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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114071
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】吸着構造及び水平器
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/28 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G01C9/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019463
(22)【出願日】2023-02-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.刊行物による公開 (1)発行者名 株式会社TJMデザイン (2)刊行物名 株式会社TJMデザイン カタログ『タジマ2023ホットニュース1-3月号』、第3-4頁 (3)発行年月日 令和4年10月3日 2.刊行物による公開 (1)発行者名 株式会社TJMデザイン (2)刊行物名 株式会社TJMデザイン カタログ『TAJIMA総合カタログ2023』、第202頁 (3)発行年月日 令和5年1月10日 3.電気通信回線を通じて発表 (1)掲載年月日 令和5年1月6日 (2)掲載アドレス https://youtu.be/fOIE6x3G_mY (3)公開者名 株式会社TJMデザイン 4.電気通信回線を通じて発表 (1)掲載年月日 令和5年1月5日 (2)掲載アドレス https://amzn.asia/d/j7OJsph (3)公開者名 株式会社TJMデザイン 5.電気通信回線を通じて発表 (1)掲載年月日 令和5年1月5日 (2)掲載アドレス https://amzn.asia/d/aYy779d (3)公開者名 株式会社TJMデザイン
(71)【出願人】
【識別番号】000156307
【氏名又は名称】株式会社TJMデザイン
(71)【出願人】
【識別番号】500026485
【氏名又は名称】株式会社ミロク
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 章夫
(72)【発明者】
【氏名】銀杏田 秀樹
(57)【要約】
【課題】基体の大きさと永久磁石の大きさとの間の依存関係をなくすことで、設計の自由度を確保し、永久磁石の部品コストの上昇を抑える。
【解決手段】水平器11は、測定対象物に当てる少なくとも二つの設置面52(基準面52A、補助面52B)を有する基体51を備え、気泡Bを封入した気泡管31(31C、31L、31R)を視認可能に保持する。気泡管31は、設置面52と角度を合わせて保持され、設置面52が測定対象物の被設置面に設置されたとき、気泡Bの位置によって測定対象物の水平度を示す。基体51には永久磁石が内蔵され、永久磁石にはヨーク72が面接触状態で配置されている。ヨーク72は、設置面52のうちの少なくとも二面(基準面52A、補助面52B)に端部72Eを配置している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着対象物に当てる少なくとも二つの設置面を有する基体と、
前記基体に内蔵された磁石と、
前記磁石に面接触した状態で配置され、前記設置面のうちの少なくとも二面に端部を配置するヨークと、
を備える吸着構造。
【請求項2】
前記吸着構造を設けた水平器。
【請求項3】
気泡を封入した気泡管を備え、
前記基体は、前記設置面と角度を合わせて前記気泡管を視認可能に保持する、
請求項2に記載の水平器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸着構造及び水平器に関する。
【背景技術】
【0002】
水平器は、測定対象物に当てる基準面(設置面)を有する基体を設け、基体に、例えば気泡を封入した気泡管を外部から視認可能なように保持させた測定器である。基体と気泡管とは、正しく位置出しされた面に基準面を当てたとき、気泡管の中央に気泡が位置づけられ、傾斜角度0度を示すような関係性を持たされている。
【0003】
