可能に構成されている。
【0013】
(触覚提示装置1のブロック図)
図2に、本実施例の移動体1の概略構成を示すブロック図を示す。移動体1は、本体部2およびハンドルバー3を主に備える。制御部10は、ハンドルバー3に備えられている。制御部10は、CPU11、メモリ12、無線通信IF15、アンプ19、を備える。メモリ12には、振動子制御プログラム13およびナビゲーションプログラム14が記憶されている。振動子制御プログラム13がCPU11で実行されることにより、第1振動子21および第2振動子22の各々を制御することができる。またナビゲーションプログラム14がCPU11で実行されることにより、地図情報の取得、目的地までの経路生成、目的地までのユーザ誘導、などの各種のアルゴリズムを実行することができる。
【0014】
無線通信IF15は、不図示の外部サーバとインターネットを介してアクセス可能である。これにより、自己位置を含んだ地図情報など、各種の情報を取得できる。アンプ19は、CPU11からの指示を受けて、第1振動子21および第2振動子22の各々を制御するための部位である。
【0015】
本体部2は、ユーザの足を乗せるためのボード、前輪、後輪などを備えた部位である。本体部2には、方位センサ16、姿勢センサ17、GPSセンサ18、が備えられている。方位センサ16は、移動体1が向いている現在方位を検出可能なセンサである。方位センサ16は、地磁気を検出するセンサであってもよい。姿勢センサ17は、ジャイロセンサや加速度センサ等を備えたセンサである。姿勢センサ17は、本体部2のボードの水平面からの傾きを検出する。これにより、本体部2の姿勢(例:左右傾き、前後傾き)を検出することができる。GPSセンサ18は、GPS衛星からの信号を受信して地理情報を計測するセンサである。
【0016】
(第1振動子21および第2振動子22の具体例)
図3に、第1振動子21の具体例を示す。
図3は、第1保持領域A1近傍における、一部切り欠き斜視断面図である。第1振動子21は、ムービングコイルタイプのボイスコイル型アクチュエータである。第1振動子21は、コイル31、コイルボビン32、永久磁石33、を備えている。ハンドル本体5は断面円形の管形状を備えており、空洞CAを備えている。空洞CA内には、円筒形状の永久磁石33が配置されている。永久磁石33の外周とハンドル本体5の内壁との隙間に、コイル31が配置されている。コイル31には、不図示の配線によって、アンプ19に接続されている。そしてコイル31に電流を流すことにより、振動方向VDにコイル31を振動させることができる。
【0017】
ハンドル本体5の内壁は、コイル31を案内する部材としても機能する。すなわち、ハンドル本体5によって、ボイスコイル型アクチュエータのアウターヨークが構成されている。これにより、ハンドル本体5自体を振動させることができる。なお、第2振動子22は、第1振動子21と同一構造を備えているため、説明を省略する。
【0018】
ボイスコイル型アクチュエータの構造は、様々であってよい。例えば、ムービングマグネットタイプを用いることもできる。ムービングマグネットタイプを用いる場合においても、ハンドル本体5の内壁を、マグネットを案内するアウターヨークとして機能させることができる。
【0019】
(第1振動子21および第2振動子22の動作)
図4に、第1振動子21の振動波形を示す。横軸は、時間である。縦軸は、第1振動子21の位置である。第1振動子21は、振動中心OCを中心として、第1位置P1(左側位置)と第2位置P2(右側位置)との間を振動する。第1位置P1と第2位置P2との距離が、振幅AM1に相当する。
【0020】
第1振動子21は、振動周期VP1で振動する。振動周期VP1において、第1振動子21が第1位置P1に存在する時間をT1とするとともに、第1振動子21が第2位置P2に存在する時間をT2と定義する。時間T1が時間T2よりも長い。このような広帯域の振動波形である非対称振動波形を有することにより、第2位置P2から第1位置P1へ向かう方向に引っ張られるような錯覚を、皮膚に生じさせることができる。すなわち
図1に示すように、第1保持領域A1に接触している左手の皮膚に、左向きの牽引力錯覚LFを与えることができる。
【0021】
