特開 2024-114183 面木

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024114183

(43)【公開日】2024-08-23

(54)【発明の名称】面木

(51)【国際特許分類】

   E04G 9/10 20060101AFI20240816BHJP

   E21D 11/10 20060101ALI20240816BHJP

【ＦＩ】

E04G9/10 A

E21D11/10 Z

【審査請求】未請求

【請求項の数】3

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023019769

(22)【出願日】2023-02-13

(71)【出願人】

【識別番号】000166432

【氏名又は名称】戸田建設株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110001151

【氏名又は名称】あいわ弁理士法人

(72)【発明者】

【氏名】巽 義知

(72)【発明者】

【氏名】関根 一郎

(72)【発明者】

【氏名】若竹 亮

【テーマコード（参考）】

2D155

2E150

【Ｆターム（参考）】

2D155BA05

2D155BB02

2D155CA03

2D155KA00

2E150KD06

2E150MA54Z

(57)【要約】

【課題】既設コンクリートの面取り部にノロが流出するのを抑制する面木の提供。
【解決手段】既設コンクリート３０の面取り部３００に接する面取接触部１１、新設コンクリート３１の面取り部３１０を形成する面取形成部１２、型枠接触部１０、本体部１３及び新設コンクリート３１の圧力で縮む潰れ部１４を備え、本体部１３は、面取接触部１１に位置するＡ点、型枠接触部１０に位置せず面取接触部１１に位置し、Ａ点より型枠４側で既設コンクリート３０側のＢ点及び型枠接触部１０に位置し、Ａ点より型枠４側で新設コンクリート３１側のＣ点を頂点とする断面三角形で、Ａ点の内角が鋭角の本体三角形部１３’を有し、型枠接触部１０は、面取接触部１１に位置せずＣ点より既設コンクリート３０側のＤ点を有し、潰れ部１４は、Ｂ点、Ｃ点及びＡ点とＢ点とを通る直線とＣ点とＤ点とを通る直線との交点であるＥ点を頂点とする三角形状の領域内に形成される。
【選択図】図４

【特許請求の範囲】

【請求項1】

既設コンクリートと新設コンクリートとの打継目に用いられる面木であって、
前記既設コンクリートの面取り部に接する面取接触部と、
前記新設コンクリートの面取り部を形成する面取形成部と、
型枠に接する型枠接触部と、
本体部と、
前記新設コンクリートの打設に伴う圧力によって縮む潰れ部と、を備え、
前記本体部は、その断面において以下のＡ点、Ｂ点及びＣ点を頂点とする三角形である本体三角形部を有し、
Ａ点：前記面取接触部に位置する点
Ｂ点：前記型枠接触部には位置せず前記面取接触部に位置するとともに、前記Ａ点より前記型枠側であって前記既設コンクリート側に位置する点
Ｃ点：前記型枠接触部に位置するとともに、前記Ａ点より型枠側であって新設コンクリート側に位置する点
前記Ａ点における前記本体三角形部の内角は鋭角であり、
前記型枠接触部は、前記面取接触部には位置せず、前記Ｃ点より前記既設コンクリート側に位置するＤ点を有し、
前記潰れ部は、前記Ｂ点、前記Ｃ点、及び以下のＥ点を頂点とする三角形状の領域内の少なくとも一部に形成されている
Ｅ点：前記Ａ点と前記Ｂ点とを通る直線と前記Ｃ点と前記Ｄ点とを通る直線との交点
ことを特徴とする面木。

【請求項2】

前記潰れ部は、凸部であることを特徴とする請求項１に記載の面木。

【請求項3】

前記潰れ部は、中空構造であることを特徴とする請求項１又は２に記載の面木。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、既設コンクリートと新設コンクリートとの打継目に面取り部を形成するために用いられる面木に関する。

【背景技術】

【0002】

トンネルの内周面に覆工コンクリートを打設するには、地山を掘り進めながら、坑口側からトンネル軸方向に順次所定スパンずつコンクリートを打ち継いでいき、角欠けを防ぐために、既設コンクリートと新設コンクリートとの打継部分を面取りして目地を形成することが多い。

