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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114155
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】電磁比例リリーフ弁
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/16 20060101AFI20240816BHJP
   H01F 7/121 20060101ALI20240816BHJP
   F16K 17/06 20060101ALI20240816BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01F7/16 D
H01F7/16 F
H01F7/16 R
H01F7/16 C
F16K17/06 C
F16K31/06 305J
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019717
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】390017352
【氏名又は名称】仁科工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬淵 学
(72)【発明者】
【氏名】小山 翔悟
【テーマコード(参考)】
3H059
3H106
5E048
【Fターム(参考)】
3H059AA06
3H059BB06
3H059BB22
3H059BB37
3H059CD05
3H059CD11
3H059EE01
3H106DA02
3H106DA13
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD02
3H106EE34
3H106EE35
5E048AA03
5E048AB02
5E048AC08
5E048AD03
(57)【要約】
【課題】小型、軽量化および構造の簡素化が可能で、且つ、作動時の振動を防止してリリーフ圧を高精度に制御可能な電磁比例リリーフ弁を提供する。
【解決手段】本発明に係る電磁比例リリーフ弁1は、流路60が内部に配置されるジョイント40と、通電可能に巻回されたコイル36と、コイル36の軸線方向に沿って移動可能に支持される可動子42と、コイル36の励磁によって可動子42に対して吸引力を発生させる固定子39と、を備え、可動子42は、壁部42Aと底部42Bとを有する有底円筒状に形成されており、内筒部が弾発力を生じさせた状態で付勢部材46が収容される付勢部材収容室42Cとして構成され、底部42Bの内面が付勢部材46の受力部42aとして構成され、底部42Bの外面に弁体部52が一体形成で設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定圧力の液体を通流させる流路の途中に相互に接離する弁体部および弁座部が設けられ、流路内の前記液体の圧力が設定値を超えた場合に前記弁体部を前記弁座部から離反させて前記圧力を解放する作用をなすと共に、前記設定値を可変に調整する電磁比例リリーフ弁であって、
前記流路が内部に配置されるジョイントと、
通電可能に巻回されたコイルと、
前記コイルの軸線方向に沿って移動可能に支持される可動子と、
前記コイルの励磁によって前記可動子に対して吸引力を発生させる固定子と、を備え、
前記可動子は、壁部と底部とを有する有底円筒状に形成されており、内筒部が弾発力を生じさせた状態で付勢部材が収容される付勢部材収容室として構成され、前記底部における前記弁座部と対向しない側の内面が前記付勢部材の受力部として構成され、前記底部における前記弁座部と対向する側の外面に前記弁体部が一体形成で設けられていること
を特徴とする電磁比例リリーフ弁。
【請求項2】