反対に、時間T2が時間T1よりも長くなるような非対称振動波形で第1振動子21を振動させた場合には、第1位置P1から第2位置P2へ向かう方向に引っ張られるような錯覚を、皮膚に生じさせることができる。すなわち
図1に示すように、第1保持領域A1に接触している左手の皮膚に、右向きの牽引力錯覚RFを与えることができる。
【0022】
なお、第2振動子22の動作についても、第1振動子21と同様である。よって詳細な説明は省略する。
【0023】
(ハンドルバー3を用いたナビゲーション)
図5のフローを用いて、目的地までの経路案内を行うナビゲーションにハンドルバー3を適用する場合の例を説明する。ステップS10において制御部10は、目的地の入力を受け付ける。また、GPSセンサ18を用いて現在位置を取得する。そして目的地までのルートを生成する。
【0024】
ユーザが目的地へ向かって出発すると、以下のステップS20-S120のループ処理が開始される。
図6の説明図を用いて、当該ループ処理の内容を説明する。
図6は、移動体1が十字路に到達した状態を示している。また、目的地へのルートが、十字路で右折するルートRTである場合を説明する。
【0025】
ステップS20において制御部10は、方位センサ16で得られた方位に基づいて、移動体1の正面が現在向いている方位である現在方位を算出する。
図6の例では、現在方位CDが算出される。
【0026】
ステップS30において制御部10は、進行方位を算出する。進行方位は、ルートRTをトレースするために、移動体1が進むべき方向を示す方位である。
図6の例では、進行方位TDが算出される。
【0027】
ステップS50において制御部10は、進行方位と現在方位との差分が予め定められたしきい値よりも小さいか否かを判断する。この差分には、進行方位と現在方位との角度差を用いることができる。しきい値は適宜定めることができ、例えば15°などの値であってよい。肯定判断される場合(S50:YES)には移動体1の向きが正しいと判断され、ステップS20へ戻り、処理が続行される。一方、否定判断される場合(S50:NO)には、ステップS60へ進む。
図6の例では、角度差AD(約90°)がしきい値より大きいと判断され、ステップS60へ進む。
【0028】
ステップS60において制御部10は、現在方位と進行方位との差分が縮まる方向である、所定方向を算出する。
図6の例では、所定方向SDが算出される。
【0029】
ステップS70において制御部10は、ハンドルバー3の左側端部LE側の方向(左方向)と右側端部RE側の方向(右方向)とのうちの何れの方向が、所定方向に対応するかを判断する。当該ステップの判断方法は、様々であってよい。例えば、現在方位CDに対して所定方向SDが左右の何れの方向であるかを判断してもよい。
【0030】
右側端部RE側の方向(右方向)が所定方向SDに対応していると判断される場合(S70:右方向)には、ステップS80へ進む。ステップS80において制御部10は、右方向に対応する第2保持領域A2の第2振動子22を振動させる。このとき、第2位置P2に存在する時間が第1位置P11に存在する時間よりも長くなるように振動させる(
図1参照)。これにより、右側に引っ張られるような牽引力錯覚を、ユーザの右手に与えることができる。ハンドルバー3を右回転させることを、ユーザに提示することができる。
【0031】
一方、左側端部LE側の方向(左方向)が所定方向SDに対応していると判断される場合(S70:左方向)には、ステップS90へ進む。ステップS90において制御部10は、左方向に対応する第1保持領域A1の第1振動子21を振動させる。このとき、第1位置P1に存在する時間が第2位置P2に存在する時間よりも長くなるように振動させる(
図1参照)。これにより、左側に引っ張られるような牽引力錯覚を、ユーザの左手に与えることができる。ハンドルバー3を左回転させることを、ユーザに提示することができる。
【0032】
図6の例では、右側端部RE側の方向(右方向)が所定方向SDに対応していると判断される(S70:右)。従ってステップS80へ進み、右側に引っ張られるような牽引力錯覚RFが、第2振動子22によってユーザの右手に与えられる。
【0033】
なおステップS80およびS90では、現在方位と進行方位との角度差が大きくなるほど、第1振動子21および第2振動子22の振幅を大きくするように制御を行ってもよい。これにより、角度差が大きいほど強い牽引力錯覚を与えることが可能となる。
