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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011415
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】気体燃料用液体トラップ装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20240118BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20240118BHJP
【FI】
F02M21/02 T
F02M21/02 L
B01D46/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113371
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】畠山 拓史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇
【テーマコード(参考)】
4D058
【Fターム(参考)】
4D058JA02
4D058QA01
4D058QA07
4D058QA13
4D058SA06
4D058SA15
(57)【要約】
【課題】気体燃料がフィルタエレメントに液体のまま流入したり、到着する前に再液化しても、それをフィルタエレメントの手前で捕捉してフィルタエレメントに到達させないようにする。
【解決手段】
気体入口ポート8に流入した気体をフィルタエレメント3の内側空間3aに誘導する燃料流入筒8bが、天井壁5の下面から伸びてフィルタエレメントの内側空間に開口し、燃料流入筒から気体燃料と共に流入する液化した燃料を貯留する液化燃料貯留筒部4が、入口開口部4a1を燃料流入筒の開口端8b2に対向させて、フィルタエレメントと底壁との間に設けられ、フィルタエレメントの内周面3bと燃料流入筒の外周面8b1との間には、燃料流入筒の開口端から流出した気体燃料と液化燃料貯留筒部内で気化した気体燃料とを、フィルタエレメントの内周面に共に誘導し得る空隙3cが形成される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井壁(5)、これに対向する底壁(6)、並びにこれら天井壁(5)及び底壁(6)間を連結する周壁(7)を有して前記天井壁(5)に気体入口ポート(8)及び気体出口ポート(9)を設けたトラップハウジング(2)と、前記天井壁(5)及び前記底壁(6)間に保持されて内部が前記気体入口ポート(8)に連通すると共に、外周面が前記トラップハウジング(2)の内部空間(2a)を介して気体出口ポート(9)に連通するフィルタエレメント(3)とを備える気体燃料用液体トラップ装置において、
前記気体入口ポート(8)に流入した気体を前記フィルタエレメント(3)の内側空間(3a)に誘導する燃料流入筒(8b)が、前記天井壁(5)の下面(5e)から伸びて前記フィルタエレメント(3)の内側空間(3a)に開口し、
前記燃料流入筒(8b)から気体燃料とともに流入する液化した燃料を貯留する液化燃料貯留筒部(4)が、それの入口開口部(4a1)を前記燃料流入筒(8b)の開口端(8b2)に対向させ且つ前記フィルタエレメント(3)の下端に連なるようにして、前記フィルタエレメント(3)と前記底壁(6)との間に設けられ、
前記フィルタエレメント(3)の内周面(3b)と、前記燃料流入筒(8b)の外周面(8b1)との間には、前記燃料流入筒(8b)の開口端(8b2)から流出した気体燃料と、前記液化燃料貯留筒部(4)内で気化した気体燃料とを、前記フィルタエレメント(3)の内周面(3b)に共に誘導し得る空隙(3c)が形成されることを特徴とする気体燃料用液体トラップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気体燃料用液体トラップ装置であって、前記フィルタエレメント(3)の内周面(3b)に、網目状又は多孔板状のセパレータ(10)を密着させたことを特徴とする気体燃料用液体トラップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射弁に気体燃料を供給する燃料配管に介装される気体燃料用の液体トラップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮天然ガス(CNG)や液化石油ガス(LPG)等の気体燃料を燃料とするエンジンを備える自動車は、圧縮または液化した気体燃料を貯蔵する燃料タンクを搭載し、エンジンの作動時には、その燃料タンクから導出した高圧の気体燃料を所定圧力に減圧してエンジンに供給する。