(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114168
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ディスポーザブルチップ
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20240816BHJP
C12M 1/33 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019742
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明松 江梨
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA15
4B029BB11
4B029CC01
4B029FA01
4B029GA08
4B029GB09
4B029GB10
(57)【要約】
【課題】細胞以外の液体を吸引するときには細胞の吸引を抑え、細胞塊を砕くときには容易に砕けるようにする。
【解決手段】ディスポーザブルチップは、中空の管部と、前記管部において液体が出入りする開口部から所定の間隔で配置されて前記開口部に対向し、前記開口部より面積が広い被支持部と、前記管部の外面と前記被支持部とを繋ぎ前記被支持部を支持する支持部と、を備える。上清を吸引するときには、細胞が吸引されるのを被支持部で防ぎ、再懸濁で細胞を砕くときには、開口部と被支持部との間で細胞塊を砕く。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の管部と、
前記管部において液体が出入りする開口部から所定の間隔で配置されて前記開口部に対向し、前記開口部より面積が広い被支持部と、
前記管部の外面と前記被支持部とを繋ぎ前記被支持部を支持する支持部と、
を備えるディスポーザブルチップ。
【請求項2】
前記開口部から前記被支持部までの距離が1mm以上3mm以下である
請求項1に記載のディスポーザブルチップ。
【請求項3】
前記被支持部は、前記開口部から見て円形であり、被支持部の直径が前記開口部の外径の3倍以上10倍以下である
請求項1に記載のディスポーザブルチップ。
【請求項4】
前記支持部の数が2以上である
請求項1に記載のディスポーザブルチップ。
【請求項5】
前記被支持部及び前記支持部はポリプロピレンで形成されている
請求項1に記載のディスポーザブルチップ。
【請求項6】
前記被支持部は無色透明である
請求項5に記載のディスポーザブルチップ。
【請求項7】
前記被支持部は、前記支持部に着脱可能である
請求項1に記載のディスポーザブルチップ。
【請求項8】
前記被支持部及び前記支持部はステンレスで形成されている
請求項1に記載のディスポーザブルチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスポーザブルチップに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養に関する作業においては、様々な作業過程の各要所において、容器内に獲得した細胞を誤って吸引除去してしまわないことや、小さいサイズの細胞塊あるいは単個細胞が均一に分散した細胞懸濁液を作製することが肝要である。これらの作業を、ピペットを用いて効率良く行うための発明として、例えば特許文献1-3に開示された発明がある。特許文献1に開示されたピペット用器具は、両端が開放された中空の柱状体の一方の端面にフィルターが設けられ、他方の端面側からピペットの先端が挿入される。この器具が先端に装着されたピペットでマイクロウェルの培養液を吸引するときには、培養液がフィルターを通してピペットに吸引されるが、マイクロウェルにある細胞は、フィルターを通過しないため、細胞をマイクロウェルに残すことができる。
【0003】
特許文献2に開示されたピペットチップは、ピペットチップが貫通する貫通孔と、液体が流通する複数の貫通孔とを有する板状部材を備えている。このピペットチップから液体を容器へ吐出すると、液面が上昇し、液体が板状部材の貫通孔を通って上面側へ到達する。この板状部材で貫通孔がある部分とない部分とで液体の流れが異なるため、液体の移動で速度の速い部分と遅い部分が生じ、速度が不均一であることから液体の撹拌が促進される。
【0004】
