(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114075
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】スイッチ遮断装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240816BHJP
H02H 3/087 20060101ALI20240816BHJP
H02J 1/10 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H02J1/00 309Q
H02H3/087
H02J1/00 304H
H02J1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019469
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】森田 好宣
【テーマコード(参考)】
5G004
5G165
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004BA01
5G004DA01
5G004EA01
5G165BB04
5G165BB08
5G165EA02
5G165EA04
5G165FA01
5G165GA09
5G165LA02
5G165NA05
(57)【要約】
【課題】電気経路における過電流異常の発生時において適切にスイッチ遮断を行わせる。
【解決手段】スイッチ遮断装置80は、電気経路50を介して接続される第1電源11及び第2電源12と、電気経路50に設けられた第1~第7スイッチ61~67と、を備える電源システムに適用される。スイッチ遮断装置80は、電気経路50において隣り合う2つのスイッチである一対のスイッチに各々流れる通電電流を取得し、その通電電流に基づいて、一対のスイッチの中間点へ流れる電流の合計である合計電流を算出する算出部と、合計電流が閾値電流を超えた場合に、一対のスイッチを遮断する遮断部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気経路(50)を介して接続される第1電源(11)及び第2電源(12)と、
前記電気経路に設けられ、かつ互いに直列接続された複数のスイッチ(61~67)と、を備える電源システムに適用され、
前記電気経路において隣り合う2つの前記スイッチである一対のスイッチに各々流れる通電電流を取得し、その通電電流に基づいて、前記一対のスイッチの中間点へ流れる電流の合計である合計電流を算出する算出部と、
前記合計電流が閾値電流を超えた場合に、前記一対のスイッチを遮断する遮断部と、を備える、スイッチ遮断装置(70,80)。
【請求項2】
前記電気経路において、複数の電気負荷(31~34,41,42)が接続され、かつ前記各電気負荷のうち互いに異なる電気負荷の接続点の両側に前記一対のスイッチの一方のスイッチ及び他方のスイッチがそれぞれ設けられている電源システムに適用され、
前記一対のスイッチは、その間に接続されている前記電気負荷ごとに複数の組み合わせで定められており、
前記算出部は、前記一対のスイッチの組み合わせごとに、当該一対のスイッチの中間点へ流れる前記合計電流を算出し、
前記遮断部は、前記一対のスイッチの組み合わせごとに、前記合計電流が前記閾値電流を超えた場合に前記一対のスイッチを遮断する、請求項1に記載のスイッチ遮断装置。
【請求項3】
前記閾値電流は、前記一対のスイッチの間に接続された前記電気負荷を駆動させる場合の上限電流よりも大きい電流値である、請求項2に記載のスイッチ遮断装置。
【請求項4】
前記複数の電気負荷は、第1冗長負荷(41)と第2冗長負荷(42)とを含み、それら各冗長負荷は、両方の冗長負荷及び一方の冗長負荷のいずれにおいても特定機能の実現が可能となっており、
前記遮断部は、前記電気経路において前記第1冗長負荷が接続された第1接続点と前記第2冗長負荷が接続された第2接続点とのうち前記第1接続点のみを挟む位置の2つの前記スイッチを前記一対のスイッチとするとともに、前記第2接続点のみを挟む位置の2つの前記スイッチを前記一対のスイッチとし、それら一対のスイッチの組み合わせごとに、前記合計電流が前記閾値電流を超えた場合に前記一対のスイッチを遮断する、請求項2に記載のスイッチ遮断装置。
【請求項5】
前記複数の電気負荷は、前記電気経路における複数の前記接続点に接続された第1電気負荷と第2電気負荷とを含み、
前記複数のスイッチのうち、前記第1電気負荷及び前記第2電気負荷の各接続点の間に設けられたスイッチが負荷間スイッチであり、
前記遮断部は、第1遮断部(81)であり、
前記電気経路の電圧を経路電圧として取得し、その経路電圧が閾値電圧を下回った場合に、前記負荷間スイッチを遮断し、前記電気経路を前記第1電源側と前記第2電源側とに分断させる第2遮断部(91)を備える、請求項2に記載のスイッチ遮断装置。
【請求項6】
前記複数の電気負荷は、第1冗長負荷(41)と第2冗長負荷(42)とを含み、それら各冗長負荷は、両方の冗長負荷及び一方の冗長負荷のいずれにおいても特定機能の実現が可能となっており、
前記電気経路において前記第1冗長負荷及び前記第2冗長負荷の間となる位置に前記負荷間スイッチが設けられている、請求項5に記載のスイッチ遮断装置。
【請求項7】
前記第2遮断部により前記負荷間スイッチが遮断され、かつ前記第1遮断部により前記一対のスイッチが遮断された場合において、前記複数のスイッチのうち、前記第2遮断部により遮断対象となり、かつ前記第1遮断部により遮断対象となっていないスイッチについて、導通状態に復帰させる復帰操作部を備える、請求項5に記載のスイッチ遮断装置。
【請求項8】
前記電気経路は、互いに並列となる複数の並列経路(51,52)を含み、
前記算出部は、前記各並列経路において、隣り合う2つの前記スイッチを一対のスイッチとして前記合計電流を算出し、
