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  • 特開-エンジンシステム 図1
  • 特開-エンジンシステム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114085
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/02 20060101AFI20240816BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20240816BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F02D19/02 B
F02D13/02 J
F02D45/00 368S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019487
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】正月 宏明
(72)【発明者】
【氏名】澤下 真人
【テーマコード(参考)】
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G092AB09
3G092FA16
3G092HA13X
3G092HB02X
3G092HC01Z
3G092HC05Z
3G384AA01
3G384AA14
3G384BA18
3G384BA26
3G384DA35
3G384DA44
3G384FA16Z
3G384FA29Z
3G384FA33Z
3G384FA34Z
3G384FA49Z
(57)【要約】
【課題】ガソリンよりも着火しやすい水素を燃料として使用した場合に、プレイグニッションの発生によって吸気システムが破損してしまうことを抑制できるエンジンシステムを提供する。
【解決手段】
エンジンシステム1は、エンジン2と、エンジン2の燃焼室C内に水素を噴射可能なインジェクタ4と、インジェクタ4を制御する制御装置6とを備える。制御装置6は、インジェクタ4が水素の噴射を開始する噴射開始タイミングを変更して、吸気バルブ22が閉じるタイミング以後に、インジェクタ4に水素の噴射を開始させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの燃焼室内に水素を噴射可能なインジェクタと、
前記インジェクタを制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記インジェクタが水素の噴射を開始する噴射開始タイミングを変更して、前記吸気バルブが閉じるタイミング以後に、前記インジェクタに水素の噴射を開始させる第1噴射制御を実行可能である、エンジンシステム。
【請求項2】
吸気管または燃焼室内の圧力を測定可能な圧力センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記圧力センサで測定された圧力が閾値未満である場合、一定の前記噴射開始タイミングで、前記インジェクタに水素の噴射を開始させる第2噴射制御を実行し、
前記圧力センサで測定された圧力が前記閾値以上になった場合、前記第1噴射制御を実行する、請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記エンジンの吸気バルブの開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構をさらに備え、
前記制御装置は、前記第1噴射制御において、前記吸気バルブの開閉タイミング、および、前記インジェクタが水素の噴射を開始する噴射開始タイミングの少なくとも一方を変更して、前記吸気バルブが閉じるタイミング以後に、前記インジェクタに水素の噴射を開始させる、請求項1に記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素を燃料とする内燃機関が知られている。
【0003】
このような内燃機関を制御する制御装置として、例えば、筒内圧の変動から、プレイグニッションの発生、および、バックファイアの発生を検知し、プレイグニッションの発生を検知した場合、燃焼速度を上昇させるための制御を実行し、バックファイアの発生を検知した場合、筒内温度を低下させるための制御を実行する制御装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-130473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、吸気バルブが開いた状態でプレイグニッションが発生すると、吸気管内の圧力が過度に増大する可能性がある。吸気管内の圧力が過度に増大すると、スロットルバルブなど、吸気システムを構成する部品が破損してしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、ガソリンよりも着火しやすい水素を燃料として使用した場合に、プレイグニッションの発生によって吸気システムが破損してしまうことを抑制できるエンジンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、エンジンと、前記エンジンの燃焼室内に水素を噴射可能なインジェクタと、前記インジェクタを制御する制御装置とを備え、前記制御装置が、前記インジェクタが水素の噴射を開始する噴射開始タイミングを変更して、前記吸気バルブが閉じるタイミング以後に、前記インジェクタに水素の噴射を開始させる第1噴射制御を実行可能である、エンジンシステムを含む。
