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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114182
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】会話漏洩評価装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/00 20060101AFI20240816BHJP
   G10K 11/175 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G10K15/00 L
G10K11/175
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019768
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000223182
【氏名又は名称】TOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004196
【氏名又は名称】弁理士法人ナビジョン国際特許事務所
(71)【出願人】
【識別番号】523465104
【氏名又は名称】株式会社otonoha
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴彦
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061FF02
(57)【要約】
【課題】 第一空間20Aにおいて利用者21Aが発話することなく、第一空間20Aから第二空間20Bへの会話漏洩を評価する会話漏洩評価装置を提供することを目的とする。また、第一空間20Aから第二空間20Bへの会話漏洩を精度よく評価する会話漏洩評価装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 予め定められた発話音a(x)が第一空間20A内で発せられたときに第二空間20B内で聴取されると推定される第一空間20Aからの仮想漏洩音a(n)に関する漏洩情報を保持する漏洩情報記憶部10と、第二空間20B内の現在の環境音b(n)を集音し、環境音情報を生成する環境音集音部14と、漏洩情報及び環境音情報に基づいて、第一空間20Aから第二空間20Bへの会話漏洩を評価する漏洩評価部16とを備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた発話音が第一空間内で発せられたときに第二空間内で聴取されると推定される前記第一空間からの仮想漏洩音に関する漏洩情報を保持する漏洩情報記憶部と、
前記第二空間内の現在の環境音を集音し、環境音情報を生成する環境音集音部と、
前記漏洩情報及び前記環境音情報に基づいて、前記第一空間から前記第二空間への会話漏洩を評価する漏洩評価部とを備えたことを特徴とする会話漏洩評価装置。
【請求項2】
前記仮想漏洩音に対応する仮想漏洩音情報を生成する仮想漏洩音情報生成部を備え、
前記漏洩情報記憶部は、
前記発話音を発話音情報として保持する発話音情報記憶部と、
前記第一空間から前記第二空間への音の伝搬特性を保持する伝搬特性記憶部とを有し、
前記仮想漏洩音情報生成部は、前記発話音情報及び前記伝搬特性に基づいて、前記仮想漏洩音情報を生成し、
前記漏洩評価部は、前記仮想漏洩音情報及び前記環境音情報に基づいて、前記第一空間から前記第二空間への会話漏洩を評価することを特徴とする請求項1に記載の会話漏洩評価装置。
【請求項3】
前記仮想漏洩音情報及び前記環境音情報に基づいて、前記発話音が前記第一空間内で発せられたときに前記第二空間内の利用者が聴取すると推定される仮想聴取音に対応する仮想聴取音情報を求める仮想聴取音情報生成部を備え、
前記漏洩評価部は、前記仮想聴取音情報及び前記発話音情報の相関係数に基づいて、前記発話音に関する前記仮想聴取音の了解度を求める了解度算出部を有し、前記了解度に基づいて、会話漏洩を評価することを特徴とする請求項2に記載の会話漏洩評価装置。
【請求項4】
前記了解度算出部は、前記仮想聴取音情報及び前記発話音情報のそれぞれを2以上の周波数帯域に分解するとともに、1秒未満のセグメントに分割し、前記セグメント及び前記周波数帯域ごとの時間エンベロープの相関係数を算出し、求められた前記相関係数に基づいて、前記了解度を算出することを特徴とする請求項3に記載の会話漏洩評価装置。
【請求項5】
前記第一空間の利用者又は利用予定者の発話音を集音し、利用者発話音情報を生成する発話音集音部を備え、
前記漏洩評価部は、前記漏洩情報に基づいて会話漏洩を評価した後に、前記利用者発話音情報に基づいて会話漏洩を再評価することを特徴とする請求項1に記載の会話漏洩評価装置。
【請求項6】
前記漏洩情報記憶部は、前記仮想漏洩音に対応する仮想漏洩音情報を予め保持することを特徴とする請求項1に記載の会話漏洩評価装置。
【請求項7】
前記漏洩情報記憶部が保持する2以上の前記漏洩情報のいずれかを指定する漏洩情報指定部を備え、
前記2以上の漏洩情報は、互いに異なる前記発話音に対応することを特徴とする請求項1に記載の会話漏洩評価装置。
【請求項8】
前記第一空間に対しマスカー音を放音するスピーカと、
前記漏洩評価部による評価に基づいて、前記スピーカを制御するマスカー音制御部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の会話漏洩評価装置。
【請求項9】
前記漏洩評価部は、2以上の前記第二空間についてそれぞれ求めた前記了解度に基づいて、前記第一空間からの会話漏洩を評価することを特徴とする請求項1に記載の会話漏洩評価装置。
【請求項10】
前記第一空間の利用者又は利用予定者に対し、会話漏洩の評価結果を表示する表示部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の会話漏洩評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会話漏洩評価装置に係り、さらに詳しくは、自室から隣室への会話漏洩の有無を判定する会話漏洩評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のウイルス感染症の蔓延により、ネットワーク通信を利用したリモート会議が広く普及し、これに伴って個室ワークブースの需要が増大している。個室ワークブースは、公共スペースに設置された閉空間からなるワークスペースであり、例えば、1人又は少人数で利用することができるレンタルワークスペースとして提供される。このような個室ワークブースを利用すれば、外部への音漏れを防止することができるので、オフィスや自宅以外の外出先からでも、リモート会議に参加することができる。
【0003】
個室ワークブースは、2以上のブースが隣接して設置されていることが多い。このような場合、隣室への音漏れを完全に遮断することはできず、幾らかの音漏れが発生することは避けられない。このため、隣室への音漏れが情報漏洩を生じさせる程度のものであるか否かは、利用者の重大な関心事であると考えられる。そこで、自室から隣室への音漏れの有無について、利用者に予め提示することができれば、安心して個室ワークブースを利用することができると考えられる。
【0004】
また、人の移動のみを制限する間仕切り、例えば格子状の間仕切りによって各ブースが区分され、ブース間の音漏れ防止対策が施されていない開放型のワークブースもある。このようなワークブースであっても、隣室への音漏れが情報漏洩を生じさせる程度のものであるか否かは、利用者にとって重大な関心事であると考えられる。
【0005】
音漏れを防止するための方法が従来から提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
【0006】
