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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114061
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】送達デバイスおよび送達方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/29 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
A61B17/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019443
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】松田 勇
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM32
4C160NN03
4C160NN09
4C160NN13
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で筒状体内にシート状物を収容可能であると共に、筒状体内に収容されているシート状物を筒状体の外部へ容易にリリース可能な、送達デバイス及び送達方法、を提供する。
【解決手段】本開示に係る送達デバイスは、生体内の目的部位にシート状物を送達可能な送達デバイスであって、筒状体と、前記シート状物が巻き付けられて保持されている状態で、前記筒状体内に挿入可能な棒状体と、前記筒状体内で、前記棒状体に対して相対的に移動可能であり、前記筒状体内で前記棒状体が保持する前記シート状物を押圧し、前記シート状物を前記筒状体の遠位端から押し出し可能な押し子と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内の目的部位にシート状物を送達可能な送達デバイスであって、
筒状体と、
前記シート状物が巻き付けられて保持されている状態で、前記筒状体内に挿入可能な棒状体と、
前記筒状体内で、前記棒状体に対して相対的に移動可能であり、前記筒状体内で前記棒状体が保持する前記シート状物を押圧し、前記シート状物を前記筒状体の遠位端から押し出し可能な押し子と、を備える、送達デバイス。
【請求項2】
前記棒状体は、
長尺状の棒状本体部と、
前記棒状本体部の外面に前記シート状物が巻き付けられている状態で、前記棒状本体部の前記外面との間で、前記シート状物を挟み込んで前記シート状物を保持可能な保持部と、を備える、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項3】
前記保持部は、前記棒状本体部の周方向の一部のみに位置しており、
前記押し子は、前記棒状本体部の前記周方向において、前記保持部とは異なる位置で、前記保持部に保持されている前記シート状物を押圧可能である、請求項2に記載の送達デバイス。
【請求項4】
前記押し子は、前記筒状体内で、前記棒状本体部の前記外面を覆う状態で、前記棒状本体部に対して移動可能な筒状押圧体であり、
前記筒状押圧体の周壁には、前記筒状押圧体の遠位端まで延在し、前記保持部を収容可能な開口部が形成されている、請求項3に記載の送達デバイス。
【請求項5】
前記保持部は、
前記棒状本体部に取り付けられている取付部と、
前記取付部に片持ち状に支持され、前記取付部から前記棒状本体部の前記外面に沿って前記棒状本体部の遠位側に向かって延在しており、前記棒状本体部の前記外面との間で、前記シート状物を挟み込み可能な挟持部と、を備える、請求項2から4のいずれか1つに記載の送達デバイス。
【請求項6】
前記取付部は、前記棒状本体部に対して移動可能に、前記棒状本体部に取り付けられており、
前記取付部が前記棒状本体部に対して移動することにより、前記棒状本体部の前記外面と前記挟持部との間での前記シート状物の挟持力を変動可能である、請求項5に記載の送達デバイス。
【請求項7】
前記取付部は、前記棒状本体部に対して、前記棒状本体部の周方向に移動可能に、前記棒状本体部に取り付けられており、
前記押し子は、前記筒状体内で、前記棒状本体部の前記外面に沿って、前記棒状本体部に対して、前記棒状本体部の前記周方向に移動可能であり、
前記保持部は、前記取付部に片持ち状に支持され、前記取付部から前記棒状本体部の前記外面に沿って前記棒状本体部の近位側に向かって延在しており、前記筒状体内で、前記押し子と係合することで操作可能な、係合操作部を備える、請求項6に記載の送達デバイス。
【請求項8】
生体内の目的部位にシート状物を送達する送達方法であって、
前記シート状物を棒状体に巻き付けて、前記棒状体に前記シート状物を保持させる、保持ステップと、
前記シート状物を保持している状態の棒状体を、筒状体の内部に挿入する、挿入ステップと、
前記筒状体内で、前記棒状体に対して相対的に押し子を移動させ、前記押し子が、前記筒状体内で前記棒状体が保持する前記シート状物を押圧し、前記シート状物を前記筒状体の遠位端から押し出す、押し出しステップと、を含む、送達方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は送達デバイスおよび送達方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、損傷した組織等の修復のために、種々の細胞シートを移植する試みが行われている。例えば、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患により損傷した心筋組織の修復のために、胎児心筋細胞、骨格筋芽細胞、間葉系幹細胞、心臓幹細胞、ES細胞、iPS細胞等の利用が試みられている。
【0003】
また、上述した心筋組織以外でも、例えば肝臓等、他の生体組織の表面に細胞シートを移植する試みも知られている。
【0004】
また、細胞シート以外にも、組織同士の癒着を防止するための医療用材料シートが、生体内の目的部位である術部に使用される場合がある。
【0005】
