(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114058
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20240816BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F27/29 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019440
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100188802
【弁理士】
【氏名又は名称】澤内 千絵
(72)【発明者】
【氏名】谷 健一
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB10
5E070CB13
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コイル配線層と絶縁層との剥離が抑制されたインダクタ部品を提供する。
【解決手段】インダクタ部品1は、素体と、素体内に設けられ、軸に沿って旋回されたコイルと、素体に設けられ、コイルに電気的に接続された第1外部電極と第2外部電極と、を備える。素体は、複数の絶縁層501、502、503、504、505を有する。コイルは、軸方向に沿って積層された複数のコイル配線層201、202を有する。各コイル配線層は、絶縁層に挟まれる。少なくとも1つのコイル配線層201は、軸方向の一方に位置する第1面61と、軸方向の他方に位置する第2面62とを有し、第1面61または第2面62の少なくとも一方は、深さL2の凹部63を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体内に設けられ、軸に沿って旋回されたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された第1外部電極と第2外部電極と
を備え、
前記素体は、複数の絶縁層を有し、
前記コイルは、前記軸方向に沿って積層された複数のコイル配線層を有し、
各コイル配線層は、前記絶縁層に挟まれ、
少なくとも1つのコイル配線層は、前記軸方向の一方に位置する第1面と、前記軸方向の他方に位置する第2面とを有し、
前記第1面または前記第2面の少なくとも一方は、凹部を有する、インダクタ部品。
【請求項2】
前記凹部は、前記第1面と前記第2面との一方のみに存在する、請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記凹部は、前記コイル配線層の延在方向に直交する断面において、前記コイル配線層の前記軸に直交する方向の幅の中央に存在する、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記凹部の軸方向の深さは、前記コイル配線層の延在方向に直交する断面において、前記コイル配線層の前記軸方向の厚みに対して5%以上30%以下の範囲にある、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記凹部の前記軸に直交する方向の幅は、前記コイル配線層の延在方向に直交する断面において、前記コイル配線層の前記軸に直交する方向の幅に対して40%以上80%以下の範囲にある、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記素体は、互いに対向する第1端面および第2端面と、互いに対向する第1側面と第2側面と、前記第1端面と前記第2端面との間および前記第1側面と前記第2側面との間に接続された底面と、前記底面と対向する天面とを含み、
前記軸は、前記底面と平行であり、かつ、前記第1側面と前記第2側面とを交差するように設けられており、
前記第1外部電極は、少なくとも前記底面に沿って延在し、
前記第2外部電極は、少なくとも前記底面に沿って延在する、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記素体は、互いに対向する第1端面および第2端面と、互いに対向する第1側面と第2側面と、前記第1端面と前記第2端面との間および前記第1側面と前記第2側面との間に接続された底面と、前記底面と対向する天面とを含み、
前記軸が前記第1端面と平行であり、かつ、前記底面と前記天面とを交差するように設けられており、
前記第1外部電極は、少なくとも前記底面に沿って延在し、
