(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114153
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】アウトフェージング増幅器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H03F 1/02 20060101AFI20240816BHJP
H03F 3/24 20060101ALI20240816BHJP
H03F 3/68 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H03F1/02 194
H03F3/24
H03F3/68 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019713
(22)【出願日】2023-02-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】住吉 高志
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA04
5J500AA21
5J500AA41
5J500AC36
5J500AC75
5J500AC92
5J500AC98
5J500AH09
5J500AH12
5J500AH24
5J500AK12
5J500AK66
5J500AK68
5J500AQ04
5J500AS14
5J500AT01
5J500AT05
5J500AT07
5J500CK03
5J500CK07
5J500LV08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型化が可能なアウトフェージング増幅器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アウトフェージング増幅器100は、第1信号を増幅する第1アンプ10と、第2信号を増幅する第2アンプ11と、第1アンプが増幅した第1信号Soaが入力する第1ノードN1と、第2アンプが増幅した第2信号Sobが入力する第2ノードN2と、第1信号と第2信号が合成され、合成された信号を出力信号Soとして出力する第3ノードN3と、第1端が第1ノードに接続され、第2端が第3ノードに接続された第1インピーダンス変換器である伝送線路14と、第1端が第2ノードに接続され、第2端が第3ノードに接続された第2インピーダンス変換器である伝送線路15と、第1端が第1ノードに接続され、第2端が開放される第1オープンスタブ16と、第1端が第2ノードに接続され、第2端が開放される第2オープンスタブ17と、を備える合成器18と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号を増幅する第1アンプと、
第2信号を増幅する第2アンプと、
前記第1アンプが増幅した前記第1信号が入力する第1ノードと、
前記第2アンプが増幅した前記第2信号が入力する第2ノードと、
前記第1信号と前記第2信号が合成され、合成された信号を出力信号として出力する第3ノードと、
第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第1インピーダンス変換器と、
第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第2インピーダンス変換器と、
第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が開放され、動作周波数帯域の中心周波数における位相に換算した電気長をθ3とし、前記出力信号の電力を動作として用いられる最小の値としたときのアウトフェージング角をθboとしたとき、θ3が180°-θboと+θboのいずれとも異なる第1オープンスタブと、
第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が開放され、前記中心周波数における位相に換算した電気長をθ4としたとき、θ4が180°-θboと+θboのいずれとも異なる第2オープンスタブと、
を備える合成器と、
を備えるアウトフェージング増幅器。
【請求項2】
θ3と180°-θboとの差は、0.5°以上かつ10°以下であり、
θ4と+θboとの差は、0.5°以上かつ10°以下である請求項1に記載のアウトフェージング増幅器。
【請求項3】
θ3-(180°-θbo)の符号とθ4-θboの符号とは同じである請求項2に記載のアウトフェージング増幅器。
【請求項4】
θ3-(180°-θbo)とθ2-θboとの差の絶対値は1°以下である請求項3に記載のアウトフェージング増幅器。
【請求項5】
前記第1インピーダンス変換器は、電気長が前記中心周波数の波長の1/4の第1伝送線路であり、
前記第2インピーダンス変換器は、電気長が前記中心周波数の波長の1/4の第2伝送線路である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアウトフェージング増幅器。
【請求項6】
前記第1伝送線路、前記第2伝送線路、前記第1オープンスタブおよび前記第2オープンスタブは、誘電体層と、誘電体層上に設けられた導電体パターンにより形成される請求項5に記載のアウトフェージング増幅器。
【請求項7】
前記第1アンプと前記第1ノードとの間に接続された第1整合回路と、
前記第2アンプと前記第2ノードとの間に接続された第2整合回路と、
を備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアウトフェージング増幅器。
【請求項8】
前記出力信号の電力が動作として用いられる最小の値に設定されたとき、前記アウトフェージング増幅器の効率は、θ3=180°-θboかつθ4=+θboと仮定したときの効率より高い請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアウトフェージング増幅器。
【請求項9】
第1信号を増幅する第1アンプと、第2信号を増幅する第2アンプと、前記第1アンプが増幅した前記第1信号が入力する第1ノードと、前記第2アンプが増幅した前記第2信号が入力する第2ノードと、前記第1信号と前記第2信号とが合成され、合成された信号を出力信号として出力する第3ノードと、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第1インピーダンス変換器と、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第2インピーダンス変換器と、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が開放され、前記出力信号の電力を動作として用いられる最小の値としたときのアウトフェージング角をθboとしたとき、動作周波数帯域の中心周波数における位相に換算した電気長が180°-θboである第1オープンスタブと、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が開放され、前記中心周波数における位相に換算した電気が+θboである第2オープンスタブと、を備えるアウトフェージング増幅器を準備する工程と、
前記第1アンプから前記第1ノードを見た第1インピーダンスと前記第2アンプから前記第2ノードを見た第2インピーダンスとが所望の値となるように、前記第1オープンスタブの長さおよび前記第2オープンスタブの長さを調整する工程と、
を備えるアウトフェージング増幅器の製造方法。
【請求項10】