特許文献1は、気泡管を用いた水平器(特許文献1では「水準器」)を開示している。この水平器は、「中空方形の基体1を有し、この基体1内には液体及び気泡が封入された気泡管2が設けられ、この気泡管2は前記基体1の内部に設けられた支持体3により固定されている」水平器である(特許文献1の段落[0009][0020]参照)。
【0004】
特許文献1に開示された水平器の基体(1)は、六面のすべてを基準面としており、しかも基準面のうちの底面部(6)、正面部(9)及び背面部(10)の内部三面に面するように磁石(4)を内蔵している。この点ついて特許文献1は、磁石(4)は所定の幅及び厚さを有し、基体底面部(6)、正面部(9)及び背面部(10)に「当接接着せしめられている」、と述べている(特許文献1の段落[0021][0022]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-175966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された水平器によれば、底面部、正面部及び背面部を永久の磁力によって測定対象物に吸着させることが可能である。特許文献1は、「板状磁石を用いた従来の水準器と比し、利便性が格段に向上した水準器となる」と主張している(特許文献1の段落[0033]参照)。
【0007】
その一方で、特許文献1では、磁石は底面部、正面部及び背面部の内面に「当接接着」されている、と述べられている(特許文献1の段落[0022]参照)。当接接着という用語の意味内容は必ずしも明確ではないが、基体の上記三面の内面に磁石が当たって接触し、その位置で接着されていることであろうと推定される。とするならば、「所定の幅及び厚さ」を有するとされている磁石は、基体の底面部、正面部及び背面部の内部のいずれにも接触し得る幅寸法を有していなければならない。特許文献1の図1図5を参照すると、ここでいう磁石の「幅」は、基体内部の奥行き寸法、つまり正面部と背面部との間の内寸であり、「厚さ」は、磁石の高さ寸法を意味するものと推定される。
【0008】
このような構造上、磁石の幅は、基体内部の奥行き寸法に合致させなければならず、これが設計上の制約となり、設計の自由度が損なれてしまう。また基体内部の奥行き寸法が大きくなればなるほど磁石の幅寸法を大きくしなければならず、部品コストの上昇を招いてしまう。改善が求められる。
【0009】
本開示の課題は、基体の大きさと磁石の大きさとの間の依存関係をなくすことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
吸着構造の一態様は、吸着対象物に当てる少なくとも二つの設置面を有する基体と、前記基体に内蔵された磁石と、前記磁石に面接触した状態で配置され、前記設置面のうちの少なくとも二面に端部を配置するヨークと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
基体の大きさと磁石の大きさとの間の依存関係をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態として、斜め上方から見た水平器の斜視図。
図2】斜め下方から見た水平器の斜視図。
図3】水平器の正面図。
図4】水平器の背面図。
図5】水平器の平面図。
図6】水平器の底面図。
図7】拡大して示す図3中のA-A線断面図。
図8】内部構造を示す正面側から見た水平器の斜視図(スケール取り付け前)。
図9】内部構造を示す背面側から見た水平器の斜視図。
図10】ヨークの別の実施の形態として、(A)(B)はそれぞれ平面側と側面側とから示す第1の別の形態の模式図、(C)(D)はそれぞれ平面側と側面側とから示す第2の別の形態の模式図、(E)(F)はそれぞれ平面側と側面側とから示す第3の別の形態の模式図、(G)(H)はそれぞれ平面側と側面側とから示す第4の別の形態の模式図。
図11】ヨークのさらに別の実施の形態として、(A)(B)はそれぞれ平面側と側面側とから示す第5の別の形態の模式図、(C)(D)はそれぞれ平面側と側面側とから示す第6の別の形態の模式図、(E)(F)はそれぞれ平面側と側面側とから示す第7の別の形態の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
水平器の実施の形態を図面に基づいて説明する。説明は、つぎの項目順に行なう。
1.構成
(1)概要
(2)吸着構造
2.作用効果
(1)水平器の設置態様
(2)単一の永久磁石
(3)ヨークの意義(その一)
