(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114179
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】空調機及び制御方法
(51)【国際特許分類】
F25B 13/00 20060101AFI20240816BHJP
F24F 11/48 20180101ALI20240816BHJP
F24F 11/30 20180101ALI20240816BHJP
F24F 140/00 20180101ALN20240816BHJP
F24F 140/20 20180101ALN20240816BHJP
【FI】
F25B13/00 361
F24F11/48
F24F11/30
F25B13/00 104
F24F140:00
F24F140:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019760
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】石塚 浩史
【テーマコード(参考)】
3L092
3L260
【Fターム(参考)】
3L092BA13
3L092BA27
3L092DA10
3L092EA03
3L092FA19
3L092FA23
3L092FA27
3L092GA03
3L092HA08
3L092JA10
3L092LA03
3L092LA06
3L260AB03
3L260BA03
3L260CB01
3L260CB13
3L260DA05
3L260DA06
3L260EA12
3L260FA15
3L260FB07
3L260FB08
3L260FB12
(57)【要約】
【課題】暖房運転のサーモOFF時又は停止時に、冷媒の溜り込みを防止する機能を有する空調機を提供する。
【解決手段】空調機は、室外機と複数の室内機と制御装置とを有し、前記室外機と複数の前記室内機が冷媒配管で接続されたマルチ型の空調機であって、前記制御装置は、暖房運転を実行している前記室内機が、室内温度が設定温度に到達して前記室内熱交換器における熱交換が不要なサーモOFFとなるか、又は、前記暖房運転が停止する暖房停止状態となると、前記室内機が備えるファンを停止する手段と、前記暖房停止状態となると、前記室内機が備える膨張弁の開度を増大する手段と、前記ファンを停止し、前記膨張弁の開度を増大させた後に、前記室内機が備える室内熱交換器へ流入および流出する冷媒を遮断する手段と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と、複数の室内機と、制御装置とを有し、前記室外機と複数の前記室内機が冷媒配管で接続されたマルチ型の空調機であって、
前記制御装置は、
暖房運転を実行している前記室内機が、室内温度が設定温度に到達して前記室内機が備える室内熱交換器における熱交換が不要なサーモOFFとなるか、又は、前記暖房運転が停止する暖房停止状態となると、前記室内機が備えるファンを停止する手段と、
前記暖房停止状態となると、前記室内機が備える膨張弁の開度を増大する手段と、
前記ファンを停止し、前記膨張弁の開度を増大させた後に、前記室内機が備える室内熱交換器へ流入および流出する冷媒を遮断する手段と、
を有する空調機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記膨張弁の開度を前記室内熱交換器の出口側における前記冷媒の温度が飽和温度となるように前記膨張弁の開度を増大する、
請求項1に記載の空調機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記暖房停止状態が終了するまで、前記ファンの停止と、前記冷媒の遮断を継続する、
請求項1又は請求項2に記載の空調機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記室内熱交換器に接続されるガス管に設けられた遮断弁と、前記室内熱交換器に接続される液管に設けられた前記膨張弁を同時に全閉とすることで、前記冷媒を遮断する、
