(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114195
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】圧力容器
(51)【国際特許分類】
F17C 13/04 20060101AFI20240816BHJP
F17C 1/16 20060101ALI20240816BHJP
F17C 1/06 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F17C13/04 301Z
F17C1/16
F17C1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019796
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】大脇 優介
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB05
3E172AB20
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC01
3E172BC04
3E172BC05
3E172CA12
3E172CA22
3E172DA41
3E172DA90
(57)【要約】
【課題】口金に接するシールリングのメンテナンスを容易にする。
【解決手段】圧力容器は、内部に高圧の流体が貯留される樹脂ライナー10と、樹脂ライナー10を包囲する補強層38と、樹脂ライナー10の開口部13に嵌合された筒状の口金20とを備え、口金20は、樹脂ライナー10と一体化された筒状のインナ部材21と、インナ部材21に対して軸線方向の着脱可能に外嵌された筒状のアウタ部材33と、インナ部材21の外周面とアウタ部材33の内周面との間に設けた第1のシールリング25及び第2のシールリング36とを備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に高圧の流体が貯留される樹脂ライナーと、
前記樹脂ライナーを包囲する補強層と、
前記樹脂ライナーの開口部に嵌合された筒状の口金と、を備え、
前記口金は、
前記樹脂ライナーと一体化された筒状のインナ部材と、
前記インナ部材に対して軸線方向の着脱可能に外嵌された筒状のアウタ部材と、
前記インナ部材の外周面と前記アウタ部材の内周面との間に設けたシールリングとを備えている圧力容器。
【請求項2】
前記インナ部材に対して着脱可能なバルブを備えており、
前記バルブは、前記インナ部材に取り付けた状態において、前記アウタ部材が前記インナ部材から離脱することを規制する離脱規制部を有している請求項1に記載の圧力容器。
【請求項3】
前記インナ部材と前記樹脂ライナーが、嵌合部の凹凸嵌合によって回り止めされている請求項1又は請求項2に記載の圧力容器。
【請求項4】
前記樹脂ライナーは、前記開口部の開口縁から延出して、前記インナ部材の外周面と前記アウタ部材の内周面との間に挟み込まれる筒状部を有しており、
第1の前記シールリングが、前記インナ部材の外周面と前記アウタ部材の内周面とが直接的に対向する領域に配置され、
第2の前記シールリングが、前記筒状部の外周面と前記アウタ部材の内周面との隙間に配置されている請求項1又は請求項2に記載の圧力容器。
【請求項5】
前記樹脂ライナーは、前記開口部の開口縁から軸線方向へ二股に分かれて径方向内側へ延出する一対の円錐板状部を有し、
前記インナ部材は、前記一対の円錐板状部の間に嵌合されるフランジ部を有し、
前記一対の円錐板状部のうち前記樹脂ライナーの外面側の前記円錐板状部の外面に、前記補強層が密着している請求項1又は請求項2に記載の圧力容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された圧力容器は、樹脂ライナーと、樹脂ライナーに取り付けられた筒形の口金部とを有する。樹脂ライナーは筒状の注排部を有し、注排部の外周に形成した雄ネジ部には、口金部の内周の雌ネジ部がねじ込まれている。口金部のフランジ状に広がった接面部は、樹脂ライナーの外面に重ねられている。接面部の外面には、樹脂ライナーを包囲する繊維強化樹脂層が密着しているので、口金部は、樹脂ライナーと繊維強化樹脂層から離脱しない状態に保持されている。圧力容器内のガスの圧力が樹脂ライナーの内面に作用すると、口金部の接面部と樹脂ライナーがセルフシール機能を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の圧力容器は、口金部だけを樹脂ライナーや繊維強化樹脂層から取り外すことができない。そのため、口金部に面するリークパスにおいてシール性能が低下した場合は、口金部のみを交換するといった方法では対処できず、圧力容器全体を交換しなければならなかった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、口金に接するシールリングのメンテナンスを容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
