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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011417
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】合成樹脂製の注出キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20240118BHJP
   B65D 47/10 20060101ALI20240118BHJP
   B65D 47/12 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B65D47/08 BSF
B65D47/10 BRL
B65D47/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113374
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000216195
【氏名又は名称】天龍化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 仁昭
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CB01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB01
3E084DC03
3E084EA02
3E084EB01
3E084EC03
3E084FA03
3E084FB08
3E084FC04
3E084GA07
3E084GB07
3E084HB01
3E084HC03
3E084LB02
(57)【要約】
【課題】瓶口からの抜き外しの容易性等を向上させたヒンジキャップを提供する。
【解決手段】注出キャップは、本体1と上蓋2とヒンジ3とを有している。本体1は、下向き外筒5と下向き内筒6と両者の上端に繋がった天板7とを有しており、天板7に注出部18を設けている。下向き外筒5には、周方向弱化線23を形成するための弱化用溝21と、弱化線が存在しない肉盗み用溝22とが一連に連続して形成されている。下向き外筒5のうち指掛け用凹所13の箇所にも周方向弱化線23bが形成されており、周方向弱化線23は180°を超えた角度で広がっている。従って、瓶口4からの抜き取りを容易化できる。肉盗み用溝22の箇所には周方向弱化線は存在しないため、下向き外筒5の強度が低下し過ぎることを防止できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
瓶口に打栓によって嵌着する本体と、前記本体に被さる上蓋とを備えて、
前記本体は、前記瓶口の上に位置する天板と、前記天板から垂下して前記瓶口の外周面に嵌着する下向き外筒と、前記天板に設けた注出部とを有しており、前記外筒に、当該下向き外筒を周方向に引き裂いて前記瓶口からの取り外しを容易化する周方向弱化線が形成されている合成樹脂製の注出キャップであって、
前記天板の上面に、前記周方向弱化線を形成するための弱化用溝と、前記下向き外筒を引き裂き不能に保持した肉盗み用溝とが、一連に連続した状態で周方向に延びるように開口している、
合成樹脂製の注出キャップ。
【請求項2】
前記本体と上蓋とは屈曲自在なヒンジを介して一体に繋がっており、
前記下向き外筒のうち前記周方向弱化線を備えた引き起し部の始端部は、前記下向き外筒のうち他の部位と引き千切り可能な補助弱化部を介して一体に繋がっていると共に、前記ヒンジと一体に繋がっている、
請求項1に記載した合成樹脂製の注出キャップ。
【請求項3】
前記上蓋の外周面のうち前記ヒンジと反対側に位置した部位の下端に開蓋用のタブが突設されて、前記本体の外周面のうち前記ヒンジと反対側の部に、前記タブの下方に位置した開蓋用の指掛け凹所が形成されており、
前記弱化用溝は、前記指掛け凹所を挟んで一方のエリアに設けた第1周方向弱化線と前記指掛け凹所の箇所に設けた第2周方向弱化線とで構成されて、前記肉盗み用溝は、前記指掛け凹所を挟んで他方のエリアに形成されている、
請求項2に記載した合成樹脂製の注出キャップ。
【請求項4】
瓶口に打栓によって嵌着する本体と、屈曲自在なヒンジを介して前記本体に繋がった上蓋とを備えており、