前記第2外部電極は、少なくとも前記底面に沿って延在する、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記凹部は、前記第1面と前記第2面のうちの前記底面側に位置する面のみに存在する、請求項7に記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記複数のコイル配線層は、隣り合う2つのコイル配線層を連結するビア導体をさらに有し、
前記ビア導体の前記軸方向の前記一方の端面は、前記ビア導体の前記軸方向の前記他方の端面よりも広く、
前記凹部は、前記第1面のみに存在する、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、特開平5-36532号公報(特許文献1)に記載されたものがある。特許文献1では、インダクタ部品は、素体と、素体内に設けられ、軸に沿って旋回されたコイルとを備え、素体は、複数の絶縁層を有し、コイルは、軸方向に沿って積層された複数のコイル配線層を有し、各コイル配線層は、絶縁層に挟まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のようなインダクタ部品では、熱応力や曲げ応力によって、コイル配線層と絶縁層とが剥離するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明の目的の一つは、コイル配線層と絶縁層との剥離が低減されたインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
素体と、
前記素体内に設けられ、軸に沿って旋回されたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された第1外部電極と第2外部電極と
を備え、
前記素体は、複数の絶縁層を有し、
前記コイルは、前記軸方向に沿って積層された複数のコイル配線層を有し、
各コイル配線層は、前記絶縁層に挟まれ、
少なくとも1つのコイル配線層は、前記軸方向の一方に位置する第1面と、前記軸方向の他方に位置する第2面とを有し、
前記第1面または前記第2面の少なくとも一方は、凹部を有する。
【0007】
上記のように、コイル配線層が凹部を有することにより、コイル配線層と絶縁層との接触面積は大きくなる。その結果、コイル配線層と絶縁層との接着力が大きくなり、コイル配線層と絶縁層とは剥離しにくくなる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によると、コイル配線層と絶縁層との剥離が低減されたインダクタ部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態のインダクタ部品の斜面図である。
【
図3】
図2のインダクタ部品のIII-III断面図である。
【
図6】第2実施形態のインダクタ部品のXY断面図である。
【
図8】第3実施形態のインダクタ部品の一部分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品について図示の実施の態様により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、インダクタ部品の第1実施形態を示す斜面図である。
図2は、
図1のインダクタ部品の透視正面図である。
図3は、
図2のIII-III断面図である。
図4Aおよび
図4Bは、
図1のインダクタ部品の分解図である。
図5は、
図3の一部拡大図である。なお、便宜上、
図2では、構造を容易に理解できるよう、透明に描かれているが、半透明や不透明であってもよい。また、
図3においては、構造を容易に理解できるよう、ビア配線層は記載していない。
【0012】
図1と
図2と
図3に示すように、インダクタ部品1は、第1、第2外部電極30,40を介して、図示しない回路基板の配線に電気的に接続される。インダクタ部品1は、例えば、高周波回路のインピーダンス整合用コイル(マッチングコイル)として用いられ、パソコン、DVDプレーヤー、デジカメ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクス、医療用・産業用機械などの電子機器に用いられる。ただし、インダクタ部品1の用途はこれに限られず、例えば、同調回路、フィルタ回路や整流平滑回路などにも用いることもできる。
【0013】
素体10は、略直方体状に形成されている。素体10の表面は、互いに対向する第1端面15および第2端面16と、互いに対向する第1側面13と第2側面14と、第1端面15と第2端面16との間および第1側面13と第2側面14との間に接続された底面17と、底面17と対向する天面18とを含む。底面17は、インダクタ部品1を図示しない実装基板に実装した際に、実装基板側を向く面である。