特許文献3に開示されたピペットチップは、本体部と、本体部の先端に配される直管部とを有し、直管部の内径が1mm以上1.5mm以下であり、直管部の長さが5mm以上15mm以下となっている。この条件のピペットチップを用いて細胞懸濁液の吸引と吐出を行うことにより細胞懸濁液中の細胞塊を砕いた場合、細胞塊のバラつきが少なくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-185127号公報
【特許文献2】特開2015-175837号公報
【特許文献3】特許第6004149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の器具では、ピペットからの液体の流れがフィルターにより遮られるため、細胞塊を砕くのには不向きである。特許文献2、3のピペットチップでは、例えば、細胞培養液を遠心分離して上清を除去するときに、ピペッティングの操作で細胞塊も吸い上げてしまう虞がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、細胞以外の液体を吸引するときには細胞の吸引を抑え、細胞塊を砕くときには容易に砕けるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るディスポーザブルチップは、中空の管部と、前記管部において液体が出入りする開口部から所定の間隔で配置されて前記開口部に対向し、前記開口部より面積が広い被支持部と、前記管部の外面と前記被支持部とを繋ぎ前記被支持部を支持する支持部と、を備える。
【0009】
本発明に係るディスポーザブルチップは、前記開口部から前記被支持部までの距離が1mm以上3mm以下であってもよい。
【0010】
本発明に係るディスポーザブルチップにおいては、前記被支持部は、前記開口部から見て円形であり、被支持部の直径が前記開口部の外径の3倍以上10倍以下であってもよい。
【0011】
本発明に係るディスポーザブルチップは、前記支持部の数が2以上であってもよい。
【0012】
本発明に係るディスポーザブルチップにおいては、前記被支持部及び前記支持部はポリプロピレンで形成されていてもよい。
【0013】
本発明に係るディスポーザブルチップは、前記被支持部は無色透明であってもよい。
【0014】
本発明に係るディスポーザブルチップにおいては、前記被支持部は、前記支持部に着脱可能であってもよい。
【0015】
本発明に係るディスポーザブルチップは、前記被支持部及び前記支持部はステンレスで形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、細胞以外の液体を吸引するときには細胞の吸引を抑え、細胞塊を砕くときには容易に砕くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係るディスポーザブルチップの斜視図である。
【
図2】
図2は、ディスポーザブルチップで上清を吸引する様子を示す図である。
【
図3】
図3は、ディスポーザブルチップを用いて細胞塊を砕く様子を示す図である。
【
図4】
図4は、ディスポーザブルチップの変形例を示す図である。
【
図5】
図5は、ディスポーザブルチップの変形例を示す図である。
【
図6】
図6は、ディスポーザブルチップの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0019】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係るディスポーザブルチップの斜視図である。ディスポーザブルチップ1は、所謂マイクロピペットのノズルに取り付けられる使い捨ての器具である。ディスポーザブルチップ1は、基部10、テーパ部11、被支持部21、及び2つの支持部22aで構成されている。
【0020】
基部10及びテーパ部11は、例えばポリプロピレンなどの合成樹脂又はステンレスなどの金属で形成されている。基部10及びテーパ部11の組は、本発明に係る管部の一例である。基部10は、中空円柱の形状である。基部10の上端の開口部は、マイクロピペットのノズルが挿入される。基部10の内径及び外径は、ディスポーザブルチップ1に挿入されるノズルの先端部に応じた径である。また、基部10の内径は、上端からテーパ部11まで一定の内径となっている。基部10と一体のテーパ部11は、基部10に連なる部分であり、中空の円錐形状であって外径及び内径が基部10側から下端に向かうにつれて小さくなっている。テーパ部11は、下端に開口部を有し、この開口部から内部に液体が出入りする。テーパ部11の先端の内径及び外径は、ディスポーザブルチップ1の液容量や、ディスポーザブルチップ1を用いて行う作業に応じた径である。
