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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114060
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】注射針
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/34 20060101AFI20240816BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20240816BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A61M5/34 500
A61M5/158 500F
A61M5/158 500H
A61M5/32 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019442
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】堀江 まどか
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066FF06
4C066KK04
4C066KK05
4C066KK06
4C066LL16
(57)【要約】
【課題】針管体の過度な折れ曲がりによる破断を抑制可能な注射針を提供する。
【解決手段】本発明に係る注射針は、針先を含む針管体と、前記針管体を保持する保持体と、を備え、前記針管体は、前記保持体から突出し、前記針先まで延在する穿刺部を備え、前記針管体の前記穿刺部の根元の位置で前記針管体の周囲を取り囲む状態で、前記保持体に保持されており、前記針管体の前記穿刺部の前記根元の位置での曲げ変形を規制する、環状の曲げ規制部材を、更に備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針先を含む針管体と、
前記針管体を保持する保持体と、を備え、
前記針管体は、前記保持体から突出し、前記針先まで延在する穿刺部を備え、
前記針管体の前記穿刺部の根元の位置で前記針管体の周囲を取り囲む状態で、前記保持体に保持されており、前記針管体の前記穿刺部の前記根元の位置での曲げ変形を規制する、環状の曲げ規制部材を、更に備える、注射針。
【請求項2】
前記保持体は、
前記穿針管体が挿通されている挿通孔を区画しているハブと、
前記針管体及び前記曲げ規制部材を前記ハブに対して接着固定している接着体と、を備え、
前記接着体は、前記針管体の前記穿刺部の前記根元の位置で、前記曲げ規制部材の外周面と前記針管体の周方向の全域で接触するように、前記曲げ規制部材を取り囲んでいる、請求項1に記載の注射針。
【請求項3】
前記曲げ規制部材は、前記針管体の長手方向における前記穿刺部の前記根元の位置で、前記針管体の外周面に接触している、請求項1又は2に記載の注射針。
【請求項4】
前記曲げ規制部材は、前記針管体の長手方向における前記穿刺部の前記根元の位置で、前記針管体の外周面との間に空隙を介して、前記針管体の径方向の外側に離間している、請求項1又は2に記載の注射針。
【請求項5】
前記曲げ規制部材は、前記長手方向における前記穿刺部の前記根元の位置より近位側で、前記針管体の外周面に接触している、請求項4に記載の注射針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は注射針に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の痛みを軽減するため、例えばインスリン用の注射針など、細径で肉厚が薄い針管体を備える注射針が知られている。特許文献1には、この種の注射針が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4045589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
針管体に過度な曲げ力が作用すると、針管体のうち外部に露出する穿刺部の根元の位置で、針管体が過度に折れ曲がり、針管体が破断するおそれがある。
【0005】
本発明は、針管体の過度な折れ曲がりによる破断を抑制可能な注射針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様としての注射針は、
(1)
針先を含む針管体と、
前記針管体を保持する保持体と、を備え、
前記針管体は、前記保持体から突出し、前記針先まで延在する穿刺部を備え、
前記針管体の前記穿刺部の根元の位置で前記針管体の周囲を取り囲む状態で、前記保持体に保持されており、前記針管体の前記穿刺部の前記根元の位置での曲げ変形を規制する、環状の曲げ規制部材を、更に備える、注射針、である。
【0007】
本発明の1つの実施形態としての注射針は、
(2)
前記保持体は、
前記穿針管体が挿通されている挿通孔を区画しているハブと、
前記針管体及び前記曲げ規制部材を前記ハブに対して接着固定している接着体と、を備え、