前記可動子は、前記底部の前記内面と前記外面とを連通して前記液体の通流が可能な貫通孔、前記壁部の前記弁座部と対向する側の端面と前記弁座部と対向しない側の端面とを連通して前記液体の通流が可能な貫通孔、もしくは、外周面に設けられて前記壁部の前記弁座部と対向する側の端面と前記弁座部と対向しない側の端面とを連通して前記液体の通流が可能な連通溝、の少なくとも一つを有し、且つ、前記弁体部が、前記底部の前記外面において、前記弁座部に向かって突出する形状に形成されており、前記可動子の前記弁体部を除いた部分の質量が、前記弁体部の質量の30倍以上となるように設定されていること
を特徴とする請求項1記載の電磁比例リリーフ弁。
【請求項3】
先端部で前記付勢部材を押圧して前記弾発力を発生させた状態で前記付勢部材収容室内に保持する保持部材を備え、
前記保持部材は、前記先端部を前記付勢部材収容室の内部に進入させた状態で配置され、進入量を変化させることによって前記弾発力の調整が可能に構成されており、
前記付勢部材は、前記保持部材によって前記付勢部材収容室の内部から外部へ突出しない状態で保持されていること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の電磁比例リリーフ弁。
【請求項4】
前記コイルが巻回される筒状のボビンを備え、
前記弁座部は、前記ボビンの内筒部に嵌設されるジョイントの内筒部によって支持されており、
前記弁体部を有する前記可動子は、前記ボビンの内筒部に嵌設されるジョイントもしくはスリーブに設けられる移動支持部の内筒部にブッシュを介在させて摺動可能に支持されていること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の電磁比例リリーフ弁。
【請求項5】
前記ブッシュの軸方向長さが、前記弁体部の軸方向長さの1.2倍以上となるように設定されていること
を特徴とする請求項4記載の電磁比例リリーフ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁比例リリーフ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトや建設機械等に例示される作業用車両は、油圧ポンプにより加圧・送出される所定圧力の液体(具体例として、「作動油」)によって駆動されるフォークやバケット等の作業装置を備えて構成されている。このような作業装置を駆動する回路においては、上記液体の圧力制御、すなわち、液体の圧力が設定値(以下、「リリーフ圧」と称する場合がある)を超えた場合に、弁を開いて圧力を解放する制御を行うリリーフ弁が適宜、設けられている。
【0003】
リリーフ弁の一例として、比例ソレノイドの推力を変化させることによって、リリーフ圧を可変に調整する電磁比例リリーフ弁が知られている(特許文献1:特開平6-323451号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-323451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に例示される電磁比例リリーフ弁によれば、従来のパイロット切換式リリーフ弁と比較して、パイロット配管や圧力切換用部品を削減できるため、小型、軽量化および構造の簡素化が可能となり、また、製造コストの低減も可能となる。しかしながら、その一方で、作動時に振動(チャタリング)が生じ易いことが、従来より課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、小型、軽量化および構造の簡素化が可能で、且つ、作動時の振動を防止してリリーフ圧を高精度に制御可能な電磁比例リリーフ弁を提供することを目的とする。
【0007】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
開示の電磁比例リリーフ弁は、所定圧力の液体を通流させる流路の途中に相互に接離する弁体部および弁座部が設けられ、流路内の前記液体の圧力が設定値を超えた場合に前記弁体部を前記弁座部から離反させて前記圧力を解放する作用をなすと共に、前記設定値を可変に調整する電磁比例リリーフ弁であって、前記流路が内部に配置されるジョイントと、通電可能に巻回されたコイルと、前記コイルの軸線方向に沿って移動可能に支持される可動子と、前記コイルの励磁によって前記可動子に対して吸引力を発生させる固定子と、を備え、前記可動子は、壁部と底部とを有する有底円筒状に形成されており、内筒部が弾発力を生じさせた状態で付勢部材が収容される付勢部材収容室として構成され、前記底部における前記弁座部と対向しない側の内面が前記付勢部材の受力部として構成され、前記底部における前記弁座部と対向する側の外面に前記弁体部が一体形成で設けられていることを要件とする。
