IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本無線株式会社の特許一覧

特開2024-114162受信アレイアンテナ装置及び受信アレイアンテナ校正プログラム
<>
  • 特開-受信アレイアンテナ装置及び受信アレイアンテナ校正プログラム 図1
  • 特開-受信アレイアンテナ装置及び受信アレイアンテナ校正プログラム 図2
  • 特開-受信アレイアンテナ装置及び受信アレイアンテナ校正プログラム 図3
  • 特開-受信アレイアンテナ装置及び受信アレイアンテナ校正プログラム 図4
  • 特開-受信アレイアンテナ装置及び受信アレイアンテナ校正プログラム 図5
  • 特開-受信アレイアンテナ装置及び受信アレイアンテナ校正プログラム 図6
  • 特開-受信アレイアンテナ装置及び受信アレイアンテナ校正プログラム 図7
  • 特開-受信アレイアンテナ装置及び受信アレイアンテナ校正プログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114162
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】受信アレイアンテナ装置及び受信アレイアンテナ校正プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20240816BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20240816BHJP
   H01Q 3/34 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H04B7/08 982
H01Q21/08
H01Q3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019732
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】新井 栄
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA07
5J021AA11
5J021DB03
5J021FA06
5J021FA31
5J021FA32
5J021FA33
5J021GA02
5J021HA04
5J021HA05
5J021JA10
(57)【要約】
【課題】本開示は、受信アレイアンテナの制御位相を校正するにあたり、位相器の校正精度を向上し、位相器の校正時間を短くし、受信アレイアンテナ装置の回路規模を小さくし、受信アレイアンテナ装置の処理負担を小さくし、ネットワークアナライザから送信アンテナまでと、受信アレイアンテナ装置からネットワークアナライザまでと、の接続ケーブルを不要とすることを目的とする。
【解決手段】本開示では、遠方界距離と比べて長い距離かつ正面方向に設置される信号発生器Gから、受信アレイアンテナ装置Rは非同期信号を受信し、複数の受信アンテナA1~Aa~Ab~Akは同位相で非同期信号を受信する。そして、複数の位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差に基づいて、複数の受信アンテナA1~Aa~Ab~Akの出力信号に対する複数の位相器P1~Pa~Pb~Pkの制御位相を校正する。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信アンテナと、前記複数の受信アンテナにそれぞれ対応する複数の位相器と、
前記複数の位相器の出力信号の間の位相差を計測する受信位相差計測部と、
前記複数の位相器の出力信号の間の位相差に基づいて、前記複数の受信アンテナの出力信号に対する前記複数の位相器の制御位相を校正する受信位相校正部と、
を備えることを特徴とする受信アレイアンテナ装置。
【請求項2】
前記受信アレイアンテナ装置は、前記複数の受信アンテナ及び前記複数の位相器にそれぞれ対応する複数のスイッチと、前記複数の受信アンテナ、前記複数の位相器及び前記複数のスイッチで共用する合成器と、基準アンテナと、をさらに備え、
前記受信位相差計測部は、各々のスイッチをオンに制御する一方で、他のスイッチをオフに制御したうえで、前記合成器の出力信号と前記基準アンテナの出力信号との間の位相差に基づいて、前記複数の位相器の出力信号の間の位相差を計測する
ことを特徴とする、請求項1に記載の受信アレイアンテナ装置。
【請求項3】
前記基準アンテナは、一の受信アンテナと共用して設置され、
前記受信アレイアンテナ装置は、前記基準アンテナの出力信号を、前記一の受信アンテナに対応する一の位相器及び一のスイッチ並びに前記合成器への受信信号経路と、前記基準アンテナの出力端子への基準信号経路と、に分配して出力する分配器をさらに備える
ことを特徴とする、請求項2に記載の受信アレイアンテナ装置。
【請求項4】
前記基準アンテナは、前記複数の受信アンテナと独立して設置される
ことを特徴とする、請求項2に記載の受信アレイアンテナ装置。
【請求項5】
前記受信位相差計測部は、前記受信アレイアンテナ装置から見て遠方界距離と比べて長い距離かつ正面方向に設置される信号発生器から、前記受信アレイアンテナ装置が信号を受信するときに、前記複数の位相器の出力信号の間の位相差を計測する
