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特開2024-114180制御装置、制御量計算方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114180
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】制御装置、制御量計算方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20240816BHJP
   F02C 7/042 20060101ALI20240816BHJP
   F02C 9/50 20060101ALI20240816BHJP
   F02C 6/00 20060101ALI20240816BHJP
   F02C 9/22 20060101ALI20240816BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240816BHJP
   F02C 3/30 20060101ALI20240816BHJP
   F23R 3/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F02C7/00 A
F02C7/042
F02C9/50
F02C6/00 E
F02C9/22 A
F01D25/00 V
F02C3/30 D
F23R3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019762
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】高木 一茂
(72)【発明者】
【氏名】園田 隆
(72)【発明者】
【氏名】中川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】岸 真人
(57)【要約】
【課題】ガスタービンとCO回収装置を含むプラントにおいて、CO回収装置の制御に必要な排ガス流量やCO濃度について、ガスタービンの負荷変化に応じた排ガス流量及びCO濃度を推定することができる制御装置を提供する。
【解決手段】ガスタービンとCO回収装置を含むプラントの制御装置であって、制御装置は、圧縮機が吸入する空気の温度とIGVの開度に基づいて吸気流量を計算する手段と、燃料指令値に基づいて燃料流量を計算する手段と、吸気流量と燃料流量に基づいて排ガスの流量を計算する手段と、排ガスの流量と燃料流量に基づいて排ガスに含まれるCO濃度を計算する手段と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンと、前記ガスタービンが排出した排ガスからCOを回収するCO回収装置と、を含むプラントの制御装置であって、
前記ガスタービンの圧縮機が吸入する空気の温度と、前記ガスタービンが備えるIGV(inlet guide vane)の開度とに基づいて、圧縮機が吸入する空気の流量である吸気流量を計算する吸気流量計算手段と、
前記ガスタービンの燃料指令値に基づいて、前記ガスタービンの燃焼器に供給される燃料の燃料流量を計算する燃料流量計算手段と、
前記吸気流量と前記燃料流量とに基づいて、前記排ガスの流量を計算する排ガス流量計算手段と、
前記排ガスの流量と、前記燃料流量に基づいて、前記排ガスに含まれるCO濃度を計算するCO濃度計算手段と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記燃料流量計算手段は、前記燃料指令値と、前記燃料の燃料組成とに基づいて、前記燃料流量を計算し、
前記CO濃度計算手段は、前記排ガスの流量と、前記燃料流量と、前記燃料組成と、に基づいて、前記CO濃度を計算する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記吸気流量計算手段は、前記温度と、前記開度と、前記圧縮機が吸入する空気の湿度とに基づいて、前記吸気流量を計算し、
前記CO濃度計算手段は、前記排ガスの流量と、前記燃料流量と、前記湿度と、に基づいて、前記CO濃度を計算する、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記CO濃度計算手段は、前記排ガスの流量と、前記燃料流量と、前記燃焼器の燃焼効率と、に基づいて、前記CO濃度を計算する、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記プラントは、前記ガスタービンが排出した前記排ガスの一部を前記ガスタービンの入口側へ循環させる排気再循環システムを備え、
前記吸気流量計算手段は、前記温度と、前記開度と、前記排気再循環システムによって循環させられる前記排ガスの流量を示す循環流量とに基づいて、前記吸気流量を計算し、
前記CO濃度計算手段は、前記排ガスの流量と、前記燃料流量と、前記循環流量と、に基づいて、前記CO濃度を計算する、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記排ガスの流量と、前記CO濃度とを前記CO回収装置の制御装置へ送信する
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項7】
ガスタービンと、前記ガスタービンが排出した排ガスからCOを回収するCO回収装置と、を含むプラントの制御量計算方法であって、
前記ガスタービンの圧縮機が吸入する空気の温度と、前記ガスタービンが備えるIGV(inlet guide vane)の開度とに基づいて、圧縮機が吸入する空気の流量である吸気流量を計算するステップと、
前記ガスタービンの燃料指令値に基づいて、前記ガスタービンの燃焼器に供給される燃料の燃料流量を計算するステップと、
前記吸気流量と前記燃料流量とに基づいて、前記排ガスの流量を計算するステップと、
前記排ガスの流量と、前記燃料流量に基づいて、前記排ガスに含まれるCO濃度を計算するステップと、