前記接着体は、前記針管体の前記穿刺部の前記根元の位置で、前記曲げ規制部材の外周面と前記針管体の周方向の全域で接触するように、前記曲げ規制部材を取り囲んでいる、上記(1)に記載の注射針、である。
【0008】
本発明の1つの実施形態としての注射針は、
(3)
前記曲げ規制部材は、前記針管体の長手方向における前記穿刺部の前記根元の位置で、前記針管体の外周面に接触している、上記(1)又は(2)に記載の注射針、である。
【0009】
本発明の1つの実施形態としての注射針は、
(4)
前記曲げ規制部材は、前記針管体の長手方向における前記穿刺部の前記根元の位置で、前記針管体の外周面との間に空隙を介して、前記針管体の径方向の外側に離間している、上記(1)又は(2)に記載の注射針、である。
【0010】
本発明の1つの実施形態としての注射針は、
(5)
前記曲げ規制部材は、前記長手方向における前記穿刺部の前記根元の位置より近位側で、前記針管体の外周面に接触している、上記(4)に記載の注射針、である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、針管体の過度な折れ曲がりによる破断を抑制可能な注射針を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態としての注射針を示す断面図である。
図2図1の一部を拡大した拡大断面図である。
図3図1の注射針の針管体の過度な折れ曲がり状態の一例を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態としての注射針を示す断面図である。
図5図4の注射針の針管体の過度な折り曲げが規制される状態を説明する説明図である。
図6図4に示す注射針の一変形例としての注射針を示す断面図である。
図7図6の注射針の針管体の過度な折り曲げが規制される状態を説明する説明図である。
図8図1に示す注射針の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る注射針の実施形態について図面を参照して例示説明する。各図において同一の構成には同一の符号を付している。
【0014】
以下、本明細書では、注射針において、針管体の中心軸線Oに平行な中心軸線方向を「針管体の長手方向A」又は単に「長手方向A」と記載する。また、注射針において、針管体の中心軸線O周りの方向を「針管体の周方向B」又は単に「周方向B」と記載する。更に、注射針において、針管体の中心軸線Oと直交する任意の断面における中心軸線Oを中心とする仮想円の半径方向を「針管体の径方向C」又は単に「径方向C」と記載する。
【0015】
本発明に係る注射針は、例えば、患者にインスリン投与を行うときに使用されるインスリン用注射針であってよい。但し、本発明に係る注射針は、インスリン用注射針に限られない。本発明に係る注射針は、例えば、歯の治療に際して局部麻酔を行うときに使用される歯科用注射針等、別の用途に使用される注射針であってもよい。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る注射針の一実施形態としての注射針1の断面図である。図1に示すように、注射針1は、針管体2と、保持体3と、環状の曲げ規制部材4と、を備える。
【0017】
針管体2は、針先11を含む。以下、針管体2の長手方向Aにおいて、針管体2の遠位端である針先11から、針先11とは反対側の近位端12に向かう一方向を、注射針1の「近位側」又は「抜去方向A1」と記載する場合がある。また、針管体2の長手方向Aにおいて、針管体2の近位端12から針先11に向かう、抜去方向A1とは反対方向を、注射針1の「遠位側」又は「挿入方向A2」と記載する場合がある。
【0018】
保持体3は、針管体2を保持している。詳細は後述するが、本実施形態の保持体3は、ハブ31及び接着体32を備えている。本実施形態の針管体2は、接着体32によりハブ31に接着固定されることで、保持体3に保持されている。
【0019】
針管体2は、保持体3から突出し、針先11まで延在する穿刺部41を備えている。より具体的に、本実施形態の穿刺部41は、保持体3の遠位端3a(本実施形態では接着体32の遠位端32a)から、針先11までの部分を意味する。
【0020】
環状の曲げ規制部材4は、針管体2の穿刺部41の根元の位置で針管体2の周囲を取り囲む状態で、保持体3に保持されており、針管体2の穿刺部41の根元の位置での曲げ変形を規制している。本実施形態における「穿刺部41の根元の位置」とは、長手方向Aにおける、保持体3の遠位端3a(本実施形態では接着体32の遠位端32a)の位置である。
【0021】
図2は、図1に示す保持体3の遠位端3a近傍の位置を拡大して示す拡大断面図である。図1図2に示すように、本実施形態の環状の曲げ規制部材4は、針管体2の穿刺部41の根元の位置で、針管体2の外周面を覆うように取り囲む補強管体21である。本実施形態の曲げ規制部材4としての補強管体21は、長手方向Aにおける穿刺部41の根元の位置で、針管体2の外周面に接触するように構成されているが、曲げ規制部材4は、この構成に限られない。曲げ規制部材4は、長手方向Aにおける穿刺部41の根元の位置で、針管体2の外周面から径方向Cの外側に空隙を介して離間して配置されていてもよい。このような構成とすることで、穿刺部41の根元の位置で針管体2が所定範囲で曲げ変形することを許容してもよい。このような曲げ規制部材4は、穿刺部41の根元の位置で針管体2が所定範囲より大きく曲げ変形しようとする際に、針管体2と接触することで、それ以上の曲げ変形を規制することができる。このような曲げ規制部材104の詳細は後述する(図4図7参照)。
