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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114059
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】台車移動アシスト装置
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/00 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
B62B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019441
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】前地 裕太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 邦之
(72)【発明者】
【氏名】船原 忠義
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB02
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
(57)【要約】
【課題】台車の後退をアシストすることが可能な台車移動アシスト装置を提供する。
【解決手段】この台車移動アシスト装置100は、作業者WKが位置する側である台車Wの後方の端部W1a側に取り付けられて台車Wの移動をアシストする台車移動アシスト装置であって、アシストタイヤTと、回動操作される後退ペダルB1と、後退ペダルB1の操作によって発生したトルクをアシストタイヤTに伝達してアシストタイヤTを回転させることにより、台車Wを後退させるアシスト力を発生させる後退トルク伝達機構B2と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が位置する側である台車の後方の端部側に取り付けられて前記台車の移動をアシストする台車移動アシスト装置であって、
アシストタイヤと、
回動操作される後退ペダルと、
前記後退ペダルの操作によって発生したトルクを前記アシストタイヤに伝達して前記アシストタイヤを回転させることにより、前記台車を後退させるアシスト力を発生させる後退トルク伝達機構と、を備える、台車移動アシスト装置。
【請求項2】
前記後退トルク伝達機構は、前記後退ペダルから入力されたトルクを小さくして前記アシストタイヤから出力することによって、前記後退ペダルの操作時の回転量に対する前記アシストタイヤの回転量を増大させて、前記後退ペダルの回転に対する前記アシストタイヤの回転を増速するように構成されている、請求項1に記載の台車移動アシスト装置。
【請求項3】
回動操作される前進ペダルと、
前記前進ペダルの操作によって発生したトルクを前記アシストタイヤに伝達して前記アシストタイヤを回転させることにより、前記台車を前進させるアシスト力を発生させる前進トルク伝達機構と、をさらに備え、
前記後退トルク伝達機構および前記前進トルク伝達機構は、ともに、共通の前記アシストタイヤに対して、互いに前記アシストタイヤを逆方向に回転させるトルクを伝達するように構成されている、請求項1に記載の台車移動アシスト装置。
【請求項4】
前記後退ペダルに設けられ、前記後退ペダルと前記後退トルク伝達機構との接続状態および接続解除状態を切り替える接続切替部材をさらに備え、
前記接続切替部材は、
前記後退ペダルが操作されている間において、前記後退ペダルと前記後退トルク伝達機構とをトルクを伝達可能なように接続し、
前記後退ペダルが操作されていない間において、前記後退ペダルと前記後退トルク伝達機構との接続を解除するように構成されている、請求項3に記載の台車移動アシスト装置。
【請求項5】
前記後退トルク伝達機構は、
前記後退ペダルからトルクが入力される円形状の入力側チェーンガイドと、
前記アシストタイヤに設けられ、前記アシストタイヤにトルクを出力する円形状の出力側チェーンガイドと、
前記入力側チェーンガイドと前記出力側チェーンガイドとに巻き付けられた環状のチェーンと、を含み、
前記接続切替部材は、前記チェーンに噛み合う爪状の複数の突出部を有し、前記後退ペダルと前記チェーンとをトルクを伝達可能なように接続する爪部材を含む、請求項4に記載の台車移動アシスト装置。
【請求項6】
前記後退ペダルには、
前記後退ペダルの回動支点となり前記後退ペダルとともに前記爪部材を回動させることにより、前記チェーンの前記入力側チェーンガイドに巻き付けられた部分に前記爪部材を噛み合わせる回動支点部と、
前記回動支点部を介して前記後退ペダルを支持するとともに、前記回動支点部により前記チェーンに噛み合わされた状態の前記爪部材を、前記入力側チェーンガイドの周方向に沿って移動させる移動支持部材と、が設けられている、請求項5に記載の台車移動アシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車移動アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動をアシストすることが可能な台車が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、回動操作される足踏みペダルと、補助輪と、足踏みペダルの回動操作により発生したトルクを補助輪に伝達する伝達機構とを備えた手押台車が開示されている。上記の伝達機構は、補助輪に隣接して配置され、補助輪とともに回転するスプロケットと、スプロケットに巻き付けられたチェーンとを含んでいる。上記のチェーンは、足踏みペダルに接続されており、足踏みペダルが作業者に操作されることによって、スプロケットを回転させるように構成されている。その結果、補助輪がスプロケットとともに所定方向に回転して、手押台車は、手押台車に対して作業者が位置する側とは逆側である前方に向けて前進を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-196437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、上記特許文献1に記載の手押台車のように台車の前進をアシストすることが可能なアシスト装置は存在したが、台車の前進をアシストするのではなく、台車の後退をアシストしたいという要求がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、台車の後退をアシストすることが可能な台車移動アシスト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における台車移動アシスト装置は、作業者が位置する側である台車の後方の端部側に取り付けられて台車の移動をアシストする台車移動アシスト装置であって、アシストタイヤと、回動操作される後退ペダルと、後退ペダルの操作によって発生したトルクをアシストタイヤに伝達してアシストタイヤを回転させることにより、台車を後退させるアシスト力を発生させる後退トルク伝達機構と、を備える。
【0008】
この発明の一の局面による台車移動アシスト装置では、上記のように、後退ペダルの操作によって発生したトルクをアシストタイヤに伝達してアシストタイヤを回転させることにより、台車を後退させるアシスト力を発生させる後退トルク伝達機構を設ける。これによって、後退トルク伝達機構により、後退ペダルの操作によって発生したトルクをアシストタイヤに伝達してアシストタイヤを回転させて、台車を後退させるアシスト力を発生させることができる。その結果、台車移動アシスト装置により、台車の後退をアシストすることができる。
【0009】
上記一の局面による台車移動アシスト装置において、好ましくは、後退トルク伝達機構は、後退ペダルから入力されたトルクを小さくしてアシストタイヤから出力することによって、後退ペダルの操作時の回転量に対するアシストタイヤの回転量を増大させて、後退ペダルの回転に対するアシストタイヤの回転を増速するように構成されている。