【0008】
このような構成によれば、制御装置は、吸気バルブが閉じるタイミング以後に、インジェクタに水素の噴射を開始させる。
【0009】
そのため、インジェクタが燃焼室内に水素を噴射した後にプレイグニッションが発生したとしても、吸気バルブが閉じているので、吸気管内の圧力が過度に増大することを抑制できる。
【0010】
その結果、プレイグニッションの発生によって吸気システムが破損してしまうことを抑制できる。
【0011】
本発明[2]は、吸気管または燃焼室内の圧力を測定可能な圧力センサをさらに備え、前記制御装置が、前記圧力センサで測定された圧力が閾値未満である場合、前記吸気バルブの開閉タイミングを変更しつつ、一定の前記噴射開始タイミングで、前記インジェクタに水素の噴射を開始させる第2噴射制御を実行し、前記圧力センサで測定された圧力が閾値以上になった場合、前記第1噴射制御を実行する、上記[1]のエンジンシステムを含む。
【0012】
このような構成によれば、圧力センサで測定された圧力が閾値以上になり、プレイグニッションが発生した可能性がある場合に、噴射開始タイミングを変更できる。
【0013】
そのため、例えば、車両の加速時など、インジェクタからの水素の噴射量が増大して、プレイグニッションが発生しやすい条件下で、噴射開始タイミングを変更できる。
【0014】
本発明[3]は、前記エンジンの吸気バルブの開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構をさらに備え、前記制御装置は、前記第1噴射制御において、前記吸気バルブの開閉タイミング、および、前記インジェクタが水素の噴射を開始する噴射開始タイミングの少なくとも一方を変更して、前記吸気バルブが閉じるタイミング以後に、前記インジェクタに水素の噴射を開始させる、上記[1]または[2]に記載のエンジンシステムを含む。
【0015】
このような構成によれば、エンジンシステムが可変バルブタイミング機構を採用している場合に、可変バルブタイミング機構を利用して、吸気バルブが閉じるタイミング以後に、インジェクタに水素の噴射を開始させることができる。
【0016】
詳しくは、可変バルブタイミング機構により、インジェクタが水素の噴射を開始する前に吸気バルブが閉じるように、吸気バルブの開閉タイミングを変更できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエンジンシステムによれば、プレイグニッションの発生によって吸気システムが破損してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態としてのエンジンシステムの概略構成図である。
図2図2は、エンジンシステムの制御を説明するためのフローチャートである。
図3図3は、変形例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.エンジンシステム
図1に示すように、エンジンシステム1は、エンジン2と、可変バルブタイミング機構3と、インジェクタ4と、点火プラグ5と、制御装置6とを備える。エンジンシステム1は、例えば、車両に搭載される。
【0020】
(1)エンジン
エンジン2は、水素を燃料とする。エンジン2は、例えば、直噴4ストロークエンジンである。エンジン2は、複数(例えば、4つ)のシリンダ21を備える。なお、以下の説明では、エンジン2の複数のシリンダ21のうちの1つのシリンダ21について説明し、残りのシリンダ21についての説明を省略する。
【0021】
エンジン2は、シリンダ21と、吸気バルブ22と、排気バルブ23と、吸気側カム24と、排気側カム25と、ピストン26と、クランクシャフト27と、コネクティングロッド28とを備える。
【0022】
シリンダ21は、吸気ポート211と、排気ポート212とを有する。吸気ポート211は、吸気マニホールドを介して吸気管と接続される。排気ポート212は、排気マニホールドを介して排気管と接続される。
【0023】
吸気バルブ22は、吸気ポート211を開閉する。吸気バルブ22は、吸気ポート211を閉じる閉位置と、吸気ポート211を開ける開位置との間を移動可能である。
【0024】
排気バルブ23は、排気ポート212を開閉する。排気バルブ23は、排気ポート212を閉じる閉位置と、排気ポート212を開ける開位置との間を移動可能である。
【0025】
吸気側カム24は、図示しないタイミングベルトまたはタイミングチェーンを介して、クランクシャフト27の回転と同期して回転可能である。吸気側カム24は、吸気バルブ22を、閉位置から開位置に向けて押圧可能である。
【0026】
排気側カム25は、図示しないタイミングベルトまたはタイミングチェーンを介して、クランクシャフト27の回転と同期して回転可能である。排気側カム25は、排気バルブ23を、閉位置から開位置に向けて押圧可能である。
【0027】
ピストン26は、シリンダ21内を往復する。ピストン26の頭部とシリンダ21の内面とで区画される空間が、燃焼室Cである。燃焼室Cは、吸気ポート211および排気ポート212と通じる。
【0028】
