(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114176
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ダンパーマウント及びダンパーマウントの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60G 15/06 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
B60G15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019754
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健斗
(72)【発明者】
【氏名】神谷 祐一
(72)【発明者】
【氏名】太田 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】久保田 智晶
(72)【発明者】
【氏名】高桑 啓輔
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA69
3D301AA75
3D301AA79
3D301AA83
3D301AA85
3D301AA86
3D301DA08
3D301DA31
3D301DA51
3D301DA83
3D301DB10
3D301DB16
(57)【要約】
【課題】防錆性能の確保と剛性の向上とを両立して達成することのできる、新規な構造のダンパーマウントを提供する。
【解決手段】ダンパーマウント10において、ハウジング14がそれぞれメッキ処理されたアッパハウジング金具30とロアハウジング金具32から構成されていると共に、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32はマウント本体16が組み込まれる中央部分から外周に向かって広がって互いに重ね合わされるアッパ取付板状部48とロア取付板状部78を有しており、アッパ取付板状部48とロア取付板状部78が径方向中間部分において、周方向で複数箇所のボルトかしめ固定部位80と、周方向で複数箇所の溶接固定部位58とをもって、相互に固定されている一方、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32の重ね合わせ面間には外周縁部に沿って全周に延びるシール材104が密着状態で固着されていることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に取り付けられるハウジングに対してマウント本体が組み込まれて、サスペンション用のダンパー装置の車体側への取付部位に装着されるダンパーマウントにおいて、
前記ハウジングがそれぞれメッキ処理されたアッパハウジング金具とロアハウジング金具から構成されていると共に、該アッパハウジング金具と該ロアハウジング金具は前記マウント本体が組み込まれる中央部分から外周に向かって広がって互いに重ね合わされるアッパ取付板状部とロア取付板状部を有しており、該アッパ取付板状部と該ロア取付板状部が径方向中間部分において、周方向で複数箇所のボルトかしめ固定部位と、周方向で複数箇所の溶接固定部位とをもって、相互に固定されている一方、該アッパハウジング金具と該ロアハウジング金具の重ね合わせ面間には外周縁部に沿って全周に延びるシール材が密着状態で固着されていることを特徴とするダンパーマウント。
【請求項2】
前記シール材としてシリコーン樹脂系のシール材が用いられている請求項1に記載のダンパーマウント。
【請求項3】
メッキ処理された前記アッパハウジング金具及び前記ロアハウジング金具として、亜鉛メッキ処理された鋼板のプレス成形品が用いられている請求項1又は2に記載のダンパーマウント。
【請求項4】
前記アッパ取付板状部と前記ロア取付板状部における複数箇所の前記溶接固定部位が、該アッパ取付板状部の下面に突出形成された溶接用突部を利用したプロジェクション溶接によって構成されている請求項1又は2に記載のダンパーマウント。
【請求項5】
前記ロア取付板状部の外周部分には上方に突出した島状突部が周方向で複数形成されており、
それら各島状突部において前記アッパ取付板状部へ当接状態で重ね合わされて取付用ボルトがかしめ固定されることで前記ボルトかしめ固定部位が構成されており、
それら各島状突部の内周側には、各該島状突部よりも下方に位置して周方向の全周に亘って環状に広がる平板状支持部が設けられている請求項1又は2に記載のダンパーマウント。
【請求項6】
前記アッパハウジング金具と前記ロアハウジング金具の重ね合わせ面間を外周縁部に沿って全周に延びる前記シール材には、該ロア取付板状部に形成された前記島状突部の周縁部を横切る部分において該島状突部の周縁部に沿って枝状に延び出した分枝状シール部が設けられている請求項5に記載のダンパーマウント。
【請求項7】
車体側に取り付けられるハウジングに対してマウント本体が組み込まれて、サスペンション用のダンパー装置の車体側への取付部位に装着されるダンパーマウントを製造するに際して、
前記ハウジングを構成するアッパハウジング金具とロアハウジング金具としてそれぞれメッキ処理及びプレス成形された金具を準備して、該アッパハウジング金具と該ロアハウジング金具を前記マウント本体の両側から組み合わせて該マウント本体が組み込まれる中央部分から外周に向かって広がって形成されたアッパ取付板状部とロア取付板状部を互いに重ね合わせ、該アッパハウジング金具と該ロアハウジング金具の重ね合わせ面を外周縁部の全周に亘ってシール材により密着状態で固着する一方、該アッパ取付板状部と該ロア取付板状部とを周方向の複数箇所で溶接固定して、相互に溶接固定された該アッパハウジング金具及び該ロアハウジング金具の外表面に塗装を施すと共に、互いに重ね合わされた該アッパ取付板状部と該ロア取付板状部とを周方向の複数箇所でボルトかしめ固定することを特徴とするダンパーマウントの製造方法。
【請求項8】