前記上蓋の外周面のうち前記ヒンジと反対側に位置した部位の下端に開蓋用のタブが突設されている一方、
前記本体は、前記瓶口の上に位置する天板と、前記天板から垂下して前記瓶口の外周面に嵌着する下向き外筒と、前記天板に設けた注出部とを有して、前記下向き外筒の外周面のうち前記ヒンジと反対側の部に、前記タブの下方に位置した開蓋用の指掛け凹所が形成されており、
かつ、前記下向き外筒には、当該下向き外筒を周方向に引き裂いて前記瓶口からの取り外しを容易化する周方向弱化線が形成されている、合成樹脂製の注出キャップであって、
前記天板の上面のうち前記指凹所を挟んで一方の部位に、第1周方向弱化線を形成するための弱化用溝が周方向に延びるように開口して、前記天板のうち前記指掛け凹所を挟んだ他方の部位に、前記外筒を引き裂き不能に保持した肉盗み用溝が開口しており、
前記下向き外筒のうち前記指掛け凹所の箇所には、上向きの溝を設けることなく薄肉化された第2周方向弱化線が前記第1周方向弱化線と連続した状態に形成されている、
合成樹脂製の注出キャップ。
【請求項5】
前記肉盗み用溝を前記弱化用溝よりも浅くすることにより、前記肉盗み用溝の箇所で前記下向き外筒は引き裂き不能に保持されている、
請求項1~4のうちのいずれかに記載した合成樹脂製の注出キャップ。
【請求項6】
前記肉盗み用溝の深さは前記弱化用溝と同じに設定されており、前記肉盗み用溝の下端部の内周面と前記下向き外筒の内周面との間の肉厚が破断不能な厚さに設定されている、
請求項1~4のうちのいずれかに記載した合成樹脂製の注出キャップ。
【請求項7】
瓶口に打栓によって嵌着する本体と、屈曲自在なヒンジを介して前記本体に繋がった上蓋とを備えており、
前記上蓋の外周面のうち前記ヒンジと反対側に位置した部位の下端に開蓋用のタブが突設されている一方、
前記本体は、前記瓶口の上に位置する天板と、前記天板から垂下して前記瓶口の外周面に嵌着する下向き外筒と、前記天板に設けた注出部とを有して、前記下向き外筒の外周面のうち前記ヒンジと反対側の部に、前記タブの下方に位置した開蓋用の指掛け凹所が形成されており、
かつ、前記下向き外筒には、当該下向き外筒を周方向に引き裂いて前記瓶口からの取り外しを容易化する周方向弱化線が形成されている、合成樹脂製の注出キャップであって、
前記天板の上面のうち前記指掛け凹所を挟んで一方の部位に、前記周方向弱化線を形成するための弱化用溝が周方向に延びるように開口して、前記天板のうち前記指掛け凹所を挟んだ他方の部位に、前記破断溝部よりも浅い深さに設定された穴の群が周方向に断続的に配置されているか、又は、前記破断溝部よりも浅い溝が周方向に長く形成されている、
合成樹脂製の注出キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、内容物を注出するためにボトル(容器)の瓶口に打栓で装着される合成樹脂製の注出キャップに関し、ボトルから分別する技術に特徴を有している。
【背景技術】
【0002】
瓶口に打栓で装着される合成樹脂製の注出キャップは、調味料包装用のボトルを初めとして様々なボトルに使用されている。打栓タイプの注出キャップはボトルへの装着が容易でシール性にも優れているが、内容物を消費した後のボトルとの分別が面倒であり、これが注出キャップ及びボトルのリサイクルの障害になっていた。
【0003】
そこで、消費者がボトルからの分別を容易に行えるための対策が多々提案されている。その一例として特許文献1には、キャップ本体を構成する筒状側壁(本願発明の下向き外筒)の上面に溝部を有する構成において、溝部を、破断溝部と非破断溝部とで構成して、両者の間に溝部及び弱化線が存在しない部分を介在させることが開示されている。
【0004】
すなわち、特許文献1では、実施形態を参酌すると、破断溝部と非破断溝部とはいずれも同じ深さで同じ断面形状に形成されており、両者の間に溝が存在せずに弱化部(溝無し部)が存在しない部位を介在させることにより、一方の溝部を破断溝部として機能させて他方の溝部を非破断溝部として機能させていると思料される。
【0005】
更に述べると、特許文献1は、破断溝部と非破断溝部とはいずれも同じ深さで同じ断面形状に形成して対向させることにより、打栓に際しての変形を共通化して打栓不良を防止しつつ、2つの溝部の間に破断不能な溝無し部を介在させることにより、他方の溝部を非破断溝部と成して、ボトルからの取り外しに際しての引っ張り力を溝無し部に集中させて瓶口からの抜き外しを容易化しているものと思料される。
