(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114092
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】マーケティング素材の評価方法、評価装置、及びマーケティング素材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0241 20230101AFI20240816BHJP
【FI】
G06Q30/0241 444
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019510
(22)【出願日】2023-02-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】新堂 徒夢
(72)【発明者】
【氏名】入戸野 宏
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB08
5L049BB08
(57)【要約】
【課題】本開示の実施形態は、商品のパッケージデザイン等のマーケティング素材をより精度良く評価することができる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示に係るマーケティング素材の評価方法は、マーケティング素材を対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得するプロセスと、マーケティング素材に対する対象者の脳の反応に関する第2指標を取得するプロセスと、マーケティング素材に対する対象者の印象反応に関する第3指標を取得するプロセスと、のうちの少なくとも2つのプロセスを含み、少なくとも2つのプロセスを実行することにより取得される第1指標、第2指標、及び第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、評価する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、前記マーケティング素材を前記対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得するプロセスと、
前記マーケティング素材を見る前記対象者の脳波を測定して、前記マーケティング素材に対する前記対象者の脳の反応に関する第2指標を取得するプロセスと、
前記マーケティング素材を見る前記対象者の応答を測定して、前記マーケティング素材に対する前記対象者の印象反応に関する第3指標を取得するプロセスと、
のうちの少なくとも2つのプロセスを含み、
前記少なくとも2つのプロセスを実行することにより取得される前記第1指標、前記第2指標、及び前記第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、前記マーケティング素材に対する前記対象者の視認、前記マーケティング素材に対する前記対象者の好感、及び前記マーケティング素材からの前記対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、前記マーケティング素材を評価する、マーケティング素材の評価方法。
【請求項2】
マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、前記マーケティング素材を前記対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得する、第1指標取得部と、
前記マーケティング素材を見る前記対象者の脳波を測定して、前記マーケティング素材に対する前記対象者の脳の反応に関する第2指標を取得する、第2指標取得部と、
前記マーケティング素材を見る前記対象者の応答を測定して、前記マーケティング素材に対する前記対象者の印象反応に関する第3指標を取得する、第3指標取得部と、
のうちの少なくとも2つの指標取得部を備え、
前記少なくとも2つの指標取得部により取得される前記第1指標、前記第2指標、及び前記第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、前記マーケティング素材に対する前記対象者の視認、前記マーケティング素材に対する前記対象者の好感、及び前記マーケティング素材からの前記対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、前記マーケティング素材を評価する、マーケティング素材の評価装置。
【請求項3】
マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、前記マーケティング素材を前記対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得するプロセスと、
前記マーケティング素材を見る前記対象者の脳波を測定して、前記マーケティング素材に対する前記対象者の脳の反応に関する第2指標を取得するプロセスと、
前記マーケティング素材を見る前記対象者の応答を測定して、前記マーケティング素材に対する前記対象者の印象反応に関する第3指標を取得するプロセスと、
のうちの少なくとも2つのプロセスを含み、
前記少なくとも2つのプロセスを実行することにより取得される前記第1指標、前記第2指標、および前記第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、前記マーケティング素材に対する前記対象者の視認、前記マーケティング素材に対する前記対象者の好感、及び前記マーケティング素材からの前記対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、前記マーケティング素材を評価し、
前記マーケティング素材の評価結果に基づき、前記マーケティング素材を含む製品を製造する、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーケティング素材の評価方法、評価装置、及びマーケティング素材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新商品の開発やヒット予測を目的としたマーケティングリサーチが行われてきている。例えば、特許文献1には、消費者により回答されたアンケート調査結果等を解析することにより、新商品のヒット予測を提供するマーケティングリサーチ支援方法が開示されている。特許文献2には、アンケート調査結果を効率良く集計し商品販売計画に利用できる顧客の商品に対する嗜好や満足度等の情報を提供できるマーケティングシステムが開示されている。また、特許文献3には、動画像などの経時変化を持つ刺激に対し、対象者の脳活動を計測し、主観評価を取得して定量的に評価する評価方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-272571
【特許文献2】特開2007-102481
【特許文献3】特開2020-074799
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンケート調査は言語化して評価する必要があるので、意識化された主観評価には適している。しかしながら近年は、特許文献3のように脳科学の視点から消費者の心理や行動を調べ、マーケティングに応用するニューロマーケティングが利用されてきている。ニューロマーケティングにより、従来の意識化された主観評価ではなく、無意識化されたノンバーバルな評価が行われるようになってきている。しかしながら、これまでのニューロマーケティングを活用した評価方法は、例えば、脳波の一部の指標のみで評価する等、ある一つの生理指標を用いて評価する方法であり、評価方法に偏りがあり、集約的であった。
【0005】
本発明者等は鋭意検討の結果、脳波、視線、反応時間等の測定項目に基づき取得される複数の指標を組み合わせて多角的にマーケティング素材を評価することにより、評価の精度をさらに向上できると考え、本開示の実施形態を提供することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、マーケティング素材を対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得するプロセスと、マーケティング素材を見る対象者の脳波を測定して、マーケティング素材に対する対象者の脳の反応に関する第2指標を取得するプロセスと、マーケティング素材を見る対象者の応答を測定して、マーケティング素材に対する対象者の印象反応に関する第3指標を取得するプロセスと、のうちの少なくとも2つのプロセスを含み、少なくとも2つのプロセスを実行することにより取得される第1指標、第2指標、及び第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、マーケティング素材を評価するマーケティング素材の評価方法を提供する。
【0007】
本開示の一態様は、マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、マーケティング素材を対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得する、第1指標取得部と、マーケティング素材を見る対象者の脳波を測定して、マーケティング素材に対する対象者の脳の反応に関する第2指標を取得する、第2指標取得部と、マーケティング素材を見る対象者の応答を測定して、マーケティング素材に対する対象者の印象反応に関する第3指標を取得する、第3指標取得部と、のうちの少なくとも2つの指標取得部を備え、少なくとも2つの指標取得部により取得される第1指標、第2指標、及び第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、マーケティング素材を評価するマーケティング素材の評価装置を提供する。
【0008】
本開示の一態様は、マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、マーケティング素材を対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得するプロセスと、マーケティング素材を見る対象者の脳波を測定して、マーケティング素材に対する対象者の脳の反応に関する第2指標を取得するプロセスと、マーケティング素材を見る対象者の応答を測定して、マーケティング素材に対する対象者の印象反応に関する第3指標を取得するプロセスと、のうちの少なくとも2つのプロセスを含み、少なくとも2つのプロセスを実行することにより取得される第1指標、第2指標、および第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、マーケティング素材を評価し、マーケティング素材の評価結果に基づき、マーケティング素材を含む製品を製造する製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の実施形態によれば、商品のパッケージデザイン等のマーケティング素材をより精度良く評価することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価システム1の概要の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価システム1の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価装置100のハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価装置100の機能ブロック構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価指示装置200の機能ブロック構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価支援装置300の機能ブロック構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価システム10の機能構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態において実行されるマーケティング素材の評価処理のフローチャートである。
【
図9A】
図9Aは、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価試験例1の概要を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価試験例2の概要を示す図である。
【
図9C】
図9Cは、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価試験例3の概要を示す図である。
【
図9D】
図9Dは、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価試験例4の概要を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0012】
はじめに、後述する本開示の実施形態に係るマーケティング素材を評価可能な技術を想到するに至った経緯について説明する。なお、本実施形態においてマーケティング素材とは、商品のパッケージデザイン、プロダクトコンセプト、デザインコンセプト、容器デザイン、香り、プロダクトのユーザビリティ(使用感)、TVCM、コミュニケーションコンセプト、コンセプトワード、キャッチコピー、コミュニケーション動画、クリエイティブ(広告などの制作物)、POP(Point of purchase)、販促物などを含む。
【0013】
従来より、商品やマーケティング素材について、消費者の評価を収集し、消費者のニーズや購買意欲に適合したマーケティング素材を提供することが検討されてきた。これまでのマーケティング素材の評価においては、例えばWebアンケートや会場調査(CLT:Central Location Test)などの定量調査や、グループインタビュー、デプスインタビューなどの定性調査が実施されてきた。これらは言語化して評価する必要があるので、意識化された主観評価には適していた。
【0014】
近年、脳科学の視点から消費者の心理や行動を調べるニューロリサーチに基づき消費者の言語化されない無意識の行動を客観的、科学的に分析し、消費者の購買意欲を向上できる製品の開発や、ブランディングの検討に活かすための、ニューロマーケティングが利用されてきている。ニューロマーケティングにより、従来の意識化された主観評価ではなく、無意識化されたノンバーバルな評価が行われるようになってきている。しかしながら、これまでのニューロマーケティングを活用した評価方法は、例えば、脳波の一部の指標のみで評価する等、ある一つの生理指標を用いて結論を導くなど評価方法に偏りがあり、集約的であった。かかる事情に鑑み、本発明者等は鋭意検討の結果、脳波、視線、反応時間等の測定項目に基づき取得される複数の指標を組み合わせて多角的にマーケティング素材を評価することにより、評価の精度をさらに向上できると考え、本開示の実施形態を想到した。
【0015】
後述するように、本開示の実施形態は、マーケティング素材の評価方法に関する。本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価方法は、マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、マーケティング素材を対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得するプロセスと、マーケティング素材を見る対象者の脳波を測定して、マーケティング素材に対する対象者の脳の反応に関する第2指標を取得するプロセスと、マーケティング素材を見る対象者の応答を測定して、マーケティング素材に対する対象者の印象反応に関する第3指標を取得するプロセスと、のうちの少なくとも2つのプロセスを含む。また、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価方法は、上記のプロセスのうちの少なくとも2つを実行することにより取得される第1指標、第2指標、及び第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、マーケティング素材を評価する。
【0016】
本発明者等の検討により、例えば、マーケティング素材を呈示される対象者に対しマーケティング素材が目につき、認識されるかに関する視認性、顧客の興味を惹き、呈示されたマーケティング素材に対し、ポジティブに感じられるかに関する好感、及びマーケティング素材がわかりやすく、コンセプトやメッセージが伝わるかに関する伝達性のいずれか1つを用いることにより、またはこれら視認性、好感、及び伝達性の2つまたは3つ全てを組み合わせて用いることにより、マーケティング素材の評価をより客観的に行うことができることが見出された。また、本発明者等は、マーケティング素材に対する対象者の視認性、好感、及び伝達性は、本開示の実施形態に係る第1指標、第2指標、及び第3指標のいずれかを用いて評価することができると考え、本開示の実施形態に想到した。従って、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価方法によれば、マーケティング素材を客観的に評価することができるので、例えばマーケティング素材の評価の精度を向上することができる。後に説明するように、例えば、商品のパッケージデザインの評価を効率良く実施することができるので、商品の製造開発プロセスを効率良く進めること等が可能となる。さらに、マーケティング素材をより客観的に評価することができるので、例えばより消費者に受け入れられ、購買意欲の向上や消費者による迅速な決断が期待可能な商品等の提供に寄与することができると考えられる。加えて、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価方法によれば、より科学的な根拠に依拠した客観的な評価が可能となるので、例えばこれまで主として実施されてきたアンケート等の主観的で意識的になる傾向のある評価と組み合わせることでより評価の精度が向上される。
【0017】
以下、図面を参照して本実施形態に係るマーケティング素材の評価方法及びマーケティング素材の評価装置について説明する。
【0018】
本開示の実施形態の一態様は、マーケティング素材の評価方法に関する。本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価方法は、マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、マーケティング素材を対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得するプロセスと、マーケティング素材を見る対象者の脳波を測定して、マーケティング素材に対する対象者の脳の反応に関する第2指標を取得するプロセスと、マーケティング素材を見る対象者の応答を測定して、マーケティング素材に対する対象者の印象反応に関する第3指標を取得するプロセスと、のうちの少なくとも2つのプロセスを含む。また、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価方法は、上記のプロセスのうちの少なくとも2つを実行することにより取得される第1指標、第2指標、及び第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、マーケティング素材を評価する。