前記調整する工程は、前記第1オープンスタブの電気長と180°-θboとの差が0.5°以上かつ10°以下となり、前記第2オープンスタブの電気長と+θboとの差が0.5°以上かつ10°以下となるように、前記第1オープンスタブの長さおよび前記第2オープンスタブの長さを調整する工程を含む請求項9に記載のアウトフェージング増幅器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトフェージング増幅器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波等の高周波信号を増幅する増幅器としてアウトフェージング増幅器が知られている。アウトフェージング増幅器は、信号処理器、2つのアンプおよび合成器を備えている。信号処理器は、入力された入力信号の振幅に基づきアウトフェージング角を変化させた2つの信号を出力する。2つのアンプは、信号処理器から出力された2つの信号をそれぞれ増幅する。合成器は、2つのアンプが増幅した2つの出力信号を1つの出力信号として合成する合成器を備える。合成器としてシレイ(Chireix)合成器を用いることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アウトフェージング増幅器では、高調波を処理するため高調波回路を用いる。しかしながら、高調波回路を設けるとアウトフェージング増幅器が大型化してしまう。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みなされたものであり、小型化が可能なアウトフェージング増幅器およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、第1信号を増幅する第1アンプと、第2信号を増幅する第2アンプと、前記第1アンプが増幅した前記第1信号が入力する第1ノードと、前記第2アンプが増幅した前記第2信号が入力する第2ノードと、前記第1信号と前記第2信号が合成され、合成された信号を出力信号として出力する第3ノードと、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第1インピーダンス変換器と、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第2インピーダンス変換器と、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が開放され、動作周波数帯域の中心周波数における位相に換算した電気長をθ3とし、前記出力信号の電力を動作として用いられる最小の値としたときのアウトフェージング角をθboとしたとき、θ3が180°-θboと+θboのいずれとも異なる第1オープンスタブと、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が開放され、前記中心周波数における位相に換算した電気長をθ4としたとき、θ4が180°-θboと+θboのいずれとも異なる第2オープンスタブと、を備える合成器と、を備えるアウトフェージング増幅器である。
【0007】
本開示の一実施形態は、第1信号を増幅する第1アンプと、第2信号を増幅する第2アンプと、前記第1アンプが増幅した前記第1信号が入力する第1ノードと、前記第2アンプが増幅した前記第2信号が入力する第2ノードと、前記第1信号と前記第2信号とが合成され、合成された信号を出力信号として出力する第3ノードと、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第1インピーダンス変換器と、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第2インピーダンス変換器と、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が開放され、前記出力信号の電力を動作として用いられる最小の値としたときのアウトフェージング角をθboとしたとき、動作周波数帯域の中心周波数における位相に換算した電気長が180°-θboである第1オープンスタブと、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が開放され、前記中心周波数における位相に換算した電気が+θboである第2オープンスタブと、を備えるアウトフェージング増幅器を準備する工程と、前記第1アンプから前記第1ノードを見た第1インピーダンスと前記第2アンプから前記第2ノードを見た第2インピーダンスとが所望の値となるように、前記第1オープンスタブの長さおよび前記第2オープンスタブの長さを調整する工程と、を備えるアウトフェージング増幅器の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、小型化が可能なアウトフェージング増幅器およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1に係るアウトフェージング増幅器のブロック図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係るアウトフェージング増幅器のブロック図である。
【
図3】
図3は、実施例1における出力電力のベクトルの模式図である。
【
図4】
図4は、実施例1における出力電力のベクトルの模式図である。
【
図5】
図5は、比較例1におけるインピーダンスのスミスチャートである。
【
図6】
図6は、実施例1におけるインピーダンスのスミスチャートである。
【
図7】
図7は、実施例1におけるシレイ合成器の平面図である。
【
図8】
図8は、比較例2に係るアウトフェージング増幅器の回路図である。
【
図9】
図9は、実施例1におけるアウトフェージング増幅器の設計方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、基本波におけるインピーダンスZaおよびZbを示すスミスチャートである。
【
図11】
図11は、基本波におけるインピーダンスZcおよびZdを示すスミスチャートである。
【
図12】
図12は、実施例1におけるアウトフェージング増幅器の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の一実施形態は、第1信号を増幅する第1アンプと、第2信号を増幅する第2アンプと、前記第1アンプが増幅した前記第1信号が入力する第1ノードと、前記第2アンプが増幅した前記第2信号が入力する第2ノードと、前記第1信号と前記第2信号が合成され、合成された信号を出力信号として出力する第3ノードと、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第1インピーダンス変換器と、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第2インピーダンス変換器と、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が開放され、動作周波数帯域の中心周波数における位相に換算した電気長をθ3とし、前記出力信号の電力を動作として用いられる最小の値としたときのアウトフェージング角をθboとしたとき、θ3が180°-θboと+θboのいずれとも異なる第1オープンスタブと、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が開放され、前記中心周波数における位相に換算した電気長をθ4としたとき、θ4が180°-θboと+θboのいずれとも異なる第2オープンスタブと、を備える合成器と、を備えるアウトフェージング増幅器である。これにより、小型化が可能なアウトフェージング増幅器を提供することができる。
(2)上記(1)において、θ3と180°-θboとの差は、0.5°以上かつ10°以下であり、θ4と+θboとの差は、0.5°以上かつ10°以下であってもよい。これにより、アウトフェージング増幅器の特性を向上できる。
(3)上記(2)において、θ3-(180°-θbo)の符号とθ4-θboの符号とは同じであってもよい。これにより、アウトフェージング増幅器の特性を向上できる。
(4)上記(3)において、θ3-(180°-θbo)とθ2-θboとの差の絶対値は1°以下であってもよい。これにより、アウトフェージング増幅器の特性を向上できる。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記第1インピーダンス変換器は、電気長が前記中心周波数の波長の1/4の第1伝送線路であり、前記第2インピーダンス変換器は、電気長が前記中心周波数の波長の1/4の第2伝送線路であってもよい。これにより、第1伝送線路および第2伝送線路をインピーダンス変換器として機能させることができる。