クランクシャフト27は、複数のシリンダ21が並ぶ方向に延びる。クランクシャフト27は、軸線Aについて回転可能である。軸線Aは、複数のシリンダ21が並ぶ方向に延びる。クランクシャフト27は、ピストン26の往復運動を回転運動に変換する。
【0029】
詳しくは、クランクシャフト27は、メインジャーナル271と、クランクピン272と、クランクアーム273と、カウンターウェイト274とを有する。
【0030】
メインジャーナル271は、軸線Aに沿って延びる。メインジャーナル271は、円柱形状を有する。クランクピン272は、軸線Aが延びる方向と直交する方向において、メインジャーナル271から離れて配置される。クランクピン272は、軸線Aが延びる方向に延びる。クランクピン272は、円柱形状を有する。クランクアーム273は、メインジャーナル271とクランクピン272とを接続する。カウンターウェイト274は、メインジャーナル271に対して、クランクピン272の反対側に配置される。
【0031】
コネクティングロッド28は、ピストン26と、クランクシャフト27のクランクピン272とを接続する。
【0032】
(2)可変バルブタイミング機構
可変バルブタイミング機構3は、吸気側カム24のシャフトに取り付けられる。可変バルブタイミング機構3は、吸気側カム24をクランクシャフト27に対して進角または遅角させることにより、吸気バルブ22の開閉タイミングを変更可能である。なお、吸気側カム24の位置は、図示しないカム角センサによって検知される。可変バルブタイミング機構3は、制御装置6と電気的に接続される。
【0033】
(3)インジェクタ
インジェクタ4は、燃料としての水素を燃焼室C内に噴射可能である。インジェクタ4は、制御装置6と電気的に接続される。
【0034】
(4)点火プラグ
点火プラグ5は、燃焼室C内の水素に点火する。点火プラグ5は、具体的には、スパークプラグである。点火プラグ5は、制御装置6と電気的に接続される。
【0035】
(5)制御装置
制御装置6は、例えば、車両における電気的な制御を実行するECU(Electronic Control Unit)である。制御装置6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を有する。
【0036】
制御装置6は、可変バルブタイミング機構3、インジェクタ4および点火プラグ5を制御する。
【0037】
2.エンジンシステム1の制御
次に、エンジンシステム1の制御について説明する。なお、以下の説明における「タイミング」は、クランクシャフト27の回転角(クランク角)で表され、図示しないクランク角センサによって検知される。
【0038】
車両のイグニッションスイッチがオンされると、制御装置6が起動する。
【0039】
すると、制御装置6は、まず、エンジン2に対して要求する要求トルクを演算する(S1)。
【0040】
要求トルクとして、例えば、エンジン2のアイドリングを維持するために必要な要求トルク、運転者のアクセル開度に応じた要求トルク、電気機器(例えば、エアコン、オルタネータなど)を作動させるために必要な要求トルクなどが挙げられる。
【0041】
次に、制御装置6は、第1噴射制御(S2~S6)を実行する。第1噴射制御では、制御装置6は、吸気バルブ22が閉じるタイミング以後に、インジェクタ4に水素の噴射を開始させる。なお、「吸気バルブ22が閉じるタイミング」とは、吸気バルブ22が「完全に」閉じるタイミングをいう。
【0042】
第1噴射制御では、制御装置6は、まず、要求トルクの総和(全要求トルク)に基づいて、インジェクタ4の噴射時間Tを取得する(S2)。なお、噴射時間Tは、全要求トルクから計算されてもよいし、全要求トルクと噴射時間Tとの制御マップから取得されてもよい。
【0043】
次に、制御装置6は、噴射開始タイミングを計算する(S3)。噴射開始タイミングは、インジェクタ4が水素の噴射を開始するタイミングである。制御装置6は、点火タイミングから噴射時間T以上前にインジェクタ4が水素の噴射を開始するように、噴射開始タイミングを計算する。点火タイミングは、点火プラグ5が燃焼室C内の水素に点火するタイミングである。点火タイミングから噴射時間T以上前にインジェクタ4が水素の噴射を開始することにより、インジェクタ4は、点火タイミングまでに水素の噴射を完了できる。
【0044】
次に、制御装置6は、吸気バルブ22が閉じるタイミング以後にインジェクタ4が水素の噴射を開始するように、吸気バルブ22の開閉タイミング、および、噴射開始タイミングの少なくとも一方を変更する。
【0045】
例えば、インジェクタ4の噴射開始タイミングが吸気バルブ22が閉じるタイミングよりも前である場合、制御装置6は、インジェクタ4の噴射開始タイミングを遅角させて、インジェクタ4の噴射開始タイミングを、吸気バルブ22が閉じるタイミングよりも後に変更する。
【0046】
ここで、インジェクタ4の噴射開始タイミングを吸気バルブ22が閉じるタイミングよりも後に変更した場合、インジェクタ4が水素の噴射を完了するタイミングが点火タイミングよりも後になってしまう場合がある。
【0047】
この場合、制御装置6は、吸気バルブ22の開閉タイミングを調整する必要があると判断し(S4:YES)、吸気バルブ22の開閉タイミングを調整する(S5)。
【0048】
詳しくは、制御装置6は、点火タイミングまでにインジェクタ4が水素の噴射を完了できる程度にインジェクタ4の噴射開始タイミングを遅角させるとともに、吸気バルブ22が閉じるタイミングがインジェクタ4の噴射開始タイミングよりも前になるように、吸気バルブ22の開閉タイミングを進角させる。