(4)ヨークの意義(その二)
3.ヨークの別の実施の形態
(1)第1の別の実施の形態
(2)第2の別の実施の形態
(3)第3の別の実施の形態
(4)第4の別の実施の形態
(5)第5の別の実施の形態
(6)第6の別の実施の形態
(7)第7の別の実施の形態
(8)まとめ
4.変形例
【0014】
1.構成
(1)概要
図1ないし図9に示すように、水平器11は、気泡Bを封入した三つの気泡管31を、横長形状の基体51に保持している。基体51は、底面51Bと背面51Rとに設置面52を有している。
【0015】
気泡管31は、両端が閉じられた透光性を有する円筒状の透明管32の内部に、気泡Bを生ずるように液体33、例えばアルコール、エーテルなどを封入している。透明管32には、気泡Bの位置する中央位置から等距離離れた両側に標線34が設けられている。これらの標線34は、気泡Bの位置を視認させるための指標であり、透明管32の内周面又は外周面の周面に沿い、例えば二本から三本ずつ描かれている。左右の標線34の間に位置する気泡Bの位置を目視することで、観察者は、水平面に対する傾斜具合を確認することができる。
【0016】
基体51は、底面51Bを被設置面に設置した状態で見ると、左右方向に長く、左右部分が背面51R側に向けてテーパ状に傾斜した形状を有している。このような基体51の外形形状は、フレーム53によって形作られており、フレーム53の中央部分には、三つの気泡管31を保持する保持体54が嵌め込まれて固定されている。
【0017】
保持体54は、テーパ状に傾斜したフレーム53の両端近傍まで延びる左右方向に長い矩形形状を有しており、水平方向に並べられた真円形状をした三つの開口部55を備えている。これらの開口部55には、それぞれ三つの気泡管31が取り付けられている。
【0018】
図3に示すように、水平器11を正面から見たとき、中央部に設けられた開口部55には、気泡管31が水平に取り付けられている。左側に設けられた開口部55には、気泡管31が垂直に取り付けられている。右側に設けられた開口部55には、水平面に対して時計回りに45度回転した角度に気泡管31が取り付けられている。したがって三つの気泡管31は、すべて水平器11の正面側から視認可能である。説明の便宜上、気泡管31のうち、中央部に位置するものを気泡管31C、左側に位置するものを気泡管31L、右側に位置するものを気泡管31Rと呼ぶ。
【0019】
図7に示すように、保持体54は、基体51の正面51F側に配置される前面部54aと、背面51R側に配置される背面部54bとからなる分割構造を有している。前面部54aと背面部54bとが垂直面上で接合されることで、三つの気泡管31(31C、L、R)は、それぞれ所期の位置に取り付けられる。また接合された前面部54aと背面部54bとの間には、後述する磁石としての永久磁石71及びヨーク72を収納するための収納空間56が形成される。
【0020】
図1図3図5図8図9に示すように、中央部に位置する気泡管31Cの真上には、基体51の天面51Tから中央部分の開口部55にまで貫通する観察孔57が設けられている。観察孔57は、フレーム53及び保持体54に設けられた長孔によって形成されている。観察孔57の配置位置は、前述したとおり、中央部に位置する気泡管31Cの真上の部分であり、この気泡管31Cとほぼ同じ長さで設けられている。そこで基体51の天面51Tの側から観察孔57を覗き込むことによって、中央部に位置する気泡管31Cの状態を観察することが可能になる。
【0021】
図2ないし図4図6図7図9に示すように、基体51の底面51Bと背面51Rとは、図示しない測定対象物(吸着対象物)に当てる設置面52になっている。これらの設置面52のうち、基体51の底面51Bに位置する面は基準面52A、背面51Rに位置する面は補助面52Bである。水平器11の使用時、水平器11は、基体51の底面51Bを測定対象物の上に設置して使用することを基本としているため、底面51Bに位置する設置面52を基準面52Aとしている。基準面52Aには、垂直断面が逆V字形状になったV字溝58が設けられている。V字溝58は、基体51の底面51Bの全体にわたって設けられており、左右両端に抜けている。
【0022】
基体51は、設置面52(基準面52A、補助面52B)と角度を合わせて三つの気泡管31を保持している。つまり水平に維持された被設置面に底面51Bを置いて水平器11を設置したとき、中央部の気泡管31Cは水平に、左側の気泡管31Lは鉛直に、そして右側の気泡管31Rは、水平面に対して時計方向に45度回転した角度にそれぞれ配置されるように、基体51は三つの気泡管31を保持している。