【0034】
ステップS100において制御部10は、進行方位と現在方位との角度差が予め定められたしきい値よりも小さくなったか否かを判断する。否定判断される場合(S100:NO)にはステップS60へ戻り、処理が続行される。一方、肯定判断される場合(S100:YES)には、現在方位が進行方位と一致するように修正されたと判断され、ステップS110へ進む。
【0035】
ステップS110において制御部10は、第1振動子21および第2振動子22の振動を停止する。これにより牽引力錯覚が与えられなくなるため、これ以上ハンドルバー3を回転させる必要がないことを、ユーザに報知することが可能となる。
【0036】
ステップS120において制御部10は、目的地に到着したか否かを判断する。到着していない場合(S120:NO)にはステップS20へ戻り処理を続行し、到着した場合(S120:YES)にはナビゲーションを終了する。
【0037】
(効果)
本実施例のハンドルバー3によって、経路案内される方向に応じて触覚刺激をユーザに提示することができる。例えば、左方向に経路案内する場合には、左手に左向きの牽引力錯覚LFを提示することができる。また右方向に経路案内する場合には、右手に右向きの牽引力錯覚RFを提示することができる。これにより、目的地までのナビゲーションの誘導を触覚刺激によって実現することができる。視覚や聴覚を阻害せずに誘導することができるため、周囲への注意が散漫になることが抑制され、交通安全性を高めることが可能となる。
【0038】
(実施例1の変形例)
経路案内時において、第1振動子21および第2振動子22の両方を振動させてもよい。例えば、左方向に経路案内する場合には、左手および右手の両方に、左向きの牽引力錯覚LFを提示してもよい。また右方向に経路案内する場合には、左手および右手の両方に、右向きの牽引力錯覚RFを提示してもよい。
第1グリップ241は、ユーザの左手によって握られる部位である。第1グリップ241は、第1特定領域S1a-S1dを備えている。第1特定領域S1aは、人差し指の指先が位置する領域である。第1特定領域S1bは、中指の指先が位置する領域である。第1特定領域S1cは、薬指の指先が位置する領域である。第1特定領域S1dは、小指の指先が位置する領域である。
第1特定領域S1a-S1dの各々には、第1振動子21a-21dが配置されている。実施例2の第1振動子21a-21dの構造、振動方向、振動波形などは、実施例1の第1振動子21と同様であるため、説明を省略する。第1振動子21a-21dは、ハンドルバー203の長手方向(x方向)に沿って配置されている。第1振動子21a-21dは、第1グリップ241の表面に露出していてもよいし、第1グリップ241の内部に配置されていてもよい。これにより、ユーザが第1グリップ241を握ったときに、左手の人差し指から小指までの指先に、第1振動子21a-21dを接触させることができる。
第1振動子21a-21dとハンドル本体5との間には、振動緩衝部251が配置されている。振動緩衝部251は、第1振動子21a-21dが発生する振動がハンドル本体5へ伝達することを抑制する部位である。振動緩衝部251の構造や材料は様々であってよい。本実施例では、振動緩衝部251は、ハンドル本体5の外周に巻かれているゴムシートである。
第2グリップ242は、ユーザの右手によって握られる部位である。第2グリップ242は、第2特定領域S2a-S2dを備えている。また、第2特定領域S2a-S2dの各々には、第2振動子22a-22dが配置されている。ユーザが第2グリップ242を握ったときに、右手の人差し指から小指までの指先に、第2振動子22a-22dを接触させることができる。なお、第2グリップ242の構造や機能は、第1グリップ241と同様であるため、詳細な説明は省略する。
同様にして、左側端部LE側の方向(左方向)が所定方向SDに対応していると判断される場合(S70:左方向)には、ステップS90へ進む。ステップS90において制御部10は、左側端部LE側に位置する振動子の方が右側端部RE側に位置する振動子よりも遅く振動を開始するように、振動させる。すなわち、第1振動子21a、21b、21c、21dの順に振動を開始する。これにより、左手の人差し指、中指、薬指、小指の順で振動パターンが移動していくような、仮想的運動を提示することができる。