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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011413
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】経皮投与製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/568 20060101AFI20240118BHJP
   A61P 5/24 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 15/12 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 21/06 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240118BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240118BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240118BHJP
【FI】
A61K31/568
A61P5/24
A61P15/00
A61P15/12
A61P15/10
A61P3/00
A61P3/10
A61P3/04
A61P9/10 101
A61P19/10
A61P21/06
A61P25/28
A61P25/24
A61K9/06
A61K47/22
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113365
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000215958
【氏名又は名称】帝國製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】白石 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】谷川 純一
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA08
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC11
4C076CC17
4C076CC21
4C076CC29
4C076DD27
4C076DD28
4C076DD30
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD45N
4C076DD51
4C076DD60
4C076EE09
4C076EE23
4C076EE47
4C086AA01
4C086DA09
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA45
4C086ZA70
4C086ZA81
4C086ZA94
4C086ZA97
4C086ZC10
4C086ZC21
4C086ZC35
(57)【要約】
【課題】 テストステロンの高い安定性を示す経皮投与製剤の提供。
【解決手段】 膏体中に、テストステロンおよび2-メルカプトベンズイミダゾールを含む経皮投与製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膏体中に、テストステロンおよび2-メルカプトベンズイミダゾールを含む経皮投与製剤。
【請求項2】
膏体重量に対してテストステロンの配合量が0.01~10重量%であり、かつ、2-メルカプトベンズイミダゾールの配合量が0.01~5重量%である、請求項1に記載の経皮投与製剤。
【請求項3】
膏体中にポリアクリル酸またはその塩、架橋剤、およびプロピレングリコールを含む可塑剤をさらに含む、請求項1に記載の経皮投与製剤。
【請求項4】
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸部分中和物から選択される1種または2種以上であり;
架橋剤がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上であり;かつ、
可塑剤がエタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、D―ソルビトール、およびポリエチレングリコール400から選択される1種または2種以上をさらに含む、請求項3に記載の経皮投与製剤。
【請求項5】
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸部分中和物から選択される1種または2種以上であり;
架橋剤がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上であり;かつ、
可塑剤がエタノール、グリセリン、およびD-ソルビトールから選択される1種または2種以上をさらに含む、請求項3に記載の経皮投与製剤。
【請求項6】
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸であり;
架橋剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムであり;かつ、
可塑剤がプロピレングリコール、エタノール、およびグリセリンの組み合わせである、請求項3に記載の経皮投与製剤。
【請求項7】
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸であり;
架橋剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムであり;かつ、
可塑剤がプロピレングリコールおよびグリセリンの組み合わせである、請求項3に記載の経皮投与製剤。
【請求項8】
膏体重量に対してポリアクリル酸またはその塩の配合量が1~20重量%であり、架橋剤の配合量が0.02~5重量%であり、かつ、可塑剤の配合量が45~95重量%である、請求項3~7のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
【請求項9】
膏体中に吸収促進剤をさらに含む、請求項1に記載の経皮投与製剤。
【請求項10】