【0009】
また、前記可動子は、前記底部の前記内面と前記外面とを連通して前記液体の通流が可能な貫通孔、前記壁部の前記弁座部と対向する側の端面と前記弁座部と対向しない側の端面とを連通して前記液体の通流が可能な貫通孔、もしくは、外周面に設けられて前記壁部の前記弁座部と対向する側の端面と前記弁座部と対向しない側の端面とを連通して前記液体の通流が可能な連通溝、の少なくとも一つを有し、且つ、前記弁体部が、前記底部の前記外面において、前記弁座部に向かって突出する形状に形成されており、前記可動子の前記弁体部を除いた部分の質量が、前記弁体部の質量の30倍以上となるように設定されていることが好ましい。
【0010】
また、先端部で前記付勢部材を押圧して前記弾発力を発生させた状態で前記付勢部材収容室内に保持する保持部材を備え、前記保持部材は、前記先端部を前記付勢部材収容室の内部に進入させた状態で配置され、進入量を変化させることによって前記弾発力の調整が可能に構成されており、前記付勢部材は、前記保持部材によって前記付勢部材収容室の内部から外部へ突出しない状態で保持されていることが好ましい。
【0011】
また、前記コイルが巻回される筒状のボビンを備え、前記弁座部は、前記ボビンの内筒部に嵌設されるジョイントの内筒部によって支持されており、前記弁体部を有する前記可動子は、前記ボビンの内筒部に嵌設されるジョイントもしくはスリーブに設けられる移動支持部の内筒部にブッシュを介在させて摺動可能に支持されていることが好ましい。
【0012】
また、前記ブッシュの軸方向長さが、前記弁体部の軸方向長さの1.2倍以上となるように設定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
開示の電磁比例リリーフ弁によれば、作動時の振動を防止することが可能となり、変動の無い安定した圧力制御、すなわち、液体の圧力を高精度に制御することが可能となる。さらに、小型、軽量化および構造の簡素化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る電磁比例リリーフ弁が組込まれる回路の構成例を示す回路図である。
図2】本発明の実施形態に係る電磁比例リリーフ弁(プル型)の例を示す正面断面図である。
図3図2におけるIII部拡大図である。
図4】本発明の実施形態に係る電磁比例リリーフ弁(プッシュ型)の例を示す正面断面図である。
図5図4におけるV部拡大図である。
図6】本発明の実施形態に係る電磁比例リリーフ弁の可動子の例を示す側面図である。
図7】本発明の実施形態に係る電磁比例リリーフ弁の可動子の他の例を示す側面図である。
図8】本発明の実施形態に係る電磁比例リリーフ弁の可動子の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電磁比例リリーフ弁が組込まれる回路の構成例を示す回路図(概略図)である。なお、説明の便宜上、図中において矢印により前後の方向を示す場合がある。また、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0016】
本実施形態に係る電磁比例リリーフ弁1は、例えば、作業用車両2の作業装置を駆動する所定圧力の液体(本実施形態では、「作動油」を例として説明する)の回路(油圧回路)に組込まれて、作動油の制御、すなわち、リリーフ圧の設定および変更(可変調整)を行うための装置である。一例として、リリーフ圧は、2~40MPa程度に設定される。以下、作業用車両2として「フォークリフト」を例に挙げて説明する。ただし、電磁比例リリーフ弁1が組込まれる作業用車両の例は、これに限定されるものではなく、回路構成(特に、コントロールバルブ)も以下の例に限定されるものではない。
【0017】