【0022】
また、詳細は後述するが、本実施形態の曲げ規制部材4は、針管体2と同様、接着体32によりハブ31に接着固定されることで、保持体3に保持されている。このように、針管体2及び曲げ規制部材4は、保持体3に対して長手方向A、周方向B及び径方向Cに、相対的に移動しないように、保持体3に固定されている。すなわち、針管体2及び曲げ規制部材4は、保持体3に保持されている状態となっている。
【0023】
以上のように、注射針1では、針管体2の穿刺部41の根元の位置が、環状の曲げ規制部材4により取り囲まれている状態で、針管体2及び曲げ規制部材4が、保持体3に保持されている。そのため、曲げ規制部材4により、針管体2の穿刺部41の根元の位置が保持体3に対して過度に折れ曲がることを抑制できる。
【0024】
より具体的に、本実施形態では、曲げ規制部材4が、長手方向Aにおける穿刺部41の根元の位置で、針管体2の外周面に接触している。そのため、針管体2の穿刺部41の根元の位置が、曲げ規制部材4により補強され、曲げ変形自体が発生し難くなる。これにより、針管体2の穿刺部41の根元の位置で、針管体2が過度に折れ曲がることを抑制できる。その結果、針管体2の破断を抑制できる。また、針管体2が、穿刺部41の根元の位置で過度に折れ曲がる状況が発生したとしても、曲げ規制部材4が設けられていない構成と比較して、針管体2の破断を抑制できる。このように、注射針1が曲げ規制部材4を備えることで、針管体2の過度な折れ曲がり及び破断を抑制できる。
【0025】
図3は、針管体2の穿刺部41の根元で、針管体2が過度に折れ曲げられた状態の一例として、90°に折り曲げられた状態を示す図である。針管体2の穿刺部41の根元の折れ曲がりは、例えば、注射針1の使用時に意図せずに発生し得る。注射針1の使用時とは、例えば、患者等の生体への挿入時、生体からの抜去時等が挙げられる。注射針1の針管体2には、注射針1の使用時において、意図せずに過度な曲げ力が作用する場合がある。注射針1の針管体2には、上述した曲げ規制部材4が設けられているため、針管体2に上述の曲げ力が作用しても、針管体2の穿刺部41の根元での過度な折れ曲がり(図3参照)を抑制できる。その結果、針管体2の過度な折れ曲がりによる破断を抑制できる。また、針管体2の穿刺部41の根元で、過度な折れ曲がり(図3参照)が発生したとしても、曲げ規制部材4が設けられていない構成と比較して、針管体2の穿刺部41の根元での破断を抑制できる。更に、使用目的によっては、針管体2の穿刺部41の根元の折れ曲がりは、例えば、意図的に形成される場合がある。つまり、注射針1の針管体2は、穿刺部41の根元での折れ曲がり角度が所望の角度(例えば45°以下の折れ曲がり)となるように、例えば、医師の裁量により故意に折り曲げられた状態で使用される場合がある。かかる場合であっても、上述した曲げ規制部材4の存在によって、折り曲げ動作時に針管体2の穿刺部41の根元が破断することを抑制できる。
【0026】
以下、図1図3を参照して、本実施形態の注射針1の更なる詳細について説明する。
【0027】
<針管体2>
図1に示すように、本実施形態の針管体2は、上述した穿刺部41に加えて、挿通部42及び接続部43を備えている。穿刺部41は、針管体2の遠位端である針先11を含む。針先11を含む穿刺部41の遠位端面41aは、刃面により構成されている。刃面は、長手方向Aに対して傾斜する面により構成されている1つ以上の刃面部を備える。挿通部42は、穿刺部41の近位側に連なり、保持体3のハブ31の挿通孔31aに挿通されている。接続部43は、例えば、インスリン等の薬液を収容する収容空間を区画する注射器に接続可能に構成されている。接続部43は、注射器の収容空間と連通するように、注射器と接続される。接続部43は、挿通部42の近位側に連なっている。接続部43は、針管体2の近位端12を含む。針管体2は、長手方向Aにおいて穿刺部41、挿通部42及び接続部43を貫通する中空部2aを区画している。本実施形態では、長手方向Aにおける穿刺部41と挿通部42との境界の位置、すなわち、長手方向Aにおける保持体3の遠位端3a(本実施形態では保持体3の接着体32の遠位端32a)の位置を、長手方向Aで跨るように、環状の曲げ規制部材4が配置されている。本実施形態の曲げ規制部材4の配置位置の詳細は後述する。
【0028】
針管体2の太さは、例えば、最大外径が0.18mm~1.2mm(34~18ゲージの外径に相当)であり、穿刺部41の長さは、1mm~10mmであり、インスリン用注射針の場合、好ましくは3mm~6mmである。また、針管体2の肉厚は、例えば、0.02mm~0.2mmの範囲から設定されてよい。
【0029】
