(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114172
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】オオボウシバナの花弁の圧搾抽出液、その還元濃縮液、これを用いた青花紙、青色色素粉末、これらを用いた食品又は食品用素材、食品用又は食品用素材用の着色剤、及び染料、の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09B 61/00 20060101AFI20240816BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20240816BHJP
A23L 5/43 20160101ALI20240816BHJP
【FI】
C09B61/00 C
C09B67/20 A
C09B67/20 F
A23L5/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019748
(22)【出願日】2023-02-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)集会での発表 開催日: 令和4年2月18日 集会名: 「湖南農業高校が開発したアオバナ粉」お披露目会 開催場所: 草津市立さわやか保健センター 視聴覚室(滋賀県草津市草津3丁目13番30号) (2)刊行物に掲載 発行日: 令和4年2月24日 刊行物: 京都新聞 令和4年2月24日付け朝刊、第18面 公開者; 株式会社 京都新聞社
(71)【出願人】
【識別番号】523050302
【氏名又は名称】特定非営利活動法人 青花製彩
(71)【出願人】
【識別番号】516041058
【氏名又は名称】井上 升二
(71)【出願人】
【識別番号】523051099
【氏名又は名称】小林 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(74)【代理人】
【識別番号】100076576
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 公博
(72)【発明者】
【氏名】峯松 孝好
(72)【発明者】
【氏名】井上 升二
(72)【発明者】
【氏名】小林 仁
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018MA02
4B018MA07
4B018MC04
4B018MD36
4B018MD61
4B018MF01
4B018MF06
(57)【要約】
【課題】 オオボウシバナ(Commelina communis var. hortensis)(別名 あおばな)の花汁に含まれる自然物由来残渣、雑菌、バクテリア類をろ過により除去し、食用においても安全で、色素の劣化の少ない良質な青花の色素液、及びそれの乾燥粉末を得るための利用技術を提供する。
【解決手段】 常温で圧搾により得られた青花の花弁抽出液を、孔径が1~1.5μm、0.45~1μm、及び0.1~0.2μmの3つのフィルターを用いて濾過を行う。この得られた濾過済み花弁抽出液を、あらかじめ熱殺菌処理したデキストリンと混合し、真空凍結乾燥を行うことで、青花の花弁に含まれる青色のコンメリニン色素を従来の方法に比べ、劣化することなく食用にも適した粉末として得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オオボウシバナの花弁を常温で 圧搾して得たオオボウシバナの花弁抽出液を
孔径1~1.5μmのフィルター、孔径0.45~1μmのフィルター、及び孔径0.1~0.2μmのフィルターをこの順で用いて濾過することを特徴とするオオボウシバナの青色色素花弁抽出液の製造法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法でオオボウシバナの青色色素花弁抽出液を作成し、前記青色色素花弁抽出液を、真空凍結乾燥法で粉末とし、加水して濃縮還元液とすることを特徴とするオオボウシバナの青色色素花弁抽出液の製造法。
【請求項3】
濃縮還元液の青色色素花弁抽出液の青色色素の濃度が5wt%~50wt%である請求項2に記載のオオボウシバナの青色色素花弁抽出液の製造法。
【請求項4】
請求項2~3のいずれか1項に記載の方法でオオボウシバナの青色色素花弁抽出液を作成し、前記青色色素花弁抽出液を和紙に塗布し、乾燥させることを特徴とする青花紙の製造法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法でオオボウシバナの青色色素花弁抽出液を作成し、前記青色色素花弁抽出液を、あらかじめ熱殺菌処理したデキストリンを、デキストリンと青色色素花弁抽出液の合計量に対し50wt%以下の重量割合で混合し、真空凍結乾燥することを特徴とするオオボウシバナの青色色素粉末の製造法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法でオオボウシバナの青色色素花弁抽出液を作成することを特徴とする青色染料の製造法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法でオオボウシバナの青色色素粉末を作成することを特徴とする青色染料の製造法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法でオオボウシバナの青色色素粉末を作成し、前記青色色素粉末を食品又は食品添加用素材と混合することを特徴とする食品又は食品添加用素材の製造法。