【0023】
したがって水平器11を設置する被設置面が完全な水平面であるならば、被設置面に底面51Bを置いて水平器11を設置したとき、中央の気泡管31Cは、両側の標線34の真ん中に気泡Bを位置づけ、被設置面が水平であることを示すことになる。
【0024】
図1図3図5図7図9に示すように、基体51の天面51Tには、スケール59が設けられている。スケール59は、フレーム53とは別部材であり、フレーム53の天面51Tに設けられた凹部60(図8参照)に嵌め込まれて固定されている。
【0025】
(2)吸着構造
本実施の形態の水平器11は、永久磁石71とヨーク72とを含む吸着構造73を備えている。吸着構造73は、測定対象物である吸着対象物に当てる二つの設置面52を有する基体51と、基体51に内蔵された磁石としての永久磁石71と、永久磁石71に面接触した状態で配置され、設置面52のうちの二面に端部72Eを配置するヨーク72と、によって構成された構造物である。
【0026】
図2図6図7ないし図9に示すように、基準面52Aには、V字溝58を挟んでヨーク72が二条設けられ、補助面52Bには、ヨーク72が一条設けられている。基準面52A及び補助面52Bに出現して外部に露出している部分は、ヨーク72の端部72Eである。
【0027】
図7ないし図9に示すように、永久磁石71とヨーク72とは、保持体54を構成する前面部54aと背面部54bとの間に設けられた収納空間56に遊びなく収納され、位置決めされた状態で保持されている。
【0028】
吸着構造73を構成する永久磁石71は、前後方向の奥行きよりも高さ寸法の方が大きい矩形形状を有している。永久磁石71は、V字溝58の裏側に位置するフレーム53内の底部と保持体54との間に上下面を挟まれ、基体51内で、基準面52Aに沿って配置されている。このとき収納空間56では、永久磁石71の正面側と背面側とに隙間が生じており、この隙間にヨーク72を遊びなく配置している。このため永久磁石71の正面と背面とは接触面74となり、ヨーク72を面接触させる。
【0029】
ヨーク72は二枚設けられ、永久磁石71の正面と背面とに設けられた二面の接触面74(74F、74R)にそれぞれ接触している。本実施の形態では、二枚のヨーク72のうち、永久磁石71の背面側の接触面74Rに面接触している方を第1のヨーク72a、正面側の接触面74Fに接触している方を第2のヨーク72bと呼ぶ。
【0030】
第1のヨーク72aは、例えば低炭素鋼からなる平板状の部材を断面L字状に屈曲させた形状を有しており、短辺側の片を外側に向けて上方に配置し、長辺側の片を永久磁石71の背面側の接触面74Rに接触させている。これによって長辺側の端部72Eは基準面52Aに配置され、短辺側の端部72Eは補助面52Bに配置されている。このとき端部72Eは、設置面52である基準面52A及び補助面52Bと同一面にまでは達しない位置に配置されている。
【0031】
第2のヨーク72bは、例えば低炭素鋼からなる平板状の部材であり、一面を永久磁石71の接触面74Fに面接触させ、端部72Eを基準面52Aに配置している。端部72Eは、設置面52である基準面52Aと同一面にまでは達しない位置に配置されている。
【0032】
2.作用効果
(1)水平器の設置態様
水平器11は、水平となることを意図して設置された測定対象物(図示せず)の水平具合を判定するために使用される。
【0033】
測定対象物の水平具合を判定する際の水平器11の典型的な使用態様は、測定対象物の被設置面に基準面52Aを当てて設置する態様である。このとき測定対象物が正しく水平に設置されていれば、中央の気泡管31Cにおいて、両側の標線34の真ん中に気泡Bが位置づけられる。両側の標線34の真ん中に気泡Bが位置づけられなければ、測定対象物は水平に設置されておらず、左右いずれかに傾斜していることになる。左右いずれに傾斜しているのかは、気泡Bのずれた方向によって判別することができる。
【0034】
水平器11では、永久磁石71の磁力によって、基準面52Aに配置されているヨーク72の端部72Eから磁束が発生している。このため測定対象物が金属製、正確にいうと永久磁石71がくっつく材料を用いたものであれば、基準面52Aを測定対象物に吸着させることができる。これによって水平器11の設置状態が安定し、作業効率の向上などの効果が得られる。