(6)上記(5)において、前記第1伝送線路、前記第2伝送線路、前記第1オープンスタブおよび前記第2オープンスタブは、誘電体層と、誘電体層上に設けられた導電体パターンにより形成されてもよい。これにより、第1オープンスタブおよび第2オープンスタブの電気長を容易に調整できる。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記第1アンプと前記第1ノードとの間に接続された第1整合回路と、前記第2アンプと前記第2ノードとの間に接続された第2整合回路と、を備えてもよい。これにより、第1ノードおよび第2ノードを見たインピーダンスを第1アンプおよび第2アンプが最適動作するインピーダンスに整合させることができる。
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記出力信号の電力が動作として用いられる最小の値に設定されたとき、前記アウトフェージング増幅器の効率は、θ3=180°-θboかつθ4=+θboと仮定したときの効率より高くてもよい。これにより、アウトフェージング増幅器の特性を向上できる。
(9)本開示の一実施形態は、第1信号を増幅する第1アンプと、第2信号を増幅する第2アンプと、前記第1アンプが増幅した前記第1信号が入力する第1ノードと、前記第2アンプが増幅した前記第2信号が入力する第2ノードと、前記第1信号と前記第2信号とが合成され、合成された信号を出力信号として出力する第3ノードと、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第1インピーダンス変換器と、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第2インピーダンス変換器と、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が開放され、前記出力信号の電力を動作として用いられる最小の値としたときのアウトフェージング角をθboとしたとき、動作周波数帯域の中心周波数における位相に換算した電気長が180°-θboである第1オープンスタブと、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が開放され、前記中心周波数における位相に換算した電気が+θboである第2オープンスタブと、を備えるアウトフェージング増幅器を準備する工程と、前記第1アンプから前記第1ノードを見た第1インピーダンスと前記第2アンプから前記第2ノードを見た第2インピーダンスとが所望の値となるように、前記第1オープンスタブの長さおよび前記第2オープンスタブの長さを調整する工程と、を備えるアウトフェージング増幅器の製造方法である。これにより、小型化可能なアウトフェージング増幅器を製造できる。
(10)上記(9)において、前記調整する工程は、前記第1オープンスタブの電気長と180°-θboとの差が0.5°以上かつ10°以下となり、前記第2オープンスタブの電気長と+θboとの差が0.5°以上かつ10°以下となるように、前記第1オープンスタブの長さおよび前記第2オープンスタブの長さを調整する工程を含んでもよい。これにより、アウトフェージング増幅器の特性を向上できる。
【0011】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態にかかるアウトフェージング増幅器およびその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
[実施例1]
図1は、実施例1に係るアウトフェージング増幅器のブロック図である。
図1に示すように、アウトフェージング増幅器100では、入力端子Tinと出力端子Toutとの間にアンプ10(第1アンプ)とアンプ11(第2アンプ)とが並列に接続されている。入力端子Tinに入力信号Siとして高周波信号が入力する。アウトフェージング増幅器100が移動体通信の基地局に用いられる場合、高周波信号の周波数は例えば0.5GHz以上かつ10GHz以下である。信号処理器20は入力信号Siを信号処理し、2つの信号Sia(第1信号)および信号Sib(第2信号)として出力する。
【0013】
信号Siaは整合回路30を介しアンプ10に入力される。整合回路30は信号処理器20の出力インピーダンスとアンプ10の入力インピーダンスを整合させる。アンプ10は、整合回路30を介して入力された信号Siaを増幅し、整合回路32を介して、増幅した信号Soaを出力する。整合回路32を通過した信号Soaは合成器18に入力される。整合回路32は、アンプ10の出力インピーダンスと合成器18の入力インピーダンスとを整合させる。信号Sibは整合回路31を介しアンプ11に入力される。整合回路31は信号処理器20の出力インピーダンスとアンプ11の入力インピーダンスとを整合させる。アンプ11は、整合回路31を介して入力された信号Sibを増幅し、整合回路33を介して、増幅した信号Sobを出力する。整合回路33を通過した信号Sobは合成器18に入力する。整合回路33は、アンプ11の出力インピーダンスと合成器18の入力インピーダンスとを整合させる。合成器18は、信号SoaとSobとを合成する。合成された信号は出力信号Soとして出力端子Toutから出力される。
【0014】
バイアス回路34は、バイアス電圧Vg1をアンプ10のゲートGに供給するとともに、信号Siaがバイアス端子に漏れることを抑制する。バイアス回路36は、バイアス電圧Vd1をアンプ10のドレインDに供給するとともに、アンプ10により増幅された信号Soaがバイアス端子に漏れることを抑制する。バイアス回路35は、バイアス電圧Vg2をアンプ11のゲートGに供給するとともに、信号Sibがバイアス端子に漏れることを抑制する。バイアス回路37は、バイアス電圧Vd2をアンプ11のドレインDに供給するとともに、アンプ11により増幅された信号Sobがバイアス端子に漏れることを抑制する。
【0015】
アンプ10および11は、例えばFET(Field Effect Transistor)Q1およびQ2をそれぞれ備える。FETQ1およびQ2のソースSは接地され、ゲートGに信号Siaおよび信号Sibが、それぞれ整合回路30および整合回路31を介してそれぞれ入力され、ドレインDは増幅した信号が出力する。FETQ1およびQ2は、例えばGaN HEMT(Gallium Nitride High Electron Mobility Transistor)またはLDMOS(Laterally Diffused Metal Oxide Semiconductor)である。アンプ10および11にはそれぞれ多段のFETが設けられていてもよい。アンプ10および11は、FET以外のトランジスタを有していてもよい。
【0016】
整合回路30、31、32および33は、例えばアンプ10および11が飽和電力を出力するときにドレイン効率等の高周波特性が最適になるように設計されている。これにより、アンプ10および11が信号SiaおよびSibを増幅するときのドレイン効率等の高周波特性が向上する。
【0017】
信号処理器20は、例えばSingnal Processing Unitであり、入力信号Siをデジタル処理し信号SiaおよびSibを出力する。アウトフェージング増幅器100では、入力信号Siの入力電力の振幅に対応した出力電力の振幅を有する出力信号Soを出力する。信号処理器20は、入力信号Siの振幅に依存した出力信号Soを出力するため、入力信号Siの振幅に依存して信号SiaおよびSibのアウトフェージング角を設定する。
【0018】
図2は、実施例1に係るアウトフェージング増幅器のブロック図である。
図2では、
図1に比べ、整合回路30、31およびバイアス回路34、35、36および37の図示を省略し、合成器18内の構成を図示している。
図2に示すように、実施例1のアウトフェージング増幅器100では、合成器18は、例えばシレイ合成器である。合成器18は、伝送線路14、15、オープンスタブ16および17を備えている。
【0019】
伝送線路14(第1伝送線路)の第1端はノードN1(第1ノード)に電気的に接続され、伝送線路14の第2端はノードN3(第3ノード)に電気的に接続されている。伝送線路15(第2伝送線路)の第1端はノードN2(第2ノード)に電気的に接続され、伝送線路15の第2端はノードN3に電気的に接続されている。オープンスタブ16(第1オープンスタブ)の第1端はノードN1に電気的に接続され、オープンスタブ16の第2端は開放されている。オープンスタブ17(第2オープンスタブ)の第1端はノードN2に電気的に接続され、オープンスタブ17の第2端は開放されている。
【0020】
ノードN1に入力する信号Soa(第1信号)と、ノードN2に入力する信号Sob(第2信号)と、はノードN3において合成され、出力端子Toutに、出力電力Poの出力信号Soとして出力される。