細胞シート、医療用材料シート等のシート状物を生体内の目的部位に送達する送達方法に関しては、人体に対する低侵襲な方法として、内視鏡下手術が広く用いられている。また、内視鏡下手術においてシート状物を目的部位に送達するための様々な送達デバイスが提案されている。特許文献1には、この種の送達デバイスが開示されている。特許文献1に記載されている送達デバイスとしてのシート挿入用デバイスは、前端部の壁に軸方向スリットが形成されている外筒管と、この外筒管内に管軸方向となる前後方向に進退可能、かつ回転可能に挿入されるシート押し出し用の押出部材と、を備えている。また、特許文献1に記載の押出部材は、巻取主管と、この巻取主管の先端部側に設けられ、巻取主管の表面に対して、巻取主管の表面と平行な位置と該位置より離れた非平行な位置とに接離可能に起伏するシート押え管と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-123456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の送達デバイスとしてのシート挿入用デバイスでは、巻取主管とシート押え管との間に、シート状物としてのフィルムを挟み、外筒管内で回動させることで、フィルムが巻き取られていき、フィルムが筒状体としての外筒管の軸方向スリットから、外筒管内に収容される。また、特許文献1に記載の送達デバイスでは、フィルムのリリース時において、鉗子を用いてフィルムを摘み、巻取主管とシート押え管との間から引き出す必要がある。
【0008】
特許文献1に記載の送達デバイスは、シート状物を筒状体内に収容するための構成が複雑であり、シート状物を筒状体内に収容するための構成の簡易化の観点で、依然として改善の余地がある。また、特許文献1に記載の送達デバイスは、筒状体からシート状物をリリースする際に鉗子を用いる。そのため、筒状体内に収容されているシート状物を筒状体の外部にリリースするための操作性の観点でも、依然として改善の余地がある。
【0009】
本開示は、簡易な構成で筒状体内にシート状物を収容可能であると共に、筒状体内に収容されているシート状物を筒状体の外部へ容易にリリース可能な、送達デバイス及び送達方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様としての送達デバイスは、
(1)
生体内の目的部位にシート状物を送達可能な送達デバイスであって、
筒状体と、
前記シート状物が巻き付けられて保持されている状態で、前記筒状体内に挿入可能な棒状体と、
前記筒状体内で、前記棒状体に対して相対的に移動可能であり、前記筒状体内で前記棒状体が保持する前記シート状物を押圧し、前記シート状物を前記筒状体の遠位端から押し出し可能な押し子と、を備える、送達デバイス、である。
【0011】
本開示の1つの実施形態としての送達デバイスは、
(2)
前記棒状体は、
長尺状の棒状本体部と、
前記棒状本体部の外面に前記シート状物が巻き付けられている状態で、前記棒状本体部の前記外面との間で、前記シート状物を挟み込んで前記シート状物を保持可能な保持部と、を備える、上記(1)に記載の送達デバイス、である。
【0012】
本開示の1つの実施形態としての送達デバイスは、
(3)
前記保持部は、前記棒状本体部の周方向の一部のみに位置しており、
前記押し子は、前記棒状本体部の前記周方向において、前記保持部とは異なる位置で、前記保持部に保持されている前記シート状物を押圧可能である、上記(2)に記載の送達デバイス、である。
【0013】
本開示の1つの実施形態としての送達デバイスは、
(4)
前記押し子は、前記筒状体内で、前記棒状本体部の前記外面を覆う状態で、前記棒状本体部に対して移動可能な筒状押圧体であり、
前記筒状押圧体の周壁には、前記筒状押圧体の遠位端まで延在し、前記保持部を収容可能な開口部が形成されている、上記(3)に記載の送達デバイス、である。
【0014】
本開示の1つの実施形態としての送達デバイスは、
(5)
前記保持部は、
前記棒状本体部に取り付けられている取付部と、
前記取付部に片持ち状に支持され、前記取付部から前記棒状本体部の前記外面に沿って前記棒状本体部の遠位側に向かって延在しており、前記棒状本体部の前記外面との間で、前記シート状物を挟み込み可能な挟持部と、を備える、上記(2)から(4)のいずれか1つに記載の送達デバイス、である。
【0015】
本開示の1つの実施形態としての送達デバイスは、
(6)
前記取付部は、前記棒状本体部に対して移動可能に、前記棒状本体部に取り付けられており、
前記取付部が前記棒状本体部に対して移動することにより、前記棒状本体部の前記外面と前記挟持部との間での前記シート状物の挟持力を変動可能である、上記(5)に記載の送達デバイス、である。
【0016】
本開示の1つの実施形態としての送達デバイスは、
(7)
前記取付部は、前記棒状本体部に対して、前記棒状本体部の周方向に移動可能に、前記棒状本体部に取り付けられており、
前記押し子は、前記筒状体内で、前記棒状本体部の前記外面に沿って、前記棒状本体部に対して、前記棒状本体部の前記周方向に移動可能であり、
前記保持部は、前記取付部に片持ち状に支持され、前記取付部から前記棒状本体部の前記外面に沿って前記棒状本体部の近位側に向かって延在しており、前記筒状体内で、前記押し子と係合することで操作可能な、係合操作部を備える、上記(6)に記載の送達デバイス、である。
【0017】
本開示の第2の態様としての送達方法は、
(8)
生体内の目的部位にシート状物を送達する送達方法であって、
前記シート状物を棒状体に巻き付けて、前記棒状体に前記シート状物を保持させる、保持ステップと、
前記シート状物を保持している状態の棒状体を、筒状体の内部に挿入する、挿入ステップと、
前記筒状体内で、前記棒状体に対して相対的に押し子を移動させ、前記押し子が、前記筒状体内で前記棒状体が保持する前記シート状物を押圧し、前記シート状物を前記筒状体の遠位端から押し出す、押し出しステップと、を含む、送達方法、である。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、簡易な構成で筒状体内にシート状物を収容可能であると共に、筒状体内に収容されているシート状物を筒状体の外部へ容易にリリース可能な、送達デバイス及び送達方法、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の一実施形態としての送達デバイスを示す斜視図である。
