(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011418
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】鮮度測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240118BHJP
G01N 33/02 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N33/02
G01N21/64 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113375
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】秋山 良造
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043CA03
2G043DA02
2G043EA01
2G043FA03
2G043LA03
2G043NA01
(57)【要約】
【課題】凝集誘起蛍光体を用いた鮮度ラベルを利用して、食品の鮮度を簡易かつ高精度に測定する鮮度測定装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の鮮度測定装置は、測定対象物の抽出成分を含む抽出液に、第1面を浸して浸漬させた、凝集誘起蛍光体を含む鮮度ラベルの蛍光体層に、第1面と表裏の関係にある第2面の側から励起光を照射する励起光源と、蛍光体層が発する蛍光を前記第2面の側において受光する受光素子とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の抽出成分を含む抽出液に、第1面を浸して浸漬させた、凝集誘起蛍光体を含む鮮度ラベルの蛍光体層に、前記第1面と表裏の関係にある第2面の側から励起光を照射する励起光源と、
前記蛍光体層が発する蛍光を前記第2面の側において受光する受光素子と、
を有する、鮮度測定装置。
【請求項2】
前記鮮度ラベルは、水を含有することで消光状態となる、
請求項1に記載の鮮度測定装置。
【請求項3】
前記鮮度ラベルは、水と酸を含有することで蛍光状態となる、
請求項1に記載の鮮度測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一に記載の鮮度測定装置と、
前記受光素子が出力する信号を処理して、前記測定対象物の鮮度を測定する信号処理装置と、
を有する、鮮度測定システム。
【請求項5】
前記信号処理装置は、
標準反射光の強度に対する蛍光の強度の比である発光強度比を計算する強度比計算部と、
前記発光強度比に基づいて、前記測定対象物の鮮度を示す指標であるK値を算出するK値算出部と、
を有する、請求項4に記載の鮮度測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鮮度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水産物、青果物、及び畜産物などの生鮮食品は、常温下で貯蔵性が悪く、劣化や腐敗し易いため、その鮮度の評価方法が求められる。生鮮食品の鮮度の評価方法として、例えば、感覚評価法、化学的評価法、物理的評価法、微生物的手法など様々な方法が試行されている。
【0003】
感覚評価法は、生鮮食品の外観、臭い、張りなどの触感から評価する方法である。化学的評価法は、生鮮食品の劣化や腐敗により発生する化学的成分のガスクロマトグラフィー質量分析や、核酸関連化合物の液体クロマトグラフィー質量分析によるものである。物理的評価法は、生鮮食品の硬直指数(RI値)、破断強度、テクスチャー、インピーダンスなどの物理的指標を基に評価する方法である。微生物的手法は、生鮮食品中に含まれる一般生菌数、腐敗細菌数、病原細菌数等を調べる手法である。
【0004】
感覚評価法は、高価な測定装置を必要とせず、短時間で鮮度を評価することができるが、評価者により結果がバラつくという問題がある。
【0005】
化学的評価法、物理的評価法、及び微生物的手法は、評価者による結果のバラつきは生じにくいが、装置や設備を必要とするため容易には行えず、測定に時間を要する場合もある。すなわち、これらの評価法では、簡易さ又は精度が犠牲となる。
【0006】
