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特開2024-114167物体検知システム、物体検知方法、物体検知プログラム、および測距センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114167
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】物体検知システム、物体検知方法、物体検知プログラム、および測距センサ
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/931 20200101AFI20240816BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240816BHJP
   G01S 15/86 20200101ALI20240816BHJP
【FI】
G01S15/931
G08G1/16 C
G01S15/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019740
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 央吉
(72)【発明者】
【氏名】北村 一将
【テーマコード(参考)】
5H181
5J083
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL07
5J083AA02
5J083AB12
5J083AC29
5J083AD04
5J083AF08
5J083AF10
5J083AG05
5J083BE24
5J083CA02
5J083CB01
(57)【要約】
【課題】非検知対象物の非検知性能を満たし、且つ検知対象物の検知性能の劣化抑制を図る。
【解決手段】測距センサ20は、超音波を送波する送波マイクと反射波を受波する受波マイクと反射波の波高値が閾値以上である場合、算出した距離を含む測距結果を検知対象物の測距結果として出力する検知処理回路と、を有する。撮影画像取得部12Aは、車両1の周辺の撮影画像を取得する。サイズ算出部12Bは、撮影画像に基づいて、撮影画像に含まれる非検知対象物のサイズを算出する。波高推定値計算部12Cは、サイズに基づいて、超音波の非検知対象物による反射波の波高値の推定値である波高推定値を計算する。閾値計算部12Dは、波高推定値より大きい閾値を該非検知対象物までの距離に対応する閾値として計算する。更新部12Eは、測距センサ20で用いる閾値を、閾値計算部12Dで計算した閾値に更新する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送波する送波マイクと、超音波の物体による反射波を受波する受波マイクと、前記反射波の波高値が、前記超音波の送波から前記反射波の受波までの時間に応じて算出した前記物体までの距離に対応する閾値以上である場合、算出した距離を含む測距結果を、検知対象物の前記測距結果として出力する検知処理回路と、を有する、車両に設けられた測距センサと、
前記車両の周辺の撮影画像を取得する画像取得回路と、
前記撮影画像に基づいて、前記撮影画像に含まれる検知対象外の前記物体である非検知対象物のサイズを算出するサイズ算出回路と、
前記サイズに基づいて、前記超音波の前記非検知対象物による前記反射波の波高値の推定値である波高推定値を計算する波高推定回路と、
前記波高推定値より大きい前記閾値を該非検知対象物までの距離に対応する前記閾値として計算する閾値計算回路と、
前記測距センサで用いる前記閾値を、前記閾値計算回路で計算した前記閾値に更新する更新回路と、
を備える物体検知システム。
【請求項2】
前記閾値計算回路は、
前記波高推定値より予め定めた値または予め定めた割合大きい前記閾値を計算する、
請求項1に記載の物体検知システム。
【請求項3】
前記閾値計算回路は、
前記波高推定値より予め定めた値または予め定めた割合大きく、且つ
前記検知対象物が所定距離で検知される前記閾値を計算する、
請求項1に記載の物体検知システム。
【請求項4】
車両の周辺の撮影画像を取得し、
前記撮影画像に基づいて、前記撮影画像に含まれる検知対象外の物体である非検知対象物のサイズを算出し、
超音波を送波する送波マイクと、超音波の物体による反射波を受波する受波マイクと、前記反射波の波高値が、前記超音波の送波から前記反射波の受波までの時間に応じて算出した前記物体までの距離に対応する閾値以上である場合、算出した距離を含む測距結果を、検知対象物の前記測距結果として出力する検知処理回路と、を有する、車両に設けられた測距センサが、前記超音波の前記非検知対象物による前記反射波の波高値の推定値である波高推定値を、前記サイズに基づいて計算し、
前記波高推定値より大きい前記閾値を該非検知対象物までの距離に対応する前記閾値として計算し、
前記測距センサで用いる前記閾値を、計算した前記閾値に更新する、
物体検知方法。
【請求項5】
車両の周辺の撮影画像を取得する画像取得ステップと、
前記撮影画像に基づいて、前記撮影画像に含まれる検知対象外の物体である非検知対象物のサイズを算出するサイズ算出ステップと、
超音波を送波する送波マイクと、超音波の物体による反射波を受波する受波マイクと、前記反射波の波高値が、前記超音波の送波から前記反射波の受波までの時間に応じて算出した前記物体までの距離に対応する閾値以上である場合、算出した距離を含む測距結果を、検知対象物の前記測距結果として出力する検知処理回路と、を有する、車両に設けられた測距センサにおける、前記超音波の前記非検知対象物による前記反射波の波高値の推定値である波高推定値を、前記サイズに基づいて計算する波高推定ステップと、
前記波高推定値より大きい前記閾値を該非検知対象物までの距離に対応する前記閾値として計算する閾値計算ステップと、
前記測距センサで用いる前記閾値を、前記閾値計算ステップで計算した前記閾値に更新する更新ステップと、
をコンピュータに実行させるための物体検知プログラム。