【請求項9】
請求項5に記載の方法でオオボウシバナの青色色素粉末を作成することを特徴とする食品用又は食品添加用素材用の着色剤の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオオボウシバナ(以下、青花と略称することあり)の花弁のみを常温で圧搾することで得られる花弁抽出液を、色素の劣化の原因となる加熱処理工程を含まず除菌する青色色素花弁抽出液の製造方法、その還元濃縮液、及び当該花弁抽出液を用いた青花紙、色素粉末の製造法、これらを利用した食品又は食品素材、食品用又は食品用素材用の着色剤、及び染料の、製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青花(あおばな)はツユクサ科の一年草であり、正式名称はオオボウシバナ(Commelina communis var. hortensis)という。江戸時代から現在まで、滋賀県草津市の周辺地域のみで栽培されてきたツユクサの栽培変種であり、同市の市花に制定されている。未明に花を咲かせ、正午ごろに萎む短日性の特徴を持つ。一般のツユクサの3~4倍の大きさにもなる青色の花弁を7月から8月にかけて咲かせ、凡そ1カ月の間毎日咲くことから同地域では「地獄花」と呼ばれる。その花弁の持つツユクサ種の固有の青色色素(コンメリニン)は、その水溶性から友禅染を主とする全国の伝統産業に古来より水で落ちる着色剤、染料として、布の下絵柄用の染料として用い、その下絵柄を基準にして目的の染料で本染めを行って水で下絵柄の青色色素(コンメリニン)を除去するなどに利用がされてきた。
【0003】
青花の花弁は凡そ80wt%が水分であり、従来は、抽出液を薄い和紙に塗り重ね、塗布と乾燥を何度も繰り返し濃縮することで得られる「青花紙」は日本の伝統産業になくてはならない地域固有の伝統工芸品である。青花紙を千切り、水を垂らすことで水性インクとして利用することができ、主に手描き友禅における下絵をつける工程において重宝されてきている。
【0004】
青花の花弁に含まれる色素、コンメリニンはアントシアニン系色素でありながら綺麗な青色を発する色素である。一般のアントシアニン色素はpHの変化に伴い色調の変化が見られるが、コンメリニンは弱酸性溶液中でも非常に安定する特徴を持つ。また、希釈をすると容易に色の喪失が見られる性質を持ち、それが友禅の下絵に利用される所以である。低分子からなるその構造により水溶性が高く、水に溶かすと透き通った青色が得られる。
【0005】
様々な特異な性質を持つ一方で、この青花花弁抽出液に含まれる青色色素、コンメリニンはこれまで青花紙の製造においてでのみ利用がされてきた。そのため、着物作りの産業の衰退や代替品である化学青花の登場に伴い需要が減少し、明治頃には500軒あった青花紙を製造する青花農家は現在2軒のみとなってしまっている。
近年は、医薬や機能性食品を採取するため、通常、花弁のみでなく葉や茎、場合により根も含めて水やアルコールで通常加熱して長時間抽出して、医薬や機能性食品を得ることに利用されている。すなわち青色色素の抽出を目的としたものではないので、オオボウシバナの全草ないしは地上部や地下部(下記特許文献1~7など参照)を用いるのが当業者の常とう手段となっており、花びら以外の部分も含めているので、抽出液は黄色味を帯び、透明感のあるきれいな青色色素を採取できないし、水やアルコールの抽出なので青色色素の抽出という異なる観点から見るときわめて長時間を要する割に効率が悪い、しかも抽出効率を上げるため通常加熱しており、上述したように、仮に色素が抽出できるとしても、加熱処理により色素の劣化が生じてしまう。
【0006】
一方、オオボウシバナの花弁を水やアルコールで抽出し、非フラノボイド成分を抽出して皮膚などの分解抑制剤とすることが下記特許文献8で提案されている。しかし、この技術は[0026]に記載のごとく多量の抽出溶媒を用い60~80℃で60~120分もの抽出操作が必要であり、青色色素の採取という観点からは製造効率が悪く、加熱されているので色素の劣化が生じてしまうし、[0023]に記載のごとく、美白くさつ花中村一号(白花)でもよいことが明記されており、青色色素を抽出することを目的としたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-141168号公報([0014] 、[0021]参照)
【特許文献2】特開2002-316935号公報([0011] 、[0017]参照)