請求項1または請求項2に記載の空調機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記室内熱交換器に接続されるガス管に設けられた遮断弁を最初に全閉し、次に前記室内熱交換器に接続される液管に設けられた前記膨張弁を全閉することで、前記冷媒を遮断する、
請求項1または請求項2に記載の空調機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記膨張弁の開度を増大するときに、前記膨張弁を全開にしない、
請求項1または請求項2に記載の空調機。
【請求項7】
室外機と、複数の室内機と、制御装置とを有し、前記室外機と複数の前記室内機が冷媒配管で接続されたマルチ型の空調機の制御方法であって、
暖房運転を実行している前記室内機が、室内温度が設定温度に到達して前記室内機が備える室内熱交換器における熱交換が不要なサーモOFFとなるか、又は、前記暖房運転が停止する暖房停止状態となると、前記室内機が備えるファンを停止するステップと、
前記暖房停止状態となると、前記室内機が備える膨張弁の開度を増大するステップと、
前記ファンを停止し、前記膨張弁の開度を増大させた後に、前記室内機が備える室内熱交換器へ流入および流出する冷媒を遮断するステップと、
を有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に例示するように1台の室外機10に対して複数台の室内機20,21,22,23を備えるマルチ型の空調機100が提供されている。マルチ型の空調機100では、室外機10が送り出した冷媒を室内機20~23で共有するため、冷媒が、例えば、室内機20の室内熱交換器に溜りすぎると、室内機21~23へ供給される冷媒の量が減少し、室内機21~23の空調能力が低下する。例えば、室内機20の暖房運転中にサーモOFF(サーモOFFとは、室内温度が設定温度に達し、室内機20の室内熱交換器を流れる冷媒と室内空気の熱交換が不要な運転状態になることである。)となると、室内熱交換器に供給されたガス冷媒が凝縮して液化し、室内機20の室内熱交換器に冷媒が溜る。これは、マルチ型の空調機100では、サーモOFFとなっても、冷媒が当該室内熱交換器へ供給され、ファンの運転等により、冷媒が凝縮するためである。室内機20の暖房運転を停止したときにも同様の事象が発生する。また、近年では、安全性の観点から空調機100に封入する冷媒の削減が進められており、室内熱交換器への冷媒の溜り込みが生じると、冷媒不足による空調能力の低下がより顕著になってしまう。
【0003】
サーモOFF又は暖房運転停止となった室内機の室内熱交換器に冷媒が溜りすぎることを防止するため、従来から室内機20のファンや膨張弁の制御により、冷媒の凝縮を抑制する制御が提供されているが、過暖房、暖房不足、異音の発生などを招く可能性があるものが多い。特許文献1には、暖房運転のサーモOFF時に室内熱交換器の入口側のガス管を開、出口側の液管を閉とすることで室内熱交換器への冷媒の溜り込みを防止する制御が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
暖房運転のサーモOFF時や暖房運転の停止時に、室内熱交換器に溜り込む冷媒量を減少させることができる制御方法が求められている。
【0006】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる空調機及び制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、空調機は、室外機と、複数の室内機と、制御装置とを有し、前記室外機と複数の前記室内機が冷媒配管で接続されたマルチ型の空調機であって、前記制御装置は、暖房運転を実行している前記室内機が、室内温度が設定温度に到達して前記室内機が備える室内熱交換器における熱交換が不要なサーモOFFとなるか、又は、前記暖房運転が停止する暖房停止状態となると、前記室内機が備えるファンを停止する手段と、前記暖房停止状態となると、前記室内機が備える膨張弁の開度を増大する手段と、前記ファンを停止し、前記膨張弁の開度を増大させた後に、前記室内機が備える室内熱交換器へ流入および流出する冷媒を遮断する手段と、を有する。