前記遮断部は、前記合計電流が閾値電流を超えた場合に、前記一対のスイッチを遮断する、請求項1~7のいずれか1項に記載のスイッチ遮断装置。
【請求項9】
電気経路(50)を介して接続される第1電源(11)及び第2電源(12)と、
前記電気経路に設けられ、かつ互いに直列接続された複数のスイッチ(61~67)と、を備える電源システムに適用され、コンピュータ(70)により実行可能なプログラムであって、
前記電気経路において隣り合う2つの前記スイッチである一対のスイッチに各々流れる通電電流を取得し、その通電電流に基づいて、前記一対のスイッチの中間点へ流れる電流の合計である合計電流を算出する算出ステップと、
前記合計電流が閾値電流を超えた場合に、前記一対のスイッチを遮断する遮断ステップと、を含むプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムのスイッチ遮断装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電源を備え、これら複数の電源から電気負荷に対して各々電力供給を可能とする電源システムが知られている。例えば、特許文献1には、電源システムに適用されるスイッチ遮断装置として、電源の出力電流が過度に大きくなる異常が発生したか否かを判定し、その判定結果に基づいてスイッチを遮断するものが記載されている。具体的には、スイッチ遮断装置は、スイッチに流れる通電電流を取得し、取得した通電電流が閾値電流を超えた場合に、異常が発生していると判定する。そして、閾値電流を超える通電電流が流れるスイッチを遮断することにより、電源システムに過電流が流れることを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源システムの電気経路において、第1電源及び第2電源の間で地絡が生じたり、電気負荷の暴走に起因する過電流異常が生じたりすると、電気経路において通電電流が増加する。この場合、既存の技術では、一方の電源から流れる電流の大きさに基づいてスイッチ遮断を行うものとなっており、その信頼性が低いことが懸念される。例えば、電源システムの電気経路において地絡が生じた場合、その地絡に伴い一方の電源からの供給電流が増加するものの、電流増加の程度が小さいと、地絡異常に応じた適切なスイッチ遮断が行えないことが懸念される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気経路における過電流異常の発生時において適切にスイッチ遮断を行わせることができるスイッチ遮断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
電気経路を介して接続される第1電源及び第2電源と、
前記電気経路に設けられ、かつ互いに直列接続された複数のスイッチと、を備える電源システムに適用され、
前記電気経路において隣り合う2つの前記スイッチである一対のスイッチに各々流れる通電電流を取得し、その通電電流に基づいて、前記一対のスイッチの中間点へ流れる電流の合計である合計電流を算出する算出部と、
前記合計電流が閾値電流を超えた場合に、前記一対のスイッチを遮断する遮断部と、を備える。
【0007】
上記構成の電源システムでは、複数のスイッチが、第1電源と第2電源との間の電気経路に設けられ、かつ互いに直列接続されている。この電源システムでは、例えば第1電源及び第2電源の間で地絡等に起因する過電流異常が生じた場合において、各スイッチのうちいずれか1つに流れる通電電流だけでは、地絡等による電流の増加を正しく把握できず、過電流異常に応じた適切なスイッチ遮断が実施できないことが懸念される。
【0008】
そこで、本発明によれば、電気経路において隣り合う2つのスイッチである一対のスイッチに各々流れる通電電流が取得され、その通電電流に基づいて、一対のスイッチの中間点へ流れる電流の合計である合計電流が算出される。そして、合計電流が閾値電流を超えた場合に、一対のスイッチが遮断される。この場合、一対のスイッチの間で地絡等による過電流異常が生じると、一対のスイッチを介して両方の電源から中間点に流れる電流がそれぞれ増大する。つまり、合計電流には、中間点の両側となるスイッチのうち第1電源側のスイッチを介して第1電源から中間点へ流れる電流の変化と、中間点の両側となるスイッチのうち第2電源源側のスイッチを介して第2電源から中間点へ流れる電流の変化とが反映されることになる。そのため、合計電流によれば、異常発生時に増加する電流を正しく把握することができる。その結果、異常判定の信頼性を向上し、電気経路における過電流異常の発生時において適切にスイッチ遮断を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る車載電源システムの全体構成図。
【
図7】遮断回路により実行されるスイッチ遮断の順序を示すフローチャート。
【
図8】第2実施形態に係る車載電源システムの全体構成図。
【
図9】遮断回路及び経路分断回路により実行されるスイッチ遮断の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本発明に係るスイッチ遮断装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、スイッチ遮断装置は車載の電源システムに適用される。電源システムは、モータを走行動力源とする電動車両に搭載されている。
【0011】
図1に示すように、電源システムは、第1電源11及び第2電源12を有し、それら各電源11,12が電気経路50により接続されている。第1電源11は、高圧バッテリ21と回転電機22とDCDCコンバータ23とを備えている。高圧バッテリ21は、複数の単電池の直列接続体として構成されており、高圧バッテリ21の定格電圧は例えば数百Vである。各単電池は、充放電可能な蓄電池であり、具体的には、リチウムイオン蓄電池である。
【0012】
