(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114100
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/237 20060101AFI20240816BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B60R21/237
B60R21/207
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019534
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】相川 国大
(72)【発明者】
【氏名】切手 肇
(72)【発明者】
【氏名】田中 志幸
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA21
3D054BB23
3D054BB24
3D054CC29
3D054EE20
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】サイドエアバッグ装置におけるエアバッグの展開速度をより向上させ得る技術を提供すること。
【解決手段】
膨張流体発生源5に接続され、折り畳まれた状態でケース2に収容されるエアバッグ3を具備し、
前記エアバッグ3は、前記膨張流体発生源5側にあり蛇腹折りされている蛇腹折部30と、前記蛇腹折部30に接続されロール折りされているロール折部35と、を有し、
前記ロール折部35は、展開前の通常状態において、前記蛇腹折部30の展開領域30Rを避けた位置に配置される、サイドエアバッグ装置1。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体部と、前記ケース本体部に一体化され前記ケース本体部に対して開く方向に状態変化可能であるドア部と、を有するケースと、
膨張流体発生源に接続され、折り畳まれた状態で前記ケースに収容され、前記膨張流体発生源側にあり蛇腹折りされている蛇腹折部と、前記蛇腹折部に接続されロール折りされているロール折部と、を有するエアバッグと、を具備し、
前記ロール折部は、展開前の通常状態において、前記蛇腹折部の展開領域を避けた位置に配置され、
前記蛇腹折部が展開することで、前記ドア部が前記ケース本体部に対して開く方向に状態変化する、サイドエアバッグ装置。
【請求項2】
膨張流体発生源に接続され、折り畳まれた状態で前記ケースに収容されるエアバッグを具備し、
前記エアバッグは、前記膨張流体発生源側にあり蛇腹折りされている蛇腹折部と、前記蛇腹折部に接続されロール折りされているロール折部と、を有し、
前記ロール折部は、展開前の通常状態において、前記蛇腹折部の展開領域を避けた位置に配置される、サイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記蛇腹折部は第1方向の先側に展開し、
前記ロール折部は前記第1方向と交差する第2方向の先側に展開し、
前記第1方向と前記第2方向との交差角θは、40°≦θ≦140°の範囲内である、請求項1または請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記蛇腹折部は第1方向の先側に展開し、
車両サイドドアに対して前記第1方向の後側に配置されている、請求項1または請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記蛇腹折部は第1方向の先側に展開し、
前記ロール折部は前記第1方向と交差する第2方向の先側に展開し、
前記ロール折部は、前記通常状態において、前記蛇腹折部の展開領域を避けた位置であり、かつ、前記蛇腹折部に対して前記第2方向の先側に配置されている、請求項1または請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衝突時に、インフレータ等の膨張流体発生源が発したガス等の膨張流体を、当該膨張流体発生源に接続されたエアバッグに供給し、車両サイドドアと乗員との間で当該エアバッグを膨張させて当該乗員を保護する、サイドエアバッグ装置が知られている。
【0003】
車両に搭載されているサイドエアバッグ装置におけるエアバッグは、通常状態すなわちエアバッグが未展開である状態では、上記の膨張流体発生源に接続されかつ折り畳まれている。
【0004】
折り畳まれたエアバッグが展開される方向やその速度、展開様式等は、当該エアバッグの折り方によって種々に異なる。例えば特許文献1には、蛇腹折りとロール折りとを組み合わせてエアバッグを折り畳む方法が提案されている。
【0005】
詳しくは、特許文献1には、エアバッグのうち蛇腹折りされた部分(必要に応じて蛇腹折部と称する場合がある)は折ほどけ易く展開し易い旨、および、エアバッグのうちロール折りされた部分(必要に応じてロール折部と称する場合がある)は蛇腹折部よりは折りほどけ難いものの、狭い部分に入り込み易い旨が説明されている。
【0006】