【0006】
また、特許文献1はヒンジキャップを主たる実施形態としており、上蓋を分別時の摘みに兼用して、溝無し部をヒンジと反対側の部位(開蓋用のタブの下方の部位)に配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5613489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおり、特許文献1では、打栓時の変形を全体として共通化するために破断溝部と非破断溝部とを同じ深さで同じ断面形状に形成しているが、引っ張り力を特定箇所に集中させてボトルからの抜き取りを容易化するためには、破断溝部を本体の半周程度の範囲に設定せねばならず、そこで、ヒンジキャップでは、ヒンジと反対側の部位に破断不能な溝無し部を配置している。
【0009】
しかるに、溝無し部は周方向にある程度の幅寸法があるため、ヒンジキャップにおいてヒンジと反対側の部位に破断不能な溝無し部を配置すると、破断溝部を設けたエリア(弱化線を設けたエリア)の範囲に広がり角度に限度があるため、キャップをボトルから取り外すに際して瓶口に対する筒状側壁の係合力を十分に解除できずに、取り外しの軽快性が不十分になることが懸念される。
【0010】
また、特許文献1のように破断溝部と非破断溝部とが同じ深さで同じ断面形状に設定されていると、ほぼ全周に亙って弱化線が形成されているのと同じになるため、筒状側壁が全体として強度が低下し過ぎることも懸念される。
【0011】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は様々な構成を含んでおり、典型例を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は、
「瓶口に打栓によって嵌着する本体と、前記本体に被さる上蓋とを備えて、
前記本体は、前記瓶口の上に位置する天板と、前記天板から垂下して前記瓶口の外周面に嵌着する下向き外筒と、前記天板に設けた注出部とを有しており、前記外筒に、当該下向き外筒を周方向に引き裂いて前記瓶口からの取り外しを容易化する周方向弱化線が形成されている」
という合成樹脂製の注出キャップにおいて、
「前記天板の上面に、前記周方向弱化線を形成するための弱化用溝と、前記下向き外筒を引き裂き不能に保持した肉盗み用溝とが、一連に連続した状態で周方向に延びるように開口している」
という特徴を備えている。
【0013】
請求項2の発明は請求項1の展開例であり、
「前記本体と上蓋とは屈曲自在なヒンジを介して一体に繋がっており、
前記下向き外筒のうち前記周方向弱化線を備えた引き起し部の始端部は、前記下向き外筒のうち他の部位と引き千切り可能な補助弱化部を介して一体に繋がっていると共に、前記ヒンジと一体に繋がっている」
という構成になっている。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2の展開例であり、
「前記上蓋の外周面のうち前記ヒンジと反対側に位置した部位の下端に開蓋用のタブが突設されて、前記本体の外周面のうち前記ヒンジと反対側の部に、前記タブの下方に位置した開蓋用の指掛け凹所が形成されており、
前記弱化用溝は、前記指掛け凹所を挟んで一方のエリアに設けた第1周方向弱化線と前記指掛け凹所の箇所に設けた第2周方向弱化線とで構成されて、前記肉盗み用溝は、前記指掛け凹所を挟んで他方のエリアに形成されている」
という構成になっている。
【0015】
請求項4の発明は請求項1と並立して上位概念を成すもので、
「瓶口に打栓によって嵌着する本体と、屈曲自在なヒンジを介して前記本体に繋がった上蓋とを備えており、
前記上蓋の外周面のうち前記ヒンジと反対側に位置した部位の下端に開蓋用のタブが突設されている一方、
前記本体は、前記瓶口の上に位置する天板と、前記天板から垂下して前記瓶口の外周面に嵌着する下向き外筒と、前記天板に設けた注出部とを有して、前記下向き外筒の外周面のうち前記ヒンジと反対側の部に、前記タブの下方に位置した開蓋用の指掛け凹所が形成されており、
かつ、前記下向き外筒には、当該下向き外筒を周方向に引き裂いて前記瓶口からの取り外しを容易化する周方向弱化線が形成されている」
という基本構成になっている。
【0016】
そして、