内部に高圧の流体が貯留される樹脂ライナーと、
前記樹脂ライナーを包囲する補強層と、
前記樹脂ライナーの開口部に嵌合された筒状の口金と、を備え、
前記口金は、
前記樹脂ライナーと一体化された筒状のインナ部材と、
前記インナ部材に対して軸線方向の着脱可能に外嵌された筒状のアウタ部材と、
前記インナ部材の外周面と前記アウタ部材の内周面との間に設けたシールリングとを備えている。
【発明の効果】
【0007】
シールリングによるシール機能が低下した場合は、アウタ部材をインナ部材から取り外してシールリングを交換することによって、メンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】口金とバルブを組み付けた状態をあらわす斜視図
【
図3】バルブとアウタ部材とインナ部材を分離した状態をあらわす斜視図
【
図4】樹脂ライナーと口金とバルブの組付け構造をあらわす断面図
【
図5】インナ部材からアウタ部材とバルブを外した状態をあらわす断面図
【
図6】樹脂ライナーに補強層を形成する工程をあらわす正面図
【
図7】樹脂ライナーに補強層を形成する固定をあらわす部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。下記の複数の実施形態を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
本開示の圧力容器は、
(1)内部に高圧の流体が貯留される樹脂ライナーと、前記樹脂ライナーを包囲する補強層と、前記樹脂ライナーの開口部に嵌合された筒状の口金と、を備えている。前記口金は、前記樹脂ライナーと一体化された筒状のインナ部材と、前記インナ部材に対して軸線方向の着脱可能に外嵌された筒状のアウタ部材と、前記インナ部材の外周面と前記アウタ部材の内周面との間に設けたシールリングとを備えている。本開示の構成によれば、シールリングによるシール機能が低下した場合は、アウタ部材をインナ部材から取り外してシールリングを交換すればよい。よって、口金に接するシールリングのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0010】
(2)圧力容器は、前記インナ部材に対して着脱可能なバルブを備え、前記バルブは、前記インナ部材に取り付けた状態において、前記アウタ部材が前記インナ部材から離脱することを規制する離脱規制部を有していることが好ましい。この構成によれば、アウタ部材とインナ部材を取付け状態に保持するための専用の部品や形状が不要なので、部品点数の増加、又はインナ部材とアウタ部材の形状の複雑化を回避することができる。
【0011】
(3)(1)又は(2)において、前記インナ部材と前記樹脂ライナーが、嵌合部の凹凸嵌合によって回り止めされていることが好ましい。この構成によれば、フィラメントワインディング法によって補強層を形成する際に、インナ部材に取り付けたシャフトを回転させたときに、樹脂ライナーをインナ部材と一体的に回転させることができる。
【0012】
(4)(1)又は(2)において、前記樹脂ライナーは、前記開口部の開口縁から延出して、前記インナ部材の外周面と前記アウタ部材の内周面との間に挟み込まれる筒状部を有しており、第1の前記シールリングが、前記インナ部材の外周面と前記アウタ部材の内周面とが直接的に対向する領域に配置され、第2の前記シールリングが、前記筒状部の外周面と前記アウタ部材の内周面との隙間に配置されていることが好ましい。この構成によれば、インナ部材の外周面と樹脂ライナーとの間にシール部材を設けなくても、口金に面するリークパスをシールすることができる。
【0013】
(5)(1)又は(2)において、前記樹脂ライナーは、前記開口部の開口縁から軸線方向へ二股に分かれて径方向内側へ延出する一対の円錐板状部を有し、前記インナ部材は、前記一対の円錐板状部の間に嵌合されるフランジ部を有し、前記一対の円錐板状部のうち前記樹脂ライナーの外面側の前記円錐板状部の外面に、前記補強層が密着していることが好ましい。この構成によれば、インナ部材に対して樹脂ライナーから軸線方向へ離脱する方向に引張力が作用しても、フランジ部が円錐板状部を介して補強層に引っ掛かることによって、インナ部材の離脱を防止することができる。