このような問題に対して、凝集誘起蛍光体を用いた鮮度ラベルを利用する評価方法が提案されている。この評価方法では、鮮度ラベルの凝集誘起蛍光体が発する蛍光の強度を測定することにより、食品の鮮度を評価する。ここで、凝集誘起蛍光体は、凝集誘起発光(AIE:Aggregation-induced emission)を示す化合物である。凝集誘起蛍光体は、溶解可能な有機溶媒などの溶液中で各分子が溶解している状態では弱い蛍光又は無蛍光を示す。溶解状態にある凝集誘起蛍光体の分子は、例えば、生鮮食品の腐敗や劣化により放出される化学的成分と反応すると凝集して集合体を形成し、この集合体は、強い蛍光を発する。なお、凝集誘起蛍光体は、腐敗成分と反応するような官能基を有する構造体に設計されることが好ましい。例えば、腐敗成分のひとつであるアミン成分と凝集誘起蛍光体を反応させる場合には、カルボン酸基を有することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、凝集誘起蛍光体を用いた鮮度ラベルを利用して、食品の鮮度を簡易かつ高精度に測定する鮮度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の鮮度測定装置は、測定対象物の抽出成分を含む抽出液に、第1面を浸して浸漬させた、凝集誘起蛍光体を含む鮮度ラベルの蛍光体層に、第1面と表裏の関係にある第2面の側から励起光を照射する励起光源と、蛍光体層が発する蛍光を前記第2面の側において受光する受光素子とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る鮮度測定装置を含む鮮度測定システムの構成の一例を示す図。
【
図2】
図1中の鮮度測定装置の第1の構成例を示す図。
【
図3】
図1中の鮮度測定装置の第2の構成例を示す図。
【
図4】
図1中の信号処理装置のハードウェア構成の一例を示す図。
【
図5】
図1中の信号処理装置の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図6】
図1の鮮度測定システムの動作例における処理の流れを示すフローチャート。
【
図7】容器の抽出液に蛍光体層を浸漬させた場合における時系列変化の様子を模式的に示す図。
【
図8】変形例に係る鮮度測定装置を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る鮮度測定システムについて図面を参照して説明する。鮮度測定システムは、鮮度ラベルを用いて、測定対象物の鮮度を測定するシステムである。測定対象物は、生鮮食品である。生鮮食品は、例えば生鮮水産物である。生鮮水産物は、例えば魚肉である。言い換えれば、実施形態に係る鮮度測定システムは、測定対象物に魚類を想定している。
【0012】
(鮮度測定システム10)
図1は、実施形態に係る鮮度測定システム10の構成の一例を示す図である。
図1はまた、鮮度測定システム10が含む鮮度測定装置100の構成の一例を示す図である。
【0013】
鮮度測定システム10は、鮮度測定装置100と、信号処理装置200と、出力装置300と、入力装置400を有する。
【0014】
鮮度測定装置100は、鮮度ラベル500を用いて、測定対象物の鮮度を測定するための装置である。詳しくは、鮮度測定装置100は、鮮度ラベル500に励起光を照射し、鮮度ラベル500が発する蛍光を受光し、蛍光の強度を反映した信号を出力する装置である。
【0015】
信号処理装置200は、鮮度測定装置100が出力する信号を処理して、鮮度ラベル500による測定対象物の鮮度を反映した情報を生成する装置である。
【0016】
出力装置300は、信号処理装置200による処理結果を出力する装置である。出力装置300は、たとえば、情報を表示するディスプレイである。出力装置300はまた、情報を印刷するプリンタ、情報をメモリ媒体に書き込むライタ等であってもよい。
【0017】
入力装置400は、信号処理装置200に必要な情報を入力する装置である。入力装置400は、たとえば、キーボードやポインティングデバイスである。入力装置400はまた、情報をメモリ媒体から読み出して出力するリーダ等であってもよい。
【0018】
(鮮度ラベル500)
鮮度ラベル500は、蛍光体層510と基材520を有する。基材520は、光学的に透明な部材である。たとえば、基材520は、ガラス板である。基材520は、蛍光体層510を保持している。蛍光体層510は、凝集誘起蛍光体を含む。たとえば、蛍光体層510は、凝集誘起蛍光体を固着させたガラス濾紙である。蛍光体層510は、基材520に固着している。
【0019】
蛍光体層510は、表裏の関係にある第1面511と第2面512を有する。基材520は、表裏の関係にある第1面521と第2面522を有する。蛍光体層510の第2面512は、基材520の第1面521に固着している。
【0020】