【0014】
図示するように、X方向は、第1端面15および第2端面16に直交し、第1端面15から第2端面16に向かう方向である。Y方向は、第1側面13および第2側面14に直交し、第2側面14から第1側面13に向かう方向である。Z方向は、底面17および天面18に直交し、底面17から天面18に向かう方向である。X方向は、素体10の長さ方向ともいい、Y方向は、素体10の幅方向ともいい、Z方向は、素体10の高さ方向ともいう。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する方向であって、X,Y,Zの順に並べたとき、左手系を構成する。
【0015】
第1外部電極30および第2外部電極40は、例えば、Ag、Cu、Auやこれらを主成分とする合金などの導電性材料から構成される。また、第1外部電極30および第2外部電極40は、上述した導電性材料(例えば、Ag、Cu、Au)を下地層として、Niめっき層と、Snめっき層と、を順に有していてもよい。その場合、Niめっき層およびSnめっき層が下地層を覆うように素体10の表面から盛り上がっていてもよい。第1外部電極30は、第1端面15から底面17にかけて形成されたL字形状である。第1外部電極30は、第1端面15および底面17から露出するように素体10に埋め込まれている。第2外部電極40は、第2端面16から底面17にかけて形成されたL字形状である。第2外部電極40は、第2端面16および底面17から露出するように素体10に埋め込まれている。
【0016】
なお、第1実施形態では、第1外部電極30および第2外部電極40は、L字形状を有しているが、他の形状を有してもよい。例えば、第1外部電極30および第2外部電極40は、底面のみに設けられる形状を有してもよい。または、第1外部電極30は、素体10の第1端面15および第1端面15に隣接する第1側面13、第2側面14、底面17および天面18の一部に設けられ、第2外部電極40は、第2端面16および第2端面16に隣接する第1側面13、第2側面14、底面17および天面18の一部に設けられてもよい。
【0017】
第1外部電極30および第2外部電極40は、素体10に埋め込まれた複数の第1外部電極導体層33および第2外部電極導体層43が積層された構成を有している。第1外部電極導体層33は、第1端面15および底面17に沿って延在しており、第2外部電極導体層43は、第2端面16および底面17に沿って延在している。これにより、素体10内に第1、第2外部電極30,40を埋め込むことができるため、素体10に外部電極を外付けする構成に比べて、インダクタ部品の小型化を図ることができる。また、コイル20と第1、第2外部電極30,40を同一工程で形成することができ、コイル20と第1、第2外部電極30,40との間の位置関係のばらつきを低減することで、インダクタ部品1の電気的特性のばらつきを低減することができる。
【0018】
コイル20は、例えば、第1、第2外部電極30,40と同様の導電性材料から構成される。コイル20の第1端は、第1外部電極30に接続され、コイル20の第2端は、第2外部電極40に接続されている。なお、本実施形態では、コイル20と第1、第2外部電極30,40とは一体化されており、明確な境界は存在しないが、これに限られず、コイルと外部電極とが異種材料や異種工法で形成されることにより、境界が存在していても良い。
【0019】
コイル20は、軸AXが底面17と平行であり、かつ、第1側面13と第2側面14とを交差する。コイル20は、軸AXに沿って巻回されている。コイル20の軸AXは、Y方向と一致する。コイル20の軸AXとは、コイル20の螺旋形状の中心軸を意味する。
【0020】
コイル20は、巻回部23と、巻回部23の第1端と第1外部電極30の間に接続された第1引出部21と、巻回部23の第2端と第2外部電極40の間に接続された第2引出部22とを有する。本実施形態では、巻回部23と第1、第2引出部21,22とは一体化されており、明確な境界は存在しないが、これに限られず、巻回部と引出部とが異種材料や異種工法で形成されることにより、境界が存在していても良い。
【0021】
巻回部23は、軸AXに沿って螺旋形状に巻回されている。つまり、巻回部23とは、軸AXに平行な方向からみたときにコイル20同士が互いに重なり合う螺旋形状に巻回された部分を指す。第1、第2引出部21,22とは、重なり合う部分から外れた部分を指す。巻回部23は、軸AX方向からみて、略長方形に形成されているが、この形状に限定されない。巻回部23の形状は、例えば、円形、楕円形、その他の多角形などであってもよい。
【0022】