【0019】
本開示の実施形態の他の態様は、マーケティング素材の評価装置に関する。本開示に係る評価装置は、マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、マーケティング素材を対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得する、第1指標取得部と、マーケティング素材を見る対象者の脳波を測定して、マーケティング素材に対する対象者の脳の反応に関する第2指標を取得する、第2指標取得部と、マーケティング素材を見る対象者の応答を測定して、マーケティング素材に対する対象者の印象反応に関する第3指標を取得する、第3指標取得部と、のうちの少なくとも2つの指標取得部を備える。本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価装置は、少なくとも2つの指標取得部により取得される第1指標、第2指標、及び第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、マーケティング素材を評価する。
【0020】
本開示の実施形態のさらに他の態様は、マーケティング素材及び/またはマーケティング素材を含む製品の製造方法に関する。本開示に係る製造方法は、マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、マーケティング素材を対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得するプロセスと、マーケティング素材を見る対象者の脳波を測定して、マーケティング素材に対する対象者の脳の反応に関する第2指標を取得するプロセスと、マーケティング素材を見る対象者の応答を測定して、マーケティング素材に対する対象者の印象反応に関する第3指標を取得するプロセスと、のうちの少なくとも2つのプロセスを含む。本開示の実施形態に係るマーケティング素材の製造方法は、少なくとも2つのプロセスを実行することにより取得される第1指標、第2指標、および第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、マーケティング素材を評価し、マーケティング素材の評価結果に基づき、マーケティング素材を含む製品を製造する。
【0021】
<システム構成>
図1は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価を実行するマーケティング素材評価システム1の概要の一例を示す図である。
図2は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価システム1の機能構成の一例を示す図である。
図1および
図2に示すように、本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価システム1は、マーケティング素材評価装置100と、マーケティング素材評価指示装置200と、マーケティング素材評価支援装置300と、視線測定装置400と、脳波測定装置500と、判断結果入力装置610と、タイミング同期装置700と、マーケティング素材表示装置800と、を備える。マーケティング素材評価装置100と、マーケティング素材評価指示装置200と、マーケティング素材評価支援装置300と、視線測定装置400と、脳波測定装置500と、判断結果入力装置610と、タイミング同期装置700と、マーケティング素材表示装置800とは、例えば各種コネクターケーブル、例えば、USB(Universal serial bus)ケーブル、D-Sub(D-subminiature)ケーブル、DVI(Digital visual interface)ケーブル、HDMI(登録商標、High-definition multimedia interface)ケーブル、インターネットや電話網などのネットワークを介したLANケーブルなど既存のデジタル機器を接続可能な有線接続や、あるいはWi-Fi等の無線LAN通信や、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near field communication)等の近距離無線通信などを介し無線接続される。有線接続の場合、各種ケーブル等が適宜用いられてもよい。
図1に示す例においては、マーケティング素材評価装置100と、マーケティング素材評価指示装置200と、マーケティング素材評価支援装置300とが、ネットワーク20を介して接続されている。マーケティング素材評価システム1は、データベースDBをさらに備えていてもよい。
【0022】
対象者の脳波は、例えば脳波測定用の電極を対象者に直接接触、あるいは生理食塩水、ジェルやクリームなどを介し間接的に接触させて測定できる。また、電極の設置位置は自由に選択できるが、国際10-20法で定められた配置になるようにキャップ型を被り、電極装置510を対象者の頭に被せて設置されてもよい。電極、および電極装置510は脳波測定装置500に接続されていてもよい。また、
図1および
図2に示す例においては、マーケティング素材評価システム1は、判断結果入力装置610として、判断結果入力装置610a及び610bを有する。判断結果入力装置610(判断結果入力装置610a及び610b)は、本開示の実施形態に係る印象反応測定装置(後述の印象反応測定装置600)の一例である。後述するように、判断結果入力装置610aは、例えば対象者の視線の測定に連動した判断結果の入力を受け付け、また、対象者の判断結果入力装置610aへの入力にかかる反応時間の測定に用いられてもよい。判断結果入力装置610bは、例えば対象者の脳波の測定に連動した判断結果の入力を受け付け、対象者の判断結果入力装置610bへの入力にかかる反応時間の測定に用いられてもよい。なお、本実施形態に係るマーケティング素材評価システム1は、さらに不図示の反応時間測定装置を備えていてもよく、例えば計時部を備える反応時間測定装置により反応時間が測定される構成であってもよい。例えば、計時部は、反応時間の計時開始のタイミングから、対象者の判断結果入力装置610に対する対象者による判断結果の入力を受け付けるタイミングまでの時間を計時するように構成されていてもよい。反応時間の測定は、計時機器等の反応時間測定装置として機能するハードウェア構成に限らず、ソフトウェアを用いて、対象者の判断結果入力装置610への入力の検知のタイミング等に基づき、反応時間が測定される構成であってもよい。なお、以下では判断結果入力装置610aおよび610bのうちの任意の判断結果入力装置を判断結果入力装置610とも記載する。
【0023】
マーケティング素材評価装置100は、例えば、マーケティング素材の評価を実行する対象者等から取得される各種のデータや対象者により入力される判断結果等を収集し、各指標の解析や、指標を用いた統合評価等を行うことにより、マーケティング素材の評価を実行する。マーケティング素材評価装置100は、例えば、パーソナルコンピュータ等により構成することができる。
【0024】
マーケティング素材評価指示装置200は、例えば、マーケティング素材の評価に必要なマーケティング素材のデータをデータベースDBより取得し、マーケティング素材表示装置800に提供する。マーケティング素材評価指示装置200は、例えば、バードウェアとしてパーソナルコンピュータ等により構成することができ、例えば後述のE-Prime(Psychology Software Tools製)、Presentation(Neurobehavioral Systems製)、MATLAB(登録商標、MathWorks製)を用いて駆動するPsychophysics toolboxや、フリーソフトであるPsychoPy、OpenSesame、PsyScope等の心理学実験用ソフトウェアを用いてマーケティング素材表示装置800にマーケティング素材データを提供することができる。
【0025】
また、マーケティング素材評価指示装置200は、マーケティング素材の評価を実行する対象者が判断結果入力装置610において入力した判断結果及び/または反応時間(マーケティング素材を見る対象者の応答)を取得してもよい。さらに、マーケティング素材評価指示装置200は、マーケティング素材の評価において、対象者について測定された視線を、視線測定装置400から取得してもよい。
【0026】
マーケティング素材評価支援装置300は、マーケティング素材評価指示装置200と同様に、例えば、パーソナルコンピュータ等により構成することができる。脳波測定装置500により測定された脳波の電気信号は、マーケティング素材評価支援装置300により取得され、例えば波形モニタソフトMP Monitor Pro(ミユキ技研製)、BrainVisionRecorder(Brain Products製)やMATLAB(登録商標、MathWorks製)を用いて駆動するEEGLAB等の脳波解析支援ソフトを用いて表示、計測、記録されるように構成されていてもよい。また、マーケティング素材評価支援装置300は、マーケティング素材評価指示装置200からの情報をタイミング同期装置700、脳波測定装置500を介し、入力するように構成されていてもよい。
【0027】
マーケティング素材評価装置100、マーケティング素材評価指示装置200、及び/またはマーケティング素材評価支援装置300は、上述のようにパーソナルコンピュータ等により構成することができるが、パーソナルコンピュータに限られず例えば1又は複数の物理的なサーバ等から構成されてもよいし、ハイパーバイザー(hypervisor)上で動作する仮想的なサーバを用いて構成されてもよいし、クラウドサーバを用いて構成されてもよい。例えば、マーケティング素材評価指示装置200、及びマーケティング素材評価支援装置300は、パーソナルコンピュータで構成し、互いにローカルエリアネットワークで接続されて対象者が試験を実施する環境に設置され、マーケティング素材評価装置100はクラウドサーバ等の遠隔の装置として構成されてもよい。
【0028】
視線測定装置400は、マーケティング素材評価指示装置200からの指示により、対象者の視線を測定するように構成されている。例えば、対象者の評価に関する試験の開始から終了までの視線の動きが測定されてもよいし、試験の実施時間のうちの所定の時間に視線が測定されてもよい。視線測定装置400としては、例えば視線検出計が用いられてもよく、例えば、EyeLink 1000 Plus(SR Research製)、Tobii Pro Spectrum、Tobii Pro Fusion、Tobii Pro Nano(Tobiiは登録商標、Tobii Technology製)、Gazepoint GP3 HD eye tracker(Gazepoint製)等のスクリーンベース型の視線測定装置が用いられてもよいし、Pupil Core、Pupil Invisible(Pupil Labs UG製)、Tobii Pro Glasses3等のウェアラブル型の視線測定装置が用いられてもよい。
【0029】
脳波測定装置500は、電極装置510を介して対象者の脳波を測定するように構成されている。例えば、評価に関する試験を開始した後から終了までの対象者の脳波が測定されてもよいし、試験の実施時間のうちの所定の時間に脳波が測定されてもよい。脳波測定装置500としては、例えばヘッドセット型の脳波計が用いられてもよく、例えば、Polymate(登録商標、ミユキ技研製)、actiCHamp Plus、V-amp16、BrainAmp(Brain Products製)、Active Two System(Biosemi製)が用いられてもよい。
【0030】
判断結果入力装置610は、マーケティング素材の評価の試験における対象者からの入力を受け付ける。さらに判断結果入力装置610は、後に例示するように、例えばマーケティング素材の商品コンセプトについての適合性に関する判断や、対象者による購買意欲に関する回答等を受け付ける。また、例えば、判断結果入力装置610への対象者の入力に応じて、対象者の入力に要した反応時間を計測するように構成されていてもよい。対象者に対しマーケティング素材が呈示された後、判断結果を入力するまでにかかった時間を、マーケティング素材評価指示装置200および/またはマーケティング素材評価支援装置300により計測するように構成されていてもよい。判断結果入力装置610としては、対象者が押下可能なボタン等が設けられた装置が用いられてもよく、例えば、Chronos(Psychology Software Tools製)、ボタン型レスポンスデバイス(Current designs製)、USB response pad(The Black Box Toolkit製)などのレスポンスパット装置が用いられてもよく、キーボード、テンキー、マウス等が用いられてもよい。
【0031】
なお、上記の判断結果入力装置610は、本実施形態に係る印象反応測定装置の一例に相当し、対象者からの印象反応を取得する。本実施形態に係る印象反応は、例えば、判断結果入力装置610への入力結果とアンケート調査の結果を用いて、または脳波測定装置500による事象関連電位等の脳波測定結果と反応時間とを用いて、評価されてもよい。
【0032】
タイミング同期装置700は、視線測定装置400を用いた対象者の視線の測定や脳波測定装置500を用いた対象者の脳波の測定、判断結果入力装置610を用いた対象者の入力結果の検知のタイミングの同期を行うように構成されている。例えば、マーケティング素材評価指示装置200からの指示によりマーケティング素材表示装置800で表示される評価用の画像の種類等に応じて、マーケティング素材評価指示装置200からの情報に基づき、タイミング同期装置700により、脳波測定装置500による脳波の測定のタイミングが制御されてもよい。例えば、マーケティング素材評価指示装置200により、マーケティング素材表示装置800に置いてあるマーケティング素材の画像が表示されているタイミングにおける対象者の脳波が測定されるように、タイミング同期装置700が脳波測定装置500に対し信号を送信してもよい。また、例えばあるマーケティング素材の画像が表示されているタイミングで対象者の反応時間を測定する場合にも同様に、タイミング同期装置700からの情報に基づき、例えばマーケティング素材評価支援装置300により、反応時間が測定されてもよい。あるいは、視線の測定のタイミングと脳波の測定のタイミングを同期させることも可能であってもよい。タイミング同期装置としては、例えば、4bitレベルトリガーボックスAP-161(ミユキ技研製)、StmTracker Duo、StmTracker Quad(Cedrus Corporation製)、TriggerBox(Brain Products製)等、生体信号の計測におけるタイミングの同期に用いられる装置が用いられてもよい。
【0033】
マーケティング素材表示装置800は、マーケティング素材の画像、表示されるマーケティング素材に関連する評価語やメッセージ等を表示する。マーケティング素材の画像やメッセージ等、マーケティング素材表示装置800で表示される対象や表示時間、表示を切り替えるタイミングや順番等は、例えばマーケティング素材評価指示装置200により制御されてもよい。マーケティング素材表示装置800としては、例えば、表示装置が用いられてもよく、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機EL等のモニターや、スクリーン等に投影するプロジェクター等の公知の表示装置が用いられてもよい。
【0034】
データベースDBには、マーケティング素材の評価に用いられる情報が格納されており、例えば評価対象となる商品のパッケージデザイン、容器デザイン、POP、販促物等の画像、プロダクトコンセプト、デザインコンセプト、コミュニケーションコンセプト、キャッチコピー、評価用言語等の文章画像、TVCM、コミュニケーション動画、クリエイティブ(広告などの制作物)等の動画等が格納されていてもよい。
【0035】
<ハードウェア構成>
図3は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価装置100のハードウェア構成例を示す図である。マーケティング素材評価装置100は、演算部に相当するCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)等のプロセッサ10aと、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等のメモリ10bと、有線又は無線通信を行う通信部(Interface)10cと、入力操作を受け付ける入力部10dと、情報の出力を行う出力部10eと、を有する。入力部10dは、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等である。出力部10eは、例えば、ディスプレイ及び/又はスピーカ等である。なお、詳細な説明は省略するが、例えば、マーケティング素材評価指示装置200やマーケティング素材評価支援装置300等の他の装置も同様に、マーケティング素材評価装置100について上述したハードウェア構成の少なくとも一部を有していてもよい。
【0036】
<機能ブロック構成>
(マーケティング素材評価装置)
図4は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価装置100の機能ブロック構成例を示す図である。マーケティング素材評価装置100は、制御部110と、取得部120と、通信処理部130と、評価部140と、出力部150と、記憶部160と、を含む。制御部110と、取得部120と、通信処理部130と、評価部140と、出力部150とは、マーケティング素材評価装置100のプロセッサ10aが、例えば記憶部160に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。記憶部160は、マーケティング素材評価装置100が備えるメモリ10bを用いて実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、HDD、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0037】
制御部110は、例えば、マーケティング素材評価指示装置200、及びマーケティング素材評価支援装置300からそれぞれ出力される各測定値、判断結果、及び反応時間等を所定のタイミングで取得するように取得部120を制御する。
【0038】
取得部120は、第1指標取得部122と、第2指標取得部124と、第3指標取得部126と、を備える。第1指標取得部122は、視線測定装置400で測定された対象者の視線データを、マーケティング素材評価指示装置200より、例えば通信処理部130を介して取得する。第2指標取得部124は、例えば、脳波測定装置500により測定された第2指標である対象者の脳波データをマーケティング素材評価支援装置300より通信処理部130を介して取得する。第3指標取得部126は、対象者の印象反応に関する指標である第3指標に関する情報を取得するように構成されており、例えば、判断入力結果取得部126aと、反応時間取得部126bと、を備える。判断入力結果取得部126aは、判断結果入力装置610に入力された対象者の判断結果に関する情報を例えば通信処理部130を介してマーケティング素材評価指示装置200及び/またはマーケティング素材評価支援装置300より取得してもよい。また、反応時間取得部126bは、例えば、マーケティング素材評価システム1が不図示の反応時間測定装置を有する場合には、対象者の判断結果の入力等にかかった時間等の反応時間を取得してもよい。あるいは、判断結果入力装置610で反応時間の測定が行われる場合には、反応時間に関するデータは、マーケティング素材評価指示装置200及び/またはマーケティング素材評価支援装置300により取得されてもよい。また、例えば、マーケティング素材評価支援装置300により、脳波の測定に関連して反応時間が測定される場合、反応時間取得部126bは、マーケティング素材評価支援装置300より反応時間に関するデータを取得してもよい。