図1に示す回路構成を備えた作業用車両(ここでは、フォークリフト)2は、作動油によって駆動される作業装置として、マスト3およびフォーク4を備えている。また、走行装置および作業装置を駆動する駆動源(エンジンまたは電動モータ)9と、この駆動源9により駆動され、作動油を吐出する油圧ポンプ10と、作動油を貯留するタンク11と、油圧ポンプ10と作業装置との間に配設されたコントロールバルブ12と、フォーク4の操作を行うリフト操作レバー13と、マスト3の操作を行うチルト操作レバー14とを備えている。さらに、リフト操作検出センサ18と、チルト操作検出センサ19と、コントローラ21とを備えている。
【0018】
ここで、作業用車両2には、フォーク4を上下動させるリフトシリンダ6、およびマスト3を傾動させるチルトシリンダ7が設けられている。具体的な作動として、リフトシリンダ6が伸長するとフォーク4が上昇し、リフトシリンダ6が収縮するとフォーク4が下降する。また、チルトシリンダ7が伸長するとマスト3が前傾し、チルトシリンダ7が収縮するとマスト3が後傾する。
【0019】
また、コントロールバルブ12は、リフト用電磁比例制御弁15と、チルト用電磁比例制御弁16と、電磁比例リリーフ弁1とを有している。
【0020】
ここで、リフト用電磁比例制御弁15は、油圧ポンプ10とリフトシリンダ6との間に配設されている。リフト用電磁比例制御弁15は、ソレノイド部に入力される制御電流値に比例して開度が変化することで、油圧ポンプ10からリフトシリンダ6に供給される作動油の流量を制御する。
【0021】
また、チルト用電磁比例制御弁16は、油圧ポンプ10とチルトシリンダ7との間に配設されている。チルト用電磁比例制御弁16は、ソレノイド部に入力される制御電流値に比例して開度が変化することで、油圧ポンプ10からチルトシリンダ7に供給される作動油の流量を制御する。
【0022】
一方、電磁比例リリーフ弁1は、油圧ポンプ10とリフトシリンダ6との間の圧力、もしくは油圧ポンプ10とチルトシリンダ7との間の圧力がリリーフ圧に達すると開く電磁比例方式のリリーフ弁である(詳細の構成については後述する)。電磁比例リリーフ弁1が開くと、メインポート28から供給される作動油がタンクポート29へ送出されて圧力が開放される。これにより、作動油の圧力がリリーフ圧を超えないように制御される。電磁比例リリーフ弁1は、ソレノイド部(後述の比例ソレノイド駆動部30)に入力される制御電流値に比例してリリーフ圧を変化させることができる。
【0023】
次に、リフト操作検出センサ18は、リフト操作レバー13の操作状態(操作方向および操作量)を検出する。チルト操作検出センサ19は、チルト操作レバー14の操作状態(操作方向および操作量)を検出する。
【0024】
また、リフト用制御弁制御部22は、リフト操作検出センサ18により検出されたリフト操作レバー13の操作状態に応じてリフト用電磁比例制御弁15を制御する。具体的には、リフト用制御弁制御部22は、リフト操作レバー13の操作量に対応する制御電流値をリフト用電磁比例制御弁15のソレノイド部に出力する。
【0025】
また、チルト用制御弁制御部23は、チルト操作検出センサ19により検出されたチルト操作レバー14の操作状態に応じてチルト用電磁比例制御弁16を制御する。具体的には、チルト用制御弁制御部23は、チルト操作レバー14の操作量に対応する制御電流値をチルト用電磁比例制御弁16のソレノイド部に出力する。
【0026】
また、リリーフ圧設定部24は、電磁比例リリーフ弁1のリリーフ圧を設定する。また、リリーフ弁制御部25は、リリーフ圧設定部24により設定されたリリーフ圧に応じて電磁比例リリーフ弁1を制御する。具体的に、リリーフ弁制御部25は、上記シリンダを駆動する作動油の圧力の設定値(リリーフ圧)に対応する制御電流値を電磁比例リリーフ弁1の比例ソレノイド駆動部30(後述)に出力する。
【0027】
このような構成により、電磁比例リリーフ弁1は、流路(具体例として、油圧ポンプ10からリフトシリンダ6およびチルトシリンダ7へ至る主流路20)を通流する作動油の圧力が設定されたリリーフ圧に達したときに開弁(後述の分岐流路60を開通)する。このとき、油圧ポンプ10から圧送される作動油が電磁比例リリーフ弁1を通ってタンク11に排出される。
【0028】
前述の通り、電磁比例リリーフ弁においては、作動時、具体的には、作動油の圧力がリリーフ圧に達して弁が開閉する時に振動が生じ易いことが課題となっていた。