【0014】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1~
図7を参照して説明する。尚、以下の説明において、上下の方向については、
図1~7にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。上下方向と軸線方向を同義で用いる。
【0015】
本実施例1の圧力容器は、樹脂ライナー10と、口金20と、補強層38と、バルブ40とを備えている。樹脂ライナー10は、円筒部11と、円筒部11の両端に連なる一対のドーム部12を有する単一部品である。圧力容器(樹脂ライナー10)の内部は、高圧ガス(液化ガスや気化ガス)を貯留するための貯留空間18として機能する。
【0016】
図4,5,7に示すように、ドーム部12の頂上部には、樹脂ライナー10を軸線方向に貫通する円形の開口部13が形成されている。樹脂ライナー10には、内側円錐板状部14と、外側円錐板状部15、筒状部16とが一体に形成されている。
【0017】
内側円錐板状部14は、開口部13の開口縁から径方向内側へ同心状に張り出した円環形(円錐台形)の板状部位である。内側円錐板状部14の張り出し方向は、軸線方向に対して斜め方向であり、且つ樹脂ライナー10の内側(
図1における下側)に向かう方向である。
【0018】
外側円錐板状部15は、開口部13の開口縁から径方向内側へ同心状に張り出した円環形(円錐台形)の板状部位である。外側円錐板状部15の張り出し方向は、軸線方向に対して斜め方向であり、且つ樹脂ライナー10の外側(
図1における上側)に向かう方向である。内側円錐板状部14と外側円錐板状部15は、開口部13の開口縁から軸線方向において互いに反対方向へ二股に分かれて張り出している。
【0019】
筒状部16は、外側円錐板状部15の内周縁(張り出し方向の先端縁)から、軸線方向外側(上側)へ突出している。筒状部16は、開口部13と同心の円筒形をなす。筒状部16の外径は、筒状部16の下端から上端に至る全長に亘って一定である。筒状部16の内径も、筒状部16の下端から上端に至る全長に亘って一定である。円筒部11の内周面には、周方向に間隔を空けた複数の嵌合凸部17が形成されている。
【0020】
口金20は、インナ部材21とアウタ部材33とを組み付けて構成されている。インナ部材21は、円筒形をなす金属製の単一部品である。インナ部材21の外周下端部には、同心円形をなすフランジ部22が形成されている。フランジ部22の外周縁部には、周方向に間隔を空けた複数の回り止め部23が形成されている。インナ部材21の外周面のうちフランジ部22よりも上方の領域には、周方向の第1シール溝24が形成されている。第1シール溝24には、第1のシールリング25が取り付けられている。インナ部材21の外周面のうちフランジ部22よりも上方で、且つ第1シール溝24よりも下方の領域には、周方向に間隔を空けた複数の嵌合凹部26が形成されている。インナ部材21の内周面における上端側領域には、雌ネジ部27が形成されている。インナ部材21の内周面のうち雌ネジ部27よりも下方の領域には、周方向の第3シール溝28が形成されている。第3シール溝28には、第3のシールリング29が取り付けられている。
【0021】
インナ部材21は、インサート成形によって樹脂ライナー10と一体化されている。即ち、樹脂ライナー10は、インナ部材21をセットした金型(図示省略)によって成形された部品である。フランジ部22の下面は内側円錐板状部14の上面に密着し、フランジ部22の上面は外側円錐板状部15の下面に密着している。樹脂ライナー10の嵌合凸部17は、インサート成形の際にインナ部材21の嵌合凹部26に充填されるように形成された部位である。樹脂ライナー10の開口部13(内側円錐板状部14と外側円錐板状部15とが連なる部分)は、インサート成形の際にインナ部材21の回り止め部23に嵌合するように形成された複数の突起30を有する。
【0022】
アウタ部材33は、円筒形をなす金属製の単一部品である。アウタ部材33の内周面における下端側領域には、樹脂ライナー10の筒状部16を収容するための逃がし凹部34が形成されている。逃がし凹部34の径方向の深さ寸法は、筒状部16の厚さと同じ寸法である。逃がし凹部34の内径は、その下端から上端に至る全域に亘って一定である。逃がし凹部34の内周面には、周方向の第2シール溝35が形成されている。第2シール溝35には、第2のシールリング36が取り付けられている。アウタ部材33の内周面のうち、逃がし凹部34よりも上方の領域の内径は、下端から上端に至る全域に亘って一定である。アウタ部材33の外周面上端部には、多角形状の拡径部37が形成されている。アウタ部材33の外周面のうち拡径部37より下方の領域の外径は、下端から上端に至る全域に亘って一定である。
