(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114157
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ドライブシャフト組付構造
(51)【国際特許分類】
B60B 35/14 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
B60B35/14 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019719
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】寺田 純也
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 丈博
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ドライブシャフトの組み付け作業に際して、中間軸と、デファレンシャル装置との接続に用いられる継手部材を構成する構成部材のフランジ部同士を連結する際に、構成部材が回動しないように保持可能なドライブシャフト組付構造の提供を目的とした。
【解決手段】ドライブシャフト組付構造10は、第一中間軸12の一端側に継手部材20を介してデファレンシャル装置1が連結されるものであって、継手部材20が、デファレンシャル装置1に対して挿入されるシャフト部22と、第一中間軸12が挿入される中間軸挿入部24と、を有し、シャフト部22及び中間軸挿入部24が、シャフト部22が備える第一フランジ部22b、及び中間軸挿入部24が備える第二フランジ部24bを介して第一中間軸12の挿入方向に連結されたものであり、中間軸挿入部24が、周部に少なくとも二つの平面部24dを備えたものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間軸の一端側に継手部材を介してデファレンシャル装置が連結されるドライブシャフト組付構造であって、
前記継手部材が、
デファレンシャル装置に対して挿入されるシャフト部と、
前記中間軸が挿入される中間軸挿入部と、
を有し、
前記シャフト部及び前記中間軸挿入部が、前記シャフト部が備える第一フランジ部、及び前記中間軸挿入部が備える第二フランジ部を介して前記中間軸の挿入方向に連結されたものであり、
前記中間軸挿入部の周部に、前記中間軸挿入部の軸線方向に対して交差する方向に拡がる平面部を少なくとも二つ備えていること、
を特徴とするドライブシャフト組付構造。
【請求項2】
前記中間軸挿入部の外周部に、前記中間軸挿入部の径方向内側に向けて凹状に形成された溝部を有し、
前記平面部が、前記溝部に形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載のドライブシャフト組付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブシャフト組付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているような車両用ドライブシャフト構造が提供されている。特許文献1の車両用ドライブシャフト構造は、中間軸の一端部に、ディファレンシャル装置に駆動連結されたデフ側の等速自在継手が連結され、かつ中間軸の他端部に、車輪に駆動連結された車輪側の等速自在継手が連結されているドライブシャフトを備えており、ディファレンシャル装置内の潤滑油を、デフ側および車輪側の等速自在継手の内部空間部の少なくとも一方に流入可能とする油路を備えており、前記潤滑油が可動連結部の少なくとも一方の潤滑に用いられるものとされている。
【0003】
また、特許文献2に開示されているドライブシャフトのように、継手のシャフト部と、転動体のケーシング部とを分割した構成とし、それぞれに設けたフランジ部同士を締結して連結するものが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-11786号公報