【0039】
通信処理部130は、例えば、マーケティング素材評価指示装置200、マーケティング素材評価支援装置300、視線測定装置400、脳波測定装置500、判断結果入力装置610、タイミング同期装置700、マーケティング素材表示装置800、及びデータベースDBとの間で各種の通信を行う。
【0040】
評価部140は、例えば、マーケティング素材の評価の対象者からの測定値、及び/または入力結果等を分析、解析し、および/または評価するように構成されていてもよい。評価部140は、例えば、第1指標解析部142と、第2指標解析部144と、第3指標解析部146と、統合評価部148と、を備えていてもよい。
【0041】
第1指標解析部142は、例えば、対象者から測定された視線データである第1指標を分析、解析するように構成されていてもよい。
【0042】
第2指標解析部144は、例えば、対象者から測定された脳波のデータである第2指標を分析、解析するように構成されていてもよい。
【0043】
第3指標解析部146は、例えば、対象者の印象反応に関する指標である第3指標を分析、解析するように構成されていてもよい。第3指標解析部146は、例えば、判断入力結果解析部146aと、反応時間解析部146bと、選択率算出部146cと、を備えていてもよい。判断入力結果解析部146aは、判断入力結果取得部126aにより取得された、対象者による入力結果(マーケティング素材を見る対象者の応答)を解析することにより、対象者の印象反応に関する第3指標としてもよい。例えば判断入力結果解析部146aは、対象者に対して示された質問に対する回答内容を解析してもよく、複数の対象者による回答の正答率の算出や、複数の異なるマーケティング素材に対する質問の正答率の比較等を行ってもよい。反応時間解析部146bは、例えば、マーケティング素材を見る複数の対象者の反応時間を取得し、反応時間の平均値やバラつきを算出することにより対象者のマーケティング素材に対する印象反応に関する第3指標としてもよく、また、複数の異なるマーケティング素材に対する入力にかかる反応時間の比較等を行うことにより、対象者のマーケティング素材に対する印象反応に関する第3指標としてもよい。選択率算出部146cは、例えば、2つのマーケティング素材のいずれかを選択する質問に対する複数の対象者による回答に基づき各マーケティング素材の選択率を算出してもよい。
【0044】
統合評価部148は、各指標を統合して評価するように構成されている。統合評価部148は、第1指標解析部142により解析された目の動きに関する第1指標の解析結果、第2指標解析部144により解析された脳波に関する第2指標の解析結果、及び第3指標解析部146により解析された印象反応に関する第3指標の解析結果のうちの少なくとも2つを統合し、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価するように構成されている。すなわち、統合評価部148は、例えば、第1指標及び第2指標を統合して対象者の視認、好感、及び伝達のうちの少なくとも1つを評価するように構成されていてもよい。また、統合評価部148は、例えば、第1指標及び第3指標を統合して視認、好感、及び伝達のうちの少なくとも1つを評価してもよい。あるいは、統合評価部148は、第2指標及び第3指標を統合して視認、好感、及び伝達のうちの少なくとも1つを評価してもよい。また、統合評価部148は、例えば、第1指標、第2指標、及び第3指標を統合して視認、好感、及び伝達のうちの少なくとも1つを評価するように構成されていてもよい。
【0045】
出力部150は、例えば、表示装置等により出力するように構成されており、視線データ出力部152aと、第1指標解析結果出力部152bと、脳波データ出力部154aと、第2指標解析結果出力部154bと、印象反応データ出力部156aと、第3指標解析結果出力部156bと、統合評価結果出力部158と、を備える。視線データ出力部152aは、視線測定装置400により測定され、マーケティング素材評価指示装置200より取得された視線データを表示するように構成されている。第1指標解析結果出力部152bは、第1指標解析部142による第1指標の解析結果を出力するように構成されている。脳波データ出力部154aは、脳波測定装置500により測定され、マーケティング素材評価支援装置300より取得された脳波データを出力するように構成されている。第2指標解析結果出力部154bは、第2指標解析部144による第2指標の解析結果を出力するように構成されている。印象反応データ出力部156aは、例えば判断結果入力装置610aに入力されマーケティング素材評価指示装置200より取得された入力結果や判断結果入力装置610bに入力されマーケティング素材評価支援装置300より取得された判断入力結果や反応時間等の印象反応データを出力するように構成されている。第3指標解析結果出力部156bは、第3指標解析部146による第3指標の解析結果を出力するように構成されている。統合評価結果出力部158は、統合評価部148による統合評価を出力するように構成されている。各解析結果や評価結果は、例えば表示装置に表示されることにより出力されてもよい。例えば、視線データ、脳波データ、印象反応データ、第1~第3指標解析結果、統合評価の結果等は、各データのグラフ等の可視化された態様で表示されてもよい。
【0046】
記憶部160は、収集データDB162と、評価用データDB164とを含む。収集データDB162には、対象者からの視線データ、脳波データ、反応時間データ、及び/または判断結果の入力データや、各指標の解析結果、統合評価の結果等が記憶されていてもよい。評価用データDB164には、例えばデータベースDBより取得されるマーケティング素材評価用画像のデータ等、マーケティング素材の評価プロセスの実行に使用されるデータ等が格納される。
【0047】
(マーケティング素材評価指示装置)
図5は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価指示装置200の機能ブロック構成例を示す図である。マーケティング素材評価指示装置200は、制御部210と、取得部220と、通信処理部230と、出力部250と、記憶部260と、を含む。制御部210と、取得部220と、通信処理部230と、出力部250とは、マーケティング素材評価指示装置200のプロセッサ10aが、例えば記憶部260に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。記憶部260は、マーケティング素材評価指示装置200が備えるメモリ10bを用いて実現することができる。以下、マーケティング素材評価指示装置200において、マーケティング素材評価装置100と同様の構成については詳細な説明は省略する。
【0048】
制御部210は、呈示画面制御部212と、同期制御部214と、を備える。呈示画面制御部212は、マーケティング素材表示装置800で表示される画像を制御するように構成され、例えば、マーケティング素材の画像やメッセージ等、マーケティング素材表示装置800で表示される対象や表示時間、表示を切り替えるタイミングや順番等を制御するように構成されていてもよい。呈示画面制御部212は、例えば、データベースDBに格納されている商品のパッケージデザインのようなマーケティング素材の画像(マーケティング素材群Sに含まれるマーケティング素材s1、s2、…、sn)の一つまたはいくつかを取得し、被評価者に対する説明、被評価者へのメッセージ、質問の画面や、例えば中央に十字の画像を含む統制画像等、表示される画面を組み合わせ、所定の順番で表示されるようにマーケティング素材表示装置800を制御してもよい。表示される画像の選択や、テキスト等により作成されるメッセージの情報の作成、各画面が表示される順番等は、実験者の設計により入力されてもよいし、予めプログラムされて用意されていてもよい。
【0049】
同期制御部214は、例えば、呈示画面制御部212において設計され呈示される画面のタイミングと、生体情報等の各指標の測定のタイミングとを同期させるように構成されていてもよい。例えば、あるマーケティング素材が表示されるタイミングで視線の測定が開始、あるいは終了するように、同期制御部214が視線測定装置400に指示し制御するように構成されていてもよい。また、脳波の測定のタイミングが同期されるように構成されてもよく、同期制御部214は、タイミング同期装置700を介して、脳波測定装置500の脳波の測定の開始や終了を指示して制御するように構成されていてもよい。さらに印象反応に関するマーケティング素材を見る対象者の応答の測定のタイミングを同期するように構成されてもよく、例えば、ある画像やメッセージ情報が表示されてから判断結果入力装置610に対する入力を受け付けるまでの時間である反応時間の測定のタイミングを、画像やメッセージ情報の表示のタイミングと同期するように構成されてもよい。
【0050】
呈示画面制御部212および/または同期制御部214は、例えば、既存のソフトウェアを用いて実現されてもよく、呈示される画像の取り込みや編集、メッセージの情報の入力の受け付け、画面のデザインやレイアウトの作成、各画面の表示される順番等を設計することができる。また、上述のように、例えば、MATLAB(登録商標、MathWorks製)を用いて駆動するPsychophysics toolboxや、フリーソフトであるPsychoPy、OpenSesame、PsyScope等のソフトウェアを用いて呈示画面制御部212を実現し、マーケティング素材表示装置800にマーケティング素材データを提供することができる。さらに、他の例として、Tobii Pro Lab(Tobiiは登録商標、Tobii Technology製)、iMotions(登録商標、iMotions社製)等の、主に視線測定において、視線測定装置400の制御、また、測定された視線データの分析や解析に用いられるソフトウェアを用いて呈示画面の設計を行うことも可能であり、これにより、例えば呈示される画面の所定のタイミングに視線の測定のタイミングを比較的容易に同期させることもできる。また、例えば、これらの複数のソフトウェアを連携して呈示画面の設定や制御、視線の測定等を実現することもできる。
【0051】
また、制御部210は、例えば、視線測定装置400、及び判断結果入力装置610からそれぞれ出力される各測定値、判断結果、および反応時間等を所定のタイミングで取得するように取得部220を制御してもよい。
【0052】
取得部220は、第1指標取得部222と、第3指標取得部226と、マーケティング素材取得部228と、を備える。第1指標取得部222は、視線測定装置400で測定された対象者の視線データを視線測定装置400より例えば通信処理部230を介して取得する。第3指標取得部226は、対象者の印象反応に関する指標である第3指標に関する情報を取得するように構成されており、例えば、判断入力結果取得部226aと、反応時間取得部226bと、を備える。判断入力結果取得部226aは、判断結果入力装置610に入力された対象者の判断結果に関する情報を例えば通信処理部230を介して取得してもよい。また、反応時間取得部226bは、例えば、マーケティング素材評価システム1が不図示の反応時間測定装置を有する場合には、対象者の判断結果の入力等にかかった時間等の反応時間を取得する。あるいは、判断結果入力装置610で反応時間の測定が行われる場合には、判断結果入力装置610より反応時間に関するデータが取得されてもよい。マーケティング素材取得部228は、後述のデータベースDBからマーケティング素材群Sに含まれるマーケティング素材s1~snのうちの一つまたはいくつかを取得するように構成されていてもよい。
【0053】
通信処理部230は、マーケティング素材評価装置100、マーケティング素材評価支援装置300、視線測定装置400、脳波測定装置500、判断結果入力装置610、タイミング同期装置700、マーケティング素材表示装置800、及びデータベースDBとの間で各種の通信を行う
【0054】
出力部250は、例えば、表示装置等により出力するように構成されており、視線データ出力部252aと、印象反応データ出力部256aと、を備える。視線データ出力部252aは、視線測定装置400により測定された視線データを出力するように構成されてもよい。印象反応データ出力部256aは、例えば判断結果入力装置610aに入力された入力結果や反応時間等の印象反応データを出力するように構成されてもよい。
【0055】
記憶部260は、収集データDB262と、評価用データDB264とを含む。収集データDB262には、対象者からの視線データ、反応時間データ、及び/または判断結果の入力データ等が記憶されていてもよい。また、対象者の属性情報や、消費行動の情報など、対象者自身に関する情報を記録されてもよい。評価用データDB264には、例えばデータベースDBより取得されるマーケティング素材評価用画像のデータ等、マーケティング素材の評価プロセスの実行に使用されるデータ等が格納される。
【0056】
図5には、データベースDBも併せて示す。
図5に示すように、データベースDBは、例えば評価に用いるマーケティング素材(例えば、マーケティング素材評価用画像)s1~snを含むマーケティング素材群Sが格納されていてもよい。
【0057】
(マーケティング素材評価支援装置)
図6は、本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価支援装置300の機能ブロック構成例を示す図である。マーケティング素材評価支援装置300は、制御部310と、取得部320と、通信処理部330と、出力部350と、記憶部360と、を含む。制御部310と、取得部320と、通信処理部330と、出力部350とは、マーケティング素材評価支援装置300のプロセッサ10aが、例えば記憶部360に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。記憶部360は、マーケティング素材評価支援装置300が備えるメモリ10bを用いて実現することができる。以下、マーケティング素材評価支援装置300において、マーケティング素材評価装置100及び/またはマーケティング素材評価指示装置200と同様の構成については詳細な説明は省略する。
【0058】
制御部310は、例えば、脳波測定装置500及び判断結果入力装置610bからそれぞれ出力される脳波測定値、判断結果、および/または反応時間等を所定のタイミングで取得するように取得部320を制御するように構成される。制御部310は、同期制御部314を備える。
【0059】
同期制御部314は、例えば、マーケティング素材表示装置800において画像が表示されるタイミングと、対象者により判断結果入力装置610bに判断結果が入力されるタイミングとを同期させるように構成されていてもよい。例えば、脳波の測定と、あるマーケティング素材が表示されるタイミングとを同期するように構成されていてもよい。タイミング同期装置700、脳波測定装置500を介し脳波の測定のタイミングに同期してもよい。また、同期制御部314により、判断結果入力装置610bに対する判断結果の入力が取得されてもよい。また、同期制御部314は、タイミング同期装置700を介した、マーケティング素材評価指示装置200からの指示に基づく、脳波測定装置500の脳波の測定の開始や終了の指示に同期してもよい。さらには判断結果入力装置610bを制御するように構成されていてもよい。また、脳波測定装置500による脳波の測定のタイミングに応じて、印象反応の測定のタイミングを同期するように構成されてもよい。
【0060】
取得部320は、第2指標取得部324と、第3指標取得部326と、脳波測定情報取得部328とを備える。第2指標取得部324は、脳波測定装置500で測定された対象者の脳波データを脳波測定装置500より例えば通信処理部330を介して取得する。第3指標取得部326は、対象者の印象反応に関する指標である第3指標に関する情報を取得するように構成されており、例えば、判断入力結果取得部326aと、反応時間取得部326bと、を備える。判断入力結果取得部326aは、判断結果入力装置610bに入力された対象者の判断結果に関する情報を例えば通信処理部330を介して取得してもよい。また、反応時間取得部326bは、例えば、マーケティング素材評価システム1が不図示の反応時間測定装置を有する場合には、対象者の判断結果の入力等にかかった時間等の反応時間を取得してもよく、また、判断結果入力装置610bで反応時間の測定が行われる場合には、判断結果入力装置610bより反応時間に関するデータが取得されてもよい。脳波測定情報取得部328は、例えばマーケティング素材評価指示装置200から、タイミング同期装置700を介した、脳波測定装置500における脳波測定処理のタイミングに関するデータを取得するように構成されていてもよい。
【0061】
通信処理部330は、マーケティング素材評価装置100、マーケティング素材評価指示装置200、視線測定装置400、脳波測定装置500、及び判断結果入力装置610b、タイミング同期装置700等との間で各種の通信を行う。
【0062】
出力部350は、例えば、表示装置等により出力するように構成されており、脳波データ出力部354aと、印象反応データ出力部356aと、を備える。脳波データ出力部354aは、脳波測定装置500により測定された脳波データを出力するように構成されており、印象反応データ出力部356aは、例えば判断入力結果や反応時間等の印象反応データを出力するように構成されている
【0063】
記憶部360は、収集データDB362と、評価用データDB364とを含む。収集データDB362には、対象者からの脳波データ、反応時間データ、及び/または判断結果の入力データが記憶されてもよい。また、対象者の属性情報や、消費行動の情報など、対象者自身に関する情報を記憶されてもよい。評価用データDB364には、例えばデータベースDBより取得されるマーケティング素材評価用画像のデータ等、マーケティング素材の評価プロセスの実行に使用されるデータ等が格納される。
【0064】
上記、マーケティング素材評価装置100、マーケティング素材評価指示装置200、及びマーケティング素材評価支援装置300の機能構成を中心に説明したが、マーケティング素材評価システム1が備える視線測定装置400、脳波測定装置500、判断結果入力装置610、タイミング同期装置700、及び/またはマーケティング素材表示装置800等の他の装置も同様の構成を有していてもよい。例えば、これらの装置が、制御部、取得部、通信処理部、及び/または記憶部等を含む構成を有していてもよく、例えば制御部、取得部、及び/または通信処理部は、各装置のプロセッサ10aが、例えば記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができ、記憶部は、各装置が備えるメモリ10bを用いて実現することができる構成であってもよい。また、マーケティング素材評価装置100、マーケティング素材評価指示装置200、及びマーケティング素材評価支援装置300と同様に、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができ、当該プログラムを格納した記憶媒体は、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体等のコンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体であってもよい。