ところで、気体燃料にはコンプレッサ内の潤滑オイル等が多少とも混入しているので、燃料配管の途中に、気体燃料中の混入オイルを捕捉するフィルタエレメントを設ける必要があり、このようなフィルタエレメントを備えた気体燃料用液体トラップ装置は、例えば下記特許文献1に開示されるように既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-114996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、気体燃料の中でも、液化石油ガス(LPG)のように液化された燃料をコンプレッサで加熱して気化させるものでは、環境温度が0℃を下回った場合に気体燃料がフィルタエレメントの入口側空間に液体のまま流入したり、一旦気化した燃料が環境温度の影響でフィルタエレメントの入口側空間に到着する前に再液化する現象が生じたりする。そしてそのような液状の燃料が、そのままフィルタエレメントの入口側空間に到着してしまうと、それがフィルタエレメントの入口側空間に溜め込まれてフィルタエレメントの入口側空間の容積を大きく減少させたり、或いは、液状の燃料に溶け込んだオイルが、該液状燃料とともにフィルタエレメントを通り抜けて燃料噴射装置に侵入し、燃料噴射装置に誤作動を生じさせたりする。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、気体燃料がフィルタエレメントの入口側空間に液体のまま流入したり、気化した燃料がフィルタエレメントの入口側空間に到着する前に再液化してしまっても、その燃料をフィルタエレメントの入口側空間で捕捉してフィルタエレメント自体に到達させないようにすると共に、捕捉された液体状態の燃料が再気化した場合には、それを燃料流入筒の開口端から流出した気体燃料と共にフィルタエレメントに確実に導びくことを可能とした気体燃料用液体トラップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、天井壁、これに対向する底壁、並びにこれら天井壁及び底壁間を連結する周壁を有して前記天井壁に気体入口ポート及び気体出口ポートを設けたトラップハウジングと、前記天井壁及び前記底壁間に保持されて内部が前記気体入口ポートに連通すると共に、外周面が前記トラップハウジングの内部空間を介して気体出口ポートに連通するフィルタエレメントとを備える気体燃料用液体トラップ装置において、前記気体入口ポートに流入した気体を前記フィルタエレメントの内側空間に誘導する燃料流入筒が、前記天井壁の下面から伸びて前記フィルタエレメントの内側空間に開口し、前記燃料流入筒から気体燃料とともに流入する液化した燃料を貯留する液化燃料貯留筒部が、それの入口開口部を前記燃料流入筒の開口端に対向させ且つ前記フィルタエレメントの下端に連なるようにして、前記フィルタエレメントと前記底壁との間に設けられ、前記フィルタエレメントの内周面と、前記燃料流入筒の外周面との間には、前記燃料流入筒の開口端から流出した気体燃料と、前記液化燃料貯留筒部内で気化した気体燃料とを、前記フィルタエレメントの内周面に共に誘導し得る空隙が形成されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記フィルタエレメントの内周面に、網目状又は多孔板状のセパレータを密着させたことを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば、トラップハウジングの天井壁に気体入口ポートと気体出口ポートとが設けられ、その気体入口ポートに流入した気体燃料をフィルタエレメントの内側空間(入口側空間)に誘導する燃料流入筒が、天井壁の下面から伸びてフィルタエレメントの内側空間に開口し、燃料流入筒から気体燃料とともに流入する液化した燃料を貯留する液化燃料貯留筒部が、それの入口開口部を前記燃料流入筒の開口端に対向させ且つフィルタエレメントの下端に連なるようにして、フィルタエレメントとトラップハウジングの底壁との間に設けられるので、気体燃料が液体状態の燃料を含んだままフィルタエレメントの内側空間に到達しても、該液体状態の燃料を、それが持つ慣性力により前記入口開口部から液化燃料貯留筒部内に送り込み、該液化燃料貯留筒部内に液体状態のまま貯留することができる。