【特許文献3】特開2002-306123号公報([0013]、[0014]参照)
【特許文献4】特開2006-143658号公報([0028]参照)
【特許文献5】特開2008-104399号公報([0011]参照)
【特許文献6】特開2008-94792号公報([0016]、[0024]参照)
【特許文献7】特開2007-94792号公報([0011]参照)
【特許文献8】特開2017-57159号公報([0011] 、[0023]、[0026]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、滋賀県草津市の伝統植物である青花の青色色素に注目し、この色素を効率よく採取する方法とこれらを使用する食品類、菓子類、化粧品、医薬品、食品や食品用素材用の着色剤、染料原料等への適用が可能なオオボウシバナの青色色素の製造方法を提供することを目的とするものであり、そのために、伝統的な従来の青花抽出液を和紙にきわめて多数回塗布、乾燥して塗り重ねる青花紙の製造方法とは異なり、より少ない塗布、乾燥で青花紙を製造し得る青花紙の製造方法や、また、水やアルコールによる溶媒抽出法でなく圧搾法による抽出を行い、色素の劣化の原因となる加熱処理や紫外線殺菌処理を行わず、多量に含まれるカビや食中毒の原因菌などを除菌でき従来品に比べ、液状でも腐敗などによる色味の変化する時間が多少長くできて、粉末などに加工するまでの保存期間を稼ぐことができる効率的な花弁の圧搾による青色色素花弁抽出液製造方法及び当該花弁抽出液を用いた青色染料、保存安定性に優れた青色色素粉末、食品、食品添加用素材、ないしは食品用又は食品添加用素材用の着色剤などの製造法を提供する。
【0009】
これまで、青花の花弁抽出液は和紙に塗り重ね、必要な時に水を添加することでその色素を利用する方法が用いられてきた。しかし、この製造方法はおよそ80回もの塗り込みの作業が必要で、毎回塗り込みと天日干しなどの乾燥を約80回も繰り返す必要があり、手間や時間、天日干し工程による色素の劣化、青花紙の吸湿を避けた保存場所の確保などの問題がある。
従来、和紙に青花の花弁抽出液を塗布して乾燥させることを繰り返す手間のかかることをやってきたのは、青花の花弁抽出液をそのまま液状で保存すると、1週間程度で含まれているカビ菌や雑菌により、色素が劣化し色味が変わったり腐敗したりするのを防ぐためであった。
【0010】
本発明者等は青花の花弁抽出液を食品に添加する適正を調べるため青花花弁圧搾液の毒性検査を行ったところ、花弁に含まれる糖分由来の多くの雑菌及びバクテリア群が確認された。その中にはカビの原因菌、並びに食中毒の原因菌となる大腸菌群も検出された。この結果を踏まえ、さらに食用に適した殺菌方法の検討を行うこととなったが、オートクレーブなどの加熱処理を伴う殺菌方法はコンメリニン色素の色の消失による劣化が生じやすいことと、紫外線殺菌ども色が薄く変化してしまうことが分かった。
【0011】
また、本発明者等は、青花の花弁の圧搾抽出液を、真空凍結乾燥による粉末化を試み、青色の色素粉末にできることをつきとめたが、水との親和性の高い青花は乾燥後すぐに吸湿を始め、ダマだらけになってしまうので、シリカゲルと共に密閉されたデシケーター容器の中で保存しなければならず、実質上工業的には、その取扱いに問題があることがわかった。
【0012】
そこで本発明は、まずこの青花の花弁の圧搾抽出液の保存期間を、販売による配送と購入者の使用開始までの期間や、あるいは青花の花弁の圧搾抽出液を更に加工するための次の加工工程にもっていくまででも少しでも長く保持存可能な青色色素花弁圧搾抽出液を製造することと、従って青花紙にしなくても、比較的短期間であれば、その抽出液のままでも繊維生地などの染料として使用もでき、更には、前記圧搾抽出液の青色色素の含有率は、約2.5wt%程度なので、この濃度を高めて、使用に応じた濃度に調整可能な青色色素花弁圧搾抽出液の製造方法、この濃度を高めた青色色素花弁圧搾抽を用いた青花紙の製造方法、この濃度を高めた青色色素花弁圧搾抽を染料として使用に応じた濃度に調整し得る青色色素花弁圧搾抽出液の染料の製造方法、更により保存期間を長くでき、空気中で安定的な保存が可能な青色色素粉末の製造方法、これを用いた青色染料の製造方法、食品又は食品添加用素材と混合して使用しても、食中毒などの問題のない食品又は食品添加用素材の製造方法、並びに食品用又は食品添加用素材用の着色剤の製造法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭利検討を重ね、色素の劣化の原因となる加熱処理を伴わない除菌方法として、孔径が0.1~0.2μmのフィルターで濾過することにより、青花の花弁の圧搾による抽出液からコンメリニン色素が損なわれず、それに含まれる雑菌及びバクテリア群の除去に有用であることを見出した。また、花弁繊維組織などの固形物残渣による目詰まりによる濾過工程の能率の低下を、孔径が0.1~0.2μmのフィルターで濾過する前の段階で、孔径が1~1.5μmのプレプレフィルター、孔径が0.45~1μmのプレフィルターを用いて濾過することで緩和することを見出し、かかる知見を基礎として、下記の本発明を完成した。