鮮度ラベル500は、蛍光体層510を下にして、ラベル設置部700の上に設置される。ラベル設置部700は、蛍光体層510を下方に露出させるための開口710を有する。鮮度ラベル500は、蛍光体層510が開口710の中に位置するように配置される。その結果、鮮度ラベル500の蛍光体層510は、開口710を介して下方に露出する。すなわち、ラベル設置部700は、開口710を介して蛍光体層510を下方に露出させた状態で、鮮度ラベル500を支持する。鮮度ラベル500の基材520は、ラベル設置部700の開口710を塞ぐ。
【0021】
ラベル設置部700は、鮮度ラベル500と共に、抽出液610で満ちた容器600の上に置かれて容器600を密閉する。抽出液610は、測定対象物の抽出成分を含む液体である。抽出液610は、測定対象物に溶媒を添加し、測定対象物を切り刻んで、測定対象物の成分を溶媒中に抽出させた後、測定対象物の固形成分を分離して除去した液体である。
【0022】
ラベル設置部700が、鮮度ラベル500と共に、抽出液610で満ちた容器600を密閉した状態では、ラベル設置部700に設置された鮮度ラベル500は、蛍光体層510の第1面511は抽出液610に浸るが、蛍光体層510の第2面512は抽出液610に浸らない。
【0023】
(鮮度ラベル500の構成例)
ここで、鮮度ラベル500の二種類の構成例について述べる。ここに述べる鮮度ラベル500の構成例においては、測定対象物は魚肉であるものとする。抽出液610は、魚肉に溶媒を添加し、魚肉を切り刻み、魚肉の固形成分を分離して除去した液体である。
【0024】
(鮮度ラベル500の第1の構成例)
第1の構成例に係る鮮度ラベル500は、水を含有することで消光状態となる。詳しくは、この鮮度ラベル500では、蛍光体層510が含む凝集誘起蛍光体は、水を含有すると、消光状態、すなわち、蛍光を発しない状態となる。
【0025】
ここで、消光状態とは、仮に蛍光体層510が蛍光を発するとしても、蛍光強度が受光素子120の感度を下回り、受光素子120が蛍光を検知しない状態という意味である。
【0026】
この鮮度ラベル500に対しては、酸を含む液体を溶媒として抽出液610を作成する。また、鮮度ラベル500の初期状態を、水処理によって、消光状態にする。鮮度ラベル500の蛍光体層510を抽出液610に浸漬させる。
【0027】
抽出液610中の測定対象物の鮮度が悪ければ、浸漬後も、鮮度ラベル500は、消光状態のままである。すなわち、蛍光体層510は、相変わらず、蛍光を発しない。
【0028】
反対に、抽出液610中の測定対象物の鮮度が良ければ、浸漬後に、鮮度ラベル500は、消光状態から蛍光状態に変化する。すなわち、蛍光体層510は、蛍光を発するようになる。また、測定対象物の鮮度が良いほど、蛍光体層510は蛍光を強く発する。
【0029】
ここで、蛍光状態とは、蛍光体層510が蛍光を発し、その蛍光強度が受光素子120の感度を上回り、受光素子120が蛍光を検知する状態という意味である。
【0030】
測定対象物すなわち魚肉の鮮度の良し悪しは、例えば、腐敗成分のひとつであるアミン成分の量と相関関係がある。魚肉の鮮度が低下するにつれて、抽出液610中のアミン成分の量は多くなる。
【0031】
蛍光体層510が含む凝集誘起蛍光体は、抽出液610中の酸成分と反応すると凝集して蛍光を発する。したがって、測定対象物すなわち魚肉の鮮度が良ければ、抽出されるアミン成分が少なく中和される酸成分が減少しないで、凝集誘起蛍光体と反応する量も腐敗時と相対して多くなる。逆に、測定対象物すなわち魚肉の鮮度が悪ければ、抽出液中の酸成分は減少し蛍光体層510が発する蛍光も減少する。
【0032】
このとき、蛍光体層510が含む凝集誘起蛍光体と抽出液610中の酸成分との反応以外に、夾雑成分として存在する水溶性タンパクも凝集誘起蛍光体と反応し蛍光を発するようになる。この水溶性タンパクは抽出液610の作成後の経時で析出することが多々あり、鮮度ラベルの蛍光強度を検知する際の阻害要因として働くことになる。
【0033】
(鮮度ラベル500の第2の構成例)
第2の構成例に係る鮮度ラベル500は、水と酸を含有することで蛍光状態となる。詳しくは、この鮮度ラベル500では、蛍光体層510が含む凝集誘起蛍光体は、水と酸を含有すると、蛍光状態、すなわち、蛍光を発する状態となる。
【0034】
この鮮度ラベル500に対しては、純水を溶媒として抽出液を作成する。また、鮮度ラベル500の初期状態を、初めに水処理し次に酸で処理することにより蛍光を強く発する蛍光状態にする。鮮度ラベル500の蛍光体層510を抽出液610に浸漬させる。
【0035】
抽出液610中の測定対象物の鮮度が良ければ、浸漬後に、鮮度ラベル500は、蛍光状態を概ね維持する。
【0036】