吸収促進剤がパルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、およびセバシン酸ジエチルから選択される1種または2種以上の脂肪酸エステルである、請求項9に記載の経皮投与製剤。
【請求項11】
吸収促進剤がラウリン酸メチルおよびミリスチン酸イソプロピルから選択される1種または2種の脂肪酸エステルである、請求項9に記載の経皮投与製剤。
【請求項12】
膏体重量に対して吸収促進剤の配合量が0.1~10重量%である、請求項9~11のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
【請求項13】
膏体中に、テストステロン;2-メルカプトベンズイミダゾール;ポリアクリル酸;メタケイ酸アルミン酸マグネシウム;プロピレングリコール、エタノール、およびグリセリンの組み合わせ、またはプロピレングリコールおよびグリセリンの組み合わせ;ならびにラウリン酸メチルおよびミリスチン酸イソプロピルから選択される1種または2種の脂肪酸エステルを含む、請求項1に記載の経皮投与製剤。
【請求項14】
テストステロンの濃度低下による疾患または症状の予防または治療のための、請求項1~7、9~11、および13のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
【請求項15】
テストステロンの濃度低下による疾患または症状が、性機能低下、男性更年期障害、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、動脈硬化、骨粗鬆症、筋力低下、認知機能低下、記憶障害、および抑うつから選択される1種または2種以上の疾患または症状である、請求項14に記載の経皮投与製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテストステロンの高い安定性を示す経皮投与製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
テストステロンは、精巣において産生される男性ホルモン(アンドロゲン)である。アンドロゲンは、多くの重要な生理的働きを担っており、筋、骨、中枢神経系、前立腺、骨髄、および性機能等に影響を及ぼす。先天的または後天的なテストステロンの不足による性機能低下に加え、加齢に伴うテストステロンの濃度低下による疾患または症状、例えば男性更年期障害、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、動脈硬化、骨粗鬆症、筋力低下、認知機能低下、記憶障害、および抑うつ等の治療として、注射剤やゲル剤およびリザーバー型製剤により、テストステロンの補充療法がおこなわれている。しかしながら、注射剤は、頻繁な通院が必要であることに加えて、生理的な血中濃度の維持が困難であり、ゲル剤の場合は、正確に投与することの困難性、および皮膚に投与した薬剤の他者への二次曝露等の課題が残されている。
【0003】
その点、貼付剤、特にマトリックス型の経皮投与製剤の場合には、薬物を安定的に一定量投与でき、かつ、貼付と剥離という簡単な作業のみで所望の薬物の投与、および投与の中断または中止が可能であるため、他者への汚染の可能性は殆どない。テストステロンを配合したマトリックス型経皮投与製剤については、従来より油性基剤であるアクリレート共重合体を用いた貼付剤が検討されてきている〔特許文献1および特許文献2〕。しかしながらアクリレート共重合体で構成される粘着剤、ゴム系粘着剤、あるいはシリコン系粘着剤等の油性粘着剤は、製剤からの薬物放出性が低いため、薬物の放出性を高めようとすると製剤中に薬物の溶解剤、および薬物の吸収促進剤を多量に配合する必要があり、その結果、製剤物性が悪化するという問題があった。
【0004】
一方、ポリアクリル酸等の水溶性高分子を主基剤とし、種々の薬物を配合した水溶性の貼付剤が検討されてきており、テストステロンに関しても吸収促進剤として乳酸エステルを配合した製剤等が検討されている〔特許文献3〕。しかしながら、乳酸エステルを配合した製剤は皮膚刺激性が高く、安定性に関しても分解物の低減等、更なる改良が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2002-542277号公報
【特許文献2】特表2004-517965号公報
【特許文献3】国際公開第2019/088010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、その目的はテストステロンの高い安定性を示す経皮投与製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、テストステロン含有経皮投与製剤へ2-メルカプトベンズイミダゾールを含有することで分解生成物の総量およびテストステロンの分解物である6-ヒドロキシテストステロンの生成を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]
膏体中に、テストステロンおよび2-メルカプトベンズイミダゾールを含む経皮投与製剤(以下、本発明の経皮投与製剤とも称する)。
[2]
膏体重量に対してテストステロンの配合量が0.01~10重量%であり、かつ、2-メルカプトベンズイミダゾールの配合量が0.01~5重量%である、[1]に記載の経皮投与製剤。
[3]
膏体中にポリアクリル酸またはその塩、架橋剤、およびプロピレングリコールを含む可塑剤をさらに含む、[1]または[2]に記載の経皮投与製剤。
[4]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸部分中和物から選択される1種または2種以上であり;
架橋剤がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上であり;かつ、
可塑剤がエタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、D―ソルビトール、およびポリエチレングリコール400から選択される1種または2種以上をさらに含む、[3]に記載の経皮投与製剤。
[5]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸部分中和物から選択される1種または2種以上であり;
架橋剤がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上であり;かつ、