素体10は、絶縁体50からなり、絶縁体50は複数の積層された絶縁層を有する。具体的には、素体10は、第2側面14から第1側面13の方向に向けて、第1から第21絶縁層501~521が順に積層して構成される。なお、本願において、積層されたとは、製造時において積層する方向に限らず、その逆方向も含む。
【0023】
これらの第1から第21絶縁層501~521は、例えば、硼珪酸ガラスを主成分とする材料や、フェライト、樹脂などの材料からなる。
【0024】
第1から第21絶縁層501~521の積層方向は、素体10の第1、第2端面15,16および底面17に、平行な方向(Y方向)であり、コイル20の軸AXと一致する。すなわち、第1から第21絶縁層501~521は、XZ平面に広がった層状である。なお、本願における積層方向とは、製造時において積層された方向をいう。本願における「平行」とは、厳密な平行関係に限定されず、現実的なばらつきの範囲を考慮し、実質的な平行関係も含む。なお、素体10において、焼成などによって、第1から第21絶縁層501~521の界面が明確となっていない場合がある。
【0025】
図3と
図4Aと
図4Bに示すように、コイル20は、軸AXに沿って積層された複数のコイル配線層201~210と、軸AXに沿って延在して軸AX方向に隣り合うコイル配線層を接続する第1から第9ビア配線層601~609とを有する。なお、
図4Aおよび
図4Bでは、左上から右下に向かう方向を積層方向(Y方向)とする。
【0026】
複数のコイル配線層201~210は、それぞれ絶縁層に挟まれ、軸AX方向(Y方向)に沿って順に積層されている。即ち、絶縁層の積層方向は、軸AX方向と同一方向である。具体的に述べると、第1コイル配線層201は、第1絶縁層501と第3絶縁層503に挟まれる。第2コイル配線層202は、第3絶縁層503と第5絶縁層505に挟まれる。第3コイル配線層203は、第5絶縁層505と第7絶縁層507に挟まれる。第4コイル配線層204は、第7絶縁層507と第9絶縁層509に挟まれる。第5コイル配線層205は、第9絶縁層509と第11絶縁層511に挟まれる。第6コイル配線層206は、第11絶縁層511と第13絶縁層513に挟まれる。第7コイル配線層207は、第13絶縁層513と第15絶縁層515に挟まれる。第8コイル配線層208は、第15絶縁層515と第17絶縁層517に挟まれる。第9コイル配線層209は、第17絶縁層517と第19絶縁層519に挟まれる。第10コイル配線層210は、第19絶縁層519と第21絶縁層521に挟まれる。
【0027】
第1から第10コイル配線層201~210は、それぞれ平面に沿って巻回される。第1から第10コイル配線層201~210の巻回数は、1周未満であるが、1周以上であってもよい。
【0028】
積層方向に隣り合うコイル配線層は、第1から第9ビア配線層601~609を介して電気的に直列に接続される。具体的には、第1コイル配線層201は、第3絶縁層503を貫通した第1ビア配線層601を介して、第2コイル配線層202に接続される。第2コイル配線層202は、第5絶縁層505を貫通した第2ビア配線層602を介して、第3コイル配線層203に接続される。第3コイル配線層203は、第7絶縁層507を貫通した第3ビア配線層603を介して、第4コイル配線層204に接続される。第4コイル配線層204は、第9絶縁層509を貫通した第4ビア配線層604を介して、第5コイル配線層205に接続される。第5コイル配線層205は、第11絶縁層511を貫通した第5ビア配線層605を介して、第6コイル配線層206に接続される。第6コイル配線層206は、第13絶縁層513を貫通した第6ビア配線層606を介して、第7コイル配線層207に接続される。第7コイル配線層207は、第15絶縁層515を貫通した第7ビア配線層607を介して、第8コイル配線層208に接続される。第8コイル配線層208は、第17絶縁層517を貫通した第8ビア配線層608を介して、第9コイル配線層209に接続される。第9コイル配線層209は、第19絶縁層519を貫通した第9ビア配線層609を介して、第10コイル配線層210に接続される。上記構成を有することにより、複数のコイル配線層201~210は、互いに電気的に直列に接続されながら、螺旋を構成している。なお、上記実施態様では、
図4Aおよび
図4Bに示すように第1から第9ビア配線層601~609は円弧形状や直線形状を有するが、他の形状を有していてもよく、例えば、円形状を有していてもよい。
【0029】