そして、その液化燃料貯留筒部は、入口開口部を有していて内部にフィルタエレメントの内側空間とは別個の空間を画成するので、液体状態の燃料が液化燃料貯留筒部内に貯留されていても、フィルタエレメントの内側空間の容積が減少してフィルタエレメントの処理能力が低下したり、液体状態の燃料が、溶け込んだオイルと共にフィルタエレメントを浸潤して燃料噴射装置に侵入し、燃料噴射装置に誤作動を生じさせたりすることを防止することができる。
【0009】
また、液化燃料貯留筒部内で液体状態の燃料が気化し、その気化した燃料が液化燃料貯留筒部の入口開口部からフィルタエレメントの内側空間に出ようとした場合には、その燃料が燃料流入筒の開口端から流出する気体燃料の流出圧の影響で、フィルタエレメントの内側空間に出られなくなる虞があるが、本発明の第1の特徴によれば、フィルタエレメントの内周面と燃料流入筒の外周面との間に空隙が形成されており、この空隙は、燃料流入筒の開口端から流出する気体燃料の流出圧を低下させて、気体燃料の流れの方向をフィルタエレメントの内周面の方向に変化させるばかりでなく、その気体燃料の流れに、液化燃料貯留筒部の入口開口部からフィルタエレメントの内側空間に出ようとする前記燃料の流れを乗せて、燃料流入筒の開口端から流出した気体燃料と液化燃料貯留筒部内で気化した気体燃料とを、前記フィルタエレメントの内周面に共に誘導することができるので、液化燃料貯留筒部内で気化した燃料を、フィルタエレメントの内周面に向けて確実に送出することができる。
【0010】
また本発明の第2の特徴によれば、フィルタエレメントの内周面に、網目状又は多孔板状のセパレータを密着させたので、液化燃料貯留筒部と天井壁との間に挟まれて支持されるフィルタエレメントが該セパレータによって補強され、燃料の通過を妨げずに、変形によるフィルタエレメントのズレを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係る気体燃料用液体トラップ装置の平面図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3図1の3-3線断面図である。
図4図1の気体燃料用液体トラップ装置の部分破断斜視図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る気体燃料用液体トラップ装置の、図2と同じ部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
先ず、本発明の第1の実施の形態について、図1図4を参照しながら説明する。図1図4において、気体燃料用液体トラップ装置1は、トラップハウジング2と、このトラップハウジング2内に配設される円筒状のフィルタエレメント3と、そのフィルタエレメント3の下端に連なる液化燃料貯留筒部4とを主たる構成要素とする。トラップハウジング2は、天井壁5、これに対向する底壁6、並びにこれら天井壁5及び底壁6間を連結する周壁7よりなっており、液化燃料貯留筒部4はフィルタエレメント3とトラップハウジング2の底壁6との間に設けられる。図示例では、天井壁5及び周壁7が合成樹脂を素材として一体成形され、その内部にフィルタエレメント3と液化燃料貯留筒部4とを組み込んだ後、周壁7の下端面に、同じく合成樹脂製の底壁6が取り外し可能に取り付けられる。
【0013】
図1に示すようにトラップハウジング2の天井壁5は、それの平面視で、直線状の3辺5a,5b,5cと円弧状の1辺5dとから成っており、該天井壁5の円弧状の1辺5dに向かい合う辺5bの側面から、気体入口ポート8及び気体出口ポート9の配管接続部8a,9aが夫々外方に突出している。気体入口ポート8の配管接続部8aには、燃料タンクに連なる図示せぬ燃料配管が接続され、燃料タンクから該燃料配管を介して気体燃料が気体入口ポート8に送給される。また気体出口ポート9の配管接続部9aには、内燃機関の燃料噴射弁に連なる図示せぬ燃料配管が接続され、トラップハウジング2内でオイルや液状燃料が取り除かれた後の気体燃料が該燃料配管から燃料噴射弁に送給される。