【0003】

例えば、特許文献１には、トンネルの内周面と型枠体との間に形成された打設空間にコンクリートを打設し、型枠体のトンネル軸方向の一端部には、打設済みの覆工コンクリートの内周面に押し付けられるラップ部を形成し、ラップ部側の打設済みの覆工コンクリートと打設空間との間にゴム面木を配置し、打設空間にコンクリートを打ち込むことにより、打設済みの覆工コンクリートと新設の覆工コンクリートとの打継部分に面取り部を形成することが開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１９－４９１５６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

コンクリートを打ち継ぐと、新設コンクリートの端部から既設コンクリートの面取り部へ、打設したコンクリートの水分やモルタル分（以下、「ノロ」という）が発生し流出することがある。上記特許文献１に開示されているようなゴム面木を用いた場合には、流れ出したノロが、既設コンクリートの面取り部と面木との間に浸入することがある。

【0006】

脱型後、既設コンクリート側へ流出して面取り部に付着したノロは残ったままになり、温度や湿度の変化による体積の増減等で付着したものが浮き上がって、剥落することがある。
よって、頻繁な点検が必要になるばかりか、トンネル内を通行する人や車両に当たって重大な事故を引き起こす恐れがある。

【0007】

本発明が解決しようとする課題は、既設コンクリートの面取り部にノロが流出するのを抑制する面木を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0008】

本願請求項１に係る発明は、既設コンクリートと新設コンクリートとの打継目に用いられる面木であって、前記既設コンクリートの面取り部に接する面取接触部と、前記新設コンクリートの面取り部を形成する面取形成部と、型枠に接する型枠接触部と、本体部と、前記新設コンクリートの打設に伴う圧力によって縮む潰れ部とを備え、前記本体部は、その断面において以下のＡ点、Ｂ点及びＣ点を頂点とする三角形である本体三角形部を有し、
Ａ点：前記面取接触部に位置する点
Ｂ点：前記型枠接触部には位置せず前記面取接触部に位置するとともに、前記Ａ点より前記型枠側であって前記既設コンクリート側に位置する点
Ｃ点：前記型枠接触部に位置するとともに、前記Ａ点より型枠側であって前記新設コンクリート側に位置する点
前記Ａ点における前記本体三角形部の内角は鋭角であり、前記型枠接触部は、前記面取接触部には位置せず、前記Ｃ点より前記既設コンクリート側に位置するＤ点を有し、前記潰れ部は、前記Ｂ点、前記Ｃ点、及び以下のＥ点を頂点とする三角形状の領域内の少なくとも一部に形成されている
Ｅ点：前記Ａ点と前記Ｂ点とを通る直線と前記Ｃ点と前記Ｄ点とを通る直線との交点
ことを特徴とする面木である。

【0009】

本願請求項２に係る発明は、前記潰れ部は、凸部であることを特徴とする請求項１に記載の面木である。

【0010】

本願請求項３に係る発明は、前記潰れ部は、中空構造であることを特徴とする請求項１又は２に記載の面木である。

【発明の効果】

【0011】

本発明によれば、打設された新設コンクリートの圧力によって潰れ部が縮み、この結果、Ｃ点を中心に面木が回転して、本体部のＡ点の部分が既設コンクリートの面取り部に圧接されるので、新設コンクリートから既設コンクリートの面取り部にノロが流出するのを抑制することができる。

【0012】

加えて、潰れ部を凸部として三角形状の領域内の一部に設けると、構造が簡単で製造コストが低廉で済み、軽量で施工が容易となり、新設コンクリートの圧力によって潰れ部が縮みやすく、面取接触部を既設コンクリートの面取り部に確実に接触させることができる。

【0013】

加えて、潰れ部を中空構造とすることにより、軽量で施工が容易であり、新設コンクリートの圧力によって潰れ部が潰れやすいため、面取接触部を既設コンクリートの面取り部に確実に接触させることができる。

