(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114110
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】地表面推定方法、地表面の計測データ処理方法、地表面推定装置、地表面の計測データ処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 7/02 20060101AFI20240816BHJP
G01V 8/12 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G01C7/02
G01V8/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019551
(22)【出願日】2023-02-11
(71)【出願人】
【識別番号】506060258
【氏名又は名称】公立大学法人北九州市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】藤本 悠介
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB11
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105FF03
2G105LL01
(57)【要約】
【課題】地表面をより高い信頼性で推定できる地表面推定方法、地表面推定装置及び地表面推定プログラム並びに不要なデータを除去できる地表面の計測データ処理方法、計測データ処理装置及び計測データ処理プログラムを提供する。
【解決手段】地表面の計測データ処理方法は、地表面を計測した計測データ点群に基づいて、予め決められた複数の制約条件の下で、計測データ点群と推定された推定地表面との不一致度合いが低減されるように推定地表面を求める地表面推定ステップS1と、推定地表面と計測データ点群との高度差を計算する高度差計算ステップS2と、計測データ点群のうち、高度差が予め決められた大きさ以上となるデータ点群を除去する除去ステップS3と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木が生えた地表面を計測した計測データ点群に基づいて、予め決められた複数の制約条件の下で、前記計測データ点群と推定された推定地表面との不一致度合いが低減されるように該推定地表面を求める地表面推定ステップを含む地表面推定方法。
【請求項2】
請求項1記載の地表面推定方法であって、
前記複数の制約条件が、
前記推定地表面の高度が前記計測データ点群の高度以下でなければならないとする絶対制約である制約条件Aと、
前記推定地表面の表面が滑らかである方が望ましいとする考慮制約である制約条件Bと、である地表面推定方法。
【請求項3】
請求項2記載の地表面推定方法であって、
前記制約条件Bが、前記推定地表面の勾配又は高度の変化の度合いが小さい方が望ましいとする考慮制約である地表面推定方法。
【請求項4】
請求項1記載の地表面推定方法であって、
前記複数の制約条件が、
前記推定地表面の高度が前記計測データ点群の高度以下となることである制約条件Aと、
値が小さいほど前記推定地表面が滑らかであることを表す指標が予め決められた大きさよりも小さいことである制約条件Bと、である地表面推定方法。
【請求項5】
請求項1記載の地表面推定方法であって、
前記複数の制約条件が、
前記推定地表面の高度が前記計測データ点群の高度以下となることである制約条件Aと、
前記推定地表面が滑らかであることを表す指標が予め決められた範囲内にあることである制約条件Bと、である地表面推定方法。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の地表面推定方法であって、
前記地表面推定ステップにて、
前記制約条件A及び前記制約条件Bの下で、前記計測データ点群と前記推定地表面との高度差を最小化する二次計画問題の最適解として前記推定地表面が求められる地表面推定方法。
【請求項7】
請求項6記載の地表面推定方法であって、
前記推定地表面を計算するために構成されたグリッド上で代表となる多数の点群がモデル点群として設定され、
前記推定地表面が、前記モデル点群と、該モデル点群から内挿された内挿点群とで表される面である地表面推定方法。
【請求項8】
請求項6記載の地表面推定方法と、
前記推定地表面と前記計測データ点群との高度差を計算する高度差計算ステップと、
前記計測データ点群のうち、前記高度差が予め決められた大きさ以上となるデータ点群を除去する除去ステップと、を含む地表面の計測データ処理方法。
【請求項9】
コンピュータを、
樹木が生えた地表面を計測した計測データ点群に基づいて、予め決められた複数の制約条件の下で、推定された推定地表面を求める地表面推定手段として機能させるための地表面推定プログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