【0014】
(1)すなわち、本発明の青色色素花弁抽出液の製造法は、オオボウシバナの花弁を常温で 圧搾して得たオオボウシバナの花弁抽出液を
孔径1~1.5μmのフィルター、孔径0.45~1μmのフィルター、及び孔径0.1~0.2μmのフィルターをこの順で用いて濾過することを特徴とする青色色素花弁抽出液の製造法である。
【0015】
(2)また、更に、本発明のオオボウシバナの青色色素花弁抽出液の製造法は、前記(1)項に記載の方法でオオボウシバナの青色色素花弁抽出液を作成し、前記青色色素花弁抽出液を、真空凍結乾燥法で粉末とし、加水して濃縮還元液とすることを特徴とする。
【0016】
(3)また、前記(2)項に記載の方法によるオオボウシバナの青色色素花弁抽出液の製造法においては、濃縮還元液の青色色素花弁抽出液の青色色素の濃度が5wt%~50wt%であることが好ましい。
【0017】
(4)また、本発明の青花紙の製造法は、前記(2)~(3)項のいずれか1項に記載の方法でオオボウシバナの青色色素花弁抽出液を作成し、前記青色色素花弁抽出液を和紙に塗布し、乾燥させることを特徴とする。
【0018】
(5)また、本発明のオオボウシバナの青色色素粉末の製造法は、前記(1)項に記載の方法でオオボウシバナの青色色素花弁抽出液を作成し、前記青色色素花弁抽出液を、あらかじめ熱殺菌処理したデキストリンを、デキストリンと青色色素花弁抽出液の合計量に対し50wt%以下の重量割合で混合し、真空凍結乾燥することを特徴とする。
【0019】
(6)また、本発明の青色染料の製造法は、前記(1)~(3)項のいずれか1項に記載の方法でオオボウシバナの青色色素花弁抽出液を作成することを特徴とする。
【0020】
(7)また、本発明の別の青色染料の製造法は、前記(5)項に記載の方法でオオボウシバナの青色色素粉末を作成することを特徴とする。
【0021】
(8)また、本発明の食品又は食品添加用素材の製造法は、前記(5)項に記載の方法でオオボウシバナの青色色素粉末を作成し、前記青色色素粉末を食品又は食品添加用素材と混合することを特徴とする。
【0022】
(9)また、本発明の食品用又は食品添加用素材用の着色剤の製造法は、請求項5に記載の方法でオオボウシバナの青色色素粉末を作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る前記課題を解決するための手段(1)項に記載の青花の花弁抽出液の製造法は、大型の設備や薬品を使用しなくてよく、簡便で実用性の高い方法である。しかも圧搾により青色色素を抽出するので、水やアルコールなどの溶媒で抽出する場合に比べて、比較的短時間で効率的に青色色素を採取でき、加熱による色素の色の変化もない。またこの方法で得られる抽出液は、花弁形成繊維組織など固形物残渣の除去を濾過により行うことで、製作にかかる手間の短縮、品質の向上が期待できる。また、濾過によりカビの原因菌、腐敗の原因菌などを取り除くことで、抽出液の非冷凍状態においての保存期間の延長が見込め、この抽出液を、2週間程度以内の間であれば、色調の変化などがなく、そのまま、繊維生地の染料としても使用できる。したがって従来青花紙にする必要があり花弁抽出液の状態で使用できなかった場合に比べ、花弁抽出液の状態でも腐敗などによる色味の変化する時間が多少長くできて、また、粉末などに加工するまでの保存期間を稼ぐことができる効率的な花弁の圧搾による抽出液製造法が提供できる。また、この抽出液は、青花紙、青色色素粉末、これらを用いた食品又は食品素材、食品用又は食品添加用素材用の着色剤、及び染料の製造に適用できる素材となる。
【0024】
また、前記課題を解決するための手段の(2)項に記載のオオボウシバナの青色色素花弁抽出液の製造方法によれば、前記課題を解決するための手段(1)項で作成されたオオボウシバナの青色色素花弁抽出液の青色色素の濃度はおよそ2.5wt%程度であるので、比較的薄めであり、このままで染料としても使えるが、真空凍結乾燥法を採用して粉末にして、それを精製水などで加水して濃縮還元することにより、より青色色素の濃度を高めることができるので、使用目的に応じて、精製水などを更に添加して青色色素の濃度を用途に応じた濃度に調整することが可能になり好ましい。しかも、青色色素の濃度がおよそ2.5wt%程度の抽出液に比べて、青色色素の濃度を高めることで保管容量が小さくでき次の加工をするまでの間の保存スペースを小さくでき好ましい。また、真空凍結乾燥法を採用して濃縮還元するので、加熱濃縮に比べて大幅な本来の色味の変化がなく好ましい。
【0025】