図2に示すように、本実施形態の針管体2の穿刺部41は、内周面の内径及び外周面の外径が挿入方向A2に向かって漸減する近位側部51と、この近位側部51の遠位側に連なり、内周面の内径及び外周面の外径が長手方向Aで一様な遠位側部52と、を備える。本実施形態において、穿刺部41の根元の位置とは、近位側部51の根元の位置である。但し、穿刺部41は、内周面の内径及び外周面の外径が長手方向Aにおいて一様な構成であってもよい。また、穿刺部41は、内周面の内径及び外周面の外径が挿入方向A2に向かって遠位端面41aまで漸減する構成であってもよい。
【0030】
図2に示すように、本実施形態の針管体2の穿刺部41は、長手方向Aの位置によらず一様な肉厚を有するが、この構成に限られない。穿刺部41の肉厚は、例えば、挿入方向A2に向かって遠位端面41aまで漸減する構成であってもよい。また、穿刺部41の肉厚は、例えば、挿入方向A2に向かって遠位端面41aまで漸増する構成であってもよい。
【0031】
針管体2の材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、マグネシウム合金等の金属材料を用いることができる。針管体2の材料としては、塑性加工により製造できるものを選択する。塑性加工の例としては、所定の内径を有する引き抜き管の切削加工や、金属平板をプレス加工により製造できる。好ましくは、プレス加工を適用できるものを針管体2の材料として選択する。
【0032】
<保持体3>
図1図2に示すように、本実施形態の保持体3は、ハブ31と、接着体32と、を備えている。ハブ31は、針管体2の挿通部42が挿通されている挿通孔31aを区画している。また、接着体32は、針管体2及び曲げ規制部材4をハブ31に対して接着固定している。
【0033】
図1に示すように、本実施形態のハブ31は、接続筒部61と、この接続筒部61の遠位端を閉塞する遠位壁部62と、この遠位壁部62から更に遠位側に突出する遠位突出部63と、を備えている。上述したハブ31の挿通孔31aは、遠位壁部62及び遠位突出部63を貫通するように形成されている。針管体2は、穿刺部41が挿通孔31aから遠位側に突出し、接続部43が挿通孔31aから近位側の接続筒部61の内部に突出するように、挿通孔31aに挿通されている。接続部43の近位端は、接続筒部61の近位端より遠位側に位置し、接続筒部61より近位側には突出していない。
【0034】
接続筒部61は、インスリン等の薬液を収容する収容空間を区画する注射器に接続可能に構成されている。具体的に、本実施形態の接続筒部61は、内周面に雌ねじ部61aを備える。接続筒部61は、雌ねじ部61aが注射器の先端部の雄ねじ部と螺合することにより、注射器と接続可能である。接続筒部61の雌ねじ部61aが、注射器の雄ねじ部と螺合して接続されることで、上述した針管体2の接続部43は、注射器の収容空間と連通する。
【0035】
遠位突出部63は、接続筒部61と中心軸線が略一致するように、遠位壁部62から突出している。図1図2に示すように、本実施形態の遠位突出部63の遠位端面63aには、凹部71が形成されている。遠位突出部63の遠位端面63aは、ハブ31の遠位端面である。凹部71は円錐台状の形状を有し、遠位側の縁部71aから、近位側の底部71bに向かって、内径が漸減している。本実施形態では、上述した挿通孔31aは、凹部71が区画する凹空間31a1と、凹部71の底部71bから遠位突出部63及び遠位壁部62を貫通し、接続筒部61の内部に開口する貫通孔31a2と、からなる。図1図2に示すように、本実施形態の凹空間31a1の径は、貫通孔31a2の径より大きい。
【0036】
図1図2に示すように、本実施形態の貫通孔31a2を区画する内面には、環状凹部72が形成されている。本実施形態の環状凹部72は、長手方向Aの異なる位置に、複数(本実施形態では2つ)設けられているが、この数は特に限定されない。接着体32は、硬化する前の流動性を有する状態で、環状凹部72内に入り込む。そして、接着体32が硬化すると、接着体32のうち環状凹部72内に入り込む部分が、環状凹部72の内面と係合することで、接着体32、及び、この接着体32と接着している針管体2の、ハブ31に対する長手方向Aの移動が規制される。つまり、本実施形態の貫通孔31a2を区画する内面に、環状凹部72を設けることで、保持体3による針管体2の保持力を、より高めることができる。
【0037】
本実施形態のハブ31では、接続筒部61、遠位壁部62及び遠位突出部63が一体形成されているが、この構成に限られない。ハブ31は、例えば、複数の部材が各種方法により接合されて形成されていてもよい。また、本実施形態のハブ31は、接続筒部61、遠位壁部62及び遠位突出部63を備えるが、この構成に限られない。ハブ31は、針管体2を挿通可能な挿通孔31aを区画するものであれば、本実施形態とは異なる構成であってもよい。
【0038】
ハブ31は、例えば、ポリエチレンや、ポリプロピレン等の熱可塑性プラスチックで形成されてよい。
【0039】