【0065】
また、上述の実施形態においては、例えば心理学実験用、視線解析用、脳波解析用の各種ソフトウェア等、既存のソフトウェアを用いてマーケティング素材評価システム1が実現される場合を例に説明したが、これに限られず、例えば、これら複数のソフトウェアの一部または全部の機能を統合して含むソフトウェアにより実現されてもよい。上述の複数のソフトウェアの一部または全部の機能を統合して含むソフトウェアは、例えば、MATLAB(登録商標、MathWorks製)、R言語、Python(登録商標)等のプログラミング言語を用いて各パラメータの測定、解析、評価等の一部または全部の処理を実行するように作成されてもよい。
【0066】
上述してきた本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価システム1においては、マーケティング素材評価装置100に独立して、マーケティング素材評価指示装置200、マーケティング素材評価支援装置300、視線測定装置400、脳波測定装置500、判断結果入力装置610、タイミング同期装置700、及びマーケティング素材表示装置800が設けられる場合を例に説明したが、マーケティング素材評価装置100の構成はこれに限られない。例えば、マーケティング素材評価指示装置200、マーケティング素材評価支援装置300、視線測定装置400、脳波測定装置500、判断結果入力装置610、タイミング同期装置700、及びマーケティング素材表示装置800の全部または一部の機能をマーケティング素材評価装置100が奏するように構成されていてもよい。
【0067】
図7を参照して、本開示の他の実施形態に係るマーケティング素材評価装置900を説明する。
図7は、本開示の他の実施形態に係るマーケティング素材評価装置900を含むマーケティング素材評価システム10の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図7に示すマーケティング素材評価装置900は、主に、
図1及び
図2を参照して上述したマーケティング素材評価システム1のマーケティング素材評価指示装置200及び/またはマーケティング素材評価支援装置300により実行される機能の一部についても実行する点で、マーケティング素材評価装置100と異なる。以下、マーケティング素材評価装置900において、マーケティング素材評価システム1のマーケティング素材評価装置100と同様の構成については詳細な説明は省略する。
【0068】
マーケティング素材評価装置900は、マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、マーケティング素材を対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得する、第1指標取得部922と、マーケティング素材を見る対象者の脳波を測定して、マーケティング素材に対する対象者の脳の反応に関する第2指標を取得する、第2指標取得部924と、マーケティング素材を見る対象者の応答を測定して、マーケティング素材に対する対象者の印象反応に関する第3指標を取得する、第3指標取得部926と、のうちの少なくとも2つの取得部を含む取得部920(本開示の実施形態における指標取得部の一例)を備える。本開示の実施形態に係るマーケティング素材評価装置900は、少なくとも2つの指標取得部により取得される第1指標、第2指標、及び第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、マーケティング素材を評価する。
【0069】
マーケティング素材の評価は、マーケティング素材評価装置900においては、例えば評価部940により実行される。評価部940は、第1指標解析部942と、第2指標解析部944と、第3指標解析部946と、統合評価部948と、を備える。第1指標取得部922、第2指標取得部924、及び第3指標取得部926により、視線測定装置400、脳波測定装置500、及び判断結果入力装置等の印象反応測定装置600からそれぞれ取得された視線データ(第1指標)、脳波データ(第2指標)、及び印象反応データ(第3指標)は、第1指標解析部942、第2指標解析部944、及び第3指標解析部946により解析されるように構成されている。また、統合評価部948において、解析された第1指標、第2指標、及び第3指標のうちの少なくとも2つを統合して、評価することにより、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価するように構成されている。
【0070】
マーケティング素材評価装置900は、上述の、視線測定装置400より視線データを取得するように構成される第1指標取得部922、脳波測定装置500より脳波データを取得するように構成される第2指標取得部924、印象反応測定装置600より印象反応データを取得するように構成される第3指標取得部926、及び第1指標解析部942、第2指標解析部944、第3指標解析部946、及び統合評価部948を備える評価部940のほか、マーケティング素材評価システム1のマーケティング素材評価装置100と同様に、同期制御部914を含む制御部910と、通信処理部930と、出力部950と、収集データDB962及び評価用データDB964を含む記憶部960と、を備えていてもよい。
【0071】
また、
図7を参照して説明したマーケティング素材評価システム10及びマーケティング素材評価装置900のほか、例えば、マーケティング素材評価装置100としてパーソナルコンピュータが用いられる場合に、判断結果入力装置610、及び/またはマーケティング素材表示装置800の機能を、それぞれ、パーソナルコンピュータが備える、キーボード等の入力部、及び/または液晶表示パネル等の表示部により実現される構成であってもよい。また、反応時間測定装置についても、例えばパーソナルコンピュータのタイマーなどの計時部により実現される構成であってもよい。
【0072】
また、マーケティング素材評価システム10のマーケティング素材評価装置900は、上述してきたようにマーケティング素材評価システム1のマーケティング素材評価装置100、マーケティング素材評価指示装置200、及びマーケティング素材評価支援装置300の全部または一部の機能を実行するように構成されているので、例えば、上述の複数のソフトウェアの一部または全部の機能を統合して含むソフトウェアである、MATLAB(登録商標、MathWorks製)、R言語、Python(登録商標)等のプログラミング言語を用いて各パラメータの測定、解析、評価等の一部または全部の処理を実行するように作成されたソフトウェアを用いて実現することもできる。
【0073】
<マーケティング素材の評価方法>
以下、
図8を参照して、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価方法を説明する。
図8は、本開示の実施形態において実行されるマーケティング素材の評価処理のフローチャートの一例である。
【0074】
はじめに、上述したマーケティング素材評価装置の取得部は、マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、マーケティング素材を対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得するプロセスと、マーケティング素材を見る対象者の脳波を測定して、マーケティング素材に対する対象者の脳の反応に関する第2指標を取得するプロセスと、マーケティング素材を見る対象者の応答を測定して、マーケティング素材に対する対象者の印象反応に関する第3指標を取得するプロセスとをそれぞれ実行することにより、第1指標、第2指標及び第3指標を取得する(S802)。ここで上述した同期制御部を用いることにより、第1指標、第2指標及び第3指標は、同時に取得されてもよいし、これら3つの指標のうちの少なくとも2つの指標は、同時に取得されてもよい。
なお本開示に係るマーケティング素材評価装置及び方法は、第1指標、第2指標及び第3指標の3つの指標を取得する態様に限られるものではなく、例えば、第1指標、第2指標及び第3指標の3つの指標のうち任意の2つの指標のみを取得するように構成されてもよい。
【0075】
続いて、上述したマーケティング素材評価装置の評価部は、第1指標、第2指標、及び第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうち少なくとも1つを評価する(S803)。
【0076】
続いて、上述したマーケティング素材評価装置の統合評価部は、マーケティング素材に対する対象者の視認についての評価結果(例えば、後述する視認指数)、マーケティング素材に対する対象者の好感についての評価結果(例えば、後述する好感指数)、及びマーケティング素材からの対象者への伝達についての評価結果(例えば、後述する伝達指数)を1つの結果に統合して、マーケティング素材を評価(例えば、後述する総合評価)する(S804)。また、ステップS803において視認、好感、及び/または伝達のうちの2つまたは3つを評価する場合、ステップS804において各指標の評価値に重み付けした値を取得したうえで統合して1つの数値を算出することによりマーケティング素材を評価してもよい。重みづけの具体例については後述する。。
【0077】
上述のように、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価方法においては、第1指標、第2指標、及び第3指標のうちの少なくとも2つに基づきマーケティング素材の評価を行ってよい。従って、例えば、第1指標及び第2指標を用いて、視認、好感及び伝達の少なくとも一つを評価することにより得られた少なくとも一つの評価値に基づいて、マーケティング素材の評価が実行されてもよい。このとき、マーケティング素材の評価方法は、第1指標を取得するプロセスと、第2指標を取得するプロセスと、第1指標と、第2指標と、に基づいてマーケティング素材を評価するプロセスと、を含む。
【0078】
また、例えば、第1指標及び第3指標を用いてマーケティング素材の評価が実行されてもよい。すなわち、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価方法は、第1指標を取得するプロセスと、第3指標を取得するプロセスと、第1指標と、第3指標と、に基づいてマーケティング素材を評価するプロセスと、を含んでいてもよい。
【0079】
同様に、例えば、第2指標及び第3指標を用いてマーケティング素材の評価が実行されてもよく、この場合、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価方法は、第2指標を取得するプロセスと、第3指標を取得するプロセスと、第2指標と、第3指標と、に基づいてマーケティング素材を評価するプロセスとを含んでいてもよい。
【0080】
さらに、例えば、第1指標、第2指標、及び第3指標の全てを用いてマーケティング素材の評価が実行されてもよい。このとき、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価方法は、第1指標を取得するプロセスと、第2指標を取得するプロセスと、第3指標を取得するプロセスと、第1指標と、第2指標と、第3指標と、に基づいてマーケティング素材を評価するプロセスと、を含んでいてもよい。後述するように、マーケティング課題や目的に合わせて取得する指標を選択し、評価することが可能である。
【0081】
なお、例えば、上述の第1指標、第2指標、及び第3指標のうちの2つの指標に基づき、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうちの1つを評価してもよい。また、例えば、第1指標、第2指標、及び第3指標の全ての指標を用いて視認、好感、及び伝達のうちの1つを評価してもよい。あるいは、例えば、第1指標、第2指標、及び第3指標のうちの1つの指標を用いて視認、好感、及び伝達のうちの1つを評価し、第1指標、第2指標、及び第3指標のうちの他の1つの指標を用いて視認、好感、及び伝達のうちの他の1つを評価、すなわち、視認、好感、及び伝達のうちの2つを評価することによりマーケティング素材の評価が行われてもよい。あるいは、第1指標、第2指標、及び第3指標の3指標の全てに基づいて、視認、好感、及び伝達のうちの1つを評価することにより、マーケティング素材の評価を行ってもよい。また、視認、好感、及び伝達のうちの2つを評価することによりマーケティング素材の評価を行ってもよく、あるいは、視認、好感、及び伝達の3つ全てを評価することによりマーケティング素材の評価を行ってもよい。どの組み合わせで評価を行うかについては、マーケティング課題や目的に合わせて視認、好感、及び伝達から適宜選択し、組み合わせて評価をする。
【0082】
例えば、マーケティング素材に対する対象者の視認については、第1指標に相当する視線データに基づく評価のほか、第2指標に相当する脳波の測定データとして、例えば事象関連電位(ERP)に基づいて評価してもよい。また、視認は、例えば、第3指標に相当する印象反応の測定に基づき算出可能な目立ち度により評価してもよい。マーケティング素材に対する対象者の好感については、第2指標による感情度評価のほか、覚醒度評価と組み合わせて評価してもよく、第1指標の測定において、対象者がマーケティング素材を見ている時間である視線の停留時間に基づき評価してもよい。また、第3指標の測定に基づき算出可能な好意度や魅力度、購買意欲によって対象者の好感を評価してもよい。マーケティング素材からの対象者への伝達については、第1指標に基づき、例えば、上記同様に、視線の停留時間により評価してもよく、、第2指標の測定に基づく事象関連電位によって、あるいは、第3指標に基づきあるメッセージに対する印象反応によって評価してもよい。
【0083】
上述したように、視認、好感、及び/または伝達のうちの2つまたは3つに基づき評価する場合においては、各指標に重み付けし統合して数値を算出することにより評価してもよい。例えば、視認、好感、及び伝達について、それぞれに重み付けをし、重み付けされた2つの指標を加算して算出される重み付け和により総合的な評価を行ってもよいし、視認、好感、及び伝達の全てについてそれぞれに重み付けして加算した重み付け和により評価してもよい。例えば、視認、好感、及び伝達の評価について、それぞれ3、2、1、及び0のいずれかを付す4段階で定量化して評価してもよい。視認、好感、及び伝達のうち2つに基づき評価する場合、いずれかの評価が0となる。視認、好感、及び伝達に対する重み付けをそれぞれA、B、及びCとし、A+B+C=1が成り立つとする。例えば、A=B=C=1/3である場合、ある2つの検討パッケージデザインである検討パッケージデザインX及び検討パッケージデザインYに関し、検討パッケージデザインXについては視認、好感、及び伝達の評価が、それぞれ2、2、及び2、検討パッケージデザインYについては視認、好感、及び伝達の評価が、それぞれ3、2、及び1、であるとき、総合評価は、検討パッケージデザインXについては、A(1/3)x視認の評価(2)+B(1/3)x好感の評価(2)+C(1/3)x伝達の評価(2)=2となり、検討パッケージデザインYについては、A(1/3)x視認の評価(3)+B(1/3)x好感の評価(2)+C(1/3)x伝達の評価(1)=2となり、いずれも同等の評価となる。一方、例えば、マーケティング課題として、パッケージデザインからメッセージを伝えることの重要性が高いとき、A=0.2、B=0.3、及びC=0.5という重み付けとすると、検討パッケージデザインXについては、A(0.2)x視認の評価(2)+B(0.3)x好感の評価(2)+C(0.5)x伝達の評価(2)=2となり、検討パッケージデザインYについては、A(0.2)x視認の評価(3)+B(0.3)x好感の評価(2)+C(0.5)x伝達の評価(1)=1.7となり、検討パッケージデザインXの総合評価>検討パッケージデザインYの総合評価という関係となるので、検討パッケージデザインXのほうがこのマーケティング課題に則しているという判断が可能である。また、マーケティング課題として、視認性の重要性が高いとき、A=0.5、B=0.25、及びC=0.25という重み付けとすると、検討パッケージデザインXについては、A(0.5)x視認の評価(2)+B(0.25)x好感の評価(2)+C(0.25)x伝達の評価(2)=2、検討パッケージデザインYについては、A(0.5)x視認の評価(3)+B(0.25)x好感の評価(2)+C(0.25)x伝達の評価(1))=2.25という総合評価となり、検討パッケージデザインYの総合評価>検討パッケージデザインXの関係となるので、検討パッケージデザインYのほうがこのマーケティング課題に則しているという判断が可能である。
【0084】
各指標の重み付けA、B、及びCについては、実施される評価試験により他の態様も可能である。例えば、ある指標につき複数の試験が実施される場合には、複数の試験のそれぞれについて定量的な評価ができるように、重み付けや評価の点数が算出されてもよい。例えば、A=a1+a2+…+ak、B=b1+b2+…+bl、及び/またはC=c1+c2+…+cm(k、l、及びmは自然数)と設定してもよい(この場合はA+B+C=1)。また、計算上表記を分かりやすくするため、A+B+C=1とは独立に視認に関する各指標の重みづけをa1+a2+…+ak=1とし、好感に関する各指標の重みづけをb1+b2+…+bl=1とし、伝達に関する各指標の重みづけをc1+c2+…+cm=1(k、l、及びmは自然数)としてもよく、各指標×重みづけにより算出される値を視認指数、好感指数、伝達指数とし、総合評価を視認指数×A+好感指数×B+伝達指数×C(ただし、A+B+C=1)から算出してもよい。例えば、後述する評価試験例に示されるように、視認性について、棚画像による評価(注目度)及びパッケージデザイン単体のTFFによるAOI数の評価が実施される場合、それぞれの評価に対する重みづけをa1、a2とし、同様に好感について、感情度と覚醒度の評価に対する重みづけをb1、b2とし、同様に伝達について、1つ目のメッセージに対する選択率と2つ目のメッセージに対する選択率の評価に対する重みづけをc1、c2とし、さらに、視認指数、好感指数、伝達指数の重みづけをそれぞれA、B、Cとしたとき、総合評価=視認指数(=注目度評価×a1+AOI数評価×a2)×A+好感指数(=感情度評価×b1+覚醒度評価×b2)×B+伝達指数(=1つ目の選択率評価×c1+2つ目の選択率評価×c2)として最終的な総合評価を算出できる。それぞれの重みづけは評価対象となるマーケティング課題や評価の目的に応じて事前に設定され、それぞれの試験の評価結果について異なる重み付けを付す構成であってもよい。
【0085】
