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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114079
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】頭髪乾燥機
(51)【国際特許分類】
   A45D 20/12 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
A45D20/12 C
A45D20/12 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019474
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中村 凌
(72)【発明者】
【氏名】下田 卓也
【テーマコード(参考)】
3B040
【Fターム(参考)】
3B040CG00
3B040CH03
(57)【要約】
【課題】高い乾燥速度を実現し得る新規な頭髪乾燥機を提供する。
【解決手段】頭髪乾燥機(1)は、気体が流れる流路(22)の下流側先端部に設けられた吹出部(25)を備え、吹出部には複数の吹出口(21)が設けられており、複数の吹出口は、第1吹出口(21a)と、吹出部における気体の流れ方向から視て第1吹出口とは第1方向において異なる位置に位置する第2吹出口(21b)と、流れ方向から視て第1吹出口とは第1方向とは異なる第2方向において異なる位置に位置する第3吹出口(21c)とを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が流れる流路の下流側先端部に設けられた吹出部を備え、
前記吹出部には複数の吹出口が設けられており、
前記複数の吹出口は、
第1吹出口と、
前記吹出部における気体の流れ方向から視て前記第1吹出口とは第1方向において異なる位置に位置する第2吹出口と、
前記流れ方向から視て前記第1吹出口とは前記第1方向とは異なる第2方向において異なる位置に位置する第3吹出口とを含む、頭髪乾燥機。
【請求項2】
前記第1吹出口と前記第2吹出口との間の間隔が、前記第1吹出口と前記第2吹出口との対向方向における前記第1吹出口および第2吹出口のそれぞれの長さよりも長い、請求項1に記載の頭髪乾燥機。
【請求項3】
前記複数の吹出口は、前記複数の吹出口のそれぞれの図心を直線で結んで成る多角形が正多角形となるように設けられている、請求項1又は2に記載の頭髪乾燥機。
【請求項4】
前記複数の吹出口は、第4吹出口をさらに含み、
前記第1~第4吹出口は、前記第1~第4吹出口のそれぞれの図心を直線で結んで成る四角形が、前記流れ方向から視て、正方形となるように配置されている、請求項1又は2に記載の頭髪乾燥機。
【請求項5】
前記複数の吹出口の数が、3個以上8個以下である、請求項1又は2に記載の頭髪乾燥機。
【請求項6】
前記複数の吹出口のそれぞれは、前記複数の吹出口の図心を直線で結んで成る多角形の中心と当該吹出口の図心とを結ぶ直線に対して傾斜した方向に延びる細長形状である、請求項1又は2に記載の頭髪乾燥機。
【請求項7】
前記吹出部の上流側に接続されており、前記吹出部における気体の流れ方向と一致する方向に沿って気体が流れる流路が形成された細長形状の第1本体と、
前記第1本体に接続されており、前記第1本体の延びる方向に対して傾斜した方向に延び、握持部を有する第2本体と、
をさらに備える、請求項1又は2に記載の頭髪乾燥機。
【請求項8】
前記第1本体の前記流れ方向における中心が、前記流れ方向において前記第2本体が設けられた領域内に位置している、請求項7に記載の頭髪乾燥機。
【請求項9】
前記流路に気体を送気するファンと、
前記ファンから前記流路に供給される気体を加熱するヒータと、
をさらに備え、
前記ファンと前記ヒータとのうちの少なくとも一方が第2本体に設けられている、請求項7に記載の頭髪乾燥機。
【請求項10】
頭髪乾燥機の気体の吹出部に接続される器具であって、
複数の吹出口を備え、
前記複数の吹出口は、
第1吹出口と、
前記吹出部における気体の流れ方向から視て前記第1吹出口とは第1方向において異なる位置に位置する第2吹出口と、