また、前記課題を解決するための手段の(3)項に記載のオオボウシバナの青色色素花弁抽出液の製造方法によれば、濃縮還元による青色色素花弁抽出液の青色色素の濃度が5wt%~50wt%とすることにより精製水を加えることにより、使用目的に応じた濃度に調整でき、濃度調整が容易になり好ましい。前記濃縮還元により青色色素の濃度を50wt%より高くしたものも製造できるが、粘性が強くなり、取り扱いにくくなるので、濃縮還元による青色色素花弁抽出液の青色色素の濃度はより好ましくは、5wt%~40wt%程度、より更に好ましくは20wt%~40wt%程度にすることが好ましい。また、青色色素の濃度がおよそ2.5wt%程度の抽出液に比べて、保管容量を小さくでき次の加工をするまでの間の保存スペースを小さくでき好ましい。また、真空凍結乾燥法で粉末にし、加水する方法を採用して濃縮還元するので、加熱濃縮に比べて大幅な本来の色味の変化がなく好ましい。
更に、青花紙を製造する場合に、従来のようにおよそ80回もの塗布と乾燥を繰り返す必要がなく、青色色素の濃度が5wt%~50wt%の青色色素花弁抽出液を使用すれば、1~2回程度の青色色素花弁抽出液の塗布と乾燥で青花紙を製造することができ、青花紙製造の手間が大幅に簡略化でき好ましい。
【0026】
また、前記課題を解決するための手段の(4)項に記載の青花紙の製造法によれば、上述したように青色色素花弁抽出液の塗布と乾燥を繰り返す工程数を少なくできて、青花紙を製造することができ、青花紙製造の手間が大幅に簡略化でき好ましい。
【0027】
また、前記課題を解決するための手段の(5)項に記載のデキストリンを使用したオオボウシバナの青色色素粉末の製造方法によれば、吸湿などがなく、常温空気雰囲気化でも安定してより長期間保存でき、水に溶かして友禅染などの下絵などの染料としても使用でき、カビや食中毒などの原因菌やバクテリアなどの雑菌が除去されているので、食品や食品添加用素材と混合してオオボウシバナの青色色素で着色した食品や食品添加用素材を製造することができ、又、食品用又は食品添加用素材用の着色剤を製造することもでき、好ましい。
ちなみに、デキストリンを使用せずに前記本発明の青色色素花弁抽出液を真空凍結乾燥により粉末化したものは、乾燥後空気中ですぐに吸湿を始め、ダマだらけになってしまうので、シリカゲルの様な乾燥剤と共に密閉されたデシケーター容器の中で保存をしなければならず、工業的に使い勝手が非常に悪くなる。
【0028】
また、前記課題を解決するための手段の(6)項に記載の本発明の青色染料の製造法は、前記(1)~(3)項に記載の方法でオオボウシバナの青色色素花弁抽出液を作成すれば、そのままでも繊維生地などの染料として使用できるし、また、前記課題を解決するための手段の(2)項や(3)項に記載の方法で製造されたオオボウシバナの青色色素花弁抽出液を用いる場合には必要に応じて精製水などで希釈して繊維生地などの染料として用いることもできる。
【0029】
また、前記課題を解決するための手段の(7)項に記載の本発明の別の青色染料の製造法によれば、前記(5)項に記載の方法でオオボウシバナの青色色素粉末を作成して染料とするので、かかる染料は吸湿などがなく、常温の空気雰囲気化でも安定して長期間保存でき、必要な時に水に溶かして友禅染などの下絵などの染料として使用でき、青花紙に塗布されたオオボウシバナの青色色素を水で抽出して染料として使用するより簡便に使用でき好ましい。これらは常温保存に向くので、染料店などでの管理がしやすく好ましい。デキストリンの存在は染色の妨げにならず、濃度調整も容易である。
【0030】
また、前記課題を解決するための手段の(8)項並びに(9)項に記載の本発明の食品又は食品添加用素材の製造法、ないしは、食品用又は食品添加用素材用の着色剤の製造法は、前記課題を解決するための手段(1)項に記載の方法で濾過により除菌されたオオボウシバナの青色色素花弁抽出液を、前記課題を解決するための手段(5)項に記載の方法であらかじめ熱殺菌処理したデキストリンと混合し、真空凍結乾燥でオオボウシバナの青色色素粉末を作成し、前記青色色素粉末を食品用又は食品添加用素材用の着色剤とするかないしは前記青色色素粉末を食品又は食品添加用素材と混合することで製造されるので、カビの原因菌、腐敗の原因菌などが除菌されており、食中毒などが防止された食品又は食品添加用素材の製造法ないしは食品用又は食品添加用素材用の着色剤の製造法を提供できる。
【0031】
特に、前記課題を解決するための手段の(5)項に記載の方法、すなわち除菌されたオオボウシバナの青色色素花弁抽出液にあらかじめ熱殺菌処理したデキストリンを、デキストリンと青色色素花弁抽出液の合計量に対し50wt%以下、より好ましくは1:1~1:2(デキストリン:オオボウシバナの青色色素花弁抽出液)の重量割合で混ぜ合わせ真空凍結乾燥を行うことで、食品に添加することに適した天然青色色素粉末が得られ、食品(例えば生菓子、ゼリー、乳製品、和菓子、洋菓子、ドレッシングなど)、飲料品(清涼飲料水、酒類など)、食品添加用素材(食塩、砂糖など)として、ないしはこれらの食品用又は食品添加用素材用の着色剤としてのほか、化粧品、医薬品などの着色料、染料として使用できる。
【0032】
着色剤としては、着色対象となる食品などの素材の色にもよるが、着色剤の添加量を調整することにより、青味の付与を適宜目的の色に着色すればよい。
また他の青色を発色するフラボノイド色素と比べ、弱酸性下でも青色を損なわないこのコンメリニン色素は希有であり、海外輸入原材料が主の類似の天然青色色素に対して、純国産の天然青色色素として様々な用途での活用が期待される。