樹木が生えた地表面を計測した計測データ点群に基づいて、予め決められた複数の制約条件の下で、推定された推定地表面を求める地表面推定手段と、
前記推定地表面と前記計測データ点群との高度差を計算する高度差計算手段と、
前記計測データ点群のうち、前記高度差が予め決められた大きさ以上となるデータ点群を除去する除去手段、として機能させるための地表面の計測データ処理プログラム。
【請求項11】
樹木が生えた地表面を計測した計測データ点群に基づいて、予め決められた複数の制約条件の下で、推定された推定地表面を求める地表面推定手段を備えた地表面推定装置。
【請求項12】
樹木が生えた地表面を計測した計測データ点群に基づいて、予め決められた複数の制約条件の下で、推定された推定地表面を求める地表面推定手段と、
前記推定地表面と前記計測データ点群との高度差を計算する高度差計算手段と、
前記計測データ点群のうち、前記高度差が予め決められた大きさ以上となるデータ点群を除去する除去手段と、を備えた地表面の計測データ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地表面推定方法、地表面の計測データ処理方法、地表面推定装置、地表面の計測データ処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地盤高推定方法が記載されている。この地盤高推定方法においては、レーザスキャナーデータを利用し、樹冠からの反射点を多く含む上層面データと、地表面からの反射点及び樹冠と地表面の中間に存在する物体からの反射点データより、仮想下層面と仮想樹高分布を求め、仮想樹高分布にデータ処理を施し、補正樹高分布を得た後、上層面と補正樹高分布を用いて地盤高測定法を行う。
【0003】
特許文献2には、ポリゴンでフィルタリング処理することによって地表面標高モデルを作成する地表面抽出処理システムが記載されている。この地表面抽出処理システムは、地上位置情報に含まれる標高情報から地表面上の地物に係るポリゴン情報を取得するポリゴン化手段と、地上位置情報をポリゴン情報でフィルタリングして地表面情報を作成するフィルタ手段と、地表面情報に対し、データ補間して地表面標高モデルとする補間手段と、を有する。
【0004】
特許文献3には、処理の効率化を図ることのできるレーザデータのフィルタリング方法が記載されている。このレーザデータのフィルタリング方法は、上空を飛行する飛行体から地上をレーザ掃射して取得したレーザデータ群に平面座標に基づくメッシュを設定した後、各メッシュ内の最低標高点データをメッシュ代表点1として抽出し、次いで、隣接するメッシュのメッシュ代表点1を近傍として標高要素に基づいてクラスタリングし、この後、構成メッシュ数が最大建物想定面積相当数以上のクラス内に属するレーザデータを地表面反射成分として抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-003332号公報
【特許文献2】特開2002-236019号公報
【特許文献3】特開2004-272688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、本発明の構成を有しない場合と比較して、地表面をより高い信頼性で推定できる地表面推定方法、地表面推定装置及び地表面推定プログラム並びに不要なデータを除去できる地表面の計測データ処理方法、計測データ処理装置及び計測データ処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、樹木が生えた地表面を計測した計測データ点群に基づいて、予め決められた複数の制約条件の下で、前記計測データ点群と推定された推定地表面との不一致度合いが低減されるように該推定地表面を求める地表面推定ステップを含む地表面推定方法である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の地表面推定方法であって、前記複数の制約条件が、前記推定地表面の高度が前記計測データ点群の高度以下でなければならないとする絶対制約である制約条件Aと、前記推定地表面の表面が滑らかである方が望ましいとする考慮制約である制約条件Bと、である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の地表面推定方法であって、前記制約条件Bが、前記推定地表面の勾配又は高度の変化の度合いが小さい方が望ましいとする考慮制約である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1記載の地表面推定方法であって、前記複数の制約条件が、前記推定地表面の高度が前記計測データ点群の高度以下となることである制約条件Aと、値が小さいほど前記推定地表面が滑らかであることを表す指標が予め決められた大きさよりも小さいことである制約条件Bと、である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1記載の地表面推定方法であって、前記複数の制約条件が、前記推定地表面の高度が前記計測データ点群の高度以下となることである制約条件Aと、前記推定地表面が滑らかであることを表す指標が予め決められた範囲内にあることである制約条件Bと、である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項2~5のいずれか1項に記載の地表面推定方法であって、前記地表面推定ステップにて、前記制約条件A及び前記制約条件Bの下で、前記計測データ点群と前記推定地表面との高度差を最小化する二次計画問題の最適解として前記推定地表面が求められる。