このように、各指標を組み合わせて総合評価を行うことにより、マーケティング素材をより客観的に評価することができる。本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価においては、上述のように、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうちの少なくとも1つに基づき評価することが可能であるが、例示のように複数の指標を組み合わせることにより、多角的な観点からの評価が可能となり、また、様々なマーケティング課題にもより適合した評価をすることも可能となる。具体的には、上記の例のように各指標に対してマーケティング課題に応じて異なる重み付けをすることにより、様々なマーケティング課題に対しても効果的に評価することが可能となる。なお、上記の重み付け和による評価は例示であり、総合的に評価する方法についてはこれらに限られない。例えば、重み付けの方法や重みの大きさについて、上記の例以外の計算方法により数値が決められてもよいし、総合評価の数値の算出についても重み付けされた各指標の和に限られず、他の様々な計算手法が用いられてもよい。
【0086】
以上説明した本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価方法は、例えば、一のマーケティング素材と他のマーケティング素材とを同時に呈示される対象者の反応を測定するプロセスを含んでいてもよい。評価試験例や実施例を示して後述するように、マーケティング素材及び他のマーケティング素材を同時に呈示する場合、例えば、マーケティング素材がある商品のパッケージデザインとしたとき、一のパッケージデザインと他のパッケージデザインを配列し、陳列された状態を想定した棚画像を、対象者に呈示してもよい。
【0087】
また、一のパッケージデザインと他のパッケージデザインとを同時に対象者に呈示する場合、例えば、これらのパッケージデザインを一の配列(第1の配列)に基づき呈示した後、他の配列(第2配列)に基づき配列して呈示してもよい。例えば、棚画像により複数のパッケージデザインを呈示する場合、1回目に呈示される棚画像と、2回目以降に呈示される棚画像において、複数のパッケージデザインが異なる配置で配置されてもよい。3回以上呈示する場合においても同様に、異なる配列(第3の配列、第4の配列…)に基づき配置される棚画像が呈示されてもよい。
【0088】
対象者がマーケティング素材を見る目の動きに関する指標(本開示の実施形態において、第1指標)を取得する場合には、Z値(Z-score)を用いて評価されてもよい。Z値は、標準得点とも称され、例えば、あるサンプルの測定値から全サンプルの測定値の平均値を差し引いた値を標準偏差で除することにより算出することができる。本開示の実施形態においては、例えば、ある対象の測定された視線データから、全対象の視線データの平均値を差し引いた値を標準偏差により除して算出することができる。ある実施形態においては、Z値を用いることにより、例えば、測定値(例えば視線データ)のZ値が0.5以上であれば視線データは高いと判断するようにしてもよい。別の実施形態においては、例えばZ値が1.0以上、さらに他の実施形態においては、Z値が2.0以上の場合に、測定値(例えば視線データ)が高いと判断されてもよい。Z値による視認性の評価は、例えば、上記のように棚画像を用いた視認性の評価において特に好適に用いることができる。
【0089】
本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価プロセスにおいては、例えば、複数のマーケティング素材が1つずつ順に呈示されてもよい。すなわち、マーケティング素材を第1時間呈示するプロセスと、この第1時間の間に視線データ(第1指標)を取得するプロセスと、第1時間の経過後に他のマーケティング素材を第2時間呈示するプロセスと、第2時間の間に第1指標を取得するプロセスと、を含んでいてもよい。また、第2時間の経過後、さらに他のマーケティング素材(第3のマーケティング素材、第4のマーケティング素材...)を複数呈示するプロセスと第1指標を取得するプロセスと、を含んでいてもよい。また、第1時間や第2時間など各時間の中では、マーケティング素材の呈示を連続して行う必要はなく、マーケティング素材を呈示した後、何の素材も見せないブランク画面を呈示した後、再び同じマーケティング素材を呈示することも可能である。第1時間や第2時間は、マーケティング素材により変更できるが、静止画の場合は数秒から数百秒であってよく、例えば1秒以上180秒以下が好ましく、3秒以上120秒以下がより好ましく、5秒以上60秒以下がさらに好ましい。動画の場合は呈示物により変動するが、数秒から数百分であってもよく、例えば1秒以上180分以下が好ましく、5秒以上60分以下がより好ましい。
【0090】
本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価プロセスにおいて呈示される複数のマーケティング素材は、例えば互いに異なる製造者により製造されていてもよい。あるいは、呈示される複数のマーケティング素材は、例えば、同じ製造者により製造されていてもよい。例えば、上記のように、複数のマーケティング素材が1つずつ順に呈示される場合であり、マーケティング素材がパッケージデザインである場合、複数の異なる製造者(製造業者等)により製造された製品のパッケージデザインがランダムに呈示され、自社製品のパッケージデザインと他社製品のパッケージデザインとの比較を行ってもよい。あるいは、自社製品について複数通りのパッケージデザインを検討する場合に、これらのパッケージデザインを順に呈示して、自社のパッケージデザインの候補同士の検討をする際に本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価が行われてもよい。
【0091】
また、この評価プロセスにおいては、対象者の視線データ(第1指標)だけでなく、脳の反応に関するデータ(第2指標)、印象反応に関するデータ(第3指標)など、他の指標の取得が行われてもよい。すなわち、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価プロセスにおいては、例えば、一のマーケティング素材を第1時間呈示するプロセスと、第1時間の間に対象者の脳の反応(第2指標)を測定するプロセスと、第1時間の経過後に他のマーケティング素材を第2時間呈示するプロセスと、第2時間の間に対象者の脳の反応(第2指標)を測定するプロセスと、を含んでいてもよく、また、さらに、第2時間の経過後、他のマーケティング素材(第3のマーケティング素材、第4のマーケティング素材...)を複数呈示するプロセスと、第1指標、第2指標、及び第3指標のいずれか一つまたは複数を取得するプロセスとを含んでいてもよい。なお、上述の例と同様に、第1時間や第2時間など各時間の中でマーケティング素材の呈示を連続して行う必要はなく、マーケティング素材を呈示する前後において、何の素材も見せないブランク画面を呈示することも可能である。
【0092】
また、ある実施形態においては、対象者に、コンセプトなどのマーケティング課題に即したメッセージを呈示し、複数の互いに異なるマーケティング素材を呈示し、複数のマーケティング素材から一または複数のマーケティング素材の選択を受け付ける、あるいは、メッセージとマーケティング素材の一致/不一致を判断させてもよい。例えば、対象者に、まずメッセージを呈示し、その後、2つ(または3つ以上)のマーケティング素材を呈示し、メッセージへの適合性が高いと判断されるマーケティング素材を選択するように求めてもよい。また、例えば、少なくとも1つ以上のメッセージを呈示し、その後、少なくとも1つ以上のマーケティング素材を呈示し、それぞれメッセージに対するマーケティング素材の一致/不一致の判断を求めてもよい。この場合に、例えば、対象者がマーケティング素材の選択、あるいは一致/不一致の判断に要した時間(反応時間、第3指標)を測定してもよい。また、対象者にマーケティング素材の画像が呈示されてから、対象者がマーケティング素材を選択するまでの間、脳の反応(脳波、第2指標)を測定し評価してもよい。コンセプトなどマーケティング課題に即したメッセージは、文章、文、文節、単語など状況に合わせて呈示されてもよい。呈示の方法は画面上に呈示してもよいし、状況によっては試験担当者が対象者に分かるように口頭で説明してもよい。また、複数の互いに異なるマーケティング素材の呈示は、例えば、同一画面に同時に呈示されてもよいし、第1時間においてあるマーケティング素材が単体で呈示され、続く第2時間で他のマーケティング素材が呈示されてもよい。呈示の方法は上述の例に限定されることなく、メッセージの後にマーケティング素材を呈示しても、マーケティング素材を呈示後にメッセージを呈示してもよい。すなわち、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価プロセスでは、マーケティング課題に即したメッセージを呈示するプロセスと、少なくとも1つ以上のマーケティング素材を対象者に呈示するプロセスと、メッセージに対してマーケティング素材の適合性として一致/不一致の判断を受け付けるプロセスと、対象者のマーケティング素材に対する印象反応(本開示の実施形態において、第3指標)として、マーケティング素材を呈示してから判断を受け付けるまでの時間である反応時間を測定するプロセスと、を含んでいてもよい。また、他の実施形態に係るマーケティング素材の評価プロセスでは、マーケティング課題に即したメッセージを呈示するプロセスと、マーケティング素材及び他のマーケティング素材のうちの一のマーケティング素材の選択を受け付けるプロセスと、対象者のマーケティング素材に対する印象反応(本開示の実施形態において、第3指標)として、マーケティング素材及び他のマーケティング素材を呈示してから選択を受け付けるまでの時間である反応時間を測定するプロセスと、を含んでいてもよい。さらに、マーケティング素材、またはメッセージを呈示してから判断、または選択を受け付けるまでの脳波データ(第2指標)を測定するプロセス、を含んでいてもよい。
【0093】
また、ある実施形態においては、対象者に、マーケティング素材を呈示し、複数の互いに異なるコンセプトなどのマーケティング課題に即したメッセージを呈示し、複数のメッセージから一または複数のメッセージの選択を受け付ける、あるいは、マーケティング素材とメッセージの一致/不一致を判断させてもよい。例えば、対象者に、まずマーケティング素材を呈示し、その後、2つ(または3つ以上)のメッセージを呈示し、マーケティング素材への適合性が高いと判断されるメッセージを選択するように求めてもよい。また、例えば、少なくとも1つ以上のマーケティング素材を呈示し、その後、少なくとも1つ以上のメッセージを呈示し、それぞれマーケティング素材に対するメッセージの一致/不一致の判断を求めてもよい。この場合に、例えば、対象者がメッセージの選択、あるいは一致/不一致の判断に要した時間(反応時間、第3指標)を測定してもよい。また、対象者にメッセージが呈示されてから、対象者がメッセージを選択するまでの間、脳の反応(脳波、第2指標)を測定し評価してもよい。コンセプトなどマーケティング課題に即したメッセージは、文章、文、文節、単語など状況に合わせて呈示されてもよい。また、複数の互いに異なるメッセージの呈示は、例えば、同一画面に同時に呈示されてもよいし、第1時間においてあるメッセージが単体で呈示され、続く第2時間で他のメッセージが呈示されてもよい。呈示の方法は上述の例に限定されることなく、マーケティング素材の後にメッセージを呈示しても、メッセージを呈示後にマーケティング素材を呈示してもよい。すなわち、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価プロセスでは、マーケティング素材を対象者に呈示するプロセスと、少なくとも1つ以上のマーケティング課題に即したメッセージを呈示するプロセスと、マーケティング素材に対してメッセージの適合性として一致/不一致の判断を受け付けるプロセスと、対象者のマーケティング素材に対する印象反応(本開示の実施形態において、第3指標)として、メッセージを呈示してから判断を受け付けるまでの時間である反応時間を測定するプロセスと、を含んでいてもよい。例えば、あるパッケージデザイン画像を呈示し、呈示されたパッケージデザインから伝わりそうなイメージに関するメッセージワードや、効果、機能に関するメッセージワードを呈示し、パッケージデザインに対しメッセージワードが適合/不適合となるか、あるいはパッケージデザインに対しメッセージワードが一致/不一致となるか選択を求めてもよい。
【0094】
また、他の実施形態に係るマーケティング素材の評価プロセスでは、マーケティング素材を呈示するプロセスと、マーケティング課題に即したメッセージ及び他のメッセージのうちの一のメッセージの選択を受け付けるプロセスと、対象者のマーケティング素材に対する印象反応(本開示の実施形態において、第3指標)として、メッセージ及び他のメッセージを呈示してから選択を受け付けるまでの時間である反応時間を測定するプロセスと、を含んでいてもよい。さらに、マーケティング素材、またはメッセージを呈示してから判断、または選択を受け付けるまでの脳波データ(第2指標)を測定するプロセス、を含んでいてもよい。例えば、あるパッケージデザインを呈示し、呈示されたパッケージデザインから伝わりそうなイメージに関するメッセージワードや、効果、機能に関するメッセージワードを少なくとも2つ以上呈示し、パッケージデザインに対し適するメッセージワードの選択を求めてもよい。
【0095】
印象反応を受け付けるプロセスでは、適合/不適合率、一致/不一致率、選択/非選択率を算出し、評価してもよい。選択率は、例えば、百分率で算出されてもよい。すなわち、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価プロセスでは、マーケティング課題に即したメッセージを呈示するプロセスと、マーケティング素材と、他のマーケティング素材とを対象者に呈示するプロセスと、マーケティング素材及び他のマーケティング素材のうちの一のマーケティング素材の選択を受け付けるプロセスと、印象反応に関するデータ(第3指標)として、マーケティング素材及び他のマーケティング素材を呈示してから選択を受け付けるまでの時間である反応時間を測定するプロセスと、マーケティング素材及び他のマーケティング素材の選択率を算出するプロセスと、を、複数の対象者に対して実行するプロセスを含み、選択率を算出するプロセスは、複数の対象者のそれぞれが、マーケティング素材及び他のマーケティング素材のうちのいずれを選択したかの情報に基づき選択率を算出するプロセスを含んでいてもよく、複数の対象者の選択率を平均し、平均選択率を算出するプロセス、を含んでいてもよい。また、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価プロセスでは、マーケティング素材を呈示するプロセスと、マーケティング課題に即したメッセージと、他のメッセージとを対象者に呈示するプロセスと、メッセージ及び他のメッセージのうちの一のメッセージの選択を受け付けるプロセスと、印象反応に関するデータ(第3指標)として、メッセージ及び他のメッセージを呈示してから選択を受け付けるまでの時間である反応時間を測定するプロセスと、メッセージ及び他のメッセージの選択率を算出するプロセスと、を、複数の対象者に対して実行するプロセスを含み、選択率を算出するプロセスは、複数の対象者のそれぞれが、メッセージ及び他のメッセージのうちのいずれを選択したかの情報に基づき選択率を算出するプロセスを含んでいてもよく、複数の対象者の選択率を平均し、平均選択率を算出するプロセス、を含んでいてもよい。適合/不適合率、一致/不一致率、非選択率の算出についても同様に評価してもよい。
【0096】
適合/不適合率、一致/不一致率、選択/非選択率の算出による評価において、コンセプト文などのマーケティング素材から伝えたいメッセージに対する評価を行う場合は伝達を評価し、好意度や魅力度、購買意欲など好意に関するメッセージに対する評価を行う場合は好感を評価し、目立ち度や注目度など視認に関するメッセージに対する評価を行う場合は視認が評価されてもよい。
【0097】
また、ある実施形態では、例えば、対象となるマーケティング素材を含む商品が有する印象についての評価をしてもよい。例えば、対象となるマーケティング素材がパッケージデザインであって、対象のパッケージデザインを含む対象商品が子供向けに開発される商品において、対象商品のパッケージデザインが子供向けの印象を与えるか否かについて対象者から選択を受け付け、選択率により評価してもよく、選択にかかる反応時間により評価をしてもよい。また、子供向けの印象を与えるか否かについて、メッセージを「子供向け」だけでなく、「大人向け」など、意味として反意となるメッセージに対する印象を対象商品が与えるか否かについて対象者から選択を受け付け、評価してもよい。また、評価試験開始前に予め対象者の性別、年齢などの属性情報を把握し、特定の属性に属する対象者の対象商品への印象を評価するため、例えば「自分向け」とのメッセージに対する印象について、対象商品が与えるか否かについて対象者から選択を受け付け、評価してもよい。
【0098】
また、ある実施形態では、例えばパッケージデザインを呈示された場合に、パッケージデザインを含む対象商品を対象者が購入したいと思うか否かについての選択を受け付けてもよい。すなわち、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価プロセスにおいては、対象者の、対象商品に対する購買意欲に関するメッセージを呈示するプロセスと、マーケティング素材に対し対象者から、購買意欲の有無に関する応答を受け付けるプロセスと、を含んでいてもよい。また、このとき、対象者の選択に要する反応時間を測定し、測定された反応時間に関するデータが評価に用いられてもよい。購買意欲に関するメッセージのほか、例えば、対象商品が好きか、魅力的かなどを評価するワードを用いて、好意を評価しても良い。対象となるマーケティング素材を含む対象商品に対する好意の印象を評価する場合は、好感の評価としてもよい。また、その他のマーケティング課題に即し、対象商品の印象を評価するメッセージを呈示し、呈示されたメッセージに対する回答を対象者から受け付けてもよい。マーケティング素材の企画・製作者らが伝達したいと考えるメッセージに関しては伝達性の評価とし、例えば、親しみやすいか、自分向けか、効果が感じられるか、新しいか、独自性があるか等が挙げられ、視認に関するメッセージに関しては、視認性の評価とし、例えば、目立つか、見やすいか、目につくか等が挙げられる。
【0099】
<マーケティング素材の製造方法>
次に、本開示の実施形態に係るマーケティング素材を含む製品の製造方法を説明する。
【0100】
はじめに、マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、マーケティング素材を対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得するプロセスと、マーケティング素材を見る対象者の脳波を測定して、マーケティング素材に対する対象者の脳の反応に関する第2指標を取得するプロセスと、マーケティング素材を見る対象者の応答を測定して、マーケティング素材に対する対象者の印象反応に関する第3指標を取得するプロセスと、の少なくとも2つのプロセスを実行することにより、第1指標、第2指標及び第3指標のうちの少なくとも2つの指標を取得する。
【0101】
続いて、第1指標、第2指標、及び第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうち少なくとも1つを評価する。
【0102】