【0021】
伝送線路14および15は、インピーダンス変換器であり、それぞれ整合回路32および33の出力インピーダンスを標準インピーダンス(例えば50Ω)の2倍(100Ω)に変換する。これにより、出力端子ToutからノードN3をみたインピーダンスは標準インピーダンス(50Ω)となる。伝送線路14および15の電気長は、それぞれL1およびL2である。電気長L1およびL2は、例えばλ/4である。λは、アウトフェージング増幅器100の動作周波数帯域の中心周波数f0における波長である。電気長L1およびL2を中心周波数f0における位相に換算した電気長をそれぞれθ1およびθ2とすると、θ1=θ2=90°である。
【0022】
[アウトフェージング動作の説明]
図3および
図4は、実施例1における出力電力のベクトルの模式図である。
図3は、アウトフェージング増幅器100の出力電力Poを最大とするときに相当し、
図4は、アウトフェージング増幅器100の出力電力P0を最小とするときに相当する。動作において用いられるときの最大の値の出力電力Poを飽和電力と称し電力Psatで表す。動作において用いられるときの最小の値の出力電力Poをバックオフ電力と称し電力Pboで表す。
【0023】
図3および
図4において、電力PaはノードN1における信号Soaの電力のベクトルであり、電力PbはノードN2における信号Sobの電力のベクトルである。電力PaおよびPbは、例えばそれぞれアンプ10および11の飽和電力である。電力PaとPbとの合成ベクトルは出力端子Toutから出力される出力電力Poである。アウトフェージング角をθaとし、電力PaとPaの位相差をθdとすると、2×θa+θd=180°である。すなわち、位相差θdが180°の状態から、電力P1の位相を+θa回転し、電力P2の位相を-θa回転させたとき、角θaをアウトフェージング角という。
【0024】
図3に示すように、出力電力Poを大きくするときには、アウトフェージング角θaを大きくし、90°に近づける。
図4に示すように、出力電力Poを小さくするときには、アウトフェージング角θaを小さくし、0°に近づける。シレイ合成器である合成器18では、アウトフェージング角を90°付近および0°付近とすると、出力ノードNo1およびNo2から合成器18をみたインピーダンスのリアクタンス成分が大きくなり、アンプ10および11の負荷インピーダンスZa1およびZa2が最適値からずれてしまう。このため、アウトフェージング角θaは、90°より小さい角θsatと、0°より大きい角θboの範囲で用いる。すなわち、
図3において、出力電力Poが電力Psatのときのアウトフェージング角θaは角θsatである。角θsatは、アウトフェージング増幅器100の動作において用いられる最大のアウトフェージング角θaである。
図4において、出力電力Poが電力Pboのときのアウトフェージング角θaは角θboである。角θboは、アウトフェージング増幅器100の動作において用いられる最小のアウトフェージング角θaである。角θsatは例えば70°であり、角θboは例えば20°である。
【0025】
アウトフェージング角θaの制御は信号処理器20が行う。例えば、出力電力Poを大きくするとき、信号処理器20は、信号SiaとSibのアウトフェージング角θaを大きくする。出力電力Poを小さくするとき、信号処理器20は、信号SiaとSibのアウトフェージング角θaを小さくする。信号SiaおよびSibのアウトフェージング角θaと、信号SiaおよびSiaを増幅した信号SoaおよびSobのアウトフェージング角θaと、はほぼ同じである。よって、信号処理器20が信号SiaとSibのアウトフェージング角θaを変化させることで、アウトフェージング角θaを変化させることができる。このように、信号処理器20は、入力する入力信号Siに基づき、信号SiaとSibとのアウトフェージング角θaを変化させ、アンプ10および11にアウトフェージング角θaを変化させた信号SiaとSibとを出力する
【0026】
[シレイ合成器の説明]
オープンスタブ16および17の機能について説明するため、比較例1について説明する。比較例1に係るアウトフェージング増幅器では、合成器18にオープンスタブ16および17が設けられていない。比較例1の合成器はシレイ合成器ではない。
【0027】
図5は、比較例1におけるインピーダンスのスミスチャートであり、整合回路32および33から合成器18をみたインピーダンスZaおよびZbのスミスチャートである。
図5に示すように、点50はアウトフェージング角θaが0°のときを示し、点51はアウトフェージング角θaが90°のときを示す。アウトフェージング角θaが0°から90°まで変化すると、インピーダンスZaは、矢印52のように点50から点51に円弧の下半分の軌跡を移動する。インピーダンスZbは、矢印53のように点50から点51に円弧の上半分の軌跡を移動する。
【0028】
整合回路32および33は、インピーダンスZaおよびZbが実数(例えば標準インピーダンスの2倍)のとき、アンプ10および11の高周波特性が最適(例えばドレイン効率が最大)となるように、アンプ10および11の出力インピーダンスを変換する。これにより、
図5において、インピーダンスZaおよびZbが実数のときアンプ10および11の特性が最大となる。点50および点51では、インピーダンスZaおよびZbは実数である。アウトフェージング角θaの範囲は、
図3のθsatと
図4のθboとの間の範囲である。この範囲では、インピーダンスZaおよびZbのリアクタンス成分(虚数成分)が大きく、アンプ10および11の負荷インピーダンスは最適値からずれてしまう。また、無効電力が大きくなってしまう。
【0029】
図6は、実施例1におけるインピーダンスのスミスチャートであり、整合回路32および33から合成器18をみたインピーダンスZaおよびZbのスミスチャートである。オープンスタブ16の電気長L3を、容量性を有する電気長とし、オープンスタブ17の電気長L4を、誘導性を有する電気長とする。すなわち、オープンスタブ16を、2λより長くかつ4λより短くする。オープンスタブ17を、0λより長くかつ2λより短くする。電気長L3およびL4を周波数f0における位相に換算したそれぞれ電気長θ3およびθ4を用い表すと、電気長θ3は90°より大きく180°より小さい。電気長θ4は0°より大きく90°より小さい。
【0030】
図6に示すように、オープンスタブ16を設けることで、インピーダンスZaは、インピーダンスのスミスチャート上を、全体の円弧の形状を保った状態において、比較例1の
図5に比べて、リアクタンス成分が正の方向にシフトしかつ反時計回りの方向に回転する。オープンスタブ17を設けることで、インピーダンスZbは、インピーダンスのスミスチャート上を、全体の円弧の形状を保った状態において、比較例1に比べて、リアクタンス成分が負の方向にシフトしかつ時計回りの方向に回転する。アウトフェージング角θaが0°の点50aおよびアウトフェージング角θaが90°のときの点51aにおけるインピーダンスZaのリアクタンス成分は正となる。アウトフェージング角θaが0°の点50bおよびアウトフェージング角θaが90°のときの点51bにおけるインピーダンスZbのリアクタンス成分は負となる。
【0031】
アウトフェージング増幅器では、出力電力Poがバックオフ電力Pboのときに、効率等の特性を向上させる。このため、オープンスタブ16の電気長θ3を、180°-θboに設定し、オープンスタブ17の電気長θ4を+θboに設定する。これにより、アウトフェージング角θaが角θboのときのインピーダンスZaおよびZbは、実軸上の点54となる。これにより、出力電力Poがバックオフ電力Pboのときに、効率等の特性を向上できる。アウトフェージング角θaが角θsatのときのインピーダンスZaおよびZbは、実軸上とは限らないが、
図5よりは、実軸に近づく。アウトフェージング角θaが角θboと角θsatとの範囲では、
図5に比べインピーダンスZaおよびZbが実軸に近づきリアクタンス成分が小さくなる。よって、アンプ10および11の負荷インピーダンスは最適値に近くなる。これにより、ドレイン効率等の高周波特性が向上する。
【0032】
図7は、実施例1におけるシレイ合成器の平面図である。