なお、本明細書において、蛇腹折りとは、エアバッグ等の対象物を連続的に折り畳む方法の一種であり、当該対象物を正方向と逆方向とに交互に折り返す折り畳み方を意味する。当該蛇腹折りはつづら折りとも称される。また、本明細書において、ロール折りとは、上記の対象物を一方向に繰り返し折り畳む、または、一方向に繰り返し巻き込む折り畳み方を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
車両室内におけるサイドエアバッグ装置の位置やその構造は、当該サイドエアバッグ装置を搭載する車両の設計や当該車両に搭載されるサイドエアバッグ装置以外の車両搭載品の位置等に応じて種々に異なる。
【0009】
例えば、サイドエアバッグ装置におけるエアバッグは、特許文献1に紹介されているように座席の背もたれ内に直接収容される場合もあれば、ケースに収容された状態で種々の位置に搭載される場合もある。
【0010】
ここで、ケースに収容された状態のエアバッグを有するサイドエアバッグ装置においては、エアバッグが膨張したり展開したりする際の力で、当該ケースのドアを開く必要がある。
【0011】
上記の特許文献1に紹介されているサイドエアバッグ装置では、エアバッグにおける膨張流体発生源側に蛇腹折部があり、エアバッグにおける膨張流体発生源の逆側にロール折部がある。したがって、膨張流体発生源が生じた膨張流体は、先ず蛇腹折部に流入し、次いでロール折部に流入する。このためエアバッグのうち蛇腹折部が先に展開・膨張し、次いでロール折部が展開・膨張する。
【0012】
既述したように、蛇腹折部はエアバッグのうち折ほどけ易く展開し易い部分である。このため、エアバッグの展開速度を高めるためには、先ず蛇腹折部を展開させるのが合理的といい得る。また、既述したように、ロール折部は蛇腹折部よりも折りほどけ難いものの狭い部分に入り込み易い部分である。このため、エアバッグを車両サイドドアと乗員との間に信頼性高く展開させるためには、ロール折部を設けることも理に適っている。
【0013】
しかし、エアバッグがケースに収容されている場合、すなわち、当該エアバッグが展開する際の力で当該ケースのドアを開く必要がある場合には、ドアを開く際の荷重や衝撃がエアバッグにも作用する。例えば特許文献1に紹介されているエアバッグをケースに収容する場合は、エアバッグのうち膨張流体発生源の逆側にあるロール折部は、特に、ケースのドアに直接接触する可能が高い。このため当該ロール折部は上記の荷重や衝撃を受け易く、当該ロール折部には巻きの緩みが生じたり、撓みが生じたりし易い。
【0014】
ロール折部に上記の緩みや撓みが生じ、展開方向からずれた位置にロール折部が配置されると、その位置や展開方向が修正されるまでに余計な時間がかかり、展開速度の向上に支障を来す虞がある。
【0015】
このため、種々の位置に配置されたり種々の構造を有したりするサイドエアバッグ装置において、エアバッグの展開速度を向上させる技術が望まれている。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、サイドエアバッグ装置におけるエアバッグの展開速度をより向上させ得る技術を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決する本発明の第1のサイドエアバッグ装置は、
膨張流体発生源に接続され、折り畳まれた状態でケースに収容されるエアバッグを具備し、
前記エアバッグは、前記膨張流体発生源側にあり蛇腹折りされている蛇腹折部と、前記蛇腹折部に接続されロール折りされているロール折部と、を有し、
前記ロール折部は、展開前の通常状態において、前記蛇腹折部の展開領域を避けた位置に配置される、サイドエアバッグ装置である。
【0018】
上記課題を解決する本発明の第2のサイドエアバッグ装置は、
ケース本体部と、前記ケース本体部に一体化され前記ケース本体部に対して開く方向に状態変化可能であるドア部と、を有するケースと、
膨張流体発生源に接続され、折り畳まれた状態で前記ケースに収容され、前記膨張流体発生源側にあり蛇腹折りされている蛇腹折部と、前記蛇腹折部に接続されロール折りされているロール折部と、を有するエアバッグと、を具備し、
前記ロール折部は、展開前の通常状態において、前記蛇腹折部の展開領域を避けた位置に配置され、
前記蛇腹折部が展開することで、前記ドア部が前記ケース本体部に対して開く方向に状態変化する、サイドエアバッグ装置である。
【0019】
本発明によると、サイドエアバッグ装置におけるエアバッグの展開速度をより向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】座席に対する実施例1のサイドエアバッグ装置の位置を模式的に説明する説明図である。
【
図2】実施例1のサイドエアバッグ装置が具備する各部材を模式的に説明する説明図である。
【
図3】実施例1のサイドエアバッグ装置におけるアッパケースを模式的に表す説明図である。
【
図4】実施例1のサイドエアバッグ装置におけるアッパケースを模式的に表す説明図である。
【
図5】実施例1のサイドエアバッグ装置を座席側面側からみた様子を模式的に説明する説明図である。
【
図6】