反対に、抽出液610中の測定対象物の鮮度が良くなければ、蛍光状態から消光状態に変化する。
【0037】
第2の構成例に係る鮮度ラベル500は、基本的には水のみで消光するので、第1の構成例に係る鮮度ラベル500よりも感度は劣る。
【0038】
(鮮度測定装置100)
鮮度測定装置100は、励起光源110と、受光素子120と、蛍光フィルタ130と、信号変換部140と、制御回路150を有する。
【0039】
励起光源110は、励起光を発する光源である。例えば、励起光源110は、UV光を発するUV-LEDである。励起光源110は、鮮度ラベル500に励起光を照射する。
【0040】
鮮度ラベル500の蛍光体層510内の凝集誘起蛍光体は、励起光の照射を受けて、蛍光を発する。凝集誘起蛍光体が発する蛍光の強度は、抽出液610が含有する測定対象物の抽出成分に依存して変化する。
【0041】
蛍光フィルタ130は、蛍光は選択的に透過するが、励起光は透過しないバンドパスフィルタである。例えば、蛍光フィルタ130は、UVカットフィルタである。蛍光フィルタ130は、受光素子120の前方に位置する。
【0042】
鮮度ラベル500から発生する光は、蛍光体層510が発する蛍光と、鮮度ラベル500によって反射または散乱される励起光を含む。蛍光フィルタ130は、受光素子120に入射する光を蛍光に制限する。
【0043】
受光素子120は、入射光を電気信号に変換する素子である。例えば、受光素子120は、入射光の強度を反映した電流信号を出力する。受光素子120は、蛍光フィルタ130を透過した蛍光を受光し、蛍光の強度を反映した電流信号を出力する。受光素子120の出力信号は、蛍光体層510が発する蛍光の強度を反映した情報である。
【0044】
信号変換部140は、受光素子120が出力する電流信号を電圧信号に変換し、さらに電圧信号をデジタル信号に変換して出力する回路である。
【0045】
制御回路150は、励起光源110と受光素子120と信号変換部140を制御する回路である。
【0046】
(鮮度測定装置100の第1の構成例)
図2を参照して、鮮度測定装置100の第1の構成例について説明する。
図2は、鮮度測定装置100の第1の構成例を模式的に示す図である。
【0047】
第1の構成例に係る鮮度測定装置100は、フォトセンサ161と、I-Vアンプ162と、ADC(analog-to-digital converter)163を有する。
【0048】
フォトセンサ161は、発光素子と受光素子を組み合わせた光学部品である。フォトセンサ161は、発光素子が発する光を対象物に照射し、対象物からの光を受光素子で受光し、光に対する対象物による作用等を検知する反射型の非接触センサである。フォトセンサ161の発光素子が、
図1の励起光源110であり、フォトセンサ161の受光素子が、
図1の受光素子120である。フォトセンサ161はまた、
図1の蛍光フィルタ130を有する。フォトセンサ161は、励起光を鮮度ラベル500に照射し、鮮度ラベル500の蛍光体層510が発する蛍光の強度を反映した電流信号を出力する。
【0049】
I-Vアンプ162は、フォトセンサ161が出力する電流信号を電圧信号に変換して出力する。ADC163は、I-Vアンプ162が出力する電圧信号をデジタル信号に変換して出力する。I-Vアンプ162とADC163は、
図1の信号変換部140の要素である。
【0050】
(鮮度測定装置100の第2の構成例)
図3を参照して、鮮度測定装置100の第2の構成例について説明する。
図3は、鮮度測定装置100の第2の構成例を模式的に示す図である。
【0051】
第2の構成例に係る鮮度測定装置100は、励起光源110に加えて、デジタルカメラ170を有する。デジタルカメラ170は、例えばCMOSイメージセンサ171と、I-Vアンプ172、ADC173を有する。
【0052】
CMOSイメージセンサ171は、画素としてマトリクス状に配された複数のCMOSセンサを有するイメージセンサである。各CMOSセンサは、入射光を電流信号に変換する。デジタルカメラ170のCMOSイメージセンサ171が、
図1の受光素子120である。
【0053】
I-Vアンプ172は、各CMOSセンサが出力する電流信号を電圧信号に変換して出力する。ADC173は、I-Vアンプ172が出力する電圧信号をデジタル信号に変換して出力する。デジタルカメラ170のI-Vアンプ172とADC173は、
図1の信号変換部140の要素である。
【0054】
(信号処理装置200のハードウェア構成)
図4を参照して、鮮度測定システム10の信号処理装置200のハードウェア構成の一例について説明する。
図4は、信号処理装置200のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0055】