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の受信アレイアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1に記載の受信アレイアンテナ装置の前記受信位相差計測部及び前記受信位相校正部として、コンピュータを機能させるための受信アレイアンテナ校正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受信アレイアンテナの制御位相を校正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
受信アレイアンテナの制御位相を校正する技術が、特許文献1、2等に開示されている。特許文献1では、REV(Rotating element Electric field Vector)法を用いて、受信アレイアンテナの制御位相を校正する。特許文献2では、内部校正信号を用いて、受信アレイアンテナの制御位相を校正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57-093267号公報
【特許文献2】特開昭61-043805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1従来技術の受信アレイアンテナ装置の構成を図1に示す。第1従来技術では、REV法を用いて、受信アレイアンテナの制御位相を校正する。遠方界距離と比べて長い距離かつ正面方向に設置される信号発生器Gから、受信アレイアンテナ装置Rは信号を受信し、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akは同位相で信号を受信する。
【0005】
位相器P1~Pa~Pb~Pkは、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akにそれぞれ対応する。合成器Sは、受信アンテナA1~Aa~Ab~Ak及び位相器P1~Pa~Pb~Pkで共用する。受信振幅計測部Aは、位相器P1~Pa~Pb~Pkの制御位相をそれぞれ回転させたうえで、合成器Sの出力信号の振幅を計測する。受信位相校正部Cは、合成器Sの出力信号の振幅が最大になるように、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akの出力信号に対する位相器P1~Pa~Pb~Pkの制御位相を校正する。
【0006】
しかし、合成器Sの出力信号の振幅は、位相器P1~Pa~Pb~Pkの制御位相を直接的に反映しないため、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akが多いときに、位相器P1~Pa~Pb~Pkの校正精度が低下する。そして、位相器P1~Pa~Pb~Pkの制御位相は、受信振幅計測部Aによりそれぞれ回転されるため、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akが多いときに、位相器P1~Pa~Pb~Pkの校正時間が長くなる。
【0007】
第2従来技術の受信アレイアンテナ装置の構成を図2に示す。第2従来技術では、内部校正信号を用いて、受信アレイアンテナの制御位相を校正する。内部の校正信号発生器CGから内部の校正信号分配器CDを介して、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akにそれぞれ対応する結合器C1~Ca~Cb~Ckは同位相で信号を取得する。
【0008】
位相器P1~Pa~Pb~Pkは、受信アンテナA1~Aa~Ab~Ak及び結合器C1~Ca~Cb~Ckにそれぞれ対応する。スイッチS1~Sa~Sb~Skは、結合器C1~Ca~Cb~Ck及び位相器P1~Pa~Pb~Pkにそれぞれ対応する。合成器Sは、位相器P1~Pa~Pb~Pk及びスイッチS1~Sa~Sb~Skで共用する。
【0009】
受信位相差計測部Pは、各々のスイッチS1~Sa~Sb~Skをオンに制御する一方で、他のスイッチS1~Sa~Sb~Skをオフに制御したうえで、合成器Sの出力信号と校正信号発生器CGの出力信号との間の位相差に基づいて、位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差を計測する。受信位相校正部Cは、位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差に基づいて、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akの出力信号に対する位相器P1~Pa~Pb~Pkの制御位相を校正する。
【0010】
しかし、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akが多いときに、校正信号分配器CDの分配数及び結合器C1~Ca~Cb~Ckが多くなるため、受信アレイアンテナ装置Rの回路規模が大きくなる。そして、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akが多いときに、校正信号分配器CDから結合器C1~Ca~Cb~Ckまでの伝送経路があらかじめ等長制御される必要があるため、受信アレイアンテナ装置Rの処理負担が大きくなる。