【0008】
本開示の一態様によれば、制御方法は、室外機と、複数の室内機と、制御装置とを有し、前記室外機と複数の前記室内機が冷媒配管で接続されたマルチ型の空調機の制御方法であって、暖房運転を実行している前記室内機が、室内温度が設定温度に到達して前記室内機が備える室内熱交換器における熱交換が不要なサーモOFFとなるか、又は、前記暖房運転が停止する暖房停止状態となると、前記室内機が備えるファンを停止するステップと、前記暖房停止状態となると、前記室内機が備える膨張弁の開度を増大するステップと、前記ファンを停止し、前記膨張弁の開度を増大させた後に、前記室内機が備える室内熱交換器へ流入および流出する冷媒を遮断するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の空調機及びファンの制御方法によれば、暖房運転のサーモOFF時や停止時に、室内熱交換器に溜り込む冷媒量を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るマルチ型の空調機の概略図である。
【
図2】実施形態に係るマルチ型の空調機の冷媒回路の一例を示す概略図である。
【
図3】実施形態に係る室内機の制御装置の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る室内機熱交換器出口側の冷媒温度の制御について説明する第1の図である。
【
図5】実施形態に係る室内機熱交換器出口側の冷媒温度の制御について説明する第2の図である。
【
図6】実施形態に係る室内熱交換器に溜る冷媒量を減少させる制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示の一実施形態による空調機及び制御方法について
図1~
図6を参照して説明する。
(構成)
図1は、実施形態に係るマルチ型の空調機の一例を示す概略図である。マルチ型の空調機とは、1つの室外機に複数の室内機が接続される空調機である。
図1の空調機100は、室外機10と、複数の室内機20、21、22、23とを備えるマルチ型の空調システムである。室外機10と室内機20~23の各々は、それぞれ冷媒が通過する冷媒配管30で接続されている。室外機10および室内機20等の数は
図1に示す台数に限定されない。例えば、室内機20等は2~3台でも良いし、5台以上でもよい。また、室外機10は2台以上であってもよい。
【0012】
図2に室外機10が1台、室内機20等が2台(20、21)の場合のマルチ型の空調機100の冷媒回路の概略を示す。
図2に示すように室外機10は、圧縮機11、四方弁12、室外熱交換器13、制御装置14を備える。圧縮機11の吐出側と四方弁12は配管34で接続され、四方弁12と室外熱交換器13は配管32で接続され、四方弁12と圧縮機11の吸入側は配管33で接続される。四方弁12と継手3Aは配管35で接続される。室外熱交換器13と継手3Bは配管31で接続される。制御装置14は、圧縮機11の制御などを行う。
【0013】
室内機20は、室内熱交換器201、膨張弁202、ファン203、温度センサ204、遮断弁205、温度センサ206、制御装置40を備える。配管36は継手3Aと室内熱交換器201を接続し、遮断弁205は配管36に設けられる。配管37は室内熱交換器201と継手3Bを接続し、膨張弁202は配管37に設けられる。ファン203は、室内機20の吸込口付近に設けられ、室内の空気を吸入し、室内熱交換器201へ送出する。温度センサ204は、室内機20の吸込口付近に設けられ、室内の温度を計測する。温度センサ206は、室内熱交換器201の出口付近に設けられ、室内熱交換器201の出口側における冷媒の温度を計測する。室内機20が暖房運転しているときにサーモOFFするかサーモONするかについては、室内機20の暖房の設定温度と、温度センサ204が計測する温度の温度差によって判断される。例えば、制御装置40は、温度センサ204が計測した温度が設定温度に達すると、暖房運転をサーモOFFすると判断し、温度センサ204が計測した温度が暖房の設定温度より所定値以上低下すると、サーモONすると判断する。制御装置40は、膨張弁202、ファン203、遮断弁205を制御する。