【0033】
さらに上記本発明によって得られた、デキストリンと混合し真空凍結乾燥したコンメリニン色素粉末は長期に渡り青色を損なうことなく常温で保存することが可能で、実用的価値が高い。また農薬を必要としない青花に則して、乾燥、抽出、除菌操作に、有機溶媒や薬品などを一切用いていないため、安全でかつ環境に優しい天然着色料として様々な用途で利用が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
【0035】
本発明のオオボウシバナの青色色素花弁抽出液を得るには、青花(オオボウシバナ)の花弁を摘み取り、花弁が通過しない適宜の目開きの、例えば目開き5mmの篩にかけ花粉などの花びら以外の残渣を取り除き、通常、手で揉むなどの方法によりペースト状に圧砕しておき、フードプロセッサーなどで攪拌しておくことが事前準備として花弁抽出液の採取効率を向上させるため好ましい。得られたペースト状の青花花弁は絞り袋に包んだ状態で油圧式圧搾機などの圧搾機により圧搾して搾汁を採取し、孔径1~1.5μmのプレプレフィルター、孔径0.45~1μmのプレフィルター、及び孔径0.1~0.2μmの最終フィルターをこの順で用いて濾過し、無菌状態の青花の花弁抽出液を得る。第1段目のプレプレフィルターは上記のごとく第2段目のプレフィルターよりも孔径が大きく、第2段目のプレフィルターは上記のごとく第3段目の最終フィルターよりも孔径が大きく、第1段目、第2段目のフィルターにより、不要な花弁を構成していた繊維組織、夾雑物を取り除き、第3段目のフィルターの目詰まりを緩和するようにし、第3段目の最終フィルターで雑菌を除去した無菌状態の青花の花弁抽出液を得る。
【0036】
なお、第1段目のプレプレフィルターとして、孔径1μmのプレプレフィルターを用いた場合には2段目のプレフィルターは孔径0.45~1μmのプレフィルターのうち、孔径1μm未満で孔径0.45μmまでの孔径のプレフィルターを用いる。孔径1μmより大きく孔径1.5μmまでの第1段目のプレプレフィルターを用いた場合には、2段目のプレフィルターは孔径0.45~1μmのプレフィルターを用いればよい。
すなわち、第2段目に用いるプレフィルターは、上述した孔径0.45~1μmの範囲内で第1段目に用いたプレプレフィルターの孔径より小さい孔径を有するフィルターを用いればよい。
【0037】
用いるろ過用フィルターとしては、特に限定するものではないが、メンブレンフィルターなどが使用され、その素材としては例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルスルホン(PEF)などが例示されるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0038】
花弁の摘み取り作業及び篩にかける工程では極力黄色の花粉等の花びら以外のものを取り除くことが望ましい。これは、目的とする抽出液の濾過効率を向上させるために好適であるし、最終的に得られる青色色素花弁抽出液のきれいな青色を出すために好適である。
【0039】
また、フードプロセッサーでの攪拌は、油圧式圧搾機での抽出液の収率を上げるために好適な工程である。比較的少量の青花を処理する場合は手動式圧搾機などを利用することができる。冷凍状態となった青花花弁を用いる場合は、花弁同士が溶けて塊になり圧搾の効率が下がるため、フードプロセッサーでの攪拌工程を入念に行うことが好ましい。
【0040】
抽出液の濾過工程は、一般的な送液用加圧チュービングポンプを用いた簡素な濾過機構を用いることで十分である。青花の1日の収穫量は多くても10kg(圧搾抽出液に換算して約8Kg)程度であり、一挙の多量処理は必要としない。
【0041】
本発明で用いる圧搾して得たオオボウシバナの花弁抽出液のろ過工程は、孔径1~1.5μmのフィルター、孔径0.45~1μmのフィルター、及び孔径0.1~0.2μmのフィルターをこの順で用いて濾過を行えばよい。
【0042】
かくして得られたオオボウシバナの青色色素花弁抽出液は、保存期間およそ2週間程度以内であれば、前述した用途などに使用できる。
従来の除菌されていないオオボウシバナの青色色素花弁圧搾抽出液では、保存できる期間が1週間程度なので、需要者である各業者から注文を受けて、当該業者に発送し、当該業者が目的とする製品に使用するまでの期間が稼げず、色味が変わってしまうが、本発明は除菌されているので、多少、上記期間を長くすることができる。ただ、除菌された花弁圧搾抽出液中には糖分などが含有されているので、新たに空気中から侵入した雑菌が繁殖するので上記程度の日数以内で使用されることが望まれる。
【0043】