次いで各評価値を1つの結果に統合することにより、マーケティング素材を評価する。ただし視認、好感及び伝達のうち1つのみを評価する場合、その評価値は、マーケティング素材の評価値となる。
【0103】
次に、マーケティング素材の評価結果に基づき、マーケティング素材を含む製品を製造する。
【0104】
本開示の実施形態に係るマーケティング素材の製造プロセスにおいて、例えば、製品はパッケージデザインを含んでいてもよく、製造プロセスは、第1指標と、第2指標と、第3指標と、のうち少なくとも2つの指標に基づき、パッケージデザインに対する対象者の視認、対象者の好感、及び対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、評価されたパッケージデザインを含む製品を製造するプロセスを含んでいてもよい。
【0105】
<評価試験例>
図9A-
図9Dを参照して、本開示の実施形態に係る例示のマーケティング素材の評価試験方法を説明する。
図9A-
図9Dは、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価試験方法の概要を示す図である。以下で説明されるマーケティング素材の評価処理プロセスは例示であり、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価はこれらに限られない。これら以外の方法による評価が、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価処理として、または下記例示のマーケティング素材の評価処理に加えて実施されてもよい。また、下記例示のマーケティング素材の評価処理あるいは下記以外のマーケティング素材の評価処理は、単独で行われてもよいし、複数が組み合わせて実施されてもよい。例えば、以下の評価処理の評価試験方法例1~4を適宜マーケティング課題に即して組み合わせて実施してもよいし、試験方法例1~4以外の試験方法と組み合わせて実施してもよい。また、1つの評価試験を実施して、第1~3指標のうちいずれか2つ、もしくは3つすべてのデータを取得してもよく、複数の評価試験を実施して、各試験毎に第1~3指標のうちいずれか1つもしくは2つ、もしくは3つ全てのデータを取得して、視認性、好感、伝達性のうち少なくとも1つ以上の評価を行ってもよい。
【0106】
以下に説明する評価試験方法例1は、マーケティング素材(本試験実施例1、2では評価用画像としてパッケージデザイン画像)を対象者に呈示し、見る対象者の視線を測定して視認性に関する第1指標を取得して視認性を評価し、脳の反応として脳波を測定して好感(感情度、覚醒度)に関する第2指標を取得して好感を評価する試験方法である。
【0107】
評価試験方法例2は、マーケティング課題に即したメッセージを対象者に呈示し、その後マーケティング素材(本試験実施例1では評価用画像としてパッケージデザイン画像)を呈示する試験方法である。この試験では、対象者の脳の反応として脳波(事象関連電位)を測定して伝達性に関する第2指標を取得して、伝達性を評価する試験方法である。さらに、合わせて対象者にはメッセージに対してマーケティング素材が適合するか否か、選択反応を求め、メッセージが呈示されてから対象者が選択するまでの反応時間を測定して印象反応に関する第3指標を取得し伝達性を評価してもよい。また、選択反応から選択率を算出し、第3指標としてもよい。
【0108】
評価試験方法例3は、マーケティング素材(本試験実施例2では、評価用画像として陳列棚における複数のパッケージデザインを陳列した棚画像)を対象者に呈示する試験方法である。この試験では、見る対象者の視線を測定して視認性に関する第1指標を取得して視認性を評価する。
【0109】
評価試験方法例4は、対象者にマーケティング課題に即したメッセージを呈示し、その後に2つのマーケティング素材(本試験実施例2では評価用画像として1つパッケージデザインと他のパッケージデザインを同時に画面に呈示する画像)を呈示する試験方法である。この試験では、「2つのマーケティング素材のうち買いたい方をお選びください」など購買意欲に関するメッセージを呈示し、対象者に2つのマーケティング素材のうち一の選択を求め、選択されたマーケティング素材の選択率と、選択した際の反応時間を測定して好感に関する第3指標を取得して、好感性を評価する。また、「2つのマーケティング素材のうち、子供向けと思うものをお選びください」など、マーケティング素材の企画・製作者がマーケティング素材から伝えたいと思う評価ワードをメッセージとして呈示し、対象者に2つのマーケティング素材のうち一の選択を求め、選択されたマーケティング素材の選択率と、選択した際の反応時間を測定して印象反応に関する第3指標を取得して、伝達性を評価してもよい。
【0110】
上述したように評価試験方法は上記評価試験方法例1~4に留まらず、他の試験方法を用いることや、一部評価方法を変更し、より精度の高い第1~3指標のデータを取得してもよい。また、評価試験方法例1~4に加え、対象者に対しアンケートを実施し、意識的な評価を行ってもよい。
【0111】
また、各評価の試験例に共通して、試験を開始する前に必要な準備が行われてもよい。例えば対象者に対し、試験実施内容の説明のほか、対象者の脳波を測定するために用いられる電極が設けられたキャップ状の脳波測定装置の装着等が実施されてもよく、対象者の属性(性別、年齢、居住地、家族構成、職業、収入)や、評価するマーケティング素材のカテゴリーに該当する商品の購入もしくは使用、またその時期などを事前にアンケート等により確認し、商品カテゴリー・ブランドユーザー、ノンユーザー、あるいはその程度をヘビー、ミドル、ライトなどクラスタ分けをし、マーケティング課題に即した対象者を選び、その対象者に対して評価が実施されてもよい。
【0112】
(評価試験方法例1:パッケージデザインの視認・好感の評価)
評価試験方法例1は、パッケージデザイン単体(マーケティング素材)の視認に関する評価と好感に関する評価をする試験方法例である。
図9Aに、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価試験方法例1における評価試験の概要の一例を示す。本評価試験方法例1においては、対象製品のパッケージデザインの画像を呈示し、対象者の視線(第1指標)、及び/または脳波(第2指標)の数値データを取得する。
図9Aに示すように、対象者へはまずシナリオを呈示する。シナリオの呈示前には視線測定のための視線のキャリブレーションや脳波データ取得のための準備、本試験内容の説明などが行われた状態であるものとする。シナリオとは、例えば入浴剤に関するパッケージデザインの評価のとき、事前に寒い時期を対象者にイメージしてもらうために、「季節は冬です」と文言を呈示する、あるいは寒いと感じられるようなイメージ写真、画像を呈示することであり、マーケティング課題に合わせた状況を説明するための呈示文や画像及び写真のことである。シナリオの呈示後、統制画面として、画面中央に点「・」や十字「+」あるいは何も呈示しないブランク画面などを呈示し、その後、評価する対象のパッケージデザインを呈示する。例えば
図9Aに示すように複数(本試験実施例1、2においては3つ)のパッケージデザインを呈示して、比較評価を実施してもよい。なお、本試験実施例1、2においては1試行につき1つのパッケージデザインを3回呈示し、3つのパッケージデザインについて評価したため、全9試行である。また、呈示する時間は統制画面を6.5秒、パッケージデザインは1回につき13秒呈示し、対象者に対し1つのパッケージデザインは合計39秒呈示する。もっとも、呈示時間はこれに限るものではなく、マーケティング課題、マーケティング素材に合わせて適宜決められる。また、パッケージデザインを呈示する順番は対象者間でカウンターバランスをとり呈示される。
【0113】
本評価試験におけるマーケティング素材であるパッケージデザイン画像について、表示装置に呈示する際に製品の実寸と同じ大きさとなるように設定されてもよい。また、画像を表示装置に呈示する前に、状況説明文(シナリオ)を呈示する、あるいは試験実施者が口頭で試験対象者に説明してもよい。例えば、呈示するパッケージデザインが入浴剤カテゴリーに含まれる商品である場合、季節が寒い冬であることを対象者に想定させ、状況を説明した後に、パッケージデザイン画像を呈示するようにしてもよい。パッケージデザイン画像は、上述した画像呈示ソフトを用いて実施してもよい。画像呈示ソフトは、例えばE-Prime(Psychology Software Tools製)、Presentation(Neurobehavioral Systems,Inc.製)、MATLAB(登録商標、MathWorks社製)を用いて駆動するPsychophysics toolboxや、フリーソフトであるPsychoPy、OpenSesame、PsyScope等があげられる。また、Tobii Pro Lab(Tobiiは登録商標、Tobii Technology製)、iMotions(登録商標、iMotions製)等の視線測定に用いられるソフトを利用して実施されてもよい。画像の呈示に用いられる表示装置は、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機EL等のモニターや、スクリーン等に投影するプロジェクター等があげられる。
【0114】
パッケージデザイン画像が呈示されている間、対象者の視線、脳波、及び/または印象反応の第1指標、第2指標、第3指標のうち少なくとも2つ以上を取得するが、本試験例においては視線及び脳波データを取得する。対象者の目の動き(視線)の測定には、上述したようにEyeLink 1000 Plus(SR Research製)、Tobii Pro Spectrum、Tobii Pro Fusion、Tobii Pro Nano(Tobiiは登録商標、Tobii Technology製)、Gazepoint GP3 HD eye tracker(Gazepoint製)等のスクリーンベース型の視線測定装置が用いられてもよく、Pupil Core、Pupil Invisible(Pupil Labs UG製)、Tobii Pro Glasses3等のウェアラブル型の視線測定装置が用いられてもよい。対象者は視線測定装置における視線測定センサから機器に応じた距離(おおよそ60~80cm)を保つ位置に座り、無理のない姿勢でモニターを見るように指示されてもよい。対象者の脳の反応(脳波)の測定には、上述したようにPolymate(登録商標、ミユキ技研製)、actiCHamp Plus、V-amp16、BrainAmp(Brain Products製)、Active Two System(Biosemi製)等の脳波測定装置が用いられてもよい。視線や脳波の測定時は体動によるノイズが入りにくくなるように、対象者は身体をなるべく動かさないようにパッケージデザイン画像が呈示される表示画面を見ることや、パッケージデザイン画像が呈示される時間は過度にまばたきをしないように指示されてもよい。
【0115】
脳波(EEG(Electroencephalogram)は、例えば、接地電極(GND)をFpz、基準電極(REF)を左右の耳朶(A1、A2)に置き、活性電極をJasper、1958(Jasper, H.H., The Ten-Twenty Electrode System of the International Federation. Electroencephalography and Clinical Neurophysiology, 10, 371-375, 1958)で提唱される国際10‐20法に基づき、少なくともFp1、Fp2(前頭極(front polar))、Fz(正中前頭部(midline frontal))、F3、F4(前頭部(frontal))、F7、F8(前側頭部(anterior-temporal))、Cz(正中中心部(vertex))、C3、C4(中心部(central))、Pz(正中頭頂部(midline parietal))、O1、O2(後頭部(occipital))の13ヶ所以上に設置し、共通基準導出法により測定する。また、眼球運動によるノイズ除去のため、脳波と合わせて水平方向あるいは垂直方向の眼球運動として眼電図(EOG(electrooculogram))を、眼窩周辺に貼り付ける電極により測定する。測定するEEGおよびEOGのサンプリングレートは例えば1000Hzとしてもよい。
【0116】
測定した視線データは、例えば、パッケージデザイン上のエレメント毎にAOI(Area of Interest)を設定し、各AOIに対する評価項目(1)TFF(Time to first Fixation):各AOIを最初に注視するまでにかかる時間、評価項目(2)FC(Fixation Count):継続して視線がとどまった停留回数、評価項目(3)TFD(Total Fixation Duration):継続して視線がとどまった停留時間と、3つの評価項目データのうちいずれか1つ以上のデータを出力し、第1指標とする。なお、測定される眼球運動の停留基準については、例えば、Tobii I―VT(Fixation)フィルターを用いて、閾値を30°/sとしてもよい。また、測定された対象者の視線データとして注視点を可視化したゲイズプロット(gaze plot)やヒートマップ(Visualization)を確認し、対象としたパッケージデザインの画像範囲外に注視点が置かれる、あるいは注視点が無いなど、明らかに測定データとして使用できない場合は評価から除外する。
【0117】
測定された脳波データは、例えば、BrainVision Analyzer(Brain Products製)、Brain Electromagnetic Source Analysis(BESA製)、MATLAB(登録商標、MathWorks製)を用いて駆動するEEGLAB等の脳波解析支援ソフトウェアを用いて解析されてもよい。得られた脳波データは、例えば1Hzのローパスフィルターと40Hzのハイパスフィルタでフィルタリングし、独立成分分析法(ICA(independent component analysis))により瞬目など眼球運動による明らかな眼球アーチファクトを除去後、最大最小振幅±80μV以上、最大振幅差50μV以上、最小振幅0.5μV以下となるアーチファクトを除去する。また、パッケージデザイン画像が呈示された時間の脳波を2秒区間(移動平均窓を50%オーバーラップ)のエポックに分割し、エポック毎に高速フーリエ変換(FFT(Fast Fourier Transform))を行い、8Hz~13Hzのαパワー値を算出し、感情度:ln(F3のαパワー/F4のαパワー)と、覚醒度;1/((O1のαパワー+O2のαパワー)/2)を算出し、出力する。出力された感情度、覚醒度データは第2指標とする。
【0118】
出力された第1指標から視認性に関するデータとして、第2指標から好感に関するデータとして、本評価試験におけるマーケティング素材であるパッケージデザインが評価されてもよい。
【0119】
(評価試験方法例2:パッケージデザインのメッセージに対する伝達性の評価)
評価試験方法例2は、パッケージデザイン単体(マーケティング素材)からのメッセージ伝達性に関する評価を行う試験方法例である。
図9Bに、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価試験方法例2における評価試験の概要の一例を示す。本評価試験方法例2においては、対象製品のパッケージデザインからパッケージデザインの企画・製作者が伝達したいメッセージを呈示し、その後、パッケージデザインを呈示し、対象者の脳波(第2指標)を取得する。また、パッケージデザインを呈示した際に、対象者にメッセージとパッケージデザインが一致するか、あるいは不一致かを、ボタンを押すことで印象を判断させ、第3指標として印象反応である一致/不一致の選択率や、反応時間を取得する。
図9Bに示すように、対象者へはまずシナリオを呈示する。シナリオは評価試験方法例1と同じような方法で設定する。シナリオの呈示前には脳波データ取得のための準備、本試験内容の説明などが行われた状態であるものとする。また、必要に応じて対象者へ試験方法に慣れさせるために事前に課題実施の練習を行ってもよい。シナリオの呈示後、評価する対象のメッセージとパッケージデザインを呈示する。例えば
図9Bに示すように複数のメッセージ(本試験実施例1においては4つ)と複数のパッケージデザイン(本試験実施例1においては4つ)を呈示して、比較評価を実施してもよい。なお、本試験実施例1においては1試行につき1つのメッセージ、1つのパッケージデザインを呈示したあと、ブランク画面を呈示し、呈示時間はメッセージ、パッケージデザイン、ブランクの順に1秒ずつ、計3秒の呈示である。1つのメッセージ、パッケージデザインの組み合わせについて30試行を行い、4つのメッセージ、4つのパッケージデザインの全16の組み合わせで全480試行である。試行数が多くなる場合は、途中休憩を挟んでもよい。呈示回数はこれに限るものではなく、マーケティング課題、マーケティング素材、伝達性の評価メッセージに合わせて適宜決められてもよい。また、パッケージデザインを呈示する順番は対象者間でカウンターバランスをとるかランダム順列に呈示されてもよい。
【0120】
評価試験方法例2においては、評価試験方法例1と同じようにマーケティング素材が使用されてもよく、呈示装置や呈示方法なども同様に実施されてもよい。対象者の脳の反応(脳波)の測定も、評価試験方法例1と同じように体動によるノイズが入りにくくなるように、対象者は身体をなるべく動かさないようにパッケージデザイン画像が呈示される表示画面を見ることや、パッケージデザイン画像が呈示される時間は過度にまばたきをしないように指示されてもよく、脳波の測定方法も同様に実施されてもよい。合わせて評価試験方法例1と同じように視線データを測定し、取得してもよい。
【0121】
対象者の印象反応の測定には、上述したようChronos(Psychology Software Tools製)、ボタン型レスポンスデバイス(Current designs製)、USB response pad(The Black Box Toolkit製)などのレスポンスパット装置が用いられてもよく、キーボード、テンキー、マウス等の判断結果入力装置が用いられてもよい。
【0122】
対象者が各メッセージ、各パッケージデザインを見た後にメッセージとパッケージデザインが適合する(違和感がない)か、あるいは不適合(違和感がある)か、を判断結果入力装置を用いて入力し、適合あるいは不適合の選択した割合や反応時間(パッケージデザインが呈示されてから判断結果入力装置を押下するまでの時間)を測定し、印象反応データとして取得される。また、対象者が適合あるいは不適合の選択をする場合、どちらか一方を押下し、他の一方を押下させないようにしてもよい。
【0123】