【0021】
被支持部21は、円形平板の形状の底部21aと、底部21aの円周部から上方へ底部21aに所定の角度をなして連なる側壁部21bとで構成されている。被支持部21は、例えばポリプロピレンなどの合成樹脂又はステンレスなどの金属で形成されている。底部21aの直径は、基部10の外形より大きいほうが好ましい。底部21aの上面は、テーパ部11の開口部に対向し、テーパ部11の下端から底部21aの上面までの間隔は、1mm以上3mm以下であるのが好ましい。1mm未満の場合は、ディスポーザブルチップ内の流路が狭くなりすぎ、大きな細胞塊がその流路を通過する際、細胞を傷める可能性があり、また、3mmより大きい場合は、上清の吸引時に細胞塊の吸引抑制効果が著しく低下するため不適である。側壁部21bは、上端の外径がテーパ部11の下端の外径の3倍以上10倍以下であるのが好ましい。3倍未満の場合は、上清の吸引時に細胞塊の吸引抑制効果が低く、また、10倍より大きい場合は、被支持部21が大きくなりすぎて、ディスポーザブルチップ1が装着されたマイクロピペットの操作性が低下するため不適である。ディスポーザブルチップ1が装着されたマイクロピペットの操作時において、被支持部21の下部にある細胞塊の位置を視認しやすくするため、被支持部21は、合成樹脂で形成されている場合、無色透明であるのが好ましい。
【0022】
支持部22aは、被支持部21を支持する部材であり、例えば被支持部21と同じ素材で形成されている。支持部22aの上端は、基部10の外周面に固着されており、支持部22aの下端は、側壁部21bの上端に固着されている。基部10における支持部22aの固着位置は、例えば、径方向に沿って基部10の中心を通る線と基部10の外周面との交点の位置である。基部10、テーパ部11、底部21a、及び側壁部21bは、上方から見て中心が一致しているのが好ましい。
【0023】
ディスポーザブルチップ1が装着されたマイクロピペットを用いて行う作業としては、例えば、培養した細胞の一部を採取し、新たな別の培養容器に移す継代がある。作業者は、継代の作業においては、培地から回収された細胞を遠心チューブ100に移して遠心分離し、遠心分離後に上清を吸引除去した後、遠心分離により固まっている細胞塊を砕き、砕かれて分離した細胞を新しい培養容器へ播種する。
【0024】
図2は、細胞Cが移された遠心チューブ100で遠心分離の作業を行った後、ディスポーザブルチップで上清L1を吸引する様子を示す図である。
図2(a)は、実施形態との比較のため、被支持部21及び支持部22aを備えていない周知のディスポーザブルチップ2が装着されたマイクロピペットで上清L1を吸引する様子を示している。遠心分離を行うと、遠心チューブ100の底に細胞塊CMが形成される。上清L1にディスポーザブルチップ2を入れて吸引を行うと、上清L1が矢印の方向でディスポーザブルチップ2へ流れ、
図2(a)に示すように上清L1と共に、細胞塊CMから細胞Cを分離させて吸い上げる虞がある。
【0025】
図2(b)は、実施形態に係るディスポーザブルチップ1が装着されたマイクロピペットで上清L1を吸引する様子を示している。上清L1にディスポーザブルチップ1を入れて吸引を行うと、テーパ部11の下端と細胞塊CMとの間に被支持部21があるため、
図2(b)に示す矢印の方向の流れで上清L1がディスポーザブルチップ1に吸引される。上清L1がディスポーザブルチップ1に吸引されても、細胞塊CMを形成する細胞Cのテーパ部11下端への移動が被支持部21により妨げられるため、上清L1と共に細胞Cがディスポーザブルチップ1に吸引されるのを抑えることができる。
【0026】
次に
図3は、ディスポーザブルチップを用いて遠心チューブ100内の細胞塊CMを砕く様子を示す図である。
図3(a)は、ディスポーザブルチップ2で細胞塊CMを砕く様子を示している。細胞培養液を遠心分離した後、遠心チューブ100の底部に沈殿した細胞塊CMを砕く場合、マイクロピペットに装着されたディスポーザブルチップ2を、細胞を含む培養液L2に入れ、遠心チューブ100とディスポーザブルチップ2との間で細胞を含む培養液L2の吸引及び吐出を1回以上行う。これにより、細胞を含む培養液L2の流れによって、
図3(a)に示すように遠心チューブ100の底にあった細胞塊CMが砕かれ、小さな細胞塊CMaとなる。細胞塊CMが砕かれた後、マイクロピペットに装着されたディスポーザブルチップ1を