図1図2に示すように、本実施形態の接着体32は、針管体2がハブ31の挿通孔31aに挿通されている状態で、針管体2とハブ31とを接着している。より具体的に、本実施形態の接着体32は、針管体2の挿通部42がハブ31の挿通孔31aに挿通されている状態で、針管体2の挿通部42とハブ31とを接着している。これにより、針管体2は、ハブ31に対して接着固定されている。本実施形態の接着体32は、流動性を有する硬化前の状態(以下、「硬化前状態」と記載する。)で、針管体2及びハブ31に接触するように充填され、その後に硬化することで、針管体2をハブ31に対して接着固定する、接着剤である。接着剤の種類は特に限定されない。接着剤としては、例えば、UV硬化性を有する接着剤、熱硬化性を有する接着剤等を用いることができる。
【0040】
本実施形態の接着体32は、硬化前状態で、挿通孔31a内に充填される。より具体的に、硬化前状態の接着体32は、挿通孔31aに挿通されている針管体2の挿通部42の外面と、挿通孔31aの内面と、の間に充填される。これにより、針管体2の挿通部42の外面と挿通孔31aの内面との間が、硬化前状態の接着体32により満たされる。この状態で、接着体32が硬化することにより、針管体2は、ハブ31に対して接着固定される。
【0041】
また、本実施形態において、接着体32は、針管体2の穿刺部41の根元の位置で、曲げ規制部材4の外周面と周方向Bの全域で接触するように、曲げ規制部材4を取り囲んでいる。換言すれば、長手方向Aにおける針管体2の穿刺部41の根元の位置は、保持体3の遠位端3aの位置であり、保持体3の遠位端3aは、環状の曲げ規制部材4の周囲を取り囲む接着体32により構成されている。
【0042】
本実施形態の曲げ規制部材4は、その近位側の一部が、凹部71に入り込んでいる。上述したように、本実施形態の凹空間31a1の径は、貫通孔31a2の径より大きい。このようにすることで、硬化前状態の接着体32を、凹部71内で、曲げ規制部材4の周囲の位置に満たした状態で、確実に留まらせることができる。つまり、硬化後の接着体32が、針管体2の穿刺部41の根元の位置で、曲げ規制部材4の外周面と周方向Bの全域で接触するように、曲げ規制部材4を取り囲む状態を、確実に実現できる。
【0043】
本実施形態では、硬化前状態の接着体32が、ハブ31の遠位突出部63の遠位端面63aより更に遠位側に隆起するように、凹部71内の凹空間31a1に充填される。このようにすることで、図1図2に示すように、硬化した接着体32についても、ハブ31の遠位突出部63の遠位端面63aより更に遠位側に隆起した状態となる。但し、硬化した状態の接着体32の、遠位端面63aからの隆起高さL1(図2参照)は0mmであってもよい。本実施形態の接着体32は、その隆起高さL1が0mm~1mmになるように構成されている。
【0044】
以上のように、本実施形態の保持体3は、ハブ31及び接着体32を備えるが、この構成に限られない。保持体3は、例えば、針管体2及び曲げ規制部材4がインサート成形されているハブを備え、接着体を備えない構成であってもよい。かかる場合に、保持体3の遠位端3aは、ハブにより構成される。また、接着体32を用いる場合に、接着体32は、接着剤に限られない。接着体32は、例えば、超音波溶着、レーザ溶着等による溶着することで、針管体2及び曲げ規制部材4をハブ31に接着固定する構成であってもよい。
【0045】
<環状の曲げ規制部材4>
図2に示すように、本実施形態の環状の曲げ規制部材4は、針管体2の穿刺部41の根元の位置の径方向Cの外側で、針管体2を周方向Bの全域に亘って覆っている。また、本実施形態の曲げ規制部材4は、上述したように、長手方向Aにおける穿刺部41の根元の位置で、針管体2の外周面に接触している補強管体21である。針管体2は、穿刺部41の根元の位置で、曲げ規制部材4としての補強管体21により補強されることで、穿刺部41の根元の位置で曲げ変形自体が発生し難くなる。その結果、針管体2の穿刺部41の根元の位置での折れ曲がりによる破断を抑制できる。
【0046】
本実施形態の補強管体21は、長手方向Aにおける穿刺部41の根元の位置を、長手方向Aで跨るように、配置されている。つまり、本実施形態の曲げ規制部材4としての補強管体21は、長手方向Aの近位側の一部が保持体3の接着体32に埋設されており、長手方向Aの遠位側の残りの部分が、接着体32より遠位側の外部に露出している。そして、補強管体21の内周面は、その長手方向Aの全域で、針管体2の外周面と接触している。つまり、補強管体21の内周面は、長手方向Aにおいて、接着体32に埋設されている領域から、接着体32の遠位側の外部に露出する領域に亘って、針管体2の外周面と接触している。より具体的に、本実施形態の補強管体21は、穿刺部41のテーパー状の近位側部51の外周面に沿うように、その内径及び外径が遠位側に向かって縮径するテーパー状の外周面及び内周面を有している。
【0047】