信号処理装置200は、例えば、サーバコンピュータやパーソナルコンピュータ等のコンピュータによって構成される。信号処理装置200は、制御部210と、プログラム記憶部220と、データ記憶部230と、入出力インタフェース240を有する。制御部210とプログラム記憶部220とデータ記憶部230と入出力インタフェース240は、バス250を介して互いに通信可能に接続されている。
【0056】
制御部210は、信号処理装置200を制御する。制御部210は、中央処理ユニット(CPU:Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサを有する。
【0057】
入出力インタフェース240は、鮮度測定装置100と出力装置300と入力装置400との間で情報の送受信を可能にするインタフェースである。入出力インタフェース240は、無線または有線の通信インタフェースである。信号処理装置200は、少なくとも、鮮度測定装置100と入力装置400からの情報の受信と、出力装置300への情報の送信を行うことができる。
【0058】
プログラム記憶部220は、例えば、記憶媒体としてHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを組み合わせて構成される。プログラム記憶部220は、OS(Operating System)等のミドルウェアに加えて、信号処理装置200の各種制御処理を実行するために必要なアプリケーション・プログラムを格納する。
【0059】
データ記憶部230は、例えば、記憶媒体としてHDDまたはSSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリとを組み合わせて構成される。信号処理装置200の各種制御処理において必要なデータを一時的に記憶する。
【0060】
(信号処理装置200機能構成)
次に、
図5を参照して、鮮度測定システム10の信号処理装置200の機能構成の一例について説明する。
図5は、信号処理装置200の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0061】
信号処理装置200は、鮮度測定装置100の出力信号に基づいて、測定対象物(詳しくは抽出液610中の測定対象物の抽出成分)の鮮度を判定する装置である。
図4を参照して説明したように、信号処理装置200は、制御部210とプログラム記憶部220とデータ記憶部230と入出力インタフェース240を有する。
【0062】
制御部210は、信号取得部211と、発光強度比計算部212と、K値変換部213と、鮮度判定部214と、判定結果出力部215を有する。
【0063】
信号取得部211は、鮮度測定装置100の出力信号を、入出力インタフェース240を介して取得する。鮮度測定装置100の出力信号は、信号変換部140が出力するデジタル信号であり、受光素子120が受光する蛍光の強度を反映した信号である。信号取得部211は、鮮度測定装置100の出力信号を発光強度比計算部212へ渡す。
【0064】
発光強度比計算部212は、受光素子120の個体差の校正のために、標準反射光の強度に対する、受光素子120が受光する蛍光の強度の比を計算する。受光素子120が受光する蛍光の強度は、蛍光体層510が発する蛍光の強度とも言える。以下では、便宜上、標準反射光の強度に対する蛍光の強度の比を、発光強度比とも称する。
【0065】
ここで、標準反射光の強度は、鮮度ラベル500の代わりに標準反射板を配置した状態において、受光素子120が受光する光の強度である。標準反射光の強度は、鮮度ラベルの蛍光強度測定前に行い、実際の鮮度ラベルの蛍光強度との強度比を情報として取得する。
【0066】
すなわち、発光強度比計算部212は、蛍光の強度の情報を信号取得部211から取得するとともに、標準反射光の強度の情報をデータ記憶部230から取得して、発光強度比を計算する。発光強度比計算部212は、発光強度比の情報を、K値変換部213へ渡す。
【0067】
K値変換部213は、発光強度比の情報を、K値の情報に変換する。変換に必要な情報は、例えば、入力装置400から予め入力され、データ記憶部230に記憶してある。K値は、よく用いられる魚類の鮮度を示す指標である。魚肉は、アデノシン三リン酸(ATP)を含んでいる。ATPは、魚類の死後、ATP→アデノシンニリン酸(ADP)→アデニル酸(AMP)→イノシン酸(IMP)→イノシン(HxR)→ヒポキサンチン(Hx)と分解される。K値とは、ATP関連化合物全体に占めるHxRとHxの割合を示す値である。したがって、HxRやHxの量が少ないほどK値は低く、K値が低いほど、魚類の鮮度が良いことを示す。K値は、鮮度が低下するにつれて、言い換えれば、変質や腐敗が進むにつれて、高くなる。K値変換部213は、K値の情報を、鮮度判定部214へ渡す。