図7に示すように、誘電体層56の上面に導電体パターン58が設けられている。誘電体層56の下面には、基準電位が供給される導電体層が設けられている。伝送線路19aは整合回路32とノードN1との間の線路である。伝送線路19bは整合回路33とノードN2との間の線路である。伝送線路19cはノードN3と出力端子Toutとの間の線路である。伝送線路14、15、19aから19c、オープンスタブ16および17は、導電体パターン58と、下面の導電体層とによりマイクロストリップ線路として形成される。誘電体層56は、例えばFR-4(Flame Retardant Type 4)等の樹脂またはセラミック等の誘電体基板である。導電体パターン58および誘電体層56の下面の導電体層は、例えば銅層または金層等の金属層である。
【0033】
ノードN1は、伝送線路14、19aおよびオープンスタブ16の中心線が交差する点に相当する。ノードN2は、伝送線路15、19bおよびオープンスタブ17の中心線が交差する点に相当する。ノードN3は伝送線路14、15および19cの中心線が交差する点に相当する。電気長L1およびθ1は、ノードN1とN3に相当する点の間における伝送線路14の中心線の長さに相当する。電気長L2およびθ2は、ノードN2とN3に相当する点の間における伝送線路15の中心線の長さに相当する。電気長L3およびθ3は、ノードN1とオープンスタブ16の先端との間におけるオープンスタブ16の中心線の長さに相当する。電気長L4およびθ4は、ノードN2とオープンスタブ17の先端との間におけるオープンスタブ17の中心線の長さに相当する。なお、中心線は、線路が延伸する方向に直交する方向における線路の中点を線路の延伸方向に結んだ線である。
【0034】
電気長L1およびθ1からL4およびθ4は、物理的な長さから誘電体層56の比誘電率ε0を用い算出できる。例えば、基本波の波長λは、光速をcとすると、λ=c/f0/√ε0である。なお、マイクロストリップ伝送線路の波長λを公知の方法により算出してもよい。これにより、物理的な長さから電気長が算出できる。
【0035】
[比較例2の説明]
図8は、比較例2に係るアウトフェージング増幅器の回路図である。
図8に示すように、比較例2のアウトフェージング増幅器110では、整合回路32とノードN1との間に高調波回路38が接続され、整合回路33とノードN2との間に高調波回路39が設けられている。高調波回路38および高調波回路39は、周波数f0の基本波の高調波(例えば第2高調波または第3高調波)を処理する回路である。高調波回路38および39としては、例えば信号線路にシャント接続され、高調波の周波数で共振する直列共振器である。これにより、高調波回路38および39は、信号線路を伝送される高調波を反射し、高調波が出力端子から出力され効率等のアウトフェージング増幅器110の特性が劣化することを抑制できる。しかしながら、高調波回路38および39を設けると、アウトフェージング増幅器110が大型化してしまう。また、高調波回路38および39を設けると、挿入損失により損失が低下してしまう。
【0036】
[実施例1のアウトフェージング増幅器の設計方法]
図9は、実施例1におけるアウトフェージング増幅器の設計方法を示すフローチャートである。
図10は、基本波におけるインピーダンスZaおよびZbを示すスミスチャートである。
図11は、基本波におけるインピーダンスZcおよびZdを示すスミスチャートである。
図10および
図11において、直線は実軸に相当する。
【0037】
図2のように、インピーダンスZaは整合回路32から合成器18を見たインピーダンスである。インピーダンスZbは整合回路33から合成器18を見たインピーダンスである。インピーダンスZcは、アンプ10から整合回路32を見たインピーダンスである。インピーダンスZdは、アンプ11から整合回路33を見たインピーダンスである。なお、
図10および
図11のインピーダンスZaからZdは、設計方法を説明するための仮想のインピーダンスである。
【0038】
図10および
図11のインピーダンスZaからZdは、例えばアウトフェージング角θaが角θboのときのインピーダンスZaからZdを示している。信号SoaとSobとの位相差(アウトフェージング角θa)を考慮してスミスチャートを示すと、
図6において示したように、インピーダンスZaからZdの位置がスミスチャート上を回転し複雑になる。このため、
図10および
図11では、アウトフェージング角θaによる回転を考慮せずにスミスチャートを示している。
【0039】
図9に示すように、ステップS10では、基本波として、アウトフェージング増幅器100の動作周波数帯域の中心周波数f0(例えば3.5GHz)において、整合回路32および33を設計する。アンプ10および11をロードプル測定することで、基本波においてアンプ10および11の効率等の特性が最も高くなる負荷インピーダンスを測定する。
図11におけるZbo*は、基本波において、アンプ10および11の効率等の特性が最も高くなるインピーダンス(ロードプル測定器からアンプ10および11を見たインピーダンス)である。整合回路32および33は、
図10のインピーダンスZaおよびZbを
図11のZbo*の複素共役であるZboに変換するように、設計される。
【0040】
次に、
図9のステップS12では、基本波において、合成器18としてシレイ合成器を設計する。合成器18では、伝送線路14および15の電気長θ1およびθ2は、各々90°である。オープンスタブ16の電気長θ3は180°-θboである。オープンスタブ17の電気長θ4はθboである。アウトフェージング増幅器100の動作周波数帯域の中心周波数f0(例えば3.5GHz)において、アウトフェージング増幅器100の特性(例えば効率および出力電力)が所望の特性になるように、整合回路32および33を設計する。このように、周波数f0において、アウトフェージング増幅器100が所望の特性となるように、整合回路32、33および合成器18としてシレイ合成器が設計される。ステップS10とS12の順番は逆でもよい。
【0041】
図10に示すように、合成器18は、出力端子Toutの負荷抵抗をインピーダンス変換する。これにより、基本波におけるアウトフェージング角θaがθboのときのインピーダンスZaおよびZbは実軸上に位置する。
【0042】
整合回路32および33は、高調波を考慮して設計されていない。これは、整合回路32および33は、キャパシタ、インダクタおよび伝送線路を複数有する。このため、基本波と高調波を考慮して、整合回路32および33を設計するのは非常に複雑であるためである。高調波の影響、およびアンプ10と11とを合成器18を介し結合した影響により、インピーダンスZcおよびZdは、目標とするインピーダンスZboからずれてしまう。
【0043】
次に、
図9のステップS14では、オープンスタブ16の電気長L3およびオープンスタブ17の電気長L4を調整することで、インピーダンスZcおよびZdを目標となるインピーダンスZboに調整する。オープンスタブ16および17の電気長L3およびL4は、レーザトリミング等のトリミング手法を用い微調整する。
【0044】
調整の一例としては、インピーダンスZcが目標のインピーダンスZboになるように、電気長L4を調整し、インピーダンスZdが目標のインピーダンスZboになるように、電気長L3を調整する。また、他の例として、インピーダンスZcが目標のインピーダンスZboになるように、電気長L3を調整し、インピーダンスZdが目標のインピーダンスZboになるように、電気長L4を調整する。
【0045】
電気長L3およびL4の調整は、高調波(例えば第2高調波)がノードN1において反射され、高調波がノードN2において反射されるように、行ってもよい。
【0046】
電気長L3およびL4を調整すると、基本波における合成器18の特性も変わってしまう。しかし、高調波の波長は、基本波の波長に比べ短い。このため、電気長L3およびL4を少し変えると、オープンスタブ16および17の高調波の特性が大きく変わるものの、オープンスタブ16および17の基本波の特性は大きくは変わらない。よって、基本波における合成器18の特性の変化は非常に小さい。
【0047】
[実施例1および比較例2の比較]
一例として、比較例2のように高調波回路を設けた場合と、実施例1のように、オープンスタブ16および17の電気長L3およびL4を調整した場合におけるアウトフェージング増幅器の測定結果について説明する。比較例2と実施例1とにおける共通の条件は以下である。f0=3.5GHz、Psat=48dBm、θsat=70°およびθbo=20°である。