図5中のA-A位置における実施例1のサイドエアバッグ装置を模式的に説明する説明図である。
【
図7】実施例1のサイドエアバッグ装置の動作を説明する説明図である。
【
図8】実施例1のサイドエアバッグ装置の動作を説明する説明図である。
【
図9】実施例1のサイドエアバッグ装置の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本明細書において、本発明の第1のサイドエアバッグ装置と第2のサイドエアバッグ装置とに共通する事項を説明する場合、単に、本発明のサイドエアバッグ装置、実施例のサイドエアバッグ装置等と称する場合がある。
また、ケースに収容されているエアバッグを有するサイドエアバッグ装置を、必要に応じて、ケース収容型のサイドエアバッグ装置と称する場合がある。
【0022】
本発明のサイドエアバッグ装置は、膨張流体発生源に接続され、折り畳まれた状態でケースに収容されるエアバッグを具備する。そして当該エアバッグは、膨張流体発生源側にあり蛇腹折りされている蛇腹折部と、当該蛇腹折部に接続されロール折りされているロール折部と、を有する。
【0023】
本発明の発明者は、ケース収容型のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグの展開速度の向上を図るべく鋭意研究を重ねた。そして、蛇腹折部の展開方向の先側にロール折部がある場合には、ロール折部に作用する外力によってロール折部の向きが変えられ、ロール折部の展開が阻害される虞があることに想到した。
【0024】
つまり、ケース収容型のサイドエアバッグ装置においては、エアバッグが展開する際の力でケースのドア部を開く必要があり、ドア部を開く際の荷重や衝撃がエアバッグにも作用する。
蛇腹折部の展開方向の先側にロール折部がある場合に、エアバッグの展開時に、蛇腹折部がケースのドア部や車両のサイドドアに当接すると、ロール折部もまた当該ドア部やサイドドアに当接する。このような場合には、ロール折部の展開が阻害されるために、ロール折部の展開が正常に進行するまでに余計な時間がかかり、エアバッグの展開速度向上に支障を来す虞がある。
【0025】
本発明のサイドエアバッグ装置では、ロール折部は、展開前の通常状態において、蛇腹折部の展開領域を避けた位置に配置される。
【0026】
このような本発明のサイドエアバッグ装置によると、ロール折部を上記の位置に配置することで、エアバッグ展開時において蛇腹折部がドア部やサイドドアに当接する際にロール折部にもたらされる上記の悪影響を軽減できる。これにより、ロール折部の展開阻害を抑制することが可能である。
【0027】
換言すると、本発明のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグでは、ケースのドア部を開くために、先ず、蛇腹折部の展開によりドア部に荷重を作用させる。当該荷重はこのとき蛇腹折部にも作用するが、当該蛇腹折部に接続され蛇腹折部に次いで展開するロール折部は、蛇腹折部の展開領域を避けた位置に配置されている。このため、当該ロール折部は蛇腹部に作用した荷重の影響を受け難く、狙い通りの位置に向けて展開し得る。これにより、本発明のサイドエアバッグ装置によると、エアバッグを狙い通りの位置に素早く展開させることが可能である。
【0028】
よって、本発明のサイドエアバッグ装置は、ケース収容型のサイドエアバッグ装置である場合にも、エアバッグの展開速度をより向上させることが可能である。
【0029】
なお、本明細書において、上記した蛇腹折部の展開領域とは、通常状態における蛇腹折部をその展開方向の先側に向けて投影した領域を意味する。
本明細書においては、必要に応じて、蛇腹折部の展開方向を第1方向と称し、ロール折部の展開方向を第2方向と称する場合がある。蛇腹折部は第1方向の先側に向けて展開し、ロール折部は第2方向の先側に向けて展開する、といい得る。
【0030】
なお、本発明の第1のサイドエアバッグ装置は、ケース収容型のサイドエアバッグ装置に限定されず、例えば、特許文献1に紹介されているような座席の背もたれ内にエアバッグが直接収容されるものであっても良い。
【0031】
以下、本発明のサイドエアバッグ装置をその構成要素毎に説明する。
なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x~y」は、下限x及び上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、並びに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで新たな数値範囲を構成し得る。更に、上記の何れかの数値範囲内から任意に選択した数値を新たな数値範囲の上限、下限の数値とすることができる。
【0032】
本発明の第2のサイドエアバッグ装置は、本発明の第1のサイドエアバッグ装置に加えてケースを構成要素とするものである。
【0033】