【特許文献2】実開昭58-52331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本発明者らは、特許文献2に開示されているドライブシャフトのような構成を備えたドライブシャフト組付構造について検討した。その結果、特許文献2に開示されているような構成とした場合には、フランジ部同士の連結に際してドライブシャフトが回転してしまい、必要な締結力を得ることができない可能性があるとの知見が得られた。その結果、ドライブシャフトの組み付け作業に際して、ドライブシャフトを構成する中間軸と、デファレンシャル装置との接続に用いられる継手部材について、継手部材を構成する第一の構成部材及び第二の構成部材がそれぞれ備えているフランジ部同士を連結して使用するものとした場合には、連結作業時に構成部材が回動しないように保持できる構成であることが好ましいとの知見が得られた。
【0006】
かかる知見に基づき、本発明は、ドライブシャフトの組み付け作業に際して、ドライブシャフトを構成する中間軸と、デファレンシャル装置との接続に用いられる継手部材について、継手部材を構成する構成部材が備えるフランジ部同士を連結する際に、構成部材が回動しないように保持可能なドライブシャフト組付構造の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明のドライブシャフト組付構造は、中間軸の一端側に継手部材を介してデファレンシャル装置が連結されるものであって、前記継手部材が、デファレンシャル装置に対して挿入されるシャフト部と、前記中間軸が挿入される中間軸挿入部と、を有し、前記シャフト部及び前記中間軸挿入部が、前記シャフト部が備える第一フランジ部、及び前記中間軸挿入部が備える第二フランジ部を介して前記中間軸の挿入方向に連結されたものであり、前記中間軸挿入部の周部に、前記中間軸挿入部の軸線方向に対して交差する方向に拡がる平面部を少なくとも二つ備えていること、を特徴とするものである。
【0008】
本発明のドライブシャフト組付構造は、中間軸の一端側にデファレンシャル装置を連結する際に用いられる継手部材が、デファレンシャル装置に対して挿入されるシャフト部と、中間軸が挿入される中間軸挿入部とを備え、両者を連結したものとされている。本発明において用いられる継手部材は、中間軸挿入部の周部に、少なくとも二つの平面部を備えたものとされている。そのため、本発明のドライブシャフト組付構造は、ドライブシャフトの組み付け作業に際して、中間軸挿入部に設けられた平面部に対して工具や治具を接触させることにより、中間軸挿入部が回動しないように保持した状態において、デファレンシャル装置に対して挿入されたシャフト部が備える第一フランジ部と、中間軸挿入部が備える第二フランジ部とを連結することができる。従って、本発明のドライブシャフト組付構造は、継手部材を構成するシャフト部と中間軸挿入部との連結を容易かつ強固に行うことができる。
【0009】
(2)本発明のドライブシャフト組付構造は、前記中間軸挿入部の外周部に、前記中間軸挿入部の径方向内側に向けて凹状に形成された溝部を有し、前記平面部が、前記溝部に形成されていること、を特徴とするものであると良い。
【0010】
本発明のドライブシャフト組付構造は、上記(2)のような構成とすることにより、中間軸挿入部に設けられた平面部に対して接触させた工具や治具が中間軸挿入部の軸線方向に位置ズレするのを抑制できる。
【0011】
(3)本発明のドライブシャフト組付構造は、前記溝部が、前記中間軸の軸線方向に対して交差する方向に荷重を作用させるための他部材を係合させるために設けられたものであること、を特徴とするものであると良い。
【0012】
本発明のドライブシャフト組付構造は、上記(3)のような構成とすることにより、他部材の係合用に設けられた溝部を、ドライブシャフトの組み付け作業時に中間軸挿入部が回動しないように保持するためにも活用できる。
【0013】
(4)本発明の前記中間軸挿入部は、前記溝部が設けられた部分において、前記中間軸挿入部の軸線方向から見て多角形状の断面形状となるように形成されていること、を特徴とするものであると良い。
【0014】
本発明のドライブシャフト組付構造は、上記(4)のような構成とすることにより、溝部が設けられた部分において多角形状の断面形状となるように形成された部分を構成する面に対して工具や治具を接触させることにより、中間軸挿入部が回動しないように保持した状態において、第一フランジ部と第二フランジ部とを連結する作業を行える。
【0015】