可塑剤がエタノール、グリセリン、およびD-ソルビトールから選択される1種または2種以上をさらに含む、[3]に記載の経皮投与製剤。
[6]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸であり;
架橋剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムであり;かつ、
可塑剤がプロピレングリコール、エタノール、およびグリセリンの組み合わせである、[3]に記載の経皮投与製剤。
[7]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸であり;
架橋剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムであり;かつ、
可塑剤がプロピレングリコールおよびグリセリンの組み合わせである、[3]に記載の経皮投与製剤。
[8]
膏体重量に対してポリアクリル酸またはその塩の配合量が1~20重量%であり、架橋剤の配合量が0.02~5重量%であり、かつ、可塑剤の配合量が45~95重量%である、[3]~[7]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[9]
膏体中に吸収促進剤をさらに含む、[1]~[8]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[10]
吸収促進剤がパルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、およびセバシン酸ジエチルから選択される1種または2種以上の脂肪酸エステルである、[9]に記載の経皮投与製剤。
[11]
吸収促進剤がラウリン酸メチルおよびミリスチン酸イソプロピルから選択される1種または2種の脂肪酸エステルである、[9]に記載の経皮投与製剤。
[12]
膏体重量に対して吸収促進剤の配合量が0.1~10重量%である、[9]~[11]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[13]
膏体中に、テストステロン;2-メルカプトベンズイミダゾール;ポリアクリル酸;メタケイ酸アルミン酸マグネシウム;プロピレングリコール、エタノール、およびグリセリンの組み合わせ、またはプロピレングリコールおよびグリセリンの組み合わせ;ならびにラウリン酸メチルおよびミリスチン酸イソプロピルから選択される1種または2種の脂肪酸エステルを含む、[1]~[12]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[14]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状の予防または治療のための、[1]~[13]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[15]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状が、性機能低下、男性更年期障害、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、動脈硬化、骨粗鬆症、筋力低下、認知機能低下、記憶障害、および抑うつから選択される1種または2種以上の疾患または症状である、[14]に記載の経皮投与製剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によりテストステロンの高い安定性を示す経皮投与製剤を提供することができる。また、本発明は乳酸エステル等の皮膚刺激性が高い物質を用いる必要がないため、低い皮膚刺激性を示す経皮投与製剤を提供することができる。また、本発明の経皮投与製剤により、テストステロンの濃度低下による疾患または症状を効率的に予防または治療することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「含有する」または「含む」は、「配合する」と互換的に用いられてもよい。また、本明細書において、「含有量」と「配合量」は互換的に用いられてもよい。
【0011】
本発明の経皮投与製剤では、膏体中にテストステロンおよび2-メルカプトベンズイミダゾールを含み、通常はポリアクリル酸またはその塩、架橋剤、およびプロピレングリコールを含む可塑剤を含み、さらに任意に吸収促進剤およびその他の成分を含む。膏体は通常、膏体基剤と薬物としてのテストステロンを含有するペースト状の組成物である。本発明の経皮投与製剤では、ポリアクリル酸またはその塩および架橋剤を混合したものを主基剤と称し、さらにプロピレングリコールを含む可塑剤および2-メルカプトベンズイミダゾール、並びに任意にその他の成分を配合したものを膏体基剤と称する。
【0012】
本発明の経皮投与製剤におけるテストステロンの配合量は、治療効果のある濃度であれば特に限定されるものではないが、膏体重量に対して通常0.01~10重量%、好ましくは0.2~4重量%、より好ましくは0.5~2重量%の範囲である。テストステロンの配合量が0.01重量%未満であると、十分な薬物の経皮吸収性が得られず、他方、10重量%を超えると、製剤中に溶解しない薬物が結晶化し、主薬放出性の低下および製剤物性の低下を引き起こす。
【0013】
本発明の経皮投与製剤における2-メルカプトベンズイミダゾールは、テストステロンの分解を抑制する作用がある。
【0014】
本発明の経皮投与製剤における2-メルカプトベンズイミダゾールの配合量は、膏体重量に対して通常0.01~5重量%、好ましくは0.05~3重量%、より好ましくは0.1~1重量%の範囲である。2-メルカプトベンズイミダゾールの配合量が0.01重量%未満であると、薬物の安定性が低下し、配合量が5重量%を超える場合には、製剤コストが増加し、好ましくない。
【0015】
本発明の経皮投与製剤におけるポリアクリル酸またはその塩は、架橋剤により架橋体を形成することにより、膏体の粘着力を高める。ポリアクリル酸またはその塩としては、例えばポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸部分中和物等が挙げられ、それらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明では、ポリアクリル酸が好ましい。
【0016】