第1のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグは、ケースに収容されても良いし、収容されなくても良い。例えば当該エアバッグは、特許文献1に紹介されているサイドエアバッグ装置におけるエアバッグのように、座席の背もたれ内に直接収容されても良い。第1のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグがケースに収容される場合、当該ケースは以下に説明する本発明の第2のサイドエアバッグ装置におけるケースと同様のものであっても良い。
【0034】
本発明の第2のサイドエアバッグ装置は、ケースとエアバッグとを具備する。
ケースは、エアバッグを収容するためのケース本体部と、当該ケース本体部に一体化されているドア部とを有する。このうちドア部は、ケース本体部に対して開閉可能であっても良いが、車両の急制動時における誤作動を防ぐために、通常状態すなわちエアバッグが未展開である状態では、ケース本体部に対して閉じた状態で固定されているのが好ましい。
【0035】
具体的には、ドア部は、ケース本体部と一体に成形され、ケースにおける壁面の一部を構成するのが好適である。そして当該ドア部はケース本体部との境界部においても当該ケース本体部に一体化され、当該境界部の一部または全体に破断ガイド部が設けられているのが好適である。破断ガイド部とは、ケースにおける他の部分に比べて強度が低く、エアバッグが展開する際に破断する部分を意味する。破断ガイド部は、例えば、他の部分に比べて厚みの薄い部分であっても良いし、または、複数の貫通穴が間隔をおいて配列する部分であっても良い。
【0036】
ケースの内側に収容されているエアバッグが展開すると、ドア部は当該エアバッグの押圧力により、外側に向けて位置変化する。換言すると、このときドア部はケース本体部に対して開く方向に状態変化する。本明細書では、このときのドア部の状態を開状態と称し、エアバッグが通常状態すなわち展開していない状態であるときのドア部の状態を閉状態と称する場合がある。
【0037】
上記した破断ガイド部がドア部とケース本体部との境界部の一部にのみ設けられていれば、エアバッグの押圧力によりドア部がケース本体部に対して開く方向に状態変化すると当該境界部の一部は破断するものの、他の一部は一体化されたままである。したがってこの場合には、ドア部は、当該一体化されたままの部分をヒンジとして開状態に状態変化し、開状態においてもケース本体部と一体化されたままとなる。
【0038】
一方、破断ガイド部がドア部とケース本体部との境界部の全体に設けられていれば、エアバッグの押圧力によりドア部がケース本体部に対して開く方向に状態変化すると当該境界部の全体が破断する場合がある。この場合には、ドア部は、開状態においてはケース本体部から離脱する。
【0039】
エアバッグが展開した後のドア部の管理を考慮すると、ドア部は開状態においてもケース本体部と一体化されたままであるのが好適であり、破断ガイド部はドア部とケース本体部との境界部の一部にのみ設けられているのが好適といい得る。
【0040】
本発明のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグは、折り畳み可能であり且つ展開可能な材料で構成された中空の袋状をなせば良い。エアバッグの材料としては、例えば、可撓性を有しかつ高強度な材料を選択するのが好適であり、例えば、ポリエステルやポリアミドの糸を用いた織布を特に好適に使用し得る。
【0041】
エアバッグは、膨張流体発生源に接続される。膨張流体発生源については追って詳説する。
【0042】
エアバッグは、折り畳まれた状態で既述したケースに収容される。当該エアバッグは、蛇腹折部とロール折部とを有する。
【0043】
このうち蛇腹折部は、エアバッグのうち前記膨張流体発生源側にある部分であり、蛇腹折りされている部分である。蛇腹折りについては既述したとおりである。
【0044】
蛇腹折部は複数の折り目を有する。当該蛇腹折部の折り目は、互いに平行であるのが好適であるが、多少のバラツキ等は許容される。
例えば、蛇腹折部における隣り合う折り目同士のなす角θ1は0≦θ1≦10°の範囲内であるのが好適であり、0≦θ1≦5°の範囲内であるのがより好適であり、0≦θ1≦3°の範囲内であるのが特に好適である。
【0045】
ロール折部は、エアバッグのうち上記の蛇腹折部に接続されている部分であり、ロール折りされている部分である。ロール折りについては既述したとおりである。
【0046】
ロール折部が複数の折り目を有する場合、当該ロール折部の折り目もまた、互いに平行であるのが好適であるが、蛇腹折部と同様に多少のバラツキ等は許容される。
【0047】
例えば、ロール折部における隣り合う折り目同士のなす角θ2は0≦θ2≦10°の範囲内であるのが好適であり、0≦θ2≦5°の範囲内であるのがより好適であり、0≦θ2≦3°の範囲内であるのが特に好適である。
【0048】
本発明のサイドエアバッグ装置では、エアバッグにおける蛇腹折りの間隔や数等は特に限定されない。ロール折りの間隔や数等もまた特に限定されない。
【0049】