(5)本発明のドライブシャフト組付構造において、前記中間軸挿入部は、前記中間軸挿入部の軸線方向から見て多角形状の断面形状となるように形成されており、前記多角形状の断面形状となるように形成された部分を構成する面のうち半数以上が、前記中間軸挿入部の外周面よりも径方向内側に向けて凹状に形成された部分に形成されていること、を特徴とするものであると良い。
【0016】
本発明のドライブシャフト組付構造は、上記(5)のような構成とすることにより、溝部が設けられた部分において多角形状に形成された部分を構成する面のうち、中間軸挿入部の外周面よりも径方向内側に向けて凹状に形成された部分に形成された部分に形成された面に対して工具や治具を接触させることにより、中間軸挿入部が回動しないように保持しつつ、工具や治具が中間軸挿入部の軸線方向に位置ズレするのを抑制した状態において、第一フランジ部と第二フランジ部とを連結する作業を行える。また、前述した多角形状の断面形状となるように形成された部分を構成する面の半数以上が凹状に形成された部分に設けられていることから、凹状に形成された部分の内部において、複数の面に対して工具や治具を接触させることができる。そのため、本発明のドライブシャフト組付構造は、上述した(5)のような構成とすることにより、工具や治具が中間軸挿入部の軸線方向に位置ズレするのをより一層確実に抑制しつつ、中間軸挿入部が回動しないようにしっかりと保持できる。
【0017】
(6)本発明のドライブシャフト組付構造は、前記第一フランジ部、及び前記第二フランジ部を面接触させつつ、前記シャフト部及び前記中間軸挿入部の連結方向に向けて挿通されたボルトによって前記第一フランジ部、及び第二フランジ部が連結されていること、を特徴とするものであると良い。
【0018】
本発明のドライブシャフト組付構造は、上記(6)のような構成とすることにより、第一フランジ部及び第二フランジ部をボルトを用いて容易かつ確実に連結することができる。
【0019】
(7)本発明の車両は、中間軸とデファレンシャル装置とを連結したドライブシャフト組付構造を備えた車両であって、前記デファレンシャル装置に対して一方側に接続される第一の中間軸、前記デファレンシャル装置に対して他方側に接続される第二の中間軸のうち一方が、上述した本発明のドライブシャフト組付構造により組み付けられており、前記第一の中間軸及び前記第二の中間軸のうち他方が、接続部材を介して前記デファレンシャル装置に対して接続されており、前記接続部材が、前記デファレンシャル装置に対して挿入される部分、及び前記中間軸が挿入される部分が分離不能に形成されたものであること、を特徴とするものである。
【0020】
本発明の車両は、上記(7)のような構成とすることにより、第一の中間軸及び第二の中間軸のうち一方側の中間軸を上述したドライブシャフト組付構造をなす継手部材によってデファレンシャル装置に対して連結しつつ、他方側の中間軸については、デファレンシャル装置に対して挿入される部分、及び中間軸が挿入される部分が分離不能な接続部材を用いて接続することができる。そのため、本発明の車両は、前述した他方側の中間軸について、デファレンシャル装置に対して挿入される部分と、中間軸が挿入される部分とを連結する作業を行うことなくデファレンシャル装置に対して取り付けることができる。また、本発明の車両は、前述した一方側の中間軸について、上述したようにシャフト部と中間軸挿入部とを連結するタイプの継手部材によってデファレンシャル装置に対して取り付けるため、一方側の中間軸の取り付けのために当該中間軸の軸線方向にスペース的に余裕がない状態でも取り付けることができる。従って、本発明の車両は、先ず前述した他方側の中間軸について接続部材を用いて接続することにより、中間軸の軸線方向にスペース的に余裕がない状態になった状態においても、前述した一方側の中間軸を継手部材によってデファレンシャル装置に対して取り付けることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上述した課題を解消したドライブシャフト組付構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両について、ドライブシャフト組付構造を備えた箇所を拡大した説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るドライブシャフト組付構造を示す正面図である。