【0011】
第3従来技術の受信アレイアンテナ装置の構成を図3に示す。第3従来技術では、ネットワークアナライザを用いて、受信アレイアンテナの制御位相を校正する。遠方界距離と比べて長い距離かつ正面方向に設置される送信アンテナTから、受信アレイアンテナ装置Rは信号を受信し、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akは同位相で信号を受信する。
【0012】
まず、受信アレイアンテナ装置Rについて説明する。位相器P1~Pa~Pb~Pkは、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akにそれぞれ対応する。スイッチS1~Sa~Sb~Skは、受信アンテナA1~Aa~Ab~Ak及び位相器P1~Pa~Pb~Pkにそれぞれ対応する。合成器Sは、受信アンテナA1~Aa~Ab~Ak、位相器P1~Pa~Pb~Pk及びスイッチS1~Sa~Sb~Skで共用する。
【0013】
次に、受信アレイアンテナ校正装置CRについて説明する。信号発生器制御部GCは、送信アンテナTを制御する。受信位相差計測部Pは、各々のスイッチS1~Sa~Sb~Skをオンに制御する一方で、他のスイッチS1~Sa~Sb~Skをオフに制御したうえで、合成器Sの出力信号の位相(ネットワークアナライザNAで計測)に基づいて、位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差を計測する。受信位相校正部Cは、位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差に基づいて、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akの出力信号に対する位相器P1~Pa~Pb~Pkの制御位相を校正する。
【0014】
しかし、本形式では、ネットワークアナライザNAから送信アンテナTまでと、受信アレイアンテナ装置RからネットワークアナライザNAまでと、の接続ケーブルCC(同軸ケーブル)が必要となる。さらに、送信アンテナTから受信アレイアンテナ装置Rまでの距離が遠方界距離と比べて長いときに、接続ケーブルCCの長さが長くなり、信号損失が問題となる場合は、信号損失を補償するための増幅器APも必要となる。
【0015】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、受信アレイアンテナの制御位相を校正するにあたり、位相器の校正精度を向上し、位相器の校正時間を短くし、受信アレイアンテナ装置の回路規模を小さくし、受信アレイアンテナ装置の処理負担を小さくし、ネットワークアナライザから送信アンテナまでと、受信アレイアンテナ装置からネットワークアナライザまでと、の接続ケーブルを不要とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、遠方界距離と比べて長い距離かつ正面方向に設置される信号発生器から、受信アレイアンテナ装置は非同期信号を受信し、複数の受信アンテナは同位相で非同期信号を受信する。そして、複数の位相器の出力信号の間の位相差に基づいて、複数の受信アンテナの出力信号に対する複数の位相器の制御位相を校正する。
【0017】
具体的には、本開示は、複数の受信アンテナと、前記複数の受信アンテナにそれぞれ対応する複数の位相器と、前記複数の位相器の出力信号の間の位相差を計測する受信位相差計測部と、前記複数の位相器の出力信号の間の位相差に基づいて、前記複数の受信アンテナの出力信号に対する前記複数の位相器の制御位相を校正する受信位相校正部と、を備えることを特徴とする受信アレイアンテナ装置である。
【0018】
この構成によれば、複数の位相器の出力信号の間の位相差を直接的に(複数-1)組だけ計測するため、受信アンテナが多いときにも、位相器の校正精度を向上することができ、位相器の校正時間を短くすることができる。そして、校正信号分配器及び結合器を不要とするため、受信アンテナが多いときにも、受信アレイアンテナ装置の回路規模を小さくすることができ、受信アレイアンテナ装置の処理負担を小さくすることができる。さらに、ネットワークアナライザを不要とするため、ネットワークアナライザから送信アンテナ及び受信アレイアンテナ装置までの接続ケーブルを不要とすることができる。
【0019】
また、本開示は、前記受信アレイアンテナ装置は、前記複数の受信アンテナ及び前記複数の位相器にそれぞれ対応する複数のスイッチと、前記複数の受信アンテナ、前記複数の位相器及び前記複数のスイッチで共用する合成器と、基準アンテナと、をさらに備え、前記受信位相差計測部は、各々のスイッチをオンに制御する一方で、他のスイッチをオフに制御したうえで、前記合成器の出力信号と前記基準アンテナの出力信号との間の位相差に基づいて、前記複数の位相器の出力信号の間の位相差を計測することを特徴とする受信アレイアンテナ装置である。
【0020】
