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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114160
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】超音波接合装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/02 20060101AFI20240816BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01R43/02 B
H01R4/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019730
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 泰徳
【テーマコード(参考)】
5E051
5E085
【Fターム(参考)】
5E051LA04
5E051LB01
5E085BB03
5E085CC03
5E085DD04
5E085HH31
5E085JJ36
(57)【要約】
【課題】複数本の素線を束ねた芯線を単線化する際の素線同士の接合を改善することができる超音波接合装置を提供する。
【解決手段】超音波接合装置1は、高さ方向Zに対向して配置され、芯線露出部W1aを高さ方向Zに挟持し、当該芯線露出部W1aに超音波振動を加えて軸線方向Xに振動させ素線W11同士を接合させる加圧部材12及び加振部材13を備える。加振部材13は、加振面21が、素線W11の外径Sに応じた区画幅Lで幅方向Yに沿って区画された複数の区画領域22,23を有する。複数の区画領域22,23は、芯線露出部W1aにおける素線W11との接触により作用する摩擦力が、幅方向Yに沿って交互に相対的に異なる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って延在し導電性を有する複数本の素線からなる芯線と、前記芯線の端部を芯線露出部として露出させた状態で前記芯線を覆う絶縁被覆と、を有する電線の当該芯線露出部に対して、複数の前記素線を固めて単線化部を形成する加工装置を備え、
前記加工装置は、
前記軸線方向と直交する幅方向に対向して配置され、前記芯線露出部を前記幅方向に挟持する一対の保持部材と、
前記軸線方向及び前記幅方向と直交する高さ方向に対向して配置され、前記芯線露出部を前記高さ方向に挟持し、当該芯線露出部に超音波振動を加えて前記軸線方向に振動させ前記素線同士を接合させる加圧部材及び加振部材と、を備え、
前記加振部材は、
当該加振部材及び前記加圧部材が前記芯線露出部を前記高さ方向に挟持した挟持状態で前記芯線露出部に前記高さ方向に対向する加振面を有し、
前記加振面は、
前記挟持状態で前記芯線露出部に接触し、かつ前記素線の外径に応じた区画幅で前記幅方向に沿って区画された複数の区画領域を有し、
複数の前記区画領域は、
前記芯線露出部における前記素線との接触により作用する摩擦力が、前記幅方向に沿って交互に相対的に異なる
ことを特徴とする超音波接合装置。
【請求項2】
前記加振面は、
前記区画領域の区画幅が、前記素線の外径≦区画幅≦芯線露出部の外径/2となる
請求項1に記載の超音波接合装置。
【請求項3】
前記幅方向に隣接する前記区画領域同士は、互いに表面粗さが異なるように形成される
請求項1または2に記載の超音波接合装置。
【請求項4】
前記幅方向に隣接する前記区画領域同士は、互いに表面の凸部の高さが異なるように形成される
請求項1または2に記載の超音波接合装置。
【請求項5】
前記幅方向に隣接する前記区画領域同士は、前記素線との接触面積が異なるように形成される
請求項1または2に記載の超音波接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
端子付き電線を製造する際に、素線を束ねた芯線を有する電線に圧着端子を圧着する場合、当該素線の表層に形成された酸化膜を効率的に破壊して素線同士の導通性能を確保すべく、超音波接合装置により端子の圧着前に芯線を超音波接合するものがある。
【0003】