【
図3】(a),(b)はそれぞれ、
図2に係るドライブシャフト組付構造に用いられる継手部材を構成する中間軸挿入部を示す正面図、及び側面図である。
【
図4】(a),(b)はそれぞれ変形例に係る中間軸挿入部を示す正面図、及び側面図である。
【
図5】変形例に係るドライブシャフト組付構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係るドライブシャフト組付構造10、及びこれを採用した車両Vについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、車両Vは、デファレンシャル装置1(差動歯車装置)及び車輪2A,2Bを、それぞれドライブシャフトD1,D2を用いて駆動連結するように組み付けたものである。
【0025】
ドライブシャフトD1は、第一中間軸12を有し、第一中間軸12の一端側においてデファレンシャル装置1に連結され、第一中間軸12の他端側において車輪2Aに対して連結されている。第一中間軸12及びデファレンシャル装置1は、継手部材20を介して連結され、これによりドライブシャフト組付構造10が構成されている。また、第一中間軸12及び車輪2Aは、自在継手30を介して接続されている。
【0026】
ドライブシャフトD2は、第二中間軸14を有し、第二中間軸14の一端側においてデファレンシャル装置1に連結され、第二中間軸14の他端側において車輪2Bに対して連結されている。第二中間軸14及びデファレンシャル装置1は、接続部材50を介して連結されている。また、第二中間軸14及び車輪2Bは、自在継手60を介して接続されている。
【0027】
図2に示すように、継手部材20は、シャフト部22、及び中間軸挿入部24を備えている。継手部材20は、シャフト部22及び中間軸挿入部24が別部材とされており、ドライブシャフトD1の組み付けに際してボルト26によって連結することにより一体化できるものとされている。
【0028】
シャフト部22は、ドライブシャフトD1の組み付けに際して、デファレンシャル装置1に対して挿入される部材である。シャフト部22は、挿入部22a、及び第一フランジ部22bを有する。また、挿入部22aの軸線方向中間部には、中間フランジ部22cが設けられている。
【0029】
挿入部22aは、筒状あるいは軸状に形成されている。挿入部22aの軸線方向中間部には、中間フランジ部22cが設けられている。第一フランジ部22bは、挿入部22aの基端部において挿入部22aの軸線方向に対して交差する方向(径方向)に張り出したものとされている。第一フランジ部22bには、ボルト挿通孔22eが設けられている。ボルト挿通孔22eは、挿入部22aの周方向に複数(本実施形態では3つ)、挿入部22aの周方向に略均等に設けられている。
【0030】
図3に示すように、中間軸挿入部24は、筒状部24a、第二フランジ部24b、溝部24c、及び平面部24dを具備している。中間軸挿入部24は、溝部24cが設けられた部分において、軸線方向から見て多角形状の断面形状となるように形成されている。
【0031】
筒状部24aは、第一中間軸12が挿入される部分であり、筒状に形成されている。第二フランジ部24bは、第二フランジ部24bの一端側において、第二フランジ部24bの軸線方向に対して交差する方向(径方向)に張り出したものとされている。第二フランジ部24bは、筒状部24aの周方向に略均等に張り出した鍔状のものとすることが可能であるが、本実施形態では、筒状部24aの周方向の複数箇所(図示例では3箇所)において、筒状部24aの径方向に張り出した片状の部分(フランジ片24f)によって構成されている。フランジ片24fは、筒状部24aの周方向に略均等に設けられている。また、第二フランジ部24bには、ボルト挿通孔24eが設けられている。ボルト挿通孔24eは、第二フランジ部24bの周方向に複数(本実施形態では3つ)、第二フランジ部24bの周方向に略均等に設けられている。
【0032】
溝部24cは、中間軸挿入部24の径方向内側に向けて凹状に形成された溝である。溝部24cは、筒状部24aの軸線方向中間部において、中間軸挿入部24の周方向に環状に形成されている。溝部24cは、中間軸挿入部24の周方向一部にのみ設けたものとすることも可能であるが、本実施形態では中間軸挿入部24の全周に亘って設けられている。溝部24cは、第一中間軸12(ドライブシャフトD1)の組み付けに際して、第一中間軸12の軸線方向に対して交差する方向に荷重を作用させるための他部材を係合させるために設けられたものである。