前記アッパ取付板状部と前記ロア取付板状部とに対する前記ボルトかしめ固定を、前記アッパハウジング金具及び前記ロアハウジング金具の外表面への塗装の後に行う請求項7に記載のダンパーマウントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両においてサスペンション用のダンパー装置を車体側へ取り付けるダンパーマウント及びダンパーマウントの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の懸架装置は、サスペンション用のダンパー装置を含んで構成される。かかるダンパー装置は、車輪側のサスペンション部材と車体側のボデー部材との間に装着されて、サスペンション部材をボデー部材に対して緩衝的に連結している。
【0003】
また、ダンパー装置から車体側への振動伝達抑制等を目的として、ダンパー装置の車体側への取付部位には、例えば特開平9-303475号公報(特許文献1)に記載されているように、防振連結装置としてのダンパーマウントが装着されている。かかるダンパーマウントは、ダンパー装置に取り付けられるマウント本体がハウジングの中央部分に組み込まれており、ハウジングにおいて外周側に広がって設けられた取付板状部が車体側に取り付けられるようになっている。
【0004】
ところで、かかるダンパーマウントには、車両の走行時における車輪側からの外力が及ぼされることから、各部材に対して大きな耐荷重性能が要求されると共に、車両の走行安定性や操縦安定性を向上させるために、車体側に取り付けられるハウジングに対して大きな剛性が要求される。
【0005】
ところが、ハウジングは、特許文献1にも記載されているように、一般にプレス鋼板によって形成されたアッパハウジング金具とロアハウジング金具をマウント本体を挟むように両側から重ね合わせた構造とされている。それ故、アッパハウジング金具やロアハウジング金具の厚さ寸法を大きくすることも難しく、特に外周側に広がって車体側への取付部分を構成する取付板状部において充分な剛性を実現することが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、かかる取付板状部の剛性を向上させるために、本発明者は、互いに重ね合わされるアッパハウジング金具とロアハウジング金具の各取付板状部について、車体側への固定用の複数本の取付用ボルトをかしめ固定構造とするだけでなく、相互に溶接固定して、両取付板状部をより一体化させることで剛性の大幅な向上を目指した。ここにおいて、アッパハウジング金具とロアハウジング金具の各取付板状部を安定して且つ大きな強度で溶接するためには、両ハウジング金具について無塗装状態で溶接処理をすることが有効であることも、新たに判った。
【0008】
しかしながら、アッパハウジング金具とロアハウジング金具の各取付板状部を無塗装状態で重ね合わせて溶接すると、重ね合わせ面における隙間を完全に無くすことが極めて困難であり、無塗装状態のままの金属表面で重ね合された隙間が残存してしまう。そのために、車両走行時に飛び跳ねた水などが当該隙間に浸入することでハウジング内部における錆や腐蝕の問題を避け難い。
【0009】
本発明は上述の如き事情を背景としてなされたものであって、その解決課題とするところは、防錆性能の確保と剛性の向上とを両立して達成することのできる、新規なダンパーマウント及びダンパーマウントの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0011】
第一の態様は、車体側に取り付けられるハウジングに対してマウント本体が組み込まれて、サスペンション用のダンパー装置の車体側への取付部位に装着されるダンパーマウントにおいて、前記ハウジングがそれぞれメッキ処理されたアッパハウジング金具とロアハウジング金具から構成されていると共に、該アッパハウジング金具と該ロアハウジング金具は前記マウント本体が組み込まれる中央部分から外周に向かって広がって互いに重ね合わされるアッパ取付板状部とロア取付板状部を有しており、該アッパ取付板状部と該ロア取付板状部が径方向中間部分において、周方向で複数箇所のボルトかしめ固定部位と、周方向で複数箇所の溶接固定部位とをもって、相互に固定されている一方、該アッパハウジング金具と該ロアハウジング金具の重ね合わせ面間には外周縁部に沿って全周に延びるシール材が密着状態で固着されていることを特徴とするものである。
【0012】
本態様によれば、アッパハウジング金具におけるアッパ取付板状部とロアハウジング金具におけるロア取付板状部とが重ね合わされてボルトによるかしめ構造と溶接とによって強固に固定される。これにより、ダンパーマウントの剛性が向上され得る。特に本発明では、アッパ取付板状部とロア取付板状部をそれぞれメッキ面をもって重ね合わせて溶接したことで、良好且つ安定した溶着強度を確保しつつ、金属素面よりも防錆性能の向上を図り得た。併せて、互いに重ね合わされて且つボルトかしめ固定と溶接固定とによって強固に接合されるアッパ取付板状部とロア取付板状部の重ね合わせ面間で挟むようにしてシール材を全周に亘って設けたことにより、かかるシール材によるシール性能を有利に且つ安定して発揮させ得て、外部からの重ね合わせ面間への水の浸入を略完全に防止することで防錆性能の更なる向上を達成し得た。このような結果、ハウジングにおける剛性の向上を、優れた防錆性能と共に、実現せしめ得たのである。
【0013】
第二の態様は、前記第一の態様に係るダンパーマウントにおいて、前記シール材としてシリコーン樹脂系のシール材が用いられているものである。
【0014】
本態様によれば、シリコーン樹脂系のシール材を採用することでシール材が弾性を有することとなり、例えばシール材を圧縮させるようにアッパハウジング金具とロアハウジング金具とを固定することで、アッパハウジング金具とロアハウジング金具との間の隙間が安定して閉塞され得る。また、車両走行時の振動等もシール材の弾性変形により吸収されることから、シール材ひいてはダンパーマウントの耐久性の向上が図られる。
【0015】
第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係るダンパーマウントにおいて、メッキ処理された前記アッパハウジング金具及び前記ロアハウジング金具として、亜鉛メッキ処理された鋼板のプレス成形品が用いられているものである。
【0016】
本態様によれば、アッパハウジング金具及びロアハウジング金具に対して亜鉛メッキ処理が施されることから、高い耐食性が発揮され得る。なお、例えば亜鉛メッキに対して化成処理(例えば、クロメート処理)を施して化成皮膜を形成してもよく、これにより更に高い耐食性が発揮され得る。
【0017】