例えば、特許文献1では、芯線を接合幅に規制した状態で、芯線の高さ方向から加圧しながら、各素線を互いに超音波接合して平板状に一体成型する超音波接合方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-95293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の超音波接合装置は、超音波振動がホーンからアンビルに向けて高さ方向に伝播するため、素線同士が高さ方向に摺動して隣接する素線が互いに接合される。一方、従来の超音波接合装置では、高さ方向と直交する幅方向については素線同士が摺動しないことから、素線同士の幅方向の接合が十分になされないおそれがあり、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、複数本の素線を束ねた芯線を単線化する際の素線同士の接合を改善することができる超音波接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る超音波接合装置は、軸線方向に沿って延在し導電性を有する複数本の素線からなる芯線と、前記芯線の端部を芯線露出部として露出させた状態で前記芯線を覆う絶縁被覆と、を有する電線の当該芯線露出部に対して、複数の前記素線を固めて単線化部を形成する加工装置を備え、前記加工装置は、前記軸線方向と直交する幅方向に対向して配置され、前記芯線露出部を前記幅方向に挟持する一対の保持部材と、前記軸線方向及び前記幅方向と直交する高さ方向に対向して配置され、前記芯線露出部を前記高さ方向に挟持し、当該芯線露出部に超音波振動を加えて前記軸線方向に振動させ前記素線同士を接合させる加圧部材及び加振部材と、を備え、前記加振部材は、当該加振部材及び前記加圧部材が前記芯線露出部を前記高さ方向に挟持した挟持状態で前記芯線露出部に前記高さ方向に対向する加振面を有し、前記加振面は、前記挟持状態で前記芯線露出部に接触し、かつ前記素線の外径に応じた区画幅で前記幅方向に沿って区画された複数の区画領域を有し、複数の前記区画領域は、前記芯線露出部における前記素線との接触により作用する摩擦力が、前記幅方向に沿って交互に相対的に異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る超音波接合装置によれば、複数本の素線を束ねた芯線を単線化する際の素線同士の接合を改善することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る超音波接合装置の加工装置を模式的に表した図である。
図2図2は、図1の加工装置により加工された電線を模式的に表した図である。
図3図3は、図1の加工装置を模式的に表した図である。
図4図4は、図1の加工装置における加振部材の加振面を模式的に表した図である。
図5図5は、図4に示すA-A断面を模式的に表した図である。
図6図6は、図4に示すB-B断面を模式的に表した図である。
図7図7は、実施形態の変形例に係る加振部材の断面を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記実施形態により本発明が限定されるものではない。すなわち、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれ、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0011】
[実施形態]
まず、実施形態に係る超音波接合装置1により加工された電線Wについて図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は、超音波接合装置1の主要部である加工装置2を幅方向Yから視た図であり、電線Wの加工状態を表している。図2は、加工装置2により単線化された電線Wの外観を表している。
【0012】
なお、以下の説明において、便宜上、図示のX方向、Y方向、及び、Z方向のうち、X方向を「軸線方向X」といい、Y方向を「幅方向Y」といい、Z方向を「高さ方向Z」という。軸線方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に直交する。軸線方向Xは、電線Wの軸線Oに沿う方向に相当する。幅方向Yと高さ方向Zとは、軸線方向Xと直交する方向に含まれる。なお、高さ方向Zは、一方を「上側Z1」、他方を「下側Z2」という。
【0013】
実施形態における電線Wについて説明する。電線Wは、例えば、車両に使用されるワイヤハーネス等に適用されるものである。ここで、ワイヤハーネスは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の電線Wを各装置に接続するようにしたものである。
【0014】
電線Wは、図1図2に示すように、導電性を有する線状の芯線W1と、絶縁性を有し、当該芯線W1の外側を覆う絶縁被覆W2とを含んで構成される。電線Wは、絶縁被覆W2によって芯線W1を被覆した絶縁電線である。電線Wは、一般的に可撓性を有するが、これに限定されるものではない。
【0015】
電線Wは、例えば図2に示す軸線Oに沿って延在し、当該軸線Oに沿う軸線方向Xに対してほぼ同じ径で延びるように形成される。電線Wは、軸線方向Xと直交する方向の断面形状が円形に形成される。
【0016】