回転電機22は、車両の走行動力源であり、高圧バッテリ21から給電されて車両の駆動輪に動力を伝達する。また、回転電機22は、車両走行時において回生発電を行う発電機として機能する。回転電機22は各相の電流を制御するインバータを有し、高圧バッテリ21とインバータとは接続されている。これにより、高圧バッテリ21と回転電機22との間の通電が可能になっている。DCDCコンバータ23は、高圧バッテリ21に接続されており、高圧バッテリ21側の高電圧を降圧するものとなっている。
【0013】
第2電源12は、充放電可能な蓄電池である低圧バッテリを有している。低圧バッテリは、鉛蓄電池又はリチウムイオン蓄電池である。低圧バッテリの定格電圧は、高圧バッテリ21の定格電圧よりも低く、例えば12Vである。第1電源11の出力電圧と第2電源12の出力電圧とは略同じである。ただし本実施形態では、第1電源11の出力電圧を第2電源12の端子電圧よりも僅かに高電圧としている。
【0014】
電気経路50は、互いに並列となる並列経路としての第1経路51及び第2経路52を含む。電気経路50は、第1電源11側の分岐点Pと第2電源12側の分岐点Qとの間で二方に分岐され、これにより、第1経路51と第2経路52とが並列に接続されている。
【0015】
電源システムは、電気負荷として、第1~第4通常負荷31~34及び第1,第2冗長負荷41,42を備えている。各負荷31~34,41,42には、第1電源11及び第2電源12からの電力の供給が可能になっている。各通常負荷31~34は、例えば、車両の運転支援制御に用いられない電気負荷であり、具体的には、エアコン、オーディオ装置、パワーウィンドウ、エンジンの冷却水を冷却するラジエータの電動ファン、ストップランプ、室内灯、USB電源ソケット及び車室外に設けられるミラーを駆動するモータ等である。
【0016】
各冗長負荷41,42は、両方の冗長負荷及び一方の冗長負荷のいずれにおいても特定機能の実現が可能となっている。これにより、各冗長負荷41,42のいずれか一方で異常が発生した場合でもその機能の全てが失われないようになっている。各冗長負荷41,42は、例えば、車両の運転支援制御に用いられる電気負荷であり、具体的には、運転者の操舵をアシストするアシストトルクを発生する電動パワーステアリング装置、車輪に制動力を付与する電動ブレーキ装置、車両周囲の状況をモニタするためのカメラや、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)等のレーザレーダ、ミリ波レーダ、バイワイヤシステムである。
【0017】
なお、各冗長負荷41,42として互いに異なる形式の機器を組み合わせることにより、特定機能を実現してもよい。例えば、車両前方の監視を目的とした負荷として第1冗長負荷41をLIDARとし、第2冗長負荷42をカメラとしてもよい。
【0018】
第1経路51には、第1,第2通常負荷31,32及び第1,第2冗長負荷41,42が接続されている。第1,第2通常負荷31,32及び第1,第2冗長負荷41,42は、第1経路51の接続点A,B,C,Dにそれぞれ接続されている。また、第2経路52には、第3,第4通常負荷33,34が接続されている。第3,第4通常負荷33,34は、第2経路52の接続点E,Fにそれぞれ接続されている。上記各負荷31~34,41,42は、正極側が各経路51,52に接続され、負極側が車体等の接地部位に接続されている。なお、
図1に示す各負荷31~34,41,42は、それぞれ単一の電気負荷であってもよいし、複数の電気負荷であってもよい。
【0019】
電源システムは、第1~第7スイッチ61~67を備えている。各スイッチ61~67は、例えば、リレー又はMOSFET等の半導体スイッチで構成されている。第1スイッチ61は、第1経路51において分岐点Pと第1通常負荷31の接続点Aとの間に設けられている。第2スイッチ62は、第1経路51において第1冗長負荷41の接続点Bと第2通常負荷32の接続点Cとの間に設けられている。第3スイッチ63は、第1経路51において第2冗長負荷42の接続点Dと分岐点Qとの間に設けられている。
【0020】
第4スイッチ64は、第2経路52において分岐点Pと第3通常負荷33の接続点Eとの間に設けられている。第5,第6スイッチ65,66は、第2経路52において第3通常負荷33の接続点Eと第4通常負荷34の接続点Fとの間に設けられている。第7スイッチ67は、第2経路52において第4通常負荷34の接続点Fと分岐点Qとの間に設けられている。
【0021】
電源システムは、各スイッチ61~67のオンオフを制御する制御装置70を備えている。制御装置70は、CPUや各種メモリを有するマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御装置70は、例えば車両の起動スイッチのオン操作に応じて各スイッチ61~67をオンするとともに、起動スイッチのオフ操作に応じて各スイッチ61~67をオフする。
【0022】
また、電源システムは、第1,第2経路51,52において過度な電流が流れる過電流異常が生じた場合に、各スイッチ61~67のうち異常発生箇所に応じたスイッチを遮断するスイッチ遮断装置80を備えている。これにより、電源システムに過電流が流れることが抑制される。なお、過電流異常は、電気経路のいずれかの箇所が接地部位と短絡する地絡や、電気負荷の暴走に起因して発生する。
【0023】
ところで、2つの電源11,12を備える電源システムの電気経路50において、過電流異常が生じると、電気経路50において通電電流が増加するが、既存の技術では、一方の電源から流れる電流の大きさに基づいてスイッチ遮断を行うものとなっており、その信頼性が低いことが懸念される。
【0024】
ここで、