【図面の簡単な説明】

【0014】

【図1】本発明の第１の実施形態に係る施工中のトンネルの斜視図である。

【図2】本発明の第１の実施形態に係るトンネルの要部断面図（トンネル軸方向の要部断面図）である。

【図3】本発明の第１の実施形態を示す面木の断面図（面木の長手方向に直交方向（トンネル軸方向）の断面図）である。

【図4】本発明の第１の実施形態に係るトンネルの覆工コンクリート打設後における要部断面図（トンネル軸方向の要部断面図）である。

【図5】本発明の第１の実施形態に係る覆工コンクリート打設工程を示す要部断面図（トンネル軸方向の要部断面図）である。

【図6】本発明の第１の実施形態を示す面木の変形状態を説明する説明図である。

【図7】本発明の第２の実施形態を示す面木の断面図（面木の長手方向に直交方向（トンネル軸方向）の断面図）である。

【図8】本発明の第３の実施形態を示す面木の断面図（面木の長手方向に直交方向（トンネル軸方向）の断面図）である。

【図9】本発明の第４の実施形態を示す面木の断面図（面木の長手方向に直交方向（トンネル軸方向）の断面図）である。

【図10】本発明の第５の実施形態に係るトンネルの要部断面図（トンネル軸方向の要部断面図）である。

【発明を実施するための形態】

【0015】

以下、本発明の実施形態につき図面を参照する等して説明する。
なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。

【0016】

［第１の実施形態］
以下、本発明の第１の実施形態を、図１乃至図６を参照して詳細に説明する。

【0017】

第１の実施形態は、本発明をトンネルの覆工コンクリートの打設に適用したものである。

【0018】

図１は施工中のトンネルの斜視図、図２はトンネルの要部断面図、図３は面木の断面図、図４はトンネルの覆工コンクリート打設後における要部断面図、図５は覆工コンクリート打設工程を示す要部断面図、図６は面木の変形状態を説明する説明図である。

【0019】

面木１は、トンネル２の覆工コンクリート３において、既設コンクリート３０と新設コンクリート３１との打継目に用いられる（図４）。

【0020】

図１に示すように、トンネル２の覆工コンクリート３は、図示しない地山の内側においてトンネル２の軸方向に移動可能なセントルの型枠４を用いて、トンネル２の坑口から切羽側に向かって所定スパンずつ打ち継いで施工される。図１では３スパンの既設コンクリート３０が打設され、４スパン目を打設すべくセントルの型枠４が配置された状態を示している。

【0021】

セントルの型枠４には、打設したコンクリートの状態を確認するための複数の点検窓４０が周方向に間隔をあけて形成されている。点検窓４０は、内側から開閉可能な蓋で閉鎖されている。
なお、覆工コンクリート３は図示しない地山の内側に打設しているが、地山に吹付けコンクリートを施工したり一次覆工をしたりしたものにさらに打設するようにしても良い。

【0022】

図２に示すように、地山２０の内周側に打設された覆工コンクリート３の内周面において、既設コンクリート３０と新設コンクリート３１の打継目部分に断面二等辺三角形状の目地３２が形成される。

【0023】

目地３２は、トンネル外周側の頂部の内角が鋭角としており、既設コンクリート３０の切羽側端部の角部に形成された断面が直角三角形状の面取り部３００と、新設コンクリート３１の坑口側端部の角部に形成された断面が直角三角形状の面取り部３１０とを備える。

【0024】

目地３２の断面形状は、トンネル外周側の頂部の内角を鋭角にしており、よって、断面二等辺三角形状の目地３２は、型枠４の外周面と面取り部３００，３１０とのなす角度は４５度以上となる。

【0025】

目地３２を形成するのに用いる面木１は、従来の面木と同様にゴム等の柔軟な素材より成り、図３及び図４に示すように、既設コンクリート３０の面取り部３００と型枠４との交点部分において目地３２の断面よりわずかに欠けた部分（点ＢＤＥで囲まれた部分）の断面、及び、覆工コンクリート３の内周面の周長と同じ長さを有する。