【0014】
室内機21の構成は、室内機20と同様である。室内機21は、室内熱交換器211、膨張弁212、ファン213、温度センサ214、遮断弁215、温度センサ216、制御装置41を備える。配管38は継手3Aと室内熱交換器211を接続し、遮断弁215は配管38に設けられる。配管39は室内熱交換器211と継手3Bを接続し、膨張弁212は配管39に設けられる。制御装置41は、膨張弁212、ファン213、遮断弁215の制御を行う。
【0015】
マルチ型の空調機100にて暖房運転を行う場合、四方弁12は、暖房運転用に設定され、圧縮機11が吐出した高温高圧のガス冷媒は、配管34、四方弁12、配管35,36を通じて室内機20の室内熱交換器201へ供給され、配管34、35、38を通じて室内機21の室内熱交換器211へ供給される。遮断弁205と遮断弁215は通常、開に制御される。遮断弁205を閉とすると、室内熱交換器201へのガス冷媒の供給が遮断され、遮断弁215を閉とすると、室内熱交換器211へのガス冷媒の供給が遮断される。室内熱交換器201へ供給された冷媒は、ファン203が送出する空気と熱交換して凝縮し、膨張弁202で減圧され、配管37、31を通じて室外熱交換器13へ供給される。同様に、室内機21では、室内熱交換器211へ供給された冷媒は、ファン213が送出する空気と熱交換して凝縮し、膨張弁212で減圧され、配管39、31を通じて室外熱交換器13へ供給される。室外熱交換器13に供給された冷媒は、外気との熱交換により気化し、気化した冷媒は、配管32、四方弁12、配管33を通じて、圧縮機11へ吸入される。
【0016】
図2を用いて説明したように、マルチ型の空調機100では、室内機20、21で冷媒を共有するため、例えば、室内機20にて、室内熱交換器201に冷媒が溜りすぎると、室内機21へ供給される冷媒が減少してしまう。そこで、例えば室内機20、21で暖房運転中に、室内機20がサーモOFFとなるか、又は、室内機20の暖房運転を停止した場合、制御装置40は、室内熱交換器201に冷媒が溜ることを抑制する制御を行う。具体的には、制御装置40は、ファン203を停止させることで、室内熱交換器201で凝縮する冷媒量を減少させる。また、制御装置40は、膨張弁202の開度を増大して、室内熱交換器201の出口側における冷媒温度を上昇させ、室内熱交換器201で凝縮する冷媒量をさらに減少させる。そして、室内熱交換器201で凝縮する冷媒量が減少したところで、室内熱交換器201を遮断し、室内熱交換器201への冷媒の流れを遮断する。その後、室内の温度が低下してサーモONとなると、又は、暖房運転が新たに開始されると、制御装置40は、室内熱交換器201の遮断を解除し、膨張弁202の開度を戻し、ファン203を通常どおり運転する。
【0017】
(室内熱交換器に溜る冷媒量を減少させる制御)
次に、
図3~
図5を参照して、本実施形態に係る制御について説明する。以下では、室内機20がサーモOFF又は暖房運転停止となったときの制御を例に説明を行うが、他の室内機21等についても同様である。
【0018】
図3は、実施形態に係る室内制御装置の一例を示す図である。
制御装置40は、例えばマイコン等のコンピュータ装置である。図示するように制御装置40は、センサ情報取得部401と、設定受付部402と、記憶部403と、制御部404と、通信部405とを備えている。制御装置40は、室内機20に関する種々の制御を行うが、本明細書では、室内熱交換器201に溜る冷媒量を減少させる制御に関する機能を説明する。
【0019】
センサ情報取得部401は、温度センサ204が計測した室内温度と、温度センサ206が計測した冷媒温度を取得する。センサ情報取得部401は、取得した温度を記憶部403に記録する。
設定受付部402は、ユーザがリモコン等から入力した各種設定情報を取得する。例えば、設定受付部402は、室内熱交換器201の出口側における冷媒温度に対する設定(冷媒の飽和温度)を取得する。設定受付部402は、取得した設定を記憶部403に記録する。