本発明のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグでは、蛇腹折部は第1方向の先側に展開し、当該蛇腹折部が第1方向の先側に展開することで、ケースのドア部が同じくケースのケース本体部に対して開く方向に状態変化する。本明細書において、蛇腹折部の展開方向たる第1方向は、蛇腹折部における隣り合う折り目同士の間の部分(必要に応じて蛇腹短冊部と称する場合がある)の重なり方向を意味する。そして第1方向の先側とは、当該蛇腹短冊部の重なり方向のうち膨張流体発生源から遠い側を意味する。上記したように複数の蛇腹折りの折り目が互いに平行でない場合であっても、当該蛇腹短冊部の重なり方向が第1方向となる。
【0050】
本発明のサイドエアバッグ装置では、エアバッグにおけるロール折部は第2方向の先側に展開する。以下、必要に応じて、ロール折部のうち膨張流体発生源から遠い側の端部をロール折部の終端部と称し、ロール折部のうち膨張流体発生源に近い側の端部をロール折部の始端部と称する場合がある。なお、ロール折部の終端部はロール折部のうち蛇腹折部から遠い側の端部と言い換えても良い。また、ロール折部の始端部はロール折部のうち蛇腹折部から近い側の端部と言い換えても良い。
【0051】
本明細書において、ロール折部の展開方向たる第2方向は、上記した第1方向と同じ方向であっても良いが、蛇腹部に作用した荷重がロール折部に与える影響を可能な限り低減するためには、当該第1方向と交差する方向であるのがより好適である。
当該第2方向は、通常状態、すなわちエアバッグが未展開である状態から、蛇腹折部を折り畳んだ状態で保持しつつロール折部だけを開放して自然に折りほどけさせたときに、ロール折部の長さの増大率が最大になる方向を意味する。
【0052】
ロール折部が展開する第2方向や、上記した蛇腹折部が展開する第1方向は、対象となるエアバッグを実際に展開・膨張させ、その際の画像を解析することにより、算出することが可能である。画像解析の方法としては既知の方法を適宜適切に選択すれば良い。
なお、同じ形状のエアバッグについては、第1方向や第2方向もまた同じであるとみなし得る。したがって、上記の画像解析等は少なくとも一つのエアバッグについて行なえば良く、全てのエアバッグについて行なう必要はない。
【0053】
本発明のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグにおいて、蛇腹折部が展開する第1方向とロール折部が展開する第2方向とが互いに交差する方向であるのが好適である。換言すると、蛇腹折部とロール折部とは互いに異なる方向に展開するのが好ましい。そして、当該第1方向と第2方向との交差角θは、40°≦θ≦140°の範囲内であるのがより好適である。
【0054】
ここで、既述した特許文献1に紹介されている従来のサイドエアバッグ装置において、蛇腹折部の展開する方向とロール折部の展開する方向とは同じ方向である。
【0055】
本発明の発明者は、ケース収容型のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグの展開速度の向上を図るべく鋭意研究を重ねた。その結果、蛇腹折部の展開する方向とロール折部の展開する方向とを異なる方向にする場合に、ケース収容型のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグの展開速度をさらに向上させ得ることに到達した。
【0056】
つまり、ケース収容型のサイドエアバッグ装置においては、エアバッグが展開する際の力でケースのドア部を開く必要があり、ドア部を開く際の荷重や衝撃がエアバッグにも作用する。
【0057】
本発明のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグにおいて、蛇腹折部とロール折部とが互いに異なる方向に展開する場合には、ロール折部は初めから蛇腹折部の展開方向とは異なる方向を向いており、ロール折部は蛇腹折部の展開による衝撃を逃す方向に展開するといい得る。そしてこれにより、エアバッグの展開速度をさらに向上させることが可能である。
【0058】
既述したように、本発明のサイドエアバッグ装置において、ロール折部は、蛇腹折部の展開領域を避けた位置に配置されている。これに加えて、ロール折部は蛇腹折部に対して第2方向の先側にあるのがさらに好適である。蛇腹部に作用した荷重がロール折部に与える影響を可能な限り低減するためである。
【0059】
なお、上記した蛇腹折部の展開方向に対するロール折部の展開方向の関係を考慮すると、本発明のサイドエアバッグ装置を以下の〔1〕、〔2〕のように把握することができる。
【0060】
〔1〕
ケース本体部と、前記ケース本体部に一体化され前記ケース本体部に対して開く方向に状態変化可能であるドア部と、を有するケースと、
膨張流体発生源に接続され、折り畳まれた状態で前記ケースに収容され、前記膨張流体発生源側にあり蛇腹折りされている蛇腹折部と、前記蛇腹折部に接続されロール折りされているロール折部と、を有するエアバッグと、を具備し、
前記蛇腹折部は第1方向の先側に展開し、
前記ロール折部は前記第1方向と交差する第2方向の先側に展開し、
前記蛇腹折部が前記第1方向の先側に展開することで、前記ドア部が前記ケース本体部に対して開く方向に状態変化する、サイドエアバッグ装置。