前記流れ方向から視て前記第1吹出口とは前記第1方向とは異なる第2方向において異なる位置に位置する第3吹出口とを含む、器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は頭髪乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、複数の分割流路を有するヘアードライヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4420059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日、乾燥速度がさらに向上した頭髪乾燥機が望まれている。
【0005】
本開示は、高い乾燥速度を実現し得る新規な頭髪乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る頭髪乾燥機は、気体が流れる流路の下流側先端部に設けられた吹出部を備え、吹出部には複数の吹出口が設けられており、複数の吹出口は、第1吹出口と、吹出部における気体の流れ方向から視て第1吹出口とは第1方向において異なる位置に位置する第2吹出口と、流れ方向から視て第1吹出口とは第1方向とは異なる第2方向において異なる位置に位置する第3吹出口とを含む。
【0007】
本発明の一態様に係る器具は、頭髪乾燥機の気体の吹出部に接続される器具である。器具は、複数の吹出口を備える。複数の吹出口は、第1吹出口と、吹出部における気体の流れ方向から視て第1吹出口とは第1方向において異なる位置に位置する第2吹出口と、流れ方向から視て第1吹出口とは第1方向とは異なる第2方向において異なる位置に位置する第3吹出口とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、頭髪を高い乾燥速度で乾かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る頭髪乾燥機の外観を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る頭髪乾燥機の外観を示す正面図である。
図3】本実施形態に係る頭髪乾燥機の外観を示す側面図である。
図4】吹出部の詳細を示す正面図である。
図5】頭髪乾燥機の要部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態〕
(頭髪乾燥機)
本開示では、高い乾燥速度を実現し得る頭髪乾燥機を実現するが、まずは、本開示における頭髪乾燥機に関して説明する。本開示において「頭髪乾燥機」とは、気体により頭髪を乾燥させ得る機器全般をいうものとする。従って、頭髪乾燥機には、頭髪と共に、他の物を乾燥させうるもの、頭髪の乾燥以外の目的で使用可能な機器も含まれる。
【0011】
頭髪乾燥機には、例えば、頭髪の乾燥も可能で、かつ、肌に気体を送気してケアすることが可能な機器も含まれる。頭髪乾燥機が供給する気体の温度は、特に限定されない。頭髪乾燥機は例えば、温風および冷風の少なくとも一方を供給可能であってもよい。
【0012】
ここで、「冷風」とは、絶対的な温度で定義されるものではなく、給気された気体をヒータ等の加熱手段で実質的に温めることなく供給される風のことである。対して、「温風」とは、給気された気体をヒータ等の加熱手段で温めて供給する風のことである。
【0013】
また、気体の種類は特に限定されない。好ましい気体の一例は、空気、窒素、酸素、アルゴン、および二酸化炭素などが挙げられる。これら気体は、頭髪乾燥機が使用される温度域において、気体であることが好ましい。
【0014】
(頭髪乾燥機1の概要)
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る頭髪乾燥機1の外観を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る頭髪乾燥機1の外観を示す正面図である。図3は、本実施形態に係る頭髪乾燥機1の外観を示す側面図である。
【0015】
頭髪乾燥機1は、ユーザが把持する略円柱状の第2本体30と、第2本体30の一端に接続された略円柱状の細長形状な第1本体20とを備える。第2本体30は、ユーザが握り持つ握持部34を有する。第2本体30には、複数のスイッチから構成された操作部60が設けられている。また、第2本体30の他端に、電源ケーブル80が接続されている。
【0016】
第2本体30における電源ケーブル80と握持部34との間には吸気口33が配置されている。吸気口33の横断面形状は、例えば、細長形状でもよいし、ドット状でもよい。
【0017】