図11のように、インピーダンスをスミスチャートの極座標で表す。極座標は、中心が0および外周が1とした動径Aと角度φにより表される。
【0048】
比較例2および実施例1ともに、アウトフェージング角θaが角θboのとき基本波におけるインピーダンスZcおよびZdはA=0.9およびφ=160°である。次に、オープンスタブ16の電気長θ3およびオープンスタブ17の電気長θ4を以下とした。比較例2では、電気長θ3を160°、電気長θ4を20°とした。実施例1では、電気長θ3を158°、電気長θ4を18°とした。このように、実施例1では比較例2に比べ、電気長θ3およびθ4を2°短くした。比較例2において、第2高調波におけるアンプ10から整合回路32を見たインピーダンスは、A≒1.0およびφ=160°である。実施例1において、第2高調波におけるアンプ10から整合回路32を見たインピーダンスは、A≒1.0およびφ=163°である。このように、実施例2では比較例1に比べ、第2高調波におけるインピーダンスのφが少し大きくなった。
【0049】
このときのアウトフェージング増幅器での、バックオフ電力Pboにおけるドレイン効率は、実施例1では比較例2に比べ2%向上した。これは、オープンスタブ16およびオープンスタブ17により、ノードN1およびN2において第2高調波が反射されやすくなったことと、高調波回路38および39を設けないことで、挿入損失が低下したためと考えられる。
【0050】
実施例1では、伝送線路14は第1インピーダンス変換器であり、伝送線路15は第2インピーダンス変換器である。オープンスタブ16の電気長θ3を(180°-θbo)と異ならせる。オープンスタブ17の電気長θ4を+θboと異ならせる。これにより、比較例2のような高調波回路38および39を設けなくてもアウトフェージング増幅器100の効率等の特性を向上できる。よって、アウトフェージング増幅器100の小型化が可能となる。
【0051】
例えば、伝送線路14の電気長L1および伝送線路15の電気長L2を調整するためには、
図7の導電体パターン58のパターンを変えることになり、合成器18全体を交換することになる。このように、オープンスタブ16および17以外を用いてアウトフェージング増幅器100の特性を調整することは難しい。実施例1では、オープンスタブ16および17を用いるため、電気長θ3およびθ4の調整が容易である。
【0052】
オープンスタブ16の電気長θ3およびθ4がいずれも(180°-θbo)および+θboのいずれとも異なるとは、製造誤差を考慮しても異なることを意味する。電気長θ3およびθ4を例えば0.5°程度の精度で設定できる場合、電気長θ3およびθ4は、(180°-θbo)±0.5°内の範囲および+θbo±0.5°内の範囲のいずれの範囲にも含まれない。
【0053】
比較例2のような合成器18では、電気長θ3およびθ4は製造誤差程度に(180°-θbo)およびθboである。電気長θ3およびθ4の製造誤差は、0.5°より小さい。よって、電気長θ3と(180°-θbo)との差は、0.5°以上であってもよく、0.7°以上であってもよく、1.0°以上であってもよく、2.0°以上であってもよい。電気長θ4と+θboとの差は、0.5°以上であってもよく、0.7°以上であってもよく、1.0°以上であってもよく、2.0°以上であってもよい。これにより、アウトフェージング増幅器100の特性を向上できる。
【0054】
電気長θ3と(180°-θbo)との差、および電気長θ4と+θboとの差が大きすぎると、基本波の合成器18の機能が低下する。この観点から、電気長θ3と(180°-θbo)との差は、10°以下であってもよく、5°以下であってもよく、3°以下であってもよい。θ4と+θboとの差は、10°以下であってもよく、5°以下であってもよく、3°以下であってもよい。
【0055】
電気長θ3を(180°-θbo)と異ならせ、電気長θ4を+θboと異ならせると、
図6において、インピーダンスZaとZbが実軸上となるアウトフェージング角θaがθboからずれてしまう。インピーダンスZaとZbとは、同じアウトフェージング角θaにおいて実軸上となることが好ましい。θ3-(180°-θbo)の正負を示す符号とθ4-θboの正負を示す符号とが異なると、
図6において、インピーダンスZaとZbの回転方向が同じとなってしまう。よって、θ3-(180°-θbo)の符号とθ4-θboの符号とは同じであってもよい。これにより、アウトフェージング増幅器100の特性を向上できる。
【0056】
θ3-(180°-θbo)の符号と、θ4-θboの符号と、がともに正の場合、
図6において、アウトフェージング角θaがθboより小さい角度において、インピーダンスZaおよびZbが実軸上となる。アウトフェージング増幅器100で用いられるアウトフェージング角θaは、θbo以上θsat以下であり、θboより小さいアウトフェージング角θaは用いられない。よって、実際に用いられるアウトフェージング角θaにおいて、インピーダンスZaおよびZbが実軸上となるためには、θ3-(180°-θbo)の符号と、θ4-θboの符号と、はともに負であってもよい。
【0057】
また、θ3-(180°-θbo)とθ4-θboとの差の絶対値が大きいと、ZaとZbとで実軸上となるアウトフェージング角θaが異なってしまう。この観点からθ3-(180°-θbo)とθ4-θboとの差の絶対値は、1°以下であってもよく、0.5°以下であってもよく、ほぼ0°であってもよい。これにより、アウトフェージング増幅器100の特性を向上できる。
【0058】
伝送線路14および15は、スミスチャートにおける実軸上のインピーダンスを実軸上のインピーダンスに変換するインピーダンス変換器である。よって、伝送線路14(第1伝送線路)の電気長L1および伝送線路15(第2伝送線路)の電気長L2は、基本波の波長の1/4である。すなわち、電気長θ1およびθ2は90°である。これにより、合成器18はシレイ合成器として機能できる。なお、電気長L1およびL2が波長の1/4とは、厳密に1/4でなくともよく、インピーダンス変換器として機能すればよい。例えば電気長θ1およびθ2は、80°以上かつ100°以下であってもよく、85°以上かつ95°以下であってもよく、89°以上かつ91°以下であってもよい。
【0059】
図7のように、伝送線路14、伝送線路15、オープンスタブ16およびオープンスタブ17は、誘電体層56と、誘電体層56上に設けられた導電体パターン58により形成される。これにより、オープンスタブ16およびオープンスタブ17の電気長θ3およびθ4を容易に調整することができる。
【0060】
整合回路32(第1整合回路)は、アンプ10とノードN1との間に接続され、整合回路33(第2整合回路)は、アンプ11とノードN2との間に接続されている。これにより、インピーダンスZaおよびZbを、アンプ10および11が最適動作するインピーダンスZcおよびZdに整合させることができる。
【0061】
出力電力Poが最小に設定された電力Pboのとき、アウトフェージング増幅器100のドレイン効率等の効率は、θ3=180°-θboかつθ4=+θboと仮定した比較例2のアウトフェージング増幅器110のドレイン効率等の効率より高い。アウトフェージング増幅器100の効率は、比較例2のアウトフェージング増幅器110の効率より0.1%以上高く、0.5%以上高く、1%以上高い。
【0062】
[実施例1のアウトフェージング増幅器の製造方法]
図9のステップS14は、アウトフェージング増幅器を設計するときにオープンスタブ16および17の電気長を調整していたが、製造工程においてステップS14を行ってもよい。
【0063】
図12は、実施例1におけるアウトフェージング増幅器の製造方法を示す図である。
図12に示すように、まず、電気長θ3が180°-θboであるオープンスタブ16と電気長θ4が+θboであるオープンスタブ17を有するアウトフェージング増幅器を準備する(ステップS20)。その後、アンプ10からノードN1を見たインピーダンスZcまたはZaとアンプ11からノードN2を見たインピーダンスZdまたはZbとが所望の値となるように、電気長θ3およびθ4を調整する(ステップS22)。これにより、小型化可能であり、特性の向上したアウトフェージング増幅器を製造できる。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