【0061】
〔2〕
膨張流体発生源に接続され、折り畳まれた状態で前記ケースに収容されるエアバッグを具備し、
前記エアバッグは、前記膨張流体発生源側にあり蛇腹折りされている蛇腹折部と、前記蛇腹折部に接続されロール折りされているロール折部と、を有し、
前記蛇腹折部は第1方向の先側に展開し、
前記ロール折部は前記第1方向と交差する第2方向の先側に向けて展開する、サイドエアバッグ装置。
【0062】
本発明のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグでは、蛇腹折部とロール折部とは連続していても良いし、連続していなくても良い。例えば当該エアバッグは、蛇腹折部とロール折部との間に折り畳まれていないストレート部を有しても良いし、蛇腹折部とは展開方向の異なる第2の蛇腹折部を有しても良い。
【0063】
さらに、本発明のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグでは、ロール折部の先側、換言するとロール折部に対して第2方向の先側に、第2のストレート部、第2のロール折部、第3の蛇腹折部等を有しても良い。
【0064】
膨張流体発生源は、既述したように膨張流体としてガスを発生する所謂インフレータを用いるのが好適であるが、場合によっては、ガス以外の膨張流体、例えば液体やゲル等を発生するものであっても良い。
【0065】
膨張流体発生源は、膨張流体をエアバッグに供給するための装置であり、例えば、膨張流体としてのガスを発生するガス発生剤を有する所謂パイロタイプのものであっても良いし、高圧容器の隔壁を破断させ当該高圧容器に収容されたガスを供給する所謂ハイブリッドタイプのものであっても良い。膨張流体発生源は、その全体がエアバッグの外部に配置されていても良いし、一部または全体がエアバッグの内部に配置されても良い。
【0066】
なお、本発明のサイドエアバッグ装置は、膨張流体発生源を具備しても良いし、具備しなくても良い。
【0067】
本発明のサイドエアバッグ装置は、その他の構成部材を具備し得る。当該その他の構成部材としては、例えば、膨張流体発生源の少なくとも位置を収容するリテーナや、エアバッグの少なくとも一部を取り囲むカバー、膨張流体発生源とエアバッグ制御装置とを電気的に接続するためのワイヤハーネス等が例示されるが、本発明のサイドエアバッグ装置はこれに限定されずその他の構成部材を具備しても良い。
【0068】
以下、具体例を挙げて本発明のサイドエアバッグ装置を説明する。
【0069】
(実施例1)
実施例1のサイドエアバッグ装置は、本発明の第2のサイドエアバッグ装置である。
座席に対する実施例1のサイドエアバッグ装置の位置を模式的に説明する説明図を
図1に示す。実施例1のサイドエアバッグ装置に含まれる各部材を模式的に説明する説明図を
図2に示す。実施例1のサイドエアバッグ装置におけるアッパケースを模式的に表す説明図を
図3および
図4に示す。なお、
図3は当該アッパケースを下側から見た様子を表し、
図4は当該アッパケースをサイドドア側の側方から見た様子を表す。実施例1のサイドエアバッグ装置を座席の側面側からみた様子を模式的に説明する説明図を
図5に示す。
図5中のA-A位置における実施例1のサイドエアバッグ装置を模式的に説明する説明図を
図6に示す。実施例1のサイドエアバッグ装置の動作を説明する説明図を
図7~
図9に示す。
【0070】
以下、サイドドア側、車両室内側、上側、下側、前側、後側とは各図に示すサイドドア側、車両室内側、上側、下側、前側、後側を意味するものとする。前側は車両進行方向の先側であり、後側は車両進行方向の後側である。
【0071】
実施例1のサイドエアバッグ装置1は、
図1に示すように、車両に搭載されている座席90の側部に一体化され、座席90の側方に露出している。より詳しくは、サイドエアバッグ装置1は、座席90のうちサイドドア91側の側部に一体化され、車幅方向において座席90の背もたれ90bとサイドドア91(
図7参照)との間に配置されている。
【0072】
図2に示すように、実施例1のサイドエアバッグ装置1は、ケース2、エアバッグ3、カバー4、膨張流体発生源5、リテーナ6およびワイヤハーネス7を具備する。
【0073】
このうちケース2は、アッパケース20とロアケース25とに分割されている。アッパケース20は複数の嵌合爪部21を有し、ロアケース25は各々の嵌合爪部21に対応する複数の嵌合枠部26を有する。嵌合爪部21と嵌合枠部26とが嵌合することで、アッパケース20とロアケース25とが一体化される。
【0074】
図2に示すように、アッパケース20およびロアケース25は、箱状をなすケース2をその厚さ方向に二分割した分割体といい得る。
【0075】
ロアケース25は、底壁部27と、当該底壁部27と一体に成形され当該底壁部27から立ち上がるロア周壁部28とを有する。ロア周壁部28は底壁部27の周縁部全周にわたって連続的に設けられている。嵌合枠部26は当該ロア周壁部28の先端部に設けられている。
【0076】