「前記天板の上面のうち前記指凹所を挟んで一方の部位に、第1周方向弱化線を形成するための弱化用溝が周方向に延びるように開口して、前記天板のうち前記指掛け凹所を挟んだ他方の部位に、前記外筒を引き裂き不能に保持した肉盗み用溝が開口しており、
前記下向き外筒のうち前記指掛け凹所の箇所には、上向きの溝を設けることなく薄肉化された第2周方向弱化線が前記第1周方向弱化線と連続した状態に形成されている」
という特徴を備えている。
【0017】
請求項5の発明は請求項1~4うちのいずれかを具体化したもので、
「前記肉盗み用溝を前記弱化用溝よりも浅くすることにより、前記肉盗み用溝の箇所で前記下向き外筒は引き裂き不能に保持されている」
という特徴を備えている。
【0018】
請求項5の発明も請求項1~4うちのいずれかを具体化したもので、
「前記肉盗み用溝の深さは前記弱化用溝と同じに設定されており、前記肉盗み用溝の下端部の内周面と前記下向き外筒の内周面との間の肉厚が破断不能な厚さに設定されている」
という特徴を備えている。
【0019】
請求項7の発明は請求項1,4と並立して上位概念を成すもので、請求項4と同じ基本構成において、
「前記天板の上面のうち前記指掛け凹所を挟んで一方の部位に、前記周方向弱化線を形成するための弱化用溝が周方向に延びるように開口して、前記天板のうち前記指掛け凹所を挟んだ他方の部位に、前記破断溝部よりも浅い深さに設定された穴の群が周方向に断続的に配置されているか、又は、前記破断溝部よりも浅い溝が周方向に長く形成されている」
という構成になっている。
【0020】
請求項7において、本体のうち指掛け凹所を形成している部位(ヒンジと反対側の自由端部)は、弱化線が存在しない非破断部になっていてもよいし、第1周方向弱化線に連続した第2周方向弱化線が形成されていてもよい。
【0021】
本願各発明において、弱化用溝はその機能からして一連に延びている必要があるが、請求項1~6の肉盗み用溝は必ずしも一連に延びている必要はなく、断続していてもよい。すなわち、請求項7のように複数の穴の群が周方向に断続的に並んでいる態様も、本願発明では肉盗み用溝として観念できる。
【0022】
なお、請求項1の発明は上蓋をねじ蓋に構成している注出キャップにも適用できる。この場合は、第1弱化用溝が形成されている引き起し部の始端部(非破断溝部との連結部と反対側の端部)に、人が引っ張るための摘み片を設けたらよい(ヒンジキャップにおいても摘み片を設けることは可能であるが、ヒンジキャップでは上蓋を摘みに兼用するのが合理的である。)。
【0023】
また、本願各発明において、注出部は、ブルタプを備えていて閉鎖板を引き裂く方式と、開蓋するとそのまま注出できるノズル式とのいずれも採用できる。或いは、アルミ箔等のシール材で封止して、シール材を除去又は破ることで開封するタイプ等も採用可能である。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明では、下向き外筒のうち肉盗み用溝を設けた部位は引き裂き不能に保持されているため、下向き外筒が全体として強度が低下し過ぎることを防止して、打栓不良率の低下に貢献可能となる。
【0025】
また、特許文献1のような溝無し部は不要であることから、弱化用溝と肉盗み用溝との範囲を自由に設定できるため、弱化用溝は周方向に180°を越える範囲に設定することも容易であり、このため、瓶口からの取り外しに際して瓶口に対する下向き外筒の係合力を十分に解除して、注出キャップを瓶口から除去することを容易化できる。
【0026】
請求項2の構成では、ヒンジキャップに適用して上蓋を摘みに兼用できるため、弱化用溝を設けた部位(引き起し部)に対して強い引っ張り力を作用させることができる。従って、注出キャップの除去を容易に行える。
【0027】
請求項3はヒンジキャップの展開例であるが、下向き外筒のうち指掛け凹所の箇所に第2周方向弱化線が形成されているため、弱化線は周方向の180°よりも広い範囲に形成できる。このため、瓶口に対する下向き外筒の係合力を低下させることを確実化して、瓶口からの注出キャップの取り外しの容易化に貢献できる。
【0028】
ヒンジキャップにおいて、下向き外筒のうちヒンジと反対側の部位には指掛け用凹所を設けていることが多いが、指掛け用凹所を設けるとその部分の肉厚は薄くなる。このため、指掛け用凹所の箇所に弱化用溝を形成するに当たっては、指掛け用凹所の箇所では弱化用溝の溝幅を小さくせねばならず、すると、金型の強度が低下するおそれがある。さりとて、指掛け用凹所を無くすと上蓋を起こしにくくなるため得策でない。