【0010】
このように構成すれば、後退ペダルから入力されたトルクをより小さなトルクに変換してアシストタイヤを回転させることにより、後退ペダルから入力された回転量(回転速度)をより大きな回転量(回転速度)に変換してアシストタイヤを回転させることができる。すなわち、後退ペダルの操作によって、比較的大きく台車を後退させることができる。
【0011】
上記一の局面による台車移動アシスト装置において、好ましくは、回動操作される前進ペダルと、前進ペダルの操作によって発生したトルクをアシストタイヤに伝達してアシストタイヤを回転させることにより、台車を前進させるアシスト力を発生させる前進トルク伝達機構と、をさらに備え、後退トルク伝達機構および前進トルク伝達機構は、ともに、共通のアシストタイヤに対して、互いにアシストタイヤを逆方向に回転させるトルクを伝達するように構成されている。
【0012】
このように構成すれば、後退用のアシストタイヤと前進用のアシストタイヤとを共通化することができるので、装置構成を簡素化して、部品点数を削減することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、後退ペダルに設けられ、後退ペダルと後退トルク伝達機構との接続状態および接続解除状態を切り替える接続切替部材をさらに備え、接続切替部材は、後退ペダルが操作されている間において、後退ペダルと後退トルク伝達機構とをトルクを伝達可能なように接続し、後退ペダルが操作されていない間において、後退ペダルと後退トルク伝達機構との接続を解除するように構成されている。
【0014】
このように構成すれば、後退ペダルが操作されていない間において、後退ペダルと後退トルク伝達機構との接続を解除することができるので、前進ペダルが操作されて、前進トルク伝達機構からアシストタイヤを介して後退トルク伝達機構にトルクが伝達された場合に、後退トルク伝達機構から後退ペダルにトルクが伝達されて後退ペダルが動いてしまうことを防ぐことができる。
【0015】
上記接続切替部材を備える構成において、好ましくは、後退トルク伝達機構は、後退ペダルからトルクが入力される円形状の入力側チェーンガイドと、アシストタイヤに設けられ、アシストタイヤにトルクを出力する円形状の出力側チェーンガイドと、入力側チェーンガイドと出力側チェーンガイドとに巻き付けられた環状のチェーンと、を含み、接続切替部材は、チェーンに噛み合う爪状の複数の突出部を有し、後退ペダルとチェーンとをトルクを伝達可能なように接続する爪部材を含む。
【0016】
このように構成すれば、複数の突出部を有する爪部材のチェーンに対する噛み合い状態と非噛み合い状態とを切り替えることによって、容易に後退ペダルと後退トルク伝達機構との接続状態および接続解除状態を切り替えることができる。
【0017】
上記接続切替部材が爪部材を含む構成において、好ましくは、後退ペダルには、後退ペダルの回動支点となり後退ペダルとともに爪部材を回動させることにより、チェーンの入力側チェーンガイドに巻き付けられた部分に爪部材を噛み合わせる回動支点部と、回動支点部を介して後退ペダルを支持するとともに、回動支点部によりチェーンに噛み合わされた状態の爪部材を、入力側チェーンガイドの周方向に沿って移動させる移動支持部材と、が設けられている。
【0018】
このように構成すれば、後退ペダルが操作された際に、回動支点部によりチェーンの入力側チェーンガイドに巻き付けられた部分に爪部材を噛み合わせた状態で、移動支持部材によりチェーンとともに爪部材を入力側チェーンガイドの周方向に沿って移動させることができる。したがって、後退ペダルが操作された際に、後退ペダルに設けられた爪部材とチェーンとの噛み合い状態を、比較的長い時間にわたり保持することができる。その結果、後退ペダルからアシストタイヤに効果的にトルクを伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態による台車移動アシスト装置の使用状態を示した側面図である。
図2】第1実施形態による台車移動アシスト装置の斜視図である。
図3】第1実施形態による台車移動アシスト装置の側面図である。
図4】第1実施形態による台車移動アシスト装置の平面図である。
図5図4のV-V線に沿った台車移動アシスト装置の断面図である。
図6図4のVI-VI 線に沿った台車移動アシスト装置の断面図である。
図7図4のA1方向から後退機構を示した矢視図である。
図8図4のA2方向から前進機構を示した矢視図である。
図9】第1実施形態による台車移動アシスト装置の後退機構の動作について説明するための図である。
図10】第2実施形態による台車移動アシスト装置の側面図である。
図11】変形例による台車移動アシスト装置の平面図である。
図12図11のXII-XII線に沿った台車移動アシスト装置の断面図である。
図13図11のA3方向から後退機構の環状のチェーン、第3スプロケットおよび第4スプロケットを示した矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
(台車移動アシスト装置の概略構成)
図1図9を参照して、実施形態による台車移動アシスト装置100の構成について説明する。
【0022】
図1図4に示す台車移動アシスト装置100は、台車Wに取り付けられて、台車Wの前進および台車Wの後退をアシストするための装置である。要するに、台車移動アシスト装置100は、作業者WKが台車Wを前後方向に押す負担(仕事)を軽減するための装置である。
【0023】
ここで、各図では、上下方向をZ方向により示す。Z方向のうち、上方をZ1方向により示し、下方をZ2方向により示す。
【0024】
各図では、台車Wの前後方向をX方向により示す。X方向のうち、台車Wの前方をX1方向により示し、後方をX2方向により示す。後方(X2方向)は、台車W側から台車Wを操作する作業者WKが位置する側を向く方向である。
【0025】
各図では、台車Wの左右(幅)方向をY方向により示す。Y方向のうち、作業者WKを基準とした右方をY1方向により示し、左方をY2方向により示す。Y方向は、Z方向およびX方向に直交する方向である。各図では、台車移動アシスト装置100の左右方向の中心位置を中心線αにより示す。アシストタイヤTは、中心線α上に配置されている。
【0026】
各図では、台車移動アシスト装置100により台車Wを前進させる際のアシストタイヤTの回転方向をR1方向により示す。台車移動アシスト装置100により台車Wを後退させる際のアシストタイヤTの回転方向をR2方向により示す。アシストタイヤTは、左右方向(Y方向)に延びる中心軸線C1を中心としてR1方向およびR2方向に回転する。
【0027】
R1方向は、台車移動アシスト装置100を右方から見た場合の時計回り方向となる。R2方向は、台車移動アシスト装置100を右方から見た場合の反時計回り方向となる。本説明では、台車移動アシスト装置100を右方(左方)から見た場合の時計回り方向(反時計回り方向)をすべてR1方向として説明する。また、台車移動アシスト装置100を右方(左方)から見た場合の反時計回り方向(時計回り方向)をすべてR2方向として説明する。
【0028】
後述する後退機構Bの出力側チェーンガイドB21は、アシストタイヤTと同様に、後退の際に中心軸線C1を中心としてR2方向に回転する。後退機構Bの入力側チェーンガイドB20は、後退の際に中心軸線C2を中心としてR2方向に回転する。
【0029】
また、後述する前進機構Fの出力側チェーンガイドF21は、アシストタイヤTと同様に、前進の際に中心軸線C1を中心としてR1方向に回転する。前進機構Fの入力側チェーンガイドF20は、前進の際に中心軸線C2を中心としてR2方向に回転する。前進機構Fの補助チェーンガイドF23は、前進の際に中心軸線C3を中心としてR2方向に回転する。
【0030】