本発明の経皮投与製剤におけるポリアクリル酸またはその塩の配合量は、膏体重量に対して通常1~20重量%、好ましくは3~15重量%、より好ましくは5~10重量%の範囲である。配合量が1重量%未満では十分な三次元の網目構造が形成されず、ゲルが軟弱なものとなり好ましくない。また、配合量が20重量%を超えると、膏体層が固くなりすぎ粘着力の低下が起こり好ましくない。
【0017】
本発明の経皮投与製剤における架橋剤は、ポリアクリル酸またはその塩の架橋体を形成させ、膏体の保形性を維持する働きがあり、難溶性多価金属塩から選ばれる。架橋剤としては、例えばジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、および合成ヒドロタルサイト等が挙げられ、それらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明では、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上が好ましく、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムがより好ましい。
【0018】
本発明の経皮投与製剤における架橋剤の配合量は、膏体重量に対して通常0.02~5重量%、好ましくは0.05~4重量%、より好ましくは1~4重量%の範囲である。架橋剤の配合量が0.02重量%未満であると、架橋体形成が不十分であり、膏体の保形性が悪化する。一方、架橋剤の配合量が5重量%を超えると架橋体形成が多くなり製剤の粘着性が悪化する。
【0019】
本発明の経皮投与製剤は、通常、可塑剤としてプロピレングリコールを含む。プロピレングリコールは、可塑剤としての作用の他、基剤成分の溶解剤としても作用する。
【0020】
本発明においては、プロピレングリコールを他の可塑剤と組み合わせて配合することができる。他の可塑剤としては、例えばエタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、D-ソルビトール、およびポリエチレングリコール400等を挙げることができ、それらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。エタノール、グリセリン、およびD-ソルビトールから選択される1種または2種以上が好ましく、エタノールおよびグリセリンから選択される1種または2種がより好ましい。可塑剤としては、プロピレングリコール、エタノール、およびグリセリンの組み合わせ、またはプロピレングリコールおよびグリセリンの組み合わせがとりわけ好ましい。
【0021】
本発明の経皮投与製剤におけるプロピレングリコールを含む可塑剤の配合量は、膏体重量に対して通常45~95重量%、好ましくは55~95重量%、より好ましくは65~90重量%の範囲である。可塑剤の配合量が45重量%未満であると、膏体の保形性が不十分となり、粘着物性が悪化する。また可塑剤を95重量%を超えて配合しても、膏体の粘着性および保形性が不十分となり好ましくない。
【0022】
本発明の経皮投与製剤は、薬物の吸収量を増加させるために吸収促進剤を配合してもよい。吸収促進剤としては、例えばパルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、およびセバシン酸ジエチル等の脂肪酸エステル;エタノール;N―メチル-2-ピロリドン;ジメチルスルホキシド;ならびにクロタミトン等を配合することができ、それらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明では、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、およびセバシン酸ジエチルから選択される1種または2種以上の脂肪酸エステルが好ましく、ラウリン酸メチルおよびミリスチン酸イソプロピルから選択される1種または2種の脂肪酸エステルがより好ましく、ラウリン酸メチルがとりわけ好ましい。
【0023】
本発明の経皮投与製剤における吸収促進剤の配合量は、膏体重量に対して通常0.1~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.5~2重量%の範囲である。吸収促進剤の配合量が0.1重量%未満であると所望の吸収量が得られない。また、吸収促進剤の配合量が10重量%を超えると、膏体の物性が悪化し、皮膚刺激性も強くなるため好ましくない。
【0024】
その他、本発明の経皮投与製剤には、通常の外用剤等に一般的に配合される各種成分を配合してもよい。そのような成分としては、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性剤;パラオキシ安息香酸エステル等の防腐剤;ジブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤;L-メントール等の清涼化剤;軽質無水ケイ酸等のケイ素化合物;酸化亜鉛等の無機充填剤;ハッカ油等の着香剤;ならびに黄色三二酸化鉄等の着色剤等を挙げることができ、これらを適宜適量配合することができる。
【0025】
本発明の経皮投与製剤では、膏体は乳酸エステルを含まないことが好ましい。乳酸エステルとしては、例えば乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸ペンチル、乳酸ヘキシル、乳酸へプチル、乳酸オクチル、乳酸ノニル、乳酸デシル、乳酸ウンデシル、乳酸ラウリル、乳酸トリデシル、乳酸ミリスチル、乳酸ペンタデシル、乳酸セチル、乳酸ヘプタデシル、および乳酸オクタデシル等が挙げられる。
【0026】
本発明の経皮投与製剤では、膏体は油性粘着剤を含まないことが好ましい。そのような油性粘着剤としては、例えば(メタ)アクリレート共重合体(例えばDuro-Tak 87-4098等のアクリレート共重合体等)で構成される粘着剤、ゴム系粘着剤(例えばスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体等)、およびシリコン系粘着剤(例えばダウ・コーニング社製のBIO-PSA 7-4302、BIO-PSA 7-4101、BIO-PSA 7-4102、およびBIO-PSA 7-4202等)を挙げることができる。
【0027】