【0029】
そこで、本実施形態に係る電磁比例リリーフ弁1は、以下の構成を備えることにより、当該課題に対してその解決を可能としている。
【0030】
先ず、本実施形態に係る電磁比例リリーフ弁1の全体構成について説明する。前述の通り、電磁比例リリーフ弁1は、油圧回路における制御対象となる流路を通流する作動油の圧力を制御するものであるが、動作の違いによって、図2に例示するプル型と、図4に例示するプッシュ型の2種類として構成される。
【0031】
図2図4に示すように、電磁比例リリーフ弁1は、主要部となる比例ソレノイド駆動部30、スリーブ38、ジョイント40を備えて構成されている。一例として、比例ソレノイド駆動部30(具体的には、後述するボビン34)の後端側にスリーブ38が配置され、前端側にジョイント40が配置されている。
【0032】
スリーブ38は、筒状(ここでは、複数の内径、複数の外径を有し、後端部に鍔状部等が設けられた略円筒状)の形状を有している。一例として、スリーブ38は、炭素鋼、快削鋼等の軟磁性材料を用いて形成されている。スリーブ38には、後述の保持部材70が螺設されている。
【0033】
ジョイント40は、筒状(ここでは、複数の内径、複数の外径を有し、外筒部に雄ネジ部等が設けられた略円筒状)の形状を有している。一例として、ジョイント40は、炭素鋼、快削鋼等の軟磁性材料を用いて形成されている。ジョイント40には、作動油が通流する流路60が設けられている。流路60は、油圧ポンプ10からメインポート28を経由して作動装置(本実施形態においては、リフトシリンダ6およびチルトシリンダ7)へ圧送される作動油が通流する流路(主流路)20から分岐する流路(分岐流路)として構成されている。
【0034】
流路60は、一次側であるメインポート28に連通する第1流路60Aと、二次側であるタンクポート29に連通する第2流路60Bと、を備えて構成されている。また、流路60の途中に、具体的には、第1流路60Aと第2流路60Bとの境界部分に、当該流路60を開閉する(すなわち、連通状態・非連通状態に切替える)弁を構成する弁座部51および弁体部52が設けられている。本実施形態において、第1流路60A、第2流路60B、および弁座部51は、ジョイント40内のジョイント内部材40Aに設けられている。一例として、ジョイント内部材40Aは、ジョイント40と別体に形成しているが、一体に形成してもよい。一方、弁体部52は、比例ソレノイド駆動部30の可動子42(後述)に設けられている。
【0035】
次に、比例ソレノイド駆動部30は、ジョイント40の後端部に配設されており、ケース32と、長尺な導体部材を絶縁しつつボビン34に巻回したコイル36と、コイル36の励磁により生じる磁束線を通過させて磁力(吸引力)を発生させる固定子39と、コイル36の励磁により固定子39に発生する磁力(吸引力)に吸引されてコイル36の軸線方向(すなわち、ボビン34に巻回したコイル36の中心軸Sの軸線に沿う方向であり、以下同じ)に沿って移動する可動子42と、を備えている。なお、コイル36の中心軸Sは、設計上、各部材(ケース32、ボビン34、スリーブ38、固定子39、ジョイント40、可動子42、ブッシュ44、付勢部材46、弁座部51、弁体部52、保持部材70)の中心軸と一致する。
【0036】
ケース32は、コイル36、固定子39、および可動子42等を収容する筒状(ここでは円筒状であるが、角筒状も採用し得る)の部材である。一例として、ケース32は、炭素鋼、快削鋼等の軟磁性材料を用いて形成されている。
【0037】
ボビン34は、前後の端部に鍔状部を有する筒状(ここでは、円筒状)の部材である。一例として、ボビン34は、絶縁性金属材料、樹脂材料等を用いて形成されている。
【0038】
コイル36は、絶縁被覆された長尺な導体部材がボビン34に巻回されて、通電・非通電が可能に構成されている。コイル36は、通電状態で励磁状態となり、非通電状態で消磁状態となる。一例として、当該導体部材は、銅合金等を用いて断面が円形、正方形等に形成された線材であるが、テープ材、シート材等(不図示)を用いてもよい。
【0039】