中心軸線C1、C2、C3は、ともに左右方向(Y方向)に延びる互いに平行な軸線である。中心軸線C3は中心軸線C1の前方に位置し、中心軸線C2は中心軸線C1の後方に位置している。中心軸線C3は、後述する取付機構101の前後方向に延びる支持部材1の回動中心でもある。中心軸線C1、C2、C3は、それぞれ、左右方向に延びる中心軸部材C10、C20、C30の中心に位置する軸線である。
【0031】
後退ペダルB1は、作業者WKによる操作の結果、中心軸線C4aを中心としてR2方向に回転する。そして、作業者WKによる更なる操作の結果、後退ペダルB1(中心軸線C4a)は、中心軸線C2を中心としてR2方向に移動する。中心軸線C4aは、左右方向に延びる回動支点部B12の中心に位置する軸線である。
【0032】
前進ペダルF1は、作業者WKによる操作の結果、中心軸線C4bを中心としてR2方向に回転する。また、作業者WKによる操作の結果、前進ペダルF1(中心軸線C4b)は、中心軸線C2を中心としてR2方向に移動する。中心軸線C4bは、左右方向に延びる回動支点部F12の中心に位置する軸線である。
【0033】
台車移動アシスト装置100は、作業者WKが位置する側である台車Wの後方の端部W1a側に取り付けられ、台車Wの移動をアシストするように構成されている。詳細には、台車移動アシスト装置100は、作業者WKが位置する側である台車Wの後方の端部側で、かつ、台車Wの荷台W1の下面W10に取り付けられている。
【0034】
台車移動アシスト装置100は、停止している台車Wの後退ペダルB1が作業者WKに踏まれて後退ペダルB1を下方に回動させる踏み込み操作が行われた場合に、踏み込み操作によって発生したトルクをアシストタイヤTに伝達して、アシストタイヤTをR2方向に回転させるように構成されている。その結果、停止していた台車Wは、後退を開始する。
【0035】
また、台車移動アシスト装置100は、停止している台車Wの前進ペダルF1が作業者WKに踏まれて前進ペダルF1を下方に回動させる踏み込み操作が行われた場合に、踏み込み操作によって発生したトルクをアシストタイヤTに伝達して、アシストタイヤTをR1方向に回転させるように構成されている。その結果、停止していた台車Wは、前進を開始する。
【0036】
なお、アシストタイヤTのトルクは、後退ペダルB1および前進ペダルF1の踏み込み操作が行われる間のみにおいて発生する。また、上記の通り、後退ペダルB1および前進ペダルF1の踏み込み操作は、主に停止している台車Wに対して行われる。すなわち、台車移動アシスト装置100は、台車Wを前進および後退させる際の初動をアシストするための装置である。
【0037】
(台車の構成)
台車移動アシスト装置100の詳細な構成について説明する前に、台車移動アシスト装置100が取り付けられる台車Wの構成の一例について説明する。
【0038】
台車Wは、水平方向に延びる矩形の荷台W1と、荷台W1の四隅に配置される複数の車輪W2と、作業者WKに把持されるハンドルW3とを備えている。
【0039】
台車Wの複数の車輪W2は、凹凸状の地面Gを走行する場合などを除いて、常に地面Gに接触した状態で保持される。一方、台車移動アシスト装置100のアシストタイヤTは、踏み込み操作が行われる間を除いて地面Gから所定の隙間G1(図3参照)だけ上方に離間した状態(浮いた状態)で保持される。台車Wの複数の車輪W2は、台車Wの移動方向に合わせて向きを変更するように構成されている。一方、台車移動アシスト装置100のアシストタイヤTは、左右方向に延びる中心軸線C1によって定まる前後方向に移動するための向きを保持するように構成されている。
【0040】
(台車移動アシスト装置の詳細構成)
台車移動アシスト装置100は、台車Wに取り付けるための取付機構101と、台車Wを移動させるために駆動する移動機構102とを備えている。
【0041】
取付機構101は、支持部材1と、圧縮付勢体2と、取付部材3とを備えている。支持部材1は、移動機構102を支持している。圧縮付勢体2は、支持部材1を付勢してアシストタイヤTを地面Gから上方に離間させた状態で保持する機能を有している。取付部材3は、支持部材1を台車Wの荷台W1の下面W10に取り付けるための部材である。
【0042】
移動機構102は、アシストタイヤTと、アシストタイヤTをR2方向に回転させる後退機構Bと、アシストタイヤTをR1方向に回転させる前進機構Fとを備えている。
【0043】
以下、取付機構101および移動機構102の各構成要素の詳細について順に説明する。
【0044】
(取付機構の支持部材の構成)
図2に示すように、支持部材1は、前後方向を長手、上下方向を短手、左右方向を厚み方向とする矩形の板部材である。支持部材1は、左右方向に離間して一対設けられている。右方側(Y1方向側)の支持部材1と左方側(Y2方向側)の支持部材1との間には、右方側から順に前進機構F、アシストタイヤTおよび後退機構Bが配置されている。一対の支持部材1は、前進機構F、アシストタイヤTおよび後退機構Bを左右方向の両側から挟み込んだ状態で支持している。支持部材1は、アシストタイヤTの前方側で取付部材3に支持されている。支持部材1は、中心軸線C3回りに回動可能な状態で取付部材3に支持されている。
【0045】
支持部材1は、中心軸部材C10を介して、アシストタイヤT、後退機構Bの出力側チェーンガイドB21および前進機構Fの出力側チェーンガイドF21を中心軸線C1回りに回転可能な状態で支持している(図5参照)。また、支持部材1は、中心軸部材C20を介して、後退機構Bの入力側チェーンガイドB20および前進機構Fの入力側チェーンガイドF20を中心軸線C2回りに回転可能な状態で支持している(図6参照)。
【0046】
一対の支持部材1の前方端部には、被付勢部1aが一体的に設けられている。被付勢部1aは、左右方向に延びる板部分であり、一対の支持部材1を接続している。被付勢部1aには、上方側から圧縮付勢体2が当接している。被付勢部1aは、圧縮付勢体2により、下方に向けて付勢されるように構成されている。すなわち、一対の支持部材1の前方端部は、圧縮付勢体2により、下方に向けて付勢されるように構成されている。
【0047】
(取付機構の圧縮付勢体の構成)
圧縮付勢体2は、取付部材3の後述する第1取付部30の下面と被付勢部1aの上面との間に圧縮状態で配置されている。圧縮付勢体2は、左右方向に並んで複数設けられている。一例ではあるが、圧縮付勢体2は、圧縮コイルバネなどの弾性部材により形成されている。
【0048】
圧縮付勢体2は、上記の通り、回動可能な状態で中心軸部材C30に支持される一対の支持部材1を、中心軸部材C30の前方側で下方に向けて付勢するように構成されている。すなわち、圧縮付勢体2は、支持部材1に対して、中心軸線C3を中心としてR1方向を向くトルクを加えるように構成されている。
【0049】
その結果、中心軸部材C30の後方側では、支持部材1に支持されるアシストタイヤTが上方に向けて付勢されて、アシストタイヤTが地面Gから所定の隙間G1(図3参照)を隔てて離間した状態で保持される。このため、アシストタイヤTは、台車Wが動き始めた後、前後方向ではなく平面視で前後方向に対して傾斜した斜め方向に進む場合に、地面Gから過大な負荷を受けることがない。
【0050】
前進ペダルF1および後退ペダルB1を下方に回動させる踏み込み操作が行われている間においては、支持部材1が圧縮付勢体2の付勢力に抗するR2方向を向くトルクを受けるため、アシストタイヤTは、地面Gに接触した状態で保持される。
【0051】
(取付機構の取付部材の構成)
取付部材3は、台車Wの荷台W1の下面W10(図3参照)に直接固定される第1取付部30と、第1取付部30と支持部材1との間に配置される一対の第2取付部31とを含んでいる。
【0052】
第1取付部30は、荷台W1の下面W10に沿って延びる矩形状を有する。一例ではあるが、第1取付部30は、ボルト(図示せず)などの固定部材により荷台W1の下面W10に固定される。なお、第1取付部は、溶接などの他の手段により荷台の下面に固定されてもよい。
【0053】