本発明の経皮投与製剤は、テストステロンの濃度低下による疾患または症状の予防または治療に有用である。そのような疾患または症状としては、例えば性機能低下、男性更年期障害、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、動脈硬化、骨粗鬆症、筋力低下、認知機能低下、記憶障害、および抑うつから選択される1種または2種以上の疾患または症状等が挙げられる。本発明の経皮投与製剤は、好ましくは性機能低下または男性更年期障害の予防または治療に用いられる。
【0028】
本発明において、「予防」とは疾患または症状を発症していない個体に対して本発明の経皮投与製剤を投与する行為を意味している。また、「治療」とは既に疾患または症状を発症した個体に対して本発明の経皮投与製剤を投与する行為を意味している。従って、既に疾患または症状を発症した個体に対し、症状等の悪化防止、発作防止、または再発防止のために投与する行為は「治療」の一態様である。
【0029】
本発明の経皮投与製剤は通常、前記疾患または症状を患うか、またはその恐れがある患者、例えばヒトまたは動物、好ましくはヒトに投与される。投与回数は、疾患または症状の重篤度、患者の年齢、体重、性別、および経皮投与製剤中のテストステロンの配合量等の条件によって適宜変化してよく、ヒトに投与する場合、本発明の経皮投与製剤は通常1日1回または複数回、例えば1日1~3回、1~2回、もしくは1回、または数日毎、例えば2~3日に1回交換される。
【0030】
本発明の経皮投与製剤では、膏体は支持体と剥離ライナーの間に展延または塗布される。本発明の経皮投与製剤において使用される支持体は、貼付後の製剤の剥離を抑制する点から、身体の動きに追従する柔軟性に富む薄いものが望ましい。例えば各種の不織布、織布、フィルム、およびシート等であれば特に制限はなく、具体的にはレーヨン、ポリエステル、ポリオレフィン、およびウレタン等の繊維を織布または不織布としたもの、あるいはポリマーフィルム、発泡体シート、およびこれらの積層フィルム等が使用される。
【0031】
膏体の表面を被覆する剥離ライナーとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、およびこれらをシリコンで離型処理したもの等が挙げられる。
【0032】
また、本発明の経皮投与製剤は、粘着力が高いため、カバーシート等の接着補助手段は基本的に必要としないが、長期間に亘りヒトに適用する際には、皮膚への良好な接着性を維持するために、補助的にカバーシートを使用してもよい。カバーシートは製剤の支持体側に設けられ、その材質としては不織布、布、ネット、ニット、ガーゼ、およびフィルム等が挙げられる。それらの中でも固着部位での蒸れやかぶれを起こさないよう、ある程度通気性のあるものが好ましい。具体的なカバーシートの素材としては、ポリエステル(繊維)、ポリエチレン(繊維)、ポリプロピレン(繊維)、レーヨン、キュプラ、および麻等が挙げられる。また、カバーシートの粘着層に用いられる粘着剤としては、アクリル酸アルキルエステル等のアクリル系粘着剤、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体等のゴム系粘着剤、およびシリコン系粘着剤等が例示できる。
【0033】
本発明のテストステロン含有経皮投与製剤を調製するには、例えば以下の方法によって製造することができる。まず、ポリアクリル酸またはその塩をプロピレングリコール等の可塑剤に加熱溶解する。冷却後、得られた液と、テストステロンとラウリン酸メチル等の吸収促進剤および2-メルカプトベンズイミダゾールを溶解し、架橋剤を分散させた可塑剤を撹拌混合し、膏体溶液(以下、非含水性膏体と称す。)を得る。この非含水性膏体を支持体上に塗布した後、さらに剥離ライナーを被覆し、所望の大きさに裁断して本発明の経皮投与製剤を得る。本発明の経皮投与製剤の場合、膏体の塗布量は50~1000g/mである。
【0034】
以下に、本発明の態様を記載する。なお、以下の各態様を任意に選択して組み合わせた態様および以下の各態様と本明細書に記載のいずれかの態様等を任意に組み合わせた態様も本発明に包含される。
【0035】
1.経皮投与製剤
[態様1]
膏体中に、テストステロンおよび2-メルカプトベンズイミダゾールを含む本発明の経皮投与製剤。
[態様2]
膏体重量に対してテストステロンの配合量が0.01~10重量%であり、かつ、2-メルカプトベンズイミダゾールの配合量が0.01~5重量%である、態様1に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様3]
膏体重量に対してテストステロンの配合量が0.2~4重量%であり、かつ、2-メルカプトベンズイミダゾールの配合量が0.05~3重量%である、態様1に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様4]
膏体重量に対してテストステロンの配合量が0.5~2重量%であり、かつ、2-メルカプトベンズイミダゾールの配合量が0.1~1重量%である、態様1に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様5]
膏体中にポリアクリル酸またはその塩、架橋剤、およびプロピレングリコールを含む可塑剤をさらに含む、態様1~4のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様6]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸部分中和物から選択される1種または2種以上である、態様5に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様7]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸である、態様5に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様8]
架橋剤がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上である、態様5~7のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様9]
架橋剤がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上である、態様5~7のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様10]