特許文献1には、室内の遮音性能に関する情報に基づいて室内から音漏れしない最大音圧レベルを周波数毎に算出するとともに、室内の音圧レベルを周波数毎に計測し、最大音レベル及び計測音圧レベルを周波数毎に表示することが記載されている。
【0007】
特許文献2には、一方の部屋内の発話音が他方の部屋へ伝搬したターゲット音の音量レベルと、他方の部屋のスピーカから放音されるマスカ音及び他方の部屋において予め収音された暗騒音の音量レベルとの比を求め、音量レベルの比と了解度とを対応づけたテーブルを用いて了解度を求め、会話漏洩の有無を判定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6801853号公報
【特許文献2】特開2013-231987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の判定装置は、自室内において発せられた発話音を利用して、隣室への音漏れ、会話漏洩の有無を判定するものであるため、自室内において発話しなければ、隣室への音漏れ、会話漏洩の有無を知ることができないという問題があった。例えば、あるワークブースの使用開始前に、当該ワークブースから隣接するワークブースへの会話漏洩の有無を知ることができないという問題があった。
【0010】
また、会話漏洩の有無は、漏洩音の音量レベルだけで判断するのは容易ではない。例えば、環境音及び漏洩音の共通性が高ければ、情報漏洩は生じにくくなる。また、伝搬時の劣化により、漏洩音は発話音よりも聞き取りにくくなっており、劣化の程度によっては、漏洩音を聴取できたとしても、情報漏洩が生じるとは限らない。さらに、劣化の程度も、発話者ごとに異なり、発声法によっても異なると考えられる。つまり、漏洩音の音量レベルだけでなく、環境音との類似度や、音の伝搬特性も考慮しなければ、会話漏洩の有無を正確に判断することはできない。
【0011】
特許文献1の装置は、隣室の環境音を考慮しておらず、音漏れの有無を判断するものであって、情報漏洩の有無を判断するものではない。
【0012】
特許文献2の装置は、漏洩音及び環境音の音量レベルの比に基づいて了解度を求め、会話漏洩の有無を判定している。ここでいう了解度は、漏洩音の聞き取り易さを示すものであって、発話音の聞き取り易さを示すものではないから、伝搬時の劣化による影響が反映されていない。例えば、伝搬時の音声の劣化が著しい場合、漏洩音が明瞭に聞き取れたとしても、情報漏洩は生じない可能性がある。また、ここで使用される環境音は、マスカ音及び予め収音された暗騒音から疑似的に生成された音声であり、会話漏洩の有無を正確に判断することはできない。さらに、3種類のマスカ音に応じて異なる補正係数やテーブルを使用するだけでは、漏洩音と環境音の類似度が十分に考慮されているとは言えない。従って、特許文献2の装置では、会話漏洩の有無を正確に判断することはできない。
【0013】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、第一空間において利用者が発話することなく、第一空間から第二空間への会話漏洩を評価する会話漏洩評価装置を提供することを目的とする。また、第一空間から第二空間への会話漏洩を精度よく評価する会話漏洩評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による第1の実施態様による会話漏洩評価装置は、予め定められた発話音が第一空間内で発せられたときに第二空間内で聴取されると推定される前記第一空間からの仮想漏洩音に関する漏洩情報を保持する漏洩情報記憶部と、前記第二空間内の現在の環境音を集音し、環境音情報を生成する環境音集音部と、前記漏洩情報及び前記環境音情報に基づいて、前記第一空間から前記第二空間への会話漏洩を評価する漏洩評価部とを備える。
【0015】
このような構成を採用することにより、漏洩情報記憶部が保持する漏洩情報と、環境音集音部が生成する環境音情報とに基づいて、第一空間から第二空間への会話漏洩を評価することができる。このため、第一空間内において利用者が発話することなく、第一空間から第二空間への会話漏洩を評価することができる。従って、評価結果が得られる前の会話が漏洩するのを防止することができ、また、第一空間の利用開始前に会話漏洩の評価結果を得ることができる。さらに、環境音情報は、第二空間内の現在の環境音を集音することにより生成されるため、第一空間から第二空間への会話漏洩の評価は、実際の環境音に基づいて行われ、精度よく評価することができる。
【0016】
本発明による第2の実施態様による会話漏洩評価装置は、上記構成に加えて、前記仮想漏洩音に対応する仮想漏洩音情報を生成する仮想漏洩音情報生成部を備え、前記漏洩情報記憶部は、前記発話音を発話音情報として保持する発話音情報記憶部と、前記第一空間から前記第二空間への音の伝搬特性を保持する伝搬特性記憶部とを有し、前記仮想漏洩音情報生成部は、前記発話音情報及び前記伝搬特性に基づいて、前記仮想漏洩音情報を生成し、前記漏洩評価部は、前記仮想漏洩音情報及び前記環境音情報に基づいて、前記第一空間から前記第二空間への会話漏洩を評価するように構成される。
【0017】
このような構成を採用することにより、発話音情報記憶部が保持する発話音情報と、伝搬特性記憶部が保持する音の伝搬特性とに基づいて、予め定められた発話音が第一空間内で発せられたときに第二空間内で聴取されると推定される第一空間からの仮想漏洩音情報を生成することができる。
【0018】
本発明による第3の実施態様による会話漏洩評価装置は、上記構成に加えて、前記仮想漏洩音情報及び前記環境音情報に基づいて、前記発話音が前記第一空間内で発せられたときに前記第二空間内の利用者が聴取すると推定される仮想聴取音に対応する仮想聴取音情報を求める仮想聴取音情報生成部を備え、前記漏洩評価部は、前記仮想聴取音情報及び前記発話音情報の相関係数に基づいて、前記発話音に関する前記仮想聴取音の了解度を求める了解度算出部を有し、前記了解度に基づいて、会話漏洩を評価するように構成される。
【0019】
このような構成を採用することにより、仮想漏洩音情報及び環境音情報に基づいて、第二空間内の利用者が聴取すると推定される仮想聴取音に対応する仮想聴取音情報を生成することができる。また、仮想聴取音情報及び発話音情報の相関係数に基づいて発話音に関する仮想聴取音の了解度を求め、当該了解度に基づいて、会話漏洩を評価することができる。このため、仮想漏洩音及び環境音を比較して評価する場合に比べ、会話漏洩を精度よく評価することができる。
【0020】
本発明による第4の実施態様による会話漏洩評価装置は、上記構成に加えて、前記了解度算出部が、前記仮想聴取音情報及び前記発話音情報のそれぞれを2以上の周波数帯域に分解するとともに、1秒未満のセグメントに分割し、前記セグメント及び前記周波数帯域ごとの時間エンベロープの相関係数を算出し、求められた前記相関係数に基づいて、前記了解度を算出するように構成される。
【0021】
このような構成を採用することにより、言語情報の相関が適切に反映された相関係数を求めることができ、会話漏洩を精度よく評価することができる。
【0022】
本発明による第5の実施態様による会話漏洩評価装置は、上記構成に加えて、前記第一空間の利用者又は利用予定者の発話音を集音し、利用者発話音情報を生成する発話音集音部を備え、前記漏洩評価部は、前記漏洩情報に基づいて会話漏洩を評価した後に、前記利用者発話音情報に基づいて会話漏洩を再評価するように構成される。
【0023】
上記構成を採用することにより、まず第一空間内における現在の発話音を用いることなく会話漏洩を評価し、その後、さらに第一空間の利用者又は利用予定者による現在の発話音を用いて会話漏洩を再評価する。このため、例えば、第一空間の利用開始前に会話漏洩の評価結果を得ることができ、第一空間の利用開始後に更に精度のよい評価結果を得ることができる。
【0024】
本発明による第6の実施態様による会話漏洩評価装置は、上記構成に加えて、前記漏洩情報記憶部が、前記仮想漏洩音に対応する仮想漏洩音情報を予め保持するように構成される。