【0014】
図2に示すように、フィルタエレメント3は、前記円弧状の1辺5dの近傍で天井壁5の下方に配置されており、天井壁5の下面5eには、フィルタエレメント3の横ずれを防止する円環状の突起5fが、天井壁5の下面5eに当接させたフィルタエレメント3の上面を外周側から囲むように形成されている。なお、この突起5fはフィルタエレメント3の上面を内周面側から囲むものでもよく、また複数個の突起が円弧状に並ぶものであっても良い。
【0015】
前記気体入口ポート8は、天井壁5内をフィルタエレメント3の上方まで延びていて、フィルタエレメント3の上方で下方に折れ曲がり、その折れ曲がった部分が燃料流入筒8bとなって天井壁5の下面5eからフィルタエレメント3の内側空間3aに突出し、その先端がフィルタエレメント3の内側空間3aに開口している。フィルタエレメント3の内周面3bと燃料流入筒8bの外周面8b1との間には空隙3cが形成されており、この空隙3cは、燃料流入筒8bの開口端8b2から流出する気体燃料の流出圧を低下させて、気体燃料の流れの方向をフィルタエレメント3の内周面3bの方向に変化させる。
【0016】
フィルタエレメント3の下面には、燃料流入筒8bから気体燃料とともに流入する液化した燃料を貯留する液化燃料貯留筒部4が配置されている。液化燃料貯留筒部4は、液化した燃料を受け入れる入口開口部4a1を有してフィルタエレメントの下端に連なる円形の上壁部4aと、上壁部4aの外周端から下方に折れ曲がって筒状に延びる周壁部4bと、周壁部4bの下端に当接して該周壁部4bの筒状の端部4b1を閉じる円形の底壁部4cとで形成され、その内部にフィルタエレメント3の内側空間3aとは別個の空間を画成している。前記上壁部4aは、その外周から径方向内方に一定長さ入り込んだ部分から筒状に立ち上がる縦壁部4a2を有しており、その縦壁部4a2の外周にフィルタエレメント3の下端部内周面が当接することで、フィルタエレメント3が液化燃料貯留筒部4の上壁部4aに保持される。また前記縦壁部4a2の上端は、中央に向かって陥没するようにすり鉢状に折れ曲がっており、その中央部に、前記入口開口部4a1が前記燃料流入筒8bの開口端8b2に対向するようにして形成される。
【0017】
燃料タンクに連なる燃料配管から気体入口ポート8に気体燃料が送給されると、送給された気体燃料は燃料流入筒8bの開口端8b2からフィルタエレメント3の内側空間3aに流出する。このとき、気体燃料が液体状態の燃料を含んだままフィルタエレメント3の内側空間3aに到達しても、該液体状態の燃料は、それが持つ慣性力により、燃料流入筒8bの開口端8b2に対向する位置に配置された液化燃料貯留筒部4の入口開口部4a1から液化燃料貯留筒部4内に送り込まれ、液化燃料貯留筒部4内に貯留される。このとき、液化燃料貯留筒部4の入口開口部4a1の周囲がすり鉢状に内向きに傾斜しているので、液体状態の燃料は、該入口開口部4a1から液化燃料貯留筒部4内に容易に進入できる。一方、燃料流入筒8bの開口端8b2からフィルタエレメント3の内側空間3aに流出した気体燃料は、前述したように、フィルタエレメント3の内周面3bと燃料流入筒8bの外周面8b1との間に形成された空隙3cの働きで、流出圧を低下させつつ流れの方向を変化させてフィルタエレメント3の内周面3bに向かうのであるが、このとき、液化燃料貯留筒部4内で気化して入口開口部4a1からフィルタエレメント3の内側空間3aに出ようとする気体燃料も、この燃料流入筒8bの開口端8b2から流出した気体燃料の流れに乗って該気体燃料と共にフィルタエレメント3の内周面3bに向けて誘導される。
【0018】