図2図1に示す棒状体にシート状物を巻き付ける前の状態を示す斜視図である。
図3】シート状物が図1に示す棒状体に巻き付けられて保持されている状態を示す斜視図である。
図4図3のI-I線の位置での断面図である。
図5】シート状物を保持している図3に示す棒状体を、筒状体の内部に挿入している様子を示す斜視図である。
図6図1に示す押し子が図1に示す筒状体内でシート状物を押圧する前の状態を示す図である。
図7図1に示す押し子が図1に示す筒状体内でシート状物を押圧し、シート状物を筒状体の遠位端から押し出した状態を示す図である。
図8図7のII-II線の位置での断面図である。
図9】棒状体の一変形例を示す図である。
図10A図9に示す棒状体にシート状物を巻き付けて保持させる保持ステップを説明する説明図であり、棒状体単体を示す図である。
図10B図9に示す棒状体にシート状物を巻き付けて保持させる保持ステップを説明する説明図であり、棒状体にシート状物を巻き付ける直前の状態を示す図である。
図10C図9に示す棒状体にシート状物を巻き付けて保持させる保持ステップを説明する説明図であり、棒状体にシート状物を巻き付けて保持させた状態を示す図である。
図10D図9に示す棒状体にシート状物を巻き付けて保持させる保持ステップを説明する説明図であり、取付部を図10Cに示す状態から移動させた状態を示す図である。
図11図9に示す棒状体の棒状本体部の中心軸線に沿う断面での、棒状体の断面図である。
図12】取付部の位置での、図9に示す棒状体の棒状本体部の中心軸線と直交する断面での、棒状体の断面図である。
図13図12と同じ断面図であり、取付部を図12の位置から移動させた状態を示す図である。
図14】筒状体内での押し子の操作例を示す図であり、押し子により係合操作部を操作する前の状態を示す図である。
図15】筒状体内での押し子の操作例を示す図であり、押し子により係合操作部を操作した後の状態を示す図である。
図16】筒状体内での押し子の操作例を示す図であり、押し子によりシート状物を筒状体から押し出した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示に係る送達デバイス及び送達方法について図面を参照して例示説明する。各図において同一の構成には同一の符号を付している。
【0021】
図1は、本開示に係る送達デバイスの一実施形態としての送達デバイス1の斜視図である。送達デバイス1は、生体内の目的部位にシート状物Xを送達可能に構成されている。具体的に、送達デバイス1は、腹腔鏡下手術等の内視鏡下手術において使用される。送達デバイス1は、例えばトロッカーのチューブを通じて、シート状物Xを腹腔等の体腔内に送達するために使用される。
【0022】
図1に示すように、送達デバイス1は、筒状体2と、棒状体3と、押し子4と、を備える。図1では、送達デバイス1に加えて、シート状物Xを図示している。以下、送達デバイス1において、筒状体2の中心軸線Oに沿う方向を「筒状体2の中心軸方向A」又は単に「中心軸方向A」と記載する。また、送達デバイス1において、筒状体2の中心軸線O周りの周方向を「筒状体2の周方向B」又は単に「周方向B」と記載する。更に、送達デバイス1において、筒状体2の中心軸線Oと直交する任意の断面における、中心軸線Oを中心とする仮想円の半径方向を「筒状体2の径方向C」又は単に「径方向C」と記載する。
【0023】
筒状体2は、中心軸方向Aに貫通する中空部2aを区画している。棒状体3は、シート状物Xが巻き付けられて保持されている状態で、筒状体2内に挿入可能に構成されている。押し子4は、筒状体2内で、棒状体3に対して中心軸方向Aに、相対的に移動可能である。押し子4は、筒状体2内で棒状体3が保持するシート状物Xを押圧し、シート状物Xを筒状体2の遠位端2bから押し出し可能に構成されている。
【0024】
図2図7を参照して、送達デバイス1を用いて実行可能な、生体内の目的部位にシート状物Xを送達する送達方法の一例について説明する。ここで示す送達方法は、保持ステップ、挿入ステップ、及び、押し出しステップを含む。
【0025】
図2図4は、シート状物Xを棒状体3に巻き付けて、棒状体3にシート状物Xを保持させる保持ステップを示す図である。図2は、棒状体3にシート状物Xを巻き付ける前の状態を示す斜視図である。詳細は後述するが、本実施形態の棒状体3は、棒状本体部31と保持部32とを備える。図2に示すように、シート状物Xは、棒状体3に巻き付けられる前の状態で、棒状本体部31と保持部32との間に挟まれて支持される。
【0026】
図3は、シート状物Xが、棒状体3に巻き付けられて保持されている状態を示す斜視図である。図4は、図3のI-I線の位置での断面図である。図3図4に示すように、本実施形態の棒状体3は、棒状本体部31の外面上に巻き付けられるシート状物Xを、棒状本体部31と保持部32との間で挟み込むことにより、シート状物Xを保持可能である。図4に示すように、本実施形態の棒状本体部31及び保持部32は、棒状本体部31の外面上に巻き付けられているシート状物Xのうち、棒状本体部31の径方向(棒状本体部31が筒状体2内に収容されている状態では径方向Cと略同じ方向)に二層以上に重なる重複部X1を、径方向で挟み込む。これにより、本実施形態の棒状体3は、シート状物Xが棒状体3に巻き付けられている状態で、シート状物Xを保持可能である。
【0027】
図5は、巻き付けられているシート状物Xを保持している状態の棒状体3(図3図4参照)を、筒状体2の内部に挿入する挿入ステップを示す図である。図5では、説明の便宜上、筒状体2の位置を破線により示している。図5に示すように、棒状体3は、巻き付けられているシート状物Xを保持している状態で、筒状体2の遠位端2bから中空部2a内に挿入される。これにより、シート状物Xを、棒状体3と共に、筒状体2内に容易に収容することができる。また、図5に示すように、押し子4は、筒状体2の近位端2cから中空部2a内に挿入される。但し、棒状体3及び押し子4の筒状体2への挿入方向は、上述の方向に限られない。つまり、棒状体3及び押し子4は、筒状体2の近位端2cから、棒状体3、押し子4の順で、中心軸方向Aの遠位側から近位側に向かって順次挿入されてもよい。また、棒状体3及び押し子4は、筒状体2の遠位端2bから、押し子4、棒状体3の順で、中心軸方向Aの近位側から遠位側に向かって順次挿入されてもよい。