図2に示す構成を例にして、既存技術の問題点について説明する。電源システムは、第1電源101及び第2電源102と、第1電源101及び第2電源102を接続する電気経路103に接続された電気負荷104と、電気経路103において電気負荷104の接続点に対して第1電源101側及び第2電源102側にそれぞれ設けられたスイッチ105,106とを備えている。電気負荷104には、第1電源101及び第2電源102の両方から電流が供給されている。
図2では、第1電源101の出力電流をi1で示し、第2電源102の出力電流をi2で示し、各電源101,102から電気負荷104に供給される供給電流をiaで示している。
【0025】
図3に、電気負荷104において地絡が生じた場合の各出力電流i1,i2及び供給電流iaの推移を示す。時刻t1において、地絡が発生すると、電気負荷104に流れる電流が増加する。これにより、供給電流iaが上昇し、地絡が生じていない場合に電気負荷104に流れる電流の上限値imを上回る。ただし、地絡による漏れ電流が比較的小さい場合、すなわち比較的軽度な地絡が生じた場合、供給電流iaは上限値imを上回るものの、各出力電流i1,i2の増加量Δi1,Δi2が地絡と判定するのには小さくなることがある。この場合に、各スイッチ105,106に流れる通電電流のうちいずれか一方に基づいて地絡の有無を判定する既存技術では、スイッチ遮断の信頼性が低下する懸念がある。
【0026】
上述した点に鑑みて、電源システムは、スイッチ遮断装置80を備えている。スイッチ遮断装置80は、電気経路50において隣り合う2つのスイッチである一対のスイッチに各々流れる通電電流を取得し、その通電電流に基づいて、一対のスイッチの中間点へ流れる電流の合計である合計電流を算出する算出部と、合計電流が閾値電流を超えた場合に、一対のスイッチを遮断する遮断部とを備えている。
【0027】
本実施形態では、各経路51,52において隣り合う2つのスイッチが一対のスイッチとなっている。一対のスイッチは、その間に接続されている電気負荷ごとに複数の組み合わせで定められている。具体的には、第1経路51では、各接続点A,Bを挟む両側の第1,第2スイッチ61,62と、各接続点C,Dを挟む両側の第2,第3スイッチ62,63とがそれぞれ一対のスイッチとなっている。この場合では、第1経路51において第1冗長負荷41が接続された接続点B(第1接続点)と第2冗長負荷42が接続された接続点D(第2接続点)とのうち第1接続点のみを挟む位置の第1,第2スイッチ61,62を一対のスイッチとするとともに、第2接続点のみを挟む位置の第2,第3スイッチ62,63を一対のスイッチとしている。また、第2経路52では、各接続点Eを挟む両側の第4,第5スイッチ64,65と、各接続点Fを挟む両側の第6,第7スイッチ66,67が設けられている。
【0028】
図4に示すように、スイッチ遮断装置80は、一対のスイッチの組み合わせごとに、遮断回路81を備えている。すなわち、
・第1,第2スイッチ61,62の組み合わせからなる一対のスイッチと、
・第2,第3スイッチ62,63の組み合わせからなる一対のスイッチと、
・第4,第5スイッチ64,65の組み合わせからなる一対のスイッチと、
・第6,第7スイッチ66,67の組み合わせからなる一対のスイッチと、
において遮断回路81がそれぞれ設けられている。これら各遮断回路81は、地絡の発生時において、それぞれ対応する一対のスイッチの合計電流を算出し、その合計電流に基づいて一対のスイッチの遮断操作を実施する機能を有している。
【0029】
また、
図4では、第5,第6スイッチ65,66の間の配線部分における地絡発生の懸念を想定し、第5,第6スイッチ65,66の組み合わせからなる一対のスイッチについても遮断回路81が設けられている。
【0030】
図5を参照し、第1経路51において、第1,第2スイッチ61,62の組み合わせからなる一対のスイッチと、第2,第3スイッチ62,63の組み合わせからなる一対のスイッチとにそれぞれ設けられた遮断回路81の構成を説明する。なおここでは、第1,第2スイッチ61,62用の遮断回路81を「遮断回路81A」、第2,第3スイッチ62,63用の遮断回路81を「遮断回路81B」としている。
【0031】
第1,第2スイッチ61~63には、それぞれ電流センサ85が設けられている。各スイッチと電流センサ85は以下の構成であるとよい。
図6に示すように、第1スイッチ61は、ソース同士が接続された2つのNチャネルMOSFETである。2つのNチャネルMOSFETのソース間には電流センサ85が設けられている。電流センサ85は、例えば、シャント抵抗やホール素子を用いて電流を検出するものである。第2~第7スイッチ62~67についても同様の構成を有している。
【0032】
図5に示すように、遮断回路81Aは、加算部82,判定部83及び遮断駆動部84を備えている。加算部82は、第1,第2スイッチ61,62に各々流れる通電電流を取得する。具体的には、加算部82は、第1スイッチ61の電流センサ85の検出値を第1スイッチ61に流れる通電電流として取得し、第2スイッチ62の電流センサ85の検出値を第2スイッチ62に流れる通電電流として取得する。
【0033】
加算部82は、第1,第2スイッチ61,62に流れる通電電流に基づいて、第1,第2スイッチ61,62の間の中間点(接続点A,B)へ流れる電流の合計である合計電流Isを算出する。この場合、加算部82は、第1スイッチ61の通電電流について第1電源11から放電電流が流れる向きを正とし、第2スイッチ62の通電電流について第2電源12から放電電流が流れる向きを正として、合計電流Isを算出する。加算部82により算出された合計電流Isは、判定部83に入力される。加算部82は、例えば、演算アンプを用いて構成される。
【0034】
判定部83は、加算部82により算出された合計電流Isが閾値電流を超えたか否かを判定する。判定部83は、加算部82により算出された合計電流Isが閾値電流を超えたと判定した場合、第1経路51における第1,第2スイッチ61,62の間において過電流異常が生じたと判定し、遮断信号Sgの論理をLOWからHIに切り替える。遮断信号Sgは、論理LOWにより第1,第2スイッチ61,62の導通状態を継続する旨を遮断駆動部84に伝達し、論理HIにより第1,第2スイッチ61,62を遮断する旨を遮断駆動部84に伝達する信号である。判定部83は、例えば、演算アンプを用いて構成される。