【0029】
この点、請求項4のように、指掛け用凹所の箇所に弱化用溝を設けることなく第2周方向弱化線を形成すると、開蓋の容易性と金型の強度低下とをもたらすことなく周方向弱化線を適度な範囲に設定して、瓶口からの注出キャップの除去を容易化できる。
【0030】
肉盗み用溝の形状や深さは様々に設定できる。請求項5のように単純に浅くして下向き外筒を破断不能に保持すると、金型を単純化できる。他方、請求項6のように弱化用溝と同じ深さにしつつ下端部を幅狭にして下向き外筒の内周部を破断不能な肉厚に設定すると、打栓時の変形の均一化を確実化できる利点がある。
【0031】
さて、本体に破断溝部のみを半周程度形成することは従来から提案されているが、この場合は、破断溝部が形成されていない部位の肉厚が厚くなるため、成型後に、天板の上面又は外周面や下向き外筒の外周面にヒケが発生しやすくなることが懸念される。さりとて、特許文献1のように、破断溝部と同じ深さの非破断溝部を形成すると、既述のとおり強度が低下し過ぎてしまうことが懸念される。
【0032】
この点、請求項7のように、弱化用溝と反対側の非破断部に穴の群を形成したり浅い溝を形成したりすると、成型後の収縮が穴の群によって吸収されることにより、ヒケを防止できる。この場合、ヒケ防止のための穴又は溝は弱化用溝に比べて浅いので、非破断部の強度が過度に低下することはなくて、打栓を安定的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1実施形態を示す図で、(A)は閉蓋状態での正面図、(B)は閉蓋状態での背面図、(C)は開蓋状態の平面図、(D)は開蓋状態の底面図である。
図2】第1実施形態を示す図で、(A)は閉蓋状態での縦断側面図、(B)は(A)のB-B視断面図、(C)は開蓋状態の縦断側面図、(D)は(A)の要部拡大図である。
図3】(A)は第1実施形態の分離正面図、(B)は肉盗み用溝を設けている部位の拡大図、(C)は第2実施形態の正面図、(D)は第3実施形態の断面図、(E)は第4実施形態に係る肉盗み用溝の展開図である。
図4】第5実施形態を示す図で、(A)は分離正面図、(B)は開蓋状態の縦断側面図、(C)は(B)のC-C視断面図である。
図5】(A)は第6実施形態の要部断面図、(B)は第7実施形態の要部断面図、(C)は第8実施形態の展開図、(D)は第9実施形態の展開図、(E)は第10実施形態の開蓋状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。各実施形態はヒンジキャップに適用している。以下及び図面の説明で方向を特定するため正面図、側面図の文言を使用しているが、ヒンジ3と反対側から見た方向を正面視方向として定義している。
【0035】
(1).第1実施形態の基本構造
まず、図1図3(B)に示す第1実施形態を説明する。注出キャップはポリエチレンのような比較的軟質の合成樹脂製を材料にして射出成形法によって製造されており、本体1と上蓋2とヒンジ3とを備えている。なお、図2(B)(C)では、本体1と上蓋2とのハッチングの方向を変えている(図4(B)も同様である。)。
【0036】
本体1は、瓶口4に外側から密嵌する下向き外筒5と、瓶口4に内側から密嵌する下向き内筒6と、両者の上端に繋がった天板(頂壁)7とを備えており、天板7の一側部にヒンジ3を介して上蓋2が一体に繋がっている。ヒンジ3は、幅広のセンターヒンジ3aと幅狭の一対のサイドヒンジ(フィルムヒンジ)2bとで構成されている。
【0037】
本体1の天板7には、その外周から少し入り込んだ状態で環状突起8が形成されている。環状突起8には外向きに突出した外向き係合部9が形成されている。一方、図2(C)に示すように、上蓋2における筒部の開口縁には、本体1の環状突起8が入り込む段部10が形成されており、段部10に、環状突起8の外向き係合部9と係合する内向き係合部11が形成されている。
【0038】
上蓋2の筒部のうちヒンジ3と反対側の部位の下端(閉蓋状態での下端)には、開蓋に際して指先をかけるタブ12を突設している。また、下向き外筒5及び天板7の外周面のうちヒンジ3と反対側の部位には、タブ12への指かかりを良くするための指掛け凹所13を形成している。タブ12と指掛け用凹所13との周方向の幅寸法は、ほぼ同じに設定されている。
【0039】