を有する制御量計算方法。
【請求項8】
コンピュータに、
ガスタービンと、前記ガスタービンが排出した排ガスからCOを回収するCO回収装置と、を含むプラントの制御量計算方法であって、
前記ガスタービンの圧縮機が吸入する空気の温度と、前記ガスタービンが備えるIGV(inlet guide vane)の開度とに基づいて、圧縮機が吸入する空気の流量である吸気流量を計算するステップと、
前記ガスタービンの燃料指令値に基づいて、前記ガスタービンの燃焼器に供給される燃料の燃料流量を計算するステップと、
前記吸気流量と前記燃料流量とに基づいて、前記排ガスの流量を計算するステップと、
前記排ガスの流量と、前記燃料流量に基づいて、前記排ガスに含まれるCO濃度を計算するステップと、
を含む処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンとCO回収装置を含むプラントの制御装置、制御量計算方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ボイラから排出されるCOを含有する排ガスからCOを除去し、除去したCOを回収するCO回収装置が開示されている。CO回収装置は、排ガス中のCOを除去する吸収塔と、吸収塔でCOを吸収した吸収液からCOを除去し、吸収液を再生する再生塔と、を含む。再生塔で再生された吸収液は、吸収塔で再利用される。再生塔にて吸収液からCOを抽出する際、熱源として蒸気が必要とされる。蒸気量は、COの回収率に関係し、蒸気量を適切に制御することで、目標となるCOの回収率を達成することができる。特許文献1では、COの目標回収率を達成するための蒸気量を、再生塔と吸収塔を循環する吸収液の循環量から決定している。そして、目標回収率を達成するための吸収液の循環量を排ガス量の計測値と、排ガスに含まれるCOの濃度の計測値から決定している。そして、これらに基づいて決定した蒸気流量を制御することにより、目標のCO回収率を維持できるように制御する。
【0003】
CO回収装置は、ガスタービンやガスタービンコンバインドサイクル等の発電プラントに適用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、排ガスを直接計測して得られる排ガス量、CO濃度を使用して、所望の吸収液流量と蒸気流量を決定しているが、計測値には計測遅れが含まれることが考えられ、排ガス流量やCO濃度が過渡的に変化した際には、目標値への追従制御に誤差が生じる可能性がある。急激な負荷変化が想定される発電プラントで、ガスタービンやガスタービンコンバインドサイクルとCO回収装置を組み合わせる場合、目標CO回収率を達成できない時間帯が生じる可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決することができる制御装置、制御量計算方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の制御装置は、ガスタービンと、前記ガスタービンが排出した排ガスからCOを回収するCO回収装置と、を含むプラントの制御装置であって、前記ガスタービンの圧縮機が吸入する空気の温度と、前記ガスタービンが備えるIGV(inlet guide vane)の開度とに基づいて、圧縮機が吸入する空気の流量である吸気流量を計算する吸気流量計算手段と、前記ガスタービンの燃料指令値に基づいて、前記ガスタービンの燃焼器に供給される燃料の燃料流量を計算する燃料流量計算手段と、前記吸気流量と前記燃料流量とに基づいて、前記排ガスの流量を計算する排ガス流量計算手段と、前記排ガスの流量と、前記燃料流量に基づいて、前記排ガスに含まれるCO濃度を計算するCO濃度計算手段と、を備える。
【0008】
本開示の制御量計算方法は、ガスタービンと、前記ガスタービンが排出した排ガスからCOを回収するCO回収装置と、を含むプラントの制御量計算方法であって、前記ガスタービンの圧縮機が吸入する空気の温度と、前記ガスタービンが備えるIGV(inlet guide vane)の開度とに基づいて、圧縮機が吸入する空気の流量である吸気流量を計算するステップと、前記ガスタービンの燃料指令値に基づいて、前記ガスタービンの燃焼器に供給される燃料の燃料流量を計算するステップと、前記吸気流量と前記燃料流量とに基づいて、前記排ガスの流量を計算するステップと、前記排ガスの流量と、前記燃料流量に基づいて、前記排ガスに含まれるCO濃度を計算するステップと、を有する。
【0009】
本開示のプログラムは、コンピュータに、ガスタービンと、前記ガスタービンが排出した排ガスからCOを回収するCO回収装置と、を含むプラントの制御量計算方法であって、前記ガスタービンの圧縮機が吸入する空気の温度と、前記ガスタービンが備えるIGV(inlet guide vane)の開度とに基づいて、圧縮機が吸入する空気の流量である吸気流量を計算するステップと、前記ガスタービンの燃料指令値に基づいて、前記ガスタービンの燃焼器に供給される燃料の燃料流量を計算するステップと、前記吸気流量と前記燃料流量とに基づいて、前記排ガスの流量を計算するステップと、前記排ガスの流量と、前記燃料流量に基づいて、前記排ガスに含まれるCO濃度を計算するステップと、を含む処理を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
上述の制御装置、制御量計算方法及びプログラムによれば、負荷変化に応じた排ガス流量やCO濃度を推定することができるので、速い負荷変化がある場合でも精度よくCO回収の目標値に追従することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一実施形態に係るプラントの概略図である。
図2】第一実施形態に係る制御量推定部の一例を示すブロック図である。
図3】第一実施形態に係る排ガス流量とCO濃度の推定処理の一例を示すフローチャートである。
図4】第二実施形態に係る制御量推定部の一例を示すブロック図である。