また、前記方法で採取したオオボウシバナの青色色素花弁圧搾抽出液は、通常青色色素の濃度がおよそ2.5wt%程度なので、前記課題を解決するための手段の(2)項や(3)項に記載したように更に真空凍結乾燥法で粉末とし、精製水などで加水して、青色色素の濃度を好ましくは5~50wt%とした濃縮還元を行った抽出液としておくこともできる。真空凍結乾燥法を採用して濃縮還元することにより、より青色色素の濃度を高めることができるので、精製水などを添加して青色色素の濃度を用途に応じた濃度に調整することが可能になり好ましい。しかも、青色色素の濃度がおよそ2.5wt%程度の抽出液に比べて、青色色素の濃度を高めることで保管容量が小さくでき次の加工をするまでの間の保存スペースを小さくでき好ましい。また、真空凍結乾燥法を採用して濃縮還元するので、加熱濃縮に比べて大幅な本来の色味の変化がなく好ましい。
濃縮還元で真空凍結乾燥に採用する真空凍結乾燥条件としては、特に限定するものではないがゲージ圧10Pa以下、温度-30℃~-60℃程度である。
【0044】
前述したように濃縮還元による青色色素花弁抽出液の青色色素の濃度は5wt%~50wt%程度にすることが好ましく、より好ましくは20wt%~40wt%程度である。濃度をこの範囲に調整するためや、更にこの抽出液を薄めて使用する場合には、精製水を用いて所望の色素濃度とするが、用いる精製水としては、特に限定するものではないが、例えば、イオン交換水、逆浸透水、限外濾過水、蒸留水などが挙げられる。
【0045】
青花紙を製造するには、上述した濃縮還元により青色色素花弁抽出液の青色色素の濃度が20wt%~40wt%程度にした青色色素花弁圧搾抽出液を用いることが特に好ましく、従来の青花紙の製造のようにおよそ80回も青色色素花弁圧搾抽出液の塗布と乾燥を繰り返す必要はなく、特に限定するものではないが、1~2回程度の青色色素花弁圧搾抽出液の塗布と乾燥で製造できる。
紙素材は和紙を使用し、青色色素花弁圧搾抽出液の塗布方法は、例えば刷毛塗りや、色素花弁圧搾抽出液に浸漬する方法などである。
乾燥も、高温加熱乾燥は色味が変色するので避け、たとえば、常温~60℃程度の送風乾燥で、温度が高い場合は乾燥時間を少なくするなど色の変化を生じさせないようにする。
このような青花紙は、除菌されている青色色素花弁圧搾抽出液が塗布されて乾燥されているので、常温空気雰囲気下でも安定してより長期間保存でき、必要な際に、水に浸して青色色素を水に溶解して使用できる。
【0046】
また、本発明の方法で除菌して得た青色色素花弁圧搾抽出液の保存性を高める方法として、前記青色色素花弁抽出液を、あらかじめ熱殺菌処理されたデキストリンを、デキストリンと青色色素花弁抽出液の合計量に対し50wt%以下、より好ましくは1:1~1:2(デキストリン:青色色素花弁抽出液)の重量割合で混合し、真空凍結乾燥して粉末とすることが好ましい。デキストリンの熱殺菌処理は、特に限定するものではないが、オートクレーブなどで、例えば110~130℃で20~30分程度である。
また、真空凍結乾燥の条件は特に限定するものではないがゲージ圧10Pa以下、温度-30℃~-60℃程度である。真空凍結乾燥にかかる時間は処理量により異なるため規定できないが、24時間~48時間を基本とし、乾燥が不十分な場合は適宜処理時間の延長を行えばよい。また、通常、真空凍結乾燥により粉末状態のものが得られるが、より微細な粉末にしたい場合には、得られた色素粉末を、たとえば、パンチングスクリーンなどを使用して処理してもよい。
【0047】
かかる真空凍結乾燥粉末とすることにより、吸湿などがなく、常温空気雰囲気下でも安定してより長期間保存でき、水に溶かして染料としても使用でき、カビや食中毒などの原因菌やバクテリアなどの雑菌が除去されているので、食品や食品添加用素材と混合してオオボウシバナの青色色素で着色した食品や食品添加用素材を製造することができ好ましい。また、前記の真空凍結乾燥粉末は、食品用又は食品添加用素材用の着色剤としても使用でき好ましい。
【0048】
また、本発明の青色染料を製造するには、前記前記課題を解決するための手段の(1)~(3)項に記載の方法でオオボウシバナの青色色素花弁抽出液を作成すれば、そのまま染料として使用できるし、また、前記課題を解決するための手段の(2)項や(3)項に記載の方法で製造されたオオボウシバナの青色色素花弁抽出液を用いる場合には必要に応じて精製水などで希釈して友禅染などの下絵柄などに用いる染料として用いることもできる。ただ、これらオオボウシバナの青色色素花弁圧搾抽出液を染料とする場合、除菌されていても、前述したように花弁圧搾抽出液のような液状では、花弁圧搾抽出液には糖類が含まれているのでやや長期間保存すると新たに侵入してきた雑菌により色目が変わるおそれがあるので、比較的短期間で使用する場合に好適である。そこで本発明方法で除菌したオオボウシバナの青色色素花弁圧搾抽出液を作成し、前記青色色素花弁抽出液を、あらかじめ熱殺菌処理されたデキストリンと混合し、真空凍結乾燥して粉末としたものを染料とすることができるので、これらは常温保存に向くので、染料店などでの管理がしやすく好ましい。デキストリンの存在は染色の妨げにならず、濃度調整も容易である。
【0049】