第1絶縁層501は、素体10の第2側面14を有し、第2側面14と反対側の面において第2絶縁層502と接する。第1コイル配線層201は、第1引出部21を介して第1外部電極導体層33に接続する。第1コイル配線層201は、第1絶縁層501上であって、第2絶縁層502と同一層に設けられる。第2コイル配線層202は、第3絶縁層503上であって、軸AX方向に直交する第4絶縁層504と同一層に設けられる。第3コイル配線層203は、第5絶縁層505上であって、軸AX方向に直交する第6絶縁層506と同一層に設けられる。第4コイル配線層204は、第7絶縁層507上であって、軸AX方向に直交する第8絶縁層508と同一層に設けられる。第5コイル配線層205は、第9絶縁層509上であって、軸AX方向に直交する第10絶縁層510と同一層に設けられる。第6コイル配線層206は、第11絶縁層511上であって、軸AX方向に直交する第12絶縁層512と同一層に設けられる。第7コイル配線層207は、第13絶縁層513上であって、軸AX方向に直交する第14絶縁層514と同一層に設けられる。第8コイル配線層208は、第15絶縁層515上であって、軸AX方向に直交する第16絶縁層516と同一層に設けられる。第9コイル配線層209は、第17絶縁層517上であって、軸AX方向に直交する第18絶縁層518と同一層に設けられる。第10コイル配線層210は、第19絶縁層519上であって、軸AX方向に直交する第20絶縁層520と同一層に設けられる。第10コイル配線層210は、第2引出部22を介して第2外部電極導体層43に接続する。
【0030】
第1外部電極導体層33は、第2から第20絶縁層502~520において、第1端面15から底面17にかけて設けられている。第2外部電極導体層43は、第2から第20絶縁層502~520において、第2端面16から底面17にかけて設けられている。
【0031】
図5には、
図3のA部の一部拡大図を示す。
図5に示すように、第1コイル配線層201は、軸AX方向の一方に位置する第1面61と、軸AX方向の他方に位置し、該第1面61に対向する第2面62とを有する。この実施形態では、軸AX方向の一方とは、積層方向であり、具体的には、Y方向(第2側面14から第1側面13に向かう方向)である。軸AX方向の他方とは、Y方向の逆方向である。
【0032】
第1面61は、第3絶縁層503と接触する。第1面61は、凹部63を有する。凹部63は、第3絶縁層503と接触する。第2面62は、第1絶縁層501に接触する。第1面61は凹部63を有することにより、第1面61が平坦面である場合に比べて、第1コイル配線層201と第3絶縁層503との接触面積は大きくなる。その結果、第1コイル配線層201と第3絶縁層503との接着力が大きくなり、例えば、熱応力や曲げ応力が発生しても、第1コイル配線層201と第3絶縁層503とは剥離しにくくなる。第1実施形態においては、第1面61が凹部63を有したが、第2面62が凹部63を有していてもよく、第1面61が凹部63を有し、かつ、第2面62が凹部63を有していてもよい。
【0033】
なお、
図3、
図4Aおよび
図4Bにおいては、凹部63は記載していない。また、凹部63は、1つであってもよく、複数あってもよい。コイル配線層の延在方向の全長に亘って、凹部が延在してもよいし、部分的に配置されていてもよいし、複数に分かれて配置されてもよい。凹部63は、第1から第10コイル配線層201~210のうちの少なくとも1つに存在してもよい。
【0034】
図5に示すように、好ましくは、凹部63は、第1コイル配線層201の延在方向に直交する断面において、第1コイル配線層201の軸AXに直交する方向の幅の中央Cに存在する。上記構成を有することにより、第1コイル配線層201の軸AX側の面(コイルの内周面)の軸AX方向の長さを長くでき、コイル20の内周側の厚みを厚くすることができる。これにより、電流の経路を大きくできる。したがって、電流の損失を低減でき、また、Q値も大きくできる。なお、本願における「中央」とは、厳密な中央の位置に限定されず、現実的なばらつきの範囲を考慮し、実質的な中央の位置も含む。例えば、厳密な中央の位置に対して、コイル配線層の軸に直交する方向の幅の±20%ずれた場合も含む。
【0035】
図5に示すように、好ましくは、凹部63の軸AX方向の深さL2は、第1コイル配線層201の延在方向に直交する断面において、第1コイル配線層201の軸AX方向の厚みL1に対して5%以上30%以下の範囲にあり、好ましくは5%以上25%以下の範囲にあり、より好ましくは5%以上20%以下の範囲にある。深さL2が厚みL1に対して下限値以上であることにより、第1コイル配線層201と第3絶縁層503との剥離を抑制することができる。また、深さL2が厚みL1に対して上限値以下であることにより、第1コイル配線層201の厚みを大きくでき、電気抵抗Rdcを低減できる。