【0025】
このような構成を採用することにより、発話音情報から仮想漏洩音情報を生成する演算処理を行う必要がなく、評価時の演算量を削減することができるので、コストを削減することができる。
【0026】
本発明による第7の実施態様による会話漏洩評価装置は、上記構成に加えて、前記漏洩情報記憶部が保持する2以上の前記漏洩情報のいずれかを指定する漏洩情報指定部を備え、前記2以上の漏洩情報は、互いに異なる前記発話音に対応するように構成される。
【0027】
このような構成を採用することにより、2以上の発話音のいずれかを指定し、指定された発話音における会話漏洩を評価することができる。このため、発話音の種類に応じた評価を行うことができる。
【0028】
本発明による第8の実施態様による会話漏洩評価装置は、上記構成に加えて、前記第一空間に対しマスカー音を放音するスピーカと、前記漏洩評価部による評価に基づいて、前記スピーカを制御するマスカー音制御部とを備える。
【0029】
このような構成を採用することにより、第一空間から第二空間への会話漏洩の評価結果に応じて、第一空間内にマスカー音が放音され、第二空間への会話漏洩を防止することができる。
【0030】
本発明による第9の実施態様による会話漏洩評価装置は、上記構成に加えて、前記漏洩評価部が、2以上の前記第二空間についてそれぞれ求めた前記了解度に基づいて、前記第一空間からの会話漏洩を評価するように構成される。
【0031】
このような構成を採用することにより、1つの第一空間から2以上の第二空間への会話漏洩について評価することができる。
【0032】
本発明による第10の実施態様による会話漏洩評価装置は、上記構成に加えて、第一空間の利用者又は利用予定者に対し、会話漏洩の評価結果を表示する表示部を備える。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、漏洩情報記憶部が保持する漏洩情報と、環境音集音部が生成する環境音情報とに基づいて、第一空間から第二空間への会話漏洩を評価する。このため、第一空間において利用者が発話することなく、第一空間から第二空間への会話漏洩を評価することができる。
【0034】
また、本発明によれば、第二空間内の現在の環境音を集音して環境音情報を生成し、環境音情報とに基づいて第一空間から第二空間への会話漏洩を評価する。このため、第一空間から第二空間への会話漏洩を精度よく評価することができる。
【0035】
また、本発明によれば、仮想聴取音及び発話音に基づいて会話漏洩を評価する。このため、仮想漏洩音及び環境音を比較して評価する場合に比べ、会話漏洩を精度よく評価することができる。特に、仮想聴取音情報及び発話音情報の相関係数に基づいて会話漏洩を評価することにより、会話漏洩を精度よく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施の形態1による会話漏洩評価装置100の利用態様の一例を示した図である。
図2図1の会話漏洩評価装置100の詳細構成の一例を示した図である。
図3図2の了解度算出部160の詳細構成の一例を示した図である。
図4】本発明の実施の形態2による会話漏洩評価装置101の一構成例を示した図である。
図5】本発明の実施の形態3による会話漏洩評価装置102の利用態様の一例を示した図である。
図6図5の会話漏洩評価装置102の詳細構成の一例を示した図である。
図7】本発明の実施の形態4による会話漏洩評価装置103の利用態様の一例を示した図である。
図8】本発明の実施の形態5による会話漏洩評価装置104の利用態様の一例を示した図である。
図9図8の会話漏洩評価装置104の詳細構成の一例を示した図である。
図10】本発明の実施の形態5による会話漏洩評価装置105の利用態様の例を示した図である。
図11図10の会話漏洩評価装置105の詳細構成の一例を示した図である。
図12】本発明の実施の形態6による会話漏洩評価装置106の一構成例を示した図である。
図13】本発明の実施の形態6による会話漏洩評価装置107の一構成例を示した図である。
図14】本発明の実施の形態7による会話漏洩評価装置108の一構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による会話漏洩評価装置100の利用態様の一例を示した図であり、隣接して設置された2つのワークブース20A,20Bへの適用例が示されている。ワークブース20A,20Bは、遮音性を有する閉空間であり、1名又は2~4名程度の少人数で利用することができる小規模のワークスペースである。
【0038】
ワークブース20A,20Bは、音漏れによる外部への情報漏洩を防止しながら、デスクワークや小規模の会議を行うことができ、また、ネットワーク通信を利用してリモート会議に参加することができる。例えば、不特定の者がアクセス可能な公共スペースにワークブース20A,20Bを設置し、レンタルワークスペースとして利用することができる。
【0039】
会話漏洩評価装置100は、ワークブース20Aからワークブース20Bへの会話漏洩を評価する装置である。ワークブース20A,20Bが隣接して設置されている場合、ワークブース20A,20B間における音漏れを完全になくすことは困難であり、わずかな音漏れが生じていたとしても、言語情報が漏洩して会話漏洩が生じるとは限らない。会話漏洩が生じるか否かは、ワークブース20A内の発話音、ワークブース20A,20B間の伝達特性や、ワークブース20B内の環境音などに左右される。このため、会話漏洩評価装置100は、これらを考慮して会話漏洩が生じるか否かを判定する。
【0040】
会話漏洩評価装置100は、ワークブース20A(以下、自室又は第一空間という。)内の利用者21Aが発した発話音が、ワークブース20B(以下、隣室又は第二空間という。)内の利用者21Bに言語情報として認知されるか否かを判定する。
【0041】
会話漏洩評価装置100は、隣室20B内の環境音情報に基づいて、自室20Aから隣室20Bへの会話漏洩を評価し、自室20Aの利用者21Aに報知する。環境音情報は、隣室20B内に設置されたマイクロフォン22により生成され、評価結果は、自室20A内に設置された表示部23により表示される。
【0042】
隣室20Bに到達する漏洩音が同一であっても、隣室20B内の音環境により、会話が漏洩する場合としない場合が考えられる。例えば、隣室20B内が騒がしい場合や、近隣を通行する自動車の振動が伝わっているような場合には、会話漏洩が生じ難くなる。会話漏洩評価装置100は、隣室20Bの環境音情報に基づいて会話漏洩の有無を評価することにより、隣室20Bの音環境を考慮した、より精度の高い評価を行うことができる。
【0043】
また、会話漏洩評価装置100は、自室20A内で集音しておらず、自室20A内において利用者が発話することなく、自室20Aから隣室20Bへの会話漏洩を評価することができる。このため、評価結果を取得する前に、自室20Aから隣室20Bへの会話漏洩が生じるのを防止することができる。また、自室20Aの利用開始前に会話漏洩の有無を知ることができる。
【0044】
さらに、会話漏洩評価装置100は、隣室20B内における聴取音と自室20A内における発話音とを比較し、発話音に関する聴取音の了解度を算出して会話漏洩を判定する。ここでいう了解度とは、聴取音から発話音を聴別することができる程度を示す指標である。このため、自室20A内の発話音の音量レベルに基づいて音漏れの有無を判定する従来の漏音判定装置(特許文献1)とは異なり、音漏れによる情報漏洩の有無を判別することができる。また、ともに隣室20B内の音声である漏洩音及び環境音の音量レベルを比較する従来の装置(特許文献2)に比べて、情報漏洩の有無の判定精度を向上させることができる。
【0045】
図2は、図1の会話漏洩評価装置100の詳細構成の一例を示した図である。会話漏洩評価装置100は、漏洩情報記憶部10、仮想漏洩音情報生成部13、環境音集音部14、音声合成部15、漏洩評価部16及び表示部23により構成される。