第2取付部31は、第1取付部30側から下方に延びる細長い形状を有している。第2取付部31は、左右方向に離間して一対設けられている。第2取付部31は、上部が第1取付部30に固定され、下部において中心軸部材C30を介して支持部材1を回動可能な状態で支持している。また、第2取付部31は、中心軸部材C30を介して、前進機構Fの補助チェーンガイドF23を回転可能な状態で支持している。
【0054】
第2取付部31の後方側には、アシストタイヤT、後退ペダルB1および前進ペダルF1が配置されている。第2取付部31の前方側には、被付勢部1aおよび圧縮付勢体2が配置されている。
【0055】
(移動機構のアシストタイヤの構成)
アシストタイヤTは、台車移動アシスト装置100の各構成の中で、唯一地面Gに接触するように構成されている。アシストタイヤTは、凹凸状の地面Gを走行する場合などを除いて、前進ペダルF1および後退ペダルB1を下方に回動させる踏み込み操作が行われている間においてのみ、地面Gに接触する。
【0056】
台車Wは、地面Gに接触したアシストタイヤTが中心軸線C1を中心としてR1方向に回転することにより前進し、R2方向に回転することにより後退する。アシストタイヤTは、左右方向において、アシストタイヤTの左方に位置する後退機構Bと、アシストタイヤTの右方に位置する前進機構Fとの間に配置されている。
【0057】
(後退用ワンウェイクラッチおよび前進用ワンウェイクラッチの構成)
図2および図5に示すように、アシストタイヤTには、後退用ワンウェイクラッチT1と、前進用ワンウェイクラッチT2とが設けられている。
【0058】
後退用ワンウェイクラッチT1と、アシストタイヤTと後退機構Bとの間に配置されている。後退用ワンウェイクラッチT1は、後退機構Bにおいて出力側チェーンガイドB21をR2方向に回転させるトルクが発生した場合に、トルクがアシストタイヤTに伝達されるように、出力側チェーンガイドB21とアシストタイヤTとを接続するように構成されている。
【0059】
後退用ワンウェイクラッチT1は、後退機構Bにおいて出力側チェーンガイドB21をR1方向に回転させるトルクが発生した場合に、トルクがアシストタイヤTに伝達されないように、出力側チェーンガイドB21とアシストタイヤTとの接続を断つように構成されている。
【0060】
前進用ワンウェイクラッチT2と、アシストタイヤTと前進機構Fとの間に配置されている。前進用ワンウェイクラッチT2は、前進機構Fにおいて出力側チェーンガイドF21をR1方向に回転させるトルクが発生した場合に、トルクがアシストタイヤTに伝達されるように、出力側チェーンガイドF21とアシストタイヤTとを接続するように構成されている。
【0061】
前進用ワンウェイクラッチT2は、前進機構Fにおいて出力側チェーンガイドF21をR2方向に回転させるトルクが発生した場合に、トルクがアシストタイヤTに伝達されないように、出力側チェーンガイドF21とアシストタイヤTとの接続を断つように構成されている。
【0062】
したがって、前進機構FによりアシストタイヤTをR1方向に回転させる(前進させる)際には、アシストタイヤTから後退用ワンウェイクラッチT1を介して、後退機構Bにトルクが伝達されて後退機構BのチェーンB22も回ることになる。この場合、後退機構Bの爪部材B3によって、後退機構BのチェーンB22と後退ペダルB1との接続が断たれた状態で保持されるため、後退ペダルB1が動くことはない。後退機構Bの爪部材B3の詳細については後述する。後退機構Bの爪部材B3は、特許請求の範囲の「接続切替部材」の一例である。
【0063】
また、後退機構BによりアシストタイヤTをR2方向に回転させる(後退させる)際には、アシストタイヤTから前進用ワンウェイクラッチT2を介して、前進機構Fにトルクが伝達されて前進機構FのチェーンF22も回ることになる。この場合、前進機構Fの爪部材F3によって、前進機構FのチェーンF22と前進ペダルF1との接続が断たれた状態で保持されるため、前進ペダルF1が動くことはない。前進機構Fの爪部材F3の詳細については後述する。
【0064】
(移動機構の後退機構の構成)
図7に示すように、後退機構Bは、後退ペダルB1と、後退トルク伝達機構B2と、後退ペダルB1に設けられた爪部材B3とを含んでいる。
【0065】
後退機構Bは、作業者WK(図1参照)による後退ペダルB1の踏み込み操作によって発生したトルクを後退トルク伝達機構B2を介してアシストタイヤTに伝達して、アシストタイヤTをR2方向に回転させるように構成されている。爪部材B3は、後退ペダルB1と後退トルク伝達機構B2との接続状態および接続解除状態を切り替えるように構成されている。
【0066】
(移動機構の後退機構が備える後退ペダルの構成)
後退ペダルB1は、作業者WKの下肢に踏まれることにより操作されるペダル部B10と、ペダル部B10が後端に固定された梁部B11とを有している。
【0067】
ペダル部B10の上面には、後退機構Bによる台車W(図1参照)の移動方向である後方を向く矢印の絵柄(図4参照)が描かれている。梁部B11には、爪部材B3が固定されている。爪部材B3は、梁部B11の下面からチェーンB22に向けて下方に突出している。
【0068】
また、後退ペダルB1には、回動支点部B12と、移動支持部材B13と、第1引張付勢体B14と、第2引張付勢体B15とが設けられている。
【0069】
第1引張付勢体B14は、後退ペダルB1および爪部材B3を中心軸線C2回りのR1方向(前方)に移動させる機能を有している。第2引張付勢体B15は、後退ペダルB1に設けられた爪部材B3とチェーンB22との噛み合いを解除するために、爪部材B3を中心軸線C4a回りのR1方向に回動させる機能を有している。
【0070】
回動支点部B12は、ペダル部B10とは逆側である後退ペダルB1の前方端部付近に配置されている。回動支点部B12は、後退ペダルB1の回動支点(中心軸線C4a)となり後退ペダルB1とともに爪部材B3を回動させることにより、チェーンB22の入力側チェーンガイドB20に巻き付けられた部分に爪部材B3を噛み合わせるように構成されている。要するに、回動支点部B12は、後退ペダルB1を回動可能に支持する軸部分である。
【0071】
移動支持部材B13は、回動支点部B12を介して後退ペダルB1を支持する第1部材B13aと、L字状の第2部材B13bとを含んでいる。
【0072】
第1部材B13aは、後退ペダルB1の左右方向の両側に一対設けられている。第1部材B13aは、回動支点部B12によりチェーンB22に噛み合わされた状態の爪部材B3を、入力側チェーンガイドB20の周方向に沿って移動させるように構成されている。第1部材B13aは、中心軸線C2回りに回動可能な状態で、取付機構101の支持部材1に支持されている。すなわち、後退ペダルB1は、第1部材B13aを介して支持部材1に支持されている。したがって、後退ペダルB1および回動支点部B12は、移動支持部材B13によって中心軸線C2回りに移動可能に構成されている。
【0073】
第1引張付勢体B14は、後方端部が回動支点部B12に取り付けられ、前方端部が被付勢部1aに取り付けられている。一例ではあるが、第1引張付勢体B14は、引張コイルバネなどの弾性部材により形成されている。第1部材B13aおよび後退ペダルB1は、第1引張付勢体B14により、回動支点部B12を介して前方に向けて常時付勢されている(引っ張られている)。すなわち、第1部材B13a、後退ペダルB1および爪部材B3は、第1引張付勢体B14から、中心軸線C2を中心とするR1方向のトルクを常時受けている。
【0074】
L字状の第2部材B13bは、一端が後退ペダルB1の長手方向の中央付近に固定され、他端が第2引張付勢体B15を介して第1部材B13aの側面に取り付けられている。一例ではあるが、第2引張付勢体B15は、引張コイルバネなどの弾性部材により形成されている。
【0075】
L字状の第2部材B13bは、中心軸線C4a回りに回動可能な状態で回動支点部B12に支持されている。L字状の第2部材B13bは、第2引張付勢体B15から、中心軸線C4aを中心とするR1方向のトルクを常時受けている。すなわち、L字状の第2部材B13bは、第2引張付勢体B15から、爪部材B3とチェーンB22との噛み合いを解除する方向のトルクを常時受けている。