固定子39は、コイル36の励磁(通電)により生じる磁束線を通過させて磁力(吸引力)を発生させ、当該吸引力によって可動子42を吸引する部材である。一例として、固定子39は、炭素鋼、快削鋼等の軟磁性材料を用いて形成されている。
【0040】
図2図3図2におけるIII部拡大図)に示すプル型の電磁比例リリーフ弁1の場合、固定子39は、スリーブ38の前端部に設けられる。本実施形態においては、スリーブ38と固定子39とは、一体に形成されている(すなわち、一部材の材料から切削加工等によって形成される一体構造である)。なお、別体に形成して固定してもよい(不図示)。一方、図4図5図4におけるV部拡大図)に示すプッシュ型の電磁比例リリーフ弁1の場合、固定子39は、ジョイント40の後端部に設けられる。本実施形態においては、ジョイント40と固定子39とは、一体に形成されている(すなわち、一部材の材料から切削加工等によって形成される一体構造である)。なお、別体に形成して固定してもよい(不図示)。
【0041】
可動子42は、コイル36が励磁された際に発生する磁束線が通過し、当該磁束線に起因して生じる固定子39に向かう吸引力によってコイル36の軸線方向に沿って移動する部材である。可動子42は、筒状形状を有する移動支持部41の内筒部41Aにブッシュ44を介して軸線方向に移動可能に支持されている。一例として、可動子42は、炭素鋼、快削鋼等の軟磁性材料を用いて形成されている。また、ブッシュ44は、磁性金属材料(例えば、SPCC、S20C、銅合金等であって、表面に樹脂材料のコーティングがなされていてもよい)を用いて形成されている。なお、厚さは特に限定されるものではなく、薄いシート(フィルム)状の構成であってもよい。
【0042】
図2図3に示すプル型の電磁比例リリーフ弁1の場合、移動支持部41は、ジョイント40の後端部に設けられる。本実施形態においては、ジョイント40と移動支持部41とは、一体に形成されている(すなわち、一部材の材料から切削加工等によって形成される一体構造である)。なお、別体に形成して固定してもよい(不図示)。一方、図4図5に示すプッシュ型の電磁比例リリーフ弁1の場合、移動支持部41は、スリーブ38の前端部に設けられる。本実施形態においては、スリーブ38と移動支持部41とは、一体に形成されている(すなわち、一部材の材料から切削加工等によって形成される一体構造である)。なお、別体に形成して固定してもよい(不図示)。
【0043】
プル型(図2図3)およびプッシュ型(図4図5)のいずれの場合にも、可動子42は、壁部42Aと底部42Bとを有する有底円筒状に形成されており、内筒部42Cは、付勢部材46が収容される付勢部材収容室として構成されている。また、可動子42は、底部42Bにおける弁座部51と対向しない側の内面42aが付勢部材46の受力部(付勢力を受ける部位)として構成され、底部42Bにおける弁座部51と対向する側の外面42bに弁体部52が一体形成で(すなわち可動子42と一部材からなる一体形成によって)設けられている。これによれば、部品点数および組付け工数の削減による製造コスト低減効果が得られる。なお、付勢部材46は、本実施形態のように受力部42aに対して直接係止してもよく、もしくは、間に配置するスペーサ(不図示)等に係止してもよい。
【0044】
前述の通り、弁座部51は、ボビン34の内筒部34Aに嵌設されるジョイント40の内筒部によって支持されている。一方、弁体部52を有する可動子42は、移動支持部41の内筒部41Aにブッシュ44を介在させて摺動可能に支持されている。ここで、移動支持部41は、プル型(図2図3)の場合、ボビン34の内筒部34Aに嵌設されるジョイント40に設けられる。また、プッシュ型(図4図5)の場合、ボビン34の内筒部34Aに嵌設されるスリーブ38に設けられる。これによれば、支持部材(ボビン34の内筒部34A)の共通化によって、弁座部51の中心軸と弁体部52の中心軸とを高精度に一致させることができる。したがって、互いの中心軸同士が僅かにズレてしまうことに起因して作動時(開閉時)に生じる振動を防止することができる。
【0045】
具体的な構成例として、ブッシュ44の軸方向長さが、弁体部52の軸方向長さの1.2倍以上となるように設定されていることが好適である。上記の設定によって、弁体部52が移動する際の直線性を高精度に保つことができ、弁体部52の移動時(すなわち、弁の開閉時)に弁体部52が振動する不具合の発生を防止できる。