図5】第三実施形態に係る制御量推定部の一例を示すブロック図である。
図6】第四実施形態に係る制御量推定部の一例を示すブロック図である。
図7】第五実施形態に係るプラントの概略図である。
図8】第五実施形態に係る制御量推定部の一例を示すブロック図である。
図9】各実施形態に係るガスタービン制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る排ガス流量とCO濃度の推定方法について、図1図9を参照して説明する。
<第一実施形態>
(構成)
図1は、第一実施形態に係るプラントの一例を示す概略図である。プラント100は、ガスタービン10と、CO回収装置20とを備える。ガスタービン10は、空気を圧縮する圧縮機12と、圧縮した空気を送り込む車室13と、圧縮した空気と燃料ガスとを混合して燃焼させ、高温の燃焼ガスを生成する燃焼器16と、燃焼器16に燃料ガスを供給する燃料供給系統15と、燃焼器16で生成した燃焼ガスにより駆動するタービン17と、ガスタービン制御装置30と、を備えている。圧縮機12の入口側には、IGV(inlet guide vane)11が設けられている。IGV11は圧縮機12への空気の流入量を調節する。燃料供給系統15の上流には燃料流量調節弁14が設けられている。燃料流量調節弁14の開度を調節することにより燃焼器16に供給される燃料ガスの流量が変化する。図1では、燃料供給系統15を1つのみ図示しているが、燃料供給系統15は複数存在する場合があり、その場合には、それぞれの系統に燃料流量調節弁14が設けられていてもよい。圧縮機12とタービン17を接続する抽気流路18が設けられている。抽気流路18は、圧縮機12から圧縮空気の一部を抽気し、クーラ19にて所定の温度まで冷却した圧縮空気をタービン17に供給するために設けられている。圧縮機12の入口側には、温度計1Aが設けられている。温度計1Aは、大気温度を計測しガスタービン制御装置30に出力する。また、圧縮機12の入口側には、湿度計1Bが設けられていてもよい。湿度計1Bは、大気湿度を計測しガスタービン制御装置30に出力する。
【0013】
ガスタービン制御装置30は、ガスタービン10を制御する。例えば、ガスタービン制御装置30は、燃料指令値(CSO:Control Signal Output)に基づいて、燃料流量調節弁14の開度を調節し、燃焼器16に供給される燃焼ガスの流量を制御する。例えば、ガスタービン制御装置30は、IGV11の開度を調節して、圧縮機12が吸入する空気量を制御する。ガスタービン制御装置30は、制御量推定部31を備えている。制御量推定部31は、CO回収装置20が、COの目標回収率を達成するために必要な蒸気量の決定に必要な制御量、即ち、CO回収装置20に供給される排ガス流量と、その排ガスのCO濃度を推定し、推定した値をCO回収装置20に送信する。
【0014】
CO回収装置20は、ガスタービン10が排出した排ガスを受け取り、排ガスからCOを回収する。CO回収装置20は、制御装置21を備える。制御装置21は、ガスタービン制御装置30から送信された排ガス流量とCO濃度を取得して、COの目標回収率を達成するための蒸気量を算出する。排ガス流量とCO濃度に応じてCOの目標回収率を達成するための吸収液循環量を決定し、決定した吸収液循環量に応じて、COの目標回収率を達成するための蒸気量を算出する方法については、例えば、特許文献1に開示されている。制御装置21は、COの目標回収率を維持できるよう、算出した蒸気量および吸収液循環量に基づいてCO回収装置20を運転する。
【0015】
(制御量推定部の構成)
次に図2を参照して、制御量推定部31による排ガス流量とCO濃度の推定方法について説明する。CO回収装置20を排ガス供給量の変化が少ない装置と組み合わせて使用する場合には、排ガス流量やCO濃度の計測値を使用してもよいが、ガスタービンなど負荷変化が速い装置と組み合わせて使用する場合には、負荷変化の速度に排ガス流量やCO濃度の計測器の応答が追い付かず、負荷変化に伴い過渡的に排ガス流量やCO濃度が変化する場面では、少し過去の排ガス流量やCO濃度の計測値が得られる。これに対し、本実施形態では、制御量推定部31によって、ガスタービン10の負荷変化に伴って変化するするパラメータ(例えば、燃料流量や吸気流量など出力を変化させるためのパラメータ)に基づいて排ガス流量やCO濃度を推定することで、負荷変化に追従した排ガス流量やCO濃度を推定する。図2は、第一実施形態に係る制御量推定部31の一例を示すブロック図である。制御量推定部31は、吸気流量計算手段32と、燃料流量計算手段33と、排ガス流量計算手段34と、燃空比計算手段35と、CO濃度計算手段36と、を備える。また、制御量推定部31は、IGV開度、温度計1Aが計測した大気温度、CSOを取得する。
【0016】
吸気流量計算手段32は、IGV開度と、温度計1Aが計測した圧縮機12入口側の大気温度(圧縮機入口温度と称する場合がある。)を取得し、圧縮機12が吸入する空気流量(圧縮機吸気流量と称する場合がある。)を計算する。例えば、吸気流量計算手段32は、IGV開度と大気温度と圧縮機吸気流量の対応関係を規定したルックアップテーブルを備えていて、IGV開度と、温度計1Aが計測した温度と、ルックアップテーブルと、に基づいて、圧縮機12の吸気流量を計算する。又は、吸気流量計算手段32は、IGV開度の代わりにガスタービン10の出力の計測値を取得して、ガスタービン10の出力計測値と、温度計1Aが計測した温度と、ガスタービン出力と大気温度と圧縮機吸気流量の対応関係を規定したルックアップテーブルと、に基づいて圧縮機12の吸気流量を計算してもよい。あるいは、圧縮機12の入口側に圧縮機吸気流量を計測するセンサを設け、吸気流量計算手段32によって吸気流量を計算する代わりに、センサが計測した吸気流量を用いてもよい。なお、ルックアップテーブルを用いる場合、テーブルに登録されていないデータについては補間計算を行って圧縮機吸気流量を計算する。ルックアップテーブルに関し補間計算を行ってもよいことは以降も同様である。