この構成によれば、複数の受信アンテナに対して、単数の受信系統を設けるときにも(フェイズドアレイの用途等)、基準アンテナを用いることにより、複数の位相器の出力信号の間の位相差を計測することができる。一方で、複数の受信アンテナに対して、同数の受信系統を設けるときには(ビームフォーミングの用途等)、基準アンテナを用いることなく、複数の位相器の出力信号の間の位相差を計測することができる。
【0021】
また、本開示は、前記基準アンテナは、一の受信アンテナと共用して設置され、前記受信アレイアンテナ装置は、前記基準アンテナの出力信号を、前記一の受信アンテナに対応する一の位相器及び一のスイッチ並びに前記合成器への受信信号経路と、前記基準アンテナの出力端子への基準信号経路と、に分配して出力する分配器をさらに備えることを特徴とする受信アレイアンテナ装置である。
【0022】
この構成によれば、一の受信アンテナと共用して基準アンテナを設置するため、分配器を追加しさえすれば、複数の位相器の出力信号の間の位相差を計測することができる。
【0023】
また、本開示は、前記基準アンテナは、前記複数の受信アンテナと独立して設置されることを特徴とする受信アレイアンテナ装置である。
【0024】
この構成によれば、複数の受信アンテナと独立して基準アンテナを設置するものの、分配器を追加しないで、複数の位相器の出力信号の間の位相差を計測することができる。
【0025】
また、本開示は、前記受信位相差計測部は、前記受信アレイアンテナ装置から見て遠方界距離と比べて長い距離かつ正面方向に設置される信号発生器から、前記受信アレイアンテナ装置が信号を受信するときに、前記複数の位相器の出力信号の間の位相差を計測することを特徴とする受信アレイアンテナ装置である。
【0026】
この構成によれば、遠方界距離と比べて長い距離かつ正面方向に設置される信号発生器から、複数の受信アンテナは同位相で非同期信号を受信することができる。そして、ネットワークアナライザを不要とするため、ネットワークアナライザから送信アンテナ及び受信アレイアンテナ装置までの接続ケーブルを不要とすることができる。
【0027】
また、本開示は、以上に記載の受信アレイアンテナ装置の前記受信位相差計測部及び前記受信位相校正部として、コンピュータを機能させるための受信アレイアンテナ校正プログラムである。
【0028】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0029】
なお、上記各開示の発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0030】
このように、本開示は、受信アレイアンテナの制御位相を校正するにあたり、位相器の校正精度を向上し、位相器の校正時間を短くし、受信アレイアンテナ装置の回路規模を小さくし、受信アレイアンテナ装置の処理負担を小さくし、ネットワークアナライザから送信アンテナまでと、受信アレイアンテナ装置からネットワークアナライザまでと、の接続ケーブルを不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1従来技術の受信アレイアンテナ装置の構成を示す図である。
図2】第2従来技術の受信アレイアンテナ装置の構成を示す図である。
図3】第3従来技術の受信アレイアンテナ装置の構成を示す図である。
図4】第1実施形態の受信アレイアンテナ装置の構成を示す図である。
図5】第1実施形態の受信アレイアンテナ校正処理の手順を示す図である。
図6】第2実施形態の受信アレイアンテナ装置の構成を示す図である。
図7】第2実施形態の受信アレイアンテナ校正処理の手順を示す図である。
図8】第3実施形態の受信アレイアンテナ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0033】
(第1実施形態の受信アレイアンテナ装置の構成)
第1実施形態の受信アレイアンテナ装置の構成を図4に示す。第1実施形態の受信アレイアンテナ校正処理の手順を図5に示す。第1実施形態では、複数の受信アンテナA1~Aa~Ab~Akに対して、同数の受信系統を設けたうえで(ビームフォーミングの用途等)、受信アレイアンテナの制御位相を校正する。遠方界距離と比べて長い距離かつ正面方向に設置される信号発生器Gから、受信アレイアンテナ装置Rは非同期信号を受信し、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akは同位相で非同期信号を受信する(ステップS1)。
【0034】
受信位相差計測部P及び受信位相校正部Cは、図5に示した受信アレイアンテナ校正プログラムを、コンピュータにインストールすることにより実現することができる。
【0035】
位相器P1~Pa~Pb~Pkは、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akにそれぞれ対応する。受信位相差計測部Pは、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akの出力信号に対する位相器P1~Pa~Pb~Pkの制御位相を、初期値(0度等)に設定するのみであり、REV法のように回転させることはしない(ステップS2)。
【0036】