【0046】
次に、付勢部材46は、一例として、非磁性金属材料(ステンレス合金等)からなるコイルバネが用いられている。付勢部材46は、その弾発力(付勢力)によって弁体部52を軸線方向に沿って弁座部51へ向かう方向に付勢して、弁体部52と弁座部51とを圧接させる作用をなす。なお、付勢部材46はコイルバネに限定されるものではなく、その他のバネ(空気バネ等)を用いてもよい(不図示)。
【0047】
本実施形態においては、付勢部材46を先端部70aで押圧して弾発力(付勢力)を発生させた状態で、当該付勢部材46を付勢部材収容室42C内に保持する保持部材70を備えている。すなわち、保持部材70(先端部70a)と受力部42aとで付勢部材46を挟持することによって、当該付勢部材46に弾発力を発生させる構成である。保持部材70は、スリーブ38の内筒部に対して回転可能に螺合されており、先端部70aを付勢部材収容室42Cの内部に進入させた状態で配置されている。
【0048】
したがって、電磁比例リリーフ弁1におけるリリーフ圧の初期設定値は、付勢部材46の弾発力によって設定され、且つ、保持部材70を回転させることによって(具体的には、先端部70aの進入量を変化させることによって)、当該弾発力の調整が可能な構成となっている。これによれば、付勢部材46毎の個体差の影響を解消して正確な圧力設定調整を行うことができる。
【0049】
さらに、付勢部材46は、保持部材70によって付勢部材収容室42Cの内部から外部へ突出しない状態(すなわち、第2端面42dよりも底部42B側に収容されている状態)で保持されている。これによれば、特に、電磁比例リリーフ弁1の軸方向寸法を小さく(短く)構成することができる。
【0050】
上記の構成を備える電磁比例リリーフ弁1は以下の作用をなす。コイル36を励磁した状態において、固定子39による可動子42の吸引力が生じる。したがって、可動子42には、吸引力による推進力(移動しようとする力)が生じる。その結果、付勢部材46の弾発力(付勢力)を変化(加重もしくは減殺)させる作用が生じる。一方、コイル36を消磁した状態において、固定子39による可動子42の吸引力が生じない。したがって、可動子42には、吸引力による推進力(移動しようとする力)が生じない。その結果、付勢部材46の弾発力(付勢力)を変化させる作用が生じない。本実施形態の構成は、いわゆる比例ソレノイドであるため、前述の制御電流値すなわちコイル36を励磁する(励磁強度を設定する)電流値を変化(加重もしくは減殺)させることによって、固定子39による可動子42の吸引力、すなわち、可動子42の推進力を変化させることができる(通常、推進力の変化量は電流値に比例する)。その結果、付勢部材46の弾発力(付勢力)を変化(加重もしくは減殺)させて、弁体部52と弁座部51とを圧接させる力を変化させることができる。すなわち、電流値を変化させることによって、作動油のリリーフ圧を可変に調整(設計範囲内における任意の値に設定)することができる。
【0051】
具体的に、プル型(図2図3)の電磁比例リリーフ弁1の場合、コイル36を励磁した状態において、固定子39の吸引力によって、可動子42に吸引方向(この場合、軸線方向に沿って後方へ向かう方向)への推進力が発生する。この推進力は、付勢部材46の弾発力(付勢力)に対して逆方向に作用する。例えば、コイル36の電流値が増加すると、吸引力が増加する。そのため、付勢部材46の弾発力(付勢力)と逆方向に作用する(すなわち減殺する)可動子42の推進力が増加する。したがって、リリーフ圧の設定値を下げることができる。すなわち、コイル36の電流値に比例して、リリーフ圧の設定値は低下する。なお、電流値がゼロのとき、リリーフ圧は付勢部材46の弾発力(付勢力)のみによって設定される初期値となる。
【0052】
一方、プッシュ型(図4図5)の電磁比例リリーフ弁1の場合、コイル36を励磁した状態において、固定子39の吸引力によって、可動子42に吸引方向(この場合、軸線方向に沿って前方へ向かう方向)への推進力が発生する。この推進力は、付勢部材46の弾発力(付勢力)に対して同方向に作用する。例えば、コイル36の電流値が増加すると、吸引力が増加する。そのため、付勢部材46の弾発力(付勢力)と同方向に作用する(すなわち加重する)可動子42の推進力が増加する。したがって、リリーフ圧の設定値を上げることができる。すなわち、コイル36の電流値に比例して、リリーフ圧の設定値は上昇する。なお、電流値がゼロのとき、リリーフ圧は付勢部材46の弾発力(付勢力)のみによって設定される初期値となる。