【0046】
(1)漏洩情報記憶部10
漏洩情報記憶部10は、漏洩情報を予め保持する記憶手段である。漏洩情報とは、仮想漏洩音に関する情報であり、仮想漏洩音とは、予め定められた発話音が自室20A内で発せられたときに、隣室20B内で聴取されると推定される自室20Aからの漏洩音である。本実施の形態では、漏洩情報記憶部10が、発話音情報記憶部11及び伝搬特性記憶部12により構成される。
【0047】
(2)発話音情報記憶部11
発話音情報記憶部11は、話者が発する音声を発話音情報として予め保持する記憶手段である。発話音情報は、図示しないマイクロフォンを用いて、話者が発する言語情報を含む発話音を予め集音することにより得られる。集音時には、自室20A内の話者の口元近くにマイクロフォンを設置し、ノイズの少ない発話音を集音することが望ましい。図中のx(n)は、発話音のn番目のサンプリング情報を示しており、発話音情報の一例である。
【0048】
発話音情報記憶部11は、少なくとも1つの発話音情報を保持する。発話音情報記憶部11は、2以上の発話音情報を保持し、利用者の属性や利用態様に応じて、いずれかの発話音情報を選択的に使用するように構成することもできる。例えば、男性及び女性の発話音をそれぞれ保持し、利用者の性別に応じて、いずれかの発話音を選択的に使用して会話漏洩を評価すれば、評価精度を向上させることができる。また、音量レベルの異なる2以上の発話音を保持し、発話者の声量などに応じて、いずれかの発話音を選択的に使用して会話漏洩を評価すれば、評価精度を向上させることができる。
【0049】
(3)伝搬特性記憶部12
伝搬特性記憶部12は、自室20Aから隣室20Bへの音の伝搬特性を予め保持する記憶手段である。例えば、自室20Aから隣室20Bへの伝搬経路のインパルス応答h(n)が測定され、伝搬特性記憶部12内に予め格納されている。
【0050】
伝搬特性は、例えば、自室20A及び隣室20B内にマイクロフォンをそれぞれ設置し、自室20A内で試験音を発生させたときの各マイクロフォンの出力信号に基づいて決定される。このとき、利用者21A,21Bの着座位置を考慮してマイクロフォンを設置することが望ましい。例えば、自室20A及び隣室20Bの利用者が1人のみであり、それぞれの着座位置が決まっている場合であれば、利用者21Aの口の位置と利用者21Bの耳の位置にマイクロフォンをそれぞれ設置し、発話者の口から聴取者の耳までの伝搬特性が測定される。
【0051】
(4)仮想漏洩音情報生成部13
仮想漏洩音情報生成部13は、発話音情報及び伝搬特性に基づいて、仮想漏洩音に対応する仮想漏洩音情報を生成する演算手段である。具体的には、発話音x(n)についてインパルス応答h(n)の畳み込み積分を行うことにより、仮想漏洩音a(n)=x(n)*h(n)が求められる。
【0052】
自室20A内で発せられた発話音は、自室20Aから隣室20Bへ伝搬し、隣室20B内において漏洩音として聴取される。つまり、漏洩音は、伝搬により劣化した発話音であり、隣室20B内で聴取される音声のうち、自室20A内で発せられた発話音に起因する成分である。仮想漏洩音は、予め定められた発話音が発せられたときの漏洩音である。図中のa(n)は、仮想漏洩音のn番目のサンプリング情報を示しており、仮想漏洩音情報の一例である。
【0053】
(5)環境音集音部14
環境音集音部14は、隣室20B内の環境音に対応する環境音情報を生成する手段である。環境音は、自室20Aからの漏洩音がない状態で隣室20B内において聴取される音声であり、会話漏洩評価時に隣室20B内において実際に集音される音声が環境音として用いられる。例えば、隣室20B内に利用者が不在の場合であれば、外部から侵入する音声(暗騒音)が環境音であり、利用者が存在している場合であれば、利用者の発する音声等も環境音に含まれる。図中のb(n)は、隣室20B内における環境音のn番目のサンプリング情報を示しており、環境音情報の一例である。
【0054】
環境音集音部14は、マイクロフォン22が集音した環境音に基づいて環境音情報を生成する。マイクロフォン22は、隣室20B内に設置され、会話漏洩評価を行う際に隣室20B内の音声を集音する。環境音集音部14は、図示しないアンプ及びA/Dコンバータを有し、マイクロフォン22により集音された音声は、アンプで増幅され、A/Dコンバータでサンプリングされてデジタルデータに変換され、環境音情報が生成される。なお、環境音の集音手段として、マイクロフォン22に代えて、隣室20B内の壁や机の振動を検出するセンサを用いることができ、あるいは、隣室20B外に設置されたマイクロフォンを用いることもできる。
【0055】
(6)音声合成部15
音声合成部15は、環境音情報及び仮想漏洩音情報に基づいて、仮想聴取音に対応する仮想聴取音情報を生成する仮想聴取音情報生成部である。仮想聴取音は、自室20A内において発話音が発せられたと仮定したときに、隣室20B内の利用者21Bが聴取すると推定される音声であり、仮想漏洩音と環境音を合成して求められる仮想的な聴取音である。隣室20B内において実際に聴取される音声は環境音であり、仮想聴取音は、発話音がない状況下において演算により求められる。図中のy(n)=a(n)+b(n)は、仮想聴取音のn番目のサンプリング情報を示しており、仮想聴取音情報の一例である。
【0056】
(7)漏洩評価部16
漏洩評価部16は、仮想聴取音情報及び発話音情報に基づいて、自室20Aから隣室20Bへの会話漏洩の有無を評価する手段である。漏洩評価部16による会話漏洩の評価は、仮想聴取音情報と発話音情報とを比較し、音漏れによる情報漏洩の有無を判定する処理であり、音漏れの有無を判定する処理や、聴取音の信号雑音比に基づく従来の判定処理とは異なる。漏洩評価部16は、了解度算出部160及び閾値比較部161により構成される。
【0057】
了解度算出部160は、仮想聴取音情報及び発話音情報に基づいて、発話音に関する仮想聴取音の了解度dを求める。了解度dは、仮想聴取音を発話音の劣化音声であるとみなした場合における仮想聴取音の了解度を示す指標であり、仮想聴取音及び発話音の相関係数に基づいて求められる。発話音が言語情報を含んでいれば、了解度dは、発話音に含まれる情報が漏洩する程度を示す数値として使用することができる。
【0058】
閾値比較部161は、了解度dを予め定められた閾値と比較し、会話漏洩の有無を示す評価結果を生成する。なお、2以上の閾値と比較し、3段階以上の評価結果を生成することもできる。また、閾値比較部161を省略し、了解度dを評価結果とすることもできる。なお、2以上の閾値を保持し、隣室の利用者21Bの属性や利用態様に応じて、いずれかの閾値を選択的に使用することもできる。例えば、利用者の性別又は年齢に応じて、閾値を異ならせることにより、より精度の高い評価を行うことができる。
【0059】
(8)表示部23
表示部23は、自室の利用者21Aに対し、評価結果を報知する手段であり、液晶ディスプレイ、ランプ等を用いることができる。例えば、会話漏洩が発生する恐れがない場合には、緑のランプを点灯させ、会話漏洩が発生する恐れがある場合には、赤のランプを点灯させることにより、利用者21Aに評価結果を報知する。
【0060】
また、利用者21Aに評価結果を報知する場合は、文字によるアドバイスを行ってもよい。例えば液晶ディスプレイに、「現在会話漏洩が発生する恐れがありますので、会話を控えていただくか、時間をずらす等の対応をお願いいたします」や、「現在会話漏洩が発生する恐れはありませんので、会議等の会話をしていただくのに最適な環境となっております」と表示して報知する。
【0061】
また、会話漏洩が発生する恐れがなくなればリマインダ機能があり利用者21Aがリマインダ機能を選択できるようにしても良い。例えば会話漏洩が発生する恐れがある場合は液晶ディスプレイに「現在会話漏洩が発生する恐れがありますので、会話が可能な状態になりましたらお知らせいたしますか」と表示し、利用者21Aがリマインダ機能を選択すれば、会話漏洩が発生する恐れがなくなり次第液晶ディスプレイに「会話漏洩が発生する恐れがなくなりましたので、会話をしていただくのに最適な環境となっております」など表示してもよい。