【0026】

面木１を所定長さで分割して形成しておき連続して設けることで覆工コンクリート３の内周面の周長に相当するように設けるようにしても良い。

【0027】

面木１は、トンネル内周側の底部に、型枠４の外周面に接する型枠接触部１０を備え、一方の側面に、既設コンクリート３０の面取り部３００に接する面取接触部１１を備え、他方の側面に、新設コンクリート３１の面取り部３１０を形成する面取形成部１２を備える。

【0028】

面木１は、本体部１３と、新設コンクリート３１の打設に伴う圧力によって縮む潰れ部１４とを備える。

【0029】

面木１の本体部１３は、従来の面木と同様の材質の部分であり、面木１としての主要な部分をなす部分である。本体部１３は後述する潰れ部１４のように潰れない。
本体部１３は、その断面においてＡ点、Ｂ点及びＣ点を頂点とする三角形である本体三角形部１３’を有する。本実施形態では、本体三角形部１３’は、本体部１３と同形状である。

【0030】

Ａ点は、面取接触部１１に位置する点であり、本実施形態では、面取接触部１１と面取形成部１２との交差する位置にある。

【0031】

Ｂ点は、型枠接触部１０には位置せず、面取接触部１１に位置するとともに、Ａ点より型枠４側であって既設コンクリート３０側に位置する点である。本実施形態では、Ｂ点は、面取接触部１１の最も型枠４側に位置する。

【0032】

Ｃ点は、型枠接触部１０に位置するとともに、Ａ点より型枠４側であって新設コンクリート３１側に位置する点である。本実施形態では、Ｃ点は、型枠接触部１０と面取形成部１２との交差する位置にある。

【0033】

本体三角形部１３’のＡ点における内角は、目地３２の断面におけるトンネル外周側の頂部の内角と同じ角度の鋭角である。本体三角形部１３’のＡ点における内角を２等分する中心線は、型枠４の面と直交する。

【0034】

Ａ点とＣ点との距離は、新設コンクリート３１の面取り部３１０の長さと等しくする。

【0035】

本実施形態では、面取接触部１１及び面取形成部１２は、従来の面木同様に、平滑な平面で形成されている。

【0036】

型枠接触部１０は、面取接触部１１には位置せず、Ｃ点より既設コンクリート３０側に位置するＤ点を有する。

【0037】

Ｅ点は、Ａ点とＢ点とを通る直線とＣ点とＤ点とを通る直線との交点である。すなわち、Ｅ点は面木１が適切に配置されたときの面取り部３００と型枠４の表面との交点に一致する。

【0038】

潰れ部１４は、本体部１３の下に設けられ、Ｂ点、Ｃ点、及びＥ点を頂点とする三角形状の領域内の一部に形成されている。
本実施形態では、潰れ部１４は、その断面においてＢ点、Ｃ点及びＤ点を頂点とする三角形である。

【0039】

潰れ部１４は、新設コンクリート３１の打設に伴う圧力によって縮む材質で、本体部１３よりも軟質の材料である例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等を素材としている。

【0040】

Ａ点とＢ点とを通る直線、及び、Ａ点とＣ点とを通る直線の、Ｃ点とＤ点とを通る直線に対する角度は、４５度以上で同じである。

【0041】

覆工コンクリート３の目地３２は、面木１を用いて以下のように形成される。

【0042】

図５（ａ）に示すように、目地が形成されるトンネルの坑口側において、地山２０から間隔をあけた内側に、型枠４をトンネル２の軸方向の所定スパンにわたってトンネル２の周方向に沿って配置し、地山２０と型枠４の間にコンクリート打設空間４１を形成する。

【0043】

型枠４の切羽側の端部には、コンクリート打設空間４１を閉鎖する褄型枠４２が型枠４端部に沿わせて設置される。
褄型枠４２の坑口側の面において、型枠４との角部には面取型枠４２０が設けられる。面取型枠４２０は、傾斜面が坑口側に面する直角三角形状の断面を有する。