【請求項6】
超音波を送波する送波マイクと、
超音波の物体による反射波を受波する受波マイクと、
前記反射波の波高値が、前記超音波の送波から前記反射波の受波までの時間に応じて算出した前記物体までの距離に対応する閾値以上である場合、算出した距離を含む測距結果を、検知対象物の前記測距結果として出力する検知処理回路と、
を有し、
前記検知処理回路は、
車両の周辺の撮影画像を取得する画像取得回路と、前記撮影画像に基づいて、前記撮影画像に含まれる検知対象外の前記物体である非検知対象物のサイズを算出するサイズ算出回路と、前記サイズに基づいて、前記超音波の前記非検知対象物による前記反射波の波高値の推定値である波高推定値を計算する波高推定回路と、前記波高推定値より大きい前記閾値を該非検知対象物までの距離に対応する前記閾値として計算する閾値計算回路と、前記閾値計算回路で計算した前記閾値に更新する更新回路と、を備える物体検知装置における前記更新回路によって更新された前記閾値を用いて、前記反射波の波高値が算出した前記物体までの距離に対応する該閾値以上である場合、算出した距離を含む前記測距結果を、前記検知対象物の前記測距結果として出力する、
測距センサ。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の物体検知システムにおける測距センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体検知システム、物体検知方法、物体検知プログラム、および測距センサに関する。
【背景技術】
【0002】
既存の技術として、車両に搭載されたセンサにより車両周辺に存在する物体を検知するシステムが知られている。例えば、固定サイズの縁石などの検知対象外の非検知対象物を検知せず、壁などの検知対象の検知対象物を検知するように固定の閾値を予め定め、超音波の物体による反射波の波高値が該閾値以上である場合、超音波の送波から反射波の受波までの時間に応じて算出した距離を検知対象物までの距離として出力する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6190758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両の周辺環境に存在する様々なサイズ非検知対象物の非検知性能を満たし、且つ検知対象物の検知性能の劣化抑制を図ることについては検討の余地がある。
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、非検知対象物の非検知性能を満たし、且つ検知対象物の検知性能の劣化抑制を図ることができる、物体検知システム、物体検知方法、物体検知プログラム、および測距センサの提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる物体検知システムは、測距センサと、画像取得回路と、サイズ算出回路と、波高推定回路と、閾値計算回路と、更新回路と、を備える。測距センサは、車両に設けられ、超音波を送波する送波マイクと、超音波の物体による反射波を受波する受波マイクと、前記反射波の波高値が、前記超音波の送波から前記反射波の受波までの時間に応じて算出した前記物体までの距離に対応する閾値以上である場合、算出した距離を含む測距結果を、検知対象物の前記測距結果として出力する検知処理回路と、を有する。画像取得回路は、前記車両の周辺の撮影画像を取得する。サイズ算出回路は、前記撮影画像に基づいて、前記撮影画像に含まれる検知対象外の前記物体である非検知対象物のサイズを算出する。波高推定回路は、前記サイズに基づいて、前記超音波の前記非検知対象物による前記反射波の波高値の推定値である波高推定値を計算する。閾値計算回路は、前記波高推定値より大きい前記閾値を該非検知対象物までの距離に対応する前記閾値として計算する。更新回路は、前記測距センサで用いる前記閾値を、前記閾値計算部で計算した前記閾値に更新する。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかる物体検知システム、物体検知方法、物体検知プログラム、および測距センサによれば、非検知対象物の非検知性能を満たし、且つ検知対象物の検知性能の劣化抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の物体検知システムの一例を示す模式図である。
図2図2は、測距センサの構成の一例の模式図である。
図3図3は、物体検知システムの機能的構成の一例のブロック図である。
図4図4は、物体検知装置の一例のハードウェア構成図である。
図5図5は、測距センサによる検知領域の一例の説明図である。
図6図6は、物体までの距離と反射波の波高値との関係の一例を示す図である。
図7図7は、撮影画像の一例の模式図である。
図8図8は、実施系形態における物体までの距離と反射波の波高値との関係の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態の物体検知装置が実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本開示に係る物体検知システム、物体検知方法、物体検知プログラム、および測距センサの実施形態について説明する。
【0010】
既存の技術では、固定サイズの非検知対象物に応じて予め設定された固定の閾値を用いており、車両の周辺環境によって、非検知対象物が検知対象物として検知される場合や、検知対象物が非検知対象物と判定され検知されない場合等があった。
【0011】
本開示の非限定的な一実施例では、非検知対象物の非検知性能を満たし、且つ検知対象物の検知性能の劣化抑制を図ることができる技術について説明する。
【0012】
図1に、物体検知システム100は、物体検知装置10と、1または複数の測距センサ20と、撮影装置40と、を備える。物体検知システム100は、車両1の周辺の物体を検知する装置を示す。本実施形態では、物体検知システム100は、車両1に搭載された形態を一例として説明する。