【0062】
また、利用者21Aの端末に直接報知してもよい。例えば、利用者21Aが自室の予約だけしておき、自室以外で業務をおこなっているときに、利用者21Aの端末に「会話漏洩が発生する恐れがなくなりましたので、会話をしていただくのに最適な環境となっております」と通知が届くようにしても良い。これにより利用者21Aは通知を受け取ってから自室に入って会議することができる。
【0063】
また音や音声で報知してもよい。例えば、会話漏洩が発生する恐れがない場合には、「現在、会話漏洩が発生する恐れはありません」と音声により報知し、会話漏洩が発生する恐れがある場合には、「現在、会話漏洩が発生する恐れはありません」と音声により報知してもよい。
【0064】
表示部23は、自室20A内に設置してもよいが、自室20Aの外側、例えば、入り口付近などに設置することもできる。漏洩評価部16は、自室20A内の発話音を利用することなく会話漏洩の有無を判定するため、自室20A外に表示部23を設置すれば、自室20Aへ入室する前に自室20Aからの会話漏洩の有無を確認することができる。
【0065】
図3は、図2の了解度算出部160の詳細構成の一例を示した図である。了解度算出部160は、仮想聴取音情報及び発話音情報に基づいて、仮想聴取音の了解度dを求める。了解度dは、仮想聴取音から発話音を聞き取ることができる程度を示す指標である。ここでは、了解度dとしてSTOI(Short-Time Objective Intelligibility:短時間客観了解度)を利用する例について説明する。
【0066】
STOIは、聴取音声の品質を客観評価するための指標として広く知られている。STOIは、クリーン音声が伝搬経路上で変化し、さらに雑音が加えられた劣化音声についてクリーン音声としての了解度を示す指標である。STOIは、クリーン音声及び劣化音声を周波数成分に分解するとともに短時間領域に区分し、各短時間領域における周波数成分ごとの時間エンベロープの相関係数の平均値として算出される値である。STOIは、クリーン音声及び劣化音声の相関係数に基づいて算出される指標である点で、劣化音声のSNR(Signal Noise Ratio:信号雑音比)に基づいて算出される従前の指標とは異なる。本実施の形態では、発話音をクリーン音声、仮想聴取音を劣化音声とするSTOIを求めることにより、仮想聴取音の了解度dを算出する。
【0067】
了解度算出部160は、帯域分析部30A,30B、セグメント化処理部31A,31B、正規化処理部32、相関係数算出部33及び平均化処理部34により構成される。
【0068】
(a)帯域分析部30A,30B
帯域分析部30Aは、発話音情報が入力され、発話音x(n)の1/3オクターブ帯域分析を行う。帯域分析部30Bは、仮想聴取音情報が入力され、仮想聴取音y(n)の1/3オクターブ帯域分析を行う。
【0069】
1/3オクターブ帯域分析は、1/3オクターブの帯域幅を有する2以上の周波数成分に分解する処理である。具体的には、音声信号のDFT(離散フーリエ変換)を行って、言語情報の特徴が主に含まれる帯域150Hz~4.3kHzを1/3オクターブ幅の15帯域に分解する。例えば、10kHzでサンプリングされた音声信号であれば、256サンプル(25.6m秒)のハン窓付きフレーム分割が行われる。このようなフレーム分割が、フレーム長の50%(128サンプル)をオーバーラップさせて繰り返される。次に、分割された各フレームについてDFTが行われ、1/3オクターブ幅の15帯域の各成分が求められる。このようにして、音声信号が時間-周波数ユニットに変換される。
【0070】
(b)セグメント化処理部31A,31B
セグメント化処理部31A,31Bは、帯域分析部30A,30Bが算出した時間-周波数ユニットを短時間のセグメントに区分し、各セグメントの帯域ごとに時間エンベロープ(時間軸上における包絡線)を求める。
【0071】
1つのセグメントは、連続する2以上のフレームで構成され、セグメント化処理は、1フレームをシフトさせて繰り返される。セグメント長は、言語情報の特徴比較に適した長さとして予め定められ、0.1秒以上かつ1秒未満にすることができ、0.3秒以上かつ0.5秒未満であることが望ましい。例えば、1つのセグメントを30個のフレームで構成し、セグメント長を384m秒にすることができる。
【0072】
(c)正規化処理部32
正規化処理部32は、セグメント化処理部31A,31Bが算出した時間エンベロープの正規化を行って、発話音x(n)と仮想聴取音y(n)の音圧レベルを一致させる。例えば、発話音の音圧レベルに一致させるように、仮想聴取音の時間エンベロープについてレベル調整が行われる。このような正規化処理を行うことにより、了解度に強い影響をもたないグローバルなレベル差を補正し、より適切な了解度を求めることができる。
【0073】
(d)相関係数算出部33
相関係数算出部33は、発話音及び仮想聴取音の時間エンベロープを互いに比較し、相関係数を求める。相関係数は、2つの時間エンベロープの共分散を各時間エンベロープの標準偏差で割ることにより求められる値であり、各セグメントの帯域ごとに相関係数が求められる。
【0074】
(e)平均化処理部34
平均化処理部34は、相関係数算出部33が算出した多数の相関係数の平均値として了解度dを求める。なお、聞き取り易さを示す了解度は主観的評価であることから、相関係数を主観的評価に変換するための関数、例えば、シグモイド関数を用いることが望ましい。つまり、シグモイド関数が与えられている場合には、相関係数のシグモイド関数値の平均値として了解度dを求めることができる。シグモイド関数は、主観的評価実験を行うことにより求められる。また、2以上の関数を保持し、隣室の利用者21Bの属性や利用態様に応じて、いずれかの関数を選択的に使用することもできる。例えば、利用者の性別又は年齢に応じて、関数を異ならせることにより、より精度の高い評価を行うことができる。
【0075】
本実施の形態による会話漏洩評価装置100は、予め定められた発話音x(n)及び隣室20Bへの伝達関数h(n)を用いて、隣室20Bに漏洩すると推定される自室20Aからの仮想漏洩音a(n)を求め、さらに仮想漏洩音a(n)及び隣室20B内の環境音b(n)を合成して隣室20B内で聴取されると推定される仮想聴取音y(n)を求める。そして、発話音x(n)に関する仮想聴取音y(n)の了解度dを求めることにより、自室20Aから隣室20Bへの会話漏洩を評価する。
【0076】
予め定められた発話音x(n)を使用することにより、自室20A内において発話することなく、自室20Aから隣室20Bへの会話漏洩の有無を評価することができる。このため、例えば、ワークブースの利用開始前に会話漏洩の評価を行うことができ、リモート会議のような情報漏洩の防止が求められる利用態様に適したワークブースであるか否かを利用開始前に確認することができる。
【0077】
また、自室20Aから隣室20Bへの伝搬特性と、隣室20B内における実際の環境音とを考慮して仮想聴取音を推定しているため、高い精度で会話漏洩評価を行うことができる。
【0078】
また、仮想聴取音の了解度を求める際、仮想聴取音及び発話音の相関度を算出することにより、SNR(Signal Noise Ratio:信号雑音比)を算出する従来の方法に比べて、高い精度で会話漏洩評価を行うことができる。
【0079】
また、言語情報を含む発話音を使用し、かつ、仮想聴取音及び発話音のそれぞれを2以上の周波数帯域に分解するとともに短時間のセグメントに分割し、セグメント及び周波数帯域ごとの時間エンベロープを求め、時間エンベロープごとに仮想聴取音及び発話音間の相関係数を算出し、これらの相関係数の平均値として了解度dを求めている。このため、言語情報の相関が適切に反映された相関係数を算出することができ、音漏れによる情報漏洩の有無を高い精度で評価することができる。
【0080】
実施の形態2.