【0035】
遮断駆動部84は、論理LOWの遮断信号Sgが入力された場合、第1,第2スイッチ61,62の導通状態を継続する。一方、遮断駆動部84は、論理HIの遮断信号Sgが入力された場合、第1,第2スイッチ61,62を遮断する。これにより、過電流異常箇所が、第1電源11及び第2電源12から電気的に切り離される。なお、加算部82が「算出部」に相当し、判定部83及び遮断駆動部84が「遮断部」に相当する。遮断回路81Bは、遮断回路81Aと同様の構成を有している。
【0036】
図7に、各遮断回路81により実行されるスイッチ遮断の順序について説明する。ここでは、
図5に示す遮断回路81Aにより実行されるスイッチ遮断を例として説明する。
【0037】
遮断回路81Aにおいて、加算部82は、第1,第2スイッチ61,62スイッチに各々流れる通電電流を取得するとともに、その通電電流に基づいて、第1,第2スイッチ61,62の間の中間点(接続点A,B)へ流れる電流の合計である合計電流Isを算出する(ステップS10,S11)。
【0038】
判定部83は、第1,第2スイッチ61,62の合計電流Isが閾値電流Ithを超えたか否かを判定する(ステップS12)。閾値電流Ithは、第1,第2スイッチ61,62の間に接続された電気負荷を駆動させる場合の上限電流よりも大きい値で定められている。第1,第2スイッチ61,62の間に第1通常負荷31と第1冗長負荷41とが接続されている構成では、閾値電流Ithは、各負荷31,41の駆動電流の上限値を基準としてそれら各上限値を加算した値以上であるとよい。なお、第1,第2スイッチ61,62うち一方のみが駆動状態である場合に、閾値電流Ithを、駆動状態となっている負荷の駆動電流を基準としてその駆動電流の上限値以上の値としてもよい。
【0039】
判定部83は、第1,第2スイッチ61,62の合計電流Isが閾値電流Ith以下であると判定した場合、遮断信号Sgを論理LOWのままとする。この場合、遮断駆動部84は、第1,第2スイッチ61,62のオンオフの状態を現状のままとする。一方、判定部83は、第1,第2スイッチ61,62の合計電流Isが閾値電流Ithを超えたと判定した場合、論理HIの遮断信号Sgを出力する。この場合、遮断駆動部84は、第1,第2スイッチ61,62を遮断する(ステップS13)。
【0040】
上記遮断回路81Aの処理は、スイッチ遮断装置80における他の遮断回路81においても並行して同様に行われる。これにより、電気経路50において、いずれの電気負荷で地絡等による過電流異常が生じても、その異常発生箇所に応じて適正なスイッチ遮断が可能になっている。
【0041】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0042】
電気経路50において隣り合う2つのスイッチである一対のスイッチに各々流れる通電電流が取得され、その通電電流に基づいて、一対のスイッチの中間点へ流れる電流の合計である合計電流Isが算出される。そして、合計電流Isが閾値電流Ithを超えた場合に、一対のスイッチが遮断される。この場合、一対のスイッチの間で地絡等による過電流異常が生じると、一対のスイッチを介して第1電源11及び第2電源12から中間点に流れる電流がそれぞれ増大する。つまり、合計電流には、一対のスイッチのうち第1電源11側のスイッチを介して第1電源11から中間点へ流れる電流の変化と、一対のスイッチのうち第2電源12側のスイッチを介して第2電源12から中間点へ流れる電流の変化とが反映されることになる。そのため、合計電流Isによれば、異常発生時に増加する電流を正しく把握することができる。その結果、異常判定の信頼性を向上し、電気経路における過電流異常の発生時において適切にスイッチ遮断を行わせることができる。
【0043】
電気経路50において隣り合って設けられた一対のスイッチごとに、合計電流が算出されるとともに、合計電流に基づいて中間点の両側となる一対のスイッチがオフされる。これにより、合計電流を用いた異常判定により、異常箇所を特定し、特定された異常箇所のみを第1電源11及び第2電源12から切り離すことができる。その結果、第1電源11及び第2電源12から、異常発生箇所以外の箇所に接続された電気負荷への電力供給を継続させることができる。
【0044】
閾値電流Ithが、一対のスイッチの間に接続された電気負荷を駆動させる場合の上限電流よりも大きい値に定められている。これにより、電気負荷の使用により合計電流Isが閾値電流Ithを超えて、異常が発生しているとの誤判定が生じることを抑制できる。
【0045】
第1経路51において第1冗長負荷41の接続点Bと第2冗長負荷42の接続点Dとのうち接続点Bのみを挟む位置の第1,第2スイッチ61,62を一対のスイッチとするととともに、接続点Dのみを挟む位置の第2,第3スイッチ62,63を一対のスイッチとした。これにより、それら一対のスイッチのうちいずれか一方が遮断された場合に、各冗長負荷41,42により実現されている機能を継続させることができる。
【0046】
上記構成では、第1経路51に、第1~第3スイッチ61~63が設けられ、第2経路52に、第4~第7スイッチ64~67が設けられている。第1経路51及び第2経路52は互いに並列となるように設けられている。この場合、第1経路51及び第2経路52のいずれか一方に過電流異常が発生し、異常箇所が第1電源11及び第2電源12から切り離された際に、過電流異常が発生していない経路において、第1電源11及び第2電源12の両方からの電力供給を継続することができる。
【0047】
<第2実施形態>