第1本体20の一端は閉塞している。対して、第1本体20の他端には、吹出部25が配置されている。吹出部25には、複数の吹出口21が設けられている。また、吸気口33から第2本体30および第1本体20を介して吹出部25にかけて気体が通過する流路22が形成されている。また、吹出部25には、被乾燥物までの距離を測る距離センサ23、および、送風する気体にイオンを供給する少なくとも1つ以上のイオン発生ユニット24が備わっている。イオン発生ユニット24は、吹出口21の位置に位置する。
【0018】
距離センサ23は、例えば、TOF(Time Of Flight)方式のものであり、半導体レーザからなる発光部および受光部を有していてもよい。ただし、距離センサ23は、TOF方式に限定されず、その他の方式のものであってもよい。距離センサ23は、距離センサ23が設けられている位置からの距離センサ23の前方に存在する対象物(人体の少なくとも一部(例えば、頭皮や頭髪等)や部材)までの距離を測定する。頭髪乾燥機1によって頭髪を乾燥させる際には、距離センサ23は頭髪までの距離を計測する。
【0019】
イオン発生ユニット24は、イオンを発生させるユニットである。イオン発生ユニット24は、マイナスイオンとプラスイオンのうちの少なくとも一方を発生させるものであってもよいし、両方を発生させるものであってもよい。例えば、イオン発生ユニット24は、針状の放電電極と、放電電極の周囲を囲む円環状の誘導電極とを備えていてもよい。その場合、放電電極と誘電電極との間に電圧が印加されて、コロナ放電が生じ、放電電極の周囲にH(HO)m等のプラスのイオンと、O2-(HO)n等のマイナスのイオンとの両方が生成してもよい。発生したプラスイオンとマイナスイオンとは吹出口21から吹き出される空気と共に放出される。
【0020】
本発明の一態様のイオン発生ユニット24は帯電粒子供給(発生)機構の一例である。
なお、帯電粒子供給(発生)機構は、帯電粒子を供給(発生)する機構である。
【0021】
帯電粒子とは、電気的に中性ではない粒子、電気的に中性ではない状態に活性化した活性種を意味する。帯電粒子は、電荷を有する粒子に限定されず、例えば、電荷を有していないものの、不対電子を有する原子、分子などの粒子等も含まれる。具体的には、帯電粒子には、例えば、正又は負の電荷を有するイオン、正又は負の電荷を有するイオンの錯体、ラジカル、電子、陽子等が含まれる。
【0022】
帯電粒子供給(発生)機構は、例えば、1種の帯電粒子のみを供給(発生)させる機構であってもよいし、複数種類の帯電粒子を供給(発生)させる機構であってもよい。帯電粒子供給(発生)機構は、例えば、正イオンまたは正イオンの錯体(例えば、正イオンに水分子等の極性分子が配位した錯体)と、負イオン又は負イオンの錯体(例えば、負イオンに水分子等の極性分子が配位した錯体)との両方を供給(発生)させるものであってもよい。帯電粒子供給(発生)機構は、例えば、正及び負イオンの錯体の一方のみを供給(発生)させるものであってもよい。
【0023】
頭髪乾燥機1では、吸気口33から吸引した空気を、流路22を通り、ファン31(電動送風機)で送風し、ヒータ32で加熱した上で、吹出口21から被乾燥物に対して、温風または冷風が吹出される。
【0024】
操作部60は、ON/OFFスイッチ61、1ショット冷風スイッチ62、モード変更スイッチ63、および風量変更スイッチ64を含む。ON/OFFスイッチ61がオンされると、電源ケーブル80からの電力が、頭髪乾燥機1の各部に供給される。ON/OFFスイッチ61がオフされると頭髪乾燥機1の各部への電源供給が停止する。また、1ショット冷風スイッチ62は、操作される毎に操作されたことを知らせる信号を制御部10(後述)へ送信する。制御部10は、1ショット冷風スイッチ62からの信号を受け取る毎にヒータ32のオン/オフを交互に制御する。なお、制御部10を介さずに、1ショット冷風スイッチ62が押下される毎に、電源ケーブル80からの電力とヒータ32との接続及び遮断を交互に実行されてもよい。モード変更スイッチ63、風量変更スイッチ64は、操作される毎に操作されたことを知らせる信号を制御部10へ送信する。制御部10は、モード変更スイッチ63、風量変更スイッチ64からの信号に従い、ファン31の回転数、ヒータ32の発熱量、およびイオン発生ユニット24のオン/オフ等を制御する。なお、各スイッチは、例えば、ボタンにより構成されていてもよい。
【0025】
(吹出部25)