【0023】
アウタ部材33は、樹脂ライナー10とインナ部材21が一体化されている状態で、インナ部材21に組み付けられる。組付けの際には、樹脂ライナー10の外部上方から、アウタ部材33をインナ部材21に外嵌させる。アウタ部材33をインナ部材21に組み付けた状態では、第1のシールリング25によって、インナ部材21の外周面とアウタ部材33の内周面との隙間(リークパス)が気密状にシールされる。アウタ部材33の逃がし凹部34が樹脂ライナー10の筒状部16に外嵌される。第2のシールリング36によって、筒状部16の外周面とアウタ部材33の内周面との隙間(リークパス)が気密状にシールされる。以上により、口金20の組付けが完了するとともに、口金20における高圧ガスの漏出と、樹脂ライナー10と口金20との隙間における高圧ガスの漏出が防止される。
【0024】
補強層38は、樹脂ライナー10の外面に密着するように形成され、樹脂ライナー10を補強する機能を発揮するものである。補強層38は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等の繊維強化樹脂からなる。補強層38は、繊維束(図示略)に液状の熱硬化性樹脂を含浸させたもの、または繊維束に含浸した熱硬化性樹脂を半硬化状態にしたプリプレグ繊維を、例えば樹脂ライナー10の外面にフープ巻きするフィラメントワインディング法によって形成されている。繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、ケプラ繊維等からなる糸状の繊維を束ねたものである。
【0025】
補強層38の形成は、アウタ部材33をインナ部材21に組み付けた状態で行われる。具体的には、
図6,7に示すように、口金20に取り付けたシャフト50と回転治具51を回転させることによって、口金20と樹脂ライナー10を一体的に回転させ、樹脂ライナー10の外周面にプリプレグ繊維を巻き付けていく。アウタ部材33の外周面のうち拡径部37よりも下方の領域は、補強層38によって覆われている。但し、補強層38とアウタ部材33の外周面は、固着されているのではなく、軸線方向及び周方向へ相対変位し得るように接触しているだけである。
【0026】
バルブ40は、圧力容器(貯留空間18)内に高圧ガスを充填したり、貯留空間18内の高圧ガスを圧力容器外へ供給したりする際に開閉される弁機構(図示省略)を有する。バルブ40は、円柱形をなす本体部41と、治具嵌合部42とを有する。本体部41の内部には、弁機構が収容されている。本体部41の外周面における上端側領域には、雄ネジ部43が形成されている。治具嵌合部42は、本体部41の上端部から径方向外方へ多角形状に張り出した部位である。治具嵌合部42の下面は、離脱規制部44として機能する。
【0027】
バルブ40は、アウタ部材33がインナ部材21に組み付けられている状態で、インナ部材21に組み付けられる。組付けの際には、バルブ40の雄ネジ部43をインナ部材21の雌ネジ部27にねじ込み、離脱規制部44をインナ部材21の上端に突き当てる。以上により、バルブ40の組付けが完了する。この状態では、アウタ部材33の上端部が離脱規制部44に当接することによって、アウタ部材33がインナ部材21に対して上方へ離脱することを規制される。第3のシールリング29によって、インナ部材21の内周面とバルブ40の外周面との隙間(リークパス)が気密状にシールされる。
【0028】
第1~第3のシールリング25,29,36によるシール機能が低下したときには、これらのシールリング25,29,36の交換を行うことができる。第1のシールリング25又は第2のシールリング36を交換する際には、まず、バルブ40をインナ部材21から取り外す。次に、アウタ部材33をインナ部材21から取り外す。このとき、アウタ部材33は軸線方向にスライドさせてインナ部材21と補強層38との隙間から引き抜くだけでよい。アウタ部材33を取り外せば、第1のシールリング25と第2のシールリング36のいずれの交換も行うことができる。
【0029】
第1のシールリング25又は第2のシールリング36を交換した後は、アウタ部材33をインナ部材21と補強層38との間の収容空間39内に収容し、インナ部材21に組み付ければよい。この後は、バルブ40をインナ部材21に取り付ければ、メンテナンスの作業が完了する。第3のシールリング29を交換する場合は、バルブ40を取り外すだけでよい。
【0030】