【0013】
測距センサ20は、車両1の周辺の物体を検知するセンサである。本実施形態では、測距センサ20は、例えば、数cm~数mの検知距離であり、比較的近距離の物体の有無および物体までの距離を検知する。本実施形態では、測距センサ20が超音波センサである形態を一例として説明する。超音波センサは、20kHz~100kHzの超音波を送信波として送波する送波機能と、物体で反射した超音波を反射波として受信する受波機能と、を有する。
【0014】
本実施形態では、車両1は、測距センサ20として、測距センサ20FL、測距センサ20FLC、測距センサ20FRC、測距センサ20FR、測距センサ20RL、測距センサ20RLC、測距センサ20RRC、および測距センサ20RRを備える。これらの複数の測距センサ20は、車両1の互いに異なる位置に設けられている。また、これらの複数の測距センサ20の各々の検知範囲は、少なくとも一部が非重複となるように調整されている。
【0015】
測距センサ20FL、測距センサ20FLC、測距センサ20FRC、および測距センサ20FRは、車両1のフロント部分に設けられている。測距センサ20FLおよび測距センサ20FRは、車両1のフロント部分におけるコーナー部分に設けられている。測距センサ20FLは、車両1のフロント部分の左側コーナー部分に設けられている。測距センサ20FRは、車両1のフロント部分の右側コーナー部分に設けられている。測距センサ20FLCは、車両1のフロント部分の中央左寄りに設けられている。測距センサ20FRCは、車両1のフロント部分の中央右寄りに設けられている。
【0016】
測距センサ20RL、測距センサ20RLC、測距センサ20RRC、および測距センサ20RRは、車両1のリア部分に設けられている。測距センサ20RLおよび測距センサ20RRは、車両1のリア部分におけるコーナー部分に設けられている。測距センサ20RLは、車両1のリア部分の左側コーナー部分に設けられている。測距センサ20RRは、車両1のリア部分の右側コーナー部分に設けられている。測距センサ20RLCは、車両1のリア部分の中央左寄りに設けられている。測距センサ20RRCは、車両1のリア部分の中央右寄りに設けられている。
【0017】
なお、車両1に設けられる測距センサ20の個数および配置は、上記形態に限定されるものではない。例えば、車両1のフロント部分に1個~3個または4個以上、車両1のリア部分に1個~3個または4個以上、車両1のサイド部分に1個以上の測距センサ20を設けた構成であってもよい。
【0018】
上記複数の測距センサ20の各々は、各々の検知範囲内の物体を検知し、物体までの測距結果を物体検知装置10へ出力する。
【0019】
物体とは、測距センサ20によって検知可能な物である。例えば、本実施形態では、物体とは、測距センサ20から送波された超音波を反射した反射波の生じる物である。
【0020】
物体は、検知対象物と、非検知対象物と、に分類される。
【0021】
検知対象物とは、測距センサ20による検知対象とする物体である。詳細には、検知対象物とは、車両1から所定距離内に存在した場合に、該物体による車両1の制動制御の対象となる物体である。詳細には、検知対象物は、ブザー等で乗員に対して物体の存在を通知、車速やトルク制御による自動ブレーキにより衝突を回避または軽減、などの車両1の制動制御を実行する対象となる物体である。検知対象物は、具体的には、例えば、壁、ポールなどである。
【0022】
非検知対象物とは、測距センサ20による検知対象外とする物体である。詳細には、非検知対象物とは、車両1から所定距離内に存在した場合であっても、該物体による車両1の制動制御の対象外とする物体である。非検知対象物は、具体的には、例えば、縁石、輪留め、等である。
【0023】
測距センサ20は、検知対象物を検知した場合、該検知対象物までの距離を含む測距結果を車両ECU(Engine Control Unit)へ出力する。
【0024】
図2における測距センサ20は、送波部22と、受波部24と、検知処理部26と、通信部28と、を備える。送波部22および受波部24と検知処理部26とは通信可能に接続されている。検知処理部26は、通信部28および測距センサECU30を介して物体検知装置10および車両ECUに通信可能に接続されている。測距センサECU30は、車両1に設けられた複数の測距センサ20の各々と通信可能に接続されている。
【0025】
送波部22は、超音波を送波する。受波部24は、超音波の物体による反射波を受波する。送波部22および受波部24は、例えば、圧電素子などを介して超音波を送波および反射波を受波する。なお、送波部22は送波マイク、受波部24は受波マイクとも呼ぶ。
【0026】
検知処理部26は、送波部22から送波される超音波の送波タイミング、送波期間、超音波の周波数などを制御する。検知処理部26は、検知処理回路の一例である。また、検知処理部26は、送波部22で超音波が送波されてから受波部24で反射波を受波するまでの時間を計測することで、物体までの距離を算出する。検知処理部26は、受波した反射波の波高値が算出した距離に対応する閾値以上である場合、算出した距離を含む測距結果を、検知対象物の測距結果として測距センサECU30を介して車両ECUへ出力する。閾値との比較に用いる波高値は、例えば、受波した反射波の最初のピークの波高値である。なお、閾値との比較に用いる波高値は、受波した反射波の最初のピークと次のピークの各々の波高値の平均値であってもよい。測距結果には、反射波の波高値および距離が含まれる。
【0027】
車両1のイグニッション電圧から測距センサECU30に電力が供給されると、該測距センサECU30から車両1に設けられた複数の測距センサ20の各々へ電力が供給される。電力が供給されると、測距センサ20の各部は上記処理を実行する。
【0028】
図1に戻り説明を続ける。
【0029】
車両1には、撮影装置40が設けられている。
【0030】