図4は、吹出部25の詳細を示す正面図である。吹出部25は、気体が流れる流路の下流側先端部に設けられる。吹出部25には、吹出口21が、3つ以上設けられている。具体的には、本実施形態では、4個の吹出口21が設けられている。各吹出口21における、吹出部25が配置された平面でのそれぞれの図心を図心P1~P4で表す。また、図心P1~P4を直線で結んでなる四角形が正方形となっており、該正方形の図心を図心Cとする。吹出部25が配置された平面は、吹出部25における気体の流れ方向に垂直である。
【0026】
図心P1から図心P2に向けた方向を第1方向と、図心P1から図心P3に向けた方向を第2方向と、図心P1から図心P4に向けた方向を第3方向と、それぞれ定義する。つまり、第1方向、第2方向、第3方向は、それぞれ図心P1に対する図心P2~P4の位置する方向である。また、第1方向と第2方向および第3方向とは互いに異なる方向であり、第2方向と第3方向とは互いに異なる方向である。例えば、第3方向は、第1方向に対して垂直である。第2方向は、第1方向に対して45°傾いている。
【0027】
図心P1を有する吹出口21を第1吹出口21aと称する。図心P2を有する吹出口21を第2吹出口21bと称する。図心P3を有する吹出口21を第3吹出口21cと称する。図心P4を有する吹出口21を第4吹出口21dと称する。
【0028】
第2吹出口21bは、吹出部25における気体の流れ方向から視て、第1吹出口21aとは第1方向において異なる位置に位置する。第3吹出口21cは、吹出部25における気体の流れ方向から視て、第1吹出口21aとは第2方向において異なる位置に位置する。第4吹出口21dは、吹出部25における気体の流れ方向から視て、第1吹出口21aとは第3方向において異なる位置に位置する。
【0029】
各吹出口21は、吹出部25に形成されている。各吹出口21(以降、第1吹出口21a、第2吹出口21b、第3吹出口21c、および第4吹出口21dのことを、まとめて吹出口21と称する)は、円弧とその円弧の弦とに囲われた形状または楕円に近い形状の開口である。
【0030】
ここで、各吹出口21は、図心Cを中心とした円周方向に延伸した、形状をしており、延伸する長さは幅Wである。また、図心Cを中心とした半径方向の各吹出口21の長さは幅Dである。また、例えば、第1吹出口21aにおける第1方向での開口の幅は幅Hである。各吹出口21は、互いに同じ形状をしている。各吹出口21は、互いに異なる形状であってもよい。
【0031】
各吹出口21の図心P1~P4は、最も近い他の図心に対して長さL1離れて配置されている。つまり、図心P1~P4を結んだ図形は、一辺の長さがL1の正方形となる。また、図心Cと図心P1~P4までのそれぞれの距離は、長さL2である。
【0032】
また、吹出部25における吹出口21が存在しない領域は、気体を吹き出さない閉塞領域である。吹出口21間の閉塞領域の長さを長さL3とし、図心Cと吹出口21との間の閉塞領域の長さを長さL4とする。この時、長さL3は、第1吹出口21aにおける幅Hよりも長い。第2吹出口21bの第1方向における幅に関しても同様である。つまり、第1吹出口21aと第2吹出口21bとの間の間隔(長さL3)が、第1吹出口21aと第2吹出口21bとの対向方向(第1方向)における第1吹出口21aおよび第2吹出口21bのそれぞれの長さ(幅H)よりも長い。また、第1方向に限定されず、第2方向における第1吹出口21aと第3吹出口21cとの関係、および第3方向における第1吹出口21aと第4吹出口21dとの関係も同様である。第1吹出口21aと第4吹出口21dとの間の間隔(長さL3)が、第1吹出口21aと第4吹出口21dとの対向方向(第3方向)における第1吹出口21aおよび第4吹出口21dのそれぞれの長さ(幅H)よりも長い。第1吹出口21aと第3吹出口21cとの間の間隔(長さ2×L4)が、第1吹出口21aと第3吹出口21cとの対向方向(第2方向)における第1吹出口21aおよび第3吹出口21cのそれぞれの長さ(幅D)よりも長い。吹出部25において、第1方向における吹出口21が存在しない閉塞領域の幅がL3であり、L3が第1方向における各吹出口21の幅Hよりも長い。吹出部25において、第3方向における吹出口21が存在しない閉塞領域の幅がL3であり、L3が第3方向における各吹出口21の幅Hよりも長い。吹出部25において、第2方向における吹出口21が存在しない閉塞領域の幅が(L4-W/2)であり、(L4-W/2)が第2方向における各吹出口21の幅DまたはWよりも長い。
【0033】
(ドレープ現象)