【0028】
図6図8は、筒状体2内で、棒状体3に対して相対的に押し子4を移動させ、押し子4が、筒状体2内で棒状体3が保持するシート状物Xを押圧し、シート状物Xを筒状体2の遠位端2bから押し出す、押し出しステップを示す図である。図6は、押し子4が、筒状体2内でシート状物Xを押圧する前の状態を示している。図7は、押し子4が、筒状体2内でシート状物Xを押圧し、シート状物Xを筒状体2の遠位端2bから押し出した状態、すなわち、シート状物Xが送達デバイス1からリリースされた状態、を示している。図8は、図7のII-II線の位置での断面図である。図6図8では、説明の便宜上、筒状体2の位置を破線により示している。
【0029】
図6図7に示すように、押し子4を、筒状体2内で、棒状体3に対して、中心軸方向Aの遠位側に移動させると、押し子4は、棒状体3に保持されているシート状物Xに当接し、シート状物Xを遠位側に押し出すことができる。押し子4に押圧され、遠位側に移動するシート状物Xは、棒状体3による保持状態が解除され、筒状体2の遠位端2bから筒状体2の外部にリリースされる。詳細は後述するが、本実施形態の棒状体3では、棒状本体部31及び保持部32の間の、シート状物Xを保持する隙間G(図4図8参照)は、遠位側が開放されている。そのため、シート状物Xは、押し子4に押圧されることで、棒状本体部31及び保持部32の間の隙間Gから、遠位側に抜け出すことができる。これにより、シート状物Xの、棒状体3による保持状態を、解除することができる。
【0030】
また、詳細は後述するが、図1図5図8に示すように、本実施形態の押し子4は筒状押圧体40である。また、図8に示すように、押し子4としての筒状押圧体40の周壁には、筒状押圧体40の遠位端40b(図1参照)まで延在し、棒状体3の保持部32を収容可能な開口部40cが形成されている。そのため、押し子4は、筒状体2内で、棒状体3の保持部32を避けて、シート状物Xを遠位側に押圧することができる。
【0031】
以上のように、送達デバイス1によれば、棒状体3を用いる簡易な構成で、筒状体2内にシート状物Xを収容可能である。また、送達デバイス1によれば、押し子4を用いることで、筒状体2内に収容されているシート状物Xを筒状体2の外部へ容易にリリース可能である。
【0032】
シート状物Xを、筒状体2の遠位端2bから、筒状体2の外部の生体内の目的部位にリリースした後、送達デバイス1は、例えばトロッカーのチューブを通じて、生体外に抜去される。
【0033】
なお、送達デバイス1は、上述したように、内視鏡下手術において例えばトラッカーのチューブを通じて生体内に挿入される。その際に、筒状体2の近位端2cは生体外に露出する状態とされる。また、押し子4は、筒状体2の近位端2cから近位側に突出する状態とされる。そのため、医師等のユーザーは、一方の手で筒状体2の近位端部を把持し、他方の手で筒状体2の近位端2cから突出する押し子4を把持できる。これにより、押し子4を筒状体2に対して相対的に、中心軸方向Aに移動させる操作を、容易に行うことができる。つまり、生体内の目的部位における、シート状物Xのリリース操作を容易に実行することができる。
【0034】
以下、図1図8を参照して、本実施形態の送達デバイス1の更なる詳細について説明する。
【0035】
筒状体2は、近位端2cから遠位端2bまで貫通する中空部2aを区画している構成であれば、特に限定されない。本実施形態の筒状体2は、中心軸方向Aの位置によらず内径及び外径が一様な構成であるが、この構成に限られない。また、筒状体2の構成材料についても特に限定されないが、筒状体2は、例えば、金属材料により構成されてよい。筒状体2を構成する金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等が挙げられる。また、筒状体2は、例えば、樹脂材料により構成されてもよい。筒状体2を構成する樹脂材料としては、例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、熱可塑性ポリウレタン、ポリメチレンメタクリレート、ポリオキシエチレン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、アセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の射出成形で用いられる熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0036】
本実施形態の棒状体3は、長尺状の棒状本体部31と、保持部32と、を備えている。
【0037】
本実施形態の棒状本体部31は、中空部を内部に区画しない中実棒状のシャフト体であるが、中空部を内部に区画する中空棒状のシャフト体であってもよい。棒状本体部31は、その中心軸線が筒状体2の中心軸線Oに沿うように、筒状体2内に収容可能である。
【0038】
本実施形態の棒状本体部31の中心軸方向(棒状本体部31が筒状体2内に収容されている状態では中心軸方向Aと略同じ方向)と直交する断面の外形は、略円形状である。棒状本体部31の外径は、筒状体2の内径より小さい。
【0039】
保持部32は、棒状本体部31の周方向(棒状本体部31が筒状体2内に収容されている状態では周方向Bと略同じ方向)の一部のみに位置している。詳細は後述するが、これにより、押し子4は、棒状本体部31の周方向において、保持部32とは異なる位置で、保持部32に保持されているシート状物Xを、棒状本体部31の中心軸方向の遠位側に向かって押圧可能である(図6図8参照)。
【0040】