本実施形態では、スイッチ遮断装置80の構成が変更されている。電源システムでは、電気経路50上のいずれかの部位で地絡等による過電流異常が生じると、その電気経路50上で電圧低下が生じ、第1電源11から各電気負荷への電力供給と第2電源12から各電気負荷への電力供給との両方に支障が生じる。そこで本実施形態では、電気経路50の電圧を経路電圧として取得し、その経路電圧が閾値電圧を下回った場合に、電気経路50を第1電源11側と第2電源12側とに分断させる構成としている。
【0048】
図8は、本実施形態における電源システムの構成を示す概略図である。スイッチ遮断装置80は、
図4と同様に、電気経路50における一対のスイッチの組み合わせごとに遮断回路81を備えている。ここでは、4つの遮断回路81を、それぞれ遮断回路81A,81B,81C,81Dとしている。本実施形態では、各遮断回路81A~81Dが「第1遮断部」に相当する。
【0049】
また、
図8の電源システムでは、
図4との相違点として、第1経路51及び第2経路52にそれぞれ電圧センサ53,54が設けられている。電圧センサ53は、例えば第1経路51における第2スイッチ62の付近に設けられ、第1経路51の電圧を検出する。電圧センサ54は、例えば第2経路52における第6スイッチ66の付近に設けられ、第2経路52の電圧を検出する。
【0050】
スイッチ遮断装置80は、電圧センサ53,54の検出電圧に基づき第1経路51及び第2経路52をそれぞれ第1電源11側と第2電源12側とに分断させる経路分断回路91を備えている。本実施形態では、第1経路51において、隣り合う2つの接続点B,Cの間に設けられた第2スイッチ62と、第2経路52において、隣り合う2つの接続点E,Fの間に設けられた第6スイッチ66とを負荷間スイッチとしている。第1経路51では、同一機能を実現するための2つの冗長負荷41,42の間の第2スイッチ62が負荷間スイッチとなっている。
【0051】
経路分断回路91は、電圧センサ53,54の検出電圧をそれぞれ経路電圧として取得し、それら各経路電圧のうち少なくとも一方が閾値電圧を下回った場合に、負荷間スイッチ(スイッチ62,66)を遮断させることで、第1経路51及び第2経路52をそれぞれ第1電源11側と第2電源12側とに分断させる。閾値電圧は、例えば、各負荷31~34,41,42を動作可能な電圧のうち最も高い電圧に設定されている。経路分断回路91は、遮断回路81と同様、ハードウエアである電子回路により構成されている。
【0052】
なお、第1経路51では、接続点B,Cに接続された第1冗長負荷41及び第2通常負荷32がそれぞれ「第1電気負荷」、「第2電気負荷」に相当し、第2経路52では、接続点E,Fに接続された第3通常負荷33及び第4通常負荷34がそれぞれ「第1電気負荷」、「第2電気負荷」に相当する。第2経路52では、第6スイッチ66に代えて第5スイッチ65を負荷間スイッチとすることも可能である。本実施形態では、経路分断回路91が「第2遮断部」に相当する。
【0053】
地絡等の発生に伴い電源システムに過電流異常が生じると、第2,第6スイッチ62,66の遮断により電気経路50が2つに分断される。2つに分断された電気経路50のうち一方では、第1電源11を電力供給源として、第1,第3通常負荷31,33及び第1冗長負荷41に電力が供給される。他方では、第2電源12を電力供給源として、第2,第4通常負荷32,34及び第2冗長負荷42に電力が供給される。このため、地絡により電気経路50の電圧低下が生じた場合において、全ての電気負荷で電源失陥が生じることが抑制され、一部の電気負荷の動作継続が可能になっている。
【0054】
各遮断回路81による一対のスイッチの遮断処理と、経路分断回路91による負荷間スイッチ(第2,第6スイッチ62,66)の遮断処理とは、並行して実行される。過電流異常が生じた場合には、電気経路のインダクタンス成分に起因して、各スイッチ61~67の通電電流の電流変化よりも先に電気経路50の電圧変化が生じることがある。また、電気経路50に流れる電流の変化を検出するのには、各スイッチ61~67の電流センサよりも電圧センサ53,54の方が好適である場合がある。この点、本実施形態では、経路分断回路91により、電気経路50の電圧変化に応じて第2,第6スイッチ62,66が遮断されるため、過電流異常の発生時においていち早くスイッチ遮断を行わせることができる。
【0055】
また、過電流異常の発生に伴い電気経路50が第1電源11側と第2電源12側とに分断された場合、電気経路50の第1電源11側と第2電源12側とのうち過電流異常が生じた側では、電気経路50に過電流が流れ続ける。そのため、各遮断回路81において、遮断対象となる一対のスイッチに流れる電流の合計電流が閾値電流を上回ると、その一対のスイッチが遮断される。
【0056】
ここで、地絡等による電気経路50の電圧低下に伴い、経路分断回路91により負荷間スイッチの遮断が行われ、その後さらに、各遮断回路81により一対のスイッチに流れる合計電流に応じて一対のスイッチが遮断された場合には、経路分断回路91により、第2,第6スイッチ62,66が不要に遮断されている事態が生じ得る。
【0057】
例えば、第2経路52側において第3通常負荷33で地絡が生じた場合には、経路分断回路91により負荷間スイッチ(第2,第6スイッチ62,66)が遮断された後、遮断回路81Cにより第4,第5スイッチ64,65が遮断される。この場合、負荷間スイッチ(第2,第6スイッチ62,66)が遮断されたままであると、短絡が生じていない側の第1経路51の負荷31,32,41,42について、第1電源11及び第2電源12による電源供給が不要に制限される。
【0058】
そこで、本実施形態では、経路分断回路91により負荷間スイッチ(第2,第6スイッチ62,66)が遮断され、かつ遮断回路81により一対のスイッチが遮断された場合において、経路分断回路91により遮断対象となり、かつ遮断回路81により遮断対象となっていないスイッチについて、導通状態に復帰させる構成としている。
【0059】