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の地表面推定方法であって、前記推定地表面を計算するために構成されたグリッド上で代表となる多数の点群がモデル点群として設定され、前記推定地表面が、前記モデル点群と、該モデル点群から内挿された内挿点群とで表される面である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項6記載の地表面推定方法と、前記推定地表面と前記計測データ点群との高度差を計算する高度差計算ステップと、前記計測データ点群のうち、前記高度差が予め決められた大きさ以上となるデータ点群を除去する除去ステップと、を含む地表面の計測データ処理方法である。
【0015】
請求項9に記載の発明は、コンピュータを、樹木が生えた地表面を計測した計測データ点群に基づいて、予め決められた複数の制約条件の下で、推定された推定地表面を求める地表面推定手段として機能させるための地表面推定プログラムである。
【0016】
請求項10に記載の発明は、コンピュータを、樹木が生えた地表面を計測した計測データ点群に基づいて、予め決められた複数の制約条件の下で、推定された推定地表面を求める地表面推定手段と、前記推定地表面と前記計測データ点群との高度差を計算する高度差計算手段と、前記計測データ点群のうち、前記高度差が予め決められた大きさ以上となるデータ点群を除去する除去手段、として機能させるための地表面の計測データ処理プログラムである。
【0017】
請求項11に記載の発明は、樹木が生えた地表面を計測した計測データ点群に基づいて、予め決められた複数の制約条件の下で、推定された推定地表面を求める地表面推定手段を備えた地表面推定装置である。
【0018】
請求項12に記載の発明は、樹木が生えた地表面を計測した計測データ点群に基づいて、予め決められた複数の制約条件の下で、推定された推定地表面を求める地表面推定手段と、前記推定地表面と前記計測データ点群との高度差を計算する高度差計算手段と、前記計測データ点群のうち、前記高度差が予め決められた大きさ以上となるデータ点群を除去する除去手段と、を備えた地表面の計測データ処理装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、本発明の構成を有しない場合と比較して、地表面をより高い信頼性で推定できる地表面推定方法、地表面推定装置及び地表面推定プログラム並びに不要なデータを除去できる地表面の計測データ処理方法、計測データ処理装置及び計測データ処理プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る地表面の計測データ処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】航空レーザ測量によって地表面が計測される様子を示す説明図である。
【
図3】同地表面の計測データ処理装置によって推定される推定地表面の説明図である。
【
図4】同地表面の計測データ処理装置による計測データ処理方法を示すフローチャートである。
【
図5】同地表面の計測データ処理装置によって処理された地表面の計測データであって、(A)は、地表面の計測データ点群であり、(B)は、(A)の一部範囲に属する計測データ点群を抽出し、二次元に可視化したデータである。
【
図6】同地表面の計測データ処理装置により推定された推定地表面である。
【
図7】同地表面の計測データ処理装置によって処理された結果であって、(A)は、計測データ点群及び推定地表面を可視化した結果であり、(B)は、推定地表面を用いて樹木に対応する計測データ点群を除去した結果である。
【
図8】同地表面の計測データ処理装置による地表面推定方法の比較例であって、制約条件Bの設定がない場合の推定地表面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0022】
本発明の一実施の形態に係る地表面の計測データ処理装置10(
図1参照)は、航空レーザ測量により得られた地表面の計測データを処理し、樹木に対応する不要なデータを除去できる。以下、地表面の計測データ処理装置10を単に「計測データ処理装置10」という。
ここで、航空レーザ測量は、