【0036】
ここで、第1コイル配線層201の軸AX方向の厚みL1とは、軸AXに平行で、かつ、コイル20の延伸方向に垂直な断面を研磨することにより、第1コイル配線層201を露出し、この厚みを測定した値である。凹部63の軸AX方向の深さL2は、上記厚みL1と同様に測定した値である。
【0037】
なお、第1コイル配線層201の軸AX方向の厚みL1とは、第1コイル配線層201の延在方向に直交する断面において、第1コイル配線層201の軸AXに沿った方向の寸法の最大値である。凹部63の軸AX方向の深さL2とは、軸AX方向に沿った方向の最も深いところである。複数の凹部63が存在する場合には、凹部63の軸AX方向の深さL2は最も深い凹部63の値を意味する。
【0038】
図5に示すように、好ましくは、凹部63の軸AXに直交する方向の幅W2は、第1コイル配線層201の延在方向に直交する断面において、第1コイル配線層201の軸AXに直交する方向の幅W1に対して40%以上80%以下の範囲にあり、好ましくは50%以上80%以下の範囲にあり、より好ましくは60%以上75以下の範囲にある。幅W1に対して、幅W2が下限値以上であることにより、第1面61は凹部63を有することにより、第1面61が平坦面である場合に比べて、第1コイル配線層201と第3絶縁層503との接触面積は大きくなる。その結果、第1コイル配線層201と第3絶縁層503との接着力が大きくなり、第1コイル配線層201と第3絶縁層503とは剥離しにくくなる。幅W1に対して、幅W2が上限値以下であることにより、インダクタ部品1の断面積を確保でき、電気抵抗Rdcを低減できる。
【0039】
ここで、第1コイル配線層201の軸AXに直交する方向の幅W1とは、第1コイル配線層201の延在方向に直交する断面において、第1面61と第2面62との間の軸AXに直交する方向の長さの最大値をいう。凹部63の軸AXに直交する方向の幅W2とは、第1コイル配線層201の延在方向に直交する断面において、凹部63の幅の最大値をいう。なお、第1コイル配線層201の延在方向に直交する断面において、複数の凹部63が存在する場合には、凹部63の幅W2は複数の凹部63の合計である。
第1コイル配線層201の軸AXに直交する方向の幅W1は、軸AXに垂直で、かつ、コイル20の延伸方向に垂直な断面を研磨することにより第1コイル配線層201を露出し、この幅を測定した値である。凹部63の軸AXに直交する方向の幅W2は、上記幅W1と同様に測定した値である。
【0040】
なお、凹部63は、第1コイル配線層201の延在方向に直交する断面において、第1コイル配線層201の軸AXに直交する方向の幅の中央Cになくてもよい。例えば、凹部63は、幅方向の内周面側、幅方向の外周面側に存在してもよい。厚みL1に対する深さL2の値は、5%未満であってもよく、30%超であってもよい。幅W1に対する幅W2の値は、40%未満であってもよく、80%超であってもよい。
【0041】
(インダクタ部品1の製造方法)
図4Aに示すように、上から下に向かって、第1絶縁層501上に第1コイル配線層201を設け、第1ビア配線層601、第2コイル配線層202、第2ビア配線層602、第3コイル配線層203、第3ビア配線層603、第4コイル配線層204、第4ビア配線層604、第5コイル配線層205、第5ビア配線層605の順に積層し、続いて、
図4Bに示すように、上から下に向かって、第6コイル配線層206、第6ビア配線層606、第7コイル配線層207、第7ビア配線層607、第8コイル配線層208、第8ビア配線層608、第9コイル配線層209、第9ビア配線層609、第10コイル配線層210の順に積層し、第10コイル配線層210上に第21絶縁層521を積層する。これにより、インダクタ部品1が製造される。
第1から第10コイル配線層201~210は、例えばスクリーン印刷により絶縁層に設けられる。
凹部63を、例えば、レーザー加工、研削加工等の機械的加工や、エッチング等の化学的加工により、第1コイル配線層201の第1面61に形成する。このように、凹部63を制御して形成する。なお、凹部63は、第2から第10コイル配線層202~210においても同様に設けられてもよく、第1から第10コイル配線層201~210のうちの少なくとも1つに設けられてもよい。また、凹部63は上記の機械的加工や化学的加工以外の加工方法により形成してもよい。
第1から第9ビア配線層601~609は、例えばフォトリソグラフィ工法またはレーザー工法により絶縁層に開口部を設けた後、例えばスクリーン印刷により絶縁層の開口部に設けられる。
【0042】
<第2実施形態>
図6は、インダクタ部品1AのXZ断面図である。