第四の態様は、前記第一~第三の何れか一つの態様に係るダンパーマウントにおいて、前記アッパ取付板状部と前記ロア取付板状部における複数箇所の前記溶接固定部位が、該アッパ取付板状部の下面に突出形成された溶接用突部を利用したプロジェクション溶接によって構成されているものである。
【0018】
本態様によれば、アッパハウジング金具とロアハウジング金具とをプロジェクション溶接により溶接することで、例えばスポット溶接に比べて圧力や熱を集中することができ、より少ない力で溶接することができると共に、短時間で効率的に且つ安定して溶接を行うことができる。
【0019】
第五の態様は、前記第一~第四の何れか一つの態様に係るダンパーマウントにおいて、前記ロア取付板状部の外周部分には上方に突出した島状突部が周方向で複数形成されており、それら各島状突部において前記アッパ取付板状部へ当接状態で重ね合わされて取付用ボルトがかしめ固定されることで前記ボルトかしめ固定部位が構成されており、それら各島状突部の内周側には、各該島状突部よりも下方に位置して周方向の全周に亘って環状に広がる平板状支持部が設けられているものである。
【0020】
本態様によれば、ロア取付板状部の上面には上方に突出する島状突部が周方向で複数形成されていることから、例えばリブ状構造による剛性の向上効果を享受し得る。また、ボデー側への当接状態での重ね合わせ部分をボルトかしめ固定部位を含めて限定的に設定することで、ボデー側との重ね合わせ状態の安定化と走行時の入力振動等に起因する異音の抑制などを図ることもできる。
【0021】
第六の態様は、前記第五の態様に係るダンパーマウントにおいて、前記アッパハウジング金具と前記ロアハウジング金具の重ね合わせ面間を外周縁部に沿って全周に延びる前記シール材には、該ロア取付板状部に形成された前記島状突部の周縁部を横切る部分において該島状突部の周縁部に沿って枝状に延び出した分枝状シール部が設けられているものである。
【0022】
本態様によれば、分枝状シール部を設けることでシール材の塗布領域を増大させることができて、隙間ができやすいロア取付板状部における島状突部とアッパ取付板状部との重ね合わせ部分において、アッパ取付板状部とロア取付板状部との固定強度を向上させて、より隙間を生じにくくすることができる。換言すれば、島状突部におけるロア取付板状部とアッパ取付板状部との重ね合わせ部分の寸法精度を大幅に向上せずとも、特定のシール材の塗布態様を採用することで、良好なシール性能を安定して享受することが可能になる。
【0023】
第七の態様は、車体側に取り付けられるハウジングに対してマウント本体が組み込まれて、サスペンション用のダンパー装置の車体側への取付部位に装着されるダンパーマウントを製造するに際して、前記ハウジングを構成するアッパハウジング金具とロアハウジング金具としてそれぞれメッキ処理及びプレス成形された金具を準備して、該アッパハウジング金具と該ロアハウジング金具を前記マウント本体の両側から組み合わせて該マウント本体が組み込まれる中央部分から外周に向かって広がって形成されたアッパ取付板状部とロア取付板状部を互いに重ね合わせ、該アッパハウジング金具と該ロアハウジング金具の重ね合わせ面を外周縁部の全周に亘ってシール材により密着状態で固着する一方、該アッパ取付板状部と該ロア取付板状部とを周方向の複数箇所で溶接固定して、相互に溶接固定された該アッパハウジング金具及び該ロアハウジング金具の外表面に塗装を施すと共に、互いに重ね合わされた該アッパ取付板状部と該ロア取付板状部とを周方向の複数箇所でボルトかしめ固定することを特徴とするものである。
【0024】
本態様によれば、前述の如き本発明に係るダンパーマウントを得ることができる。また、アッパハウジング金具とロアハウジング金具とをシール材を挟んで重ね合わせた状態で溶接及びボルトかしめ固定がなされることから、良好なシール性能が安定して実現され得る。なお、アッパハウジング金具及びロアハウジング金具の外表面の塗装としては限定されるものではないが、高い防錆性能を付与するものが望ましく、例えば金属の黒染め加工等が採用されて、これにより防錆性能の向上が図られる。
【0025】
第八の態様は、前記第七の態様に係るダンパーマウントの製造方法において、前記アッパ取付板状部と前記ロア取付板状部とに対する前記ボルトかしめ固定を、前記アッパハウジング金具及び前記ロアハウジング金具の外表面への塗装の後に行うものである。
【0026】
本態様によれば、アッパハウジング金具及びロアハウジング金具の外表面において、例えばボルトの頭部等が重ね合わされて隠れてしまう部分にも塗装を施すことができて、防錆性能の更なる向上が図られる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、防錆性能及び剛性の何れもが向上されたダンパーマウントを提供することができる。
【0028】
また、本発明方法によれば、上記の効果を発揮することのできるダンパーマウントを効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第一実施形態としてのダンパーマウントを示す斜視図
【
図2】
図1に示されたダンパーマウントにおける平面図
【
図4】
図1に示されたダンパーマウントにおける分解斜視図
【
図5】
図1に示されたダンパーマウントを構成するアッパハウジング金具における底面図
【
図6】
図1に示されたダンパーマウントを構成するロアハウジング金具における底面図
【
図7】
図1に示されたダンパーマウントを車両への装着状態で示す縦断面図であって、
図3に対応する図
【
図8】本発明の別の態様としてのダンパーマウントの一部を分解した状態で示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0031】
先ず、
図1~4には、本発明の第一実施形態としてのダンパーマウント10が示されている。このダンパーマウント10は、後述する
図7において自動車等の車両への装着状態が示されているように、サスペンション用のダンパー装置であるショックアブソーバ12における車体側のボデー部材13への取付部位に装着されるようになっている。ダンパーマウント10は、車体側のボデー部材13に取り付けられるハウジング14に対して、マウント本体16が組み込まれた構造を有している。なお、ダンパーマウント10の配置される向きは限定されるものではないが、以下の説明では、原則として、上下方向及び軸方向とは、ダンパーマウント10の中心軸方向となる
図3中の上下方向をいう。
【0032】
より詳細には、マウント本体16は、インナ部材18とアウタ筒部材20とが本体ゴム弾性体22によって弾性連結された構造を有している。