芯線W1は、例えば、導電性を有する金属、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の素線W11を複数束ねたものである。なお、芯線W1は、複数本の素線W11を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。各素線W11は、軸線方向Xと直交する方向の断面形状が円形に形成される(図5参照)。素線W11の外径Sは、複数本の素線W11において同一である。実施形態の電線Wは、軸線方向Xの少なくとも一方の端末において、絶縁被覆W2が剥ぎ取られており、芯線W1が絶縁被覆W2の端末から露出して芯線露出部W1aが形成されている。芯線露出部W1aは、軸線方向Xと直交する方向の断面形状が、芯線W1と同様に、円形である。芯線露出部W1aは、図2に示すように、当該芯線露出部W1aにおける複数本の素線W11を固めて単線化された単線化部W1bを有する。電線Wは、例えば、絶縁被覆W2の端末の近傍、及び、単線化部W1bに圧着端子(不図示)が圧着される。
【0017】
単線化部W1bは、例えば、超音波接合装置1の加工装置2により加工された部分である。単線化部W1bは、軸線方向Xに沿って柱状に形成され、芯線W1と異なり、軸線方向Xと直交する方向の断面形状が矩形である。
【0018】
絶縁被覆W2は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)、架橋PE(ポリエチレン)等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成されたものである。絶縁被覆W2は、軸線方向Xと直交する方向の断面形状が周方向に沿った略円環形に形成される。
【0019】
次に、超音波接合装置1について図1図2を含めて図3図6を参照して説明する。図3は、図1に示す超音波接合装置1の加工装置2を軸線方向Xから視た図であり、単線化部W1bの加工状態を表している。なお、図3に示す素線W11は、便宜上、外径が拡大されており、軸線方向Xから視た断面形状が円形のままになっている。図4は、加工装置2における加振部材13の加振面21を模式的に表した図である。図5は、軸線方向Xから視た加振面21の断面を模式的に表した図である。図6は、幅方向Yから視た加振面21の断面を模式的に表した図である。
【0020】
超音波接合装置1は、加工装置2を備える。加工装置2は、例えば、1本の電線Wの芯線露出部W1aを構成する複数本の素線W11を固めて単線化部W1bを形成するものである。加工装置2は、一対の保持部材11、加圧部材12、及び加振部材13を有し、これらによって単線化部W1bを形成する。一対の保持部材11、加圧部材12、及び加振部材13は、図3に示すように、幅方向Y及び高さ方向それぞれに対向して配置されている。一対の保持部材11、加圧部材12、及び加振部材13は、内側に芯線露出部W1aを収容するための収容空間15を形成する。なお、図示の超音波接合装置1には、一対の保持部材11、加圧部材12、及び加振部材13を支持する支持部材等については省略されている。
【0021】
一対の保持部材11は、幅方向Yに対向して配置され、芯線露出部W1aを幅方向Yに挟持する。一対の保持部材11は、芯線露出部W1aを幅方向Yに挟持した状態で、単線化部W1bの幅方向Yの両端面を形成する。一対の保持部材11は、幅方向Yにおいて、それぞれの位置が固定されている。
【0022】
加圧部材12及び加振部材13は、高さ方向Zに対向して配置され、芯線露出部W1aを高さ方向Zに挟持する。加圧部材12及び加振部材13は、芯線露出部W1aを高さ方向Zに挟持した状態で、当該芯線露出部W1aに超音波振動を加えて、図1に示す振動方向に沿う軸線方向Xに振動させ、素線W11同士を超音波接合して単線化する。加振部材13は、その位置が固定されているが、加圧部材12は、芯線露出部W1aの加工時に高さ方向Zに移動可能に構成される。
【0023】
加圧部材12は、いわゆるアンビルであり、加振部材13及び加圧部材12が芯線露出部W1aを高さ方向Zに挟持した挟持状態において、当該芯線露出部W1aに対して高さ方向Zの上側Z1から下側Z2に向けて加圧する。
【0024】
加振部材13は、いわゆるホーンであり、加振部材13及び加圧部材12が芯線露出部W1aを高さ方向Zに挟持した挟持状態において、軸線方向Xに振動して当該芯線露出部W1aに対して下側Z2から上側Z1に向けて超音波振動を加える。
【0025】
加振部材13は、図3図4に示すように、収容空間15側に形成され、加圧部材12に高さ方向Zに対向する加振面21を有する。加振面21は、加振部材13及び加圧部材12が芯線露出部W1aを高さ方向Zに挟持した挟持状態で芯線露出部W1aに接触する。
【0026】