保持部32は、棒状本体部31の外面31aにシート状物Xが巻き付けられている状態で、棒状本体部31の外面31aとの間で、シート状物Xを挟み込んで、シート状物Xを保持可能に構成されている。図2に示すように、シート状物Xは、棒状体3に巻き付けられる前の展開状態で、その一部が棒状本体部31と保持部32との間に挟まれることで、棒状体3に支持される。次に、シート状物Xは、棒状本体部31の外面に沿って、周方向に巻き付けられる。図4に示すように、棒状本体部31及び保持部32は、棒状本体部31の外面31a上に棒状本体部31を巻き軸として巻き付けられているシート状物Xのうち、棒状本体部31の径方向に二層以上に重なる重複部X1を、径方向で挟み込むことで、シート状物Xを巻付き状態で保持することができる。図4では、シート状物Xの重複部X1として、シート状物Xが二層に重ねられている部位を示しているが、重複部X1は、二層の構成に限られない。シート状物Xは、棒状本体部31の外面上に2周以上巻き付けられていてもよい。したがって、重複部X1は、三層以上の構成であってもよい。
【0041】
より具体的に、本実施形態の保持部32は、棒状本体部31に取り付けられている取付部33と、この取付部33に片持ち状に支持されている挟持部34と、を備える。挟持部34は、取付部33から棒状本体部31の外面31aに沿って棒状本体部31の遠位側に向かって延在しており、棒状本体部31の外面31aとの間でシート状物Xを挟み込み可能に構成されている。
【0042】
本実施形態において、シート状物Xが挟み込まれる、棒状本体部31の外面31aと挟持部34との間の隙間Gは、遠位側が開放されている。そのため、シート状物Xは、押し子4に押圧されることで、棒状本体部31の外面31aと挟持部34との間の隙間Gから、遠位側に抜け出すことができる。
【0043】
本実施形態の挟持部34は、棒状本体部31の中心軸方向の遠位端部において、棒状本体部31の外面31aと径方向で対向するように、配置されている。より具体的に、本実施形態の挟持部34は、取付部33の位置から、棒状本体部31の遠位端部の位置まで、延在している。
【0044】
取付部33は、例えば、棒状本体部31の外面31aに、接着、溶着等により、取り付けられてよい。また、取付部33は、例えば、雄ねじ部が形成されているねじ本体部を備えるねじ部材により構成されてよい。かかる場合に、取付部33は、ねじ部材のねじ本体部の雄ねじ部が棒状本体部31に形成されている雌ねじ部に対して螺合することで、棒状本体部31に対して取り付けられる(図9等参照)。このように、取付部33の棒状本体部31への取り付け構成は、特に限定されない。
【0045】
挟持部34は、例えば、取付部33に片持ち状に支持されている、薄板状のバネ部材により構成されてよい。挟持部34を構成するバネ部材は、例えば、その近位端部が取付部33に支持され、その遠位端部が、棒状本体部31の径方向に弾性変形可能に構成されてよい。挟持部34を構成するバネ部材は、例えば、その近位端部に貫通孔を区画してよい。かかる場合に、挟持部34を構成するバネ部材の貫通孔には、取付部33を構成するねじ部材のねじ本体部が挿通されてよい。この状態で、取付部33を構成するねじ部材のねじ本体部が、棒状本体部31に対して取り付けられる(図9等参照)。このようにすることで、挟持部34を構成するバネ部材の近位端部は、取付部33を構成するねじ部材の頭部と、棒状本体部31の外面31aと、の間で挟み込まれる。つまり、挟持部34は、その近位端部が取付部33に片持ち状に支持され、その遠位端部が、棒状本体部31の径方向に弾性変形可能に構成される。
【0046】
但し、保持部32の取付部33及び挟持部34は、上記例示した具体的な構成に限られない。取付部33は、例えば、棒状本体部31に対して所定方向に移動可能に、棒状本体部31に取り付けられていてもよい(図9等参照)。この詳細は後述する。
【0047】
本実施形態の棒状体3において、中心軸方向と直交する断面の最大長さL1は、中心軸方向において、取付部33及び挟持部34が設けられている位置で、最大となる(図4参照)。そのため、棒状体3は、取付部33及び挟持部34が設けられている位置での、中心軸方向と直交する断面の最大長さL1が、筒状体2の内径より小さくなるように、構成されている。このようにすることで、棒状本体部31及び保持部32がシート状物Xを保持している状態で、棒状本体部31及び保持部32を、シート状物Xと共に、筒状体2内に遠位側又は近位側から挿入できる。つまり、棒状体3は、シート状物Xを保持している状態で、シート状物Xと共に、筒状体2内に収容可能となる。
【0048】
また、詳細は後述するが、本実施形態の押し子4は筒状押圧体40であり、筒状体2内で棒状本体部31に外嵌めされる。そのため、本実施形態の棒状本体部31の外径は、筒状体2の内径より小さく、かつ、押し子4としての筒状押圧体40の内径よりわずかに小さい。
【0049】
棒状本体部31の構成材料は特に限定されないが、棒状本体部31は、例えば、金属材料により構成されてよい。棒状本体部31を構成する金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等が挙げられる。また、棒状本体部31は、例えば、樹脂材料により構成されてもよい。棒状本体部31を構成する樹脂材料としては、例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、熱可塑性ポリウレタン、ポリメチレンメタクリレート、ポリオキシエチレン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、アセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の射出成形で用いられる熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0050】
保持部32の取付部33が、上述したねじ部材で構成されている場合に、このねじ部材の構成材料についても特に限定されない。ねじ部材は、例えば、金属製であっても樹脂製であってもよい。
【0051】
保持部32の挟持部34が、上述したバネ部材で構成されている場合に、このバネ部材の構成材料についても特に限定されない。バネ部材についても、例えば、金属製であっても樹脂製であってもよい。
【0052】
押し子4は、筒状体2内で、筒状体2の内面と、棒状体3の棒状本体部31の外面31aと、との間で、中心軸方向Aに移動可能である。これにより、押し子4は、その遠位端4aで、棒状本体部31の外面31a上で保持部32との間に挟み込まれて保持されているシート状物Xに当接し、シート状物Xを中心軸方向Aの遠位側に押圧することができる。
【0053】