10、11 アンプ
14、15、19a、19b、19c 伝送線路
16、17 オープンスタブ
18 合成器
20 信号処理器
30,31、32、33 整合回路
34、35、36、37 バイアス回路
38、39 高調波回路
50、50a、50b、51、51a、51b、54 点
52、53 矢印
56 誘電体層
58 導電体パターン
100、110 アウトフェージング増幅器
【手続補正書】
【提出日】2024-02-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号を増幅する第1アンプと、
第2信号を増幅する第2アンプと、
前記第1アンプが増幅した前記第1信号が入力する第1ノードと、
前記第2アンプが増幅した前記第2信号が入力する第2ノードと、
前記第1信号と前記第2信号が合成され、合成された信号を出力信号として出力する第3ノードと、
第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第1インピーダンス変換器と、
第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第2インピーダンス変換器と、
第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が開放され、動作周波数帯域の中心周波数における位相に換算した電気長をθ3とし、前記出力信号の電力を動作として用いられる最小の値としたときのアウトフェージング角をθboとしたとき、θ3が180°-θboと+θboのいずれとも異なる第1オープンスタブと、
第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が開放され、前記中心周波数における位相に換算した電気長をθ4としたとき、θ4が180°-θboと+θboのいずれとも異なる第2オープンスタブと、
を備える合成器と、
を備えるアウトフェージング増幅器。
【請求項2】
θ3と180°-θboとの差の絶対値は、0.5°以上かつ10°以下であり、
θ4と+θboとの差の絶対値は、0.5°以上かつ10°以下である請求項1に記載のアウトフェージング増幅器。
【請求項3】
θ3-(180°-θbo)の符号とθ4-θboの符号とは同じである請求項2に記載のアウトフェージング増幅器。
【請求項4】
θ3-(180°-θbo)とθ2-θboとの差の絶対値は1°以下である請求項3に記載のアウトフェージング増幅器。
【請求項5】
前記第1インピーダンス変換器は、電気長が前記中心周波数の波長の1/4の第1伝送線路であり、
前記第2インピーダンス変換器は、電気長が前記中心周波数の波長の1/4の第2伝送線路である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアウトフェージング増幅器。
【請求項6】
前記第1伝送線路、前記第2伝送線路、前記第1オープンスタブおよび前記第2オープンスタブは、誘電体層と、誘電体層上に設けられた導電体パターンにより形成される請求項5に記載のアウトフェージング増幅器。
【請求項7】
前記第1アンプと前記第1ノードとの間に接続された第1整合回路と、
前記第2アンプと前記第2ノードとの間に接続された第2整合回路と、
を備える請求項1又は2に記載のアウトフェージング増幅器。
【請求項8】
前記出力信号の電力が動作として用いられる最小の値に設定されたとき、前記アウトフェージング増幅器の効率は、θ3=180°-θboかつθ4=+θboと仮定したときの効率より高い請求項1又は2に記載のアウトフェージング増幅器。
【請求項9】
第1信号を増幅する第1アンプと、第2信号を増幅する第2アンプと、前記第1アンプが増幅した前記第1信号が入力する第1ノードと、前記第2アンプが増幅した前記第2信号が入力する第2ノードと、前記第1信号と前記第2信号とが合成され、合成された信号を出力信号として出力する第3ノードと、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第1インピーダンス変換器と、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第2インピーダンス変換器と、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が開放され、前記出力信号の電力を動作として用いられる最小の値としたときのアウトフェージング角をθboとしたとき、動作周波数帯域の中心周波数における位相に換算した電気長が180°-θboである第1オープンスタブと、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が開放され、前記中心周波数における位相に換算した電気長が+θboである第2オープンスタブと、を備えるアウトフェージング増幅器を準備する工程と、
前記第1アンプから前記第1ノードを見た第1インピーダンスと前記第2アンプから前記第2ノードを見た第2インピーダンスとが所望の値となるように、前記第1オープンスタブの長さおよび前記第2オープンスタブの長さを調整する工程と、
を備えるアウトフェージング増幅器の製造方法。
【請求項10】
前記調整する工程は、前記第1オープンスタブの電気長と180°-θboとの差が0.5°以上かつ10°以下となり、前記第2オープンスタブの電気長と+θboとの差が0.5°以上かつ10°以下となるように、前記第1オープンスタブの長さおよび前記第2オープンスタブの長さを調整する工程を含む請求項9に記載のアウトフェージング増幅器の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本開示の一実施形態は、第1信号を増幅する第1アンプと、第2信号を増幅する第2アンプと、前記第1アンプが増幅した前記第1信号が入力する第1ノードと、前記第2アンプが増幅した前記第2信号が入力する第2ノードと、前記第1信号と前記第2信号とが合成され、合成された信号を出力信号として出力する第3ノードと、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第1インピーダンス変換器と、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第2インピーダンス変換器と、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が開放され、前記出力信号の電力を動作として用いられる最小の値としたときのアウトフェージング角をθboとしたとき、動作周波数帯域の中心周波数における位相に換算した電気長が180°-θboである第1オープンスタブと、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が開放され、前記中心周波数における位相に換算した電気長が+θboである第2オープンスタブと、を備えるアウトフェージング増幅器を準備する工程と、前記第1アンプから前記第1ノードを見た第1インピーダンスと前記第2アンプから前記第2ノードを見た第2インピーダンスとが所望の値となるように、前記第1オープンスタブの長さおよび前記第2オープンスタブの長さを調整する工程と、を備えるアウトフェージング増幅器の製造方法である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の一実施形態は、第1信号を増幅する第1アンプと、第2信号を増幅する第2アンプと、前記第1アンプが増幅した前記第1信号が入力する第1ノードと、前記第2アンプが増幅した前記第2信号が入力する第2ノードと、前記第1信号と前記第2信号が合成され、合成された信号を出力信号として出力する第3ノードと、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第1インピーダンス変換器と、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第2インピーダンス変換器と、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が開放され、動作周波数帯域の中心周波数における位相に換算した電気長をθ3とし、前記出力信号の電力を動作として用いられる最小の値としたときのアウトフェージング角をθboとしたとき、θ3が180°-θboと+θboのいずれとも異なる第1オープンスタブと、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が開放され、前記中心周波数における位相に換算した電気長をθ4としたとき、θ4が180°-θboと+θboのいずれとも異なる第2オープンスタブと、を備える合成器と、を備えるアウトフェージング増幅器である。これにより、小型化が可能なアウトフェージング増幅器を提供することができる。