本実施形態の曲げ規制部材4としての補強管体21は、周壁に切欠き又は孔部を備えない管体であるが、例えば、周壁に切欠き又は孔部を備える管体であってもよい。ここで、周壁の切欠きとは、周壁の長手方向Aの端面まで延在している開口を意味する。また、周壁の孔部とは、周壁の長手方向Aの端面まで延在しない開口を意味する。このようにすることで、当該切欠き又は孔部に硬化前の接着体32が入り込み、この切欠き又は孔部から接着体32を針管体2の外周面に接触させることができる。これにより、接着体32が針管体2の外周面に接触する接触面積を拡げることができ、針管体2とハブ31との接着体32による接着強度を高めることができる。但し、針管体2の穿刺部41の根元の位置での補強管体21による補強効果を確保するため、接着体32は、曲げ規制部材4の遠位端4aとしての補強管体21の遠位端より遠位側で、針管体2の外周面と接触しないようにされている。
【0048】
本実施形態において、環状の曲げ規制部材4としての補強管体21は、長手方向Aにおける凹部71の縁部71aの位置より、遠位側に1mm以上、延在していることが好ましい。上述したように、本実施形態の接着体32は、ハブ31の遠位端面を構成する縁部71aの位置からの隆起高さL1(図2参照)が0mm~1mmとなるように構成されている。そのため、補強管体21が、長手方向Aにおける凹部71の縁部71aの位置より、遠位側に1mm未満の長さしか有さない場合で、かつ、接着体32の隆起高さL1が1mmの場合には、穿刺部41の根元の位置に補強管体21が位置しない。つまり、補強管体21による補強効果を得られない。接着体32を接着剤により構成する場合に、隆起高さL1を厳密に管理することは困難である。そのため、隆起高さL1は0mm~1mmの範囲でばらつく可能性がある。したがって、曲げ規制部材4としての補強管体21を、長手方向Aにおける凹部71の縁部71aの位置より、遠位側に1mm以上、延在する構成とすることで、上述した隆起高さL1にばらつきが生じても、穿刺部41の根元に補強管体21を確実に設けることができる。補強管体21の、縁部71aから遠位側の長さL2(図2参照)は、例えば、1.1mm~1.9mmとされてよい。
【0049】
また、補強管体21の、縁部71aから近位側の長さL3(図2参照)は、特に限定されない。本実施形態の補強管体21は、その近位端4bが凹部71内に位置するように、形成されている。この観点で、本実施形態の長さL3は、0.1mm~1.2mmなるように設定されている。
【0050】
曲げ規制部材4としての補強管体21の肉厚は、所定の補強強度を確保できるように、適宜設定されてよい。針管体2の穿刺部41の外径は、穿刺抵抗の低減の観点で、小さいことが好ましい。その一方で、針管体2の穿刺部41の内径は、インスリン等の薬液の注入抵抗の低減の観点で、大きいことが好ましい。これらの両立を考慮すると、針管体2の穿刺部41の位置での最大外径は0.18mm~0.5mmで、針管体2の穿刺部41の位置での肉厚は0.02mm~0.06mm、に設定されることが好ましい。針管体2の穿刺部41が上記肉厚に設定されている場合、補強管体21の肉厚は、例えば、0.02mm~0.06mmとされてよい。
【0051】
環状の曲げ規制部材4の材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、マグネシウム合金等の金属材料を用いることができる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、図4図5を参照して、第2実施形態としての注射針101について説明する。図4は、注射針101の針管体2の遠位側の一部を示す断面図である。図5は、本実施形態の注射針101の針管体2の過度な折り曲げが規制される状態を説明する説明図である。本実施形態の注射針101は、上述した第1実施形態の注射針1(図1図3参照)と比較して、環状の曲げ規制部材104の構成、及び、針管体2の穿刺部41の根元の位置での曲げ規制部材104と針管体2との接触状態、が相違しているが、その他の構成は同一である。そのため、ここでは、上述した相違点のみ説明し、同一の構成は説明を省略する。
【0053】
図4に示すように、注射針101は、針管体2と、保持体3と、曲げ規制部材104と、を備える。本実施形態の針管体2及び保持体3それぞれの構成は、上述した第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0054】
図4に示すように、本実施形態の曲げ規制部材104は、その内径及び外径が長手方向Aの位置よらず一定のストレート状の管体121である。図4に示すように、曲げ規制部材104の近位端104bとしての管体121の近位端は、接着体32に埋設されている位置で、針管体2の外周面に接触している。図4に示すように、針管体2の外周面は、管体121の近位端が接触している位置から遠位側に向かって縮径している。そのため、曲げ規制部材104は、穿刺部41の根元の位置、すなわち、長手方向Aにおける保持体3の遠位端3a(本実施形態では接着体32の遠位端32a)の位置で、針管体2の外周面との間に空隙Gを介して、径方向Cの外側に離間している。すなわち、本実施形態では、長手方向Aにおける穿刺部41の根元の位置で、針管体2の外周面と、管体121の内周面と、の間に、接着体32が介在しない、環状の空隙Gが区画されている。そのため、図5に示すように、針管体2の穿刺部41は、保持体3に保持されている挿通部42を支点として、曲げ規制部材104としての管体121に接触するまで、曲げ変形可能に構成されている。そして、本実施形態の穿刺部41は、管体121と接触することで、それ以上、曲げ変形することを規制される。このようにすることで、針管体2の穿刺部41が、過度に折り曲げられることを抑制できる。その結果、針管体2の破断を抑制できる。