実施の形態1では、発話音情報及び伝搬特性を用いた演算により仮想漏洩音情報を生成する会話漏洩評価装置100の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、仮想漏洩音情報を予め保持する会話漏洩評価装置101について説明する。
【0081】
図4は、本発明の実施の形態2による会話漏洩評価装置101の一構成例を示した図である。会話漏洩評価装置101は、図2の会話漏洩評価装置100(実施の形態1)と比較すれば、漏洩情報記憶部10及び仮想漏洩音情報生成部13に代えて、漏洩情報記憶部10'及び発話音情報記憶部11を備える点で異なる。漏洩情報記憶部10'は、仮想漏洩音情報記憶部17で構成される。なお、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0082】
仮想漏洩音情報記憶部17は、仮想漏洩音情報を予め保持している。発話音情報及び伝搬特性が既知であれば、仮想漏洩音情報も予め求めることができる。このため、予め与えられた仮想漏洩音情報を仮想漏洩音情報記憶部17に保持し、音声合成部15における音声合成に使用する。
【0083】
なお、発話音情報記憶部11が、2以上の発話音情報を保持している場合、仮想漏洩音情報記憶部17は、発話音情報に対応する2以上の仮想漏洩音情報を保持し、選択的に使用される発話音情報に応じて、仮想漏洩音情報も選択的に使用される。
【0084】
本実施の形態による会話漏洩評価装置101は、仮想漏洩音情報を保持する仮想漏洩音情報記憶部17を備え、仮想漏洩音情報を生成するための演算処理を行わない。このため、会話漏洩評価時における演算量を削減することができ、会話漏洩評価装置101の製造コストを抑制することができる。
【0085】
実施の形態3.
実施の形態1では、会話漏洩の評価結果を表示部23に表示する会話漏洩評価装置100の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、会話漏洩の評価結果に基づいて、自室20A内のマスカー音を制御し、会話漏洩を防止する会話漏洩評価装置102について説明する。
【0086】
図5は、本発明の実施の形態3による会話漏洩評価装置102の利用態様の一例を示した図であり、隣接して設置された2つのワークブース20A,20Bへの適用例が示されている。図1の会話漏洩評価装置100の利用態様(実施の形態1)と比較すれば、表示部23に代えて、スピーカ25が設けられている点で異なる。
【0087】
スピーカ25は、自室20A内に設置され、会話漏洩評価装置102からのマスカー音制御情報に基づいて自室20A内にマスカー音を出力する。マスカー音は、自室20Aからの音漏れによる情報漏洩を防止するために、会話漏洩評価装置102の評価結果に基づいて自室20A内に出力される音声である。スピーカ25からマスカー音を放音することにより、自室20A内で発話された音声がマスクされ、隣室20Bへ漏洩した場合であっても、その漏洩音を聞き取りにくくすることができる。
【0088】
図6は、図5の会話漏洩評価装置102の詳細構成の一例を示した図である。図2の会話漏洩評価装置100(実施の形態1)と比較すれば、表示部23に代えて、マスカー音制御部24及びスピーカ25を備える点で異なる。なお、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0089】
マスカー音制御部24は、漏洩評価部16の評価結果に基づいて、マスカー音信号を生成する。マスカー音信号は、スピーカ25からマスカー音を出力するための駆動信号である。マスカー音制御部24は、例えば、会話漏洩が発生している場合にマスカー音を出力し、会話漏洩が発生していない場合にマスカー音を停止するように、マスカー音信号を生成することができる。また、会話漏洩の評価結果に応じて、マスカー音の音量を調整することもできる。
【0090】
スピーカ25は、自室20A内に設置され、マスカー音制御部24からのマスカー音信号に基づいて、マスカー音を出力する。
【0091】
本実施の形態による会話漏洩評価装置102は、自室20Aから隣室20Bへの会話漏洩の評価結果に基づいて、自室20A内にマスカー音を出力する。このため、隣室20Bへの音漏れによる情報漏洩を防止することができる。
【0092】
実施の形態4.
実施の形態1では、自室20Aから隣室20Bへの会話漏洩を評価する会話漏洩評価装置100の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、自室20Aから2以上の隣室20B、20Cへの会話漏洩を評価する会話漏洩評価装置103について説明する。
【0093】
図7は、本発明の実施の形態4による会話漏洩評価装置103の利用態様の一例を示した図であり、隣接して設置された3つのワークブース20A~20Cへの適用例が示されている。図1の会話漏洩評価装置100の利用態様(実施の形態1)と比較すれば、2つの隣室20B、20Cが、自室20Aに隣接して配置されている点で異なる。
【0094】
隣室20B,20C内には、マイクロフォン22がそれぞれ配置され、それぞれの環境音を集音し、会話漏洩評価装置103へ出力する。会話漏洩評価装置103は、会話漏洩評価装置100と同様にして、隣室20B及び20Cへの会話漏洩をそれぞれ評価する。自室20Aから隣室20B,20Cへの伝達特性は一致しないため、これらの会話漏洩評価において用いられる発話音情報は同一であるが、伝達特性及び環境音は異なっている。
【0095】
会話漏洩評価装置103は、隣室20B,20Cの評価結果のうち、悪い方の評価結果を自室20Aに関する評価結果とし、自室20A内の表示部23へ出力する。例えば、2つの隣室20B,20Cのいずれか一方への会話漏洩がある場合には、会話漏洩があると判定し、いずれも会話漏洩がない場合に、会話漏洩がないと判定する。
【0096】
本実施の形態によれば、自室20Aから2以上の隣室20B,20Cへの会話漏洩を評価することができる。
【0097】
実施の形態5.