気体燃料に含まれるオイルは、フィルタエレメント3を通過する間に該フィルタエレメント3に捕捉され、フィルタエレメント3の外周部で大粒の液滴となって自重で下方に落下する。落下したオイルは、トラップハウジング2の周壁7と液化燃料貯留筒部4の底壁部4cとの間で、トラップハウジング2の底壁6上に形成された貯留部6aに貯留される。液化燃料貯留筒部4の底壁部4cには、周壁部4bの筒状の端部4b1に当接する部分を除いて肉抜き部4c1が形成されており、この肉抜き部4c1によって、トラップハウジング2内における捕捉オイルの貯留部6aの容積の増加と、液化燃料貯留筒部4の重量の減少とが図られる。
【0019】
トラップハウジング2内へのフィルタエレメント3および液化燃料貯留筒部4の取り付けに当たっては、トラップハウジング2の底壁6を取り外した状態で、トラップハウジング2の下面からフィルタエレメント3をトラップハウジング2内に挿入し、その先端を天井壁5下面の円環状の突起5fの内側に密接させる。次に液化燃料貯留筒部4を、それの縦壁部4a2をフィルタエレメント3の下端部内周面に当接させながらトラップハウジング2内に挿入する。液化燃料貯留筒部4の底壁部4cの下面には係止孔4c2が形成されており、その係止孔4c2に、トラップハウジング2の底壁6の位置決め突起6bを嵌入させて、該底壁6をトラップハウジング2の下面に取り付けることで、トラップハウジング2内にフィルタエレメント3と液化燃料貯留筒部4とを確実に固定することができる。またそのようにすることでメンテナンス作業も容易となる。
【0020】
気体出口ポート9は、図1および図3に示すように気体入口ポート8の一側及び上側にあって、気体入口ポート8と平行に天井壁5内をトラップハウジング2の内部空間2aの上方まで延びてから下方に折れ曲がり、その折れ曲がった部分が燃料排出筒9bとなって天井壁5の下面5eからトラップハウジング2の内部空間2aに突出している。燃料排出筒9bはフィルタエレメント3から離間した位置に配置されているので、フィルタエレメント3に捕捉されずにフィルタエレメント3を通過してしまったオイルがあっても、そのオイルが気体燃料から分離して前記貯留部6aに落下し易い。しかも燃料排出筒9bは、天井壁5に形成された凹部5g内に配置されていて、上記凹部5gの燃料排出筒を囲繞する部分は、気体が淀む淀み部5hとされている。そのため、フィルタエレメント3を通過してしまったオイルがトラップハウジング2の周壁7に付着し、この付着したオイルが気体燃料の流れに乗って上方に上げられることがあっても、該付着オイルの燃料排出筒9bへの到達を阻止できて、気体出口ポート9への流出を防ぐことができる。
【0021】
次にこの第1の実施の形態の作用効果について説明する。
【0022】
本発明の第1の実施の形態では、トラップハウジング2の天井壁5に気体入口ポート8と気体出口ポート9とが設けられ、その気体入口ポート8に流入した気体燃料を、フィルタエレメント3の入口側空間である内側空間3aに誘導する燃料流入筒8bが、天井壁5の下面5eから伸びてフィルタエレメント3の内側空間3aに開口し、燃料流入筒8bから気体燃料とともに流入する液化した燃料を貯留する液化燃料貯留筒部4が、それの入口開口部4a1を燃料流入筒8bの開口端8b2に対向させ且つフィルタエレメント3の下端に連なるようにして、フィルタエレメント3とトラップハウジング2の底壁6との間に設けられるので、気体燃料が液体状態の燃料を含んだままフィルタエレメント3の内側空間3aに到達しても、該液体状態の燃料を、それが持つ慣性力により前記入口開口部4a1から液化燃料貯留筒部4内に送り込み、該液化燃料貯留筒部4内に液体状態のまま貯留することができる。そして、その液化燃料貯留筒部4は入口開口部4a1を有していて、それにより内部にフィルタエレメント3の内側空間3aとは別個の空間を画成するので、液体状態の燃料が液化燃料貯留筒部4内に貯留されていても、フィルタエレメント3の内側空間3aの容積が減少してフィルタエレメント3の処理能力が低下したり、液体状態の燃料が、溶け込んだオイルと共にフィルタエレメント3を浸潤して燃料噴射装置に侵入し、燃料噴射装置に誤作動を生じさせたりすることを防止することができる。
【0023】