架橋剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムである、態様5~7のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様11]
可塑剤がエタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、D―ソルビトール、およびポリエチレングリコール400から選択される1種または2種以上をさらに含む、態様5~10のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様12]
可塑剤がエタノール、グリセリン、およびD-ソルビトールから選択される1種または2種以上をさらに含む、態様5~10のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様13]
可塑剤がエタノールおよびグリセリンから選択される1種または2種をさらに含む、態様5~10のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様14]
可塑剤がプロピレングリコール、エタノール、およびグリセリンの組み合わせである、態様5~10のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様15]
可塑剤がプロピレングリコールおよびグリセリンの組み合わせである、態様5~10のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様16]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸部分中和物から選択される1種または2種以上であり;
架橋剤がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上であり;かつ、
可塑剤がエタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、D―ソルビトール、およびポリエチレングリコール400から選択される1種または2種以上をさらに含む、態様5に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様17]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸部分中和物から選択される1種または2種以上であり;
架橋剤がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上であり;かつ、
可塑剤がエタノール、グリセリン、およびD-ソルビトールから選択される1種または2種以上をさらに含む、態様5に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様18]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸であり;
架橋剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムであり;かつ、
可塑剤がプロピレングリコール、エタノール、およびグリセリンの組み合わせである、態様5に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様19]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸であり;
架橋剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムであり;かつ、
可塑剤がプロピレングリコールおよびグリセリンの組み合わせである、態様5に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様20]
膏体重量に対してポリアクリル酸またはその塩の配合量が1~20重量%であり、架橋剤の配合量が0.02~5重量%であり、かつ、可塑剤の配合量が45~95重量%である、態様5~19のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様21]
膏体重量に対してポリアクリル酸またはその塩の配合量が3~15重量%であり、架橋剤の配合量が0.05~4重量%であり、かつ、可塑剤の配合量が55~95重量%である、態様5~19のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様22]
膏体重量に対してポリアクリル酸またはその塩の配合量が5~10重量%であり、架橋剤の配合量が1~4重量%であり、かつ、可塑剤の配合量が65~90重量%である、態様5~19のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様23]
膏体中に吸収促進剤をさらに含む、態様1~22のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様24]
吸収促進剤がパルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、およびセバシン酸ジエチルから選択される脂肪酸エステル;エタノール;N―メチル-2-ピロリドン;ジメチルスルホキシド;ならびにクロタミトンから選択される1種または2種以上である、態様23に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様25]
吸収促進剤がパルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、およびセバシン酸ジエチルから選択される1種または2種以上の脂肪酸エステルである、態様23に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様26]
吸収促進剤がラウリン酸メチルおよびミリスチン酸イソプロピルから選択される1種または2種の脂肪酸エステルである、態様23に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様27]
吸収促進剤がラウリン酸メチルである、態様23に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様28]