本実施形態の押し子4は、筒状押圧体40である。筒状押圧体40は、筒状体2内に収容可能である。より具体的に、筒状押圧体40は、その中心軸線が筒状体2の中心軸線Oに沿って延在するように、筒状体2内に収容可能である。筒状押圧体40の外径は、筒状体2の内径より、わずかに小さい。そのため、本実施形態の筒状押圧体40は、その中心軸線が筒状体2の中心軸線Oと略一致するように、筒状体2内に収容可能である。
【0054】
また、本実施形態の押し子4としての筒状押圧体40は、中空部40a(図1等参照)を区画している。中空部40aは、筒状押圧体40の中心軸線に沿って延在し、押し子4の遠位端4aとしての筒状押圧体40の遠位端40bから、押し子4の近位端4bとしての筒状押圧体40の近位端まで、貫通している。筒状体2内において、棒状体3の棒状本体部31は、筒状押圧体40の中空部40aに収容可能である。また、押し子4としての筒状押圧体40は、筒状体2内で、棒状体3の棒状本体部31に対して、中心軸方向Aに相対的に移動可能である。つまり、本実施形態の押し子4としての筒状押圧体40は、筒状体2内で、棒状本体部31の外面31aを覆う状態で、棒状本体部31に対して中心軸方向Aに移動可能である。
【0055】
より具体的に、本実施形態の棒状本体部31は、その中心軸線が押し子4としての筒状押圧体40の中心軸線に沿って延在するように、筒状押圧体40内に収容可能である。本実施径形態の棒状本体部31の外径は、筒状押圧体40の内径より、わずかに小さい。そのため、本実施形態の棒状本体部31は、その中心軸線が筒状押圧体40の中心軸線と略一致するように、筒状押圧体40内に収容可能である。
【0056】
そのため、本実施形態の送達デバイス1では、棒状本体部31及び筒状押圧体40は、これらの中心軸線が筒状体2の中心軸線Oと略一致するように、筒状体2内に収容される。
【0057】
図6図7に示すように、押し子4としての筒状押圧体40を、棒状本体部31に対して中心軸方向Aの遠位側に移動させると、押し子4の遠位端4aとしての筒状押圧体40の遠位端40bが、棒状本体部31の外面31a上に支持されているシート状物Xと当接する。そして、押し子4を更に遠位側に押し込むことで、シート状物Xを、棒状本体部31の外面31aと挟持部34との間の隙間G(図4等参照)から、遠位側に押し出すことができる。
【0058】
換言すれば、図8に示すように、本実施形態の押し子4としての筒状押圧体40は、筒状体2内で、筒状体2の内面と、棒状本体部31の外面31aとの間に区画される環状空間5に位置し、この環状空間5を中心軸方向Aに移動可能である。上述したように、本実施形態の押し子4としての筒状押圧体40の内径は、棒状本体部31の外径よりわずかに大きい。そのため、筒状押圧体40を、筒状体2内で、筒状体2及び棒状本体部31に対して中心軸方向Aの遠位側に相対的に移動させる操作のみで、押し子4の遠位端4aとしての筒状押圧体40の遠位端40bを、棒状本体部31の外面31a上に支持されているシート状物Xに確実に当接させることができる。つまり、筒状体2内で、棒状本体部31及び筒状押圧体40の径方向Cの位置合わせが不要となり、送達デバイス1の操作性を向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態の筒状押圧体40の周壁には、筒状押圧体40の遠位端40bまで延在し、保持部32の取付部33及び挟持部34を収容可能な開口部40cが形成されている。そのため、筒状押圧体40は、筒状体2内で、棒状体3の保持部32と干渉することなく、シート状物Xを中心軸方向Aの遠位側に押し出すことができる。
【0060】
図7に示すように、筒状押圧体40の中心軸方向(筒状押圧体40が筒状体2内に収容されている状態では中心軸方向Aと略同じ方向)における開口部40cの長さL2は、棒状本体部31の中心軸方向(筒状押圧体40が筒状体2内に収容されている状態では中心軸方向Aと略同じ方向)における保持部32の長さL3、より長い。このようにすることで、押し子4としての筒状押圧体40は、保持部32と干渉することなく、シート状物Xを保持部32より遠位側まで押圧することができる。
【0061】
本実施形態の開口部40cは、筒状押圧体40の遠位端40bから筒状押圧体40の中心軸方向の近位側に向かって延在する、長尺状のスリット形状を有している。但し、開口部40cの形状は、この形状に限られない。開口部40cは、筒状体2内で、筒状押圧体40がシート状物Xを中心軸方向Aの遠位側に押し出す際に、筒状押圧体40が保持部32と干渉しないように、保持部32を収容できる形状であれば、その形状は特に限定されない。
【0062】
また、本実施形態の押し子4は筒状押圧体40であるが、押し子4の構成は、筒状押圧体40に限られない。押し子4は、筒状体2内で、棒状体3に対して相対的に移動可能であり、筒状体2内で棒状体3が保持するシート状物Xを、中心軸方向Aの遠位側に押圧し、シート状物Xを筒状体2の遠位端から押し出し可能な構成であれば、特に限定されない。したがって、押し子4は、例えば、筒状でなくてもよく、筒状体2の内面と棒状本体部31の外面31aとの間に挿通可能な、棒状又は帯状の押圧体であってもよい。但し、押し子4は、本実施形態のように筒状押圧体40であることが好ましい。このようにすることで、筒状体2内で、押し子4としての筒状押圧体40に棒状体3を内挿する操作のみで、棒状体3及び押し子4の周方向B及び径方向Cの相対的な位置決めを容易に行うことができ、送達デバイス1の操作性を向上させることができる。
【0063】
図9図13は、上述した棒状体3の一変形例としての棒状体103を示す図である。図9は、棒状体103の斜視図である。図10A図10Dは、棒状体103にシート状物Xを巻き付けて保持させる保持ステップを説明する説明図である。図11は、棒状体103の棒状本体部131の中心軸線O1を含み、中心軸線O1に沿う、棒状体103の断面を示す断面図である。図12図13は、取付部133の位置での、棒状体103の棒状本体部131の中心軸線O1と直交する、棒状体103の断面を示す断面図である。
【0064】
図9に示すように、棒状体103は、棒状本体部131と、保持部132と、を備える。保持部132は、取付部133及び挟持部34を備える。図9に示す棒状体103は、上述した棒状体3と比較して、棒状本体部131の構成、及び、保持部132の取付部133の構成、が相違する。