実施の形態1では、予め定められた発話音情報を用いて会話漏洩評価を行う会話漏洩評価装置100の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、このような会話漏洩評価を行った後、さらに自室20Aの利用者21A又は利用予定者の実際の発話音を用いて会話漏洩の再評価を行う会話漏洩評価装置104,105について説明する。
【0098】
図8は、本発明の実施の形態5による会話漏洩評価装置104の利用態様の一例を示した図であり、隣接して設置された2つのワークブース20A,20Bへの適用例が示されている。図1の会話漏洩評価装置100の利用態様(実施の形態1)と比較すれば、自室20A内にマイクロフォン26を備える点で異なる。
【0099】
マイクロフォン26は、自室20A内に設置され、利用者21Aの発話音を集音し、音声信号を出力する集音装置である。集音時には、話者の口元近くにマイクロフォン26を設置し、ノイズの少ない発話音を集音することが望ましい。なお、マイクロフォン26は、自室20Aの利用者21Aの発話音を集音することができればよく、自室20A外に設置してもよい。例えば、マイクロフォン26を自室20A外に設置することにより、利用予定者の発話音を集音することができる。
【0100】
マイクロフォン26が集音した発話音は、会話漏洩の再評価に用いられる。会話漏洩評価装置104は、会話漏洩評価装置100(実施の形態1)と同様にして、予め定められた発話音情報を用いて会話漏洩評価(初期評価)を行った後、さらに利用者21Aの実際の発話音をマイクロフォン26により集音し、利用者21Aの発話音を用いた会話漏洩の再評価を行う。
【0101】
図9は、図8の会話漏洩評価装置104の詳細構成の一例を示した図である。図2の会話漏洩評価装置100(実施の形態1)と比較すれば、発話音集音部18及び再評価部19を備える点で異なる。なお、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0102】
発話音集音部18は、マイクロフォン26が集音した発話音に基づいて利用者発話音情報を生成する。利用者発話音情報は、自室20Aの利用者21A又は利用予定者が発した発話音に基づいて生成される発話音情報である。マイクロフォン26は、会話漏洩の再評価を行う際に利用者21Aの発話音を集音する。発話音集音部18は、図示しないアンプ及びA/Dコンバータを有し、マイクロフォン26により集音された発話音は、アンプで増幅され、A/Dコンバータでサンプリングされてデジタルデータに変換され、利用者発話音情報が生成される。
【0103】
再評価部19は、漏洩評価部16に入力された発話音情報と発話音集音部18の集音した発話音との比較を行い、所定以上の乖離があれば、変更が必要と判断して表示部23に出力する。例えば、再評価部19が、漏洩評価部16に入力された発話音情報と発話音集音部18の集音した発話音の音量レベルを比較して再評価を行う場合で説明する。再評価部19は、漏洩評価部16の評価結果が漏洩する恐れがないと判断した場合、漏洩評価部16に入力された発話音情報が発話音集音部18の集音した発話音より音量レベルが高いまたは所定以上の乖離がなければ漏洩する恐れがないと判断して漏洩評価部16の評価結果を変更せずに表示部23に出力し、漏洩評価部16に入力された発話音情報が発話音集音部18の集音した発話音より音量レベルが低く所定以上の乖離があれば漏洩する恐れがあると判断して漏洩評価部16の評価結果を変更して表示部23に出力する。これにより、発話音情報記憶部11に自室20Aの利用者21A又は利用予定者の声量に近い音量のデータが存在しなくても、精度の高い評価を行うことができる。なお、発話音集音部18の集音した発話音の音量レベルは、発話音集音部18で一定時間集音した音量レベルの平均を発話音とし、漏洩評価部16に入力された発話情報の音量レベルは発話音情報記憶部11に存在する音量データの音量レベルの平均を発話音情報として再評価部19に入力しても良い。
【0104】
再評価部19による再評価を行う場合は、漏洩評価部16の評価結果の出力後に、自室20Aの利用者21A又は利用予定者の操作に基づいて行ってもよい。例えば、利用者21A又は利用予定者が自室20Aに入る前あるいは入っているときに、漏洩評価部16の評価結果を得ておき、その評価結果と漏洩評価部16に入力された発話音情報を再評価部19内にある図示しない記憶部に記憶しておく。そして表示部23には再評価部19が選択できるように表示されており、利用者21A又は利用予定者が、会議などの発話をする前に再評価部19を選択して、発話音集音部18によって集音した発話音と記憶部にある漏洩評価部16に入力された発話音情報の音量レベルを比較して漏洩評価部16の評価結果の変更が必要と判断した場合は変更して表示部23に出力する。
【0105】
自室20A内にマイクロフォン26を設置した場合、判定時に自室20A内で発話が行われるため、隣室20Bへの漏洩音もマイクロフォン22により収音される。しかし、環境音の集音を目的とするマイクロフォン22は、利用者21Bから離れた位置に設置されており、マイクロフォン22が集音する漏洩音は、利用者21Bの耳の位置で聴取される漏洩音とは異なる。このため、自室20A内において発話している場合であっても、仮想漏洩音情報生成部13が発話音情報から仮想漏洩音情報を生成し、音声合成部15が環境音情報と合成し、仮想聴取音を生成する。
【0106】
なお、自室20A内において発話する場合、伝搬特性記憶部12が、聴取者の耳の位置への伝搬特性と、マイクロフォン22の位置への伝搬特性との差の特性を保持し、環境音情報に含まれるマイクロフォン22までの漏洩音を相殺するように構成することもできる。
【0107】
図10は、本発明の実施の形態5による会話漏洩評価装置105の利用態様の例を示した図であり、隣接して設置された2つのワークブース20A,20Bへの適用例が示されている。図11は、図10の会話漏洩評価装置105の詳細構成の一例を示した図である。会話漏洩評価装置105は、図8及び図9の会話漏洩評価装置104と比較すれば、発話音集音部18に代えて、発話音情報受信部18'及びアンテナ28を備えている点で異なる。なお、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0108】
アンテナ28は、自室20Aの利用者21Aが使用する携帯通信端末27との間で無線通信を行うことができ、携帯通信端末27のマイクロフォン(不図示)が集音した音声信号を受信し、発話音情報受信部18'へ出力する。発話音情報受信部18'は、アンテナ28を介して受信した発話音に基づいて、利用者発話音情報を生成し、再評価部19へ出力する。つまり、会話漏洩評価装置105では、携帯通信端末27のマイクロフォンが、図8のマイクロフォン22に相当し、携帯通信端末27、アンテナ28及び発話音情報受信部18'が、図9の発話音集音部18に相当する。
【0109】
利用者21Aが、携帯通信端末27を利用して発話音を入力することができる領域は、自室20A内に限定されていてもよいし、自室20A外の所定領域に限定されていてもよいし、両方で利用可能であってもよい。自室20A外で利用可能であれば、自室20Aの利用予定者が、自室20Aへの入室前に会話漏洩の再評価を行うことができる。
【0110】
本実施の形態によれば、予め定められた発話音情報を用いて会話漏洩の初期評価を行うとともに、その後、さらに自室20Aの利用者又は利用予定者の発話音を集音して会話漏洩の再評価を行うことができる。再評価は、利用者又は利用予定者の実際の発話音を用いることから、初期評価よりも精度の高い判定結果が得られる。また、会話漏洩の状況は、時間経過とともに変化する場合があることから、初期評価を行った後に再評価を行うことにより、会話漏洩をより確実に防止することができる。再評価は、自室20Aを使用している期間中繰り返し行われることが望ましい。
【0111】
なお、上記各実施の形態では、漏洩評価部16がSTOIを用いる場合の例について説明したが、本発明は、このような場合のみに限定されない。漏洩評価部16は、仮想聴取音情報及び発話音情報を比較し、発話音情報に関する仮想聴取音情報の了解度を求めるものであればよく、STOIに代えて、例えば、COS類似度、相互情報量を用いることもできる。
【0112】
実施の形態6.