受信位相差計測部Pは、位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差を計測する(ステップS3)。受信位相校正部Cは、位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差に基づいて、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akの出力信号に対する位相器P1~Pa~Pb~Pkの制御位相を校正する(ステップS4)。
【0037】
位相器P1、Paの出力信号の間の位相差は、Δθa=θa-θ1であり、位相器P1、Pbの出力信号の間の位相差は、Δθb=θb-θ1であり、位相器P1、Pkの出力信号の間の位相差は、Δθk=θk-θ1である。位相器P1の制御位相を基準(0度等)として、位相器Paの制御位相は、-Δθaに校正され、位相器Pbの制御位相は、-Δθbに校正され、位相器Pkの制御位相は、-Δθkに校正される。
【0038】
このように、複数の位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差Δθa~Δθb~Δθkを直接的に(k-1)組だけ計測するため、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akが多いときにも、位相器P1~Pa~Pb~Pkの校正精度を向上することができ、位相器P1~Pa~Pb~Pkの校正時間を短くすることができる。
【0039】
そして、校正信号分配器CD及び結合器C1~Ca~Cb~Ckを不要とするため、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akが多いときにも、受信アレイアンテナ装置Rの回路規模を小さくすることができ、受信アレイアンテナ装置Rの処理負担を小さくすることができる。さらに、ネットワークアナライザNAを不要とするため、ネットワークアナライザNAから送信アンテナT及び受信アレイアンテナ装置Rまでの接続ケーブルCCを不要とすることができる。
【0040】
なお、複数の受信アンテナA1~Aa~Ab~Akに対して、同数の受信系統を設けるときには(ビームフォーミングの用途等)、スイッチS1~Sa~Sb~Sk及び合成器Sを用いないため、後述の基準アンテナを用いることなく、複数の位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差Δθa~Δθb~Δθkを計測することができる。
【0041】
(第2実施形態の受信アレイアンテナ装置の構成)
第2実施形態の受信アレイアンテナ装置の構成を図6に示す。第2実施形態の受信アレイアンテナ校正処理の手順を図7に示す。第2実施形態では、複数の受信アンテナA1~Aa~Ab~Akに対して、単数の受信系統を設けたうえで(フェイズドアレイの用途等)、受信アレイアンテナの制御位相を校正する。遠方界距離と比べて長い距離かつ正面方向に設置される信号発生器Gから、受信アレイアンテナ装置Rは非同期信号を受信し、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akは同位相で非同期信号を受信する(ステップS5)。
【0042】
受信位相差計測部P及び受信位相校正部Cは、図7に示した受信アレイアンテナ校正プログラムを、コンピュータにインストールすることにより実現することができる。
【0043】
位相器P1~Pa~Pb~Pkは、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akにそれぞれ対応する。スイッチS1~Sa~Sb~Skは、受信アンテナA1~Aa~Ab~Ak及び位相器P1~Pa~Pb~Pkにそれぞれ対応する。合成器Sは、受信アンテナA1~Aa~Ab~Ak、位相器P1~Pa~Pb~Pk及びスイッチS1~Sa~Sb~Skで共用する。受信位相差計測部Pは、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akの出力信号に対する位相器P1~Pa~Pb~Pkの制御位相を、初期値(0度等)に設定するのみであり、REV法のように回転させることはしない(ステップS6)。
【0044】
基準アンテナは、受信アンテナA1と共用して設置される。分配器Dは、基準アンテナの出力信号を、受信アンテナA1に対応する位相器P1及びスイッチS1並びに合成器Sへの受信信号経路と、基準アンテナの出力端子への基準信号経路と、に分配して出力する。受信アレイアンテナの出荷時の制御位相校正のみならず、受信アレイアンテナの運用時の制御位相校正に備えて、基準アンテナ及び分配器Dが設置されている。
【0045】
受信位相差計測部Pは、各々のスイッチS1~Sa~Sb~Skをオンに制御する一方で、他のスイッチS1~Sa~Sb~Skをオフに制御したうえで(ステップS7)、合成器Sの出力信号と基準アンテナの出力信号との間の位相差を計測する(ステップS8)。
【0046】
位相器P1の出力信号と基準アンテナの出力信号との間の位相差は、Δθ1=θ1-θrefであり、位相器Paの出力信号と基準アンテナの出力信号との間の位相差は、Δθa=θa-θrefであり、位相器Pbの出力信号と基準アンテナの出力信号との間の位相差は、Δθb=θb-θrefであり、位相器Pkの出力信号と基準アンテナの出力信号との間の位相差は、Δθk=θk-θrefである(θrefは基準位相)。