膏体重量に対して吸収促進剤の配合量が0.1~10重量%である、態様23~27のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様29]
膏体重量に対して吸収促進剤の配合量が0.1~5重量%である、態様23~27のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様30]
膏体重量に対して吸収促進剤の配合量が0.5~2重量%である、態様23~27のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様31]
膏体が乳酸エステルを含まない、態様1~30のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様32]
膏体が(メタ)アクリレート共重合体を含まない、態様1~31のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様33]
膏体がスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体を含まない、態様1~32のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様34]
膏体が油性粘着剤を含まない、態様1~33のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様35]
膏体中に、テストステロン、2-メルカプトベンズイミダゾール、ポリアクリル酸またはその塩、架橋剤、プロピレングリコールを含む可塑剤、および吸収促進剤を含む、態様1~34のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様36]
膏体がテストステロン、2-メルカプトベンズイミダゾール、ポリアクリル酸またはその塩、架橋剤、プロピレングリコールを含む可塑剤、および吸収促進剤からなる、態様35に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様37]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸であり;
架橋剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムであり;
可塑剤がプロピレングリコール、エタノール、およびグリセリンの組み合わせ、またはプロピレングリコールおよびグリセリンの組み合わせであり;かつ、
吸収促進剤がラウリン酸メチルおよびミリスチン酸イソプロピルから選択される1種または2種の脂肪酸エステルである、態様35または36に記載の経皮投与製剤。
[態様38]
吸収促進剤がラウリン酸メチルである、態様37に記載の経皮投与製剤。
[態様39]
膏体重量に対してテストステロンの配合量が0.01~10重量%であり、2-メルカプトベンズイミダゾールの配合量が0.01~5重量%であり、ポリアクリル酸またはその塩の配合量が1~20重量%であり、架橋剤の配合量が0.02~5重量%であり、可塑剤の配合量が45~95重量%であり、かつ、吸収促進剤の配合量が0.1~10重量%である、態様35~38のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様40]
膏体重量に対してテストステロンの配合量が0.2~4重量%であり、2-メルカプトベンズイミダゾールの配合量が0.05~3重量%であり、ポリアクリル酸またはその塩の配合量が3~15重量%であり、架橋剤の配合量が0.05~4重量%であり、可塑剤の配合量が55~95重量%であり、かつ、吸収促進剤の配合量が0.1~5重量%である、態様35~38のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様41]
膏体重量に対してテストステロンの配合量が0.5~2重量%であり、2-メルカプトベンズイミダゾールの配合量が0.1~1重量%であり、ポリアクリル酸またはその塩の配合量が5~10重量%であり、架橋剤の配合量が1~4重量%であり、可塑剤の配合量が65~90重量%であり、かつ、吸収促進剤の配合量が0.5~2重量%である、態様35~38のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
【0036】
2.経皮投与製剤の用途
[態様42]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状の予防または治療のための、態様1~41のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様43]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状が、性機能低下、男性更年期障害、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、動脈硬化、骨粗鬆症、筋力低下、認知機能低下、記憶障害、および抑うつから選択される1種または2種以上の疾患または症状である、態様42に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様44]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状が、性機能低下または男性更年期障害である、態様42に記載の本発明の経皮投与製剤。
[態様45]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状の予防または治療のための医薬の製造における、態様1~41のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤の使用。
[態様46]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状が、性機能低下、男性更年期障害、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、動脈硬化、骨粗鬆症、筋力低下、認知機能低下、記憶障害、および抑うつから選択される1種または2種以上の疾患または症状である、態様45に記載の使用。