測定された脳波データは、評価試験方法例1と同じように脳波解析支援ソフトウェアを用いて解析されてもよい。得られた脳波データは、例えば0.1Hzのローパスフィルターと40Hzのハイパスフィルタでフィルタリングし、独立成分分析法(ICA(independent component analysis))により瞬目など眼球運動による明らかな眼球アーチファクトを除去後、最大最小振幅±80μV以上、最大振幅差50μV以上、最小振幅0.5μV以下となるアーチファクトを除去する。その後、各メッセージと各パッケージデザインの組み合わせ毎にパッケージデザインが呈示された時刻をt=0としてt=-200ms~1000msまでの波形を対象者内で加算平均し、t=-200ms~0msをベースラインとして補正して事象関連電位(ERP:event-related potential)を得る。瞬目の影響やその他アーチファクトを含む試行は加算平均から除かれるようにしてもよい。その後、複数の対象者それぞれから得られた加算平均波形をさらに加算平均し、総加算平均波形(GMW:grand mean waveform)を得るようにする。得られたGMWから、特定の区間平均電位を算出し、比較評価されてもよい。例えば、潜時がおおよそ100ms~400msの間に現れる陰性方向の振れとして区間平均電位を算出し、第2指標としてもよい。また、同一のパッケージデザインに対し、異なるメッセージを呈示した場合のGMWの区間平均電位の差分を算出し、第2指標としてもよい。例えば、一のメッセージと、その他の一のメッセージが互いに反意語となる単語や文であった場合、違和感の大きい、あるいは不一致と思う、適さないと思う方が特定の潜時(特に200ms~400ms)の区間平均電位の値が大きくなりやすく、区間平均電位の差分を第2指標とすることで、一のメッセージに対し、パッケージデザインがどの程度適合するか、適合度合いを測ることができる。
【0124】
測定された印象反応データは、MATLAB(登録商標)、R言語、Python(登録商標)等のプログラミング言語を用いて解析をされてもよい。得られた印象反応データは、例えば、各メッセージと各パッケージデザインの組み合わせ毎に、判断結果入力装置の特定ボタンの押下率(選択率)を算出してもよく、パッケージデザインを呈示してから判断結果入力装置の特定ボタンを対象者が押下するまでの時間(反応時間)を算出し、第3指標としてもよい。また、同一のパッケージデザインに対し、異なるメッセージを呈示した場合の選択率や反応時間の差分を算出し、第3指標としてもよい。
【0125】
出力された第2指標から伝達性に関するデータとして、あるいは第3指標から伝達性に関するデータとして、また、第2指標と第3指標の両方を伝達性に関するデータとして、本評価試験におけるマーケティング素材であるパッケージデザインが評価されてもよい。
【0126】
(評価試験方法例3:陳列棚画像によるパッケージデザインの視認性の評価)
評価試験方法例3は、陳列棚に陳列された製品のパッケージデザイン(マーケティング素材)からの視認性に関する評価を行う試験方法例である。
図9Cに、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価試験方法例3における評価試験の概要の一例を示す。本評価試験方法例3においては、対象製品が実店舗の商品棚に陳列することを想定し、陳列棚に製品が陳列された画像を呈示し、対象者の視線(第1指標)のデータを取得する。
図9Cに示すように、対象者へはまずシナリオを呈示する。シナリオは評価試験方法例1と同じような方法で設定する。シナリオの呈示前には視線測定のための視線キャリブレーションの準備、本試験内容の説明などが行われた状態であるものとする。また、必要に応じて対象者へ試験方法に慣れさせるために事前に課題実施の練習を行ってもよい。シナリオの呈示後、統制画面として、画面中央に点「・」や十字「+」あるいは何も呈示しないブランク画面などを示し、その後、評価する対象の陳列棚画像を呈示する。例えば
図9Cに示すように複数(本試験実施例2においては4つ)の陳列棚画像を呈示して、比較評価を実施してもよい。なお、本試験実施例2においては、1試行につき1つの陳列棚画像を1回呈示して評価し、4つの陳列棚画像を呈示したため全4試行である。試行数が多くなる場合は、途中休憩を挟んでもよい。また、呈示する時間は統制画面を2秒、陳列棚画像は1試行につき15秒呈示する。もっとも、呈示時間はこれに限るものではなく、マーケティング課題、マーケティング素材に合わせて適宜決められるものとする。また、パッケージデザインを呈示する順番は対象者間でカウンターバランスをとり呈示される。
【0127】
本評価試験におけるマーケティング素材である陳列棚画像について、例えば、日本総合システム社製のStoreManagerGX等の棚割り画像作成ソフトを用いて作成された棚画像であってもよい。棚画像は、商品の配置、陳列順序が異なる複数の店舗の棚割りを想定して作成することができる。棚画像は、例えば対象商品の売り上げが上位の実在店舗の陳列棚を想定して作成されてもよい。評価試験方法例1と同じように呈示装置を使用し、同じような呈示方法が実施されてもよい。対象者の視線の測定も、評価試験方法例1と同じように体動によるノイズが入りにくくなるように、対象者は身体をなるべく動かさないようにパッケージデザイン画像が呈示される表示画面を見ることや、パッケージデザイン画像が呈示される時間は過度にまばたきをしないように指示されてもよい。合わせて評価試験方法例1と同じように脳波データを測定し、取得してもよい。
【0128】
測定された視線データは、評価試験方法例1と同じように視線解析支援ソフトウェアを用いて解析されてもよい。得られた視線データにおいて、陳列棚画像中に映る各商品パッケージデザイン1つ1つをAOIとし、各AOIに対する評価項目(3):TFDについて、標準化することでZ値を算出し、第1指標としてもよい。出力された第1指標から、本評価試験におけるマーケティング素材である陳列棚に陳列されることを想定したパッケージデザインの視認性が評価されてもよい。
【0129】
(評価試験方法例4:パッケージデザインのメッセージに対する印象反応の評価)
評価試験方法例4は、パッケージデザイン(マーケティング素材)のメッセージに対する好感、あるいは伝達性に関する評価を行う試験方法例である。
図9Dに、本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価試験方法例4における評価試験の概要の一例を示す。本評価試験方法例4においては、マーケティング課題に合わせたメッセージに対し、対象製品のパッケージデザインが比較対象のパッケージデザインと比べ適合するかどうか印象反応(第3指標)を取得する。
図9Dに示すように、対象者へはまずシナリオを呈示する。シナリオは評価試験方法例1と同じような方法で設定する。シナリオの呈示前には本試験内容の説明などが行われた状態であるものとする。また、必要に応じて対象者へ試験方法に慣れさせるために事前に課題実施の練習を行ってもよい。シナリオ呈示後、統制画面として、画面中央に点「・」や十字「+」あるいは何も呈示しないブランク画面などを示し、パッケージデザインを呈示する。評価対象のメッセージはシナリオの呈示内で課題説明と合わせてメッセージを呈示してもよい。メッセージを含む課題の呈示後、対象製品のパッケージデザインと、比較対象のパッケージデザインを同一画面上で注視点「・」を中心に左右にそれぞれ呈示する。評価対象のメッセージの印象と適合するあるいは不適合なパッケージデザインを、対象者が左右どちらかのボタンを押すことで印象を判断させ、印象反応を取得する。ボタン押しについて、対象者にはあらかじめ色のついたシールが貼られたテンキーを持たせ、画面に呈示されたパッケージデザインのうち選択したい方のキーを押す(例えば、選択できるキーを左:黄色、右:赤色とし、メッセージの印象と適合するパッケージデザインが右側のデザインだった場合は、赤色のボタンを押す)ように指示されてもよい。なお、本試験実施例2においては対象となる1つのメッセージについてシナリオ呈示時に説明し、その後ブランク画面を呈示し、2つのパッケージデザインを呈示したあと、対象者に一方のパッケージデザインを選択させ、1試行とする。本試験実施例2において、パッケージデザインは全部で3つあり、左右の入替え(計6パターン)を含め、各3試行実施し、計18試行、実施する。パッケージデザインの呈示時間は対象者がボタンを押すまでの時間する(=反応時間)。試行数が多くなる場合は、途中休憩を挟んでもよい。呈示回数はこれに限るものではなく、マーケティング課題、マーケティング素材、伝達性の評価メッセージに合わせて適宜決められてもよい。また、パッケージデザインを呈示する順番は対象者間でカウンターバランスをとるかランダム順列に呈示されてもよい。
【0130】
評価試験方法例4においては、評価試験方法例1と同じようにマーケティング素材が使用されてもよく、呈示装置も同様にしてもよい。合わせて評価試験方法例1と同じように視線や脳波を測定し、評価データを取得してもよい。また、対象者の印象反応の測定には、評価試験方法例2と同じように判断結果入力装置が用いられてもよく、測定された印象反応データは、MATLAB(登録商標、MathWorks製)、R言語、Python(登録商標)等のプログラミング言語を用いて解析をされてもよい。得られた印象反応データは、例えば、各メッセージと各パッケージデザインの組み合わせ毎に、判断結果入力装置の特定ボタンの押下率(選択率)を算出してもよく、パッケージデザインを呈示してから判断結果入力装置の特定ボタンを対象者が押下するまでの時間(反応時間)を算出し、第3指標としてもよい。また、反応時間については、対象製品パッケージデザインが選択された時の時間(選択反応時間)と選択されなかった時の反応時間(非選択反応時間)があり、どちらか一方を使用してもよいし、両方を使用して第3指標としても良い。また、同一のパッケージデザインに対し、異なるメッセージを呈示した場合の選択率や反応時間の差分を算出し、第3指標としてもよい。
【0131】
評価試験方法例4において、例えば「2つのマーケティング素材のうち買いたい方をお選びください」など購買意欲に関するメッセージに対し、対象者に2つのマーケティング素材のうち一の選択を求め、選択されたマーケティング素材の選択率と、選択した際の反応時間を測定して好感に関する第3指標を取得して、好感を評価してもよい。反応時間については、群平均あるいは特定の時間を基準値(基準時間)とし、その基準時間より選択されたときの選択反応時間がより早い方が購買意欲に対する好感度が高いことを示し、選択されたときの選択反応時間が遅くなるほど、購買判断に迷いが生じたことを表し、好感度が低いことを示す。一方で、選択されなかったときの非選択反応時間が遅い場合は、購買判断に迷いが生じた上で、最終的な判断として選ばれなかったことを示し、非選択反応時間が早い場合は、購買判断に迷いなく選択されなかったことを示す。そのため、選択率100%の場合は選択反応時間が早い方が良く、選択率が50%、非選択率が50%の場合、選択反応時間が早く、非選択反応時間が遅いマーケティング素材が選択反応時間が遅く、非選択反応時間が早いマーケティング素材よりも好感度が高いと評価できる。また、「2つのマーケティング素材のうち、子供向けと思う方をお選びください」など、マーケティング素材の企画・製作者がマーケティング素材から伝えたいと思う評価ワードをメッセージとして呈示し、対象者に2つのマーケティング素材のうち一の選択を求め、選択されたマーケティング素材の選択率と、選択した際の反応時間を測定して好感と同様な方法で伝達性を評価することができる。
【0132】
マーケティング素材に対する対象者の視線、脳波、及び/または印象反応の測定により評価対象の商品のパッケージデザインを評価する上述の評価試験方法例1~4に加え、アンケート等により主観評価がさらに行われてもよい。また、得られた主観評価が、上述の評価試験方法例1~4で取得された各指標のデータや評価結果と比較できるようにしてもよい。
【0133】
(評価試験例の組み合わせ)
上述してきた評価試験方法例1~4から、例えば複数の試験方法、指標を組み合わせて多角的にマーケティング素材を評価してもよい。例えば、マーケティング素材の視認性について評価する場合、評価試験方法例1の視線評価、評価試験方法例3の陳列棚での視認性評価により、あるいはアンケ―トを用いた視認性に関する評価により、評価されてもよい。また、マーケティング素材の好感度について評価する場合、評価試験方法例1による感情度や覚醒度等の評価、評価試験方法例4による選択率の評価、及び反応時間の評価、あるいはアンケ―トを用いた購入意向や魅力度に関する評価により、評価されてもよい。さらに、評価語(メッセージ)の伝達度について評価される場合には、例えば、評価試験方法例2による各メッセージに対する事象関連電位(ERP)による評価、評価試験方法例4による各メッセージに対する選択率や反応時間による伝達性の評価、あるいはアンケ―トを用いたメッセージ伝達度に関する評価により、評価されてもよい。
【0134】
なお、評価試験方法例1~4は、例示の評価試験方法であり、評価試験方法は上述の例に限られず他の様々な評価試験が実施されてもよい。また、評価試験例1~4の組み合わせによる多角的な評価についても、上述の組み合わせは例示であり、これらの例に限られず様々な組み合わせにより実施されてもよい。
【0135】
以下、上述の評価試験方法例1~4を基に、3種の製品パッケージデザインの評価を行った実施例を説明する。
【0136】
(実施例1)
本実施例1は、マーケティング素材として、入浴剤のパッケージデザインの評価を行った例である。上記評価試験方法例1及び2で説明した方法と同様の方法により、第1指標及び第2指標から「視認」「好感」「伝達」を評価し、デザインの改良点を見出すことを目的として実施した試験例である。対象とした商品は子供向けの入浴剤であり、2つの検討パッケージデザインPとQを用意し、比較対象として子供向けではない、同じ大きさの入浴剤パッケージデザインRを用意して(
図10)、評価を行った。各パッケージデザインを見る対象者の視線を測定して得られる、評価項目(1)TFF(Time to first Fixation)による第1指標のデータから「視認」を評価し、対象者の脳の反応として脳波を測定して、感情度と覚醒度による第2指標のデータから「好感」を評価し、対象者の脳の反応として事象関連電位を測定して得られる、特定区間の平均電位の差分による第2指標のデータから「伝達」の評価が行われた。評価結果を表1に示す。
【0137】
視認性の評価については、マーケティング課題として、パッケージデザイン内にある要素(エレメント)がどの程度短時間で認識されるかを目的として行った。上述の評価試験方法例1に基づき各パッケージデザインを見る対象者の視線を測定して、評価項目(1)TFF(Time to first Fixation)により、1試行目のパッケージデザインを呈示してから13秒のうち半分の6.5秒以内に見たAOI数(エレメント数)とパッケージデザインを呈示してから2秒以内のAOI数の合計数が7つ以上を「◎:3点」、6つを「〇:2点」、5つを「△:1点」、4つ以下を「×:0点」として評価した。2秒以内に見られるAOI数ではパッケージデザインのファーストインパクトを評価でき、6.5秒以内に見たAOI数からはパッケージデザインの商品理解における重要エレメントの視認性を評価できるため、両方のAOI数の和を評価ポイントとした。結果、パッケージデザインPはAOI数が7つにて「◎:3点」、Qは6つにて「〇:2点」、Rは7つにて「◎:3点」となった。これより、「視認」を評価する指標はTFFによるAOI数のみのため、視認指数はパッケージデザインP、Q、Rの順に3.0点、2.0点、3.0点である。
【0138】
好感の評価については、対象者の脳の反応として脳波を測定して、パッケージデザインを見た時の感情度ならびに覚醒度を上述の評価試験方法例1について説明した値を算出することにより行う。感情度と覚醒度はそれぞれ、平均値を100%と正規化したとき、105%より大きい場合を「◎:3点」、105%以下で100%より大きい場合を「〇:2点」、100%以下で95%より大きい場合を「△:1点」、95%以下を「×:0点」として評価した。感情度は値が高いほど快であること(快いこと)を、覚醒度は値が高いほど興味を持っていることを表し、評価ポイントとした。結果、パッケージデザインPの感情度は106.7%にて「◎:3点」、Qは97.9%にて「△:1点」、Rは95.3%にて「△:1点」であり、パッケージデザインPの覚醒度は102.0%にて「〇:2点」、Qは99.5%にて「△:1点」、Rは98.5%にて「△:1点」となった。
【0139】
これより「好感」を評価する好感指数を算出するが、本調査では興味を持ち快であることがいずれも大事な要素であることから重みづけは同じとし、感情度に対する重みづけをb1=0.5、覚醒度に対する重みづけをb2=0.5とし(b1+b2=1)、感情度の判定点数×b1+覚醒度の判定点数×b2の値を好感指数とした。したがって、「好感」を評価する好感指数はパッケージデザインP、Q、Rの順に2.5点、1.0点、1.0点である。
【0140】
伝達の評価については、上述の評価試験方法例2に基づき対象者の脳の反応として脳波を測定して、パッケージデザインを見た時の事象関連電位から特定区間の平均電位の差分を算出することにより行う。本実施例で実施したパッケージデザインPおよびQについてのマーケティング課題としては(1)「湯色と香りが変わる」ということが伝わること、並びに(2)「子供向け」の入浴剤であることが伝わることの2つがあった。そこで、前者をメッセージ(1)、後者をメッセージ(2)として、メッセージ(1)及び(2)の伝達性の評価を目的とした。メッセージ(1)及び(2)の反意メッセージ(3)「湯色と香りが変わらない」と(4)「大人向け」を同試験内で呈示し、メッセージ(1)と(3)、ならびにメッセージ(2)と(4)の潜時200ms~350msの区間平均電位の差分((1)の電位から(3)の電位を減算、また、(2)の電位から(4)の電位を減算)を算出し、それぞれ、メッセージ(1)に対する区間平均電位の差分(μV)とメッセージ(2)に対する区間平均電位の差分(μV)として、評価した。なお、その値が1.5μVより大きい場合を「◎:3点」、1μVより大きく、1.5μV以下の場合を「〇:2点」、0.5μVより大きく、1.0μV以下の場合を「△:1点」、0.5μV以下を「×:0点」として評価した。メッセージ伝達性は区間平均電位の差分の値が高いほどより分かりやすく伝わることを表し、評価ポイントとした。結果、メッセージ(1)に対する区間平均電位の差分はパッケージデザインPでは0.26μVにて「×:0点」、Qは1.45μVにて「〇:1点」、Rは-0.72μVにて「×:0点」であり、メッセージ(2)に対する区間平均電位の差分はパッケージデザインPでは1.45μVにて「〇:2点」、Qは1.26μVにて「〇:1点」、Rは-1.53μVにて「×:0点」となった。
【0141】
これより「伝達」を評価する伝達指数を算出するが、本調査ではメッセージ(1)と(2)のいずれも大事な要素であることから重みづけは同じとし、メッセージ(1)の伝達性に関する重みづけをc1=0.5、メッセージ(2)の伝達性に関する重みづけをc2=0.5とし(c1+c2=1)、メッセージ(1)に対する伝達性の判定点数×c1+メッセージ(2)に対する伝達性の判定点数×c2の値を伝達指数とした。したがって、「伝達」を評価する伝達指数はパッケージデザインP、Q、Rの順に1.0点、2.0点、0.0点である。
【0142】