【0033】
インナ部材18は、全体として略円環板形状を有しており、金属等の高剛性の材質により形成されている。インナ部材18の中央部分には上下方向に貫通する挿通孔24が形成されており、後述するように、挿通孔24には、ショックアブソーバ12のピストンロッド108が挿通されるようになっている。
【0034】
アウタ筒部材20は、全体として薄肉大径の略円筒形状を有しており、金属等の高剛性の材質により形成されている。アウタ筒部材20の内径寸法はインナ部材18の外径寸法よりも大きくされており、アウタ筒部材20の内周側において、インナ部材18が、それぞれの中心軸が一致するように配置されている。
【0035】
そして、これらインナ部材18とアウタ筒部材20とが本体ゴム弾性体22によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体22は略環状とされており、内周端部がインナ部材18の外周部分に加硫接着されていると共に、外周面がアウタ筒部材20の内周面に加硫接着されている。本実施形態の本体ゴム弾性体22は、インナ部材18とアウタ筒部材20とを一体的に備える一体加硫成形品として形成されている。
【0036】
この本体ゴム弾性体22において、径方向中間部分には、上ストッパゴム26と下ストッパゴム28とが設けられている。即ち、上ストッパゴム26が本体ゴム弾性体22の上端面に設けられていると共に、下ストッパゴム28が本体ゴム弾性体22の下端面に設けられており、それぞれ上下方向外方に突出している。上下のストッパゴム26,28は、それぞれ周方向の全周に亘って形成されていると共に、突出高さが周方向で異ならされており、上下方向外方への突出高さが大きくされた部分では、上下方向外方に向かって次第に径方向幅寸法が小さくなっている。これにより、上下方向の振動入力に際しての急激な高ばね化が抑制され得る。
【0037】
かかるマウント本体16は、前述のように、車体側のボデー部材13に取り付けられるハウジング14に組み込まれており、ハウジング14の内部に収容配置されている。このハウジング14は、
図4にも示されるように、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32とを含んで構成されている。本実施形態では、アッパハウジング金具30が、アッパ金具本体34と筒状金具36とを含んで構成されていると共に、ロアハウジング金具32が、ロア金具本体38と支持金具40とを含んで構成されている。
【0038】
アッパ金具本体34は、全体として略平板形状であり、
図2や
図5等にも示されているように、平面視において略多角形状とされている。具体的には、アッパ金具本体34の中央部分には上下方向に延びる上筒状部42が設けられており、上筒状部42の上端部には、内周へ向けて延び出す略円環板形状の上底壁部44が一体形成されている。上底壁部44の内周側には、上下方向に貫通する内孔46が形成されている。
【0039】
一方、上筒状部42の下端部には、径方向外方に突出するアッパ取付板状部48が一体形成されている。このアッパ取付板状部48は環状に形成されており、上述のように平面視において略多角形状とされた外形を有している。
【0040】
より詳細には、上筒状部42の下端部における周方向の複数箇所には、径方向外方に突出するボルト用突出部50が設けられている。本実施形態では3つのボルト用突出部50が設けられており、各ボルト用突出部50が周方向で相互に離隔して略等間隔に設けられている。各ボルト用突出部50は、上筒状部42の周方向においてある程度の周方向寸法をもって形成されており、それぞれある程度の幅寸法を有する板状に形成されている。そして、各ボルト用突出部50の径方向中間部分乃至は外周部分(突出先端部分)において、上下方向に貫通するボルト用貫通孔52が形成されている。
【0041】
また、これら各ボルト用突出部50の周方向間は、溶接用突出部54により接続されている。即ち、本実施形態では、上筒状部42の周囲において、各ボルト用突出部50の周方向間の3箇所に溶接用突出部54が形成されている。各溶接用突出部54は、上筒状部42の下端部から連続して略板状に形成されており、これら各ボルト用突出部50と各溶接用突出部54により環状のアッパ取付板状部48が構成されている。特に、本実施形態では、各ボルト用突出部50が各溶接用突出部54に比べて上方に形成されている。これにより、
図5におけるアッパハウジング金具30の底面図に示されるように、各溶接用突出部54の周方向間には、下方に開口して径方向外方に延びる凹溝56がボルト用突出部50を上底壁として形成されており、かかる凹溝56が周上の3箇所において相互に離隔して略等間隔に形成されている。
【0042】
そして、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32とを固定する前におけるアッパハウジング金具30の単品状態において、各溶接用突出部54の径方向中間部分における下面には、プロジェクション溶接用の溶接用突部58が下方に突出して形成されている。なお、
図3において、溶接前の溶接用突部58を二点鎖線で示しているが、溶接後には溶接用突部58は消失している。
図3に示されるように、溶接前において、各溶接用突部58は略半球形状をもって形成されている。本実施形態において各溶接用突部58は、アッパ金具本体34(各溶接用突出部54)に対してプレス加工を施すことによって形成されており、各溶接用突出部54の上面において各溶接用突部58と対応する位置には、上方に開口する凹部60が形成されている。また、本実施形態では、各溶接用突出部54において、それぞれ2つの溶接用突部58が周方向で相互に離隔して設けられており、アッパ金具本体34において合計で6つの溶接用突部58が周方向で相互に離隔して設けられている。
【0043】
さらに、各溶接用突出部54のうちの2つには、図示しない位置決めピンが挿通される位置決め用挿通孔62が上下方向で貫通して形成されており、これらの位置決めピンにより、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32との固定時において、これらが相互に位置決めされるようになっている。更にまた、残り1つの溶接用突出部54には、アライメントピン64が装着されるアライメント用挿通孔66が上下方向で貫通して形成されており、アライメントピン64により、ダンパーマウント10を車体側のボデー部材13に取り付ける際にこれらが相互に位置決めされるようになっている。なお、アライメントピン64の形状は限定されるものではないが、例えば特開2016-200249号公報に記載のものが採用され得る。