【0068】
鮮度判定部214は、K値の情報に基づいて、測定対象物の鮮度を判定する。例えば、鮮度判定部214は、K値をしきい値と比較し、K値としきい値の大小関係に従って、測定対象物の鮮度の良否を判定する。
【0069】
しきい値の情報は、例えば、入力装置400から予め入力され、データ記憶部230に記憶してある。しきい値は、測定対象物の用途や使用目的等に応じて、適当な値に設定してよい。例えば、しきい値は、生食用の食品に対しては、低めの値に設定し、加熱食用の食品に対しては、高めの値に設定してよい。また、測定対象物の鮮度の許容度が、魚種によって異なる場合には、しきい値は、魚種に応じて、適当な値に設定してよい。
【0070】
鮮度判定部214は、K値がしきい値未満である場合には、測定対象物の鮮度は良好と判定し、K値がしきい値以上である場合には、測定対象物の鮮度は難ありと判定する。鮮度判定部214は、判定結果の情報を、判定結果出力部215へ渡す。
【0071】
判定結果出力部215は、判定結果の情報を、入出力インタフェース240を介して、出力装置300へ出力する。出力装置300は、判定結果の情報を出力する。例えば、出力装置300がディスプレイである場合、出力装置300は、判定結果の情報を表示する。
【0072】
(鮮度測定システム10の動作例)
図6を参照して、以上に説明した鮮度測定システム10の動作例について説明する。
図6は、鮮度測定システム10の動作例における処理の流れを示すフローチャートである。
【0073】
以下に説明する動作において、ACT11~ACT13は、鮮度測定装置100が実行する処理であり、ACT14~ACT18は、信号処理装置200が実行する処理である。
【0074】
(鮮度測定装置100の動作)
鮮度測定システム10の動作開始後、まず、ACT11において、制御回路150による制御の下、励起光源110は、鮮度ラベル500に励起光を照射する。
【0075】
励起光が照射された鮮度ラベル500の蛍光体層510は、蛍光を発する。第一の構成例の鮮度ラベル500の場合、抽出液610中の測定対象物の鮮度が良ければ、蛍光体層510は、蛍光を発する。反対に、抽出液610中の測定対象物の鮮度が悪ければ、蛍光体層510は蛍光を発せず消光を維持する。
【0076】
蛍光体層510が発する蛍光および鮮度ラベル500で反射または散乱される励起光の一部は、受光素子120へ向かう。途中、励起光は、蛍光フィルタ130によって遮断されるため、蛍光だけが受光素子120に入射する。
【0077】
次に、ACT12において、制御回路150による制御の下、受光素子120は、入射する蛍光を受光し、受光した蛍光を電流信号に変換して出力する。受光素子120が出力する電流信号は、入射光の蛍光強度を反映している。すなわち、受光素子120は、入射する蛍光の量が多いほど、大きい電流信号を出力する。
【0078】
続いて、ACT13において、制御回路150による制御の下、信号変換部140は、受光素子120が出力する電流信号を電圧信号に変換し、続いて電圧信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0079】
(信号処理装置200の動作)
次に、ACT14において、制御部210の信号取得部211は、鮮度測定装置100の出力信号、すなわち、信号変換部140が出力するデジタル信号を取得する。鮮度測定装置100の出力信号は、受光素子120が受光する蛍光の強度の情報である。信号取得部211は、必要であれば、蛍光の強度の情報をデータ記憶部230に記憶させる。信号取得部211は、蛍光の強度の情報を発光強度比計算部212へ渡す。
【0080】
続いて、ACT15において、制御部210の発光強度比計算部212は、まず、蛍光の強度の情報(標準反射光と鮮度ラベル)を信号取得部211から取得する。発光強度比計算部212は、続いて、発光強度比、すなわち、標準反射光の強度に対する蛍光の強度の比を計算する。発光強度比計算部212は、必要であれば、発光強度比の情報をデータ記憶部230に記憶させる。発光強度比計算部212は、発光強度比の情報を、K値変換部213へ渡す。
【0081】
次に、ACT16において、制御部210のK値変換部213は、発光強度比の情報を発光強度比計算部212から取得するとともに、必要な情報をデータ記憶部230から取得し、発光強度比の情報をK値の情報に変換する。K値変換部213は、必要であれば、K値の情報をデータ記憶部230に記憶させる。K値変換部213は、K値の情報を、鮮度判定部214へ渡す。