【0047】
受信位相差計測部Pは、合成器Sの出力信号と基準アンテナの出力信号との間の位相差に基づいて、位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差を計測する(ステップS9)。受信位相校正部Cは、位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差に基づいて、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akの出力信号に対する位相器P1~Pa~Pb~Pkの制御位相を校正する(ステップS10)。
【0048】
位相器P1、Paの出力信号の間の位相差は、θa-θ1=Δθa-Δθ1であり、位相器P1、Pbの出力信号の間の位相差は、θb-θ1=Δθb-Δθ1であり、位相器P1、Pkの出力信号の間の位相差は、θk-θ1=Δθk-Δθ1である(ステップS8を参照)。位相器P1の制御位相を基準(0度等)として、位相器Paの制御位相は、-(Δθa-Δθ1)に校正され、位相器Pbの制御位相は、-(Δθb-Δθ1)に校正され、位相器Pkの制御位相は、-(Δθk-Δθ1)に校正される。
【0049】
このように、複数の位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差θa-θ1~θb-θ1~θk-θ1を直接的に(k-1)組だけ計測するため、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akが多いときにも、位相器P1~Pa~Pb~Pkの校正精度を向上することができ、位相器P1~Pa~Pb~Pkの校正時間を短くすることができる。
【0050】
そして、校正信号分配器CD及び結合器C1~Ca~Cb~Ckを不要とするため、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akが多いときにも、受信アレイアンテナ装置Rの回路規模を小さくすることができ、受信アレイアンテナ装置Rの処理負担を小さくすることができる。さらに、ネットワークアナライザNAを不要とするため、ネットワークアナライザNAから送信アンテナT及び受信アレイアンテナ装置Rまでの接続ケーブルCCを不要とすることができる。
【0051】
なお、複数の受信アンテナA1~Aa~Ab~Akに対して、単数の受信系統を設けるときにも(フェイズドアレイの用途等)、スイッチS1~Sa~Sb~Sk及び合成器Sを用いるものの、基準アンテナを用いることにより、複数の位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差θa-θ1~θb-θ1~θk-θ1を計測することができる。また、受信アンテナA1と共用して基準アンテナを設置するため、分配器Dを追加しさえすれば(校正信号分配器CDは追加不要)、複数の位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差θa-θ1~θb-θ1~θk-θ1を計測することができる。
【0052】
(第3実施形態の受信アレイアンテナ装置の構成)
第3実施形態の受信アレイアンテナ装置の構成を図8に示す。以下では、第3実施形態のうちの第2実施形態と比べて相違する部分について説明する。
【0053】
基準アンテナA0は、受信アンテナA1~Aa~Ab~Akと独立して設置される。受信アレイアンテナの出荷時の制御位相校正のみならず、受信アレイアンテナの運用時の制御位相校正に備えて、基準アンテナA0が受信アレイアンテナ装置Rの内部に設置されるか、基準アンテナA0が受信アレイアンテナ装置Rの外部に近接して設置される。
【0054】
このように、第3実施形態では、第2実施形態と比べて、複数の受信アンテナA1~Aa~Ab~Akと独立して基準アンテナA0を設置するものの、分配器Dを追加しないで(校正信号分配器CDも追加不要)、複数の位相器P1~Pa~Pb~Pkの出力信号の間の位相差θa-θ1~θb-θ1~θk-θ1を計測することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示の受信アレイアンテナ装置及び受信アレイアンテナ校正プログラムは、レーダ又は無線通信等に適用される受信アレイアンテナの制御位相を校正することができる。
【符号の説明】
【0056】
R:受信アレイアンテナ装置
G:信号発生器
A1、Aa、Ab、Ak:受信アンテナ
A0:基準アンテナ
T:送信アンテナ
P1、Pa、Pb、Pk:位相器
C1、Ca、Cb、Ck:結合器
S1、Sa、Sb、Sk:スイッチ
S:合成器
D:分配器
A:受信振幅計測部
P:受信位相差計測部
C:受信位相校正部
CG:校正信号発生器
CD:校正信号分配器
CR:受信アレイアンテナ校正装置
GC:信号発生器制御部
NA:ネットワークアナライザ
CC:接続ケーブル
AP:増幅器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8