【0055】
より具体的に、本実施形態のストレート状の管体121は、長手方向Aにおける穿刺部41の根元の位置を、長手方向Aで跨るように、配置されている。つまり、本実施形態の曲げ規制部材104としての管体121は、長手方向Aの近位側の一部が保持体3の接着体32に埋設されており、長手方向Aの遠位側の残りの部分が、接着体32より遠位側の外部に露出している。そして、管体121の内周面は、長手方向Aにおいて、接着体32に埋設されている近位端近傍の領域のみで、針管体2の外周面と接触しており、近位端より遠位側の領域では、針管体2の外周面から離間しており、接触していない。また、上述したように、管体121の内周面と、針管体2の外周面と、の間の空隙Gには、接着体32は介在しない。つまり、管体121の遠位端は、針管体2の外周面から径方向Cの外側に空隙Gを介して離間している。また、保持体3の遠位端3aとしての接着体32の遠位端32aは、曲げ規制部材104としての管体121の外周面と、周方向Bの全域で接触するように、管体121の径方向Cの外側を取り囲んでいる。つまり、接着体32の遠位端32aは、管体121の径方向Cの外側に位置し、管体121の径方向Cの内側に位置しない。更に、接着体32は、曲げ規制部材104の遠位端104aとしての管体121の遠位端より遠位側で、針管体2の外周面とは接触していない。
【0056】
図4に示すように、本実施形態の曲げ規制部材104としての管体121は、ストレート状であるが、この構成に限られない。図6は、図4に示す曲げ規制部材104の変形例を示す図である。図7は、図6に示す注射針101の針管体2の過度な折り曲げが規制される状態を説明する説明図である。図6に示すように、管体121は、近位端から遠位端に向かって内径が漸増するテーパー状の内周面を備える構成であってもよい。このように、管体121の遠位端の内径R1を大きくすることで、図4図5に示す構成と比較して、穿刺部41の曲げ変形の許容量を大きくできる。管体121の遠位端の内径R1は、穿刺部41の許容できる曲げ変形量に応じて、適宜設定されてよい。但し、管体121の遠位端の内径R1は、管体121の遠位端から近位側への空隙Gの距離L4より小さいことが好ましい。このような関係とすることで、穿刺部41の過度な曲げ変形を、より抑制できる。図7を参照すれば、曲げ規制部材104の遠位端及び空隙Gによって、穿刺部41の過度な曲げ変性が干渉される。
【0057】
図6図7に示す管体121は、近位端から遠位端に向かって外径が漸増するテーパー状の外周面を備える構成であるが、この構成に限られない。管体121の外周面は、例えば、近位端から遠位端に向かって外径が一定又は漸減する構成であってもよい。
【0058】
また、図4図5に示す本実施形態、及び、図6図7に示す変形例の注射針101では、曲げ規制部材104としての管体121の近位端近傍が、針管体2の挿通部42の外周面に接触する構成であるが、この構成に限られない。曲げ規制部材104は、その長手方向Aの全域で、針管体2の外周面と接触しない構成であってもよい。但し、本実施形態及び変形例のように、曲げ規制部材104は、穿刺部41の根元の位置より近位側で、針管体2の外周面に接触していることが好ましい。このようにすることで、環状の曲げ規制部材104に針管体2を挿通することで、針管体2に対する曲げ規制部材104の径方向Cの位置決めを容易に行うことができる。また、本実施形態及び変形例のように、環状の曲げ規制部材104は、針管体2のうち外径が遠位側に向かって漸減する外面テーパー部に位置決めされることが好ましい。このようにすることで、環状の曲げ規制部材104に針管体2を挿通することで、針管体2に対する曲げ規制部材104の長手方向Aの位置決めを容易に行うことができる。
【0059】
また、図6図7に示す変形例では、曲げ規制部材104として、遠位側に向かって内径及び外径が漸増するテーパー状の管体121を示したが、曲げ規制部材104は、例えば、遠位側に向かって内径及び外径が漸増するテーパー状の遠位管部と、この遠位管部の近位側に連なり、内径及び外径が一定のストレート状の近位管部と、を備える管体であってもよい。
【0060】
最後に、図8を参照して、第1実施形態の注射針1の製造方法の一例について説明する。ここでは注射針1の製造方法の一例として説明するが、ここで説明する製造方法は、第2実施形態及び変形例としての注射針101にも適用可能である。図8は、注射針1の製造方法の一例を示すフローチャートである。図8に示す製造方法は、針管体2(図1等参照)を取得する針管体取得工程S1と、針管体2とは別に形成されたハブ31(図1等参照)に、針管体2、及び、針管体2とは別に形成された曲げ規制部材4(図1等参照)を、接着固定する固定工程S2と、を含む。
【0061】
図8に示すように、針管体取得工程S1は、針管体2の刃面が形成される前の状態である管状体を取得する管状体取得工程S1-1と、管状体の一端側の端面に刃面を形成し、針管体2を形成する刃面形成工程S1-2と、形成した針管体2を電解研磨処理等の各種研磨処理を用いて研磨する研磨工程S1-3と、を含む。