図3(b)に示すように細胞を含む培養液L2に入れ、遠心チューブ100とディスポーザブルチップ1との間で細胞を含む培養液L2の吸引及び吐出を1回以上行う。遠心チューブ100とディスポーザブルチップ1との間で細胞を含む培養液L2の吸引及び吐出を行うと、
図3(b)に示すように、細胞塊CMaが
図3(b)に示す矢印の方向の流れで底部21a上に移動する。ここで、細胞塊CMaは、ディスポーザブルチップ1からの細胞を含む培養液L2の吸引と吐出の繰り返しにより、底部21aとテーパ部11との間の狭い流路を通過して剪断力を受けるため、細胞塊CMaをより細かく砕いてより小さいサイズとすることや、単個細胞として分散させることができる。
【0027】
また、ディスポーザブルチップ1、2の下端から吐出された液体の速度は、下端から遠くなるにつれて遅くなる。
図3(a)でディスポーザブルチップ2から吐出されて細胞塊CMに当たる細胞を含む培養液L2の速度をv1、細胞を含む培養液L2の密度をρ、ディスポーザブルチップ2から吐出された細胞を含む培養液L2の流量をQ、吐出された細胞を含む培養液L2により細胞塊CMに作用する力をF1とすると、F1=ρ×Q×v1である。一方、
図3(b)でディスポーザブルチップ1から吐出されて底部21aに当たる細胞を含む培養液L2の速度をv2、細胞を含む培養液L2の密度をρ、ディスポーザブルチップ1から吐出された細胞を含む培養液L2の流量をQ、吐出された細胞を含む培養液L2により底部21aに作用する力をF2とすると、F2=ρ×Q×v2となる。
【0028】
テーパ部11の下端から底部21aの上面までの距離は、ディスポーザブルチップ2の下端から遠心チューブ100の内面の下端までの距離より近いため、テーパ部11の下端から吐出されて底部21aに当たる液体の速度のv2は、ディスポーザブルチップ2の下端から吐出されて遠心チューブ100の内面の下端に当たる液体の速度のv1より速くなる。F1の式とF2の式とで、密度のρと流量のQは同じである場合、v1とv2の速度の違いによりF2がF1より大きくなる。即ち、底部21a上に移動した細胞塊CMaには、F1より大きいF2の力が作用するため、細胞塊CMaが崩れやすくなり、細胞塊CMaをより細かく砕いてより小さいサイズとすることや、単個細胞として分散させることができる。
【0029】
以上説明したように本実施形態に係るディスポーザブルチップ1によれば、上清L1を吸引するときには上清L1と共に細胞が吸引されるのを抑えることができる。また、ディスポーザブルチップ1によれば、細胞塊CMaを砕くときには、容易に細胞塊CMaを砕くことができる。また、ディスポーザブルチップ1が金属で形成されている場合、作業中に加熱して減菌することもできる。
【0030】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態および以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態および各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0031】
本発明においては、ディスポーザブルチップ1の形状は、上述した実施形態の形状に限定されるものではない。
図4は、本発明の変形例に係るディスポーザブルチップの断面図である。なお、
図4において、実施形態と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0032】
図4(a)に示すディスポーザブルチップ1Aは、被支持部21に替えて被支持部21Aを備えている点でディスポーザブルチップ1と相違する。被支持部21Aは、底部21aの上面に凸部21cが形成されている。凸部21cは、例えば半球の形状であるが、半球の形状に限定されるものではなく、多角錘の形状であってもよい。凸部21cは、例えばテーパ部11の下端の下方に設けられる。被支持部21Aによれば、凸部21cの表面では、テーパ部11から吐出される流体の速度が底部21aの上面より速いため、ディスポーザブルチップ1より強い力で細胞塊CMaを砕くことができる。
【0033】
図4(b)に示すディスポーザブルチップ1Bは、被支持部21に替えて被支持部21Bを備えている点でディスポーザブルチップ1と相違する。被支持部21Bは、側壁部21bに連なる側壁部21dを有する。側壁部21dは、側壁部21bの上端から被支持部21Bの中央側に所定の角度で傾斜している。被支持部21Bでは、側壁部21bより上に側壁部21dが設けられているため、上清を吸引するときには、細胞Cがテーパ部11と底部21aとの間に入るのを、被支持部21より抑えることができる。