【0053】
本実施形態に係る電磁比例リリーフ弁1によれば、プル型(図2図3)およびプッシュ型(図4図5)のいずれの場合にも、作動時(弁の開閉時)に弁体部52が振動する不具合の発生を防止できる。その理由として、本願発明者らの研究によれば、弁体部52が可動子42と一体形成された構成が大きく寄与していると考えられる。具体的には、従来の電磁比例リリーフ弁と比較して、弁体部52として作用する構成の質量を極端に(大幅に)増加させたことによって、振動が抑制される固有振動数帯に収まる構成が実現されたためと考えられる。
【0054】
具体的な構成例として、可動子42は、後述する所定の貫通孔58が形成された状態において、当該可動子42における弁体部52を除いた部分の質量が、弁体部52の質量の30倍以上(より好ましくは50倍以上)となるように設定されていることが好適である。本願発明者らの研究によれば、上記の設定によって、弁体部52が振動する不具合の発生防止効果が得られることが検証されている。
【0055】
また、プル型(図2図3)およびプッシュ型(図4図5)のいずれの場合にも適用し得る構成例として、可動子42は、底部42Bの内面42aと外面42bとを連通して作動油の通流が可能で、周方向に均等間隔で複数(一例として、四つ)設けられた貫通孔58(第1貫通孔58A)を有する構成が好適である。また、可動子42は、壁部42Aの弁座部51と対向する側の端面(第1端面)42cと弁座部51と対向しない側の端面(第2端面)42dとを連通して作動油の通流が可能で、周方向に均等間隔で複数(一例として、四つ)設けられた貫通孔58(第2貫通孔58B)を有する構成が好適である。具体的に、貫通孔58として、図3図6図3に示す可動子42の側面図)に示すように第1貫通孔58Aおよび第2貫通孔58Bの両方を備える構成としてもよく、図5図7図5に示す可動子42の側面図)に示すように、一方(第2貫通孔58B)を省略する構成としてもよい。図示しないが、第1貫通孔58Aを省略する構成としてもよい。なお、第1貫通孔58A、第2貫通孔58Bの設定数は上記に限定されるものではない。
【0056】
この構成によれば、可動子42における前後の差圧(すなわち、前面(底部42Bの外面42bおよび壁部42Aの端面42cを有する面)側に作用する作動油の圧力と、後面(底部42Bの内面42aおよび壁部42Aの端面42dを有する面)側に作用する作動油の圧力との差)が生じないようにすることができる。したがって、差圧に起因して動作が不安定になることを防止することができるため、リリーフ圧をきわめて正確に制御することができる、なお、変形例として、上記の貫通孔58を備える構成に代えて(もしくは当該構成と共に)、可動子42の外周面において前後方向に連通する(具体的には、第1端面42cと第2端面42dとを連通する)連通溝59を設ける構成(図8参照)としても、同様の効果を得ることができる。
【0057】
以上説明した通り、開示の電磁比例リリーフ弁によれば、作動時の振動を防止することが可能となり、変動の無い安定した圧力制御、すなわち、作動油に例示される液体のリリーフ圧を高精度に制御することが可能となる。さらに、小型、軽量化および構造の簡素化が可能となる。
【0058】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。特に電磁比例リリーフ弁が組込まれる対象として、作業用車両において作業装置を駆動する油圧回路を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
1 電磁比例リリーフ弁
30 比例ソレノイド駆動部
38 スリーブ
39 固定子
40 ジョイント
42 可動子
46 付勢部材
51 弁座部
52 弁体部
60 流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8