本体1を構成する下向き外筒5には、瓶口4の外向き環状凹所14に係合する内向き環状突起15を形成している。従って、本体1は、弾性変形を利用して瓶口4に強制嵌合(打栓)される。瓶口4の上端部の外周面は上窄まりのテーパ面になっている。これに対応して、下向き外筒5の上端部は軸心側に倒れた上傾斜面16になっている。
【0040】
本体1の天板7には、上向きに膨れたランド部17が形成されている。ランド部17は、ヒンジ3と反対側にずれた部位に向けて窄まるような山形を成しており、上面の全体が上向きに凹んだ曲面を成している。そして、ヒンジ3と反対側に位置して最も高くなった部位に、注出部の一例としてのノズル18を突設している。従って、ノズル18は、本体1の軸心挟んでヒンジ3と反対側にずれている。
【0041】
上蓋2の内底面には、閉蓋状態でノズル18に密嵌するシール突起(中足)19が突設されている。シール突起19の先端部(閉蓋状態での下端部)は、瓶口4への嵌脱を容易にするため側面視で山形に形成されている。
【0042】
(2).分別のための構造
図1(C)に示すように、本体1の天板7のうち環状突起8の外側の部位には、大まかに環状突起8の左側に位置した弱化用溝21と、おおまかに環状突起8の右側に位置した肉盗み用溝22とが、平面視で対向するような姿勢でかつ互いに繋がった状態で開口している。下向き外筒5のうち弱化用溝21の下方の部位が、引き起し部になっている。
【0043】
弱化用溝21は、ヒンジ3と指掛け用凹所13との間に位置した第1弱化用溝(メイン弱化用溝)21aと、指掛け用凹所13の箇所に位置した第2弱化用溝21bと、ヒンジ3の箇所に位置した第3弱化用溝21cで構成されており、全体として周方向に180°を越える範囲に延びている。
【0044】
弱化用溝21(21a,21b,21c)は下向き外筒5の内部まで入り込んでおり、その下端は、下向き外筒5の上傾斜面16の下端近傍に位置している。このため、下向き外筒5のうち弱化用溝21と上傾斜面16とで挟まれた部位が周方向弱化線23になっている。すなわち、第1弱化用溝21aの箇所には第1周方向弱化線23aが形成されて、第2弱化用溝21bの箇所には第2周方向弱化線23bが形成されて、第3弱化用溝21cの箇所には第3周方向弱化線23cが形成されており、第1~第3の周方向弱化線23a~23cは一体に連続している。
【0045】
図1(B)(C)に示すように、天板7及び下向き外筒5のうちヒンジ3の右端に隣接した部位に、上向きと外向きとに開口した縦溝24が形成されている。縦溝24は下向き外筒5の下端近くまで延びており、縦溝24の下方に引き千切り可能なブリッジ25が形成されている。すなわち、引き起し部の始端が、ブリッジ25を介して下向き外筒5の固定部に繋がっている。
【0046】
開蓋状態で上蓋2を斜め上向きに引っ張るとまずブリッジ25が千切れ、次いで、上蓋2を左周り方向に引っ張ると、下向き外筒5は、第3周方向弱化線23c、第1周方向弱化線23a、第2周方向弱化線23bの順で引き裂かれていく。
【0047】
第1~第3の弱化用溝21a~21cの下端は同じ深さになっているが、図2(A)(C)(D)及び図3(A)に示すように、第2弱化用溝21bの箇所では外壁26が半分程度の高さに切り欠かれている。これは、指掛け用凹所13が存在することによって第2弱化用溝21bの溝幅を狭くせざるを得ないため、金型うち第2弱化用溝21bを形成する部分が薄くなって強度が低下する問題があることから、外壁26の上部を切り欠くことにより、金型に強度が弱い部分ができることを回避したことに起因している。
【0048】
そして、指掛け用凹所13の箇所で外壁26が切り欠かれていると、打栓後に容器に冷却等のためにシャワリングしたときに水が第2弱化用溝21bに侵入するおそれがあるが、これを防止するために、上蓋2に、外壁26に上から当接する舌片27を下向きに突設している。充填後にシャワリングしない場合は、舌片27を設ける必要はない。
【0049】
肉盗み用溝22は第2弱化用溝21bと連続しているが、図3(B)に示すように、深さは弱化用溝21よりも浅くなっている。従って、下向き外筒5の上傾斜面16と肉盗み用溝22との間の部位は、引っ張っても破断しない厚さになっている。肉盗み用溝22の深さH1は、例えば、弱化用溝21の深さH2の80~50%に設定できる。
【0050】
(3).まとめ