【0033】
具体的には、本実施形態の継手部材20は、先端にスナップリング(図示せず)を備えており、デファレンシャル装置1への挿入後にスナップリングが開くことによりドライブシャフトD1の抜けを抑制できるものとされている。前述のスナップリングは、ドライブシャフトD1の組み付けに際して開いた状態になっているか否かを目視で確認することが困難な位置に設けられている。そのため、継手部材20は、ドライブシャフトD1の組み付け作業を行った後に、溝部24cに対して工具や治具等の他部材を係合させた状態において、他部材を介して所定の荷重でドライブシャフトD1(第一中間軸12)の軸線方向に対して交差する方向に荷重を作用させることにより、スナップリングによるドライブシャフトD1の抜け抑制が確実になされているのかを確認する作業(ダメ押し作業)を行うものとされている。本実施形態では、溝部24cが、ダメ押し作業において工具や治具等からなる他部材を係合させるための溝(ダメ押し溝)として設けられている。
【0034】
平面部24dは、中間軸挿入部24の周方向に少なくとも二つ(二面)設けられている。平面部24dは、中間軸挿入部24を軸線方向から見た状態において多角形状の断面形状となるように設けられている。本実施形態では、平面部24dは、中間軸挿入部24の周方向に六つ(六面)設けられている。これにより、平面部24dは、中間軸挿入部24を軸線方向から見た状態において六角形状となるように設けられている。また、平面部24dは、溝部24cに設けられている。これにより、複数設けられた平面部24dのうち半数以上が溝部24cに形成されている。
【0035】
継手部材20は、上述したシャフト部22が備える第一フランジ部22b、及び中間軸挿入部24が備える第二フランジ部24bを面接触させつつ、ボルト挿通孔22e,24eに亘ってボルト26を挿通して第一フランジ部22b及び第二フランジ部24bを連結することができる。
【0036】
デファレンシャル装置1に対するドライブシャフトD1(第一中間軸12)の連結において、上述したような構成の継手部材20が用いられているのに対し、デファレンシャル装置1に対するドライブシャフトD2(第二中間軸14)の連結においては、接続部材50が用いられている。接続部材50は、継手部材20のシャフト部22と同様にデファレンシャル装置1に対して挿入して接続される部分(挿入部52)と、継手部材20の中間軸挿入部24と同様に第二中間軸14が挿入される部分(被挿入部54)とを有する。継手部材20がシャフト部22及び中間軸挿入部24を別部材とし、両者をボルト26で連結するものであるのに対し、接続部材50は挿入部52及び被挿入部54が一体化され、分離不能に形成されたものとされている。
【0037】
車両Vにおいてデファレンシャル装置1及び車輪2A,2Bの間にドライブシャフトD1,D2を組み付ける際には、先ず車輪2A,2B側に対して自在継手30,60を介してドライブシャフトD1,D2の第一中間軸12及び第二中間軸14を連結させる。その後、ドライブシャフトD2をなす第二中間軸14について、デファレンシャル装置1側となる端部を接続部材50の被挿入部54に挿入すると共に、挿入部52をデファレンシャル装置1に対して挿入して接続する。これにより、デファレンシャル装置1と車輪2Bとの間へのドライブシャフトD2の組み付けが完了する。
【0038】
上述したようにしてドライブシャフトD2の組み付けが完了した後、ドライブシャフトD1をなす第一中間軸12のデファレンシャル装置1側となる端部を、継手部材20をなす中間軸挿入部24の筒状部24aに挿入する。一方、継手部材20をなすシャフト部22については、挿入部22aをデファレンシャル装置1に対して挿入して連結する。このようにして、デファレンシャル装置1及び第一中間軸12に対してシャフト部22及び中間軸挿入部24を装着した後、第一中間軸12の中間軸挿入部24側の端部を車両Vの上下方向(例えば下方から上方)に移動させる。これにより、第一中間軸12に取り付けられている中間軸挿入部24の第二フランジ部24bを、デファレンシャル装置1に取り付けられているシャフト部22の第一フランジ部22bに沿って移動させる。その後、第一フランジ部22bのボルト挿通孔22eに予め組み付けられているボルト26を、第二フランジ部24bに設けられたボルト挿通孔24eに挿通することにより、第一フランジ部22bと24bとを連結する。これにより、ドライブシャフト組付構造10が構成され、ドライブシャフトD1の組み付けが完了する。