吹出口21からは、ファン31によって生じた風が吹き出す。この時、各吹出口21からは放射状に高風速領域が形成され、各吹出口21の間からは、閉塞されているためファン31からの風が吹き出さない。この閉塞領域における空気は、高風速領域によって巻き込まれることで、各吹出口21の間は頭髪に向けて空気が流れる低風速領域となる。このように、複数の高風速領域に挟まれるように低風速領域が形成されると、吹出された風に乱れが生じ、低風速領域に渦を巻くような風の乱流が発生する。乱流が発生すると、頭髪は乱流により巻き上げられ、高い乾燥速度で頭髪を乾かすことができる。また、吹出口21から吹き出された風は頭皮にあたり、跳ね返ることによって、低風速領域に頭髪から離れるような風が発生し、さらに乱流を生じさせる。
【0034】
高風速領域の気体が当てられている頭髪は、頭皮(頭部)に対し風圧によって押し当てられる。対して乱流が発生した低風速領域の頭髪は、乱流によって巻き上げられ、頭皮(頭部)から離間し、浮き上がる。その結果、頭髪乾燥機に対向した領域で、頭髪が波打つ現象が発生する。本開示では、このような現象をドレープ現象と称する。また、ドレープ現象を発生させる、高風速領域と低風速領域とを生じる風のことを、本開示ではドレープ風と称する。
【0035】
頭髪乾燥機1は、複数の吹出口21を有し、該吹出口21の間が閉塞されているため、ドレープ風を発生させることができる。そのため、ドレープ風を起こす頭髪乾燥機1を用いることによって、頭髪に対しドレープ現象を発生させることができる。ドレープ現象を発生させることができるために、頭髪がより多くの空気にふれることによって、頭髪を高い乾燥速度で乾かすことができる。
【0036】
ここで、長さL3と幅Hとの上記関係が成立しておらず、幅Hが長さL3よりも大きい場合に関して考える。高風速領域の幅が広すぎるために、高風速領域は放射状に広がることで、吹出部25から少し離れた位置において、隣り合う高風速領域が繋がることがある。このとき、低風速領域がないことになる。そのため、この場合は、ドレープ現象が発生しないことになる。したがって、上述したように、吹出口21の間の間隔が、吹出口の大きさよりも長いことが好ましい。
【0037】
また、隣り合う吹出口21の高風速領域が繋がりにくくするためには、隣り合う吹出口21の間の距離を長くすることが有用である。そのため、全ての吹出口を等間隔で配置することが好ましい。結果的に、複数の吹出口21は、複数の吹出口21のそれぞれの図心P1~P4を直線で結んで成る多角形が正多角形となるように設けられることが好ましい。具体的には、本実施形態では、図心P1~P4を直線で結んで成る図形は、流れ方向から視て、吹出部25の中心である図心Cにおいて、図心P1~P4の対角線が交差する正方形となる。図心P1~P4を直線で結んで成る図形は、流れ方向から視て、長方形であってもよい。
【0038】
特に、吹出口21の形状は、図心Cと吹出口の図心P1~P4とを結ぶ直線に対して傾斜した方向に延びる細長形状であることが好ましい。
【0039】
(頭髪乾燥機1の保持態様)
吹出口21の数は、2個以上であればドレープ風を発生させることができる。しかしながら、吹出口21の数が2個の場合では、2つの高風速領域が並んだ方向(2つの吹出口21が並んだ方向)に対して、直角に頭髪の毛流れ方向が交差する必要がある。毛流れ方向とは、頭髪が延びている方向である。仮に、2つの高風速領域が並んだ方向に対して、頭髪の毛流れ方向が平行になっていた場合、2組の高風速領域が頭髪の毛流れ方向に対して2箇所で頭皮(頭部)に押し付ける形になり、頭髪を両端で拘束してしまうために、乱流が発生していてもドレープ現象が発生しなくなる。そのため、様々な頭髪乾燥機1の保持態様(姿勢)において、ドレープ現象を発生させるために、吹出口21の数が2個は好ましくない。
【0040】
また、吹出口21の数が多い場合、吹出口21同士の間隔が狭くなり、ある高風速領域が別の高風速領域と繋がりやすくなる。そのために、頭部近傍ではドレープ風ではなくなってしまう。したがって、吹出口21の数が多すぎるのも好ましくない。
【0041】
以上の考察から、複数の吹出口21の数は、3個以上8個以下であることが好ましく、例えば、本実施形態のように4個が特に好ましい。
【0042】