図2に示すように、例えばドローン20を用いて上空から地表面の測量を行うものであり、計測された計測データ点群には、地表面に生えた樹木に対応する計測データ点群が不要なデータとして含まれる。
【0023】
付言すると、一般に、航空レーザ測量には、レーザ光を照射して地表から反射して戻ってくるまでの時間差に基づいて距離を測定するレーザ測距装置、GNSS受信機及び慣性計測装置(IMU)が用いられる。
なお、レーザ測距装置は、地表面の計測データを取得できるのであれば、任意のセンサでよい。
【0024】
計測データ処理装置10は、例えばコンピュータであり、
図1に示すように、地表面推定手段102、高度差計算手段104及び除去手段106を備えている。
地表面推定手段102、高度差計算手段104及び除去手段106は、計測データ処理装置10のCPUにて実行されるコンピュータプログラムにより実現される。
【0025】
地表面推定手段102は、樹木が生えた地表面を計測した計測データ点群に基づいて、予め決められた複数の制約条件の下で、推定された推定地表面を求めることができる。
地表面推定手段102は、レーザ測量の物理的特徴と地表面に関する事前知識に基づいた次の条件を少なくとも考慮して、地表面を推定する。
【0026】
(条件1)
レーザ測量では反射点が記録されるため、地表面は、計測データ点群の高度以下の位置にあること(計測データ点群は地表面の高度以上の位置にあること)。
【0027】
(条件2)
現実の地表面は、崖などの局所的な例外を除き、滑らかに変化すること。
ただし、ここにいう「滑らか」とは、例えば、地表面の勾配又は高度が急激に変化しないということであり、より具体的な例を挙げると、水平方向に1[m]位置が離れた任意の場所A、Bにおいて、場所A又は場所Bの勾配から計算される他方の位置の予測高度と、実際の高度と、の差が平均0.2[m]以下であるということである。
【0028】
このような条件1及び条件2を満たす推定地表面は、例えば、数理最適化の知見や機械学習の技法を活用することにより求められる。
本実施の形態における地表面推定手段102の具体的な処理内容については、後述する。
なお、この地表面推定手段102は、地表面を推定する地表面推定装置を構成できるため、計測データ処理装置10は、地表面推定装置として捉えることもできる。
【0029】
高度差計算手段104は、推定地表面と計測データ点群との高度差を計算できる。
高度差計算手段104の具体的な処理内容については、後述する。
【0030】
除去手段106は、高度差計算手段104が計算した高度差に基づいて、計測データ点群のうち、地表面から遠いデータ点群を除去できる。
除去手段106の具体的な処理内容については、後述する。
【0031】
次に、計測データ処理装置10を用いた計測データ処理方法について、
図4に基づいて、説明する。地表面は、次のステップS1~S3に従って推定される。
【0032】
(ステップS1)
本ステップは、地表面推定手段102が、樹木が生えた地表面を計測した計測データ点群に基づいて、予め決められた複数の制約条件の下で、計測データ点群と推定された推定地表面との不一致度合いが低減されるように推定地表面を求める地表面推定ステップ(地表面推定方法)である。
【0033】
より具体的には、地表面推定手段102は、次の制約条件A及び制約条件Bの下、計測データ点群と推定地表面との高度差が低減されるように推定地表面を推定する。
制約条件Aは、推定地表面の高度が計測データ点群の高度以下でなければならないとする絶対的制約であり、前述の条件1に対応する。
制約条件Bは、推定地表面の勾配又は高度の変化の度合いが小さい方が望ましいとする考慮制約、つまり、推定地表面の表面が滑らかである方が望ましいとする考慮制約であり、前述の条件2に対応する。なお、制約条件Bは、このような考慮制約に限定されるものではなく、推定地表面の勾配又は高度の変化の度合いが予め決められた範囲内となるように設定されてもよいし、予め決められた大きさよりも小さくなるように設定されてもよい。
換言すると、推定地表面は、制約条件A、Bの下、例えば計測データ点群と推定地表面との高度差を最小化するという二次計画問題の最適解として求められる。
【0034】
なお、この二次計画問題は、推定地表面を計算するために構成されたグリッド上で代表となる多数の点群がモデル点群として設定され、推定地表面が、モデル点群と、該モデル点群から線形内挿された内挿点群とで表される面として求解されることが好ましい。このような面として推定地表面を求めることにより、地形のように複雑な曲面も表現できる柔軟性を有する一方、計算が比較的容易となる。
【0035】
(ステップS2)
本ステップは、高度差計算手段104が推定地表面と計測データ点群との高度差H[m]を計算する高度差計算ステップである。
高度差H[m]は、計測データ点群の高度から対応する推定地表面の高度を減算することで求められる。
【0036】
(ステップS3)
本ステップは、除去手段106が、計測データ点群のうち、高度差H[m]が予め決められた大きさ以上となるデータ点群を除去する除去ステップである。