【0017】
燃料流量計算手段33は、CSOを取得し、燃焼器16に供給される燃料流量を計算する。例えば、燃料流量計算手段33は、CSOと燃料流量の対応関係を規定したルックアップテーブルを備えていて、CSOと、ルックアップテーブルと、に基づいて、燃料流量を計算する。又は、燃料流量計算手段33は、CSOの代わりにガスタービン10の出力の計測値を取得して、ガスタービン10の出力計測値と、ガスタービン出力と燃料流量の対応関係を規定したルックアップテーブルと、に基づいて燃料流量を計算してもよい。あるいは、燃焼器16に供給される燃料ガスの流量を計測するセンサを設け、燃料流量計算手段33によって燃料流量を計算する代わりに、センサが計測した燃料流量を用いてもよい。
【0018】
排ガス流量計算手段34は、吸気流量計算手段32が計算した圧縮機12の吸気流量と、燃料流量計算手段33が計算した燃料流量を合計して、排ガス流量を計算する。制御量推定部31は、排ガス流量計算手段34が計算した排ガス流量をCO回収装置20へ送信する。
【0019】
燃空比計算手段35は、燃料流量計算手段33が計算した燃料流量を吸気流量計算手段32が計算した圧縮機12の吸気流量で除算して燃空比を計算する。
【0020】
CO濃度計算手段36は、燃空比計算手段35が計算した燃空比を取得して、CO濃度を計算する。例えば、CO濃度計算手段36は、燃空比とCO濃度の対応関係を規定したルックアップテーブルを備えていて、燃空比計算手段35が計算した燃空比と、ルックアップテーブルと、に基づいて、CO濃度を計算する。又は、CO濃度計算手段36は、化学的な計算式からCO濃度を計算してもよい。例えば、CO濃度計算手段36は、燃料流量計算手段33が計算した燃料流量と吸気流量計算手段32が計算した圧縮機12の圧縮機吸気流量を取得して、燃料流量と燃料組成(例えば、炭素が何%含まれているか)からCの含有量を計算し、圧縮機吸気流量と大気の組成(例えば、酸素が何%含まれているか)からOの含有量を計算し、それらが完全に反応したと仮定した場合に生じるCOの量を計算する。なお、第一実施形態ではC,H,N,S等の燃料組成は不変で各分子が含まれる割合は固定値であると仮定する。制御量推定部31は、CO濃度計算手段36が計算したCO濃度の推定値をCO回収装置20へ送信する。
【0021】
(動作)
次に図3を参照して、排ガス流量とCO濃度の計算処理の流れを説明する。
図3は、第一実施形態に係る排ガス流量とCO濃度の計算処理の一例を示すフローチャートである。
制御量推定部31が、ガスタービン10の状態量を取得する(ステップS1)。ガスタービン10の状態量とは、例えば、IGV開度、圧縮機入口温度、CSOである。次に制御量推定部31(吸気流量計算手段32)が、圧縮機入口温度とIGV開度から圧縮機吸気流量を計算する(ステップS2)。次に制御量推定部31(燃料流量計算手段33)が、CSOから燃料流量を計算する(ステップS3)。次に制御量推定部31(排ガス流量計算手段34)が、ステップS2で計算した圧縮機吸気流量とステップS3で計算した燃料流量から排ガス流量を計算する(ステップS4)。次に制御量推定部31(燃空比計算手段35)が、ステップS2で計算した圧縮機吸気流量とステップS4で計算した燃料流量から燃空比を計算する(ステップS5)。次に制御量推定部31(CO濃度計算手段36)が、ステップS5で計算した燃空比からCO濃度を計算する(ステップS6)。次に制御量推定部31が、ステップS4で計算した排ガス流量と、ステップS6で計算したCO濃度をCO回収装置20の制御装置21へ送信する(ステップS7)。CO回収装置20は、排ガス流量とCO濃度の推定値を吸収液流量および蒸気流量の制御に用いる。なお、ステップS2とステップS3の実行順は逆でもよい。
【0022】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、ガスタービンの状態量に基づいて排ガス流量およびCO濃度の推定値を計算し、これらの値をCO回収装置20へ通知する。これにより、CO回収装置20は、計測遅れが含まれる排ガス流量およびCO濃度の計測値によらず、ガスタービンの負荷に応じた排ガス流量およびCO濃度の推定値に基づいて、吸収液流量および蒸気流量の制御を行うことができる。従って、負荷変化の速いガスタービン10が排出する排ガスに対しても常に目標のCO回収率を達成する制御が可能となる。
【0023】
<第二実施形態>
第一実施形態ではCO濃度を計算するときにガスタービン10で燃焼させる燃料に含まれる燃料組成は不変(固定値)としていたが、実際には燃料ガスに含まれる分子(CH4、H2H4,CO等)の構成割合は変動し、この変動に応じて発生するCO濃度は異なったものとなる。また、CSOと燃料流量の関係も変化することから、排ガス流量も影響を受ける。第二実施形態では、燃料組成を、計測した燃料組成に応じて変化させる。
【0024】
図4に第二実施形態に係る制御量推定部31の一例を示す。第一実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。制御量推定部31は、吸気流量計算手段32と、燃料流量計算手段33aと、排ガス流量計算手段34と、燃空比計算手段35と、CO濃度計算手段36aと、を備える。また、制御量推定部31は、IGV開度、温度計1Aが計測した大気温度、CSOに加え、例えば燃料供給系統15に設けられた不図示のセンサが計測する燃料組成の計測値、又は、所定の方法で計算された燃料組成の推定値を取得する。
【0025】
燃料流量計算手段33aは、CSOと燃料組成の計測値又は推定値を取得し、燃料流量を計算する。例えば、燃料流量計算手段33aは、CSOと燃料組成と燃料流量の対応関係を規定したルックアップテーブルを備えていて、CSOと、燃料組成の計測値又は推定値と、ルックアップテーブルと、に基づいて燃料流量を計算する。又は、燃料流量計算手段33aは、燃料組成に応じて燃料密度を変化させることで、燃料流量への影響を算出し、燃料流量の計算結果に燃料密度の変化を反映させることにより、燃料組成に応じた燃料流量を計算してもよい。