【0076】
要するに、第1引張付勢体B14、第2引張付勢体B15およびL字状の第2部材B13bは、チェーンB22と爪部材B3とが噛み合う踏み込み操作時の状態から踏み込み操作が解除された際に、後退ペダルB1を、チェーンB22と爪部材B3との噛み合いが解除される所定の初期位置に復帰させるように構成されている。
【0077】
(移動機構の後退機構が備える後退トルク伝達機構の構成)
図7に示す後退トルク伝達機構B2は、後退ペダルB1の操作によって発生したトルクをアシストタイヤTに伝達してアシストタイヤTを回転させることにより、台車W(図1参照)を後退させるアシスト力を発生させるように構成されている。
【0078】
後退トルク伝達機構B2は、入力側チェーンガイドB20と、出力側チェーンガイドB21と、環状のチェーンB22とを含んでいる。一例ではあるが、入力側チェーンガイドB20は、巻き付けられたチェーンB22を摺動によりガイドする円形状のガイド部材により構成されている。なお、入力側チェーンガイドB20は、一対の第1部材B13aの間に配置され、第1部材B13aに対して固定されている。また、一例ではあるが、出力側チェーンガイドB21は、巻き付けられたチェーンB22をガイドする円形状のスプロケットにより構成されている。
【0079】
入力側チェーンガイドB20は、出力側チェーンガイドB21の後方側で、かつ、後退ペダルB1の下方側に配置されている。また、入力側チェーンガイドB20は、後退ペダルB1の踏み込み操作が行われていない状態で、爪部材B3の直下に爪部材B3から離間して配置されている。入力側チェーンガイドB20は、左右方向から視て中心軸線C2を中心する円形状に形成されている。
【0080】
チェーンB22は、入力側チェーンガイドB20と出力側チェーンガイドB21とに巻き付けられている。左右方向から視て、環状のチェーンB22の内側には、入力側チェーンガイドB20および出力側チェーンガイドB21が配置されている。チェーンB22は、入力側チェーンガイドB20と出力側チェーンガイドB21とを同じ方向に回転させる。
【0081】
出力側チェーンガイドB21は、アシストタイヤTに設けられ、アシストタイヤTにトルクを出力するように構成されている。詳細には、出力側チェーンガイドB21は、アシストタイヤTの左方側に隣接して配置されている。出力側チェーンガイドB21は、中心軸線C1回りに回転可能な状態で中心軸部材C10に支持されている。すなわち、出力側チェーンガイドB21は、アシストタイヤTと同じ中心軸線C1回りに回転するように構成されている。出力側チェーンガイドB21とアシストタイヤTとの間には、後退用ワンウェイクラッチT1が配置されている。
【0082】
入力側チェーンガイドB20のピッチ円の半径r10は、出力側チェーンガイドB21のピッチ円の半径r11よりも大きい。すなわち、入力側チェーンガイドB20の回転中心である中心軸線C2から入力側チェーンガイドB20に噛み合うチェーンB22部分までの距離は、出力側チェーンガイドB21の回転中心である中心軸線C1から出力側チェーンガイドB21に噛み合うチェーンB22部分までの距離よりも大きい。一例ではあるが、入力側チェーンガイドB20のピッチ円の半径r10と出力側チェーンガイドB21のピッチ円の半径r11との比は、121.5対53.07である。
【0083】
したがって、後退トルク伝達機構B2は、後退ペダルB1から入力されたトルクを入力側チェーンガイドB20および出力側チェーンガイドB21によって小さくしてアシストタイヤTから出力することによって、後退ペダルB1の操作時の回転量に対するアシストタイヤTの回転量を増大させて、後退ペダルB1の回転に対するアシストタイヤTの回転を増速するように構成されている。
【0084】
すなわち、後退トルク伝達機構B2は、後退ペダルB1から入力側チェーンガイドB2側で入力された大きなトルクを小さなトルクに変換してアシストタイヤTを回転させる代わりに、入力側チェーンガイドB20に入力された小さな回転量(回転速度)を大きな回転量(回転速度)に変換してアシストタイヤTを回転させるように構成されている。要するに、後退トルク伝達機構B2は、入力されたトルクを犠牲にして、出力としてアシストタイヤTのより大きな回転量(回転速度)を得ることが可能なように構成されている。
【0085】
(移動機構の後退機構が備える爪部材の構成)
爪部材B3は、後退ペダルB1に固定されている。したがって、爪部材B3は、後退ペダルB1とともに中心軸線C4a回りに回動するように構成されている。
【0086】
爪部材B3は、複数の突出部B3aを有している。複数の突出部B3aは、チェーンB22側である下方側に配置され、入力側チェーンガイドB20に巻き付けられたチェーンB22部分に噛み合うように構成されている。複数の突出部B3aは、爪部材B3が中心軸線C4a回りに回動してチェーンB22に噛み合った際に、チェーンB22に沿って配置されるように、概して円弧状に並んでいる。
【0087】
爪部材B3は、後退ペダルB1とチェーンB22とを、トルクを伝達可能なように接続するように構成されている。
【0088】
詳細には、爪部材B3は、後退ペダルB1の踏み込み操作が行われている間において、チェーンB22に噛み合うことによって、後退ペダルB1と後退トルク伝達機構B2とをトルクを伝達可能なように接続する。一方、爪部材B3は、後退ペダルB1の踏み込み操作が行われていない間において、チェーンB22との噛み合いを解除することによって、後退ペダルB1と後退トルク伝達機構B2との接続を解除する。
【0089】
このため、前進ペダルF1の踏み込み操作が行われて後退機構BのチェーンB22が回ったとしても、後退機構Bの爪部材B3がチェーンB22に噛み合っていないため、後退ペダルB1が動かされることはない。要するに、爪部材B3によって、踏み込み操作された前進ペダルF1から後退ペダルB1へのトルクの伝達が断たれる。
【0090】
ここで、上記の通り、後退ペダルB1および回動支点部B12は、移動支持部材B13によって中心軸線C2回りに移動可能に構成されている。このため、爪部材B3は、チェーンB22に噛み合った状態で、中心軸線C2回りのR2方向にチェーンB22とともに移動して、チェーンB22を回すように構成されている。
【0091】
このように、後退機構Bは、爪部材B3をチェーンB22に噛み合わせた状態で、爪部材B3をチェーンB22に沿って移動させるように構成されている。このため、後退機構Bは、後退ペダルB1の踏み込み操作が行われている間において、爪部材B3とチェーンB22との噛み合い状態を、比較的長い時間にわたり保持することが可能に構成されている。
【0092】
(移動機構の前進機構の構成)
図8に示すように、前進機構Fは、前進ペダルF1と、前進トルク伝達機構F2と、前進ペダルF1に設けられた爪部材F3とを含んでいる。爪部材F3は、複数の突出部F3aを有している。
【0093】
前進機構Fは、前進トルク伝達機構F2が入力側チェーンガイドF20、出力側チェーンガイドF21およびチェーンF22に加えて、出力側チェーンガイドF21の回転方向を変えるための補助チェーンガイドF23を含む点を除いて後退機構Bと同様の構成を備えている。このため、以下では前進機構Fの各構成について簡単に説明し、補助チェーンガイドF23に関する構成について詳細に説明する。なお、一例ではあるが、補助チェーンガイドF23は、巻き付けられたチェーンF22をガイドする円形状のスプロケットにより構成されている。
【0094】
前進機構Fは、作業者WKによる前進ペダルF1の踏み込み操作によって発生したトルクを前進トルク伝達機構F2を介してアシストタイヤTに伝達して、アシストタイヤTをR1方向に回転させるように構成されている。
【0095】
前進ペダルF1は、作業者WKの下肢に踏まれることにより操作されるペダル部F10と、ペダル部F10が後端に固定された梁部F11とを有している。
【0096】
ペダル部F10の上面には、前進機構Fによる台車Wの移動方向である前方を向く矢印の絵柄(図4参照)が描かれている。梁部F11には、爪部材F3が固定されている。爪部材F3は、梁部F11の下面からチェーンF22に向けて下方に突出している。