具体的には、経路分断回路91は、負荷間スイッチとして第2,第6スイッチ62,66を遮断した場合に、各遮断回路81から入力した遮断信号Sgの論理に応じて、第2スイッチ62及び第6スイッチ66のうち少なくとも一方を導通状態に復帰させる。本実施形態において、経路分断回路91が「復帰操作部」に相当する。
【0060】
経路分断回路91は、負荷間スイッチ(第2,第6スイッチ62,66)を遮断した後に、遮断回路81から論理HIの遮断信号Sg(すなわち、スイッチ遮断する旨の信号)が入力された場合において、両経路51,52のうち遮断信号入力とは逆側の経路の負荷間スイッチを導通復帰させる。また、経路分断回路91は、負荷間スイッチ(第2,第6スイッチ62,66)を遮断した後に、遮断回路81から論理HIの遮断信号Sgが入力された場合において、両経路51,52のうち遮断信号入力と同じ経路の負荷間スイッチを、遮断回路81により遮断対象になっていなければ導通復帰させる。
【0061】
詳しくは、経路分断回路91は、各負荷間スイッチ(第2,第6スイッチ62,66)を、以下のように選択的に導通復帰させる。
・遮断回路81Aから論理HIの遮断信号Sgを取得した場合、第6スイッチ66を導通状態に復帰させる。
・遮断回路81Bから論理HIの遮断信号Sgを取得した場合、第6スイッチ66を導通状態に復帰させる。
・遮断回路81Cから論理HIの遮断信号Sgを取得した場合、第2,第6スイッチ62,66を導通状態に復帰させる。
・遮断回路81Dから論理HIの遮断信号Sgを取得した場合、第2スイッチ62を導通状態に復帰させる。
【0062】
図9に、各遮断回路81及び経路分断回路91により実行されるスイッチ遮断の一例を示す。ここでは、
図9(a)に示すように、全てのスイッチ61,67がオンになっている状態において、第3通常負荷33に地絡が生じた場合について説明する。
【0063】
第3通常負荷33での地絡の発生後には、第2経路52において経路電圧が低下し、第2経路52の経路電圧が閾値電圧よりも低下すると、
図9(b)に示すように、負荷間スイッチである第2,第6スイッチ62,66が遮断される。これにより、第1経路51及び第2経路52がそれぞれ第1電源11側と第2電源12側とに分断される。
【0064】
また、第3通常負荷33での地絡発生により、第3通常負荷33に対応する一対のスイッチである第4,第5スイッチ64,65の合計電流が増加する。そのため、第4,第5スイッチ64,65の合計電流が閾値電流よりも上昇すると、
図9(c)に示すように、第4,第5スイッチ64,65が遮断される。
【0065】
図9(c)では、負荷間スイッチである第2,第6スイッチ62,66が遮断され、かつその第2,第6スイッチ62,66は、遮断回路81の遮断対象にはなっていない。そのため、
図9(d)に示すように、第2,第6スイッチ62,66が、導通状態に復帰される。
【0066】
この場合、
図9(c)に示す状態では、第2経路52において実際に地絡が生じている異常発生箇所が、第4,第5スイッチ64,65の遮断により隔離されているにもかかわらず、余剰に第2,第6スイッチ62,66が遮断状態となっている。この状態では、短絡が生じていない側の第1経路51の負荷31,32,41,42について、第1電源11及び第2電源12による電源供給が不要に制限されるが、
図9(d)に示すように第2スイッチ62が導通復帰されることで、第1経路51での不要な電源制限が解除される。
【0067】
また、
図9(c)に示す状態では、第2経路52において、第4,第5スイッチ64,65に加えて、第6スイッチ66が遮断状態になっているため、仮に第5,第6スイッチ65,66の間の接続点Xに電気負荷35が接続されている場合に、その電気負荷35に対して不要に電源遮断が行われる。この点、
図9(d)に示すように第6スイッチ66が導通復帰されることで、電源遮断する経路を必要最小限とし、不要な電源遮断が解除される。
【0068】
以上詳述した本実施形態では、電気経路50の経路電圧が閾値電圧を下回った場合に、負荷間スイッチを遮断し、電気経路50を第1電源11側と第2電源12側とに分断させる構成とした。これにより、電気経路50上のいずれかの部位で地絡等による過電流異常が生じた場合において、第1電源11側と第2電源12側とを分断し、電気経路50の全体で電源失陥が生じることを抑制することができる。
【0069】
電気経路50において第1冗長負荷41及び第2冗長負荷42の間となる位置に負荷間スイッチが設けられている構成とした。これにより、経路電圧の低下に伴い負荷間スイッチが遮断された直後において、各冗長負荷41,42により実現されている機能を継続させることができる。
【0070】
経路分断回路91により負荷間スイッチが遮断され、かつ遮断回路81により一対のスイッチが遮断された場合において、複数のスイッチのうち、経路分断回路91により遮断対象となり(すなわち負荷間スイッチであり)、かつ遮断回路81により遮断対象となっていないスイッチについて、導通状態に復帰させる構成とした。これにより、電気経路50に設けられた各スイッチ61~67について不要に遮断状態のままとなることを抑制することができる。
【0071】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0072】
・スイッチ遮断装置80の遮断回路81は、ハードウエアである電子回路によって各種機能を実現することに代えて、少なくとも一部をソフトウェア、すなわちコンピュータ上で実行される処理によって各種機能を実現してもよい。具体的には、
図1に示す制御装置70が、遮断回路81の機能を実現するとよい。制御装置70は、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、
図7等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。なお、本実施形態において、ステップS10,S11の処理が「算出部」に相当し、ステップS12,S14の処理が「遮断部」に相当する。