撮影装置40は、車両1の周辺を撮影し、撮影画像データを得る。以下では、撮影画像データを、単に撮影画像と称して説明する。撮影装置40は、デジタルカメラ、ステレオカメラ、などである。撮影画像は、画素ごとに画素値を規定したデジタル画像データである。撮影装置40は、取得した撮影画像を物体検知装置10および車両ECUへ出力する。本実施形態では、撮影装置40は、時系列に沿って撮影を行い、撮影した撮影画像を物体検知装置10および車両ECUへ順次出力する。
【0031】
撮影装置40は、車両1に設けられた測距センサ20の観測範囲を少なくとも撮影範囲とするように配置されてもよい。本実施形態では、車両1には、撮影装置40として撮影装置40Fおよび撮影装置40Rが設けられている。撮影装置40Fは、車両1のフロント部分に設けられており、車両1周辺のフロント近辺を撮影した撮影画像を得る。撮影装置40Rは、車両1のリア部分に設けられており、車両1周辺のリア近辺を撮影した撮影画像を得る。なお、車両1に設けられる撮影装置40の個数および配置は、上記形態に限定されるものではない。
【0032】
また、車両1には、更にレーダー42が設けられていてよい。
【0033】
レーダー42は、車両1の周囲の物体を検知し、物体と車両1との距離を測距する。レーダー42は、電磁波であるミリ波を走査することで、車両1の周囲の物体を検知する。本実施形態では、車両1には、レーダー42としてレーダー42Fおよびレーダー42Rが設けられている。
【0034】
レーダー42Fは、車両1のフロント部分に設けられており、車両1周辺のフロント近辺を走査することで、車両1のフロント近辺の物体を検知する。レーダー42Rは、車両1のリア部分に設けられており、車両1周辺のリア近辺を走査することで、車両1のリア近辺の物体を検知する。なお、車両1に設けられるレーダー42の個数および配置は、上記形態に限定されるものではない。
【0035】
次に、物体検知システム100の機能的構成について詳細に説明する。
【0036】
図3における車両1に搭載された物体検知システム100は、測距センサ20と、測距センサECU30と、撮影装置40と、レーダー42と、記憶部32と、車両ECU34と、物体検知装置10と、を備える。また、図示は省略するが、物体検知システム100の搭載された車両1には、加速度等を計測するGセンサ、操舵角を検知する舵角センサ、イグニッションスイッチ・シフトレバー・アクセルペダル・ブレーキペダル等の操作部、等の各種の機器が設けられている。
【0037】
測距センサECU30、撮影装置40、記憶部32、車両ECU34、上記各種の機器、および物体検知装置10は、バス36を介して通信可能に接続されている。バス36には、例えば、CAN(Controller Area Network)等のローカルエリアネットワークを用いてもよい。
【0038】
記憶部32は、各種のデータを記憶する。記憶部32は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。記憶部32は、1または複数の記憶媒体から構成してもよい。
【0039】
車両ECU34は、車両1の走行を制御するECUである。車両ECU34は、ステアリング等の操作部から受付けたユーザによる操作情報などに応じて、車両1のエンジンやモータ等の駆動装置の制御、および車両1のトランスミッション等の伝達系装置の制御を実行する。また、車両ECU34は、測距センサ20から測距センサECU30を介して受け付けた測距結果に応じて、検知対象物との衝突を回避するように、ブザー等で乗員に対して検知対象物の存在を通知、車速やトルク制御による自動ブレーキにより衝突を回避または軽減、などの車両1の制動制御を実行する。
【0040】
次に、物体検知装置10について詳細に説明する。
【0041】
図4における物体検知装置10は、CPU(Central Processing Unit)11A、ROM(Read Only Memory)11B、RAM11C、およびI/F11D等がバス11Eにより相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0042】
CPU11Aは、本実施形態の物体検知装置10を制御する演算装置である。ROM11Bは、CPU11Aによる各種の処理を実現するプログラム等を記憶する。RAM11Cは、CPU11Aによる各種の処理に使用するデータを記憶する。I/F11Dは、データを送受信するためのインターフェースである。
【0043】
本実施形態の物体検知装置10で実行される情報処理を実行するためのプログラムは、ROM11B等に予め組み込んで提供される。なお、本実施形態の物体検知装置10で実行されるプログラムは、物体検知装置10にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供するように構成してもよい。
【0044】
図3に戻り説明を続ける。
【0045】
物体検知装置10は、測距センサ20で検知対象物の波高値の判別に用いる閾値をリアルタイムに更新するための情報処理装置である。
【0046】
上述したように、物体Dは、検知対象物D1と非検知対象物D2とに分類される。検知対象物D1は、測距センサ20による検知対象とする物体である。非検知対象物D2は、測距センサ20の検知対象外とする物体である。図5には、検知対象物D1として壁、非検知対象物D2として縁石、を一例として示す。
【0047】
また、上述したように、測距センサ20は、測距センサ20の受波部24で受波した反射波の波高値が、送波部22からの超音波の送波から該反射波の受波までの時間に応じて算出した物体Dまでの距離に対応する閾値以上である場合、算出した距離を含む測距結果を、検知対象物D1の測距結果として出力する。
【0048】
このため、測距センサ20の距離ごとの閾値は、非検知対象物D2の非検知性能を満たし、且つ、検知対象物D1の検知性能を満たすように設定されている。
【0049】
具体的には、測距センサ20の検知領域が検知領域E2となるように閾値が設定されている場合を想定する。この場合、測距センサ20は、非検知対象物D2を検知対象物D1として検出せず、検知対象物D1を検知対象物D1として検出するため、非検知対象物D2の非検知性能を満たし且つ検知対象物D1の検知性能を満たすものとなる。