【0062】
管状体取得工程S1-1は、各種公知の方法により行うことができ、例えば、図8に示すように、帯状をなす金属製の板材をプレス成形機に受け入れる受入工程S1-1-1と、このプレス成形機により、板材を連続的にプレス成形し、その板材に一部が繋がった状態の複数の管状部を得るプレス成形工程S1-1-2と、管状部の継ぎ目の部分を溶接又は接着剤により接着して管状体にする接合工程S1-1-3と、針管体2の刃面が形成される前の状態である管状体を、板材から分離する分離工程S1-1-4と、を含んでよい。
【0063】
また、図8に示すプレス成形工程S1-1-2では、例えば、プレス加工により管状部を形成すると共に、針管体2の外周面のうちハブ31に保持される位置に、ローレット加工を施してもよい。このようにすることで、ハブ31による針管体2の保持力を高めることができる。
【0064】
刃面形成工程S1-2では、管状体取得工程S1-1で取得した管状体のうち、針管体2の遠位端面41aとなる一端面に、刃面を形成する。刃面は、例えば、砥石による研削加工により形成されてよい。但し、刃面の形成方法は、この方法に限られない。刃面は、砥石による研削加工に代えて、ワイヤカット加工等により形成されてもよい。更に、刃面は、上述した管状体取得工程S1-1におけるプレス成形工程S1-1-2において形成されてもよい。
【0065】
固定工程S2では、針管体取得工程S1で取得された針管体2(図1等参照)を、ハブ31(図1等参照)に対して接着固定する。また、固定工程S2では、曲げ規制部材4としての補強管体21(図1等参照)を、ハブ31(図1等参照)に対して接着固定する。
【0066】
具体的に、固定工程S2では、針管体2を、ハブ31の挿通孔31a(図1等参照)に挿通し、ハブ31に対して位置決めする。その後、針管体2の針先11側から、曲げ規制部材4を外嵌めし、針管体2の外周面上に支持させる。この際、曲げ規制部材4は、近位側の一部が凹部71(図1等参照)内に位置し、遠位側の残りの部分が、ハブ31の凹部71の縁部71a(図1等参照)より遠位側に1mm以上延在するように、配置される。この位置決めは、例えば、針管体2の外周面のうち、曲げ規制部材4を支持する位置を、遠位側に向かって外径が漸減する外面テーパー部とすることで、容易に実現できる。つまり、環状の曲げ規制部材4の内面が針管体2の外面テーパー部の外面に密着する位置まで、曲げ規制部材4を針管体2に対して近位側に押し込むことで、曲げ規制部材4の針管体2に対する位置決めを、容易に行うことができる。
【0067】
固定工程S2には、その後、凹部71から挿通孔31a内に接着剤を注入し、接着剤を、ハブ31の挿通孔31aを区画する内周面と針管体2の外周面との間、及び、ハブ31の挿通孔31aを区画する内周面と曲げ規制部材4の外周面との間、に充填する。その状態で、接着剤を硬化させて接着体32(図1等参照)を形成することで、針管体2及び曲げ規制部材4をハブ31に対して接着固定する。このようにすることで、注射針1を製造することができる。
【0068】
但し、注射針1の製造方法は、図8に示す製造方法に限られず、別の製造方法により製造されてもよい。
【0069】
本発明に係る注射針は、上述した実施形態及び変形例に示す具体的な構成に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変形、変更、組み合わせが可能である。上述した実施形態では、保持体3として、所謂ペン型の注射器の先端部に接続可能なハブ31を備えるが、ハブ31の形状は、接続される医療機器の構成に応じて、適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は注射針に関する。
【符号の説明】
【0071】
1、101:注射針
2:針管体
2a:中空部
3:保持体
3a:保持体の遠位端
4、104:曲げ規制部材
4a:曲げ規制部材の遠位端
4b:曲げ規制部材の近位端
11:針管体の針先
12:針管体の近位端
21:補強管体(曲げ規制部材の一例)
31:ハブ
31a:挿通孔
31a1:凹空間
31a2:貫通孔
32:接着体
32a:接着体の遠位端
41:穿刺部
41a:針管体の遠位端面
42:挿通部
43:接続部
51:穿刺部の近位側部
52:穿刺部の遠位側部
61:接続筒部
61a:雌ねじ部
62:遠位壁部
63:遠位突出部
63a:遠位突出部の遠位端面
71:凹部
71a:縁部
71b:底部
72:環状凹部
104a:曲げ規制部材の遠位端
104b:曲げ規制部材の近位端
121:管体(曲げ規制部材の一例)
A:針管体の長手方向
A1:抜去方向
A2:挿入方向
B:針管体の周方向
C:針管体の径方向
G:空隙
L1:隆起高さ
L2:曲げ規制部材の、凹部の縁部から遠位側の長さ
L3:曲げ規制部材の、凹部の縁部から近位側の長さ
L4:曲げ規制部材の遠位端から近位側への空隙の距離
O:針管体の中心軸線
R1:曲げ規制部材の遠位端の内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8