加振面21は、図5に示すように、加振部材13の軸線方向Xから視た断面において、素線W11の外径Sに応じた区画幅Lで幅方向Yに沿って区画された複数の区画領域22,23を有する。複数の区画領域22,23は、加振面21のうち、芯線露出部W1aが接触する面に、幅方向Yに沿って交互に形成される。実施形態の区画領域22,23は、幅方向Yに同一の区画幅Lを有している。複数の区画領域22,23は、芯線露出部W1aにおける素線W11との接触により作用する摩擦力が、幅方向Yに沿って交互に相対的に異なる。幅方向Yに隣接する区画領域22,23同士は、例えば、素線W11との接触面積T1,T2が同一となるように形成される。また、幅方向Yに隣接する区画領域22,23同士は、例えば、研磨やサンドブラスト等の加工により、互いに表面粗さが異なるように形成されることで、摩擦係数が異なることとなる。
【0027】
また、加振面21は、図4図6に示すように、加振部材13の幅方向Yから視た断面において、軸線方向Xに沿って連続する複数の凸部24を有する。複数の凸部24は、いずれも、高さ方向Zの上側Z1に向けて先細り状に形成されており、高さ方向Zの高さが同一であり、軸線方向Xの頂点の間隔Pが同一である。複数の凸部24は、例えば、加振面21の軸線方向Xにおける略中央部分に形成されているが、これに限定されるものではない。複数の凸部24は、幅方向Yに隣接する区画領域22,23にそれぞれ形成される。
【0028】
各区画領域22,23は、幅方向Yに同一の区画幅Lを有するが、区画幅Lが、素線W11の外径S、芯線露出部W1aの外径に応じて、素線W11の外径S≦区画幅L≦芯線露出部W1aの外径R/2となることが好ましい。
【0029】
以上説明したように、実施形態に係る超音波接合装置1は、加工装置2が、高さ方向Zに対向して配置され、1つの芯線露出部W1aを高さ方向Zに挟持し、当該芯線露出部W1aに超音波振動を加えて軸線方向Xに振動させ素線W11同士を接合させる加圧部材12及び加振部材13を備える。加振部材13は、加振面21が、素線W11の外径Sに応じた区画幅Lで幅方向Yに沿って区画された複数の区画領域22,23を有する。複数の区画領域22,23は、芯線露出部W1aにおける素線W11との接触により作用する摩擦力が、幅方向Yに沿って交互に相対的に異なる。
【0030】
超音波接合装置1は、収容空間15に収容された芯線露出部W1aに対して、加振部材13により軸線方向Xに沿う振動方向で超音波振動を加えることから、当該超音波振動により芯線露出部W1aにおける高さ方向Zに対向する素線W11同士が摺動して互いに接合される。一方、芯線露出部W1aにおいて、芯線露出部W1aにおける幅方向Yに対向する素線W11同士が摺動しにくいことから幅方向Yの複数本の素線W11間の接合が十分になされないおそれがある。
【0031】
そこで、例えば、区画領域23に対して区画領域22の摩擦力を相対的に小さくした場合、加振時に区画領域23と接触する素線W11が加振部材13と一緒に振動するが、区画領域22と接触する素線W11が加振部材13とずれて振動することから、これら幅方向Yに隣接する素線W11同士が高さ方向Zに互いに摺動する。これにより、超音波接合装置1は、加振面21と素線W11との接触により作用する摩擦力が一定の従来装置と比較して、幅方向Yに沿う素線W11同士が互いに摺動するようになり、幅方向Yの素線W11間の接合を向上させ、複数本の素線W11を束ねた芯線W1を単線化する際の素線W11同士の接合を改善することができる。
【0032】
また、実施形態に係る超音波接合装置1は、加振面21における区画領域22,23の区画幅が、素線W11の外径S≦区画幅L≦芯線露出部W1aの外径R/2となることが好ましい。これにより、超音波接合装置1は、芯線露出部W1aの加振時に区画領域23と接触する素線W11が加振部材13と一緒に振動するが、区画領域22と接触する素線W11が加振部材13とずれて振動する状況を容易に作り出すことができる。
【0033】
また、実施形態に係る超音波接合装置1は、幅方向Yに隣接する区画領域22,23同士が、互いに表面粗さが異なるように形成されることで、摩擦係数が異なることとなる。その結果、幅方向Yに隣接する区画領域22,23同士は、芯線露出部W1aにおける素線W11との接触により作用する摩擦力が、幅方向Yに沿って交互に相対的に異なるものとすることができる。このように、超音波接合装置1は、幅方向Yの複数本の素線W11間の接合を向上させて、複数本の素線W11を束ねた芯線W1を単線化する際の素線W11同士の接合を改善することができる。
【0034】
なお、実施形態に係る超音波接合装置1は、幅方向Yに隣接する区画領域22,23同士が、幅方向Yに同じ長さの区画幅Lを有するが、これに限定されるものではなく、図7に示すように、幅方向Yに異なる長さの区画幅L1,L2を有するものであってもよい。