【0082】
続いて、ACT17において、制御部210の鮮度判定部214は、K値の情報をK値変換部213から取得し、K値の情報に基づいて鮮度を判定する。例えば、鮮度判定部214は、しきい値の情報をデータ記憶部230から取得し、K値としきい値を比較し、比較結果に従って鮮度を判定する。鮮度判定部214は、必要であれば、判定結果の情報をデータ記憶部230に記憶させる。鮮度判定部214は、判定結果の情報を、判定結果出力部215へ渡す。
【0083】
次に、ACT18において、制御部210の判定結果出力部215は、判定結果の情報を鮮度判定部214から取得し、判定結果の情報を出力装置300へ出力する。出力装置300は、判定結果の情報を出力する。例えば、出力装置300がディスプレイである場合、出力装置300は、判定結果の情報を表示する。
【0084】
(効果)
実施形態によれば、鮮度ラベル500を用いて、測定対象物すなわち生鮮食品の鮮度を簡易かつ高精度に測定することができる。
【0085】
以下、鮮度測定装置100の利点について、
図7を参照して説明する。
図7は、容器600の抽出液610に蛍光体層510を浸漬させた場合における時系列変化の様子を模式的に示す図である。
【0086】
抽出液610は、水溶性タンパク成分である析出物620を生成したり、析出物620を含んでいたりすることがある。また、蛍光体層510中の凝集誘起蛍光体は、抽出液610中にわずかに溶出する。析出物620は、抽出液610に溶出した凝集誘起蛍光体と反応して蛍光を発する。抽出液610に溶出する凝集誘起蛍光体の量が増えるにつれて、析出物620が発する蛍光は強くなる。
【0087】
析出物620が発する蛍光は、蛍光体層510が発する蛍光の強度に基づく測定対象物の鮮度の判定にとっては、判定の誤差要因となる。すなわち、析出物620が発する蛍光は、測定対象物の鮮度が良いにも関わらず、測定対象物の鮮度が不良であるとの判定結果に誤って導く要因となる。従って、このような析出物620が発する蛍光の影響は、排除することが望ましい。
【0088】
鮮度測定装置100は、蛍光体層510の第1面511は抽出液610に浸っているが、蛍光体層510の第2面512は抽出液610に浸っていない鮮度ラベル500に励起光を照射し、鮮度ラベル500が発する蛍光を検出する。このため、受光素子120の出力は、
図7を参照して説明したような析出物620が発する蛍光の影響を含まない。
【0089】
従って、鮮度測定装置100は、鮮度ラベル500を用いて、測定対象物すなわち生鮮食品の鮮度を簡易かつ高精度に測定することを可能にする。
【0090】
(変形例)
実施形態では、鮮度測定装置100は、第1面511は抽出液610に浸っているが第2面512は抽出液610に浸っていない蛍光体層510に、第1面511の側から励起光を照射するが、本発明は、これに限定されない。
【0091】
例えば、
図8に示すように、鮮度測定装置100が励起光を照射する対象である蛍光体層510は、表裏の関係にある両面が抽出液610に浸っていてもよい。ただし、変形例に係る鮮度測定装置100は、蛍光体層510の両面(上面と下面)のそれぞれの側に存在する抽出液610の容積を比較し、矢印Bで示すように、抽出液610の容積が大きい上面の側からではなく、矢印Aで示すように、抽出液610の容積が小さい下面の側から、励起光を照射するものとする。
【0092】
この場合、受光素子120の出力は、析出物620が発する蛍光の影響を含むが、析出物620が発する蛍光の影響は少ない。このため、変形例に係る鮮度測定装置100は、前述した実施形態に係る鮮度測定装置100に準ずる効果を得ることができる。
【0093】
本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
10…鮮度測定システム、100…鮮度測定装置、110…励起光源、120…受光素子、130…蛍光フィルタ、140…信号変換部、150…制御回路、161…フォトセンサ、162…アンプ、170…デジタルカメラ、171…CMOSイメージセンサ、172…アンプ、200…信号処理装置、210…制御部、211…信号取得部、212…発光強度比計算部、213…K値変換部、214…鮮度判定部、215…判定結果出力部、220…プログラム記憶部、230…データ記憶部、240…入出力インタフェース、250…バス、300…出力装置、400…入力装置、500…鮮度ラベル、510…蛍光体層、511…第1面、512…第2面、520…基材、521…第1面、522…第2面、600…容器、610…抽出液、620…析出物、700…ラベル設置部、710…開口。