【0044】
このようなアッパ金具本体34において、環状の上底壁部44の上面には筒状金具36が固定されている。筒状金具36は、中央部分において上下方向に貫通する挿通孔68を有していると共に、下端部において径方向外方に突出する環状のフランジ状部70を有している。そして、上底壁部44に対してフランジ状部70が重ね合わされてこれらが溶接されることで、アッパ金具本体34に対して筒状金具36が固定されてアッパハウジング金具30が構成されている。これにより、アッパ金具本体34における内孔46と筒状金具36における挿通孔68とが相互に連通している。そして、これら内孔46及び挿通孔68を通じて、後述するピストンロッド108にナット120が締結されることで、マウント本体16におけるインナ部材18に対してショックアブソーバ12のピストンロッド108が固定されるようになっている。なお、本実施形態では、上底壁部44とフランジ状部70とがプロジェクション溶接により溶接されており、溶接前には、フランジ状部70の下面において周方向で離隔して複数(本実施形態では6つ)の図示しない溶接用突部が設けられていると共に、フランジ状部70の上面において当該溶接用突部と対応する位置に、複数の凹部60が形成されている。
【0045】
一方、ロア金具本体38は全体として略鍔付皿形状であり、
図2や
図6等にも示されているように、平面視において略多角形状とされている。本実施形態では、平面視においてアッパ金具本体34とロア金具本体38とは略相似形状であり、ロア金具本体38の方がアッパ金具本体34よりも大きくされている。ロア金具本体38の中央部分には、上下方向に延びる下筒状部72が設けられており、下筒状部72の下端部には、内周へ向けて延び出す略円環板形状の底壁部74が一体形成されている。底壁部74の内周側には、上下方向に貫通する内孔76が形成されている。
【0046】
また、下筒状部72の上端部には、径方向外方に突出するロア取付板状部78が一体形成されている。このロア取付板状部78は環状に形成されており、上述のように平面視において略多角形状とされた外形を有している。
【0047】
より詳細には、ロア取付板状部78は、全体として略一定の厚さ寸法を有して水平方向(上下方向に対して直交する方向)に広がっていると共に、外周縁部が下方に折り曲げられている。ここで、ロア取付板状部78の上面における径方向中間部分乃至は外周部分において、周方向の複数箇所には、上方に突出する島状突部80が設けられている。本実施形態では3つの島状突部80が設けられており、各島状突部80が周方向で相互に離隔して略等間隔に設けられている。各島状突部80は平面視においてある程度の領域をもって形成されており、各島状突部80の略中央には、上下方向に貫通するボルト用貫通孔82が形成されている。なお、かかる各島状突部80は、ロア金具本体38に対してプレス加工を施すことによって形成されており、
図6におけるロアハウジング金具32の底面図に示されるように、ロア取付板状部78の下面において各島状突部80と対応する位置には、下方に開口する凹部84が形成されている。
【0048】
換言すれば、ロア取付板状部78において、各島状突部80以外の部位(各島状突部80の内周側及び各島状突部80の周方向間)は水平方向において平坦に広がる平板状支持部86とされており、当該平板状支持部86が、各島状突部80よりも下方に位置して周方向の全周に亘って環状に広がっている。
【0049】
かかる平板状支持部86において、各島状突部80の周方向間となる3箇所のうち2箇所には、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32との固定時において、これらの位置決めに用いられる図示しない位置決めピンが挿通される位置決め用挿通孔88が上下方向で貫通して形成されている。また、各島状突部80の周方向間となる3箇所のうち残りの1箇所には、前述のアライメントピン64が装着されるアライメント用挿通孔90が上下方向で貫通して形成されている。
【0050】
このようなロア金具本体38において、環状の底壁部74の下面には支持金具40が固定されている。支持金具40は略円環板状の固定部92を有しており、固定部92の中央部分において上下方向に貫通する挿通孔94が形成されていると共に、固定部92の外周縁部において下方に突出する略筒状の支持筒部96を有している。そして、底壁部74に対して固定部92が重ね合わされてこれらが溶接されることで、ロア金具本体38に対して支持金具40が固定されてロアハウジング金具32が構成されている。これにより、ロア金具本体38における内孔76と支持金具40における挿通孔94とが相互に連通している。そして、後述するように、支持金具40における支持筒部96に対してショックアブソーバ12のバウンドストッパ110が圧入されるようになっている。なお、本実施形態では、底壁部74と固定部92とがプロジェクション溶接により溶接されており、溶接前には、底壁部74の下面において周方向で離隔して複数の図示しない溶接用突部が設けられていると共に、底壁部74の上面において当該溶接用突部と対応する位置に、複数の凹部60が形成されている。
【0051】
上記の如きアッパハウジング金具30及びロアハウジング金具32の材質は、充分な剛性を有する金属であれば限定されるものではないが、本実施形態では、アッパハウジング金具30及びロアハウジング金具32のうち、特にアッパ金具本体34及びロア金具本体38がある程度の厚さ寸法を有する鋼板により形成されている。特に、本実施形態では、アッパ金具本体34及びロア金具本体38が鋼板を上述した形状にプレス加工されることにより形成されており、アッパハウジング金具30(特にアッパ金具本体34)及びロアハウジング金具32(特にロア金具本体38)は鋼板のプレス成形品とされている。
【0052】
そして、上述のようにプレス加工された鋼板には、防錆剤が付着される。なお、防錆剤を付着させる方法は限定されるものではなく、メッキ処理やスプレーによる吹付け、刷毛塗りや蒸着による皮膜形成等、公知の方法が採用され得る。本実施形態では、防錆を目的として、プレス加工された鋼板(アッパハウジング金具30及びロアハウジング金具32)に対してメッキ処理として亜鉛メッキ処理が施されている。本実施形態では、亜鉛メッキ処理が、アッパハウジング金具30及びロアハウジング金具32の外面及び内面を含めた全面に亘って施されている。