【0034】
図4(c)に示すディスポーザブルチップ1Cは、被支持部21に替えて被支持部21Cを備えている点でディスポーザブルチップ1と相違する。被支持部21Cは、側壁部21bに替えて、底部21aの円周部から下方へ底部21aに所定の角度をなして連なる側壁部21bbを有する。側壁部21bbは、下方に向かって広がる形状であるため、上清を吸引するときには、細胞Cがテーパ部11へ下方から入るのを抑えることができる。
【0035】
図4(d)に示すディスポーザブルチップ1Dは、2つの支持部22aに替えて2つの支持部22bを備えている点でディスポーザブルチップ1と相違する。支持部22bは、例えば、上端がテーパ部11の外周面に固着され、下端が底部21aの上面に固着されている。支持部22bの長手方向は、基部10の中心軸と同じ方向である。なお、支持部22bの上端は、基部10の外周面に固着されていてもよい。
【0036】
図4(e)に示すディスポーザブルチップ1Eは、被支持部21に替えて被支持部21Eを備えている点でディスポーザブルチップ1と相違する。被支持部21Eは、底部21aの上面に2つの結合部21eを有する。結合部21eは、支持部22bの下端が嵌る凹部を有する。被支持部21Eは、支持部22bに着脱可能となっている。例えば、支持部22bの下端に結合部21eの凹部を嵌めることにより、被支持部21Eが支持部22bに取り付けられ、被支持部21Eが支持部22bにより支持される。また、底部21aに上方から力を加えることにより、支持部22bの下端から被支持部21Eを外すこともできる。底部21aを支持部22bから外すために、例えば、ディスポーザブルチップをマイクロピペットから外すイジェクターの機構と同様の機構をマイクロピペットに採用してもよい。
【0037】
被支持部21、21A、21B、21C、21D、21Eを上方から見たときの形状は、円形に限定されるものではない。
図5(a)は、本発明の変形例に係る被支持部21Fを上方から見たときの図である。支持部22a又は支持部22bに支持される被支持部21Fは、上方から見て六角形の形状の底部21aaと、上方から見て六角形の形状の側壁部21bcを有する。なお、底部21aaと側壁部21bcは、上方から見て六角形以外の多角形の形状であってもよい。また、底部21aaと側壁部21bcを上方から見たときの形状は、楕円形であってもよい。また、被支持部21は、
図5(b)に示すように、側壁部21bに切り欠き21fが設けられた形状であってもよい。
【0038】
図6は、本発明の変形例に係るディスポーザブルチップ1Fの断面図である。ディスポーザブルチップ1Fは、テーパ部11の下側に円管部12を有している点でディスポーザブルチップ1と相違する。ディスポーザブルチップ1Fでは、基部10、テーパ部11、円管部12が一体に形成されている。円管部12は、中空円柱の形状であり、テーパ部11の下部に連なっている。基部10、テーパ部11、円管部12の組は、本発明に係る管部の一例である。
【0039】
上述した実施形態及び変形例では、2つの支持部22a又は支持部22bで被支持部を支持しているが、被支持部を支持する支持部の数は3以上であってもよい。
【0040】
これまで、ディスポーザブルチップ1、1A~1Eがマイクロピペットに装着される例を説明したが、本発明に係るディスポーザブルチップは、マイクロピペットとは異なる器具に装着可能としてもよく、例えば、アスピレーターのノズル又はアスピレーターの金属製のニードルに装着してもよい。
【0041】
本発明は、ディスポーザブルチップに限定されるものではなく、例えばディスポーザブルピペットにおいて本発明に係るテーパ部、被支持部、及び支持部を設けるようにしてもよい。また、本発明に係るディスポーザブルチップと同じ構成を備えたディスポーザブルピペットは、電動ピペッターに装着されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、2 ディスポーザブルチップ
10 基部
11 テーパ部
12 円管部
21 被支持部
21a、21aa 底部
21b、21d、21bb、21bc 側壁部
21f 切り欠き
22a、22b 支持部
21c 凸部
21e 結合部
100 遠心チューブ
L1 上清
L2 培養液