【0020】
記憶部403は、センサ情報取得部401が取得した温度の計測値、設定受付部402が取得した各種設定情報など種々の情報を記憶する。また、記憶部403は、制御装置40の機能を実現する各種プログラムを記憶する。
【0021】
制御部404は、室内機20の制御や、室外機10と連携して空調機100の制御を行う。例えば、制御部404は、遮断弁205の開閉、膨張弁202の開度、ファン203の回転数などを制御する。暖房運転のサーモOFFや暖房運転停止となると、制御部404は、(1)ファン203を停止し、(2)膨張弁202の開度を増大する(室内熱交換器201出口側の冷媒温度が飽和温度となるように開く)制御を行う。これにより、室内熱交換器201での冷媒の凝縮量を少なくする。(1)ファン203を停止することで、熱交換が阻害されるので冷媒の凝縮量は少なくなる。また、ファン203を停止することで、過暖房となることを防ぐことができる。(2)膨張弁202の開度を増大すると、室内熱交換器201の出口側の冷媒温度が上昇し、室内熱交換器201に存在する液冷媒を減少させることができるので、冷媒の凝縮量が少なくなる。
図4に暖房運転中の室内熱交換器201の状態を模式的に示す。境界線200は、ガス冷媒が液冷媒に変化する境界を示している。この境界の冷媒温度は飽和温度である。
図5に暖房運転サーモOFF中又は停止中に本実施形態の膨張弁202の制御により、室内熱交換器201の出口側での冷媒温度が飽和温度となった状態を模式的に示す。膨張弁202の開度を増大して室内熱交換器201の出口側温度を上昇させることで、図示するように、境界線200が
図4に比べて冷媒流れ方向の下流側に移動するので、室内熱交換器201に存在する液冷媒が占める範囲を小さくし、凝縮量を減らすことができる。但し、膨張弁202を全開にすると、膨張弁202を冷媒が通過するときに生じる異音が大きくなるので全開にはしない。(1)と(2)により、冷媒の凝縮量を減少させると、制御部404は、(3)ガス管(配管36)に設けられた遮断弁205と、液管(配管37)に設けられた膨張弁202を閉じることによって室内熱交換器201を遮断し、ガス冷媒がさらに流入して凝縮することを防ぐ。制御部404は、遮断弁205と膨張弁202を同時に全閉とするか、又は、遮断弁205を全閉にしてから、膨張弁202を全閉にする。制御部404は、暖房運転のサーモOFF又は暖房運転の停止が継続している間、ファン203を停止しつつ、遮断弁205と膨張弁202を全閉にしたまま維持する。サーモON又は暖房運転が開始されると、制御部404は、遮断弁205を全開、膨張弁202を元の開度(
図4の状態の開度)に制御し、ファン203を運転する。
【0022】
通信部405は、室外機10の制御装置14との通信を行う。例えば、通信部405は、温度センサ204が計測した温度などを室外機10の制御装置14へ送信する。また、通信部405は、室外機10が備える各種センサや圧縮機等の運転状態を示す情報などを制御装置14から受信する。
【0023】
(動作)
次に
図6を参照して、暖房運転のサーモOFF時又は停止時の制御について説明する。
図6は、実施形態に係る室内熱交換器に溜る冷媒量を減少させる制御の一例を示すフローチャートである。
前提として、記憶部403には室内熱交換器201の飽和温度が設定されている。最初に、暖房運転が停止されるか、暖房運転がサーモOFFになる(ステップS1)。例えば、ユーザがリモコンを操作して暖房運転を停止すると暖房運転が停止され、温度センサ204が計測した温度が設定温度に達すると、暖房運転はサーモOFFとなる。すると、制御装置40は、室内熱交換器201に溜り込む冷媒量を減少させる制御を開始する。制御部404は、ファン203を停止する(ステップS2)。次に制御部404は、膨張弁202の開度を増大する(ステップS3)。このとき、異音発生を防止するため、全開にはしない。
図6のステップS2、S3は、ほぼ同時に実行される。また、ステップS2、S3の順番は、逆であってもよい。
図6のステップS2、S3の制御により、室内熱交換器201における冷媒の凝縮量を減少させることができる。
【0024】