アッパケース20は、頂壁部22と、当該頂壁部22と一体に成形され当該頂壁部22から立ち上がるアッパ周壁部23とを有する。アッパ周壁部23は頂壁部22の周縁部全周にわたって連続的に設けられている。嵌合爪部21は当該アッパ周壁部23における立ち上がり方向の略中央部であり各々の嵌合枠部26に対応する位置に設けられている。
【0077】
実施例1のサイドエアバッグ装置1のケース2において、アッパケース20の頂壁部22はドア部24を構成する。また、アッパケース20のアッパ周壁部23、および、ロアケース25はケース本体部29を構成する。
【0078】
図3に示すように、アッパケース20のアッパ周壁部23と頂壁部22との境界のうち前側に位置する部分(
図3において二点鎖線Bで囲まれた部分)には、破断ガイド部20gが設けられている。以下、必要に応じて、アッパケース20のアッパ周壁部23と頂壁部22との境界のうち当該破断ガイド部20g以外の部分を一般部20cと称する場合がある。
【0079】
図2、
図4に示すように、破断ガイド部20gにおいて、アッパ周壁部23のうち頂壁部22側の端部には、複数の貫通穴20oが設けられている。当該貫通穴20oはアッパ周壁部23の厚さ方向に開口し、アッパ周壁部23の周方向に沿ってかつ間隔をおいて配列している。また、
図6に示すように、破断ガイド部20gにおいてアッパ周壁部23のうち当該貫通穴20o同士の間にある部分(
図6において二点鎖線Cで囲まれた部分)の厚さは、アッパ周壁部23の他の部分の厚さに比べて薄い。このため頂壁部22とアッパ周壁部23とは、破断ガイド部20gにおいて一般部20cに比べて破断し易い。
【0080】
また、
図2、
図4に示すように、隣り合う貫通穴20oの間隔は、アッパケース20のうち前側にある部分において、アッパケース20のうち下側にある部分および上側にある部分よりも広い。したがって、破断ガイド部20gのうちアッパケース20のうち前側にある部分は、アッパケース20のうち下側にある部分および上側にある部分に比べて破断し易い。
【0081】
アッパケース20とロアケース25とが組み合わされてケース2が形成される。
図2および
図5に示すように、ケース2は内部空間2hを有し、当該内部空間2hにはエアバッグ3、カバー4、膨張流体発生源5、リテーナ6、および、ワイヤハーネス7の一部が収容されている。リテーナ6は強度および剛性の高い部材であり、実施例1のサイドエアバッグ装置1においては金属製である。
【0082】
実施例1のサイドエアバッグ装置1における膨張流体発生源5は、既述したパイロタイプのインフレータである。当該膨張流体発生源5には膨張流体たるガスを発生するガス発生剤が収容されている。また、当該膨張流体発生源5の大部分は略筒状をなすリテーナ6に収容されている。ワイヤハーネス7は、膨張流体発生源5と図略のエアバッグ制御装置とを電気的に接続し、その一部は膨張流体発生源5とともにリテーナ6の内部に収容されている。
【0083】
参考までに、エアバッグ制御装置は、側突センサや加速度センサ等を含む図略の衝突センサに接続され、当該衝突センサからの信号を受けて、衝突が発生したことを検知する。そして衝突時において、膨張流体発生源5を制御して膨張流体を発生させ、ひいてはエアバッグ3を展開・膨張させる。
リテーナ6、膨張流体発生源5、およびワイヤハーネス7を必要に応じて、インフレータアセンブリと称する場合がある。
【0084】
図5に示すように、リテーナ6ならびに当該リテーナ6に収容された膨張流体発生源5およびワイヤハーネス7の一部は、エアバッグ3の内部に配置されている。膨張流体発生源5が生じた膨張流体は、リテーナ6を通じてエアバッグ3の内部に供給される。
【0085】
図6に示すように、エアバッグ3は箱状をなすカバー4に収容されている。カバー4は比較的強度の低い部材であり、エアバッグ3の展開時には容易に破断する。したがってカバー4は、エアバッグ3の展開を阻害し難い。
【0086】
リテーナ6にはボルト19が差し込まれる取り付け穴69が設けられている。当該ボルト19はさらにケース2のうちロアケース25に設けられている取り付け穴25hに挿し込まれ、さらに、座席90のフレーム(図略)に締結される。つまり、カバー4、エアバッグ3および膨張流体発生源5は、リテーナ6を介してケース2および座席90に固定される。
【0087】
エアバッグ3のうち上記したインフレータアセンブリを収容していない部分は、蛇腹折部30およびロール折部35を有する。蛇腹折部30はロール折部35よりも膨張流体発生源5側にあり、ロール折部35は蛇腹折部30に連続している。
【0088】
蛇腹折部30は前方向と後方向とに交互に折り返された部分であり、当該蛇腹折部30の折り目31は上側-下側方向に延びる。そして、当該蛇腹折部30のうち隣り合う折り目31同士の間の部分、すなわち蛇腹短冊部32は、車両室内側-サイドドア91側方向に重ねられている。さらに、蛇腹短冊部32のうちサイドドア91側の部分は、その重なり方向のうち膨張流体発生源5から遠い側に位置する。
【0089】
したがって、
図7に示すように、実施例1のサイドエアバッグ装置1における第1方向Fは車両室内側-サイドドア91側方向であり、蛇腹折部30の開き方向である第1方向Fの先側は、サイドドア91側である。換言すると、実施例1のサイドエアバッグ装置1におけるエアバッグ3の蛇腹折部30はサイドドア91側に展開する。