【0049】
なお、制御装置6は、インジェクタ4の噴射開始タイミングを変更しないで、吸気バルブ22が閉じるタイミングがインジェクタ4の噴射開始タイミングよりも前になるように、吸気バルブ22の開閉タイミングを進角させてもよい。
【0050】
次に、制御装置6は、調整された噴射開始タイミングでインジェクタ4に水素の噴射を開始させ、噴射時間Tの間、インジェクタ4に水素を噴射させる(S6)。
【0051】
そして、制御装置6は、車両のイグニッションスイッチがオフされるまで(S7:NO)、要求トルクの演算処理(S1)および第1噴射制御(S2~S6)を繰り返す。
【0052】
なお、車両のイグニッションスイッチがオフされた場合(S7:YES)、制御装置6は、要求トルクの演算処理(S1)および第1噴射制御(S2~S6)を終了する。
【0053】
3.作用効果
(1)エンジンシステム1によれば、図2に示すように、制御装置6は、第1噴射制御(S2~S6)により、吸気バルブ22が閉じるタイミング以後に、インジェクタ4に水素の噴射を開始させる。
【0054】
そのため、インジェクタ4が燃焼室C内に水素を噴射した後にプレイグニッションが発生したとしても、吸気バルブ22が閉じているので、吸気管内の圧力が過度に増大することを抑制できる。
【0055】
その結果、プレイグニッションの発生によって吸気システムが破損してしまうことを抑制できる。
【0056】
(2)エンジンシステム1は、図1に示すように、可変バルブタイミング機構3をさらに備える。
【0057】
そして、制御装置6は、第1噴射制御(S2~S6)において、吸気バルブ22の開閉タイミング、および、インジェクタ4の噴射開始タイミングの少なくとも一方を変更して、吸気バルブ22が閉じるタイミング以後に、インジェクタ4に水素の噴射を開始させる。
【0058】
そのため、可変バルブタイミング機構3により、インジェクタ4が水素の噴射を開始する前に吸気バルブ22が閉じるように、吸気バルブ22の開閉タイミングを変更できる。
【0059】
その結果、可変バルブタイミング機構3を利用して、吸気バルブ22が閉じるタイミング以後に、インジェクタ4に水素の噴射を開始させることができる。
【0060】
4.変形例
次に、変形例について説明する。変形例において、上記した実施形態と同様の部材および処理には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0061】
(1)図3に示すように、制御装置は、上記した第1噴射制御(S2~S6)と、第2噴射制御(S12)とを実行可能であってもよい。
【0062】
エンジンシステム1は、圧力センサの一例としての吸気圧センサ101(図1参照)を備える。吸気圧センサ101は、吸気管102(図1参照)内の圧力を測定可能である。
【0063】
制御装置6は、吸気圧センサ101で測定された圧力Pが閾値P1未満である場合(S11:NO)、第2噴射制御を実行する(S12)。
【0064】
第2噴射制御では、制御装置6は、可変バルブタイミング機構3を制御し、全要求トルクに応じて吸気バルブ22の開閉タイミングを変更する。一方、制御装置6は、噴射開始タイミングを変更しないで、一定の噴射開始タイミングで、インジェクタ4に水素の噴射を開始させる。
【0065】
そのため、第2噴射制御では、吸気バルブ22が閉じるタイミングよりも前に、インジェクタ4が水素の噴射を開始する場合がある。
【0066】
この場合、燃焼室C内に噴射された水素が点火プラグ5によって点火される前に着火してしまう(プレイグニッション)可能性がある。
【0067】
吸気バルブ22が閉じる前にプレイグニッションが発生すると、吸気管102内の圧力が過度に増大し、吸気圧センサ101で測定された圧力Pが閾値P1以上になる場合がある。
【0068】
制御装置6は、吸気圧センサ101で測定された圧力Pが閾値P1以上になった場合(S11:YES)、上記した第1噴射制御(S2~S6)を実行する。
【0069】
この変形例でも、上記した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0070】
また、この変形例によれば、吸気圧センサ101で測定された圧力Pが閾値P1以上になり、プレイグニッションが発生した可能性がある場合に、噴射開始タイミングを変更できる。
【0071】
そのため、例えば、車両の加速時など、インジェクタ4からの水素の噴射量が増大して、プレイグニッションが発生しやすい条件下で、噴射開始タイミングを変更できる。
【0072】
なお、制御装置6は、圧力センサの一例としての図示しない筒内圧センサに基づいて、第1噴射制御と第2噴射制御とを切り替えてもよい。筒内圧センサは、燃焼室C内の圧力を測定可能である。
【0073】
(2)上記した実施形態では、可変バルブタイミング機構3を採用したが、可変バルブタイミング機構3を採用せずに、インジェクタ4の噴射開始タイミングを吸気バルブ22が閉じるタイミングよりも後に出来る範囲で噴射時間Tの上限値を定めてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 エンジンシステム
2 エンジン
3 可変バルブタイミング機構
4 インジェクタ
6 制御装置
22 吸気バルブ
101 吸気圧センサ
図1
図2
図3