【0073】
一対のスイッチの合計電流に基づきその一対のスイッチを遮断する遮断部(遮断回路81の機能)を、コンピュータのソフトウェア処理により実現する場合には、スイッチ遮断の処理が離散的な処理となり、スイッチ遮断処理の遅れが懸念される。この点、第2実施形態で説明した経路分断回路91を組み合わせることで、経路電圧に応じた負荷間スイッチの遮断によって、地絡等に対する即時対応を可能としつつ、異常発生の箇所の特定による適正なスイッチ遮断が可能となっている。
【0074】
・
図7のステップS12の閾値電流Ithとしては、一対のスイッチの間に接続されている電気負荷を駆動させる場合の上限電流に依らないで設定された値を用いてもよい。例えば、一対のスイッチとしての第5,第6スイッチ65,66を遮断対象とする遮断回路81が実行する遮断処理では、閾値電流Ithとして、0以上の値を用いてもよい。
【0075】
・第1電源11及び第2電源12の構成を変更することが可能である。例えば、第1電源11及び第2電源12を共に低圧バッテリとしてもよい。また、第1電源11及び第2電源12を共に低圧バッテリとし、かついずれか一方の電源に発電機を接続する構成としてもよい。
【0076】
・各スイッチ61~67は、ノーマリクローズ式のスイッチであり、スイッチ遮断装置80により過電流異常が生じた場合にのみ遮断される構成としてもよい。
【0077】
・電源システムは、車両に搭載されるもの以外であってもよく、車両以外の移動体に搭載されていてもよい。また、電源システムは定置式のものであってもよい。
【0078】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0079】
上述の実施形態から抽出される技術思想を以下に記載する。
[構成1]
電気経路(50)を介して接続される第1電源(11)及び第2電源(12)と、
前記電気経路に設けられ、かつ互いに直列接続された複数のスイッチ(61~67)と、を備える電源システムに適用され、
前記電気経路において隣り合う2つの前記スイッチである一対のスイッチに各々流れる通電電流を取得し、その通電電流に基づいて、前記一対のスイッチの中間点へ流れる電流の合計である合計電流を算出する算出部と、
前記合計電流が閾値電流を超えた場合に、前記一対のスイッチを遮断する遮断部と、を備える、スイッチ遮断装置(70,80)。
[構成2]
前記電気経路において、複数の電気負荷(31~34,41,42)が接続され、かつ前記各電気負荷のうち互いに異なる電気負荷の接続点の両側に前記一対のスイッチの一方のスイッチ及び他方のスイッチがそれぞれ設けられている電源システムに適用され、
前記一対のスイッチは、その間に接続されている前記電気負荷ごとに複数の組み合わせで定められており、
前記算出部は、前記一対のスイッチの組み合わせごとに、当該一対のスイッチの中間点へ流れる前記合計電流を算出し、
前記遮断部は、前記一対のスイッチの組み合わせごとに、前記合計電流が前記閾値電流を超えた場合に前記一対のスイッチを遮断する、構成1に記載のスイッチ遮断装置。
[構成3]
前記閾値電流は、前記一対のスイッチの間に接続された前記電気負荷を駆動させる場合の上限電流よりも大きい電流値である、構成2に記載のスイッチ遮断装置。
[構成4]
前記複数の電気負荷は、第1冗長負荷(41)と第2冗長負荷(42)とを含み、それら各冗長負荷は、両方の冗長負荷及び一方の冗長負荷のいずれにおいても特定機能の実現が可能となっており、
前記遮断部は、前記電気経路において前記第1冗長負荷が接続された第1接続点と前記第2冗長負荷が接続された第2接続点とのうち前記第1接続点のみを挟む位置の2つの前記スイッチを前記一対のスイッチとするとともに、前記第2接続点のみを挟む位置の2つの前記スイッチを前記一対のスイッチとし、それら一対のスイッチの組み合わせごとに、前記合計電流が前記閾値電流を超えた場合に前記一対のスイッチを遮断する、構成2又は3に記載のスイッチ遮断装置。
[構成5]
前記複数の電気負荷は、前記電気経路における複数の前記接続点に接続された第1電気負荷と第2電気負荷とを含み、
前記複数のスイッチのうち、前記第1電気負荷及び前記第2電気負荷の各接続点の間に設けられたスイッチが負荷間スイッチであり、
前記遮断部は、第1遮断部(81)であり、
前記電気経路の電圧を経路電圧として取得し、その経路電圧が閾値電圧を下回った場合に、前記負荷間スイッチを遮断し、前記電気経路を前記第1電源側と前記第2電源側とに分断させる第2遮断部(91)を備える、構成2~4のいずれか1つに記載のスイッチ遮断装置。
[構成6]
前記複数の電気負荷は、第1冗長負荷(41)と第2冗長負荷(42)とを含み、それら各冗長負荷は、両方の冗長負荷及び一方の冗長負荷のいずれにおいても特定機能の実現が可能となっており、
前記電気経路において前記第1冗長負荷及び前記第2冗長負荷の間となる位置に前記負荷間スイッチが設けられている、構成5に記載のスイッチ遮断装置。
[構成7]
前記第2遮断部により前記負荷間スイッチが遮断され、かつ前記第1遮断部により前記一対のスイッチが遮断された場合において、前記複数のスイッチのうち、前記第2遮断部により遮断対象となり、かつ前記第1遮断部により遮断対象となっていないスイッチについて、導通状態に復帰させる復帰操作部を備える、構成5又は6に記載のスイッチ遮断装置。
[構成8]
前記電気経路は、互いに並列となる複数の並列経路(51,52)を含み、
前記算出部は、前記各並列経路において、隣り合う2つの前記スイッチを一対のスイッチとして前記合計電流を算出し、
前記遮断部は、前記合計電流が閾値電流を超えた場合に、前記一対のスイッチを遮断する、構成1~7のいずれか1つに記載のスイッチ遮断装置。
【符号の説明】
【0080】
11…第1電源、12…第2電源、50…電気経路、61~67…第1~第7スイッチ、80…スイッチ遮断装置。