以上の構成において、ボトルの内容物を消費しきってから注出キャップとボトルとを分別するに際しては、既述のとおり、開蓋状態で上蓋2を斜め上向きに引っ張ってまずブリッジ25が千切り、次いで、図1(C)に矢印Fで示すように、上蓋2を左周り方向に引っ張って、第3周方向弱化線23c、第1周方向弱化線23a、第2周方向弱化線23bの順で千切っていく(引き裂いていく)。
【0051】
すると、肉盗み用溝22の箇所では下向き外筒5は千切れないため、第2周方向弱化線23bが引き裂かれきると破断はそこで停止して、引っ張り力は肉盗み用溝22の始端部に集中する。このため、下向き外筒5に対して強い引っ張り力が掛かって、下向き外筒5と下向き内筒6とが瓶口4から離脱する。これにより、注出キャップを瓶口4から取り外される。
【0052】
本実施形態では、第3弱化用溝21及び第3周方向弱化線23cの始端はヒンジ3の右端の箇所に位置しているが、指掛け用凹所13の箇所に第2弱化用溝21b及び第2周方向弱化線23bが形成されているため、弱化用溝21及び周方向弱化線23を設けた範囲は、180°を越えた角度θに大きく広がっている。このため、瓶口4に対する下向き外筒5の係合力を弱めて、瓶口4からの注出キャップの抜き外しを簡単に行える。
【0053】
さて、実施形態の場合、注出キャップの抜き取りに際しては、一般に、左手でボトルを掴持して右手で上蓋2を引っ張ることになり、ボトルを図1(C)に矢印28で示す方向から掴持するのが普通である。そして、指掛け用凹所13の箇所が破断不能な溝無し部になっていると、周方向弱化線23は周方向に大凡180°の範囲で広がるため、力の作用点は注出キャップを二分する中心線Oの外側(左手と反対側)に位置する。
【0054】
その結果、周方向弱化線23を引き裂いた後の引っ張り力は矢印29で示すように作用して、下向き外筒5を人の左手から離そうとする。このため、人はボトルが左手から離れないように、左手でボトルをしっかりと掴持しておらねばならず、すると、消費者に負担がかかる。
【0055】
これに対して本実施形態のように指掛け用凹所13の箇所に第2弱化用溝21b及び第2周方向弱化線23bを設けると、周方向弱化線23を設けた範囲は180°よりも遥かに大きい角度θになって、引っ張り力の作用点は注出キャップを二分する中心線Oの内側(左手に近い側)に位置するため、引っ張り力が、矢印30で示すように、注出キャップを左手に近づけるように作用する。従って、人はボトルを必要以上にしっかかりと掴持している必要はなくて、注出キャップの抜き取り(下向き内筒6の抜き取り)に要する力を軽減できる。
【0056】
また、肉盗み用溝22は弱化用溝21よりも浅いため、下向き外筒5の強度が低下し過ぎることを防止して、打栓不良を低減できる。実施形態では、肉盗み用溝22の深さH1を弱化用溝21の深さH2の70~80%に設定しているが、この程度の割合に設定すると、弱化用溝21と肉盗み用溝22との箇所で下向き外筒5の圧縮強度を実質的に同じに保持しつつ、肉盗み用溝22の箇所での破断を防止できる。
【0057】
(4).他の実施形態
次に、図3(C)以下に示す他の実施形態を説明する。図3(C)に示す第2実施形態では、指掛け用凹所13の箇所に設けて第2弱化用溝21bを、肉盗み用溝22に向けて高さが徐々に高くなるように傾斜させている。従って、第2周方向弱化線23bの厚さは肉盗み用溝22に向けて厚くなっている。
【0058】
図3(D)に示す第2では、肉盗み用溝22は弱化用溝21と同じ深さに設定しつつ、下端部の内側面を下に向けて外側にずれる下傾斜面22aに形成することにより、下向き外筒5の上傾斜面16と肉盗み用溝22の下傾斜面22aとの間を破断不能部と成している。この実施形態では、弱化用溝21の断面積と肉盗み用溝22の断面積とは殆ど同じになるので、強度の一定化機能に優れている。
【0059】
図3(E)に第3実施形態では、肉盗み用溝22は、弱化用溝21より浅い部分22bと弱化用溝21と同じ深さの部分22cとが交互に連続した形態になっている。この場合は、弱化用溝21よりも浅い部分22bでは下向き外筒5は破断不能になるため、弱化用溝21と同じ深さの部分22cがあっても、肉盗み用溝22の箇所で下向き外筒5が引き裂かれることはない。
【0060】
図4に示す第4実施形態は、プルタブによって開封するタイプにて適用している。すなわち、この実施形態では、天板7に閉鎖板31を一体に設けて、閉鎖板31に薄肉部(スコア)32で囲われた開封部33を形成し、開封部33のうちヒンジ3に近い部位に、柱34aを介してリング状のプルタブ34を一体に設けている。また、天板7には注出筒35を一体に設けており、上蓋2には、注出筒35に嵌入する中足36を設けている。