【0044】

次に、コンクリート打設空間４１にコンクリートを打設し、コンクリート硬化後に脱型すると、図５（ｂ）に示すように、切羽側の端部に面取り部３００を有する既設コンクリート３０が形成される。

【0045】

次いで、図５（ｃ）に示すように、型枠４を切羽側に移動させ、型枠４の坑口側の端部を既設コンクリート３０の内周面の切羽側端部に重ね、型枠４と地山２０との間に新設コンクリートを打設するコンクリート打設空間４１’を形成する。

【0046】

コンクリート打設空間４１’には、面木１が、型枠接触部１０を型枠４の外周面に支持させ、面取接触部１１を坑口側に向け、面取形成部１２を切羽側に向けて配置される。

【0047】

本体三角形部１３’のＡ点を既設コンクリート３０の面取り部３００の上端に一致させ、Ａ点及びＢ点を含む面取接触部１１を既設コンクリート３０の面取り部３００に接触させると、潰れ部１４の既設コンクリート３０側の面と既設コンクリート３０の面取り部３００との間に、間隙ａが形成される（図６（ａ））。
この状態では潰れ部１４は縮んで潰れない。

【0048】

面木１の配置方法としては、例えば、型枠４の既設コンクリート３０側に設けられた点検窓４０（図１）からコンクリート打設空間４１’に手を差し込んで、面木１を既設コンクリート３０側へ移動させ、面取接触部１１を既設コンクリート３０の面取り部３００に取付ける。なお、型枠４と面木１とを脱型後に取り外し可能な両面テープを用いて接着するようにしても良い。

【0049】

次いで、図５（ｄ）に示すように、コンクリート打設空間４１’にコンクリートを打設し、新設コンクリート３１を形成する。

【0050】

新設コンクリート３１の硬化後に脱型し、面木１を取り外すと、図２に示すように、既設コンクリート３０と新設コンクリート３１との打継部分に断面三角形の目地３２が形成される。

【0051】

新設コンクリート３１を打設すると、図６（ａ）に示すように、面木１の面取形成部１２に加わる新設コンクリート３１の圧力により、面木１にＣ点を中心として既設コンクリート３０側へ回転させようとする力（図の反時計回りの回転力）が加わる。

【0052】

すると、図６（ｂ）に示すように、本体部１３よりも軟質の潰れ部１４がトンネル２の径方向に縮んで、本体部１３のみが図の反時計回りに回転しようとする。
潰れ部１４は、トンネル２の径方向に縮む際に周方向に伸びようとするが、潰れ部１４と既設コンクリート３０の面取り部３００との間には、潰れ部１４の伸びた部分を逃がす間隙ａが形成されているので、潰れ部１４が縮むことが阻害されない。

【0053】

面木１のＡ点における内角、及び、目地３２のトンネル外周側の頂部における内角は鋭角であり、型枠４に対して既設コンクリート３０の面取り部３００は４５度以上の角度で配置されているので、潰れ部１４が縮んで本体部１３が回転すると、面取接触部１１のＡ点の部分が既設コンクリート３０の面取り部３００に圧接される。
この圧接した状態を図６（ｂ）では、面木１の面取接触部１１のＡ点の部分が面取り部３００を超えて既設コンクリート３０側に示すことで表している。

【0054】

新設コンクリート３１の坑口側の端部から既設コンクリート３０の面取り部３００と面木１の面取接触部１１と間に向けてノロが流れ出そうとするが、面取接触部１１のＡ点の部分が面取り部３００に押し付けられているので、流出しようとするノロは遮断され、面取り部３００と面取接触部１１との間に浸入するのを抑制する。

【0055】

また、面木１のＣ点から潰れ部１４の既設コンクリート３０側の端面に亘って形成される幅広い型枠接触部１０が型枠４に接触しているので、新設コンクリート３１から型枠接触部１０と型枠４との間にノロが侵入しにくい。

【0056】

［第２の実施形態］
本発明の第２の実施形態を図７と共に説明する。なお、第１の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。