【0026】
CO濃度計算手段36aは、燃空比計算手段35が計算した燃空比と燃料組成の計測値又は推定値を取得して、CO濃度を計算する。例えば、CO濃度計算手段36aは、燃空比と燃料組成とCO濃度の対応関係を規定したルックアップテーブルを備えていて、燃空比計算手段35が計算した燃空比と、燃料組成の計測値又は推定値と、ルックアップテーブルと、に基づいて、CO濃度を計算する。又は、CO濃度計算手段36aは、燃料組成に基づいて各分子に含まれる炭素や水素の量を計算し、計算した炭素や水素の量をもとに化学的な計算式からCO濃度を計算してもよい。
【0027】
(動作)
次に図3を援用して、第二実施形態における排ガス流量とCO濃度の計算処理の流れを説明する。第一実施形態と同様の処理については簡単に説明する。
最初に制御量推定部31が、ガスタービン10の状態量を取得する(ステップS1)。次に制御量推定部31(吸気流量計算手段32)が、圧縮機入口温度とIGV開度から圧縮機吸気流量を計算する(ステップS2)。次に制御量推定部31(燃料流量計算手段33a)が、CSOと燃料組成の計測値又は推定値から燃料流量を計算する(ステップS3)。次に制御量推定部31(排ガス流量計算手段34)が、ステップS2で計算した圧縮機吸気流量とステップS3で計算した燃料流量から排ガス流量を計算する(ステップS4)。次に制御量推定部31(燃空比計算手段35)が、ステップS2で計算した圧縮機吸気流量とステップS4で計算した燃料流量から燃空比を計算する(ステップS5)。次に制御量推定部31(CO濃度計算手段36a)が、ステップS5で計算した燃空比と燃料組成の計測値又は推定値からCO濃度を計算する(ステップS6)。次に制御量推定部31が、ステップS4で計算した排ガス流量と、ステップS6で計算したCO濃度をCO回収装置20の制御装置21へ送信する(ステップS7)。
【0028】
(効果)
第二実施形態によれば、第一実施形態の効果に加え、燃料組成の変化に対応して、正確にCO濃度および排ガス流量を推定することが可能になる。
【0029】
<第三実施形態>
第一実施形態では大気中の湿度変化は考慮していなかったが、実際にはガスタービン10の圧縮機12が吸い込む空気の湿度は変動し、湿度に応じて排出されるCO濃度は影響を受ける。また、湿度変化によって吸い込む空気の密度が変化するため、圧縮機吸気流量および排ガス流量も変化する。そこで、第三実施形態で大気中の湿度に応じてCO濃度を変化させる。
【0030】
図5に第三実施形態に係る制御量推定部31の一例を示す。第一実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。制御量推定部31は、吸気流量計算手段32bと、燃料流量計算手段33と、排ガス流量計算手段34と、燃空比計算手段35と、CO濃度計算手段36bと、を備える。また、制御量推定部31は、IGV開度、温度計1Aが計測した大気温度、CSOに加え、湿度計1Bが計測した大気湿度を取得する。
【0031】
吸気流量計算手段32bは、IGV開度と、温度計1Aが計測した圧縮機入口温度と、湿度計1Bが計測した圧縮機12入口側の大気湿度を取得し、圧縮機吸気流量を計算する。例えば、吸気流量計算手段32は、IGV開度と大気温度と大気湿度と吸気流量の対応関係を規定したルックアップテーブルを備えていて、IGV開度と、温度計1Aが計測した温度と、湿度計1Bが計測した湿度と、ルックアップテーブルと、に基づいて、圧縮機12の吸気流量を計算する。又は、吸気流量計算手段32bは、IGV開度の代わりにガスタービン10の出力の計測値を取得して、ガスタービン10の出力計測値と、温度計1Aが計測した温度と、湿度計1Bが計測した湿度と、ガスタービン出力と大気温度と大気湿度と圧縮機吸気流量の対応関係を規定したルックアップテーブルと、に基づいて圧縮機12の吸気流量を計算してもよい。又は、吸気流量計算手段32bは、湿度に応じて空気密度を変化させることで、圧縮機吸気流量への影響を算出し、圧縮機吸気流量の計算結果に空気密度の変化を反映させることにより、大気湿度に応じた圧縮機吸気流量を計算してもよい。
【0032】
CO濃度計算手段36bは、燃空比計算手段35が計算した燃空比と、湿度計1Bが計測した大気湿度を取得して、CO濃度を計算する。例えば、CO濃度計算手段36bは、燃空比と大気湿度とCO濃度の対応関係を規定したルックアップテーブルを備えていて、燃空比計算手段35が計算した燃空比と、湿度計1Bが計測した大気湿度と、ルックアップテーブルと、に基づいて、CO濃度を計算する。又は、CO濃度計算手段36bは、各分子に含まれる大気湿度に応じた炭素や水素の量を計算し、これらの値をもとに化学的な計算式からCO濃度を計算してもよい。
【0033】
(動作)
次に図3を援用して、第三実施形態における排ガス流量とCO濃度の計算処理の流れを説明する。
最初に制御量推定部31が、ガスタービン10の状態量を取得する(ステップS1)。次に制御量推定部31(吸気流量計算手段32b)が、圧縮機入口温度とIGV開度と大気湿度の計測値から圧縮機吸気流量を計算する(ステップS2)。次に制御量推定部31(燃料流量計算手段33)が、CSOから燃料流量を計算する(ステップS3)。次に制御量推定部31(排ガス流量計算手段34)が、ステップS2で計算した圧縮機吸気流量とステップS3で計算した燃料流量から排ガス流量を計算する(ステップS4)。次に制御量推定部31(燃空比計算手段35)が、ステップS2で計算した圧縮機吸気流量とステップS4で計算した燃料流量から燃空比を計算する(ステップS5)。次に制御量推定部31(CO濃度計算手段36b)が、ステップS5で計算した燃空比と大気湿度の計測値からCO濃度を計算する(ステップS6)。次に制御量推定部31が、ステップS4で計算した排ガス流量と、ステップS6で計算したCO濃度をCO回収装置20の制御装置21へ送信する(ステップS7)。