【0035】
ところが実際の測定時には、測定対象物の被設置面に対して基準面52Aを設置しにくい状況も起こり得る。例えばエアコンの取付板を測定対象物とするとき、取付板に設けられた水平方向に並ぶ複数の突起などに基準面52Aを引っ掛けることはできても、基準面52Aに生ずる永久磁石71による磁力を取付板に及ぼすことはできない。換言すると、垂直に配置されたエアコンの取付板には、基準面52Aを磁気的に吸着させることができない。
【0036】
本実施の形態の水平器11は、このような事態に備え、基体51の背面51R側に配置した第1のヨーク72aの端部72Eからも、永久磁石71の磁力による磁束を発生せている。これによって基体51の背面51Rに位置する補助面52Bをエアコンの取付板に吸着させ、水平器11の設置状態の安定化を図ることができる。
【0037】
さらに別の設置例として、水平に配置された測定対象物の被設置面が、基体51の背面51Rと同程度の大きさを有している場合には、基体51の背面51Rに位置する補助面52Bを被設置面に当てて水平器11を設置することができる。このときには基体51の背面51Rに配置された第1のヨーク72aの端部72Eから発生する磁束によって、補助面52Bを測定対象物の被設置面に吸着させることができる。
【0038】
(2)単一の永久磁石
本実施の形態の水平器11は、一つの永久磁石71によって、少なくとも二面の設置面52(基準面52A、補助面52B)に、測定対象物の被設置面に対する吸着力を生じさせることができる。このため二面の設置面52にそれぞれ永久磁石71を別個に設けたような構造のものと比較して、水平器11を構成する部品の中でも、比較的高価な永久磁石71を一つだけ用意すれば足りる。したがって部品が増える、全体の重量が重くなる、加工費が上がる、原価が上がるなどの不具合を回避することができる。
【0039】
(3)ヨークの意義(その一)
ヨーク72は、永久磁石71単独よりも、対象物に及ぼす磁力の強さを増大させる。このため本実施の形態では、測定対象物の被設置面に対する設置面(基準面52A及び補助面52B)の吸着力を増大させることができる。
【0040】
しかも本実施の形態では、ヨーク72の端部72Eを設置面52(基準面52A、補助面52B)から露出させているので、測定対象物の被設置面に対する設置面52の吸着力をより一層増大させることができる。
【0041】
その一方で、ヨーク72の端部72Eは、設置面52(基準面52A、補助面52B)と同一面には達しない位置に配置されている。このため製造誤差や経年劣化などを原因として、設置面52からヨーク72の端部72Eが飛び出してしまうような事態を防止することができる。またヨーク72の端部72Eが測定対象物に直接吸着した場合、吸着状態が強力になりすぎ、水平器11が取り外しにくくなることが予想される。本実施の形態によれば、ヨーク72の端部72Eが測定対象物に直接吸着しないため、被測定物から水平器11を容易に取り外すことが可能になる。
【0042】
(4)ヨークの意義(その二)
本実施の形態の水平器11では、ヨーク72を介して永久磁石71の磁力を基準面52Aと補助面52Bとに発現させることができる。このとき基体51の内部の寸法、より具体的には永久磁石71及びヨーク72を収納する収納空間56の大きさは、永久磁石71の大きさを規定しない。つまり収納空間56が大きくなったとしても、大きな永久磁石71を用いる必要がない。収納空間56の大きさの変動は、もっぱらヨーク72の形状によって吸収することが可能である。
【0043】
したがって基体51の大きさと永久磁石71の大きさとの間に依存関係はなく、設計の自由度に優れた水平器11を得ることができる。また基体51の大きさに合わせて永久磁石71の大きさを変える必要がないので、基体51を大きくしても、永久磁石71の部品コストを上昇させないようにすることができる。
【0044】
3.ヨークの別の実施の形態
ヨーク72については、上記実施の形態に限らず、各種の実施の形態を採用することができる。ヨーク72の別の実施の形態(第1~第7の別の実施の形態)を図10(A)~(H)及び図11(A)~(F)に基づいて説明する。図1ないし図9に基づいて説明した上記実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0045】