【0065】
図9に示すように、棒状本体部131は、中空部135aを区画する外棒体135と、中空部135aに挿入されている内棒体136と、を備える。中空部135aは、内棒体136の外径よりわずかに大きい径を有する円柱状の空間である。中空部135aは、その中心軸線が外棒体135の中心軸線と略一致する位置に形成されている。したがって、中空部135aに内棒体136が挿入されている状態で、外棒体135の中心軸線と、内棒体136の中心軸線は、略一致する。棒状本体部131の中心軸線O1とは、外棒体135及び内棒体136の中心軸線である。内棒体136は、中空部135aにおいて、中心軸線O1周りの周方向D(棒状体103が筒状体2内に収容されている状態では周方向Bと略同じ方向)に自転可能に構成されている。内棒体136は、外棒体135の近位端よりも近位側に突出する把持部136aを備えている。医師等のユーザーは、把持部136aを把持し操作することで、外棒体135に対して内棒体136を周方向に回動させることができる。
【0066】
外棒体135には、中空部135aと外棒体135の外部とを連通する開口部135bが形成されている。図12図13に示すように、開口部135bは、棒状本体部131の中心軸線O1と直交する断面視で、略扇状に形状を有している。より具体的に、開口部135bは、中空部135aから外棒体135の径方向の外側に向かって、周方向の幅が漸増するように構成されている。したがって、図9に示すように、外棒体135の外面135cには、開口部135bの一端である、周方向に延在する長孔135b1が形成されている。
【0067】
また、図9図11に示すように、取付部133は、ねじ部材137により構成されている。ねじ部材137は、雄ねじ部が形成されている棒状のねじ本体部137aと、このねじ本体部137aの一端に設けられている頭部137bと、を備える。また、図11に示すように、中空部135aに位置する内棒体136には、内面に雌ねじ部が形成されている凹部136bが形成されている。図9図11図13に示すように、ねじ部材137のねじ本体部137aは、外棒体135の開口部135bを通じて、中空部135aに位置する内棒体136に接続される。具体的に、ねじ部材137は、ねじ本体部137aの雄ねじ部が、内棒体136の凹部136b(図11参照)の雌ねじ部と螺合することで、内棒体136に接続される。そのため、図12図13に示すように、中空部135aにおいて内棒体136を周方向Dに回動させることで、ねじ部材137は、開口部135b内で、内棒体136と共に周方向Dに回動することができる。
【0068】
図9図13に示す挟持部34は、取付部133に片持ち状に支持されている、薄板状のバネ部材138により構成されている。挟持部34を構成するバネ部材138は、その近位端部が取付部133に支持され、その遠位端部が、棒状本体部131の径方向に弾性変形可能に構成されている。バネ部材138は、その近位端部に貫通孔138a(図11図13参照)を区画している。バネ部材138の貫通孔138aには、ねじ部材137のねじ本体部137aが挿通されている。この状態で、ねじ部材137のねじ本体部137aが、内棒体136に接続されている。このようにすることで、図11図13に示すように、バネ部材138の近位端部は、ねじ部材137の頭部137bと、棒状本体部131の外面131aとしての外棒体135の外面135cと、の間で挟まれた状態となる。
【0069】
また、図9図13に示す外棒体135の、中心軸線O1と直交する断面の外形は、楕円状である。つまり、図12図13に示すように、外棒体135に対して内棒体136を周方向Dに回動させることで、ねじ部材137の頭部137bと、棒状本体部131の外面131aとしての外棒体135の外面135cと、の間の隙間G1を変動させることができる。すなわち、外棒体135に対して内棒体136を周方向Dに回動させることで、ねじ部材137の頭部137bを、外棒体135の外面135cに近づける位置(図13参照)と、外棒体135の外面135cから遠ざける位置(図12参照)と、に変位できる。そのため、取付部133を構成するねじ部材137が棒状本体部131に対して移動することにより、棒状本体部131の外面131aとしての外棒体135の外面135cと、挟持部34を構成するバネ部材138と、の間でのシート状物Xの挟持力を変動することができる。このようにすることで、棒状本体部131の外面131aと挟持部34との間で、シート状物Xを強く挟持する状態(図13参照)と、シート状物Xを弱く挟持する又は挟持しない状態(図12参照)と、で状態変化させることができる。
【0070】
例えば、棒状体103を筒状体2(図1等参照)内に挿入する際は、外棒体135の外面135cとバネ部材138との間で、シート状物Xを強く挟持する状態(図13参照)とする。具体的には、図10A図10Cに示すように、外棒体135の外面135cとバネ部材138との間で、シート状物Xを弱く挟持する又は挟持しない状態(図12参照)で、シート状物Xを、外棒体135の外面135cに巻き付ける。その後、図10Dに示すように、ねじ部材137を移動させ、外棒体135の外面135cとバネ部材138との間で、シート状物Xを強く挟持する状態(図13参照)とする。これにより、棒状体103を筒状体2(図1等参照)内に挿入する際は、シート状物Xが外棒体135の外面135cとバネ部材138との間から意図せずに抜け落ちることを抑制できる。
【0071】
逆に、筒状体2内で、押し子4(図1等参照)によりシート状物Xを押圧して中心軸方向A(図1等参照)の遠位側に移動させる際は、外棒体135の外面135cとバネ部材138との間で、シート状物Xを弱く挟持する又は挟持しない状態(図12参照)とする。これにより、押し子4による押圧によって、シート状物Xを中心軸方向A(図1等参照)の遠位側に移動させ易くなる。つまり、シート状物Xのリリース操作が容易になる。
【0072】
外棒体135の外面135cとバネ部材138との間で、シート状物Xを強く挟持する状態(図13参照)から、シート状物Xを弱く挟持する又は挟持しない状態(図12参照)への状態変化は、例えば、筒状体2内で、押し子4を操作することにより実行されてよい。図14図16は、筒状体2内で、押し子4を操作することにより、上記状態変化を実行する一例を示している。