【0057】

第２の実施形態では、潰れ部１４は、本体部１３の型枠４側の底面から型枠４に向かって突出する凸部として、Ｂ点、Ｃ点、及びＥ点を頂点とする三角形状の領域内の一部に形成されている点が第１の実施形態と異なる。

【0058】

潰れ部１４は、先端（型枠４側の端部）に向かって次第に細くなる逆三角形の断面を有する。潰れ部１４の先端はＤ点であり、潰れ部１４のＤ点と本体部１３のＣ点とによって面木１の型枠接触部１０が構成される。

【0059】

本実施形態では、潰れ部１４は、本体部１３の既設コンクリート３０側の端部に設けられており、面木１はＤ点とＣ点とにより安定して型枠４に支持される。

【0060】

潰れ部１４は、Ｂ点、Ｃ点、及びＥ点を頂点とする三角形状の領域内に部分的に形成されているので潰れやすく、既設コンクリート３０の面取り部３００に確実に面取接触部１１を圧接させることができる。
また、潰れ部１４の構造が簡単で軽量なので、面木１を設置しやすく、製造コスト及び施工コストが低廉で済む。

【0061】

［第３の実施形態］
本発明の第３の実施形態を図８と共に説明する。なお、第１及び第２の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。

【0062】

第３の実施形態では、潰れ部１４は、中空構造であり、その断面の外形は、Ｂ点、Ｃ点、及びＥ点を頂点とする三角形状の領域と同形である。
潰れ部１４には、Ｂ点とＥ点との間に、潰れ部１４の内外を連通する通気孔１４ａが形成されている。

【0063】

面木１の面取形成部１２に新設コンクリート３１の圧力が加わると、潰れ部１４の内部の空気が通気孔１４ａから抜けて潰れ部１４がトンネル２の径方向に縮み、本体部１３が回転して、本体部１３のＡ点の部分が既設コンクリート３０の面取り部３００に圧接される。

【0064】

このような構造にすれば、潰れ部１４が潰れやすくなり、既設コンクリート３０の面取り部３００に確実に面取接触部１１のA点側を圧着させることができる。
また、潰れ部１４は中空で軽量なので、第２の実施形態と同様に、面木１の施工が容易となる。

【0065】

［第４の実施形態］
本発明の第４の実施形態を図９と共に説明する。なお、第１乃至第３の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。

【0066】

第４の実施形態では、潰れ部１４は、中空であり、本体部１３の型枠４側の底面から型枠４に向かって突出する凸部として、Ｂ点、Ｃ点、及びＥ点を頂点とする三角形状の領域内の一部に形成されている
潰れ部１４は、型枠４側の面が本体部１３側の面よりも幅狭い四角形の断面を有する。

【0067】

潰れ部１４の型枠４側の面と本体部１３のＣ点とが型枠接触部１０を構成し、潰れ部１４の型枠４側の面にＤ点が位置する。
潰れ部１４の凸部は、図示しないが、面木１の長手方向の両端部が開口され外部に連通した通気孔が形成されている。

【0068】

面木１の面取形成部１２に新設コンクリート３１の圧力が加わると、潰れ部１４がトンネル２の周方向に広がり、径方向に縮むように変形し、本体部１３が回転してＡ点の部分が既設コンクリート３０の面取り部３００に圧接される。

【0069】

［第５の実施形態］
本発明の第５の実施形態を図１０と共に説明する。なお、第５の実施形態は第１の実施形態と類似しているので、第１の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。

【0070】

第５の実施形態では、面木１の本体部１３、及び、この面木１を用いて既設コンクリート３０と新設コンクリート３１との打継部分に形成される目地３２が、台形状の断面を有する点が第１の実施形態と異なる。

【0071】

面木１の本体部１３は、一方の側面が新設コンクリート３１の面取り部３１０を形成する面取形成部１２であり、頂面が、既設コンクリート３０の面取り部３００において、型枠４と平行な頂部面取り部３００ａに対応する頂部面取接触部１１ａであり、他方の側面が、既設コンクリート３０の面取り部３００において、傾斜面取り部３００ｂに対応する傾斜面取接触部１１ｂである。
頂部面取接触部１１ａと傾斜面取接触部１１ｂとで既設コンクリート３０の面取り部３００に接触する面取接触部１１を構成する。