次に制御部404は、室内熱交換器201の出口側での冷媒温度が飽和温度に到達したかどうかを判定する(ステップS4)。制御部404は、センサ情報取得部401を通じて温度センサ206が計測した温度を取得し、飽和温度(例えば、45℃)に到達したかどうかを判定する。飽和温度に到達しない場合(ステップS4;No)、制御部404は、室内熱交換器201の出口側での冷媒温度が飽和温度に到達するまで待機する。飽和温度に到達すると(ステップS4;Yes)、制御部404は、室内熱交換器201を遮断する制御を行う(ステップS5)。具体的には、(a)制御部404は、遮断弁205と膨張弁202を同時に全閉する。あるいは、制御部404は、室内熱交換器201の冷媒量を減らすため、(b)最初に遮断弁205を全閉とし、その後、膨張弁202を全閉としてもよい。(b)の場合、遮断弁205を全閉した後、室内熱交換器201内の圧力が低下するため、出口側から冷媒が逆流する可能性がある。従って、(a)の方法で、室内熱交換器201を遮断してもよい。飽和温度到達後すぐに遮断弁205と膨張弁202を全閉とすることで、冷媒のさらなる流入による過暖房や冷媒の凝縮を防ぐことができ、冷媒の溜り込みを防止することができる。暖房運転がサーモOFF又は停止している間、制御部404は、ファン203を停止し、室内熱交換器201を遮断した状態を維持する。
【0025】
次に制御部404は、暖房運転が開始されたか、又は、サーモONとなったかを判定する(ステップS6)。例えば、ユーザがリモコンを操作して暖房運転を開始すると暖房運転が開始され、温度センサ204が計測した温度が設定温度よりも所定温度低下すると、暖房運転はサーモONとなる。暖房運転開始、又は、サーモONとならない場合(ステップS6;No)、制御部404は、ファン203を停止し、室内熱交換器201を遮断した状態を維持する。暖房運転開始、又は、サーモONとなると(ステップS6;Yes)、制御部404は、ファン203を運転し、膨張弁202の開度を暖房停止やサーモOFF前の開度に戻し、遮断弁205を全開にすることで、室内熱交換器201の遮断を解除する(ステップS7)。また、室外機10では、制御装置14が圧縮機11の運転を再開する。
【0026】
以上、説明したように本実施形態によれば、マルチ型の空調機100の室内機20の暖房運転中にサーモOFFとなるか、又は、暖房運転を停止した場合、まず、ファン停止と室内熱交換器の出口側温度の上昇により、室内熱交換器201にて凝縮する冷媒量を減少させ、そのうえで、室内熱交換器201に流入および流出する冷媒の流れを遮断する。これにより、室内熱交換器201に冷媒が溜りすぎることを防ぐことができる。室内熱交換器201に冷媒が溜りすぎることを防止することにより、他の室内機21等における冷媒不足による空調能力の低下を防ぐことができる。また、近年の冷媒封入量が減少している状況に対しても好適である。
【0027】
なお、上記実施形態では、遮断弁を室内機ごとに設けることとしたが、複数の室内機に対して1つの遮断弁を設けるようにしてもよい(例えば、
図2の継手3Aの冷媒流れの上流側に1つの遮断弁を設ける。)。また、上記実施形態では、膨張弁202の開度を増大して、室内熱交換器201の出口側温度が飽和温度となるまで待機して、遮断弁205と膨張弁202を全閉することとしたが、例えば、飽和温度となるまでのおおよその時間を実験や計算等により導出し、この時間を維持時間として設定してもよい。そして、制御部404は、膨張弁202の開度を増大してから維持時間が経過すると、遮断弁205と膨張弁202を全閉するよう制御してもよい。
【0028】
なお、
図6の処理は、制御装置40が備えるプロセッサが、記憶部403からプログラムを読み出して実行することで実現される機能である。
【0029】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0030】
<付記>
各実施形態に記載の空調機及び制御方法は、例えば以下のように把握される。
【0031】