【0073】
図14図16に示すように、取付部133は、棒状本体部131に対して、棒状本体部131の周方向Dに移動可能に、棒状本体部131に取り付けられている。この取付構成は、上述した通りである(図9図13参照)。また、図14図16に示す押し子4は、外棒体135に緩く外嵌めされており、筒状体2内で、棒状本体部131の外面131aとしての外棒体135の外面135cに沿って、棒状本体部131に対して、棒状本体部131の周方向Dに移動可能に構成されている。
【0074】
また、図14図16に示すように、保持部132は、上述した取付部133及び挟持部34に加えて、係合操作部139を備えている。係合操作部139は、取付部133に片持ち状に支持されている。係合操作部139は、取付部133から棒状本体部131の外面131aとしての外棒体135の外面135cに沿って、棒状本体部131の近位側に向かって延在している。そのため、係合操作部139は、筒状体2内で、押し子4がシート状物Xを押圧する前に、押し子4としての筒状押圧体40の開口部40cに入り込む(図14参照)。その状態で、押し子4としての筒状押圧体40を周方向Dに回動させることで、押し子4により、係合操作部139を、周方向Dに押圧できる。つまり、係合操作部139は、押し子4と係合することで操作可能に構成されている。これにより、押し子4により、係合操作部139を介して、取付部133及び挟持部34を、周方向Dに押圧でき、取付部133及び挟持部34を周方向Dに移動させることができる(図14図15参照)。図14図16に示す係合操作部139は、挟持部34を構成するバネ部材138を、取付部133を構成するねじ部材137より近位側に延設させることで構成されている。そのため、外棒体135の外面135cとバネ部材138との間で、シート状物Xを強く挟持する状態(図13参照)から、シート状物Xを弱く挟持する又は挟持しない状態(図12参照)への状態変化を、筒状体2内で押し子4と係合操作部139とを係合させることで、実行することができる。その後、押し子4によりシート状物Xを押圧し、シート状物Xを筒状体2の遠位端2bから押し出す(図15図16参照)。
【0075】
図9図16では、取付部133を構成するねじ部材137を、内棒体136を回動させることで、周方向Dに回動させているが、取付部133が周方向Dに回動可能な回動機構は、特に限定されない。また、図9図16では、外棒体135の、中心軸線O1と直交する断面外形が楕円形状であるが、この構成に限られない。外棒体135の、中心軸線O1と直交する断面外形は、円形状であってもよい。かかる場合に、内棒体136が挿入される中空部135aの位置を、中心軸線O1から離れた位置に設け、ねじ部材137の回動半径を、外棒体135の半径より小さくすればよい。
【0076】
また、図9図16では、取付部133が、棒状本体部131に対して周方向Dに移動することで、シート状物Xの挟持力を変動可能な例を示しているが、この構成に限られない。取付部133の移動方向は、シート状物Xの挟持力を変動可能であれば別の方向であってもよい。取付部133の移動方向は、例えば、径方向であってもよい。但し、取付部133が棒状本体部131に対して周方向Dに移動する構成とすれば、上述したように、押し子4を利用することにより、筒状体2内で、取付部133を容易に移動させることができる。
【0077】
最後に、本開示に係る送達デバイスにより、生体内の目的部位に送達されるシート状物Xについて説明する。
【0078】
シート状物Xとは、物理的強度が低く、デバイスからの剥離などによって、破れ、破損、変形などが生じ得るシート状の物体をいう。かかるシート状物Xとしては、とくに限定されないが、シート状構造物、例えば、細胞シートなどの、生体由来材料からなる平膜状の膜組織や、プラスチック、紙、織布、不織布、金属、高分子、脂質といった種々の材質のシート等が含まれる。
【0079】
本開示において「細胞シート」とは、細胞が互いに連結してシート状になったものをいう。細胞同士は、直接(接着分子などの細胞要素を介するものを含む)および/または介在物質を介して、互いに連結していてもよい。
【0080】
また、シート状物Xとしては、例えば、組織同士の癒着を防止するために、生体内の目的部位である術部に使用される癒着防止シート、組織の欠損部等を補強するために用いる組織補強シート、等の医療用材料シートが挙げられる。
【0081】
本開示に係る送達デバイス及び送達方法は、上述した実施形態及び変形例示す具体的な構成及び工程に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変形、変更、組み合わせが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示は送達デバイス及び送達方法に関する。
【符号の説明】
【0083】
1:送達デバイス
2:筒状体
2a:中空部
2b:遠位端
2c:近位端
3、103:棒状体
4:押し子
4a:押し子の遠位端
4b:押し子の近位端
5:環状空間
31、131:棒状本体部
31a、131a:棒状本体部の外面
32、132:保持部
33、133:取付部
34:挟持部
40:筒状押圧体(押し子の一例)
40a:中空部
40b:遠位端(押し子の遠位端の一例)
40c:開口部
135:外棒体
135a:中空部
135b:開口部
135b1:長孔
135c:外棒体の外面(棒状本体部の外面の一例)
136:内棒体
136a:把持部
136b:凹部
137:ねじ部材
137a:ねじ本体部
137b:頭部
138:バネ部材
138a:貫通孔
139:係合操作部
A:筒状体の中心軸方向
B:筒状体の周方向
C:筒状体の径方向
D:棒状本体部の周方向
G:隙間
G1:隙間
L1:棒状体の断面の最大長さ
L2:筒状押圧体の開口部の長さ
L3:保持部の長さ
O:筒状体の中心軸線
O1:棒状本体部の中心軸線
X:シート状物
X1:シート状物の重複部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14
図15
図16