[態様47]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状が、性機能低下または男性更年期障害である、態様45に記載の使用。
[態様48]
態様1~41のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤を患者に投与することを含む、テストステロンの濃度低下による疾患または症状を予防または治療する方法。
[態様49]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状が、性機能低下、男性更年期障害、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、動脈硬化、骨粗鬆症、筋力低下、認知機能低下、記憶障害、および抑うつから選択される1種または2種以上の疾患または症状である、態様48に記載の方法。
[態様50]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状が、性機能低下または男性更年期障害である、態様48に記載の方法。
[態様51]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状の予防または治療における、態様1~41のいずれか1つに記載の本発明の経皮投与製剤の使用。
[態様52]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状が、性機能低下、男性更年期障害、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、動脈硬化、骨粗鬆症、筋力低下、認知機能低下、記憶障害、および抑うつから選択される1種または2種以上の疾患または症状である、態様51に記載の使用。
[態様53]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状が、性機能低下または男性更年期障害である、態様51に記載の使用。
【0037】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の数値は特に断らない限り「重量%」である。
【実施例0038】
実施例1
グリセリンおよび1/3量のプロピレングリコールを混和したのち、ポリアクリル酸を加えて加熱溶解した。冷却後、2/3量のプロピレングリコールにテストステロン、ラウリン酸メチル、および2-メルカプトベンズイミダゾールを溶解し、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを分散させた液を加えて、撹拌混合し、非含水性膏体を得た。この非含水性膏体を支持体上に500g/mの塗布量にて均一に塗布した後、さらに剥離ライナーを被覆し、架橋後、所望の大きさに裁断して実施例1の経皮投与製剤を得た。各成分の配合量を表1に示す。
【0039】
比較例1~9
実施例1の2-メルカプトベンズイミダゾールの代わりに、無添加(比較例1)、ジブチルヒドロキシトルエン(比較例2)、アスコルビン酸(比較例3)、トコフェロール(比較例4)、ピロ亜硫酸ナトリウム(比較例5)、ベンゾトリアゾール(比較例6)、エデト酸ナトリウム水和物(比較例7)、酢酸トコフェロール(比較例8)、およびイソアスコルビン酸(比較例9)をそれぞれ使用した以外は、表1および表2の配合量で実施例1と同様に作製した。
【0040】
実施例2~9
2-メルカプトベンズイミダゾールとグリセリンの配合量を変更した以外は、表3および表4の配合量で実施例1と同様に作製した。
【0041】
実施例10
グリセリンおよび1/3量のプロピレングリコールを混和したのち、ポリアクリル酸を加えて加熱溶解した。冷却後、2/3量のプロピレングリコールとエタノールの混液にテストステロン、ラウリン酸メチル、および2-メルカプトベンズイミダゾールを溶解し、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを分散させた液を加えて、撹拌混合し、非含水性膏体を得た。この非含水性膏体を支持体上に500g/mの塗布量にて均一に塗布した後、さらに剥離ライナーを被覆し、架橋後、所望の大きさに裁断して実施例10の経皮投与製剤を得た。各成分の配合量を表5に示す。
【0042】
実施例11~13
テストステロン、エタノール、およびグリセリンの配合量を変更した以外は、表5の配合量で実施例10と同様に作製した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
試験例1 安定性試験(製剤の着色の観察)
実施例1~9および比較例1~9で得られた製剤をアルミ袋などの包装材に入れ、60℃、2週間(2W)の条件下で保存した。実施例10~13で得られた製剤については、60℃、3週間(3W)の条件下で保存した。保存後の製剤を取り出し、製剤の着色状態を目視で観察した。その結果を表1~5に示す。
【0049】
試験例2 安定性試験(分解物量の測定)
実施例1~9および比較例1~9で得られた製剤の保存後(60℃、2週間)の製剤中の分解物量をHPLC法で測定した。実施例10~13で得られた製剤についても、保存後(60℃、3週間)の製剤中の分解物量を同様に測定した。
【0050】
HPLCの測定条件
・カラム:C8カラム(4.6×150mm、3μm)
・移動相:(A)水および(B)アセトニトリルを以下の表6のグラジエント条件で制御した。
【表6】
【0051】
保存後の製剤中のテストステロン由来の分解物の総量および代表的な分解物である6-ヒドロキシテストステロンの量を求めた。その結果を表1~5に示す。
【0052】
2-メルカプトベンズイミダゾール無添加の比較例1や2-メルカプトベンズイミダゾールの代わりに抗酸化剤を添加した比較例2~9と比較して、2-メルカプトベンズイミダゾールを含有する実施例1は分解物の生成を抑制した。比較例3および9では、着色が観察されたが、実施例1では着色も観察されなかった。また、実施例1~13の結果からわかるように、2-メルカプトベンズイミダゾールを0.05重量%以上配合した製剤では、分解物をより抑制することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明により、テストステロンの高い安定性を示す経皮投与製剤を提供することができる。本発明の経皮投与製剤は、例えばテストステロンの濃度低下による疾患または症状の予防または治療等に極めて有用である。