(1)第1の態様の空調機100は、室外機10と、複数の室内機20~23と、制御装置40とを有し、前記室外機10と複数の前記室内機20~23が冷媒配管30で接続されたマルチ型の空調機であって、前記制御装置40は、暖房運転を実行している前記室内機20が、室内温度が設定温度に到達して前記室内機が備える室内熱交換器201における熱交換が不要なサーモOFFとなるか、又は、前記暖房運転が停止する暖房停止状態となると、前記室内機が備えるファンを停止する手段(制御部404、S2)と、前記暖房停止状態となると、前記室内機が備える膨張弁の開度を増大する手段(制御部404、S3)と、前記ファンを停止し、前記膨張弁の開度を増大させた後に、前記室内機が備える室内熱交換器へ流入および流出する冷媒を遮断する手段(制御部404、S5)とを有する。
これにより、暖房運転のサーモOFF時や停止時に、室内熱交換器201に溜り込む冷媒量を減少させることができる。
【0032】
(2)第2の態様に空調機100は、(1)の空調機100であって、前記制御装置40は、前記膨張弁202の開度を前記室内熱交換器の出口側における前記冷媒の温度が飽和温度となるように前記膨張弁202の開度を増大する。
これにより、前記室内熱交換器201で凝縮する冷媒量を減少させることができる。
【0033】
(3)第3の態様に係る空調機100は、(1)~(2)の空調機であって、前記制御装置40は、前記暖房停止状態が終了するまで、前記ファン203の停止(S2)と、前記冷媒の遮断(S5)を継続する。
これにより、暖房サーモOFF又は停止中に、室内熱交換器201に冷媒が溜り込むことを防ぐことができる。
【0034】
(4)第4の態様に係る空調機100は、(1)~(3)の空調機であって、前記制御装置40は、前記室内熱交換器201に接続されるガス管に設けられた遮断弁205と、前記室内熱交換器201に接続される液管に設けられた前記膨張弁202を同時に全閉とすることで、前記冷媒を遮断する。
これにより、冷媒逆流のリスクなく、室内熱交換器201へ流入および流出する冷媒を遮断することができる。
【0035】
(5)第5の態様に係る空調機100は、(1)~(4)の空調機であって、前記制御装置40は、前記室内熱交換器201に接続されるガス管に設けられた遮断弁を最初に全閉し、次に前記室内熱交換器に接続される液管に設けられた前記膨張弁202を全閉することで、前記冷媒を遮断する。
これにより、室内熱交換器201へ流入および流出する冷媒を遮断することができる。
【0036】
(6)第6の態様に係る空調機100は、(1)~(5)の空調機であって、前記制御装置40は、前記膨張弁202の開度を増大するときに前記膨張弁202を全開にしない。
これにより、異音の発生を防ぐことができる。
【0037】
(7)第7の態様に係る制御方法は、室外機10と、複数の室内機20~23とを有し、前記室外機10と複数の前記室内機20~23とが冷媒配管30で接続されたマルチ型の空調機の制御方法であって、暖房運転を実行している前記室内機20が、室内温度が設定温度に到達して前記室内機が備える室内熱交換器における熱交換が不要なサーモOFFとなるか、又は、前記暖房運転が停止する暖房停止状態となると、前記室内機20が備えるファン203を停止するステップ(S2)と、前記暖房停止状態となると、前記室内機20が備える膨張弁202の開度を増大するステップ(S3)と、前記ファン203を停止し、前記膨張弁202の開度を増大させた後に、前記室内機20が備える室内熱交換器201へ流入および流出する冷媒を遮断するステップ(S5)と、を有する。
【符号の説明】
【0038】
10・・・室外機
11・・・圧縮機
12・・・四方弁
13・・・室外熱交換器
14・・・制御装置
20・・・室内機
201・・・室内熱交換器
202・・・膨張弁
203・・・ファン
204・・・温度センサ
205・・・遮断弁
206・・・温度センサ
21・・・室内機
211・・・室内熱交換器
212・・・膨張弁
213・・・ファン
214・・・温度センサ
215・・・遮断弁
216・・・温度センサ
22・・・室内機
23・・・室内機
30~39・・・配管
3A、3B・・・継手
40、41・・・制御装置
401・・・センサ情報取得部
402・・・設定受付部
403・・・記憶部
404・・・制御部
405・・・通信部
100・・・空調機