【0034】
(効果)
第三実施形態によれば、第一実施形態の効果に加え、大気湿度の変化に対応して、正確にCO濃度および排ガス流量を推定することが可能になる。上記説明では、制御量推定部31の構成を第一実施形態の構成と組み合わせる場合を例に説明を行ったが、第四実施形態に係る制御量推定部31の構成は、第二実施形態と組み合わせることが可能である。
【0035】
<第四実施形態>
第一実施形態ではCO濃度を算出する際に、燃焼器16における燃焼効率は考慮していなかったが、実際には燃焼効率が変化すると生成されるCO量は変化し、CO濃度は影響を受ける。例えば、燃焼効率が低下すれば燃料が燃え残ったり、COではなくCOが生成されたりする。そこで、第四実施形態では計測した燃焼効率に応じてCO濃度を変化させる。
【0036】
図6に第四実施形態に係る制御量推定部31の一例を示す。第一実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。制御量推定部31は、吸気流量計算手段32と、燃料流量計算手段33と、排ガス流量計算手段34と、燃空比計算手段35と、CO濃度計算手段36cと、を備える。制御量推定部31は、IGV開度、温度計1Aが計測した大気温度、CSOを取得する。また、制御量推定部31は、燃焼器16の燃焼効率を取得又は推定する。例えば、制御量推定部31は、ガスタービン10の出力の計測値とタービン入口温度(タービン17の入口側の燃焼ガス温度)を入力すると燃焼効率を出力する関数を備えていて、この関数に対して、ガスタービン出力の計測値とタービン入口温度の計測値又は推定値を入力し、燃焼効率を推定する。
【0037】
CO濃度計算手段36cは、燃空比計算手段35が計算した燃空比と、燃焼効率の推定値を取得して、CO濃度を計算する。例えば、CO濃度計算手段36bは、燃空比と燃焼効率とCO濃度の対応関係を規定したルックアップテーブルを備えていて、燃空比計算手段35が計算した燃空比と、燃焼効率の推定値と、ルックアップテーブルと、に基づいて、CO濃度を計算する。又は、CO濃度計算手段36cは、各分子に含まれる燃焼効率に応じた炭素や水素の量を計算し、計算した炭素や水素の量をもとに化学的な計算式からCO濃度を計算してもよい。
【0038】
(動作)
次に図3を援用して、第四実施形態における排ガス流量とCO濃度の計算処理の流れを説明する。
最初に制御量推定部31が、ガスタービン10の状態量を取得する(ステップS1)。次に制御量推定部31(吸気流量計算手段32)が、圧縮機入口温度とIGV開度から吸気流量を計算する(ステップS2)。次に制御量推定部31(燃料流量計算手段33)が、CSOから燃料流量を計算する(ステップS3)。次に制御量推定部31(排ガス流量計算手段34)が、ステップS2で計算した圧縮機吸気流量とステップS3で計算した燃料流量から排ガス流量を計算する(ステップS4)。次に制御量推定部31(燃空比計算手段35)が、ステップS2で計算した圧縮機吸気流量とステップS4で計算した燃料流量から燃空比を計算する(ステップS5)。次に制御量推定部31(CO濃度計算手段36c)が、ステップS5で計算した燃空比と燃焼器16の燃焼効率の推定値からCO濃度を計算する(ステップS6)。次に制御量推定部31が、ステップS4で計算した排ガス流量と、ステップS6で計算したCO濃度をCO回収装置20の制御装置21へ送信する(ステップS7)。
【0039】
(効果)
第四実施形態によれば、第一実施形態の効果に加え、燃焼効率の変化に対応して、正確にCO濃度および排ガス流量を推定することが可能になる。上記説明では、制御量推定部31の構成を第一実施形態の構成と組み合わせる場合を例に説明を行ったが、第四実施形態に係る制御量推定部31の構成は、第二実施形態~第三実施形態の何れか又は複数と組み合わせることが可能である。
【0040】
<第五実施形態>
(構成)
図7は、第五実施形態に係るプラントの一例を示す概略図である。プラント100´は、EGR(Exhaust Gas Recirculation:排気再循環)システムを含むガスタービンコンバインドサイクルにCO回収装置20を組み合わせたプラントである。プラント100´は、ガスタービン10と、HRSG(Heat Recovery Steam Generator:排熱回収ボイラ)40と、蒸気タービン41と、CO回収装置20とを備える。ガスタービン10から排出される排ガスはHRSG40へ送られ、HRSG40にて使用された後にCO回収装置20へ送られる。HRSG40は、排ガスから熱を回収し、高圧蒸気、中圧蒸気、低圧蒸気を生成し、それらを蒸気タービン41へ供給するとともに、低圧蒸気をCO回収装置20の再生塔23へと供給する。また、HRSG40は、熱回収後の排ガスをCO回収装置20へ送る。CO回収装置20は、吸収塔22と再生塔23を備え、吸収塔22と再生塔23の間で吸収液を循環させることによって、HRSG40から送出された排ガスからCOを抽出する。COの抽出には、HRSG40から供給された低圧蒸気が用いられ、CO抽出の過程で使用された低圧蒸気は復水されて低圧温水となり、生成された低圧温水はCO回収装置20からHRSG40へ供給される。プラント100´は、HRSG40からCO回収装置20へ送出される排ガスの一部を、ガスタービン10の入口に戻して循環させるEGRシステム50を備えている。HRSG40が送出した排ガスの一部は、大気とともに圧縮機12に吸入される。EGRシステム50が含まれる場合、CO等の燃焼後の物質を含んだガスが吸入されるため、第一実施形態~第四実施形態とは異なり、単純に空気組成と燃料組成から排ガスに含まれるCO濃度を推定することができない。そこで、第五実施形態では、EGR流量(EGRシステム50を通じて戻されるガスの流量)またはEGR率(圧縮機吸気流量に対するEGR流量の割合)に応じたCO濃度を計算する。
【0041】