上記の各実施の形態では、STOIを用いて会話漏洩を評価する会話漏洩評価装置100~105の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、仮想漏洩音及び環境音の音量レベル比を用いて会話漏洩を評価する会話漏洩評価装置106,107について説明する。
【0113】
図12は、本発明の実施の形態6による会話漏洩評価装置106の一構成例を示した図である。会話漏洩評価装置106は、図2の会話漏洩評価装置100と比較すれば、音声合成部15を備えておらず、また、漏洩評価部16に代えて、漏洩評価部16'を備える点で異なる。なお、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0114】
漏洩評価部16'は、仮想漏洩音情報及び発話音情報に基づいて、自室20Aから隣室20Bへの会話漏洩の有無を評価する手段である。漏洩評価部16'による会話漏洩の評価は、仮想漏洩音と発話音とを比較することにより音漏れによる情報漏洩の有無を判定する処理である。漏洩評価部16'は、音量レベル比算出部162及び閾値比較部161により構成される。
【0115】
音量レベル比算出部162は、仮想漏洩音及び発話音の音量レベル比を算出し、閾値比較部161は、音量レベル比を予め定められた閾値と比較し、漏話の有無を示す評価結果を生成する。なお、2以上の閾値と比較し、3段階以上の評価結果を生成することもできる。また、閾値比較部161を省略し、音量レベル比を評価結果とすることもできる。
【0116】
図13は、本発明の実施の形態6による会話漏洩評価装置107の一構成例を示した図である。会話漏洩評価装置107は、図12の会話漏洩評価装置106と比較すれば、漏洩情報記憶部10及び仮想漏洩音情報生成部13に代えて、漏洩情報記憶部10'を備える点で異なる。漏洩情報記憶部10'は、仮想漏洩音情報記憶部17で構成され、図4の会話漏洩評価装置101の場合と同様である。
【0117】
会話漏洩評価装置106は、図2の会話漏洩評価装置100(実施の形態1)と同様にして、発話音情報及び伝搬特性に基づく演算により仮想漏洩音を求めるのに対し、会話漏洩評価装置107では、図4の会話漏洩評価装置101(実施の形態2)と同様にして、演算を行うことなく、仮想漏洩音情報記憶部17が保持する仮想漏洩音情報を読み出して使用する。
【0118】
本実施の形態による会話漏洩評価装置106,107は、仮想漏洩音及び環境音に基づいて会話漏洩を評価する。仮想漏洩音は、予め定められた発話音が自室20A内で発せられたときに隣室20Bで聴取されると推定される自室20Aからの漏洩音であり、自室20Aの利用者21Aの発話音を必要としない。このため、例えば、ワークブースの利用開始前に会話漏洩の評価を行うことができ、リモート会議のような情報漏洩の防止が求められる利用態様に適したワークブースであるか否かを利用開始前に確認することができる。また、隣室20B内における実際の環境音とを考慮して仮想聴取音を推定しているため、高い精度で会話漏洩評価を行うことができる。
【0119】
実施の形態7.
上記の各実施の形態では、仮想漏洩音情報及び環境音情報に基づいて会話漏洩を評価する会話漏洩評価装置100~107の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、環境音情報のみに基づいて会話漏洩を評価する会話漏洩評価装置108について説明する。
【0120】
図14は、本発明の実施の形態7による会話漏洩評価装置108の一構成例を示した図である。会話漏洩評価装置108は、環境音集音部14、漏洩評価部16''及び表示部23により構成される。なお、会話漏洩評価装置108の利用態様は、図1の会話漏洩評価装置100の場合と同様である。また、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0121】
漏洩評価部16''は、環境音集音部14から環境音情報が入力され、会話漏洩の評価結果を表示部23へ出力する。漏洩評価部16''は、テーブル参照部163、評価値テーブル164及び閾値判定部160により構成される。
【0122】
テーブル参照部163は、評価値テーブル154を参照し、環境音の音量レベルに対応する評価値を求める。例えば、環境音を所定の評価時間(例えば0.1秒)ごとに区切り、評価時間ごとの平均音量レベルb1~bnを求め、平均音量レベルb1~bnが対応する評価値を評価値テーブル164から読み出す。
【0123】
評価値テーブル164は、環境音の音量レベルb1~bnに対し、評価値を対応づけたデータテーブルであり、予め与えられている。なお、2以上の評価値テーブル164を保持し、必要に応じて、いずれかの評価値テーブル164を選択的に使用することもできる。
【0124】
閾値比較部161は、評価値を予め定められた閾値と比較し、会話漏洩の有無を示す評価結果を生成する。なお、2以上の閾値と比較し、3段階以上の評価結果を生成することもできる。また、閾値比較部161を省略し、評価値を評価結果とすることもできる。
【0125】
本実施の形態によれば、隣室20Bの環境音を集音し、当該環境音のみに基づいて会話漏洩を評価することができる。
【符号の説明】
【0126】
100~107 会話漏洩評価装置
10,10' 漏洩情報記憶部
11 発話音情報記憶部
12 伝搬特性記憶部
13 仮想漏洩音情報生成部
14 環境音集音部
15 音声合成部
16,16',16'' 漏洩評価部
160 了解度算出部
161 閾値比較部
162 音量レベル比算出部
163 テーブル参照部
164 評価値テーブル
17 仮想漏洩音情報記憶部
18 発話音集音部
18' 発話音情報受信部
19 再評価部
20A ワークブース(自室、第一空間)
20B,20C ワークブース(隣室、第二空間)
21A,21B 利用者
22 マイクロフォン
23 表示部
24 マスカー音制御部
25 スピーカ
26 マイクロフォン
27 携帯通信端末
28 アンテナ
30A,30B 帯域分析部
31A、31B セグメント化処理部
32 正規化処理部
33 相関係数算出部
34 平均化処理部
a(n) 仮想漏洩音
b(n) 環境音
d 了解度
h(n) 伝搬特性(インパルス応答)
x(n) 発話音
y(n) 仮想聴取音
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14