【0061】
この実施形態では、指掛け用凹所13の箇所には弱化用溝21は形成されておらず、いわば、第1実施形態の外壁26を完全に除去した状態になっている。従って、下向き外筒5のうち指掛け用凹所13を設けた部位には第2周方向弱化線23bのみが形成されている。肉盗み用溝22は、図3(D)の形態を採用しているが、第1実施形態のように深さを浅くした方式も採用できる。
【0062】
この実施形態では、指掛け用凹所13の箇所には弱化用溝は存在しないため、金型の強度が部分的に低下することはない。また、指掛け用凹所13の箇所に弱化用溝は存在しないため、打栓後のシャワリングに際して水が溜まるといった問題もない。周方向弱化線23は第1実施形態と同様に180°以上の角度で広がっているため、第1実施形態と同様に注出キャップの取り外しは容易である。
【0063】
図5(A)に示す第6実施形態及び図5(B)に示す第7実施形態では、肉盗み用溝22の深さはごく浅く設定している。第6実施形態では、肉盗み用溝22は正四角形の断面形状になって、第7実施形態では、肉盗み用溝22は逆台形の断面形状になっている。三角形(V形)や円弧状、U形の断面形状も採用できる。
【0064】
これら第6,7実施形態の肉盗み用溝22は、成形後に天板7の上面又は外周面や下向き外筒5の外周面にヒケが発生することを防止する(或いはヒケを隠す)機能を主としている。第6,7の実施形態は、図4の実施形態のように本体1の自由端部に溝無しで第2周方向弱化23bを形成した態様にも適用できる。第6,7実施形態から理解できるように、請求項1,4では、肉盗み用溝22は必ずしも打栓時の強度均等化機能を備えていなくてもよい。
【0065】
図5(C)に示す第8実施形態では、肉盗み用溝22は、全体として弱化用溝21よりも浅い深さとしつつ、深さが周方向に交互に変化するように設定している。他方、図5(D)に示す第9実施形態では、互いに独立した穴37の群を周方向に断続的に並べることによって肉盗み用溝22と成している。本願発明の肉盗み用溝22は、図5(D)の形態も含んでいる。
【0066】
図5(D)に示す第10実施形態は請求項7を具体化したもので、弱化用溝21の終端は指掛け凹所13の近傍で止まっており、指掛け凹所13が形成されている自由端部5aは破断不能になっている。そして、天板7の上面のうち指掛け凹所13を挟んで弱化用溝21と反対側の部位に、ヒケ防止を目的する穴37の群を断続して多数形成している。
【0067】
この場合、穴37の周方向の幅と、隣り合った穴37の間隔とは同じ程度に設定しているが、一方を他方より大きくすることは可能である。また、各穴37の深さは、弱化用溝21の深さよりは浅くなっており、例えば図5(A)(B)に示した程度の深さか、弱化用溝21の深さの半分程度になっている(弱化用溝21の深さの3~7割程度でよいと云える。)。
【0068】
軸心を挟んで弱化用溝21と反対側の部位は非破断部になっているが、この非破断部にある程度の深さの穴37の群が存在することにより、成型後の収縮を吸収して、天板7の上面や外周面、下向き外筒5の外周面にヒケが現れることを防止できる。従って、美麗な外観を保持できる。図5(E)の実施形態では、自由端部5aは非破断部になっているが、自由端部5aに図4のような第2周方向弱化線23bを形成してもよい。
【0069】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、肉盗み用溝を2列形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本願発明は、合成樹脂製の注出キャップに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 本体
2 上蓋
3 ヒンジ
4 瓶口
5 下向き外筒
6 下向き内筒
7 天板
12 タブ
13 指掛け用凹所
18 注出部の一例としてのノズル
21,21a~21c 弱化用溝
22 肉盗み用溝
23,23a~23c 周方向弱化線
24 縦溝
25 ブリッジ
26 指掛け用凹所の箇所で第2弱化用溝を形成する外壁
27 舌片
31 注出部を構成する閉鎖板
34 注出部を構成するプルタブ
35 注出部を構成する注出筒
図1
図2
図3
図4
図5