図8に第五実施形態に係る制御量推定部31の一例を示す。第一実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。制御量推定部31は、吸気流量計算手段32dと、燃料流量計算手段33と、排ガス流量計算手段34と、燃空比計算手段35と、CO濃度計算手段36dと、を備える。また、制御量推定部31は、IGV開度、温度計1Aが計測した大気温度、CSOに加え、EGR流量又はEGR率の計測値や推定値を取得する。EGR率とは、圧縮機吸気流量に対するEGR流量の割合である。EGR流量は、例えば、EGRシステム50に設けられたオリフィス等で計測することができる。
【0042】
吸気流量計算手段32dは、IGV開度と、温度計1Aが計測した圧縮機入口温度と、EGR流量又はEGR率を取得し、圧縮機吸気流量を計算する。例えば、吸気流量計算手段32は、IGV開度と大気温度とEGR流量又はEGR率と圧縮機吸気流量の対応関係を規定したルックアップテーブルを備えていて、IGV開度と、温度計1Aが計測した温度と、制御量推定部31が取得したEGR流量又はEGR率と、ルックアップテーブルと、に基づいて、圧縮機12の吸気流量を計算する。又は、吸気流量計算手段32dは、IGV開度の代わりにガスタービン10の出力の計測値を取得して、ガスタービン10の出力計測値と、温度計1Aが計測した温度と、EGR流量又はEGR率と、ガスタービン出力と大気温度とEGR流量又はEGR率と吸気流量の対応関係を規定したルックアップテーブルと、に基づいて吸気流量を計算してもよい。又は、吸気流量計算手段32dは、EGR流量又はEGR率に応じて圧縮機12が吸入する気体の密度を変化させることで、圧縮機吸気流量への影響を算出し、圧縮機吸気流量の計算結果に気体密度の変化を反映させることにより、EGR流量又はEGR率に応じた圧縮機吸気流量を計算してもよい。
【0043】
CO濃度計算手段36dは、燃空比計算手段35が計算した燃空比と、EGR流量又はEGR率を取得して、CO濃度を計算する。例えば、CO濃度計算手段36dは、燃空比とEGR流量又はEGR率とCO濃度の対応関係を規定したルックアップテーブルを備えていて、燃空比計算手段35が計算した燃空比と、制御量推定部31が取得したEGR流量又はEGR率と、ルックアップテーブルと、に基づいて、CO濃度を計算する。又は、CO濃度計算手段36bは、各分子に含まれるEGR流量又はEGR率に応じた炭素や水素の量を計算し、これらの値をもとに化学的な計算式からCO濃度を計算してもよい。
【0044】
(動作)
次に図3を援用して、第五実施形態における排ガス流量とCO濃度の計算処理の流れを説明する。
最初に制御量推定部31が、ガスタービン10の状態量を取得する(ステップS1)。次に制御量推定部31(吸気流量計算手段32d)が、圧縮機入口温度とIGV開度とEGR流量又はEGR率から圧縮機吸気流量を計算する(ステップS2)。次に制御量推定部31(燃料流量計算手段33)が、CSOから燃料流量を計算する(ステップS3)。次に制御量推定部31(排ガス流量計算手段34)が、ステップS2で計算した圧縮機吸気流量とステップS3で計算した燃料流量から排ガス流量を計算する(ステップS4)。次に制御量推定部31(燃空比計算手段35)が、ステップS2で計算した圧縮機吸気流量とステップS4で計算した燃料流量から燃空比を計算する(ステップS5)。次に制御量推定部31(CO濃度計算手段36d)が、ステップS5で計算した燃空比とEGR流量又はEGR率からCO濃度を計算する(ステップS6)。次に制御量推定部31が、ステップS4で計算した排ガス流量と、ステップS6で計算したCO濃度をCO回収装置20の制御装置21へ送信する(ステップS7)。
【0045】
(効果)
第五実施形態によれば、EGRシステム50を含むプラントの場合であっても、正確にCO濃度および排ガス流量を推定することが可能になる。上記説明では、制御量推定部31の構成を第一実施形態の構成と組み合わせる場合を例に説明を行ったが、第五実施形態に係る制御量推定部31の構成は、第二実施形態~第四実施形態の何れか又は複数と組み合わせることが可能である。
【0046】
以上説明したように、第一実施形態~第二実施形態に係る制御量推定部31によれば、ガスタービン10とCO回収装置20を含むプラント100、100´において、CO回収装置20の制御に必要な排ガス流量やCO濃度について、ガスタービン10の負荷変化に追従した排ガス流量及びCO濃度を推定することができる。これにより、負荷変化が速い場面でも、CO回収装置20を適切に運転し、COの目標回収率を維持することができる。なお、上記の各実施形態では、制御量推定部31をガスタービン制御装置30に設けることとしたが、これに限定されない。例えば、制御量推定部31を独立した装置として設けてもよい。また、第一実施形態~第四実施形態では、ガスタービンとCO回収装置を含むプラントを例として説明を行ったが、ガスタービンと蒸気タービンとHRSGとCO回収装置を含むプラント(図7の構成からEGRシステムを除いたプラント)に対して、第一実施形態~第四実施形態の排ガス流量およびCO濃度の推定方法を適用してもよい。また、第五実施形態では、ガスタービンと蒸気タービンとHRSGとEGRシステムとCO回収装置を含むプラントを例として説明を行ったが、ガスタービンとEGRシステムとCO回収装置を含むプラント(図1の構成に、タービン17が排出した排ガスを圧縮機12の入口側へ戻すようなEGRシステムを追加したプラント)に対して、第五実施形態の排ガス流量およびCO濃度の推定方法を適用してもよい。
【0047】
図9は、各実施形態に係るガスタービン制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。上述のガスタービン制御装置30は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0048】
ガスタービン制御装置30の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0049】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0050】