【0090】
図6に示すように、蛇腹折部30の終端部30eは前側にある。ロール折部35は当該蛇腹折部30の終端部30eからさらに車両室内側に折り返され、さらに、時計回り方向に巻き込まれた部分である。この場合のロール折部35の始端部35sは、ロール折部35のうち蛇腹折部30との境界に位置する部分といい得る。
なお、エアバッグ3を折り畳む際には、先ずロール折部35を形成し、次いで蛇腹折部30を形成するのが好適である。
【0091】
既述したように、蛇腹折部30はサイドドア91側に展開する。実施例1のサイドエアバッグ装置1においてロール折部35を展開させたい方向は、座席90とサイドドア91との隙間における前方向である。予め計測することで得られたロール折部35の展開方向すなわち第2方向Sは前後方向であり、第2方向Sの先側は前側である。さらに、実施例1のサイドエアバッグ装置1において、ロール折部35は蛇腹折部30に対して前側に配置されている。
【0092】
実施例1のサイドエアバッグ装置1において、第1方向Fと第2方向Sとの交差角θはほぼ90°である。
【0093】
また、ロール折部35は、蛇腹折部30の展開領域30Rを避けた位置にあり、かつ、蛇腹折部30に対して第2方向Sの先側にある。
【0094】
実施例1のサイドエアバッグ装置1における蛇腹折部30の展開領域30Rは、
図7中の二点鎖線Dで挟まれた領域であり、通常状態における蛇腹折部30を第1方向Fの先側に向けて投影した領域である。
【0095】
図2に示すように、通常常置において、蛇腹折部30およびロール折部35は各々折り畳まれて固定バンド98により仮固定されている。
【0096】
以下、実施例1のサイドエアバッグ装置1の動作を説明する。
【0097】
衝突時において、図略のエアバッグ制御装置は、膨張流体発生源5を制御して膨張流体を発生させる。膨張流体発生源5が発生した膨張流体は、エアバッグ3に流入する。蛇腹折部30はエアバッグ3のうち膨張流体発生源5側の部分であるために、当該膨張流体は先ず蛇腹折部30に流入する。これにより、蛇腹折部30が第1方向Fの先側に展開される(
図8参照)。
【0098】
既述したように蛇腹折部30は折ほどけ易く展開し易い部分であるため、蛇腹折部30は比較的速度高く展開する。
【0099】
第1方向Fに展開された蛇腹折部30は、ケース2のドア部24に当接し、当該ドア部24を第1方向Fの先側に押圧する。
【0100】
ケース2のうちドア部24とケース本体部29との境界部には破断ガイド部20gが設けられている。したがって、このときドア部24とケース本体部29とは破断ガイド部20gに沿って破断し、ドア部24は一般部20cを中心として開く方向に、換言するとサイドドア91側に揺動する。これにより、ドア部24は
図7に示す閉状態から
図8に示す開状態に状態変化する。
【0101】
このときロール折部35もまた蛇腹折部30の展開方向に位置変化する。しかしロール折部35の展開方向である第2方向Sは蛇腹折部30の展開方向である第1方向Fと交差する方向である。また、
図7に示すように、ロール折部35は、通常状態において蛇腹折部30の展開領域30Rを避けて配置されており、かつ、蛇腹折部30に対して第2方向Sの先側に配置されている。
【0102】
このため、蛇腹折部30がドア部24に当接する際の外力はロール折部35には大きく作用し難く、ロール折部35の向きも変えられ難い。さらに、ロール折部35自身も蛇腹折部30の展開による衝撃を逃す方向に展開する(
図9参照)。これによりロール折部35の展開は阻害され難く、実施例1のサイドエアバッグ装置1におけるエアバッグ3は、ドア部24を有するケース2に収容されているにも拘わらず、充分な速度で展開する。
【0103】
また既述したように、ロール折部35は蛇腹折部30よりも折りほどけ難いものの狭い部分に入り込み易い部分である。このため実施例1のサイドエアバッグ装置1におけるエアバッグ3は、車両サイドドア91と座席90との比較的狭い隙間に入り込み、充分な速度で第2方向Sの先側に展開する。
【0104】
したがって、実施例1のサイドエアバッグ装置1は、サイドエアバッグ装置1におけるエアバッグ3の展開速度がより向上したものといい得る。
【0105】
以上本発明を説明してきたが、本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、当該実施形態等に記載した要素を適宜抽出し組み合わせて実施することや、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
また、本発明の明細書は、出願当初における各請求項の引用関係に止まらず各請求項に記載された事項を適宜組み合わせた技術思想を開示するものである。
【符号の説明】
【0106】
1:サイドエアバッグ装置
2:ケース
24:ドア部
29:ケース本体部
3:エアバッグ
30:蛇腹折部
30R:蛇腹折部の展開領域
35:ロール折部
5:膨張流体発生源
F:第1方向
S:第2方向
θ:第1方向と第2方向との交差角