ここで、吹出口21が4個である場合において、鉛直方向に頭髪の毛流れ方向があった場合に関して詳細に説明する。頭髪乾燥機1の第2本体30を鉛直方向(角度0度)に沿った状態で保持していた場合は、第1吹出口21aおよび第4吹出口21dによって形成される高風速領域と、第2吹出口21bおよび第3吹出口21cによって形成される高風速領域と、の間に、低風速領域が生じ、ドレープ現象が発生する。頭髪乾燥機1の第2本体30を水平方向(角度90度)に沿った状態で保持していた場合は、第1吹出口21aおよび第2吹出口21bによって形成される高風速領域と、第3吹出口21cおよび第4吹出口21dによって形成される高風速領域との間に、低風速領域が生じ、ドレープ現象が発生する。さらに、頭髪乾燥機1の第2本体30を斜め(例えば角度45度)で保持していた場合は、第1吹出口21aによって形成される高風速領域と、第2吹出口21bおよび第4吹出口21dによって形成される高風速領域と、の間に、低風速領域が生じ、さらに、第3吹出口21cによって形成される高風速領域と、第2吹出口21bおよび第4吹出口21dによって形成される高風速領域と、の間に、低風速領域が生じ、ドレープ現象が発生する。したがって、吹出口21が4個である場合では、様々な保持態様(姿勢)においてドレープ風を吹出すことができる。
【0043】
このように頭髪乾燥機1を様々な姿勢で容易に保持するためには、重心が第2本体30に収まっていることが好ましい。本実施形態では、そのために重量があるファン31またはヒータ32のうち少なくとも一方は、第2本体30の中に設けられていることが好ましい。なお、ファン31は、流路22に気体を送気するファン(電動送風機)である。また、ヒータ32は、ファン31によって流路22に供給される気体を加熱する。
【0044】
(頭髪乾燥機1の形状)
第1本体20における流路22は、吹出部25の上流側に接続されている。吹出部25における気体の流れ方向と一致する方向に沿って流路22が形成されている。また、第1本体20は、吹出部25における気体の流れ方向に延伸している。
【0045】
第2本体30は、第1本体20に接続されており、第1本体20の延伸方向に対して、傾斜した方向に延伸している。また、第2本体30における握持部34は、ユーザの手で握り持つ構造になっている。
【0046】
さらに、吹出部25における気体の流れ方向における、第1本体20の中心が、流れ方向において第2本体30が設けられた領域内に位置している。
【0047】
第2本体30と第1本体20との延伸方向に角度があることによって、吹出部25からの気体の流れ方向を様々な姿勢から頭部に向けることができる。
【0048】
(頭髪乾燥機1の制御)
図5は、頭髪乾燥機1の要部の構成を示すブロック図である。頭髪乾燥機1は、頭髪乾燥機1の各部を制御する制御部10を備える。制御部10は、送風制御部11と、温度制御部12と、距離特定部13と、記憶部14と、を備える。
【0049】
送風制御部11は、ファン31を制御する。温度制御部12はヒータ32を制御する。距離特定部13は、距離センサ23を入力し、各部の制御に被乾燥物(例えば頭部(頭皮)または頭髪)までの距離を計測する。
【0050】
操作部60による各入力に従い、制御部10は制御を行う。例えば、モード変更スイッチ63の操作に従い、温度制御部12はヒータ32を制御し、風量変更スイッチ64の操作に従い、送風制御部11はファン31を制御する。イオン発生ユニット24は、制御部10の制御に従い、吹出口21から吹き出す気体にイオンを混入させる。
【0051】
制御部10は、各部が連系して動作してもよい。例えば、距離センサ23による計測結果(対象物までの距離)が短いほど、使用者の頭髪が熱で痛むことを避けるために、温度制御部12はヒータ32の温度を低下させる。逆に、距離センサ23による計測結果が長いほど、距離がある頭髪に熱を伝えるために、温度制御部12は、ヒータ32の温度を上昇させる。また、距離センサ23による計測結果が長いほど、頭髪に十分な風速で風を当てるために、送風制御部11はファン31をより高速で駆動してもよい。
【0052】
また、頭髪乾燥機1には、少なくとも1つ以上の光源を備えてもよい。光源は、吹出部25または各吹出口21に光を照射して、吹出部25または各吹出口21を照らしてもよい。光源は、吹出口21の周辺に光を照射して、吹出口21の周辺を照らしてもよい。該光源によって吹出口21を明示的に示すことができる。光源を備えることで、複数ある吹出口21がどこにあるのかを使用者が把握し易くなり、意識的に頭髪の毛流れ方向に沿うような姿勢で頭髪乾燥機1を保持するようにすることができる。なお、光の色は、温風の時には赤色、冷風の時は青色というように、風温によって光の色を変えてもよいし、風温にかかわらず一つの色であってもよい。
【0053】
記憶部14は、距離センサ23の計測値の変化を記憶しており、変化の仕方から、頭髪乾燥機1の動きを類推してもよい。記憶部14のデータに基づき類推した頭髪乾燥機1の動きに基づき、送風制御部11および温度制御部12を制御してもよい。
【0054】