(2)上記(1)において、θ3と180°-θboとの差の絶対値は、0.5°以上かつ10°以下であり、θ4と+θboとの差の絶対値は、0.5°以上かつ10°以下であってもよい。これにより、アウトフェージング増幅器の特性を向上できる。
(3)上記(2)において、θ3-(180°-θbo)の符号とθ4-θboの符号とは同じであってもよい。これにより、アウトフェージング増幅器の特性を向上できる。
(4)上記(3)において、θ3-(180°-θbo)とθ2-θboとの差の絶対値は1°以下であってもよい。これにより、アウトフェージング増幅器の特性を向上できる。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記第1インピーダンス変換器は、電気長が前記中心周波数の波長の1/4の第1伝送線路であり、前記第2インピーダンス変換器は、電気長が前記中心周波数の波長の1/4の第2伝送線路であってもよい。これにより、第1伝送線路および第2伝送線路をインピーダンス変換器として機能させることができる。
(6)上記(5)において、前記第1伝送線路、前記第2伝送線路、前記第1オープンスタブおよび前記第2オープンスタブは、誘電体層と、誘電体層上に設けられた導電体パターンにより形成されてもよい。これにより、第1オープンスタブおよび第2オープンスタブの電気長を容易に調整できる。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記第1アンプと前記第1ノードとの間に接続された第1整合回路と、前記第2アンプと前記第2ノードとの間に接続された第2整合回路と、を備えてもよい。これにより、第1ノードおよび第2ノードを見たインピーダンスを第1アンプおよび第2アンプが最適動作するインピーダンスに整合させることができる。
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記出力信号の電力が動作として用いられる最小の値に設定されたとき、前記アウトフェージング増幅器の効率は、θ3=180°-θboかつθ4=+θboと仮定したときの効率より高くてもよい。これにより、アウトフェージング増幅器の特性を向上できる。
(9)本開示の一実施形態は、第1信号を増幅する第1アンプと、第2信号を増幅する第2アンプと、前記第1アンプが増幅した前記第1信号が入力する第1ノードと、前記第2アンプが増幅した前記第2信号が入力する第2ノードと、前記第1信号と前記第2信号とが合成され、合成された信号を出力信号として出力する第3ノードと、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第1インピーダンス変換器と、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続された第2インピーダンス変換器と、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が開放され、前記出力信号の電力を動作として用いられる最小の値としたときのアウトフェージング角をθboとしたとき、動作周波数帯域の中心周波数における位相に換算した電気長が180°-θboである第1オープンスタブと、第1端が前記第2ノードに接続され、第2端が開放され、前記中心周波数における位相に換算した電気長が+θboである第2オープンスタブと、を備えるアウトフェージング増幅器を準備する工程と、前記第1アンプから前記第1ノードを見た第1インピーダンスと前記第2アンプから前記第2ノードを見た第2インピーダンスとが所望の値となるように、前記第1オープンスタブの長さおよび前記第2オープンスタブの長さを調整する工程と、を備えるアウトフェージング増幅器の製造方法である。これにより、小型化可能なアウトフェージング増幅器を製造できる。
(10)上記(9)において、前記調整する工程は、前記第1オープンスタブの電気長と180°-θboとの差が0.5°以上かつ10°以下となり、前記第2オープンスタブの電気長と+θboとの差が0.5°以上かつ10°以下となるように、前記第1オープンスタブの長さおよび前記第2オープンスタブの長さを調整する工程を含んでもよい。これにより、アウトフェージング増幅器の特性を向上できる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
[アウトフェージング動作の説明]
図3および
図4は、実施例1における出力電力のベクトルの模式図である。
図3は、アウトフェージング増幅器100の出力電力Poを最大とするときに相当し、
図4は、アウトフェージング増幅器100の出力電力P
oを最小とするときに相当する。動作において用いられるときの最大の値の出力電力Poを飽和電力と称し電力Psatで表す。動作において用いられるときの最小の値の出力電力Poをバックオフ電力と称し電力Pboで表す。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
アウトフェージング角θaの制御は信号処理器20が行う。例えば、出力電力Poを大きくするとき、信号処理器20は、信号SiaとSibのアウトフェージング角θaを大きくする。出力電力Poを小さくするとき、信号処理器20は、信号SiaとSibのアウトフェージング角θaを小さくする。信号SiaおよびSibのアウトフェージング角θaと、信号SiaおよびSibを増幅した信号SoaおよびSobのアウトフェージング角θaと、はほぼ同じである。よって、信号処理器20が信号SiaとSibのアウトフェージング角θaを変化させることで、アウトフェージング角θaを変化させることができる。このように、信号処理器20は、入力する入力信号Siに基づき、信号SiaとSibとのアウトフェージング角θaを変化させ、アンプ10および11にアウトフェージング角θaを変化させた信号SiaとSibとを出力する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
[比較例2の説明]
図8は、比較例2に係るアウトフェージング増幅器の回路図である。
図8に示すように、比較例2のアウトフェージング増幅器110では、整合回路32とノードN1との間に高調波回路38が接続され、整合回路33とノードN2との間に高調波回路39が設けられている。高調波回路38および高調波回路39は、周波数f0の基本波の高調波(例えば第2高調波または第3高調波)を処理する回路である。高調波回路38および39としては、例えば信号線路にシャント接続され、高調波の周波数で共振する直列共振器である。これにより、高調波回路38および39は、信号線路を伝送される高調波を反射し、高調波が出力端子から出力され効率等のアウトフェージング増幅器110の特性が劣化することを抑制できる。しかしながら、高調波回路38および39を設けると、アウトフェージング増幅器110が大型化してしまう。また、高調波回路38および39を設けると、挿入損失により損失が
増加してしまう。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
比較例2および実施例1ともに、アウトフェージング角θaが角θboのとき基本波におけるインピーダンスZcおよびZdはA=0.9およびφ=160°である。次に、オープンスタブ16の電気長θ3およびオープンスタブ17の電気長θ4を以下とした。比較例2では、電気長θ3を160°、電気長θ4を20°とした。実施例1では、電気長θ3を158°、電気長θ4を18°とした。このように、実施例1では比較例2に比べ、電気長θ3およびθ4を2°短くした。比較例2において、第2高調波におけるアンプ10から整合回路32を見たインピーダンスは、A≒1.0およびφ=160°である。実施例1において、第2高調波におけるアンプ10から整合回路32を見たインピーダンスは、A≒1.0およびφ=163°である。このように、実施例1では比較例2に比べ、第2高調波におけるインピーダンスのφが少し大きくなった。