【0035】
また、実施形態に係る超音波接合装置1は、幅方向Yに隣接する区画領域22,23同士が、互いに表面粗さが異なるように形成されるが、これに限定されるものではない。例えば、幅方向Yに隣接する区画領域22,23の一方を加振面13そのものとし、他方を加振面13と摩擦係数が異なる金属膜でコーティングするものであってもよい。超音波接合装置1は、幅方向Yに隣接する区画領域22,23の一方を加振面13と摩擦係数が異なる金属膜でコーティングすることにより、区画領域22,23間で摩擦係数が異なるものとなる。その結果、幅方向Yに隣接する区画領域22,23同士は、芯線露出部W1aにおける素線W11との接触により作用する摩擦力が、幅方向Yに沿って交互に相対的に異なるものとすることができる。このような金属膜は、例えば、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)等の金属材料、及びそれらの化合物で構成されることが好ましい。
【0036】
また、実施形態に係る超音波接合装置1は、幅方向Yに隣接する区画領域22,23同士が、互いに表面の凸部24の高さが同じように形成されるが、これに限定されるものではなく、加振面21に形成された複数の凸部24が省略されていてもよい。
【0037】
また、実施形態に係る超音波接合装置1は、幅方向Yに隣接する区画領域22,23同士が、互いに表面の凸部24の高さが異なるように形成されていてもよい。この場合、幅方向Yに隣接する区画領域22,23同士の表面粗さが同じであっても、芯線露出部W1aにおける素線W11との接触により作用する区画領域22,23の摩擦力を、幅方向Yに沿って交互に相対的に異ならしめることが可能となる。
【0038】
また、上記実施形態に係る超音波接合装置1は、幅方向Yに隣接する区画領域22,23同士が、素線W11との接触面積T1,T2が同一となるように形成されるが(図5参照)、これに限定されず、互いに異なるように形成されていてもよい。例えば、上記実施形態の変形例に係る超音波接合装置1として、幅方向Yに隣接する区画領域22A,23Aが同じ区画幅Lを有する場合、素線W11との接触面積T1,T2を互いに異なるようにするために、区画領域22,23のいずれか一方に複数の凹部25を形成してもよい(図7参照)。凹部25は、例えば、図7に示すように、軸線方向Xに沿って延在し、かつ加振面21から加振部材13内側に向けて形成された溝である。超音波接合装置1において、幅方向Yに隣接する区画領域22A,23A同士は、素線W11との接触面積T1,T2が異なるように形成される。このように、超音波接合装置1は、幅方向Yに隣接する区画領域22A,23A同士の素線W11との接触面積T1,T2が異なるようにすることで、区画領域23Aに対する区画領域22Aの素線W11に対する摩擦力が減少するので、区画領域22A,23A間相互の摩擦力を相対的に異ならしめることが可能となる。
【0039】
また、上記実施形態及び変形例に係る超音波接合装置1は、加工装置2により1本の電線Wの芯線露出部W1aに対して単線化部W1bを形成するが、これに限定されるものではない。例えば、上記実施形態の他の変形例に係る超音波接合装置1として、加工装置2が、複数本の電線Wを束ねて形成される複数の芯線露出部W1aに対して単線化部W1bを形成する構成であってもよい。この場合、超音波接合装置1は、加工装置2が、幅方向Yに対向して配置され、複数の芯線露出部W1aを幅方向Yに挟持する一対の保持部材11と、高さ方向Zに対向して配置され、複数の芯線露出部W1aを高さ方向Zに挟持し、当該複数の芯線露出部W1aに超音波振動を加えて軸線方向Xに振動させ素線W11同士を接合させる加圧部材12及び加振部材13とを備える。加振部材13は、加振面21が、素線W11の外径Sに応じた区画幅Lで幅方向Yに沿って区画された複数の区画領域22,23を有する。複数の区画領域22,23は、複数の芯線露出部W1aにおける素線W11との接触により作用する摩擦力が、幅方向Yに沿って交互に相対的に異なる。これにより、他の変形例に係る超音波接合装置1は、複数本の電線Wの芯線露出部W1a同士の接合を、幅方向Yの複数本の素線W11間の接合を向上させて、複数本の素線W11を束ねた芯線W1を単線化する際の素線W11同士の接合を改善することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 超音波接合装置
2 加工装置
11 保持部材
12 加圧部材
13 加振部材
15 収容空間
21 加振面
22,23 区画領域
24 凸部
25 凹部
W 電線
W1 芯線
W11 素線
W1a 芯線露出部
W1b 単線化部
W2 絶縁被覆
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7