本実施例1の圧力容器は、内部に高圧の流体(高圧ガス)が貯留される樹脂ライナー10と、樹脂ライナー10を包囲する補強層38と、樹脂ライナー10の開口部13に嵌合された筒状の口金20と、を備えている。口金20は、インナ部材21と、アウタ部材33と、第1のシールリング25と、第2のシールリング36とを備えている。インナ部材21は、インサート成形によって樹脂ライナー10と一体化された筒状の部品である。アウタ部材33は、インナ部材21に対して軸線方向の着脱可能に外嵌された筒状の部品である。第1のシールリング25は、インナ部材21の外周面とアウタ部材33の内周面との間に設けられている。第2のシールリング36は、樹脂ライナー10とアウタ部材33との間に設けられている。
【0031】
第1のシールリング25と第2のシールリング36は、アウタ部材33に接するように設けられている。つまり、第1のシールリング25と第2のシールリング36は、口金20のアウタ部材33に面するリークパスを気密状にシールするように設けられている。第1のシールリング25や第2のシールリング36によるシール機能が低下した場合は、アウタ部材33をインナ部材21から取り外して第1のシールリング25又は第2のシールリング36を交換すればよい。よって、口金20に面するリークパスに設けた第1のシールリング25や第2のシールリング36のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0032】
圧力容器は、インナ部材21に対して着脱可能なバルブ40を備えている。バルブ40は、インナ部材21に取り付けた状態において、アウタ部材33がインナ部材21から離脱することを規制する離脱規制部44を有している。この構成によれば、アウタ部材33とインナ部材21を取付け状態に保持するための専用の部品や形状が不要なので、部品点数の増加、又はインナ部材21とアウタ部材33の形状の複雑化を回避することができる。
【0033】
インナ部材21と樹脂ライナー10は、嵌合凸部17と嵌合凹部26との凹凸嵌合によって回り止めされている。この構成によれば、フィラメントワインディング法によって樹脂ライナー10を回転させながら補強層38を形成する工程において、インナ部材21に取り付けたシャフト50を回転させたときに、樹脂ライナー10をインナ部材21と一体的に回転させることができる。
【0034】
樹脂ライナー10は、開口部13の開口縁から延出して、インナ部材21の外周面とアウタ部材33の内周面との間に挟み込まれる筒状部16を有している。第1のシールリング25は、インナ部材21の外周面とアウタ部材33の内周面とが直接的に対向する領域に配置されている。第2のシールリング36は、筒状部16の外周面とアウタ部材33の内周面との隙間に配置されている。この構成によれば、インナ部材21の外周面と樹脂ライナー10との間にシール部材を設けなくても、口金20に面するリークパスをシールすることができる。
【0035】
樹脂ライナー10は、開口部13の開口縁から開口部13の径方向内側へ延出する一対の円錐板状部(内側円錐板状部14と外側円錐板状部15)を有する。内側円錐板状部14と外側円錐板状部15は、開口部13の軸線方向へ二股に分かれて延出している。インナ部材21は、内側円錐板状部14と外側円錐板状部15の間に嵌合されるフランジ部22を有している。一対の円錐板状部のうち樹脂ライナー10の外面側に位置する外側円錐板状部15の外面に、補強層38が密着している。この構成によれば、インナ部材21に対して樹脂ライナー10から軸線方向へ離脱する方向に引張力が作用しても、フランジ部22が外側円錐板状部15を介して補強層38に引っ掛かるので、インナ部材21が樹脂ライナー10から上方へ離脱することを防止ができる。
【0036】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
インナ部材とアウタ部材を、バルブを用いずに、専用の部品や形状によって取付け状態に保持してもよい。
樹脂ライナーは、インナ部材の外周面とアウタ部材の内周面との間に挟まれる筒状部を有していなくてもよい。
インナ部材は、フランジ部を有しない形状であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
10…樹脂ライナー
13…開口部
14…内側円錐板状部(円錐板状部)
15…外側円錐板状部(円錐板状部)
16…筒状部
17…嵌合凸部(嵌合部)
20…口金
21…インナ部材
22フランジ部
25…第1のシールリング
26…嵌合凹部(嵌合部)
33…アウタ部材
36…第2のシールリング
38…補強層
40…バルブ
44…離脱規制部