【0050】
一方、測距センサ20の検知領域が検知領域E3となるように閾値が設定されている場合を想定する。この場合、測距センサ20は、検知対象物D1および非検知対象物D2の双方を検知対象物D1として検出するため、非検知対象物D2の非検知性能を満たさない。
【0051】
また、測距センサ20の検知領域が検知領域E1となるように閾値が設定されている場合を想定する。この場合、測距センサ20は、検知対象物D1および非検知対象物D2の双方を検知対象物D1として検出しないため、検知対象物D1の検知性能を満たさない。
【0052】
既存の技術では、固定サイズの非検知対象物D2に応じて予め設定された固定の閾値を用いていた。しかし、実環境において車両1の周辺に存在する非検知対象物D2のサイズは様々であり、固定の閾値を用いた場合、検知対象物D1が検知されない場合や、非検知対象物D2が検知対象物D1として検知される場合があった。例えば、既存の技術では、車両1の走行環境によっては、測距センサ20の検知対象領域が検知領域E1または検知領域E3に設定された状態となる場合があった。
【0053】
図6では、線図50は距離ごとの閾値Tを表す。線図52は、縁石に対する距離ごとの反射波の波高値W1を表す。線図54Aは、ポールに対する距離ごとの反射波の波高値W2を表す。線図54Bは、壁による反射波の波高値W3を表す。縁石は、非検知対象物D2の一例である。壁およびポールは、検知対象物D1の一例である。図6には、直径400mmのポールの例を示す。距離は、測距センサ20から物体Dまでの距離を表す。
【0054】
既存の技術では、距離に対応する閾値Tとして、距離ごとに固定の値が設定されていた。具体的には、ある固定サイズの非検知対象物D2が測距センサ20から各距離に位置されているときの反射波の波高値の推移が、線図52によって表される縁石の波高値W1の推移であった場合を想定する。この場合、既存の技術では、該固定サイズの非検知対象物D2を検出しないように、縁石の波高値W1を表す線図52より大きい固定の閾値Tを、距離ごとに予め設定していた(線図50参照)。また、既存の技術では、この距離ごとの閾値Tは、車両1の出荷時等に固定で設定され、変更しないように設定されていた。
【0055】
図6に示す線図50によって表される固定の閾値Tが予め設定されている既存の技術の形態を想定する。この場合、線図54Aによって表されるポールによる反射波の波高値W2が閾値T以上である距離0mから1.7mの範囲に、検知対象物D1である該ポールが位置している場合、該ポールは測距センサ20によって検知対象物D1として検知されることとなる。また、線図54Bによって表される壁による反射波の波高値W3が閾値T以上である距離0mから4mの範囲に、検知対象物D1である該壁が位置している場合、該壁は測距センサ20によって検知対象物D1として検知されることとなる。また、線図52によって表される縁石の波高値W1は、距離0mから4mの範囲において閾値T未満であるため、何れの距離に位置されている場合であっても検知対象物D1として検知されることはない。
【0056】
しかし、上述したように、実環境において車両1の周辺に存在する非検知対象物D2のサイズは様々である。しかし、既存の技術では、メーカー等から指定された固定サイズの非検知対象物D2に応じた1種類の閾値Tが設定されていた。また、既存の技術では、この固定の1種類の閾値Tを変更しないように設計されていた。このため、既存の技術では、閾値Tの設定時とは異なるサイズの非検知対象物D2が車両1の周辺に存在した場合、非検知対象物D2による反射波の波高値が閾値Tを超え、非検知対象物D2が検知対象物D1として検知される場合があった。例えば、既存の技術では、固定の閾値Tを用いているため、車両1の周辺の実環境によっては、検知対象物D1が検知されない場合や、非検知対象物D2が検知対象物D1として検知される場合があった。このため、既存の技術では、非検知対象物D2の非検知性能を満たし、且つ検知対象物D1の検知性能の劣化抑制を図ることは困難であった。
【0057】
図3に戻り説明を続ける。
【0058】
そこで、本実施形態の物体検知装置10は、測距センサ20において検知対象物D1の波高値の判別に用いる閾値Tをリアルタイムに更新する。
【0059】
詳細には、物体検知装置10は、処理部12を備える。処理部12は、各種の情報処理を実行する。例えば、CPU11Aが、ROM11BからプログラムをRAM11C上に読み出して実行することにより、処理部12の後述する各機能部がコンピュータ上で実現される。
【0060】
処理部12は、撮影画像取得部(画像取得部)12Aと、サイズ算出部12Bと、波高推定値計算部(波高推定部)12Cと、閾値計算部12Dと、更新部12Eと、を備える。撮影画像取得部12Aは、画像取得回路の一例である。サイズ算出部12Bは、サイズ算出回路の一例である。波高推定値計算部12Cは、波高推定回路の一例である。閾値計算部12Dは、閾値計算回路の一例である。更新部12Eは、更新回路の一例である。
【0061】
撮影画像取得部12A、サイズ算出部12B、波高推定値計算部12C、閾値計算部12D、および更新部12Eの一部または全ては、例えば、CPU11Aなどの処理装置にプログラムを実行させてもよいし、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)などのハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。
【0062】
また、撮影画像取得部12A、サイズ算出部12B、波高推定値計算部12C、閾値計算部12D、および更新部12Eの少なくとも1つを、ネットワークなどを介して物体検知装置10と通信可能に接続された外部の情報処理装置に搭載した構成としてもよい。
【0063】
また、撮影画像取得部12A、サイズ算出部12B、波高推定値計算部12C、閾値計算部12D、および更新部12Eの少なくとも1つを、測距センサ20の検知処理部26に搭載した構成としてもよい。