また、この青色色素粉末は各種の食品(例えば生菓子、ゼリー、乳製品、和菓子、洋菓子、ドレッシング、清涼飲料水、酒類などの各種飲料品など)や食品添加用素材(食塩、砂糖など)に添加して青色に色味が付けされた食品や食品添加用素材を製造することができる。除菌されているので、食中毒などの危険性がない。なお、食品用又は食品添加用素材用の着色剤のほか、化粧品、医薬品などの着色料としても使用可能である。
【0050】
食品や食品添加用素材にこの青色色素粉末を添加する場合の使用量は、目的とする食品や食品添加用素材の種類や、どの程度の濃さの色付けとするかによってまちまちであり、特に限定しがたい。強いて記載するとすれば、食品や食品添加用素材100重量部に対し青色色素粉末1~20重量部程度である。一例として例えばゼリーを製造する場合には、砂糖やゼラチンなど通常のゼリーを製造するための素材を加熱して溶かした後、ある程度温度が下がる(40~60℃程度)のを待ってから、その溶液100gに対し1g程度の青色色素粉末を添加して混ぜ込み、冷蔵すればよい。
【実施例0051】
以下、理解を容易にするため少数の実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
青花(オオボウシバナ)の花弁を2Kg摘み取り、目開き5mmの篩にかけ花粉などの花びら以外の残渣を取り除き、手で揉んでペースト状に圧砕しておき、フードプロセッサーで攪拌した。得られたペースト状の青花花弁を絞り袋に包んで油圧式圧搾機で圧搾して搾汁を採取し、採取した搾汁を、メンブレンフィルターとして孔径1.5μmのプレプレフィルター、孔径0.45μmのプレフィルター、及び孔径0.2μmの最終フィルターをこの順で用いて濾過し、無菌状態の青花の花弁抽出液を1.5Kg得た。この圧搾抽出液が除菌されていることは乾式培地法による微生物検査により確認した。この青花の青色色素花弁抽出液は、透明感のある、きれいな深みのある青色の抽出液であった。
【0053】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で得られたオオボウシバナの青色色素花弁抽出液6.4kgを濃縮還元条件としてゲージ圧3Pa以下、設定温度-50℃で真空凍結乾燥し170gの青色色素粉末を得、それに502gのイオン交換水を加える濃縮還元を行い、青色色素含有割合がおよそ25wt%のオオボウシバナの青色色素花弁圧搾濃縮還元液を672g得た。
上記で得られた濃縮還元液を凡そ大きさ11cm×8cmの和紙に2回塗布を行い乾燥機を用いて60℃20分の条件で乾燥を施し、塗りムラのないきれいな青色の青花紙を得た。
また上記で得られた青花紙を1cm角にカットし小皿に写し、スポイトで2~3滴のイオン交換水を落とし、友禅染の下絵用の染料として使用した。従来の青花紙から水に溶かした染料と同様に下絵染料として使用でき、その後、水で下絵を除去できた。
【0054】
(実施例3)
あらかじめオートクレーブで約121℃で熱蒸気殺菌処理された1Kgのデキストリンに実施例1で得られたオオボウシバナの青色色素花弁抽出液1Kgを混合し、この混合物を、ゲージ圧3Pa以下、設定温度60℃で真空凍結乾燥し、青色色素粉末を得た。
この粉末1gを予め水と砂糖、ゼラチンを加えて溶かし、60℃まで温度が下がったゼリー液100gと混合し冷蔵し、透明感のある青色のゼリーを得た。
【0055】
(比較例1)
青花(オオボウシバナ)の花弁を1kg摘み取り、目開き5mmの篩にかけ花粉などの花びら以外の残渣を取り除き、手で揉んでペースト状に圧砕しておき、フードプロセッサーで攪拌した。得られたペースト状の青花花弁を絞り袋に包んで油圧式圧搾機で圧搾して搾汁を採取し、採取した搾汁をフィルターにより濾過せずに、採取したオオボウシバナの青色色素花弁圧搾抽出液100gをガラス製のビンに入れた(比較品A)、一方、実施例1で得られた除菌された青色色素花弁圧搾抽出液100gを、比較品Aを入れた瓶と形状大きさが同一のビンに入れ(本発明品B)、常温の同じ室内に放置したところ、比較品Aは、6日の放置で、徐々に色が劣化しカビが生え赤ワインのような色に変化したのに対し、本発明品Bは、比較品Aの色が劣化した日においては、色の劣化は見られず、その後14日経過した時点で、少し表面にカビが生え色が劣化して紫がかった青色に変化した。ともに臭いは色の変化があった時点で酸味のあるものになっていたが、本発明品Bのサンプルは幾分か臭いが少なかった。
以上から、青色色素花弁抽出液の状態でも、本発明品の方が、色の劣化までの時間が長いことがわかる。
【0056】
(比較例2)
オオボウシバナ花弁を水を用いオオボウシバナ花弁100重量部に対し水1000重量部の割合の水で70℃で90分抽出したが徐々に青色が消失し透明に近くなり、満足な抽出液は得られなかった。
本発明によれば、滋賀県草津市の伝統植物である青花から簡易に抽出液に含まれる自然物由来残渣、雑菌、バクテリア類を除去し、食用においても安全で、色素の劣化が少なくされた良質な青花の色素液、及びそれの乾燥粉末を得るための利用技術を提供できる。このアントシアニン色素は、食品・食品素材や化粧品、医薬品などに着色料として利用される他、染料としても利用できる。
したがって、食品分野をはじめとして広範な利用が期待される。