図7は、
図6の一部拡大図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、コイルの軸の方向が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、その説明を省略する。
【0043】
図6に示すように、素体10は、天面18から底面17方向(Z方向の逆方向)に向けて、第1から第21絶縁層501~521が順に、製造時においては積層して構成される。
【0044】
コイル20の軸AXは、第1端面15と平行であり、かつ、底面17と天面18とを交差するように設けられている。上記構成を有することにより、インダクタ部品1Aの多様な選択を可能とする。
【0045】
コイル20は、軸AX方向に沿って積層された複数のコイル配線層201~210と、軸AXに沿って延在して軸AX方向に隣り合うコイル配線層を接続する第1から第9ビア配線層601~609とを有する。
【0046】
図7に示すように、第1コイル配線層201は、軸AX方向の一方に位置する第1面61Aと、軸AX方向の他方に位置し、該第1面61Aに対向する第2面62Aとを有する。この実施形態では、軸AX方向の一方とは、製造時における積層方向であり、具体的には、Z方向の逆方向(天面18から底面17に向かう方向)である。軸AX方向の他方とは、Z方向である。
【0047】
好ましくは、第1コイル配線層201の凹部63Aは、第1面61Aと第2面62Aのうちの底面17側に位置する第1面61Aに存在する。上記構成を有することにより、積層時に、第1コイル配線層201に凹部を形成しやすい。
【0048】
第1外部電極30は、第1端面15から底面17にかけて形成されたL字形状である。第2外部電極40は、第2端面16から底面17にかけて形成されたL字形状である。
【0049】
<第3実施形態>
図8は、インダクタ部品1Bの分解平面図である。
図9は、インダクタ部品1BのYZ断面図である。第3実施形態は、第1実施形態のビア配線層を、ビア導体に置き換えている点が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、その説明を省略する。
【0050】
図8に示すように、第3実施形態の複数のコイル配線層は、第1実施形態の複数のコイル配線層201~210と同様に、それぞれ絶縁層に挟まれ、軸AX方向(Y方向)に沿って順に積層されている。第3実施形態では、第1から第10コイル配線層の長さは、それぞれ、第1実施形態の第1から第10コイル配線層の長さよりも短い。なお、
図8では、コイル配線層のうちの第2コイル配線層202Bと第3コイル配線層203Bのみを示している。
【0051】
積層方向に隣り合うコイル配線層は、第1から第9ビア導体を介して電気的に直列に接続される。なお、
図8では、第2ビア導体602Bのみを示している。
【0052】
図9に示すように、第2ビア導体602Bの軸AX方向の一方の第1面602aの幅は、第2ビア導体602Bの軸AX方向の他方の第2面602bの幅よりも広い。軸AX方向の一方とは、製造時における積層方向であり、具体的には、Y方向である。軸AX方向の他方とは、Y方向の逆方向である。即ち、第2ビア導体602Bの軸AX方向の第3コイル配線層203B側の第1面602aの面積は、第2ビア導体602Bの軸AX方向の第2コイル配線層202B側の第2面602bの面積よりも広い。上記構成を有することにより、インダクタ部品1Bにおいて多様な選択が可能となる。第2ビア導体602Bは、第1面602aから第2面602bに向かってビアの幅が狭くなるようにビアの側面が傾斜したテーパー形状の導体である。なお、第2ビア導体602Bの側面は、凸曲面を有していてもよく、凹曲面を有していてもよい。
【0053】
第2コイル配線層202Bは、軸AX方向の一方(第3コイル配線層203B側)の第1面61Bと、軸AX方向の他方(第1面61Bと反対側)の第2面62Bとを有する。凹部63Bは、第2コイル配線層202Bの第1面61Bに設けられる。その他のコイル配線層においても、軸AXの一方側の面に凹部を設けてもよい。
【0054】
図8および