【0064】
撮影画像取得部12Aは、車両1の周辺の撮影画像を取得する。撮影画像取得部12Aは、撮影装置40で撮影された撮影画像を取得することで、車両1の周辺の撮影画像を取得する。
【0065】
サイズ算出部12Bは、撮影画像に基づいて、撮影画像に含まれる検知対象外の物体である非検知対象物D2のサイズを算出する。
【0066】
図7では、例えば、撮影画像取得部12Aで撮影された撮影画像60に非検知対象物D2の一例である縁石が写り込んでいた場面を想定する。
【0067】
サイズ算出部12Bは、撮影画像60を公知の画像解析技術を用いて解析することで、撮影画像60に含まれる非検知対象物D2を特定する。例えば、記憶部32には、非検知対象物D2とする複数種類の物体Dの各々の画像特徴量が予め記憶されている。サイズ算出部12Bは、撮影画像60に非検知対象物D2の画像特徴量に一致または類似する物体Dが含まれる場合、撮影画像60における該物体Dの領域を非検知対象物D2の領域として特定する。
【0068】
そして、サイズ算出部12Bは、撮影画像60に含まれる非検知対象物D2の領域のサイズを特定する。非検知対象物D2のサイズとは、非検知対象物D2における、測距センサ20の送波部22から送波された反射波の照射される面のサイズである。具体的には、非検知対象物D2のサイズとは、実空間における測距センサ20および撮影装置40との対向面のサイズである。図7には、非検知対象物D2の測距センサ20および撮影装置40との対向面が矩形状である場合を示す。この場合、非検知対象物D2のサイズは、撮影画像60における該非検知対象物D2の占める矩形状の領域の幅と高さによって表される。
【0069】
図3に戻り説明を続ける。
【0070】
波高推定値計算部12Cは、サイズ算出部12Bで算出された非検知対象物D2のサイズに基づいて、超音波の該非検知対象物D2による反射波の波高値の推定値である波高推定値を計算する。例えば、波高推定値計算部12Cは、撮影画像60に含まれる非検知対象物D2に対して、実空間において測距センサ20の送波部22から超音波が送波されたときに、該非検知対象物D2から受波部24によって受波される反射波の波高値の推定値を計算する。
【0071】
波高推定値計算部12Cは、該撮影画像60の撮影時の測距センサ20から該非検知対象物D2までの距離を取得する。例えば、波高推定値計算部12Cは、該撮影画像60と同じタイミングでレーダー42によって測定された非検知対象物D2までの距離を取得することで、測距センサ20から非検知対象物D2までの距離を取得する。また、波高推定値計算部12Cは、撮影画像60がステレオ画像である場合、撮影画像60を構成する各画素の画素値によって表される実空間上の位置と測距センサ20との距離を用いて、測距センサ20から非検知対象物D2までの距離を取得してもよい。
【0072】
そして、波高推定値計算部12Cは、サイズ算出部12Bで算出された非検知対象物D2のサイズから、測距センサ20の送波部22から送波された超音波の該非検知対象物D2の該サイズの反射面による反射波の反射強度を算出する。そして、波高推定値計算部12Cは、算出した反射強度から、超音波の該非検知対象物D2の該サイズの反射面への入射強度を算出する。波高推定値計算部12Cは、公知の算出式を用いて、反射強度および入射強度を算出してもよい。
【0073】
そして、波高推定値計算部12Cは、算出した入射強度に対する算出した反射強度を、該検知対象物D1による該サイズの反射面による超音波の反射率として算出する。
【0074】
更に、波高推定値計算部12Cは、算出した反射率と、取得した該非検知対象物D2までの距離に応じた指向性の減衰率と、該距離に応じた温湿度の減衰率と、を用いて、測距センサ20から該距離に該非検知対象物D2が位置されているときの波高値の推定値である波高推定値を計算する。この計算式には、公知の計算式を用いてもよい。
【0075】
閾値計算部12Dは、波高推定値計算部12Cで計算した波高推定値より大きい閾値Tを、該非検知対象物D2までの該距離に対応する閾値Tとして計算する。例えば、閾値計算部12Dは、波高推定値計算部12Cで計算した波高推定値より大きい閾値Tを、該波高推定値の計算に用いた非検知対象物D2のサイズを求めるために用いた撮影画像60の撮影時の該非検知対象物D2と測距センサ20との距離に対応する閾値Tとして計算する。
【0076】
閾値計算部12Dは、波高推定値計算部12Cで計算した波高推定値より大きい閾値Tを、該非検知対象物D2までの距離に対応する閾値Tとして計算してもよい。詳細には、閾値計算部12Dは、波高推定値より予め定めた値または予め定めた割合大きい閾値Tを計算してもよい。さらに詳細には、閾値計算部12Dは、波高推定値より予め定めた値または予め定めた割合大きく、且つ、検知対象物D1が所定距離で検知されるように、閾値Tを計算する。この所定距離は、予め設定してもよい。
【0077】
閾値計算部12Dは、波高推定値に対して、距離ごとに同じ割合または同じ値分大きい閾値Tを計算してよい。また、閾値計算部12Dは、上記条件を満たす範囲で、波高推定値に対して、距離ごとに異なる割合または異なる値分大きい閾値Tを計算してもよい。
【0078】
更新部12Eは、測距センサ20で用いる閾値Tを、閾値計算部12Dで計算した閾値Tに更新する。詳細には、更新部12Eは、閾値計算部12Dで計算された、非検知対象物D2までの距離に対応する閾値Tを、測距センサECU30へ出力する。測距センサECU30は、更新部12Eから受付けた距離と閾値Tとを対応付けて測距センサ20へ記憶する。測距センサ20の検知処理部26は、更新部12Eで更新された閾値Tおよび距離を対応付けて記憶し、以降の測距結果の出力処理に用いる。
【0079】
このため、測距センサ20は、以降の処理では、更新された閾値Tを用いて、反射波の波高値が、超音波の送波から該反射波の受波までの時間に応じて算出した物体Dまでの距離に対応する閾値T以上である場合、算出した距離を含む測距結果を、検知対象物D1の測距結果として出力することとなる。