【0097】
後退ペダルB1と同様に、前進ペダルF1には、回動支点部F12と、移動支持部材F13と、第1引張付勢体F14と、第2引張付勢体F15とが設けられている。
【0098】
移動支持部材F13は、回動支点部F12を介して前進ペダルF1を支持する第1部材F13aと、L字状の第2部材F13bとを含んでいる。
【0099】
(移動機構の前進機構が備える前進トルク伝達機構の構成)
前進トルク伝達機構F2は、前進ペダルF1の操作によって発生したトルクをアシストタイヤTに伝達してアシストタイヤTを回転させることにより、台車Wを前進させるアシスト力を発生させるように構成されている。
【0100】
前進トルク伝達機構F2および後退トルク伝達機構B2は、ともに、共通のアシストタイヤTに対して、互いにアシストタイヤTを逆方向に回転させるトルクを伝達するように構成されている。
【0101】
すなわち、前進トルク伝達機構F2は、台車移動アシスト装置100に1つのみ設けられたアシストタイヤTをR1方向に回転させるトルクをアシストタイヤTに伝達するように構成されている。後退トルク伝達機構B2は、台車移動アシスト装置100に1つのみ設けられたアシストタイヤTをR2方向に回転させるトルクをアシストタイヤTに伝達するように構成されている。
【0102】
後退トルク伝達機構B2と同様に、前進トルク伝達機構F2は、入力側チェーンガイドF20と、出力側チェーンガイドF21と、環状のチェーンF22とを含んでいる。また、後退トルク伝達機構B2とは異なり、前進トルク伝達機構F2は、補助チェーンガイドF23を含んでいる。
【0103】
補助チェーンガイドF23は、中心軸線C3回りに回転可能な状態で中心軸部材C30に支持されている。補助チェーンガイドF23は、出力側チェーンガイドF21の前方に配置されている。したがって、出力側チェーンガイドF21は、前後方向において、前方の補助チェーンガイドF23と、後方の入力側チェーンガイドF20との間に配置されている。
【0104】
左右方向から視て、環状のチェーンF22の内側には、入力側チェーンガイドF20および補助チェーンガイドF23が配置され、環状のチェーンF22の外側には、出力側チェーンガイドF21が配置されている。補助チェーンガイドF23は、入力側チェーンガイドF20の回転方向と出力側チェーンガイドF21の回転方向とを、逆転させるために設けられている。
【0105】
(後退機構の動作)
次に、図9を参照して、台車移動アシスト装置100の後退機構Bの動作について説明する。
【0106】
作業者WKにより、停止している台車Wに取り付けられた台車移動アシスト装置100の後退ペダルB1の踏み込み操作が開始される。その結果、後退ペダルB1が回動支点部B12(中心軸線C4a)回りに回動する。詳細には、第2引張付勢体B15の付勢力(張力)に抗しながら、L字状の第2部材B13bとともに後退ペダルB1および爪部材B3が中心軸線C4a回りのR2方向に回動する。
【0107】
その結果、第2引張付勢体B15は、長さL10から長さL11まで伸びる。また、爪部材B3が入力側チェーンガイドB20に巻き付けられたチェーンB22部分に噛み合う。
【0108】
そして、後退ペダルB1がさらに下方に踏み込まれることによって、爪部材B3がチェーンB22に噛み合った状態で、第1引張付勢体B14の付勢力(張力)に抗しながら、移動支持部材B13により後退ペダルB1(回動支点部B12)および爪部材B3がチェーンB22に沿って中心軸線C2回りのR2方向に移動される。すなわち、チェーンB22がR2方向に回される。
【0109】
その結果、第1引張付勢体B14は、長さL20から長さL21まで伸びる。また、チェーンB22を介して入力側チェーンガイドB20側で入力されたR2方向のトルクが出力側チェーンガイドB21に伝達されて、出力側チェーンガイドB21がR2方向に回転する。
【0110】
そして、出力側チェーンガイドB21をR2方向に回転させるトルクは、後退用ワンウェイクラッチT1(図5参照)を介して、アシストタイヤTに伝達される。このため、出力側チェーンガイドB21の回転に合わせてアシストタイヤTも出力側チェーンガイドB21と同じ方向であるR2方向に回転する。
【0111】
その結果、停止していた台車Wが後退を開始する。すなわち、台車移動アシスト装置100により台車Wを後退させる際の初動がアシストされる。このように、後退ペダルB1の踏み込み操作によって台車Wが後方への移動を開始するため、作業者WKが台車Wを後方に押して動かし始める負担が軽減される。
【0112】
なお、台車Wの後退をアシストする際には、アシストタイヤTから前進用ワンウェイクラッチT2(図5参照)を介して前進機構FにR2方向のトルクが伝達されて前進機構FのチェーンF22も回ることになる。
【0113】
しかしながら、前進機構FのチェーンF22が回ったとしても、前進機構Fの爪部材F3がチェーンF22に噛み合っていないため、前進ペダルF1が動かされることはない。要するに、前進機構Fの爪部材F3によって、踏み込み操作された後退ペダルB1から前進ペダルF1へのトルクの伝達が断たれる。
【0114】
(前進機構の動作)
次に、図6を参照して、台車移動アシスト装置100の前進機構Fの動作について説明する。
【0115】
作業者WKにより、停止している台車Wに取り付けられた台車移動アシスト装置100の前進ペダルF1の踏み込み操作が開始される。その結果、前進ペダルF1が回動支点部F12(中心軸線C4b)回りに回動する。詳細には、第2引張付勢体F15の付勢力(張力)に抗しながら、L字状の第2部材F13bとともに前進ペダルF1および爪部材F3が中心軸線C4b回りのR2方向に回動する。
【0116】
そして、爪部材F3が入力側チェーンガイドF20に巻き付けられたチェーンF22部分に噛み合う。
【0117】
そして、前進ペダルF1がさらに下方に踏み込まれることによって、爪部材F3がチェーンF22に噛み合った状態で、第1引張付勢体F14の付勢力(張力)に抗しながら、移動支持部材F13により、前進ペダルF1(回動支点部F12)および爪部材F3がチェーンF22に沿って中心軸線C2回りのR2方向に移動される。すなわち、チェーンF22がR2方向に回される。
【0118】
その結果、チェーンF22を介して入力側チェーンガイドF20側で入力されたR2方向のトルクが補助チェーンガイドF23によって逆転された上で出力側チェーンガイドF21に伝達されて、出力側チェーンガイドF21がR1方向に回転する。
【0119】
そして、出力側チェーンガイドF21をR1方向に回転させるトルクは、前進用ワンウェイクラッチT2を介して、アシストタイヤTに伝達される。このため、出力側チェーンガイドF21の回転に合わせてアシストタイヤTも出力側チェーンガイドF21と同じ方向であるR1方向に回転する。
【0120】
その結果、停止していた台車Wが前進を開始する。すなわち、台車移動アシスト装置100により台車Wを前進させる際の初動がアシストされる。このように、前進ペダルF1の踏み込み操作によって台車Wが前方への移動を開始するため、作業者WKが台車Wを前方に押して動かし始める負担が軽減される。
【0121】
なお、台車Wの前進をアシストする際には、アシストタイヤTから後退用ワンウェイクラッチT1を介して後退機構BにR1方向のトルクが伝達されて後退機構BのチェーンB22も回ることになる。
【0122】
しかしながら、後退機構BのチェーンB22が回ったとしても、後退機構Bの爪部材B3が後退機構BのチェーンB22に噛み合っていないため、後退ペダルB1が動かされることはない。要するに、後退機構Bの爪部材B3によって、踏み込み操作された前進ペダルF1から後退ペダルB1へのトルクの伝達が断たれる。
【0123】