【0039】
≪作用効果について≫
上述した本実施形態のドライブシャフト組付構造10、及びこれを採用した車両Vは、以下の(a)~(g)のような特徴的構成を備えている。これにより、ドライブシャフト組付構造10及び車両Vは、以下に記載のような特有の効果を奏することができる。
【0040】
(a)本実施形態のドライブシャフト組付構造10は、第一中間軸12の一端側に継手部材20を介してデファレンシャル装置1が連結されるものであって、継手部材20が、デファレンシャル装置1に対して挿入されるシャフト部22と、第一中間軸12が挿入される中間軸挿入部24と、を有し、シャフト部22及び中間軸挿入部24が、シャフト部22が備える第一フランジ部22b、及び中間軸挿入部24が備える第二フランジ部24bを介して第一中間軸12の挿入方向に連結されたものであり、中間軸挿入部24の周部に、中間軸挿入部24の軸線方向に対して交差する方向に拡がる平面部24dを少なくとも二つ備えたものである。
【0041】
本実施形態のドライブシャフト組付構造10は、第一中間軸12の一端側にデファレンシャル装置1を連結する際に用いられる継手部材20が、デファレンシャル装置1に対して挿入されるシャフト部22と、第一中間軸12が挿入される中間軸挿入部24とを備え、両者を連結したものとされている。本実施形態において用いられる継手部材20は、中間軸挿入部24が、周部に少なくとも二つの平面部24dを備えたものとされている。そのため、本実施形態のドライブシャフト組付構造10は、ドライブシャフトD1の組み付け作業に際して、中間軸挿入部24に設けられた平面部24dに対して工具や治具を接触させることにより、中間軸挿入部24が回動しないように保持した状態において、デファレンシャル装置1に対して挿入されたシャフト部22が備える第一フランジ部22bと、中間軸挿入部24が備える第二フランジ部24bとを連結することができる。従って、本実施形態のドライブシャフト組付構造10は、継手部材20を構成するシャフト部22と中間軸挿入部24との連結を容易かつ強固に行うことができる。
【0042】
(b)本実施形態のドライブシャフト組付構造10は、中間軸挿入部24の外周部に、中間軸挿入部24の径方向内側に向けて凹状に形成された溝部24cを有し、平面部24dが、溝部24cに形成されたものである。
【0043】
本実施形態のドライブシャフト組付構造10は、上記(b)のような構成とすることにより、中間軸挿入部24に設けられた平面部24dに対して接触させた工具や治具が中間軸挿入部24の軸線方向に位置ズレするのを抑制できる。
【0044】
(c)本実施形態のドライブシャフト組付構造10は、溝部24cが、第一中間軸12の軸線方向に対して交差する方向に荷重を作用させるための他部材を係合させるために設けられたものである。
【0045】
本実施形態のドライブシャフト組付構造10は、上記(c)のような構成とすることにより、他部材の係合用に設けられた溝部24cを、ドライブシャフトD1の組み付け作業時に中間軸挿入部24が回動しないように保持するためにも活用できる。
【0046】
(d)本実施形態の中間軸挿入部24は、溝部24cが設けられた部分において、中間軸挿入部24の軸線方向から見て多角形状の断面形状となるように形成されたものである。
【0047】
本実施形態のドライブシャフト組付構造10は、上記(d)のような構成とすることにより、溝部24cが設けられた部分において多角形状の断面形状となるように形成された部分を構成する面に対して工具や治具を接触させることにより、中間軸挿入部24が回動しないように保持した状態において、第一フランジ部22bと第二フランジ部24bとを連結する作業を行える。
【0048】
(e)本実施形態のドライブシャフト組付構造10において、中間軸挿入部24は、中間軸挿入部24の軸線方向から見て多角形状の断面形状となるように形成されており、多角形状の断面形状となるように形成された部分を構成する面のうち半数以上が、中間軸挿入部24の外周面よりも径方向内側に向けて凹状に形成された部分に形成されたものである。