以上の視認、好感、及び伝達の評価を統合し、最終的な総合評価を算出する。本実施例1で評価対象とした子供向けの入浴剤のパッケージについては、好感が高く、商品特徴である「湯色と香りが変わる」こと、「子供向け」であることの伝達性を高くしたパッケージデザインの制作がマーケティング課題であることから、好感と伝達の重みづけを高くし、視認の重みづけをA=0.2、好感の重みづけをB=0.4、伝達の重みづけをC=0.4として総合的な評価を算出する(A+B+C=1)。その結果、パッケージデザインPについては、視認指数×A(=3.0×0.2)+好感指数×B(2.5×0.4)+伝達指数×C(1.0×0.4)=「2.0:〇」と算出される。また、パッケージデザインQについては、視認指数×A(=2.0×0.2)+好感指数×B(1.0×0.4)+伝達指数×C(2.0×0.4)=「1.6:〇」と算出され、パッケージデザインRについては、視認指数×A(=3.0×0.2)+好感指数×B(1.0×0.4)+伝達指数×C(0×0.4)=「1.0:△」と算出される。総合評価の判定方法としては、2.25より大きい場合を「◎」、1.5より大きく2.25以下の場合を「〇」、0.75より大きく、1.5以下の場合を「△」、0.75以下の場合を「×」として分かりやすく表記した。このことからマーケティング課題に則したパッケージデザインとして最も評価されるのはパッケージデザインPと判定することができる一方で、パッケージデザインQも判定が「〇」であることから決して良くないデザインではないということが分かる。パッケージデザインPでは好感が高かったものの、伝達として、特に1つ目のメッセージに対する評価が低かったが、反対にパッケージデザインQでは、好感はそれほど高くないものの、1つ目のメッセージに対する評価が高く伝達の評価が高かった。したがって、より良いパッケージにする改良を行う場合は、パッケージデザインPの1つ目のメッセージに対する伝達度をあげるような修正を行い、それはパッケージデザインQを参考にすると良いということまで分析することができる。また、パッケージデザインRについては、比較対象として子供用ではないパッケージデザインを用いたため、伝達の評価が非常に低く、総合評価に影響している。同じデザインでもマーケティング課題が異なり、伝達の評価メッセージが異なる場合は評価が高まることが想定される。このようにマーケティング課題に合わせた結果のアウトプットができる。
【0143】
【0144】
(実施例2)
本実施例2は、マーケティング素材として、防虫剤のパッケージデザインの評価を行った例である。上記評価試験方法例1、3、4で説明した方法と同様の方法により、第1指標、第2指標及び第3指標から「視認」「好感」「伝達」を評価し、デザインの改良点を見出し、すでに販売している製品のパッケージデザインをより良いデザインにリニューアルすることを目的として実施した試験例である。対象とした製品はスプレータイプの防虫剤であり、リニューアルを検討したパッケージデザインXと現在販売している製品のパッケージデザインYと、参考までにパッケージデザインZを用意して(
図11)、評価を行った。各パッケージデザインを陳列棚に並べた画像を対象者に呈示して、対象者の視線を測定して評価する注目度と、各パッケージデザインを見る対象者の視線を測定して得られる、評価項目(1)TFF(Time to first Fixation)による第1指標のデータから「視認」を評価し、対象者の脳の反応として脳波を測定して得られる、感情度と覚醒度の第2指標によるデータと、対象者の印象反応を測定して得られる、購買意欲に関する選択率と反応時間の第3指標によるデータから「好感」を評価し、対象者の印象反応を測定して得られる、評価ワード(メッセージ)に対する選択率による第3指標のデータから「伝達」の評価が行われた。評価結果を表2に示す。
【0145】
視認性の評価については、マーケティング課題として、陳列棚に陳列されたときの注目度(目立度)と、棚から手に取ったときを想定し、パッケージデザイン内にある要素(エレメント)がどの程度短時間で認識されるかを目的として行った。陳列棚における注目度の評価では上述の評価試験方法例3に基づき評価を行い、要素認識の評価では上述の評価試験方法例1に基づき評価を行った。
【0146】
陳列棚における注目度は、各パッケージデザインを陳列棚に並べた画像を対象者に呈示して、対象者の視線を測定して得られた視線データにおいて、陳列棚画像中に映る各商品パッケージデザイン1つ1つをAOIとしたときの各AOIに対する継続して視線が留まった停留時間(評価項目(3):TFD)より標準化することでZ値を算出して評価される。Z値は対象商品のパッケージデザインを1つのAOIとしたときの全対象者の平均停留時間より、全商品の各AOIに対する平均停留時間から算出される全平均停留時間を差し引いた値を、標準偏差により除して算出することができる。注目度(目立度)はそれぞれ、1.0より大きい場合を「◎:3点」、1.0以下で0.5より大きい場合を「〇:2点」、0.5以下で0より大きい場合を「△:1点」、0以下を「×:0点」として評価した。結果、パッケージデザインXはZ値が0.3で「△:1点」、YはZ値が0.31で「△:1点」となった。パッケージデザインZについては、商品棚画像の準備や被験者数確保の関係上、評価を行っておらず、表2では、空欄としている。
【0147】
また、要素認識の評価方法は、上述した実施例1と同様に各パッケージデザインを見る対象者の視線を測定して、評価項目(1)TFF(Time to first Fixation)により、1試行目のパッケージデザインを呈示してから13秒のうち半数の6.5秒以内に見たAOI数(エレメント数)とパッケージデザインを呈示してから2秒以内のAOI数の合計数が7つ以上を「◎:3点」、6つを「〇:2点」、5つを「△:1点」、4つ以下を「×:0点」として評価した。結果、パッケージデザインXはAOI数が7つにて「◎:3点」、Yは6つにて「〇:2点」、Zは9つにて「◎:3点」となった。
【0148】
これより、「視認」を評価する視認指数を算出するが、注目度とTFF数による評価の重みづけは同じとし、注目度の重みづけをa1=0.5、TFF数の重みづけをa2=0.5とし(a1+a2=1)、注目度による視認性の判定点数×a1+TFF数による視認性の判定点数×a2の値を視認指数とした。したがって、「視認」を評価する視認指数はパッケージデザインX、Y、Zの順に2点、1.5点、≧1.5点である。ここでパッケージデザインZについて≧1.5点としたのは、注目度の評価を行っていないため、実際に評価試験を行った場合は注目度の評価点が加算される可能性があることを示している。
【0149】
好感の評価については、対象者の脳の反応として脳波を測定して、パッケージデザインを見た時の感情度ならびに覚醒度と、購買意欲に関する対象者の印象反応を測定して、各パッケージデザインを見た時の選択率および反応時間とから評価する。感情度と覚醒度は
上述の評価試験方法例1に順じて行い、購買意欲に関する選択率(以下、選択率という)と購買選択時間は評価試験方法例4に順じて行った。感情度と覚醒度の評価方法は実施例1と同じく、平均値を100%と正規化したとき、105%より大きい場合を「◎:3点」、105%以下で100%より大きい場合を「〇:2点」、100%以下で95%より大きい場合を「△:1点」、95%以下を「×:0点」として評価した。結果、パッケージデザインXの感情度は103.5%にて「〇:2点」、Yは95.9%にて「△:1点」、Zは100.4%にて「〇:2点」であり、パッケージデザインXの覚醒度は99.6%にて「△:1点」、Yは97.3%にて「△:1点」、Zは103.1%にて「〇:2点」となった。
【0150】
また、選択率と購買選択時間の評価方法は、「2つのデザインのうち買いたい方をお選びください」と購買意欲に関するメッセージを呈示したあと、3つのパッケージデザインのうち2つのデザインを呈示し、対象者に2つのうち一の選択を求め、選択されたパッケージデザインの選択率と、選択した際の反応時間を測定して行った。3つのデザインの中から2つのデザインを左右の位置を踏まえて呈示する組み合わせは全6通りあり、これを1試行として3回実施し、全18回の測定データから選択率と、平均選択時間を算出する。選択率では、チャンスレベルが50%のため、60%より高い場合を「◎:3点」、60%以下で50%より大きい場合を「〇:2点」、50%以下で40%より大きい場合を「△:1点」、40%以下を「×:0点」として評価した。結果、パッケージデザインXの感情度は55.1%にて「〇:2点」、Yは45.5%にて「△:1点」、Zは49.4%にて「△:1点」となった。
【0151】
また、購買選択時間は、対象デザインの選択率が0%もしくは100%ではない限り、選択時間の群平均に対し、選択反応時間(対象が選択された場合の反応時間)が群平均より早い場合を「〇」、群平均以上(より遅い)の場合を「×」とし、非選択反応時間(対象が選択されなかった場合の反応時間)が群平均より遅い場合を「〇」、群平均以下の(より早い)場合を「×」とし、選択反応時間と非選択反応時間が共に「〇」の場合を「◎:3点」、選択反応時間が「〇」で非選択反応時間が「×」の場合を「〇:2点」、選択反応時間が「×」で非選択反応時間が「〇」の場合を「△:1点」、選択反応時間と非選択反応時間が共に「×」の場合を「×:0点」として評価した。なお、選択率が100%の場合で群平均よりも早い場合は「◎:3点」、群平均以下の場合を「〇:2点」とし、選択率が0%の場合は、反応時間に関わらず「×:0点」とした。結果、選択率は100%や0%ではなく、群平均反応時間は2.65秒であったため、パッケージデザインXの選択反応時間は2.62秒で「〇」、非選択反応時間は2.68秒で「〇」となり、判定は「◎:3点」、パッケージデザインYの選択反応時間は2.95秒で「×」、非選択反応時間は2.46秒で「×」となり、判定は「×:0点」、パッケージデザインZの選択反応時間は2.42秒で「〇」、非選択反応時間は2.84秒で「〇」となり、判定は「◎:3点」となった。
これより「好感」を評価する好感指数を算出するが、本調査ではいずれの指標も大事な要素であることから重みづけは同じとし、感情度に対する重みづけをb1=0.25、覚醒度に対する重みづけをb2=0.25、購買意欲に関する選択率に対する重みづけをb3=0.25、選択反応時間に対する重みづけをb4=0.25、とし(b1+b2+b3+b4=1)、感情度の判定点数×b1+覚醒度の判定点数×b2+選択率の判定点数×b3+選択反応時間の判定点数×b4の値を好感指数とした。したがって、「好感」を評価する好感指数はパッケージデザインX、Y、Zの順に2.0点、0.75点、2.0点である。
【0152】
伝達の評価については、上述の評価試験方法例4に順じて行い、伝達メッセージ(以下、評価ワードという)に関する対象者の印象反応を測定して、各パッケージデザインを見た時の選択率から評価する。選択率の評価方法は、評価ワード(1)として「2つのデザインのうち若者向けと思う方をお選びください」、とのメッセージを呈示したあと、3つのパッケージデザインのうち2つのデザインを呈示し、対象者に2つのうち一の選択を求め、選択されたパッケージデザインの選択率を測定して行った。続く、評価ワード(2)として「2つのデザインのうち手軽に使えそうと思う方をお選びください」とのメッセージについても同様に実施した。3つのデザインの中から2つのデザインを呈示する組み合わせは、左右の位置を踏まえ全6通りあり、これを1試行として3回実施し、全18回の測定を行った。測定データから選択率と、平均選択時間を算出する。なお、反応時間も同時に測定しているが、好感で実施した購買意欲に関する選択率の試験のあと、同対象者に対して、伝達メッセージに関する試験を行っており、試験方法によるバイアスを考慮し、伝達の評価では反応時間による評価は含めていない。選択率では、チャンスレベルが50%のため、60%より高い場合を「◎:3点」、60%以下で50%より大きい場合を「〇:2点」、50%以下で40%より大きい場合を「△:1点」、40%以下を「×:0点」として評価した。結果、評価ワード(1)「若者向け」に対するパッケージデザインXの選択率は65.8%にて「◎:3点」、Yは23.2%にて「×:0点」、Zは61.0%にて「◎:3点」となり、評価ワード(2)「手軽に使えそう」に対するパッケージデザインXの選択率は61.3%にて「◎:3点」、Yは65.8%にて「◎:3点」、Zは22.9%にて「×:0点」となった。
これより「伝達」を評価する伝達指数を算出するが、本調査では評価ワード(1)と(2)のいずれも伝達したいメッセージであることから重みづけは同じとし、評価ワード(1)の伝達性に関する重みづけをc1=0.5、評価ワード(2)の伝達性に関する重みづけをc2=0.5とし(c1+c2=1)、評価ワード(1)に対する伝達性の判定点数×c1+評価ワード(2)に対する伝達性の判定点数×c2の値を伝達指数とした。したがって、「伝達」を評価する伝達指数はパッケージデザインX、Y、Zの順に3.0点、1.5点、1.5点である。
【0153】
以上の視認、好感、及び伝達の評価を統合し、最終的な総合評価を算出する。本実施例2で評価対象としたスプレータイプの防虫剤パッケージデザインについては、視認と好感が高くなることを目的とし、伝達の評価はデザイン製作者の意図が伝わるかを確認するために設定していることから、視認と好感の重みづけを高くし、視認の重みづけをA=0.4、好感の重みづけをB=0.4、伝達の重みづけをC=0.2として総合的な評価を算出する(A+B+C=1)。その結果、パッケージデザインXについては、視認指数×A(=2.0×0.4)+好感指数×B(2.0×0.4)+伝達指数×C(3.0×0.2)=「2.2:〇」と算出される。また、パッケージデザインYについては、視認指数×A(=1.5×0.4)+好感指数×B(0.75×0.4)+伝達指数×C(1.5×0.2)=「1.2:△」と算出され、パッケージデザインZについては、視認指数×A(=(≧1.5)×0.4)+好感指数×B(2.0×0.4)+伝達指数×C(1.5×0.2)=「≧1.7:〇」と算出される。ただし、パッケージデザインZについては、陳列棚の視認性評価を行っていないため、視認指数が「1.5」より高くなる可能性があり、「≧1.7:〇」と表記している。総合評価の判定方法は実施例1と同じく、2.25より大きい場合を「◎」、1.5より大きく2.25以下の場合を「〇」、0.75より大きく、1.5以下の場合を「△」、0.75以下の場合を「×」として分かりやすく表記した。このことからパッケージデザインとして最も評価されるのはパッケージデザインXと判定することができ、既存パッケージデザインYと比較して良いデザインになっていることが分かる。パッケージデザインXについては、総合評価が2.2とあと0.5ポイントより大きい場合は「◎」にすることができる。評価を上げるためには陳列棚での目立ち度を高めること、およびパッケージデザインを見たときの覚醒度を高めることが改良に繋がるポイントであり、いずれも色のコントラストをはっきりさせるなど色覚を変更することでより良くなる可能性が残されている。このようにマーケティング課題に合わせた結果のアウトプットができ、かつ改良点を分かりやすく見出すことができる。
【0154】
【0155】
以上説明した本開示の実施形態に係るマーケティング素材の評価プロセスによって、対象者の複数の生体指標等の指標に基づき、マーケティング素材に対する対象者の視認、マーケティング素材に対する対象者の好感、及びマーケティング素材からの対象者への伝達のうち少なくとも1つを評価することにより、マーケティング素材を評価することで、マーケティング素材の評価を精度良く行うことができる。また、マーケティング素材に対し、より客観的な評価をすることが可能となる。従って、特に複数の対象者からのデータに基づきマーケティング素材の評価を様々な指標を用いて多角的に行う場合にも、効率良く評価を行うことが可能となる。
【0156】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0157】
1、2、10 マーケティング素材評価システム
10a プロセッサ
10b メモリ
10c 通信部(Interface)
10d 入力部
10e 出力部
100、900 マーケティング素材評価装置
200 マーケティング素材評価指示装置
300 マーケティング素材評価支援装置
400 視線測定装置
500 脳波測定装置
610 判断結果入力装置
700 タイミング同期装置
800 マーケティング素材表示装置
DB データベース
【手続補正書】
【提出日】2023-10-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーケティング素材の評価装置により実行されるマーケティング素材の評価方法であって、
マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、前記マーケティング素材を前記対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得するプロセスと、
前記マーケティング素材を見る前記対象者の脳波を測定して、前記マーケティング素材に対する前記対象者の脳の反応に関する第2指標を取得するプロセスと、
前記マーケティング素材を見る前記対象者の応答を測定して、前記マーケティング素材に対する前記対象者の印象反応に関する第3指標を取得するプロセスと、
のうちの前記第2指標を取得するプロセスを含む少なくとも2つのプロセスを含み、
前記少なくとも2つのプロセスを実行することにより取得される前記第1指標、前記第2指標、及び前記第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、前記マーケティング素材に対する前記対象者の視認、前記マーケティング素材に対する前記対象者の好感、及び前記マーケティング素材からの前記対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、前記マーケティング素材を評価し、
前記マーケティング素材に対する前記対象者の視認、前記マーケティング素材に対する前記対象者の好感、及び前記マーケティング素材からの前記対象者への伝達のうちの少なくとも1つは、前記第1指標に関する数値、前記第2指標に関する数値、及び前記第3指標に関する数値のうちの前記第2指標に関する数値を含む少なくとも2つの数値に基づき算出される、前記視認に関する視認指数、前記好感に関する好感指数、及び前記伝達に関する伝達指数のうちの少なくとも1つにより評価する、マーケティング素材の評価方法。
【請求項2】
マーケティング素材を見る対象者の視線を測定して、前記マーケティング素材を前記対象者が見る目の動きに関する第1指標を取得する、第1指標取得部と、
前記マーケティング素材を見る前記対象者の脳波を測定して、前記マーケティング素材に対する前記対象者の脳の反応に関する第2指標を取得する、第2指標取得部と、
前記マーケティング素材を見る前記対象者の応答を測定して、前記マーケティング素材に対する前記対象者の印象反応に関する第3指標を取得する、第3指標取得部と、
のうちの前記第2指標取得部を含む少なくとも2つの指標取得部を備え、
前記少なくとも2つの指標取得部により取得される前記第1指標、前記第2指標、及び前記第3指標のうちの少なくとも2つの指標に基づき、前記マーケティング素材に対する前記対象者の視認、前記マーケティング素材に対する前記対象者の好感、及び前記マーケティング素材からの前記対象者への伝達のうちの少なくとも1つを評価することにより、前記マーケティング素材を評価する、マーケティング素材の評価装置であって、
前記マーケティング素材に対する前記対象者の視認、前記マーケティング素材に対する前記対象者の好感、及び前記マーケティング素材からの前記対象者への伝達のうちの少なくとも1つは、前記第1指標に関する数値、前記第2指標に関する数値、及び前記第3指標に関する数値のうちの前記第2指標に関する数値を含む少なくとも2つの数値に基づき算出される、前記視認に関する視認指数、前記好感に関する好感指数、及び前記伝達に関する伝達指数のうちの少なくとも1つにより評価する、マーケティング素材の評価装置。
【請求項3】
マーケティング素材の製造を支援する方法であって、
複数のマーケティング素材について請求項1に記載のマーケティング素材の評価方法を行うプロセスを含む、
マーケティング素材の製造支援方法。