〔変形例〕
実施形態では、4個の吹出口21を有する頭髪乾燥機を開示した。以降、これに対する変形例を示す。
【0055】
(吹出口の形状)
実施形態では、吹出口21の形状を、円弧とその円弧の弦とによって構成された開口としたが、吹出口21の形状はこれに限定されない。例えば、図心Cを中心とした円周方向に延伸する略矩形であってもよいし、図心Cを中心とした、扇形状であってもよいし、図心Cを中心とした円周方向に延伸する台形形状であってもよいし、円、楕円、三角形または逆三角形などであってもよいし、他の任意の形状であってもよい。吹出口21の形状は、図心Cに近い側の辺が長い台形形状であってもよいし、図心Cから遠い側の辺が長い台形形状であってもよい。これら形状の図心が、それぞれ図心P1~P4である。
【0056】
(吹出口の配置)
実施形態では、吹出口21は、図心Cを中心とした正多角形を各吹出口の図心として配置された。すなわち、吹出口21は、図心Cを中心とした円周上に配置されたが、これに限定されない。例えば、吹出口21は千鳥配置または格子状に配置されてもよい。この場合でも、吹出口21同士の間隔をあけることによって、低風速領域を発生させ、頭髪を巻き上げる乱流を発生させることができる。
【0057】
(吹出部の回転)
実施形態では、吹出部25は第1本体20に固定されていたが、これに限定されない。例えば、吹出部25は第1本体20に対して回転可能であってもよい。吹出部25を第1本体20に対して回転させることによって、吹出部25を第2本体30に対して回転させていることとなり、頭髪乾燥機1の姿勢と頭髪の毛流れ方向とに対して、適切な吹出部25の角度に吹出部25を回転させることで、容易に高速で頭髪を乾かすことができる。流路22は、風を整流するためのダクトを有してもよい。ダクトは、吹出部25と共に回転可能であってもよい。
【0058】
例えば、吹出部25およびダクトはベアリングで支持されており、また吹出部25およびダクトの重心が偏心しており、結果的に、頭髪乾燥機の姿勢に応じて、ダクトの姿勢が変化してもよい。これにより、頭髪の毛流れ方向に対応した複数の高風速領域を作り出すことができる。また、ダクトの回転は制御部10が頭髪乾燥機の姿勢に応じてモータで制御してもよい。
【0059】
(外付けノズル)
実施形態では、吹出部25が頭髪乾燥機に備わる態様に関して説明したが、これに限定されない。例えば、吹出部25が、外付けのノズル(器具)として、頭髪乾燥機の吹出部にアタッチメントとして取り付け可能(接続可能)な器具であっても構わない。また、この場合においても、吹出部25が頭髪乾燥機に対して回転可能であってもよい。
【0060】
頭髪乾燥機1(以下、「装置」と呼ぶ)の各制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)は、コンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0061】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0062】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0063】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。
【0064】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る頭髪乾燥機は、気体が流れる流路の下流側先端部に設けられた吹出部を備え、前記吹出部には複数の吹出口が設けられており、前記複数の吹出口は、第1吹出口と、前記吹出部における気体の流れ方向から視て前記第1吹出口とは第1方向において異なる位置に位置する第2吹出口と、前記流れ方向から視て前記第1吹出口とは前記第1方向とは異なる第2方向において異なる位置に位置する第3吹出口とを含む。
【0065】
上記の構成によれば、第1吹出口、第2吹出口、および第3吹出口から吹き出す高速な気体と、その間の低速な気体とにおいて、流速の差異があるために、低速な気体において乱流が発生する。その結果、乱流に頭髪が巻き上げられることによって、様々な保持姿勢で頭髪を高い乾燥速度で乾かすことができる。
【0066】
本発明の態様2に係る頭髪乾燥機は、上記態様1において、前記第1吹出口と前記第2吹出口との間の間隔が、前記第1吹出口と前記第2吹出口との対向方向における前記第1及び第2吹出口のそれぞれの長さよりも長くてもよい。
【0067】