【0072】

なお、型枠４の褄型枠４２に設けられる面取型枠４２０の上面及び側面を、面木１の頂部面取接触部１１ａ及び傾斜面取接触部１１ｂと同じ形状にすることにより、既設コンクリート３０の切羽側の端部には、頂部面取り部３００ａ及び傾斜面取り部３００ｂが形成される。

【0073】

面木１の本体部１３は、断面において、頂部面取接触部１１ａと傾斜面取接触部１１ｂとの交差する位置がＡ点であり、傾斜面取接触部１１ｂの最も型枠４側の端部がＢ点であり、面取形成部１２の最も型枠４側の端部がＣ点である。
本体部１３は、その断面の一部に、Ａ点、Ｂ点及びＣ点を頂点とする三角形である本体三角形部１３’を有する。

【0074】

新設コンクリート３１の圧力が面木１の面取形成部１２に加わると、潰れ部１４がトンネル２の径方向に縮んで本体部１３がＣ点を中心に既設コンクリート３０側へ回転し、本体三角形部１３’のＡ点の部分が既設コンクリート３０の面取り部３００に圧接される。

【0075】

〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。

【0076】

本実施形態では、面木はトンネルの覆工コンクリートの打継目に用いられているが、高架橋等のスラブの下面、壁面のような露出して使用されるコンクリート構造の打継目に用いることもできる。

【0077】

本実施形態では、既設コンクリートの面取り部に接する面取接触部を平滑な面としてあるが、面木の軸方向に沿う凸条を１条或いは複数条形成してもよい。
この場合、凸条は、潰れ部が潰れた時にも既設コンクリートの面取り部に接している部分に形成する。
また、凸条は面木の本体部よりも軟質の素材にすることができる。

【0078】

第１乃至第４の実施形態では、目地の断面形状を二等辺三角形とし、第５の実施形態では、左右対称の台形としてあるが、既設コンクリートの面取り部と新設コンクリートの面取り部との傾斜角度が異なる三角形或いは台形の断面とすることもできる。
この場合、型枠の外周面と既設コンクリートの面取り部とは、４５度以上の角度で配置する。

【0079】

第１乃至第４の実施形態では、面木の本体部の断面形状は三角形であるが、Ａ点とＢ点とを通る直線と、Ｂ点とＣ点とを通る直線との交差する角部を面取りして、既設コンクリートの面取り部と、型枠と、面木とで囲まれる間隙を広くすることもできる。

【0080】

第２の実施形態では、凸部である潰れ部の断面形状を逆三角形とし、第４の実施形態では、潰れ部の断面形状を四角形としてあるが、半円形等の他の形状であってもよい。

【0081】

第４の実施形態において、中空の凸部として設けた潰れ部に、内部の空気を抜くための通気孔を形成してもよい。

【0082】

本実施形態では、型枠をセットした後、型枠の点検窓から打設空間に手を差し込んで、面木を既設コンクリートの面取り部に押し当てているが、面木に連結した引き込み用の紐を既設コンクリートと型枠との間に設けてこれを引っ張ることにより、既設コンクリートの面取り部に圧着されるようにしてもよい。

【0083】

変形例を含むいずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。

【0084】

１ 面木
１０ 型枠接触部
１１ 面取接触部
１１ａ 頂部面取接触部
１１ｂ 傾斜面取接触部
１２ 面取形成部
１３ 本体部
１３’ 本体三角形部
１４ 潰れ部
１４ａ 通気孔
２ トンネル
２０ 地山
３ 覆工コンクリート
３０ 既設コンクリート
３００ 面取り部
３００ａ 頂部面取り部
３００ｂ 傾斜面取り部
３１ 新設コンクリート
３１０ 面取り部
３２ 目地
４ 型枠
４０ 点検窓
４１，４１’ コンクリート打設空間
４２ 褄型枠
４２０ 面取型枠
ａ 間隙

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】