なお、凹凸状の地面Gで台車Wを移動させている場合などでは、後退ペダルB1および前進ペダルF1の踏み込み操作が行われていない間においても、アシストタイヤTが地面Gに接触して回転する場合がある。この場合、後退機構BのチェーンB22または前進機構FのチェーンF22も回ることになるが、非噛み合い状態の後退機構Bの爪部材B3および非噛み合い状態の前進機構Fの爪部材F3によって、後退ペダルB1および前進ペダルF1が動かされることはない。
【0124】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0125】
第1実施形態では、上記のように、後退ペダルB1の操作によって発生したトルクをアシストタイヤTに伝達してアシストタイヤTを回転させることにより、台車Wを後退させるアシスト力を発生させる後退トルク伝達機構B2を設ける。これによって、後退トルク伝達機構B2により、後退ペダルB1の操作によって発生したトルクをアシストタイヤTに伝達してアシストタイヤTを回転させて、台車Wを後退させるアシスト力を発生させることができる。その結果、台車移動アシスト装置100により、台車Wの後退をアシストすることができる。
【0126】
第1実施形態では、上記のように、後退トルク伝達機構B2は、後退ペダルB1から入力されたトルクを小さくしてアシストタイヤTから出力することによって、後退ペダルB1の操作時の回転量に対するアシストタイヤTの回転量を増大させて、後退ペダルB1の回転に対するアシストタイヤTの回転を増速するように構成されている。これによって、後退ペダルB1から入力されたトルクをより小さなトルクに変換してアシストタイヤTを回転させることにより、後退ペダルB1から入力された回転量(回転速度)をより大きな回転量(回転速度)に変換してアシストタイヤTを回転させることができる。すなわち、後退ペダルB1の操作によって、比較的大きく台車Wを後退させることができる。
【0127】
第1実施形態では、上記のように、回動操作される前進ペダルF1と、前進ペダルF1の操作によって発生したトルクをアシストタイヤTに伝達してアシストタイヤTを回転させることにより、台車Wを前進させるアシスト力を発生させる前進トルク伝達機構F2と、をさらに備え、後退トルク伝達機構B2および前進トルク伝達機構F2は、ともに、共通のアシストタイヤTに対して、互いにアシストタイヤTを逆方向に回転させるトルクを伝達するように構成されている。これによって、後退用のアシストタイヤTと前進用のアシストタイヤTとを共通化することができるので、装置構成を簡素化して、部品点数を削減することができる。
【0128】
第1実施形態では、上記のように、後退ペダルB1に設けられ、後退ペダルB1と後退トルク伝達機構B2との接続状態および接続解除状態を切り替える接続切替部材(爪部材B3)をさらに備え、接続切替部材(爪部材B3)は、後退ペダルB1が操作されている間において、後退ペダルB1と後退トルク伝達機構B2とをトルクを伝達可能なように接続し、後退ペダルB1が操作されていない間において、後退ペダルB1と後退トルク伝達機構B2との接続を解除するように構成されている。これによって、後退ペダルB1が操作されていない間において、後退ペダルB1と後退トルク伝達機構B2との接続を解除することができるので、前進ペダルF1が操作されて、前進トルク伝達機構F2からアシストタイヤTを介して後退トルク伝達機構B2にトルクが伝達された場合に、後退トルク伝達機構B2から後退ペダルB1にトルクが伝達されて後退ペダルB1が動いてしまうことを防ぐことができる。
【0129】
第1実施形態では、上記のように、後退トルク伝達機構B2は、後退ペダルB1からトルクが入力される入力側チェーンガイドB20と、アシストタイヤTに設けられ、アシストタイヤTにトルクを出力する出力側チェーンガイドB21と、入力側チェーンガイドB20と出力側チェーンガイドB21とに巻き付けられた環状のチェーンB22と、を含み、接続切替部材は、チェーンB22に噛み合う爪状の複数の突出部B3aを有し、後退ペダルB1とチェーンB22とをトルクを伝達可能なように接続する爪部材B3を含む。これによって、複数の突出部B3aを有する爪部材B3のチェーンB22に対する噛み合い状態と非噛み合い状態とを切り替えることによって、容易に後退ペダルB1と後退トルク伝達機構B2との接続状態および接続解除状態を切り替えることができる。
【0130】
第1実施形態では、上記のように、後退ペダルB1には、後退ペダルB1の回動支点となり後退ペダルB1とともに爪部材B3を回動させることにより、チェーンB22の入力側チェーンガイドB20に巻き付けられた部分に爪部材B3を噛み合わせる回動支点部B12と、回動支点部B12を介して後退ペダルB1を支持するとともに、回動支点部B12によりチェーンB22に噛み合わされた状態の爪部材B3を、入力側チェーンガイドB20の周方向に沿って移動させる移動支持部材B13と、が設けられている。これによって、後退ペダルB1が操作された際に、回動支点部B12によりチェーンB22の入力側チェーンガイドB20に巻き付けられた部分に爪部材B3を噛み合わせた状態で、移動支持部材B13によりチェーンB22とともに爪部材B3を入力側チェーンガイドB20の周方向に沿って移動させることができる。したがって、後退ペダルB1が操作された際に、後退ペダルB1に設けられた爪部材B3とチェーンB22との噛み合い状態を、比較的長い時間にわたり保持することができる。その結果、後退ペダルB1からアシストタイヤTに効果的にトルクを伝達することができる。
【0131】
[第2実施形態]
次に、図10を参照して、第2実施形態の台車移動アシスト装置200について説明する。第2実施形態では、台車移動アシスト装置100が後退機構Bおよび前進機構Fの両方を備えている第1実施形態とは異なり、台車移動アシスト装置200が後退機構B200を備えているとともに、前進機構を備えていない例について説明する。なお、第1実施形態と同様の部分は同一の符号を付し、説明を省略する。
【0132】
台車移動アシスト装置200は、取付機構101と、台車W(図1参照)を移動させるために駆動する移動機構202とを備えている。
【0133】
移動機構202は、アシストタイヤTと、アシストタイヤTをR2方向に回転させる後退機構B200とを備えている。
【0134】
後退機構B200は、後退ペダルB201と、後退トルク伝達機構B202とを含んでいる。なお、台車移動アシスト装置200には、第1実施形態の台車移動アシスト装置100のような爪部材は設けられていない。
【0135】
後退トルク伝達機構B202は、入力側チェーンガイドB220と、出力側チェーンガイドB21と、環状のチェーンB22とを含んでいる。一例ではあるが、入力側チェーンガイドB220は、巻き付けられたチェーンB22をガイドするスプロケットにより構成されている。後退ペダルB201は、入力側チェーンガイドB220に固定されている。したがって、後退ペダルB201は、入力側チェーンガイドB220とともにR2方向に回動するように構成されている。
【0136】
後退ペダルB201は、図示しない付勢体によって、前方に向けて常時付勢されている(引っ張られている)。すなわち、後退ペダルB201は、中心軸線C2を中心とするR1方向のトルクを常時受けている。
【0137】
後退トルク伝達機構B202は、後退ペダルB201の操作によって発生したトルクをアシストタイヤTに伝達してアシストタイヤTを回転させることにより、台車Wを後退させるアシスト力を発生させるように構成されている。
【0138】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0139】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0140】
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、後退ペダルB201の操作によって発生したトルクをアシストタイヤTに伝達してアシストタイヤTを回転させることにより、台車Wを後退させるアシスト力を発生させる後退トルク伝達機構B202を設ける。これによって、後退トルク伝達機構B202により、後退ペダルB201の操作によって発生したトルクをアシストタイヤTに伝達してアシストタイヤTを回転させて、台車Wを後退させるアシスト力を発生させることができる。その結果、台車移動アシスト装置200により、台車Wの後退をアシストすることができる。