【0049】
本実施形態のドライブシャフト組付構造10は、上記(e)のような構成とすることにより、溝部24cが設けられた部分において多角形状に形成された部分を構成する面のうち、中間軸挿入部24の外周面よりも径方向内側に向けて凹状に形成された部分に形成された部分に形成された面に対して工具や治具を接触させることにより、中間軸挿入部24が回動しないように保持しつつ、工具や治具が中間軸挿入部24の軸線方向に位置ズレするのを抑制した状態において、第一フランジ部22bと第二フランジ部24bとを連結する作業を行える。また、前述した多角形状の断面形状となるように形成された部分を構成する面の半数以上が凹状に形成された部分に設けられていることから、凹状に形成された部分の内部において、複数の面に対して工具や治具を接触させることができる。そのため、本実施形態のドライブシャフト組付構造10は、上述した(e)のような構成とすることにより、工具や治具が中間軸挿入部24の軸線方向に位置ズレするのをより一層確実に抑制しつつ、中間軸挿入部24が回動しないようにしっかりと保持できる。
【0050】
(f)本実施形態のドライブシャフト組付構造10は、第一フランジ部22b、及び第二フランジ部24bを面接触させつつ、シャフト部22及び中間軸挿入部24の連結方向に向けて挿通されたボルト26によって第一フランジ部22b、及び第二フランジ部24bが連結されたものである。
【0051】
本実施形態のドライブシャフト組付構造10は、上記(f)のような構成とすることにより、第一フランジ部22b及び第二フランジ部24bをボルト26を用いて容易かつ確実に連結することができる。
【0052】
(g)本実施形態の車両Vは、第一中間軸12とデファレンシャル装置1とを連結したドライブシャフト組付構造10を備えた車両Vであって、デファレンシャル装置1に対して一方側に接続される第一中間軸12、デファレンシャル装置1に対して他方側に接続される第二中間軸14のうち一方が、上述した本実施形態のドライブシャフト組付構造10により組み付けられており、第一中間軸12及び第二中間軸14のうち他方が、接続部材50を介してデファレンシャル装置1に対して接続されており、接続部材50が、デファレンシャル装置1に対して挿入される部分、及び第一中間軸12が挿入される部分が分離不能に形成されたものである。
【0053】
本実施形態の車両Vは、上記(g)のような構成とすることにより、第一中間軸12及び第二中間軸14のうち一方側の第一中間軸12を上述したドライブシャフト組付構造10をなす継手部材20によってデファレンシャル装置1に対して連結しつつ、他方側の第一中間軸12については、デファレンシャル装置1に対して挿入される部分、及び第一中間軸12が挿入される部分が分離不能な接続部材50を用いて接続することができる。そのため、本実施形態の車両Vは、前述した他方側の第一中間軸12について、デファレンシャル装置1に対して挿入される部分と、第一中間軸12が挿入される部分とを連結する作業を行うことなくデファレンシャル装置1に対して取り付けることができる。また、本実施形態の車両Vは、前述した一方側の第一中間軸12について、上述したようにシャフト部22と中間軸挿入部24とを連結するタイプの継手部材20によってデファレンシャル装置1に対して取り付けるため、一方側の第一中間軸12の取り付けのために当該第一中間軸12の軸線方向にスペース的に余裕がない状態でも取り付けることができる。従って、本実施形態の車両Vは、先ず前述した他方側の第一中間軸12について接続部材50を用いて接続することにより、第一中間軸12の軸線方向にスペース的に余裕がない状態になった状態においても、前述した一方側の第一中間軸12を継手部材20によってデファレンシャル装置1に対して取り付けることができる。
【0054】
≪変形例≫
上記実施形態において例示したドライブシャフト組付構造10や車両Vは、本発明の一例を示したものに過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、例えば上述した(a)~(g)に係る構成を上記実施形態において例示したものとは異なるものとしたり、(a)~(g)に含まれる構成に加えて、あるいは(a)~(g)に含まれる構成に代えて他の構成を備えたものとしたり、一部の構成を省略した構成としたりしても良い。