除去手段106が、予め決められた大きさ以上の高度差H[m]を有するデータ点群を削除することにより、地表面から遠いデータ点群、すなわち樹木に対応する不要なデータ点群が除去される。
【0037】
以上のステップS1~S3が実行されることによって、例えば崖のような急激な勾配の変化がない、滑らかな地形となっている場所において、樹木に対応する不要なデータ点群が除去され、計測データ点群のデータ数が削減される。
【実施例0038】
次に、計測データ処理装置10が、地表面を推定するとともに不要なデータを除去する実施例を示し、地表面推定方法及び計測データ処理方法の効果についてより具体的に説明する。
【0039】
発明者は、計測データ処理装置10を用いて
図5(A)及び
図5(B)に示す計測データを処理し、不要なデータ点群を除去することを試みた。
なお、
図5(A)は、航空レーザ測量により得られた計測データ点群であって、東西40[m]に南北に40[m]の領域における計測データ点群である。東西方向については東が正、南北方向については北が正の方向であり、縦軸が高度[m]である。南北方向及び東西方向ともに5[m]から20[m]にあたる場所は概ね平坦となっており、これ以外の場所に樹木を伴う斜面が存在している。
図5(B)は、
図5(A)の南北方向-0.5[m]から0.5[m]の範囲に属する点群を抽出し、二次元に可視化したものである。
【0040】
前述の計測データ処理方法のステップS1(地表面推定方法)を実行するにあたっては、推定地表面は、2[m]間隔で配置されたモデル点群と、これらモデル点群から内挿された内挿点群とで表される面とした。その上で、二次計画問題の最適解を求めることにより、
図6に及び
図7(A)に示すような推定地表面が得られた。
【0041】
図6は、
図5(A)に対応する推定地表面である。同
図6より、推定地表面の勾配又は高度の変化の度合いが小さい方が望ましいとする制約条件Bにより、全体的に滑らかな曲面となっていることが確認された。
図7(A)は、
図5(B)にて抽出した範囲に属するモデル点群と、これから構成される推定地表面を可視化した結果である。白丸がモデル点群を示し、実線がモデル点群から構成される推定地表面である。
【0042】
推定地表面が、計測データ点群の高度以下にあり(制約条件A)、かつ滑らかに変化(制約条件B)した状態で構成されていることに加え、それが地表面の推定として妥当な結果を与えていることが確認された。
【0043】
続いて、地表面からの高度差Hを1.0[m]とし、ステップS2及びステップS3を実行した。すなわち、この高度差以上となるデータ点群、すなわち、樹木に対応するデータ点群を
図7(A)から除去した。結果を
図7(B)に示す。
【0044】
図7(B)に可視化される範囲では計測データ点群は1359点であり、除去された後に残ったデータ数は41点であった。また、全体の40[m]×40[m]の範囲の領域では、計測データ点群73065点に対して除去総数は67919点であり、約93%の点が樹木に対応するものとして除去された。
【0045】
最後に、比較例として、推定地表面の勾配又は高度の変化の度合いが小さい方が望ましいとする制約条件Bを設定することなく、前述の地表面推定方法を実行した場合の結果を
図8に示す。
【0046】
軸並びに各線及び各点の定義は
図7(A)と同様である。特に東西方向-4[m]から0[m]に向かって、水平距離2[m]で高度が15[m]程度変化する上り勾配から同程度の下り勾配へと急激に変化する地表面が推定されており、実際の地表面としては信頼性の低い結果となっていることがわかる。この結果より、制約条件Bを設けることの有効性が確認された。
【0047】
このように、本実施の形態に係る計測データ処理装置10(計測データ処理方法)によれば、崖のような急激な勾配の変化がない、滑らかな地形となっている場所において、樹木に対応する不要なデータ点群が除去される。
【0048】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
【0049】
制約条件Bの規定方法には、前述の実施の形態にて説明した方法以外に種々の方法が考えられる。他の規定例として、制約条件Bは、1)推定地表面の勾配又は高度の変化率(勾配又は高度の変化の度合いの一例)が予め決められた値の範囲内や予め決められた値以下となるように設定されてもよいし、2)異なる2地点における推定地表面の勾配や高度の大きさの差(勾配又は高度の変化の度合いの一例)が予め決められた値の範囲内や予め決められた値以下となるように設定されてもよい。更には、制約条件Bは、1)推定地表面が滑らかであることを表す指標が予め決められた範囲内となるように設定されてもよいし、2)値が小さいほど推定地表面が滑らかであることを表す指標を導入し、この指標が予め決められた大きさよりも小さくなるように設定されてもよい。すなわち、制約条件Bは、例えば勾配又は高度の変化の度合いのような、推定地表面の滑らかさを表す指標に基づいて規定されてもよい。