【0141】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0142】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0143】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、後退機構の後退トルク伝達機構が環状のチェーンを1つのみ備える例を示したが、本発明は、これに限られない。本発明では、例えば図11図13に示す変形例の台車移動アシスト装置300のように、後退機構B300の後退トルク伝達機構B302が非環状のチェーンB90および環状のチェーンB91を1つずつ備えていてもよい。なお、本変形例において第1実施形態と同様の部分は同一の符号を付し、説明を省略する。
【0144】
詳細には、台車移動アシスト装置300は、取付機構101と、台車W(図1参照)を移動させるために駆動する移動機構302とを備えている。
【0145】
移動機構302は、アシストタイヤTと、アシストタイヤTをR2方向に回転させる後退機構B300とを備えている。後退機構B300は、後退ペダルB301と、後退トルク伝達機構B302とを含んでいる。
【0146】
後退ペダルB301は、中心軸線C5回りに回動可能な状態で、取付機構101の支持部材1に支持されている。後退ペダルB301は、L字状に形成されており、前方端部には、非環状のチェーンB90の一端B90aが固定されている。
【0147】
後退トルク伝達機構B302は、非環状のチェーンB90と、環状のチェーンB91と、非環状のチェーンB90が巻き付けられた第1スプロケットB92および第2スプロケットB93と、環状のチェーンB90が巻き付けられた第3スプロケットB94および第4スプロケットB95とを備えている。非環状のチェーンB90と環状のチェーンB91とは、左右方向に並ぶように配置されている。第1スプロケットB92よび第2スプロケットB93は、非環状のチェーンB90によって、常に逆方向に回転するように構成されている。第3スプロケットB94および第4スプロケットB95は、環状のチェーンB91によって、常に同じ方向に回転するように構成されている。また、後退トルク伝達機構B302は、非環状のチェーンB90の他端B90bが固定される軸部材B96を備えている。
【0148】
第1スプロケットB92、第4スプロケットB95およびアシストタイヤTは、中心軸線C6回りに回転するように構成されている。なお、第1スプロケットB92と第4スプロケットB95との間ではトルクが伝達されることはないとともに、第1スプロケットB92と第4スプロケットB95とは常に逆方向に回転するように構成されている。
【0149】
第2スプロケットB93および第3スプロケットB94は、中心軸線C7回りに回転するように構成されている。第4スプロケットB95は、アシストタイヤTが固定されており、アシストタイヤTとともに回転するように構成されている。
【0150】
非環状のチェーンB90は、第1スプロケットB92および第2スプロケットB93にS字状に巻き付けられている。非環状のチェーンB90は、後退ペダルB301によって前方に引っ張られた場合に、第1スプロケットB92の中心軸線C5回りのR1方向に回動するように構成されている。この際、第2スプロケットB93は、中心軸線C6回りのR2方向に回転する。
【0151】
軸部材B96には、圧縮コイルバネにより形成された圧縮付勢体B96aが設けられている。支持部材1には、軸部材B96が挿通される貫通孔を有し、圧縮付勢体B96aの後方端部に当接する当接部材1bが設けられている。圧縮付勢体B96aは、非環状のチェーンB90を介して、後退ペダルB301に中心軸線C5回りのR1方向のトルクが作用するように常時付勢している。したがって、後退ペダルB301の踏み込み操作が解除された場合に、後退ペダルB301は、圧縮付勢体B96aの付勢力によってR1方向に回動して、所定の初期位置に復帰する。
【0152】
第2スプロケットB93および第3スプロケットB94の間には、ワンウェイクラッチT3が設けられている。ワンウェイクラッチT3は、後退ペダルB301の踏み込み操作が行われて第2スプロケットB93がR2方向に回転する場合にのみ、トルクを第3スプロケットB94に伝達するように構成されている。第3スプロケットB94がR2方向に回転すると、環状のチェーンB91を介して、第4スプロケットB95とともにアシストタイヤTがR2方向に回転する。その結果、停止していた台車Wが後退を開始する。なお、上記変形例に限らず、後退機構の後退トルク伝達機構がチェーンを3つ以上備えていてもよい。
【0153】
また、上記第1および第2実施形態では、後退機構の後退トルク伝達機構が、チェーンおよびスプロケットを備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、後退機構の後退トルク伝達機構、および、前進機構の前進トルク伝達機構が、チェーンおよびスプロケットに代えて、ベルトおよびプーリなどを備えていてもよい。
【0154】
また、上記第1実施形態では、前進トルク伝達機構が、チェーンおよびスプロケットを備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、前進機構の前進トルク伝達機構が、チェーンおよびスプロケットに代えて、ベルトおよびプーリなどを備えていてもよい。
【0155】
また、上記第1実施形態では、前進トルク伝達機構(後退トルク伝達機構)の入力側チェーンガイドを、巻き付けられたチェーンを摺動によりガイドする円形状のガイド部材により構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、前進トルク伝達機構(後退トルク伝達機構)の入力側チェーンガイドを、スプロケットなどにより構成してもよい。
【0156】
また、上記第1実施形態では、後退ペダルと後退トルク伝達機構との接続状態および接続解除状態を切り替える本発明の接続切替部材を、突出部を有する爪部材により構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば摩擦力などの他の手段によって、後退ペダルと後退トルク伝達機構との接続状態および接続解除状態を切り替える部材により、接続切替部材を構成してもよい。
【0157】
また、上記第1実施形態では、後退トルク伝達機構および前進トルク伝達機構に対して、共通のアシストタイヤを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、後退トルク伝達機構および前進トルク伝達機構の各々に対して、専用のアシストタイヤを1つずつ設けてもよい。
【0158】
また、上記第1実施形態では、後退機構をアシストタイヤの左方側に配置し、前進機構をアシストタイヤの右方側に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、後退機構をアシストタイヤの右方側に配置し、前進機構をアシストタイヤの左方側に配置してもよい。
【符号の説明】
【0159】
100、200、300 台車移動アシスト装置
B1、B201、B301 後退ペダル
B2、B202、B302 後退トルク伝達機構
B3 爪部材(接続切替部材)
B3a 突出部
B12 回動支点部
B13 移動支持部材
B20、B220 入力側チェーンガイド
B21 出力側チェーンガイド
B22 チェーン
F1 前進ペダル
F2 前進トルク伝達機構
T アシストタイヤ
W 台車
W1a (台車の後方の)端部
WK 作業者
図1
図2
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図10
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