図10(A)(B)は第1の別の実施の形態、図10(C)(D)は第2の別の実施の形態、図10(E)(F)は第3の別の実施の形態、図10(G)(H)は第4の別の実施の形態を示す模式図である。
【0046】
(1)第1の別の実施の形態
図10(A)は、保持体54を水平断面にし、図10(B)は、保持体54を垂直断面にして模式的に示している。図10(A)(B)とも、永久磁石71及びヨーク72は断面にしていない。
【0047】
図10(A)(B)に示すように、第2のヨーク72bの上端を延ばし、垂直断面がL字状になるように屈曲させ、その端部72Eを補助面52Bから露出させている。これによって補助面52Bには、第1のヨーク72aと第2のヨーク72bとの二条の端部72Eが水平方向に延びて平行に配置される。
【0048】
本実施の形態によれば、補助面52Bにもヨーク72の端部72Eを二条配置することができるので、補助面52Bの吸着力を増大させることができる。
【0049】
(2)第2の別の実施の形態
図10(C)は、保持体54を水平断面にし、図10(D)は、保持体54を垂直断面にして模式的に示している。図10(C)(D)とも、永久磁石71及びヨーク72は断面にしていない。
【0050】
図10(C)(D)に示すように、第1のヨーク72aを2ピース構造にしている。第1のピース72P1は、第2のヨーク72bと同様に、屈曲部分を有しない平板形状である。第2のピース72P2は、垂直断面がコの字状になるように屈曲させた形状を有し、屈曲させた両端部分を外側に向けて第1のピース72P1に面接触させている。これによって補助面52Bには、第1のヨーク72aの第2のピース72P2の二条の端部72Eが水平方向に延びて平行に配置される。
【0051】
本実施の形態によれば、補助面52Bにもヨーク72の端部72Eを二条配置することができるので、補助面52Bの吸着力を増大させることができる。また第1のヨーク72aを2ピース構造にしているので、第1のヨーク72aの形状上及び配置上の自由度を高めることができる。
【0052】
(3)第3の別の実施の形態
図10(E)は、保持体54を水平断面にし、図10(F)は、保持体54を垂直断面にして模式的に示している。図10(E)(F)とも、永久磁石71及びヨーク72は断面にしていない。
【0053】
図10(E)(F)に示すように、第1のヨーク72aの上端部分ではなく、側方部分を水平断面がL字状になるように屈曲させ、その端部72Eを補助面52Bから露出させている。また第2のヨーク72bの側方部分を延ばし、こちらも水平断面がL字状になるように屈曲させ、その端部72Eを補助面52Bから露出させている。これによって補助面52Bには、第1のヨーク72aと第2のヨーク72bとの二条の端部72Eが垂直方向に延びて平行に配置される。
【0054】
本実施の形態によれば、補助面52Bにもヨーク72の端部72Eを二条配置することができるので、補助面52Bの吸着力を増大させることができる。
【0055】
(4)第4の別の実施の形態
図10(G)は、保持体54を水平断面にし、図10(H)は、図10(G)中のB-B線部分で、保持体54及び第2のヨーク72bを垂直断面にして模式的に示している。図10(G)(H)とも、ヨーク72b以外は、永久磁石71及びヨーク72を断面にしていない。
【0056】
図10(G)(H)に示すように、第1のヨーク72aの両側部分を水平断面がコの字状になるように屈曲させ、両方の端部72Eを補助面52Bから露出させている。また第2のヨーク72bの両側部分を延ばし、こちらも水平断面がコの字状になるように屈曲させ、両方の端部72Eを補助面52Bから露出させている。これによって補助面52Bには、第1のヨーク72aと第2のヨーク72bとの合計四条の端部72Eが垂直方向に延びて互いに平行に配置される。
【0057】
本実施の形態によれば、補助面52Bにヨーク72の端部72Eを四条配置することができるので、補助面52Bの吸着力を増大させることができる。
【0058】
図11(A)(B)は第5の別の実施の形態、図11(C)(D)は第6の別の実施の形態、図11(E)(F)は第7の別の実施の形態を示す模式図である。
【0059】
(5)第5の別の実施の形態
図11(A)は、保持体54を水平断面にし、図11(B)は、保持体54を垂直断面にして模式的に示している。図11(A)(B)とも、永久磁石71及びヨーク72は断面にしていない。