【0053】
さらに、上記亜鉛メッキの表面のうち、ダンパーマウント10の組立状態において外表面となるアッパハウジング金具30の上面およびロアハウジング金具32の下面には、防錆を目的としての塗装として黒染め処理が施されている。
【0054】
このようなアッパハウジング金具30とロアハウジング金具32とは、アッパ取付板状部48とロア取付板状部78において上下方向で重ね合わされて相互に固定されることで、ハウジング14が構成される。これらアッパ取付板状部48とロア取付板状部78との固定は、取付用ボルト98によるかしめ固定と溶接とによってなされる。即ち、取付用ボルト98は、かしめ用のローレットボルトとされており、取付用ボルト98の軸部100において、周方向で連続する凹凸からなるローレットが形成されている。
【0055】
そして、アッパ取付板状部48とロア取付板状部78とが相互に重ね合わされることで、ロア取付板状部78における各島状突部80がアッパ取付板状部48の下面における各凹溝56に入り込み、アッパ取付板状部48とロア取付板状部78とは周方向で相互に位置決めされる。また、各島状突部80は、アッパ取付板状部48における各ボルト用突出部50の突出先端部分(外周部分)に上下方向の当接状態で重ね合わされて、それぞれに形成された各ボルト用貫通孔52,82が上下方向で相互に連通される。これら連通された各ボルト用貫通孔52,82に対して下方から各取付用ボルト98が挿通されて、各取付用ボルト98の軸部100に設けられたローレットがアッパハウジング金具30の各ボルト用貫通孔52の内周面に圧入され、更に各取付用ボルト98(特に、各ボルト用貫通孔52から上方に突出するローレットの上端部分)を軸方向で潰してかしめることで、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32とが各取付用ボルト98のかしめ固定により固定される。即ち、本実施形態では、各島状突部80とアッパ取付板状部48との当接状態での重ね合わせ部位において各取付用ボルト98がかしめ固定されることで、アッパ取付板状部48とロア取付板状部78とのボルトかしめ固定部位が構成されている。なお、各取付用ボルト98の頭部102は、ロア金具本体38の下面に形成された各凹部84に収容配置されるようになっている。
【0056】
一方、アッパ取付板状部48とロア取付板状部78との溶接は、アッパ取付板状部48における各溶接用突出部54とロア取付板状部78における平板状支持部86とが重ね合わされた状態において、アッパ取付板状部48における各溶接用突部58の形成位置でプロジェクション溶接を行うことによりなされる。即ち、本実施形態では、アッパ取付板状部48とロア取付板状部78との溶接固定部位が、アッパ取付板状部48に設けられた各溶接用突部58の形成位置であって、当該位置においてプロジェクション溶接を行うことにより構成される。
【0057】
また、相互に重ね合わされたアッパハウジング金具30とロアハウジング金具32との重ね合わせ面間には、シール材104が固着されている。本実施形態では、シール材104としてシリコーン樹脂系の弾性接着剤(例えば、セメダイン株式会社製「SG-1R」)が採用されている。当該シール材104の塗布領域を
図4において二点鎖線で示す。即ち、シール材104は、ロア取付板状部78における上面の外周部分に塗布されており、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32の重ね合わせ面間における外周縁部に沿って周方向の全周に亘って延びている。これにより、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32との重ね合わせ面における外周縁部が、シール材104により密着状態で固着されている。
【0058】
そして、このようにアッパハウジング金具30とロアハウジング金具32とが固定されることによりハウジング14が構成されており、当該ハウジング14の内部に前述のマウント本体16が組み込まれている。即ち、アッパハウジング金具30において下方に開口する上筒状部42とロアハウジング金具32において上方に開口する下筒状部72の両開口部が相互に突き合わされて、これら上筒状部42と下筒状部72とによって構成される空間によりマウント本体16が収容される収容領域106が形成されている。即ち、アッパハウジング金具30におけるアッパ取付板状部48とロアハウジング金具32におけるロア取付板状部78は、マウント本体16が組み込まれる中央部分(収容領域106を構成する上筒状部42及び下筒状部72)から外周に向かって広がっている。
【0059】
本実施形態では、下筒状部72に対してマウント本体16が圧入されることでハウジング14に対してマウント本体16が固定されており、ハウジング14に対してマウント本体16が収容された状態(後述するピストンロッド108からの荷重が入力されていない状態)では、マウント本体16における下ストッパゴム28が底壁部74に対して密着状態で当接していると共に、上ストッパゴム26が上底壁部44に対して密着状態で当接している。これにより、ダンパーマウント10の上側の内孔46及び下側の内孔76を通じてのダンパーマウント10の内部への水の浸入が防止され得る。
【0060】
本実施形態のダンパーマウント10の製造方法は限定されるものではないが、ダンパーマウント10は、例えば、以下に記載の製造方法により製造される。
【0061】
先ず、アッパ金具本体34及びロア金具本体38を構成する鋼板を上述の形状に折り曲げた後、アッパ金具本体34に対して筒状金具36を溶接固定してアッパハウジング金具30を形成すると共に、ロア金具本体38に対して支持金具40を溶接固定してロアハウジング金具32を形成する。その後、アッパハウジング金具30及びロアハウジング金具32の全面に亘って亜鉛メッキ処理を行い、メッキ処理及びプレス成形されたアッパハウジング金具30及びロアハウジング金具32を準備する。なお、アッパハウジング金具30及びロアハウジング金具32として、予め亜鉛メッキ処理された鋼板を採用してもよく、亜鉛メッキ処理された鋼板に対してプレス加工等を施すことにより上述の形状のアッパハウジング金具30及びロアハウジング金具32が構成されてもよい。尤も、筒状金具36や支持金具40は亜鉛メッキ処理が行われなくてもよく、即ち予め亜鉛メッキ処理された鋼板に対してプレス加工等を施すことによりアッパ金具本体34及びロア金具本体38を形成すると共に、これらのそれぞれに筒状金具36及び支持金具40を溶接固定して、アッパハウジング金具30及びロアハウジング金具32が構成されてもよい。