また、液化燃料貯留筒部4内で液体状態の燃料が気化し、その気化した燃料が液化燃料貯留筒部4の入口開口部4a1からフィルタエレメント3の内側空間3aに出ようとした場合でも、フィルタエレメント3の内周面3bと燃料流入筒8bの外周面8b1との間に形成された空隙3cが、燃料流入筒8bの開口端8b2から流出する気体燃料の流出圧を低下させて、気体燃料の流れの方向をフィルタエレメント3の内周面3bの方向に変化させ、その気体燃料の流れに前記液化燃料貯留筒部4内で気化した燃料の流れを乗せて、燃料流入筒8bの開口端8b2から流出した気体燃料と、前記気化した気体燃料とを前記フィルタエレメント3の内周面3bに共に誘導するので、液化燃料貯留筒部4内で気化した燃料をフィルタエレメント3の内周面3bに向けて確実に送出することができる。
【0024】
また、天井壁5の下面5eには、フィルタエレメント3の横ずれを防止する円環状の突起5fが、天井壁5の下面5eに当接させたフィルタエレメント3の上面を外周側から囲むように形成され、フィルタエレメント3の下端部内周面には液化燃料貯留筒部4の縦壁部4a2が当接し、更に液化燃料貯留筒部4の底壁部4cには、トラップハウジング2の底壁6に形成された位置決め突起6bが嵌入する係止孔4c2が形成されているので、トラップハウジング2内にフィルタエレメント3と液化燃料貯留筒部4とを確実に固定することができるばかりでなく、それらの取付作業やメンテナンス作業も容易である。
【0025】
また、液化燃料貯留筒部4の入口開口部4a1の周囲がすり鉢状に内向きに傾斜しているので、気体燃料が液体状態の燃料を含んだままフィルタエレメント3の内側空間3aに到達しても、その液体状態の燃料を、該入口開口部4a1から液化燃料貯留筒部4内に容易に進入させることができる。
【0026】
また、液化燃料貯留筒部4の底壁部4cには、周壁部4bの筒状の端部4b1に当接する部分を除いて肉抜き部4c1が形成されているので、この肉抜き部4c1によって、トラップハウジング2内における捕捉オイルの貯留部6aの容積の増加と、液化燃料貯留筒部4の重量の減少とを図ることができる。
【0027】
また更に、燃料排出筒9bはフィルタエレメント3から離間した位置に配置されているので、フィルタエレメント3に捕捉されずにフィルタエレメント3を通過してしまったオイルがあっても、そのオイルが気体燃料から分離して前記貯留部6aに落下し易い。しかも、フィルタエレメント3を通過してトラップハウジング2の周壁7に付着したオイルが、気体燃料の流れに乗って上方に上げられることがあっても、燃料排出筒9bが天井壁5に形成された凹部5g内に配置されていて、上記凹部5gの、燃料排出筒9bを囲繞する部分は気体が淀む淀み部5hとされているので、気体燃料の流れは上記淀み部5hを避けるように方向を転じて周壁7の付着オイルを置き去りにして燃料排出筒9bに向かうことになるので、周壁7の付着オイルの燃料排出筒9bへの到達が阻止されて、気体出口ポート9への流出を防ぐことができる。
【0028】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図5を参照しながら説明するが、上記第1の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0029】
本発明の第2の実施の形態は、第2の実施の形態におけるフィルタエレメント3の内周面に、網目状のセパレータ10を密着させたものであって、セパレータ10の下端部内周面が、液化燃料貯留筒部4の上壁部4aの縦壁部4a2に当接している。なお、このセパレータ10は多孔板状のものであってもよい。
【0030】
この第2の実施の形態によれば、フィルタエレメント3の内周面に、網目状のセパレータ10を密着させているので、液化燃料貯留筒部4と天井壁5との間に挟まれて支持されるフィルタエレメント3が該セパレータ10によって補強され、燃料の通過を妨げずに、変形によるフィルタエレメント3のズレを抑制することができる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0032】
2・・・・・トラップハウジング
2a・・・・内部空間
3・・・・・フィルタエレメント
3a・・・・内側空間
3b・・・・内周面
3c・・・・空隙
4・・・・・液化燃料貯留筒部
4a1・・・入口開口部
5・・・・・天井壁
5e・・・・下面
6・・・・・底壁
7・・・・・周壁
8・・・・・気体入口ポート
8b・・・・燃料流入筒
8b1・・・外周面
8b2・・・開口端
9・・・・・気体出口ポート
10・・・・セパレータ
図1
図2
図3
図4
図5