【0060】
図11(A)(B)に示すように、基体51は、正面51Fにも設置面52を有している。正面51Fに設けた設置面52をフロント補助面52Cと呼ぶ。
【0061】
本実施の形態では、第1のヨーク72aと同様に、第2のヨーク72bの上端を垂直断面がL字状になるように屈曲させ、その端部72Eをフロント補助面52Cから露出させている。フロント補助面52Cには、第2のヨーク72bの端部72Eが水平に配置される。
【0062】
本実施の形態によれば、基準面52A、補助面52B及びフロント補助面52Cの三面にヨーク72の端部72Eを配置し、これらの三面に、永久磁石71の磁力による吸着力を発現させることができる。
【0063】
(6)第6の別の実施の形態
図11(C)は、保持体54を水平断面にし、図11(D)は、保持体54を垂直断面にして模式的に示している。図11(C)(D)とも、永久磁石71及びヨーク72は断面にしていない。
【0064】
図11(C)(D)に示すように、基体51は、正面51Fにも設置面52を有している。正面51Fに設けた設置面52をフロント補助面52Cと呼ぶ。
【0065】
本実施の形態では、第1のヨーク72aの両側部分をコの字状になるように屈曲させ、両方の端部72Eを補助面52Bから露出させている。第2のヨーク72bの両側部分もコの字状になるように屈曲させ、両方の端部72Eをフロント補助面52Cから露出させている。これによって補助面52Bには、第1のヨーク72aの二条の端部72Eが垂直方向に延びて平行に配置される。フロント補助面52Cには、第2のヨーク72bの二条の端部72Eが垂直方向に延びて平行に配置される。
【0066】
本実施の形態によれば、基準面52A、補助面52B及びフロント補助面52Cの三面にヨーク72の端部72Eを配置し、これらの三面に、永久磁石71の磁力による吸着力を発現させることができる。しかも基準面52A、補助面52B及びフロント補助面52Cの三面とも、ヨーク72の端部72Eを二条平行に配置しているので、各面に強力な吸着力を作用させることができる。
【0067】
(7)第7の別の実施の形態
図11(E)は、保持体54を水平断面にし、図11(F)は、保持体54を垂直断面にして模式的に示している。図11(E)(F)とも、永久磁石71及びヨーク72は断面にしていない。
【0068】
図11(E)(F)に示すように、基体51は、正面51F及び天面51Tにも設置面52を有している。正面51Fに設けた設置面52をフロント補助面52C、天面51Tに設けた設置面52をトップ補助面52Dと呼ぶ。
【0069】
本実施の形態では、第1のヨーク72aの両側部分をコの字状になるように屈曲させ、両方の端部72Eを補助面52Bから露出させている。第2のヨーク72bの両側部分もコの字状になるように屈曲させ、両方の端部72Eをフロント補助面52Cから露出させている。これによって補助面52Bには、第1のヨーク72aの二条の端部72Eが垂直方向に延びて平行に配置される。フロント補助面52Cには、第2のヨーク72bの二条の端部72Eが垂直方向に延びて平行に配置される。
【0070】
また第1のヨーク72a及び第2のヨーク72bの上端部分をそのまま上方に延ばし、それらの端部72Eをトップ補助面52Dに露出させている。これによってトップ補助面52Dには、第1のヨーク72aと第2のヨーク72bとの二条の端部72Eが水平方向に延びて平行に配置される。
【0071】
本実施の形態によれば、基準面52A、補助面52B、フロント補助面52C及びトップ補助面52Dの四面にヨーク72の端部72Eを配置し、これらの四面に、永久磁石71の磁力による吸着力を発現させることができる。しかも基準面52A、補助面52B、フロント補助面52C及びトップ補助面52Dの四面とも、ヨーク72の端部72Eを二条平行に配置しているので、各面に強力な吸着力を作用させることができる。
【0072】
(8)まとめ
上記各実施の形態の水平器11をまとめると、つぎに示す(イ)~(ヲ)のような構造を備えている。
【0073】
(イ)本実施の形態の水平器11は、気泡Bを封入した気泡管31(31C、31L、31R)と、測定対象物に当てる少なくとも二つの設置面52を有し、設置面52と角度を合わせて気泡管31(31C、31L、31R)を視認可能に保持する基体51と、基体51に内蔵された永久磁石71と、永久磁石71に面接触した状態で配置され、設置面52のうちの少なくとも二面に端部72Eを配置するヨーク72と、を備えている。