【0062】
次に、ロアハウジング金具32における下筒状部72に対してマウント本体16を圧入すると共に、ロア取付板状部78におけるシール材104の塗布領域にシール材104を塗布する。そして、ロアハウジング金具32とアッパハウジング金具30とを上下方向で対向させて各位置決め用挿通孔62,88に挿通される図示しない位置決めピンを利用して位置決めしつつ、ロアハウジング金具32におけるアッパ取付板状部48とアッパハウジング金具30におけるロア取付板状部78とを重ね合わせる。これにより、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32との重ね合わせ面を外周縁部の全周に亘ってシール材104により密着状態で固着する。
【0063】
続いて、アッパ取付板状部48とロア取付板状部78との溶接固定部位(各溶接用突部58の形成位置)において各溶接用突部58を利用してプロジェクション溶接を行う。その後、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32の外表面に塗装(黒染め処理)を行なった後、上下方向で相互に連通する各ボルト用貫通孔52,82に対して下方から各取付用ボルト98を挿通してかしめ固定を行う。そして、各アライメント用挿通孔66,90に対してアライメントピン64を装着する。これにより、本実施形態のダンパーマウント10の製造が完了する。なお、アライメントピン64の装着は任意の適切なタイミングで行うことができて、例えばアッパ取付板状部48とロア取付板状部78との溶接後、黒染め処理を行う前に、アライメントピン64が装着されてもよい。
【0064】
以上のように製造された本実施形態のダンパーマウント10は、
図7に示されるようにショックアブソーバ12における車体側のボデー部材13への取付部位に装着される。ショックアブソーバ12は、公知のショックアブソーバが採用され得て、マウント本体16のインナ部材18に固定されるピストンロッド108を備えていると共に、ダンパーマウント10における下端部の支持金具40にはバウンドストッパ110が圧入される。当該バウンドストッパ110の外周側にはダストカバー112が配置されていると共に、ダストカバー112の更に外周側には、スプリングシート114及びインシュレータ116に支持されたコイルスプリング118が、ベアリング119を介してロアハウジング金具32に対して設けられている。
【0065】
ピストンロッド108は上端部がインナ部材18における挿通孔24に挿通されてナット120が締結されることにより、インナ部材18に固定されている。また、ダンパーマウント10は、上方に突出するアライメントピン64により車体側のボデー部材13に対して位置決めされると共に、マウント本体16の外周側においてハウジング14から上方に突出する各取付用ボルト98により車体側のボデー部材13に取り付けられるようになっている。
【0066】
上記の如き構造とされた本実施形態のダンパーマウント10によれば、マウント本体16を上下方向で挟み込んで支持するアッパハウジング金具30とロアハウジング金具32とが、各取付用ボルト98によるかしめ固定だけでなく、溶接によっても固定されており、ハウジング14の剛性が向上され得る。また、アッパハウジング金具30におけるアッパ取付板状部48とロアハウジング金具32におけるロア取付板状部78とは、これらの重ね合わせ面間の外周縁部が全周に亘ってシール材104によりシールされていることから、重ね合わせ面間の隙間を通じての水の浸入が防止されて、ダンパーマウント10の内部で錆が発生することが防止され得る。
【0067】
すなわち、本発明者は、ハウジングにおける剛性の向上を図るために、各取付用ボルトによるかしめ固定だけでなく、アッパハウジング金具とロアハウジング金具とをプロジェクション溶接により固定することを考えた。ところが、従来このようなハウジングには防錆を目的として一般にカチオン塗装が施されており、カチオン塗装は電気を通しにくいことから、プロジェクション溶接の実施が困難であった。そこで、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32において、重ね合わせ面となるアッパハウジング金具30の下面とロアハウジング金具32の上面には、通電することが可能であり、且つある程度の防錆性能を発揮することができる亜鉛メッキを施してプロジェクション溶接を可能とすると共に、これらの重ね合わせ面の外周縁部をシール材104で封止して、ダンパーマウント10の内部への水の浸入を防止した。これにより、ダンパーマウント10の剛性の向上と防錆性能の向上とを両立して達成し得たのである。特に、ダンパーマウント10の外表面においても亜鉛メッキに加えて、黒染め処理による塗装を行うことで、従来のカチオン塗装と同程度の防錆性能を確保し得たのである。
【0068】
また、シール材104としてシリコーン樹脂系のシール材が採用されている。かかるシール材104は、例えば弾性を有する接着剤であり、例えば上下方向で圧縮されることにより、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32との重ね合わせ面間の隙間を安定して封止することができる。更に、車両走行時の振動もシール材104の弾性変形により吸収され得て、ダンパーマウント10の耐久性の向上を図ることもできる。
【0069】
本実施形態では、上述のように、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32に対して亜鉛メッキが施されている。これにより、ある程度の防錆性能を確保しつつ、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32との間に電流を流すことができて、プロジェクション溶接の実施を可能とすることができる。
【0070】