<付記>
各実施形態に記載の制御装置、制御量計算方法及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0051】
(1)第1の態様に係る制御装置は、ガスタービンと、前記ガスタービンが排出した排ガスからCOを回収するCO回収装置と、を含むプラントの制御装置であって、前記ガスタービンの圧縮機が吸入する空気の温度と、前記ガスタービンが備えるIGVinlet guide vane)の開度とに基づいて、圧縮機が吸入する空気の流量である吸気流量を計算する吸気流量計算手段と、前記ガスタービンの燃料指令値に基づいて、前記ガスタービンの燃焼器に供給される燃料の燃料流量を計算する燃料流量計算手段と、前記吸気流量と前記燃料流量とに基づいて、前記排ガスの流量を計算する排ガス流量計算手段と、前記排ガスの流量と、前記燃料流量に基づいて、前記排ガスに含まれるCO濃度を計算するCO濃度計算手段と、を備える。
これにより、ガスタービンの負荷に応じた排ガス流量およびCO濃度の推定値に基づいて、吸収液流量および蒸気流量の制御を行うことができる。従って、負荷変化の速いガスタービン10が排出する排ガスに対しても常に目標のCO回収率を達成する制御が可能となる。
【0052】
(2)第2の態様に係る制御装置は、(1)の制御装置であって、前記燃料流量計算手段は、前記燃料指令値と、前記燃料の燃料組成とに基づいて、前記燃料流量を計算し、前記CO濃度計算手段は、前記排ガスの流量と、前記燃料流量と、前記燃料組成と、に基づいて、前記CO濃度を計算する。
これにより、燃料組成の変化に対応して、正確にCO濃度および排ガス流量を推定することが可能になる。
【0053】
(3)第3の態様に係る制御装置は、(1)~(2)の制御装置であって、前記吸気流量計算手段は、前記温度と、前記開度と、前記圧縮機が吸入する空気の湿度とに基づいて、前記吸気流量を計算し、前記CO濃度計算手段は、前記排ガスの流量と、前記燃料流量と、前記湿度と、に基づいて、前記CO濃度を計算する。
これにより、大気湿度の変化に対応して、正確にCO濃度および排ガス流量を推定することが可能になる。
【0054】
(4)第4の態様に係る制御装置は、(1)~(3)の制御装置であって、前記CO濃度計算手段は、前記排ガスの流量と、前記燃料流量と、前記燃焼器の燃焼効率と、に基づいて、前記CO濃度を計算する。
これにより、燃焼効率の変化に対応して、正確にCO濃度および排ガス流量を推定することが可能になる。
【0055】
(5)第5の態様に係る制御装置は、(1)~(4)の制御装置であって、前記プラントは、前記ガスタービンが排出した前記排ガスの一部を前記ガスタービンの入口側へ循環させる排気再循環システムを備え、前記吸気流量計算手段は、前記温度と、前記開度と、前記排気再循環システムによって循環させられる前記排ガスの流量を示す循環流量とに基づいて、前記吸気流量を計算し、前記CO濃度計算手段は、前記排ガスの流量と、前記燃料流量と、前記循環流量と、に基づいて、前記CO濃度を計算する。
これにより、EGRシステム50を含むプラントの場合であっても、正確にCO濃度および排ガス流量を推定することが可能になる。
【0056】
(6)第6の態様に係る制御装置は、(1)~(5)の制御装置であって、前記排ガスの流量と、前記CO濃度とを前記CO回収装置の制御装置へ送信する。
これにより、CO回収装置では、ガスタービン等の負荷変化にかかわらず、COの目標回収率を達成する運転が可能になる。
【0057】
(7)第7の態様に係る制御量計算方法は、ガスタービンと、前記ガスタービンが排出した排ガスからCOを回収するCO回収装置と、を含むプラントの制御量計算方法であって、前記ガスタービンの圧縮機が吸入する空気の温度と、前記ガスタービンが備えるIGV(inlet guide vane)の開度とに基づいて、圧縮機が吸入する空気の流量である吸気流量を計算するステップと、前記ガスタービンの燃料指令値に基づいて、前記ガスタービンの燃焼器に供給される燃料の燃料流量を計算するステップと、前記吸気流量と前記燃料流量とに基づいて、前記排ガスの流量を計算するステップと、前記排ガスの流量と、前記燃料流量に基づいて、前記排ガスに含まれるCO濃度を計算するステップとを有する。
【0058】
(8)第8の態様に係るプログラムは、コンピュータに、ガスタービンと、前記ガスタービンが排出した排ガスからCOを回収するCO回収装置と、を含むプラントの制御量計算方法であって、前記ガスタービンの圧縮機が吸入する空気の温度と、前記ガスタービンが備えるIGV(inlet guide vane)の開度とに基づいて、圧縮機が吸入する空気の流量である吸気流量を計算するステップと、前記ガスタービンの燃料指令値に基づいて、前記ガスタービンの燃焼器に供給される燃料の燃料流量を計算するステップと、前記吸気流量と前記燃料流量とに基づいて、前記排ガスの流量を計算するステップと、前記排ガスの流量と、前記燃料流量に基づいて、前記排ガスに含まれるCO濃度を計算するステップと、を含む処理を実行させる。
【符号の説明】
【0059】
100、100´・・・プラント
10・・・ガスタービン
11・・・IGV
12・・・圧縮機
13・・・車室
14・・・燃料流量調節弁
15・・・燃料供給系統
16・・・燃焼器
17・・・タービン
18・・・抽気流路
19・・・クーラ
1A・・・温度計
1B・・・湿度計
20・・・CO回収装置
21・・・制御装置
22・・・吸収塔
23・・・再生塔
30・・・ガスタービン制御装置
31・・・制御量推定部
32、32b、32d・・・吸気流量計算手段
33、33a・・・燃料流量計算手段
34・・・排ガス流量計算手段
35・・・燃空比計算手段
36、36a、36b、36c、36d・・・CO濃度計算手段
40・・・ERSG
41・・・蒸気タービン
50・・・EGRシステム
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9