【0074】
(ロ)一例として、ヨーク72の端部72Eは、設置面52から露出している。
【0075】
(ハ)一例として、ヨーク72の端部72Eは、設置面52と同一面には達しない位置に配置されている。
【0076】
(ニ)一例として、基体51は、一つの設置面52を基準面52Aとして底面51Bに有して、別の一つの設置面52を補助面52Bとして背面51Rに有している。永久磁石71は、基体51内で基準面52Aに沿って配置され、二つのヨーク72をそれぞれ当てる接触面74(74F、74R)を正面と背面とに有している。ヨーク72のうちの第1のヨーク72aは、基準面52Aと補助面52Bとにそれぞれ端部72Eを配置しており、ヨーク72のうちの第2のヨーク72bは、基準面52Aに端部72Eを配置している。
【0077】
(ホ)一例として、上記(ニ)において、第1のヨーク72aは、単一の部材が屈曲されて、一つの端部72Eを基準面52Aに配置し、別の一つの端部72Eを補助面52Bに配置している。
【0078】
(へ)一例として、上記(ニ)において、第1のヨーク72aは、基準面52Aに端部72Eが配置される第1のピース72P1と、補助面52Bに端部72Eが配置される第2のピース72P2とを有し、第1のピース72P1と第2のピース72P2とを面接触させている。
【0079】
(ト)一例として、上記(ニ)において、第2のヨーク72bは、基準面52Aと補助面52Bとにそれぞれ端部72Eを配置している。
【0080】
(チ)一例として、上記(ト)において、第2のヨーク72bは、単一の部材が屈曲されて、一つの端部72Eを基準面52Aに配置し、別の一つの端部72Eを補助面52Bに配置している。
【0081】
(リ)一例として、上記(ニ)において、基体51は、さらに別の一つの設置面52をフロント補助面52Cとして正面51Fに有し、第2のヨーク72bは、基準面52Aとフロント補助面52Cとにそれぞれ端部72Eを配置している。
【0082】
(ヌ)一例として、上記(リ)において、第2のヨーク72bは、単一の部材が屈曲されて、一つの端部72Eを基準面52Aに配置し、別の一つの端部72Eをフロント補助面52Cに配置している。
【0083】
(ル)一例として、上記(ニ)において、基体51は、さらに別の一つの設置面52をトップ補助面52Dとして天面51Tに有し、第1のヨーク72aと第2のヨーク72bとの少なくとも一方は、基準面52Aとトップ補助面52Dとにそれぞれ端部72Eを配置している。
【0084】
(ヲ)一例として、上記(イ)~(ル)において、基体51は、左右方向に延びる横長の形状を有し、複数の気泡管31(31C、31L、31R)を水平方向に並べて設けている。
【0085】
4.変形例
実施に際して、各種の変形や変更が可能である。
【0086】
例えば上記実施の形態では、基体51に三つの気泡管31C、31L、31Rを保持させる一例を示したが、気泡管31の数は三つに限らない。一つ、二つ、あるいは四つ以上であってもよい。
【0087】
上記実施の形態で示した永久磁石71は一例を示すにすぎず、実施に際しては、大きさや形状など、様々な変形や変更が許容される。永久磁石71の数も一つに限らず、二以上の永久磁石71を基体51に設けるようにしてもよい。磁石の種類も永久磁石71に限定されない。電磁石、軟鉄などの一時磁石など、設置時に、吸着に十分な磁力を有するものであればその種類を限定されない。
【0088】
そのほか実施に際しては、あらゆる変形や変更が許容される。
【符号の説明】
【0089】
11 水平器
31、31C、31L、31R 気泡管
32 透明管
33 液体
34 標線
51 基体
51B 底面
51F 正面
51R 背面
51T 天面
52 設置面
52A 基準面
52B 補助面
52C フロント補助面
52D トップ補助面
53 フレーム
54 保持体
54a 前面部
54b 背面部
55 開口部
56 収納空間
57 観察孔
58 V字溝
59 スケール
60 凹部
71 永久磁石(磁石)
72 ヨーク
72a 第1のヨーク
72b 第2のヨーク
72E 端部
72P1 第1のピース
72P2 第2のピース
73 吸着構造
74、74F、74R 接触面
B 気泡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11