また、本実施形態では、上述のように、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32とをプロジェクション溶接により溶接している。これにより、アッパハウジング金具30やロアハウジング金具32が比較的厚肉の鋼板から構成される場合にも、溶接時の圧力や熱を各溶接用突部58に集中させることができて、効率的に且つ安定して溶接を行うことができる。
【0071】
そして、アッパ取付板状部48には各ボルト用突出部50が設けられている共に、ロア取付板状部78には各島状突部80が設けられており、これらに設けられる各ボルト用貫通孔52,82に各取付用ボルト98が挿通されてかしめられることで、各取付用ボルト98によるかしめ固定が実現されるようになっている。特に、アッパ取付板状部48の下面において各ボルト用突出部50の形成位置には各凹溝56が形成されることとなることから、各島状突部80が各凹溝56に入り込むことで、アッパ取付板状部48とロア取付板状部78との周方向での位置決めが達成されて、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32との組付作業における作業効率の向上が図られる。
【0072】
また、本実施形態では、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32との外表面への塗装(黒染め処理)の後に、各取付用ボルト98によるかしめ固定を行っている。これにより、各取付用ボルト98の頭部102が重ね合わされて隠れる部分(ロア金具本体38の下面における各ボルト用貫通孔82の周囲の部分)にも黒染め処理による塗装を行うことができて、防錆性能の更なる向上が図られる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0074】
例えば、
図8に示されるダンパーマウント130のように、シール材132には、ロア取付板状部78に形成された各島状突部80の周縁部を横切る部分において各島状突部80の周縁部に沿って枝状に延び出した分枝状シール部134が設けられてもよい。これにより、シール材132の塗布領域をより広く確保することができて、アッパ取付板状部48における各ボルト用突出部50とロア取付板状部78における各島状突部80とを、シール材132によって、より確実に隙間の発生を防止しつつ接着することができる。
【0075】
また、前記実施形態では、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32の全面に亘って亜鉛メッキが施されていたが、この態様に限定されるものではなく、例えば防錆を目的とした公知のメッキが施されてもよい。なお、かかるメッキは、アッパハウジング金具とロアハウジング金具との間でプロジェクション溶接やスポット溶接が可能なように良好な導電性能を有することが好ましい。
【0076】
さらに、前記実施形態では、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32との溶接がプロジェクション溶接により行われていたが、この態様に限定されるものではなく、例えばアッパハウジング金具やロアハウジング金具の材質や厚さ寸法によってはスポット溶接等であってもよい。
【0077】
更にまた、前記実施形態では、ダンパーマウント10において3つの取付用ボルト98が設けられており、アッパハウジング金具30において3つのボルト用突出部50が設けられると共に、ロアハウジング金具32において3つの島状突部80が設けられていたが、取付用ボルトは2つ又は4つ以上設けられてもよく、ボルト用突出部及び島状突部の数は、取付用ボルトの数に合わせて変更されてもよい。尤も、ボルト用突出部や島状突部は本発明において必須なものではなく、アッパ取付板状部の下面とロア取付板状の上面は、何れも水平方向に広がる平坦面であってもよい。
【0078】
また、前記実施形態では、各溶接用突出部54において溶接用突部58が2つずつ設けられており、アッパ取付板状部48において合計で6つの溶接用突部58が設けられていたが、溶接用突部(溶接固定部位)の数は周方向で複数(2つ以上)設けられればよい。なお、前記実施形態では、各溶接用突部58がアッパ取付板状部48の下面に設けられていたが、アッパ取付板状部の下面に代えて、又は加えて、ロア取付板状部の上面に設けられてもよい。
【0079】
さらに、前記実施形態において記載したダンパーマウント10の製造方法は例示に過ぎない。即ち、前記実施形態では、アッパハウジング金具30とロアハウジング金具32の外表面に塗装(黒染め処理)を行った後、各ボルト用貫通孔52,82に対して各取付用ボルト98を挿通してかしめ固定を行っていたが、各ボルト用貫通孔に対して各取付用ボルトを挿通してかしめ固定を行った後に、アッパハウジング金具とロアハウジング金具の外表面に塗装(黒染め処理)を行ってもよい。また、アッパハウジング金具とロアハウジング金具におけるメッキ処理(実施形態では亜鉛メッキ処理)は、鋼板をプレス成形する前に行われてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 ダンパーマウント(第一実施形態)
12 ショックアブソーバ(サスペンション用のダンパー装置)
13 ボデー部材
14 ハウジング
16 マウント本体
18 インナ部材
20 アウタ筒部材
22 本体ゴム弾性体
24 挿通孔
26 上ストッパゴム
28 下ストッパゴム
30 アッパハウジング金具
32 ロアハウジング金具
34 アッパ金具本体
36 筒状金具
38 ロア金具本体
40 支持金具
42 上筒状部
44 上底壁部
46 内孔
48 アッパ取付板状部
50 ボルト用突出部
52 ボルト用貫通孔
54 溶接用突出部
56 凹溝
58 溶接用突部
60 凹部
62 位置決め用挿通孔
64 アライメントピン
66 アライメント用挿通孔
68 挿通孔
70 フランジ状部
72 下筒状部
74 底壁部
76 内孔
78 ロア取付板状部
80 島状突部(ボルトかしめ固定部位)
82 ボルト用貫通孔
84 凹部
86 平板状支持部
88 位置決め用挿通孔
90 アライメント用挿通孔
92 固定部
94 挿通孔
96 支持筒部
98 取付用ボルト
100 軸部
102 頭部
104 シール材
106 収容領域
108 ピストンロッド
110 バウンドストッパ
112 ダストカバー
114 スプリングシート
116 インシュレータ
118 コイルスプリング
119 ベアリング
120 ナット
130 ダンパーマウント(
図8)
132 シール材
134 分枝状シール部