上記の構成によれば、第1吹出口から吹き出した気体と、第2吹出口から吹き出した気体が混ざり合うことなく頭髪に気体があたる、頭髪乾燥機と頭髪とまでの距離範囲が広いため、高い乾燥速度で頭髪を乾かすことができる。
【0068】
本発明の態様3に係る頭髪乾燥機は、上記態様1または2において、前記複数の吹出口は、前記複数の吹出口のそれぞれの図心を直線で結んで成る多角形が正多角形となるように設けられてもよい。
【0069】
上記の構成によれば、第1吹出口、第2吹出口、および第3吹出口が均等配置されることになり、種々の保持姿勢において、頭髪を高い乾燥速度で乾かすことができる。
【0070】
本発明の態様4に係る頭髪乾燥機は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記複数の吹出口は、第4吹出口をさらに含み、前記第1~第4吹出口は、前記第1~第4吹出口のそれぞれの図心を直線で結んで成る四角形が、前記流れ方向から視て、正方形となるように配置されてもよい。
【0071】
本発明の態様5に係る頭髪乾燥機は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記複数の吹出口の数が、3個以上8個以下であってもよい。
【0072】
上記の構成によれば、複数の吹出口の間の間隔が狭くなりすぎず、低風速領域を発生させることができる。そのため、高い乾燥速度で頭髪を乾かすことができる。
【0073】
本発明の態様6に係る頭髪乾燥機は、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記複数の吹出口のそれぞれは、前記複数の吹出口の図心を直線で結んで成る多角形の中心と当該吹出口の図心とを結ぶ直線に対して傾斜した方向に延びる細長形状であってもよい。
【0074】
本発明の態様7に係る頭髪乾燥機は、上記態様1から6のいずれかにおいて、前記吹出部の上流側に接続されており、前記吹出部における気体の流れ方向と一致する方向に沿って気体が流れる流路が形成された細長形状の第1本体と、前記第1本体に接続されており、前記第1本体の延びる方向に対して傾斜した方向に延び、握持部を有する第2本体と、をさらに備えてもよい。
【0075】
上記の構成によれば、吹出部から吹き出す気体の流れ方向に対して、第2本体の延伸方向を傾斜させることによって、頭髪乾燥機の保持姿勢を容易に変更することができる。そのため、吹出部から吹き出す気体の流れ方向を容易に操作することができ、頭髪を高い乾燥速度で乾かすことができる。
【0076】
本発明の態様8に係る頭髪乾燥機は、上記態様7において、前記流れ方向における前記第1本体の中心位置において、前記第2本体が接続されてもよい。
【0077】
本発明の態様9に係る頭髪乾燥機は、上記態様7または8において、前記流路に気体を送気するファンと、前記ファンから前記流路に供給される気体を加熱するヒータと、をさらに備え、前記ファンと前記ヒータとのうちの少なくとも一方が第2本体に設けられてもよい。
【0078】
上記の構成によれば、使用者が把持している握持部を含む第2本体に、重量物が含まれるために、把持位置から重心位置が離れていないために、吹出部を任意の姿勢に操作することが容易になる。そのため、頭髪を高い乾燥速度で乾かすことができる。
【0079】
本発明の態様10に係る器具は、頭髪乾燥機の気体の吹出部に接続される器具であって、複数の吹出口を備え、前記複数の吹出口は、第1吹出口と、前記吹出部における気体の流れ方向から視て前記第1吹出口とは第1方向において異なる位置に位置する第2吹出口と、前記流れ方向から視て前記第1吹出口とは前記第1方向とは異なる第2方向において異なる位置に位置する第3吹出口とを含む。
【0080】
上記の構成によれば、既存の頭髪乾燥機に対して、第1吹出口、第2吹出口、および第3吹出口を有する器具を接続することで、第1吹出口、第2吹出口、および第3吹出口から吹き出す高速な気体と、その間の低速な気体とにおいて、流速の差異があるために、低速な気体において乱流が発生する。その結果、乱流に頭髪が巻き上げられることによって、様々な保持姿勢で頭髪を高い乾燥速度で乾かすことができる。
【0081】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 頭髪乾燥機
10 制御部
20 本体部(第1本体)
21 吹出口
22 流路
25 吹出部
30 把持部(第2本体)
31 ファン
32 ヒータ
33 吸気口
60 操作部
80 電源ケーブル
C、P1~P4 図心
図1
図2
図3
図4
図5