【0080】
なお、波高推定値計算部12Cは、車両1に設けられた複数の測距センサ20の各々に、波高推定値を計算することが好ましい。詳細には、波高推定値計算部12Cは、車両1に設けられた測距センサ20の各々の設置高さ(地面からの高さ)および設置角度を更にパラメータとして用いて、上記と同様にして、複数の測距センサ20の各々に波高推定値を計算してもよい。
【0081】
この場合、閾値計算部12Dは、複数の測距センサ20の各々に閾値Tを計算し、更新部12Eは、対応する測距センサ20の各々の閾値Tを更新してもよい。
【0082】
図8では、線図52Aは、実空間における幅が0.12mの縁石に対する距離ごとの反射波の波高値W1Aを示す。非検知対象物D2の一例である該縁石に対する距離ごとの反射波の波高値W1Aが線図52Aによって示される場合、物体検知装置10による上記処理によって、例えば、線図51Aによって表される閾値T1となるように閾値Tが更新される。
【0083】
図54Aによって表される直径400mmのポールによる反射波の波高値W2が閾値T1以上である距離0mから1.35mの範囲に、検知対象物D1である該ポールが位置している場合を想定する。この場合、該ポールは測距センサ20によって検知対象物D1として検知されることとなる。また、線図52Aによって表される幅0.12mの縁石の波高値W1Aは閾値T未満である。このため、該縁石は、何れの距離に位置されている場合であっても検知対象物D1として検知されることはない。
【0084】
また、図8では、線図52Bは、実空間における幅が0.18mの縁石に対する距離ごとの反射波の波高値W1Bを示す。非検知対象物D2の一例である該縁石に対する距離ごとの反射波の波高値W1Bが線図52Bによって示される場合を想定する。この場合、物体検知装置10による上記処理によって、例えば、線図51Bによって表される閾値T2となるように閾値Tが更新される。
【0085】
図54Aによって表される直径400mmのポールによる反射波の波高値W2が閾値T2以上である距離0mから1.6mの範囲に、検知対象物D1である該ポールが位置している場合を想定する。この場合、該ポールは測距センサ20によって検知対象物D1として検知されることとなる。また、線図52Bによって表される幅0.18mの縁石の波高値W1Bは閾値T未満である。このため、該縁石は何れの距離に位置されている場合であっても検知対象物D1として検知されることはない。
【0086】
このように、本実施形態の物体検知装置10では、撮影画像60に含まれる非検知対象物D2のサイズに応じて測距センサ20からの距離ごとの閾値Tを更新する。このため、本実施形態の物体検知装置10は、車両1の周辺の実空間に存在する様々なサイズの非検知対象物D2に応じて該非検知対象物D2を非検知とし、且つ検知対象物D1を検知するように適切な閾値Tをリアルタイムに更新することができる。
【0087】
また、非検知対象物D2のサイズごとに波高推定値を計算し、該波高推定値に応じて閾値Tを計算することで、線図51Aによって表される閾値T1から線図51Bによって表される閾値T2のように、測距センサ20による検知対象物D1の検知距離を延ばすことが可能となる。
【0088】
次に、本実施形態の物体検知装置10で実行する情報処理の流れの一例を説明する。
【0089】
物体検知装置10は、車両1のイグニッション電源がオン状態となってからイグニッション電源がオフ状態となるまで、図9に示す情報処理を繰り返し実行してもよい。また、物体検知装置10は、車両1のイグニッション電源がオン状態となり、且つ、所定条件を満たした時に図9に示す情報処理を開始し、イグニッション電源がオフ状態となるまで繰り返し該情報処理を実行してもよい。所定条件は、測距センサ20による測距結果を用いた車両1の制動制御の開始条件などである。例えば、所定条件は、予め定めた時速以下、シフトレバーのシフト位置が所定位置となった場合、等であるがこれらに限定されない。
【0090】
撮影画像取得部12Aは撮影装置40から撮影画像60を取得する(ステップS100)。
【0091】
サイズ算出部12Bは、ステップS100で取得した撮影画像60に非検知対象物D2が含まれるか否かを判断する(ステップS102)。撮影画像60に非検知対象物D2が含まれないと判断した場合(ステップS102:No)、ステップS100へ戻る。撮影画像60に非検知対象物D2が含まれると判断した場合(ステップS102:Yes)、ステップS104へ進む。
【0092】
ステップS104では、サイズ算出部12Bは、ステップS100で取得した撮影画像60に含まれる非検知対象物D2のサイズを算出する(ステップS104)。
【0093】
サイズ算出部12Bは、ステップS104で算出した非検知対象物D2のサイズが前回算出したサイズと同じであるか否かを判断する(ステップS106)。前回算出したサイズと同じであると判断した場合(ステップS106:Yes)、ステップS100へ戻る。前回算出したサイズとは異なると判断した場合(ステップS106:No)、ステップS108へ進む。
【0094】
ステップS108では、波高推定値計算部12Cが、ステップS104で算出された非検知対象物D2のサイズに基づいて、超音波の該非検知対象物D2による反射波の波高推定値を計算する(ステップS108)。
【0095】
次に、閾値計算部12Dは、ステップS108で計算した波高推定値より大きい閾値Tを、該非検知対象物D2までの距離に対応する閾値Tとして計算する(ステップS110)。例えば、閾値計算部12Dは、ステップS100で取得した撮影画像60の撮影時の測距センサ20から該非検知対象物D2までの距離に対応する閾値Tとして、ステップS108で計算した波高推定値より大きい閾値Tを計算する。
【0096】