図9に示すように、第2ビア導体602Bは、以下のように形成できる。まず、第2コイル配線層202Bを設ける。さらに、第2コイル配線層202Bの第1面61Bに、レーザー加工、研削加工等の機械的加工やエッチング等の化学的加工により凹部63Bを設ける。凹部63Bは、第2ビア導体602Bに接する位置とは異なる位置に設けられる。その上で、第2コイル配線層202Bおよび第4絶縁層504上に、第5絶縁層505を設ける。さらに、第5絶縁層505に、レーザー加工、研削加工等の機械的加工により貫通孔を設け、この貫通孔に第2ビア導体602Bを設ける。これにより、第2ビア導体602Bと第2コイル配線層202Bとを接続する。第3コイル配線層203B側の開口が第2コイル配線層202B側の開口よりも大きくなるように、貫通孔を設けることにより、第2ビア導体602Bの第1面602aの面積は、第2ビア導体602Bの第2面602bの面積よりも大きくできる。その上で、第2ビア導体602Bと連結するように第3コイル配線層203Bを設ける。なお、凹部63Bは上記の機械的加工や化学的加工以外の加工方法により形成してもよい。
【0055】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第3実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0056】
本開示は、下記の態様を含む。
<1>
素体と、
前記素体内に設けられ、軸に沿って旋回されたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された第1外部電極と第2外部電極と
を備え、
前記素体は、複数の絶縁層を有し、
前記コイルは、前記軸方向に沿って積層された複数のコイル配線層を有し、
各コイル配線層は、前記絶縁層に挟まれ、
少なくとも1つのコイル配線層は、前記軸方向の一方に位置する第1面と、前記軸方向の他方に位置する第2面とを有し、
前記第1面または前記第2面の少なくとも一方は、凹部を有する、インダクタ部品。
<2>
前記凹部は、前記第1面と前記第2面との一方のみに存在する、<1>に記載のインダクタ部品。
<3>
前記凹部は、前記コイル配線層の延在方向に直交する断面において、前記コイル配線層の前記軸に直交する方向の幅の中央に存在する、<1>または<2>に記載のインダクタ部品。
<4>
前記凹部の軸方向の深さは、前記コイル配線層の延在方向に直交する断面において、前記コイル配線層の前記軸方向の厚みに対して5%以上30%以下の範囲にある、<1>から<3>のいずれか1つに記載のインダクタ部品。
<5>
前記凹部の前記軸に直交する方向の幅は、前記コイル配線層の延在方向に直交する断面において、前記コイル配線層の前記軸に直交する方向の幅に対して40%以上80%以下の範囲にある、<1>から<4>のいずれか1つに記載のインダクタ部品。
<6>
前記素体は、互いに対向する第1端面および第2端面と、互いに対向する第1側面と第2側面と、前記第1端面と前記第2端面との間および前記第1側面と前記第2側面との間に接続された底面と、前記底面と対向する天面とを含み、
前記軸は、前記底面と平行であり、かつ、前記第1側面と前記第2側面とを交差するように設けられており、
前記第1外部電極は、少なくとも前記底面に沿って延在し、
前記第2外部電極は、少なくとも前記底面に沿って延在する、<1>から<5>のいずれか1つに記載のインダクタ部品。
<7>
前記素体は、互いに対向する第1端面および第2端面と、互いに対向する第1側面と第2側面と、前記第1端面と前記第2端面との間および前記第1側面と前記第2側面との間に接続された底面と、前記底面と対向する天面とを含み、
前記軸が前記第1端面と平行であり、かつ、前記底面と前記天面とを交差するように設けられており、
前記第1外部電極は、少なくとも前記底面に沿って延在し、
前記第2外部電極は、少なくとも前記底面に沿って延在する、<1>から<6>のいずれか1つに記載のインダクタ部品。
<8>
前記凹部は、前記第1面と前記第2面のうちの前記底面側に位置する面のみに存在する、<7>に記載のインダクタ部品。
<9>
前記複数のコイル配線層は、隣り合う2つのコイル配線層を連結するビア導体をさらに有し、
前記ビア導体の前記軸方向の前記一方の端面は、前記ビア導体の前記軸方向の前記他方の端面よりも広く、
前記凹部は、前記第1面のみに存在する、<1>から<8>のいずれか1つに記載のインダクタ部品。
【符号の説明】
【0057】
1,1A,1B インダクタ部品
10 素体
13 第1側面
14 第2側面
15 第1端面
16 第2端面
17 底面
18 天面
20 コイル
201~210,202B,203B コイル配線層
21 第1引出部
22 第2引出部
23 巻回部
30 第1外部電極
33 第1外部電極導体層
40 第2外部電極
43 第2外部電極導体層
50 絶縁体
501~521 絶縁層
601~609 ビア配線層
602B ビア導体
602a 第1面
602b 第2面
61,61A,61B 第1面
62,62A,62B 第2面
63,63A,63B 凹部
AX 軸
C 中央
W1,W2 幅
L1 コイル配線層の厚み
L2 凹部の深さ