【0055】
具体的には、上記実施形態では、上述した(b)のように、継手部材20において、平面部24dを溝部24c内に設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば
図4や
図5に示す継手部材120のように、溝部24cではなく第二フランジ部24bに相当する第二フランジ部124bを多角形状に形成し、この第二フランジ部124bの周面を平面部24dに相当するものとして活用することが可能である。なお、
図4や
図5に示した継手部材120は、第一フランジ部22bに変えて第二フランジ部124bを備えている点、第二フランジ部124bの周面を平面部24dに代わるものとしている点、及び筒状部24aに相当する筒状部124aを円筒状としている点において、シャフト部22と構成が相違しているがその他の部分については同様の構成及び機能を有する。そのため、
図4や
図5においては、上記実施形態における説明と同一の符号を付し、詳細の説明については省略する。
【0056】
ドライブシャフト組付構造10は、
図4や
図5に示した変形例だけでなく、様々な変形例が考えられる。
【0057】
例えば、上記実施形態においては、上述した(c)のように溝部24cがダメ押し作業等のために他部材を係合させるために設けられたものであるが、本発明はこれに限定されず、他部材を係合させる用途以外の溝等を溝部24cに相当するものとして活用したり、溝部24cを備えていない構成としたりしても良い。
【0058】
また、上記実施形態においては、上述した(d)のように溝部24cが設けられた部分において、中間軸挿入部24の軸線方向から見て多角形状の断面形状となるように形成されたものを例示したが、本発明はこれに限定されない。平面部24dが多角形状の断面形状をなさず、周方向に離れた位置に複数の平面部24dが設けられたもの等とすることも可能である。
【0059】
ドライブシャフト組付構造10は、上述した(e)のような構成とするのに代えて、中間軸挿入部24において多角形状の断面形状となるように形成された部分を構成する平面部24dのうち半数未満のものが、中間軸挿入部24の外周面よりも径方向内側に向けて凹状に形成された部分(溝部24c)に形成されたものや、平面部24dが溝部24cを外れた位置に設けられたもの等とすることも可能である。
【0060】
ドライブシャフト組付構造10は、上述した(f)のような構成とするのに代えて、ボルト26以外の連結具を用いて第一フランジ部22b及び第二フランジ部24bを連結するものとしても良い。
【0061】
車両Vは、上述した(g)のようにドライブシャフトD1(第一中間軸12)を継手部材20によってデファレンシャル装置1に対して連結しつつ、ドライブシャフトD2(第二中間軸14)を接続部材50によってデファレンシャル装置1に対して連越する構成とするのに代えて、ドライブシャフトD1(第一中間軸12)及びドライブシャフトD2(第二中間軸14)の双方を継手部材20によって連結した構成としても良い。すなわち、車両Vは、ドライブシャフトD1側だけでなく、ドライブシャフトD2側においてもドライブシャフト組付構造10によって第一中間軸12及び第二中間軸14をデファレンシャル装置1に対して連結した構成とすることが可能である。
【0062】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、課題を解決するための手段に記載の任意の構成要素または課題を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、中間軸の一端側に継手部材を介してデファレンシャル装置が連結されるドライブシャフト組付構造全般において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 デファレンシャル装置
10 ドライブシャフト組付構造
12 第一中間軸
14 第二中間軸
20 継手部材
22 シャフト部
22b 第一フランジ部
24 中間軸挿入部
24b 第二フランジ部
24c 溝部
24d 平面部
26 ボルト
50 接続部材
D1 ドライブシャフト
D2 ドライブシャフト
V 車両