更新部12Eは、測距センサ20で用いる閾値Tを、ステップS110で計算した閾値Tに更新する(ステップS112)。更新部12Eは、ステップS110で計算した、非検知対象物D2までの距離に対応する閾値Tを、測距センサECU30へ出力する。測距センサECU30は、更新部12Eから受付けた距離と閾値Tとを対応付けて測距センサ20へ記憶する。このため、測距センサ20は、以降の処理では、新たに記憶された閾値Tを用いて、反射波の波高値が、超音波の送波から該反射波の受波までの時間に応じて算出した物体Dまでの距離に対応する閾値T以上である場合、算出した距離を含む測距結果を、検知対象物D1の測距結果として出力することとなる。そして、本ルーチンを終了する。
【0097】
以上説明したように、本実施形態の物体検知システム100は、測距センサ20と、撮影画像取得部12Aと、サイズ算出部12Bと、波高推定値計算部12Cと、閾値計算部12Dと、更新部12Eと、を備える。測距センサ20は、超音波を送波する送波部22と、超音波の物体Dによる反射波を受波する受波部24と、反射波の波高値が、超音波の送波から反射波の受波までの時間に応じて算出した物体Dまでの距離に対応する閾値T以上である場合、算出した距離を含む測距結果を、検知対象物D1の測距結果として出力する検知処理部26と、を有する。撮影画像取得部12Aは、車両1の周辺の撮影画像60を取得する。サイズ算出部12Bは、撮影画像60に基づいて、撮影画像60に含まれる検知対象外の物体Dである非検知対象物D2のサイズを算出する。波高推定値計算部12Cは、サイズに基づいて、超音波の非検知対象物D2による反射波の波高値の推定値である波高推定値を計算する。閾値計算部12Dは、波高推定値より大きい閾値Tを該非検知対象物D2までの距離に対応する閾値Tとして計算する。更新部12Eは、測距センサ20で用いる閾値Tを、閾値計算部12Dで計算した閾値Tに更新する。
【0098】
ここで、既存の技術では、固定サイズの非検知対象物D2に応じて予め設定された固定の閾値を用いていた。しかし、実環境において車両1の周辺に存在する非検知対象物D2のサイズは様々であり、固定の閾値を用いた場合、検知対象物D1が検知されない場合や、非検知対象物D2が検知対象物D1として検知される場合があった。
【0099】
一方、本実施形態の物体検知装置10では、車両1の周辺の撮影画像60に含まれる非検知対象物D2のサイズに基づいて、該非検知対象物D2の波高推定値を計算し、該波高推定値より大きい閾値Tを非検知対象物D2までの距離に対応する閾値Tとして計算する。そして、物体検知装置10の更新部12Eは、測距センサ20で用いる閾値Tを、閾値計算部12Dで計算した閾値Tに更新する。
【0100】
このため、本実施形態の物体検知システム100では、車両1の周辺に存在する非検知対象物D2のサイズに応じた適切な閾値Tを、測距センサ20で用いる閾値Tとして適宜更新することができる。例えば、本実施形態の物体検知装置10では、実空間に存在する様々なサイズの非検知対象物D2に応じて該非検知対象物D2を非検知とし、且つ検知対象物D1を検知するように適切な閾値Tをリアルタイムに更新することができる。
【0101】
このため、本実施形態の物体検知システム100は、非検知対象物D2の非検知性能を満たし、且つ検知対象物D1の検知性能の劣化抑制を図ることができる。
【0102】
また、既存の技術では、固定サイズの非検知対象物D2に応じて予め設定された固定の閾値を用いていた。このため、既存の技術では、測距センサ20の検知領域が狭まる場合があった。
【0103】
一方、本実施形態の物体検知システム100は、撮影画像60に含まれる非検知対象物D2のサイズに応じて測距センサ20からの距離ごとの閾値Tを更新する。このように、本実施形態の物体検知装置10は、周囲の非検知対象物D2に応じた適切な閾値Tを設定することができるため、非検知対象物D2の非検知性能を満たし、且つ検知対象物D1の検知性能の劣化抑制を図ることの可能な、測距センサ20のより広い検知領域を設定することが可能となる。
【0104】
なお、本実施形態では、物体検知装置10は、車両1に搭載された形態を一例として説明した。しかし、物体検知装置10は、車両1の外部に搭載された構成であってもよい。物体検知装置10は、車両1に設けられた測距センサ20、測距センサECU30、および撮影装置40などの各種の電子機器と通信可能に接続されていてもよい。このため、物体検知装置10は、車両1の外部に設けられた情報処理装置に搭載された形態であってもよい。この場合、物体検知装置10の搭載された情報処理装置と、上記各種の電子機器とを、ネットワークなどを介して通信可能に構成してもよい。なお、物体検知装置10は、測距センサ20の検知処理部26、または、測距センサECU30に含まれてもよい。
【0105】
なお、上記には、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲または要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0106】
また、上述した実施の形態における「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0107】
上記各実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0108】
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力端子と出力端子を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0109】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
【0110】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【符号の説明】
【0111】
1 車両
10 物体検知装置
12A 撮影画像取得部
12B サイズ算出部
12C 波高推定値計算部
12D 閾値計算部
12E 更新部
20 測距センサ
22 送波部
24 受波部
26 検知処理部
100 物体検知システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9